説明

高転移温度超伝導体に低接点抵抗の接点を製造する方法

【課題】高転移温度超伝導体(HTSC)、特に超伝導体中に銀を伴うこともあれば伴わないこともある(Bi,Pb)SrCaCu10+xに接点を作製するための三層プロセスを開示する。
【解決手段】接点の構造は金属スプレーガンで付着した二の銀層(2,5)の間に挟まれた穿孔された銀ホイル(3)及び続いて空気中で熱処理を伴う三層配置である。接点はチューブおよびロッド(1)に作製されている。この銀接点はHTSCを冷却するために使用される凍結剤に実質的な熱負荷を全く加えることなく、連続的に200アンペアの電流を輸送することが可能である。4.2Kでの接触抵抗は零印加磁場で1.5x10−8〜8.5x10−8Ωの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tc(臨界温度)以下での大電流輸送のためのBiPbSrCaCuOからなるHTSC(高転移温度超伝導体化合物)固体本体の低接点抵抗接合部の開発に関する。このチューブ/ロッド状のHTSC伝導体、Bi(2223)(BiPbSrCaCuO)は77Kで非常に大きな電流を流すことができ、そしてその低熱伝導率により系において非常に低い熱損失を発生する。さらにこのHTSCと電流導線の間の接点抵抗が低い場合、これらのチューブ/ロッド状の伝導体は、凍結剤フリーの超伝導磁石/超伝導磁力発生器等のようなあらゆるシステムのための理想的な大電流輸送導線となる。
【背景技術】
【0002】
Cu、Al等のような従来の伝導体における大電流伝送のパラメータは、たいていはこの伝導体の抵抗によるものであり、これは相当な量のエネルギー損失を生じる。損失の少ない電流輸送は非常に初期から超伝導の魅力の主要な点でありつづけている。低いTcの従来の超伝導材料が高い界磁石(フィールドマグネット)(〜20テスラ)の製造で使用されてきており、これは現在容易に入手できる。運転温度、すなわち4.2K(液体ヘリウムの定常的な流れを必要とする)は大電流輸送の導線及びケーブルが大きくなることを妨げてきた。大輸送電流に関してこの分野における進歩は試作品レベルまでのみに制限されている。高いTcの超伝導化合物(HTSC)の出現により、運転温度が77Kに上げられるような大輸送電流導線に対する期待が高まってきている。しかしながら、乏しい柔軟性と低い臨界磁場が差し迫った用途に制限を加えてきた。しかしながら、77K、0.6Tの磁場で〜10A/cmのJcを有するBi(2223)のHTSCマルチフィラメント(多芯)のケーブルの発達が良好な見込みを見せたが、この場合もやはりまさに従来型の答えではなかった。比較すると、この高いTc超伝導体からなるチューブ状の伝導体は良好な潜在性を示している。BSCCOチューブとロッドをベースとしたHTC電流導線は、電力エンジニアリングにおけるセラミック超伝導体の最初の応用であり、Cu及びAlのような良好な伝導体である伝統的な全ての金属導線と、同様に従来の超伝導体とをともに超える、大きな利点を提供する。銅に埋め込まれた従来の低いTcの超伝導体は、その零抵抗および臨界電流密度Jc(〜10A/cm)によって定まる大電流を輸送する能力のせいで、全ての金属導線を超えるさらに良い選択肢であると考えられた。しかし4.2Kでの運転という制限のせいで、これらの材料はCuまたはAlに必ずしも取って代わっていない。
【0003】
77Kというより高い運転温度に加えて、このHTSC材料は低い熱伝導率を有し、これにより熱損失が通常の1/10未満となる。これは極低温の系での熱負荷を減少させ、結果として相当な冷却コストの減少になり、そして新しい革新的な冷却コンセプトを可能にする。それらの他の用途は磁気シールドおよび電流制限器の分野においてである。
【0004】
このHTSCチューブ伝導体に大電流を給電する通常の伝導体(Cu、Al)からなる接合部の接点抵抗が10−4〜10−3Ωのオーダーである場合、全ての上記のようなHTSCチューブ伝導体を大電流用途(Ic>1000A)のために使用することは非効率的になりそして損失が多くなる。チューブ状の伝導体を最適に利用するために要求されることは、HTSCチューブ伝導体に接合する通常の伝導体の接点抵抗は少なくとも10−6Ωのオーダーにすべきということである。
【0005】
KH SandhageらによるJournal of Materials、Vol43、pp21(1991)の開示を参照してもよく、ここでHTSCファミリーの中で、Yベース超伝導体はチューブ状およびロッド状の伝導体を合成するためには多くの結晶学上の制限に苦心しており、薄膜の用途のみが商業化されていることが示される。さらにEH HellstormのMaterila Research Bulletin Vol XVII、pp45、(1992)による別の開示において、Tlベースの超伝導体は健康への危険性のせいでバルク用途のためには使用されていないことが示されている。S X Dou及びH K LiuによるSupercond.Science and Technol Vol6、pp297、(1993)の報告によると、Biベースの超伝導体(Bi2−X,PbSrCaCu)及びBi(2212)のみが商業的に経済的でありそして好適な答えである。
【0006】
この大電流電気接合についての接点抵抗の問題は、Biベースのチューブ伝導体に大電流を給電する通常の伝導体として銀を使用することによってのみ解決が可能である。これの大きな問題はBi(2223)セラミック表面に銀の給電器を接続することである。
【0007】
この問題は部分的にいくつかの方法で取り組まれてきた。
【0008】
米国特許第5,149,686号及び米国特許(出願番号20030132023)は電気的接点を作製するために、非超伝導金属(Ag、Au)をマイクロメートルのオーダーの小さなバー形状のHTSCにスパッタリングをすることを開示する。
【0009】
マイクロメートルのオーダーのHTSCへのAg/Auフィルムのプラズマスプレー技術がY YamadaによりBismuth Based High Temperature Superconductors(編集 H Maeda及びT Togano) pp277(1996)で開示されている。
【0010】
それからこの大電流給電器はHTSC表面にハンダ付けされそして77Kで10−6Ωオーダーの接点抵抗が得られている。
【0011】
