説明

高輝度放電ランプを製造するための方法

外被によって取り囲まれ、且つ、キセノンのような希ガスとイオン化充填剤とを包含する放電空間を封入する壁を有する細長いセラミック製の放電容器を含み、電極が放電空間内の両端部に配置され、放電アークが放電経路に沿って電極間に維持され得る高輝度放電ランプを製造する方法であって、放電容器の光透過性を向上するために、放電容器を無機粒子の懸濁液に接触して配置し、懸濁液が壁内の微細孔に進入し、よって、壁の表面を塗工するという特別な特徴を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外被によって取り囲まれ、且つ、キセノンのような希ガスとイオン化充填剤とを包含する放電空間を封入する壁を有する細長いセラミック製の放電容器を含み、電極が放電空間内の両端部に配置され、放電アークが放電経路に沿って電極間に維持され得る高輝度放電ランプを製造する方法に関する。本発明は、この方法に従って製造される高輝度放電ランプにも言及する。
【背景技術】
【0002】
そのようなプロセス及びそのような高輝度放電ランプは周知である。
【0003】
既知の高輝度放電ランプは、セラミック放電容器、即ち、光透過材料として透明な多結晶Al(PCA)から成る放電容器を有する。そのような放電容器は、スリップ注型法、ゲル鋳造法、圧力鋳造法のような従来的な成形技法を通じてしばしば製造される複雑な形状の製品である。これらの全ての鋳造技法は、離型時に放電容器の壁が大幅に粗面化されるという不利点を有する。そのような粗面化された壁は、光が壁の表面で散乱されるという効果を有する。表面での光の散乱は、放電容器の光の全透過率(TT)にほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、全前方透過率(TFT)は大幅に低下され得ると共に、放電容器の実インライン透過率(RIT)はそのような表面散乱によって強く劣化される。上記の光散乱効果を可能な限り最小限化するために、放電容器の壁の表面は研磨される。
【0004】
ここに全文を引用する同一発明者の”Transparent alumina: a light-scattering model” (J. Am. Ceram. Soc., 86 (3) 480-486 (2003))と題する論文に記載されているように、光散乱は、粒界、微細孔(pore)、及び、所謂放電容器の壁内に存在する二次位相包有物でも起こる。TFT、TT、及び、RIT量は、前記論文に記載されるように測定される。具体的には、実インライン透過率(RIT)は、光の単色波長を用いて最大限でも0.5°の開口角に亘って測定される。引用するJ. Am Ceram. Soc., 86 (3) 480-486 (2003)、並びに、国際公開公報WO04/007398号、及び、WO04/007397号、並びに、欧州特許公報EP1053983A2に記載されるように、不透明ではなく透明なPCAを得るために、平均粒径は十分に小さくあるべきであり、微小孔は回避されるべきか或いは十分に小さくあるべきであり、二次位相包有物は不在であるべきであるか或いは十分に小さくあるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
面倒な研磨ステップを使用せずに上記の光散乱が除去されるという意味で、従来技術のこの不利点を除去することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本明細書の導入部に記載されるような方法は、本発明に従って、放電容器の光透過性を向上するよう、放電容器を無機粒子の懸濁液に接触して配置し、懸濁液が前記壁内の微細孔に進入することによって、壁の表面を塗工するステップを含むことを特徴とする。具体的には、懸濁液が含浸又は吹付け操作で放電容器の表面に塗布される。含浸操作中、事前焼結されるものの依然として多孔性の放電容器が、微細に分布された無機粒子の希釈された懸濁液中に含浸されるので、懸濁液の液体媒体、好ましくは水が、放電容器の壁中の微細孔内に吸収され、壁の表面で無機粒子の蓄積を生じさせる。このように形成される塗膜は、初期的な粗い表面を平滑にする。Al、YAG(YAl12)、Y、AlON、PLZT’s(Pb−La−Zr−Ti酸化物)等のような半透明又は透明な多結晶材料から成るセラミック製放電容器に上述の手順を適用し得る。無機材料は、Al粒子、YAG(YAl12)粒子、Y粒子、AlON粒子、及び、PLZT(Pb−La−Zr−Ti酸化物)粒子の群から選択されるのが好ましい。
【0007】
本発明に従った方法の1つの好適実施態様によれば、塗膜が放電容器のセラミック製壁の一体的な溶融部分となるために、塗工された放電容器は引き続き焼結される。好ましくは、焼結は、1150〜1500℃の間で変化する焼結温度で行われる。より高い焼結温度は、所謂熱エッチングを招き得る、即ち、放電容器の外側及び内側で粒界から離れる材料の移動の故に、表面は荒れ得る。
