説明

高輝度放電ランプ

本発明は、バーナ2が配されている外側エンベロープ1を担持するベース4を有している、車両−光投影システムのための高輝度放電ランプであって、バーナ2は、電極22、23が内部に突出している放電チャンバ21を有しており、放電チャンバ21には、不活性ガス、金属ハロゲン化合物の混合物、及び所謂「ソルトレーク」25である塩貯留25を少なくとも入れられている、高輝度放電ランプに関する。外側エンベロープ1は、自身の幅が外側エンベロープ1の周りに90°と180°との間の角度を覆っている外側エンベロープ1の少なくとも40%の長さにわたって、光を遮蔽していると共に、外側エンベロープ1のソルトレーク25に隣接する側に延在しているストリップの形状のコーティング31を有している。本発明は、この種類の高輝度放電ランプを少なくとも1つ有する自動車のヘッドランプのための投影システムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナが配されている外側エンベロープを担持するベースを有する、車両光投影システムのための高輝度放電ランプであって、前記バーナは、2つの電極がこの内部に突出している放電チャンバを有しており、前記放電チャンバには、不活性ガス、金属ハロゲン化合物の混合物及び塩貯留(salt reservoir)(所謂「ソルトレーク(salt lake)」)が少なくとも入れられている、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラメントランプが自動車の分野において長く使用されているが、これらと同様に、フィラメントランプを超えて示す光収率の相当な改善により、車両のヘッドランプのための光源としてますます使用されているのは、高輝度ガス放電ランプである。既知の放電ランプにおいて、非常に明るい光を発するガス放電は、密封された放電容器の2つの電極間に生成される。
【0003】
本発明の目的に関して、例えば、ロービーム照明機能を実施するもののような、車両用のヘッドランプは、例えば、純粋なロービームヘッドランプ又は組み合わせられたハイビーム/ロービームヘッドランプのような、明るい/暗い境界を生成する全てのヘッドランプである。
【0004】
ヘッドランプは、通常、空間の全ての方向において殆ど同じ色の可視光を発するランプを取り付けられており、この場合、通常生成されるものは、均一な色において照明される道路空間であることを意味している。青みがかった光は、前記道路空間の突出している対象(例えば、交通標識)からより良好に反射され、従って、即ち時間的に早い時点において、この目的のために前記道路空間を照明している車両の運転者によって知覚されることができるにもかかわらず、他方では、前記青みがかった光は、望ましくない仕方において、交通、特に接近する交通の目をくらますことが知られている。増大している程度において、高輝度放電ランプは、自動車の正面のヘッドランプのための投影システムにおいて使用されている。この種類の投影システムは、リフレクタ及びレンズによって本質的に形成され、光源は、前記リフレクタと前記レンズとの間に配されている。前記光源によって発される光の一部は、前記レンズ上へ直接的に発され、このうちの一部は、前記リフレクタに向かって発され、ここから、前記一部は、前記レンズ上に直接的に又は間接的にの何れかにおいて反射される。こうして、この投影レンズは、前記ヘッドランプからの光が所望の要件を満たすように設計されている。
【0005】
既知の放電ランプの不利な点は、当該ランプが、ほぼ水平位置に取り付けられている場合、光が上下両方向に発されることにある。この場合において下方向に発される光の少なくとも一部は、更に、通常、この種類のランプ内に存在する塩貯留(所謂「ソルトレーク」)において屈折する。このことが起こるときに生じる、指向されていない、特に黄色の、散在光は、望ましくない。この光の一部が、接近する交通が位置されている領域に進み、このとき前記接近する交通の目をくらまし得るからである。更に、明/暗の境界のコントラストが、この散乱光によって低減される。更に、前記既知のランプは、前記光が全方向に発されるにもかかわらず前記レンズの前記プロジェクタ領域上に反射されるような、大きさであるリフレクタを必要とする。このことは、相当な全体的な大きさであるリフレクタを生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が、対処方法を提供することを目的とするのは、これらの問題である。本発明の基礎をなしている目的は、発される光の全体量に対して、より低い割合の散乱光を道路空間内に発する高輝度ガス放電ランプであって、より大きなコントラストが、明暗の前記境界において得られるのを可能にし、前記リフレクタが、より小さい大きさにおいて作られるのを可能にする高輝度放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、添付の請求項1に記載のフィーチャによって達成される。
【0008】
本発明は、発される光の全体量に対して、より低い割合の散乱光を道路空間に発する高輝度放電ランプであって、より大きなコントラストが、前記明暗の境界において得られるのを可能にすると共に、前記リフレクタが、より小さい大きさにおいて作られるのを可能にする高輝度放電ランプを提供する。光を遮蔽するストリップの形状におけるコーティングは、前記ソルトレークから到来する散乱光が前記リフレクタに到達するのを防止する。前記ストリップは、例えば、楕円、長方形又は不規則な幾何学的な形のような、種々の形状に構成されることができる。この驚くほど簡単な解決策によって、可視光は、下向きに発されない。結果として、望ましくない散乱光も、生成されない。従って、明/暗の境界におけるコントラストは、散乱光が存在しないので、改善される。指向されていない、特に黄色の、この種類の散乱光による他の道路利用者の如何なる目の眩みも、回避される。前記ヘッドランプから到来する前記光の知覚される色に関して、見えるものは、より明るい、特により青色又は白色に見える光である。
【0009】
本発明の更なる形態において、ストリップの形状におけるコーティングは、前記外側エンベロープの回転軸と、前記外側エンベロープの回転軸に対して垂直であると共に前記ソルトレークを通って延在する軸とによって規定される仮想的な面に対して対称となるように設計される。均一な照明は、この手段によって達成される。