小さいサンプルの場合には、スパッタリング技術が成功してきているが、特にビスマスベースの大きなサンプルの場合(例えばチューブ/ロッド状伝導体)には、プラズマ付着が使用される。
【0012】
米国特許番号5,506,199号およびK K MichishitaらのBismuth Based High Temperature Superconductors(編集 H Maeda及びT Togano) pp253(1996)はAgチューブ、シートまたはワイヤーをBi2212溶融物の大きなサンプルに部分的に入れることによるプロセスを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主目的は上述の欠点を取り除く、高転移温度超伝導体に低接点抵抗の接点(コンタクト)を製造する方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は高転移温度超伝導体に低接点抵抗の接合部(ジョイント)を製造するための三層プロセスを提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的はBiCaCuO超伝導体に対して低接点抵抗を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的はチューブ状のHTSCに対して接点を提供することである。
【0017】
本発明のさらに進んだ目的はロッド状のHTSCに対して接点を提供することである。
【0018】
本発明のまた別の目的は10−7〜10−6Ωの範囲にある接点抵抗を有する接点を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は高転移温度超伝導体(HTSC)に向けた、特に超伝導体中に銀を含むこともあり含まないこともある(Bi,Pb)SrCaCu10+xに向けた接触点を製造するための三層プロセスを表す。この接点構造は金属スプレーガンによる二の付着銀層の間に挟まれた穿孔された銀ホイルを伴い、続いて空気中で熱処理をうける三層構造である。この接点はチューブ及びロッドの上に製造されている。この作製された銀の接点は10−6Ωの低抵抗という特徴を有する。さらに、この接点はHTSCを冷却するために使用される凍結剤に実質的な熱負荷を加えることなく200アンペアの連続電流を流すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本詳細な説明に付随する図面類において、図1はHTSCチューブまたはロ ッドの接点の構造を示す。(1)は端部に溝を有するHTSCチューブまたはロッド であり、(2)は第一付着銀層であり、(3)は銀ホイルであり、(4)は銀ホイル の穿孔であり、(5)は第二付着銀層であり、そして(6)は編みあげられた導線の ための接点である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従って、本発明は該超伝導体の端部に溝をつくること、第一銀層を金属スプレーガンにより120℃の温度で付着すること、前記の付着銀層を200〜250℃の温度範囲で2〜5時間の範囲の時間加熱すること、穿孔された銀ホイルを前記加熱された第一銀層に巻くこと、第二銀層を金属スプレーガンにより120℃の温度で付着すること、前記第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルと第二銀層とを組み合わせたものを830〜850℃の温度範囲で空気中で100〜150時間の範囲の時間加熱し結果として10−7〜10−6Ωの範囲にある接点抵抗を有する接合部を得ること、を含む高転移温度超伝導体に低接点抵抗の接点を製造する方法を提供する。
【0022】
本発明の実施態様において、高転移温度超伝導体が長さ200〜300mmの範囲にある中空筒状チューブであってもよい。
【0023】
本発明の別の実施態様において、高転移温度超伝導体が長さ150mmの中実ロッドであってもよい。
【0024】
本発明のさらに別の実施態様において、チューブの壁厚が2〜3mmの範囲にあってもよい。
【0025】
本発明のさらなる別の実施態様において、チューブの外径が12〜30mmの範囲にあってもよい。
【0026】
本発明のさらなる別の実施態様において、高転移温度超伝導体が純粋な(Bi,Pb)SrCaCu10+xであってもよい。
【0027】
本発明のさらに進んだ実施態様において、高転移温度超伝導体が10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+xであってもよい。
【0028】
高転移温度超伝導体(HTSC)への低接点抵抗の接合部を作製するために、二つのタイプのサンプルを採用した、すなわちチューブ状及び/またはロッド状のHTSCである。図1はHTSCサンプル(1)を示す。このチューブの径は200〜300mmの範囲にあり、12〜30mmの範囲にある外径、および2〜3mmの範囲にある壁厚を伴う。チューブの端部は機械加工され、概して20mmの長さの溝(2)を得る。これらの溝に接点が作製された。ロッドサンプルは長さ150mm、そして径が3〜5mmの範囲の寸法であった。使用したHTSCサンプルは純粋な(Bi,Pb)SrCaCu10+xのもの及び10質量%の銀を伴ったものであった。
【0029】
接点を作製する方法は以下に記載される。
【0030】
接点の構造を図1に示す。銀(3)金属の第一層を、チューブの温度を約120℃に上げ、金属スプレーガンの助けをかりて、溝(2)に付着させた。この銀層を250〜300℃の温度範囲で、2〜5時間の範囲の時間、空気中で加熱した。次に銀ホイル(4)を採用し、一表面はギザギザ(knurled)であって、そして第一スプレー付着銀層の周りに巻いた。このギザギザの表面が第一層に接しつづけるようにした。このホイルは1〜1.5mmの範囲の径の等間隔の孔で穿孔した。そして最大18の孔を3つの段で開けた。帯(ストリップ)は幅2cmで、長さ4〜6cmの範囲であった。外部接点を作製するために小さな巻かれない部分(6)を残して、ホイルを完全に巻いた後に、銀の第三層(5)を、HTSCサンプルの温度を120℃に維持した状態で、金属スプレーガンの助けをかりて、付着させた。最終の接点システムは、空気中で、100〜150時間の範囲の時間、830〜850℃の温度範囲で加熱した。その後このHTSCサンプルを冷却した。これら全てのサンプルの外部接続は編んだ銅線によって銀の金属リングへ接続した。
【0031】