【0008】
本発明に従った方法のさらなる好適実施態様において、無機粒子はAl粒子であり、ここで、焼結材料中のAl粒状物は、0.3〜10ミクロンの間で変化する平均粒径を有する。この場合には、気孔率は実質的にゼロ(<0.01%)である。これは0.3ミクロンの平均粒径を備える80%から10ミクロンの平均粒径の場合には6%までの理論上の実インライン透過率の値に対応し、0.3mmと等しい容器の壁厚及び640nmと等しい波長をとる。追加的な表面散乱が生じないよう、表面が十分に平滑であると推定するならば、全前方透過率は、全ての場合において86%である。
【0009】
本発明は、外被によって取り囲まれ、且つ、キセノンのような希ガスとイオン化充填剤とを包含する放電空間を封入する壁を有する細長いセラミック製の放電容器を含み、電極が放電空間内の両端部に配置され、放電アークが放電経路に沿って電極間に維持され得る高輝度放電ランプにも関する。そのような既知の高輝度放電ランプは、本発明に従って、無機粒子の塗膜が、放電容器のセラミック製壁の一体的な溶融部分を形成し、一体的な溶融部分は、放電容器の完成されたセラミック製壁の気孔率が、少なくとも0.01%よりも大幅に小さいよう、微細孔充填効果を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に従った高輝度放電ランプの1つの好適実施態様において、統合された溶融部分は、放電容器の完成されたセラミック製壁が、(0.3mmの壁厚及び640nmの実インライン透過率のために、)98%より多い全透過率を有し、全前方透過率が80%よりも多く、且つ、実インライン透過率が6%〜80%の間に位置するよう、表面平準化及び滑面化効果を有する。
【0011】
本発明に従った高輝度放電ランプのさらなる好適実施態様において、前記ランプは投影目的のためにランプ組立体内に取り付けられる。後者のランプ組立体は、具体的には、車両ヘッドライト又はプロジェクタ(beamer)である。
【0012】
図面に示される好適実施態様を参照して、本発明に従った高輝度放電ランプの上記の及びさらなる特徴を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1において、放電ランプは、多結晶酸化アルミニウムの管状の光透過性セラミック放電容器3と、互いに対向して放電容器3に進入する第一電流導体40及び第二電流導体50とを有する。各導体40,50は、容器3中の電極(electrode)40,50を支持している。前記電極はタングステンから成り、電流導体40,50に溶接されている。
【0014】
セラミックシール34,35が、電流導体40,50の周りを気密に封止している。放電容器3は、希ガスとしてのキセノンを含むイオン化充填剤と、ナトリウム及び希土類ヨウ化物を含む金属ハロゲン化物とを有する。放電容器3は、実質的に円筒形の透明な外被1によって取り囲まれている。
【0015】
電流導体40,50の外端部は、接続線8,9に接続され、接続線は、シール34,35の外側に延び、且つ、外被1の端壁を貫通している。一方の接続線8は、取付ベース2内の第一電極(electric pole)に直接的に接続され、他方の接続線9は、帰線19に接続されている。帰線は、外被1と平行に延在し、取付ベース内の第二電極(electric pole)に接続されている。帰線19は、セラミック絶縁遮蔽110によって取り囲まれている。
【0016】
150mmサイズのアルファアルミナ粒子(Taimei、TM−DAR)から成る懸濁液が、湿式ボールミル粉砕又は超音発生のような従来的技法によって分散され、分散剤(例えば、硝酸)で安定化される。懸濁液の容積分率φは、0.025であるように取られる。0.35の気孔率pを有する同一種類の粒子から成る複雑形状のランプ外被が、酸素中で600℃にか焼され、且つ、容量分率φ5で懸濁液中に浸漬された。外被の壁厚yは、1mmであった。塗膜の気孔率がpであるとき、達成可能な最大塗膜厚さdは、以下の式によって与えられる。
【数1】

本件に関してそれは7ミクロンと等しい。方程式(1)中の因数1/2は、外被が外側及び内側で被覆されているという事実に起因する。浸漬時間を減少することによって、塗膜厚さをdまで任意の所望値に調節し得る。放電容器の初期表面粗さRa,iと比べて厚い塗膜dの場合、粗さは球面のサイズによって決定され、球面のサイズは、非焼結状態において、少なくとも1/8Dであり、ここで、Dは、球面のサイズである。表面粗さRは、以下によって定められる。
【数2】

ここで、Rは、以下の図(図3)に示されるように、塗布面にある場所iにおける仮想中心線lまでの距離である。
【0017】