この上記手順で作製された接点の抵抗率は4点プローブ法により測定し、そして表−1にまとめた。
【0032】
4点プローブ法のために、電圧タップは電流接点の近くで超伝導体に直接ハンダづけした。2つのワイヤーをその電流接点に取り付け、一方は電流を流すためのものであり、他方は接点の表面における電圧を検知するためのものであった。他方の電圧タップは電流接点の近くで超伝導体に直接ハンダづけした。測定精度は約±10%であった。測定はサンプル温度が77Kと4.2Kで、磁場がある場合とない場合の両方で行った。
【0033】
金属スプレーガンによって付着した第一層と穿孔銀ホイルとから本質的に構成される二層構造も随意的に用意した。最終組み立て品は空気中で830〜850℃の温度範囲で100〜150時間の範囲の時間加熱した。しかしながら、接点抵抗は10−5Ωの範囲であることを観測した。
【0034】
低い比抵抗の材料およびHTSCケーブルは77Kにおいて大電流輸送を要求する超伝導磁石や他の非超伝導装置にエネルギーを与えるために使用することが可能である。銅の比抵抗は10−9Ω−mのオーダーである。チューブ状の伝導体の特徴は材料の零損失および低熱伝導率によるものである。
【0035】
特に電流輸送において非常に低い出力損失または低い熱負荷を要求する装置、つまりは低接点抵抗のチューブ伝導体が不可欠である。例えばその閉回路系が10Kの温度を発する凍結剤フリーの磁力系の場合のように、1Wより大きなあらゆる熱負荷が有害となり、チューブ状の伝導体だけが使用される。
【0036】
低接点抵抗の接合部の重要性はこれらの装置において極めて重大である。また低い熱伝導率は銅の1/10であり、大輸送電流を従来どおりに使用する場合の凍結剤の損失を避けるための第一候補となる。
【0037】
本発明の新規性は10−7〜10−6Ωの低接点抵抗、及び凍結剤に全く熱負荷を加えることなく少なくとも2時間連続的に200アンペアの電流移送する能力にある。
【0038】
前記新規性は、三層を組み立てる工程を採用すること、及び金属スプレーガンによる付着銀層の間に挟んだ穿孔銀ホイルを使用することという自明でない進歩性によって得られる。
【実施例】
【0039】
以下の例は説明だけの目的で挙げられており、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。
【0040】
例1
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは305mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザ(knurled)であった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場での接点抵抗を測定し、そして得られた値は5.1x10−6Ωであった。
【0041】
例2
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは300mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場での接点抵抗を測定し、そして得られた値は2.02x10−7Ωであった。
【0042】
例3
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは300mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。4.2Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は1.5x10−8Ωであった。
【0043】
例4
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは300mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで0.09テスラの印加磁場で測定した接点抵抗は4.8x10−7Ωであった。
【0044】
例5
銀を伴わない(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは300mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は6.09x10−7Ωであった。
【0045】
例6
銀を伴わない(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは300mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は2.4mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。4.2Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は8.5x10−8Ωであった。
【0046】
例7
銀を伴わない(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは305mmであり、そしてこのチューブの外径は12.4mmであり、壁厚は1mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで0.03テスラの印加磁場で測定した接点抵抗は9.5x10−7Ωであった。
【0047】
例8
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは200mmであり、そしてこのチューブの外径は30.8mmであり、壁厚は2.8mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は3.8x10−7Ωであった。
【0048】
例9
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のチューブを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このチューブの長さは200mmであり、そしてこのチューブの外径は30.8mmであり、壁厚は2.8mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。4.2Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は2.3x10−8Ωであった。
【0049】