塗膜を備えるランプ外被は、塗膜の割れ又は層間剥離なしに、1200℃で99%の密度に焼結される。最終的な焼きしまりは、200MPaのアルゴンで12時間に亘って、1200℃で熱間静水圧圧縮成形(HIP)されることによって達成される。1200℃の焼結温度で、粒界の熱エッチングは、乱反射する光散乱を引き起こすほどの表面の荒れを生じさせない。HIP後、小さな平均粒径(〜0.5ミクロン)は高い表面平滑性と相俟って光散乱の顕著な抑制をもたらすので、本体は透明になる。
【0018】
図2a及び2bは、原子顕微鏡を用いて撮影された写真を示しており、写真2aは、焼結放電容器(従来技術)の壁の研磨面の上面図であり、写真2bは、上述のような本発明に従って得られた放電容器の壁の含浸塗工された焼結面を示す上面図である。研磨面のRは約7nmであるのに対し、含浸塗工面は9nmのRによって特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従ったランプを示す側面図である。
【図2a】従来技術に従って研磨された図1に示されるランプの放電容器の壁の表面を顕微鏡で示す上面図である。
【図2b】本発明に従って含浸塗工された図1に示されるランプの放電容器の壁の表面を顕微鏡で示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被によって取り囲まれ、且つ、キセノンのような希ガスとイオン化充填剤とを包含する放電空間を封入する壁を有する細長いセラミック製の放電容器を含み、電極が前記放電空間内の両端部に配置され、放電アークが放電経路に沿って前記電極間に維持され得る高輝度放電ランプを製造する方法であって、
前記放電容器の光透過性を向上するために、前記放電容器を無機粒子の懸濁液に接触して配置し、該懸濁液が前記壁内の微細孔に進入することによって、前記壁の表面を塗工するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記懸濁液は、含浸又は吹付け操作において前記放電容器の前記表面に塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塗膜が前記放電容器の前記セラミック製壁の一体的な溶融部分となるために、前記塗工された放電容器は引き続き焼結される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塗工された放電容器は、1150〜1500℃の間で変化する焼結温度で焼結される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無機粒子は、Al粒子であり、焼結材料中のAl粒状物は、0.3〜10ミクロン(μm)の間で変化する平均粒径を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
外被によって取り囲まれ、且つ、キセノンのような希ガスとイオン化充填剤とを包含する放電空間を封入する壁を有する細長いセラミック製の放電容器を含み、電極が前記放電空間内の両端部に配置され、放電アークが放電経路に沿って前記電極間に維持され得る高輝度放電ランプであって、
無機粒子の塗膜が、前記放電容器の前記セラミック製壁の一体的な溶融部分とされ、該一体的な溶融部分は、前記放電容器の完成されたセラミック製壁の気孔率が、少なくとも0.01%よりも大幅に小さいよう、微細孔充填効果を有することを特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項7】
前記放電容器の前記完成されたセラミック製壁が、(0.3mmの壁厚及び640nmの波長のために、)98%よりも多い全透過率、80%より上の全前方透過率、及び、6%〜80%の間に位置する実インライン透過率を有するよう、前記一体的な溶融部分は、表面平準化及び滑面化効果を有する、請求項6に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項8】
投影目的のためにランプ組立体内に取り付けられる、請求項6又は7に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項9】
車両ヘッドライト内に取り付けられる、請求項8に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項10】
プロジェクタ内に取り付けられる、請求項8に記載の高輝度放電ランプ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−538355(P2007−538355A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501416(P2007−501416)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050700
【国際公開番号】WO2005/088679
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】