例10
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のロッドを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このロッドの長さは150mmであり、そしてこの外径は3mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は3.7x10−7Ωであった。
【0050】
例11
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のロッドを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このロッドの長さは150mmであり、そしてこの外径は3mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。4.2Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は4.05x10−8Ωであった。
【0051】
例12
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のロッドを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このロッドの長さは150mmであり、そしてこの外径は5mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。77Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は3.0x10−7Ωであった。
【0052】
例13
10質量%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+x高転移温度超伝導体のロッドを採用し、そしてその端部に溝を作製した。このロッドの長さは150mmであり、そしてこの外径は5mmであった。第一銀層をこの溝に熱金属スプレーガンにより120℃の温度で付着し、続けて250℃の温度で2時間加熱した。幅2cmの銀金属ホイルを採用し、そして孔径1mmの18個の孔の穿孔を3つの段それぞれに行った。このホイルの一表面はギザギザであった。それからこの銀ホイルのギザギザの面が第一銀層に接触する状態で、このホイルを第一銀層の周りに巻いた。その後にこの第二銀層を熱金属スプレーガンにより120℃の温度で第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルとを組み合わせたものに付着した。この三層構造の全体を空気中で100時間830℃で焼結した。この銀接点への電気接点を確立するために、端部に穿孔された銀ホイルの端部に孔を開け、そして大電流導線を接続した。4.2Kで零印加磁場で測定した接点抵抗は4.7x10−8Ωであった。
【0053】
前述の例に記載された手順で作製した接点の抵抗率は4点プローブ法で測定し、そして表−1にまとめた。
【0054】
4点プローブ法のために、電圧タップは電流接点の近くで超伝導体に直接ハンダづけした。2つのワイヤーをその電流接点に取り付け、一方は電流を流すためのものであり、他方は接点の表面における電圧を検知するためのものであった。他方の電圧タップは電流接点の近くで超伝導体に直接ハンダづけした。測定精度は約±10%であった。
【0055】
これらの全てのサンプルの外部接続は編んだ銅線によって銀の金属リングへ接続した。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高転移温度超伝導体に低接点抵抗の接点を製造する方法であって、該超伝導体の端部に溝をつくること、第一銀層を金属スプレーガンにより120℃の温度で付着すること、前記の付着銀層を200〜250℃の温度範囲で2〜5時間の範囲の時間加熱すること、穿孔された銀ホイルを前記加熱された第一銀層に巻くこと、第二銀層を金属スプレーガンにより120℃の温度で付着すること、前記第一銀層と巻いた穿孔銀ホイルと第二銀層とを組み合わせたものを830〜850℃の温度範囲で空気中で100〜150時間の範囲の時間加熱し結果として該超伝導体との接合部を得ること、を含んでなる方法。
【請求項2】
高転移温度超伝導体が長さ200〜305mmの範囲にある中空筒状チューブである、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
チューブの壁厚が1〜3mmの範囲にある、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
チューブの外径が10〜20mmの範囲にある、請求項2に記載された方法。
【請求項5】
高転移温度超伝導体が長さ200〜305mmの範囲にある中実ロッドである、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
高転移温度超伝導体が純粋な(Bi,Pb)SrCaCu10+xである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された方法。
【請求項7】
高転移温度超伝導体が10%の銀を伴う(Bi,Pb)SrCaCu10+xである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された方法。
【請求項8】
請求項1に記載された方法によって製造される接点であって、零印加磁場で77Kのときに該接点抵抗が3.07x10−6〜3.0x10−7Ωの範囲にある接点。
【請求項9】
零印加磁場で4.2Kのときに該接点抵抗が1.5x10−8〜8.5x10−8Ωの範囲にある、請求項8に記載された接点。

【図1】
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【公開番号】特開2010−205717(P2010−205717A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212155(P2009−212155)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2007−505644(P2007−505644)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)