【0010】
本発明の1つの形態において、更に、光を遮蔽すると共に、一部環状の形態において前記外側エンベロープの周りに延在する少なくとも1つのコーティングが、更に設けられている。「一部環状」なる語が後続するものにおいて意味されているものは、前記ランプを完全に囲んでいるわけではない領域であって、これが「環状」であるが、部分的にだけこのようである場合もあり得て、即ち「環」は、閉じた環ではなくても良い。このことは、前記ランプが投影システムに適応化されるのを可能にする。前記ランプの、発せられた光が前記リフレクタの前記反射領域の外側に指向される領域は、遮蔽され、このことは、散乱光の可能性を防止する更なる手段である。
【0011】
本発明の更なる形態において、前記ベースに向かって通じている方向における環状コーティングの境界は、ベースから出て行く電極の自由端によって実質的に規定されている。前記環状コーティングは、好ましくは、前記ベースから出て行く方向において、前記外側エンベロープを完全に遮蔽している。このことは、散乱光が発されるのを防止する有効な仕方である。
【0012】
本発明の更なる形態において、環状コーティングは、前記ベースと前記ベースに隣接している電極の自由端との間に配される。前記環状コーティングから前記放電チャンバまでの距離は、好ましくは、前記外側エンベロープの長さの10分の1以上である。このようにして達成されるものは、前記光源が、前記ベースの領域内の非反射表面から遮蔽されることである。有利には、前記環状コーティングは、前記外側エンベロープの本体を、前記本体が前記ベースの近くにある領域において完全に遮蔽することにある。
【0013】
本発明の更なる形態において、少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部は、フィルタの形態である。このことは、前記光の黄色成分がフィルタリングされることを可能にする。
【0014】
本発明の1つの形態において、少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部は、反射表面の形態にある。このことは、前記光源が部分的に遮蔽されるのを可能にするのと同時に、前記光源からの入射光は、所望の領域に反射される。
【0015】
本発明の有利な形態において、少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部は、二層形態であり、黒色層が、前記バーナから出て行く方向における青色の反射層に設けられている。この手段によって、前記ソルトレークからの黄色光は、前記青色の反射層によって青色において反射され、黄色光は、この層を通過し、次いで、当該層の下に位置する黒色層によって吸収される。このようにして達成されるものは、光収率の損失を伴うことなく、指向される照明である。
【0016】
本発明は、自動車のヘッドランプのための投影システムであって、発される光の全体量に対して、より低い割合の散乱光を道路空間に発すると共に、より大きなコントラストが明−暗境界において得られるのを可能にし、前記リフレクタが、より小さい大きさにおいて作られることも可能にする自動車のヘッドランプのための投影システムにも関する。本発明によれば、この目的は、添付の請求項12に記載のフィーチャによって達成される。前記外側エンベロープを選択的にマスキングすることによって、光が入射する領域を構成することが可能であり、この結果として、前記投影システムのリフレクタが、かなり小さい量の全体的な空間を受け入れるように設計されている。このことは、特に、前記光源の放出の角度の低減によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】高輝度放電ランプの側部からの模式図である。
【図2】図1における線II−II上の断面である。
【図3】本発明による高輝度放電ランプを有する投影システムの模式図であり、光線がたどる経路を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の他の形態及び変形は、添付の従属クレームの残りの部分において規定されている。本発明の実施例は、添付図面に示されており、以下に詳細に記載されている。図面の説明は以下の通りである。
【0019】
実施例として選択される当該放電ランプは、バーナ2が配されている外側エンベロープ1を有しており、前記外側エンベロープはベース4に接続されている。
【0020】
この高輝度放電ランプは、ほぼ水平な取り付け位置において示されており、「ソルトレーク」25は、放電チャンバ21の底部の領域に位置されている。このランプは、バーナ2(石英ガラスから成る)を有しており、バーナ2は、光を透過すると共に真空密封を有する。バーナ2は、放電チャンバ21を包囲している。放電チャンバ21には、少なくとも1つの不活性ガス(特にキセノン)を有するガスのイオン化混合物、及び金属ハロゲン化合物の混合物を入れられている。放電チャンバ21の通常の仕方において互い対向して配されているのは、2つの電極22、23である。2つの電極22、23間の明確な距離は、放電チャンバ21の中心も位置されている中心において、放電経路を形成している。
【0021】
電極22は、通常の仕方において電流導体221に接続されており、電極23は、電流導体231に接続されており、電流導体231は、前記ランプの長手方向の軸に対してほぼ平行に、外側エンベロープ1の外側において、ベース4へ続いている戻りポール24に接続されている。
【0022】
外側エンベロープ1の外側の表面上に、ソルトレーク25に隣接してこの側部において、配されているのは、ストリップの形状のコーティング31である。コーティング31は、青色反射層332によって形成され、青色反射層332には黒色層331が設けられている。ストリップの形状のコーティング31は、特に、吸収性又は反射性コーティングであるフィルタによって形成されることができる。良好な結果は、鏡状又は反射性の層が設けられている青色フィルタによって達成されている。
【0023】
ストリップの形状のコーティング31は、外側エンベロープ1の回転軸と、外側エンベロープ1の回転軸に垂直である共に「ソルトレーク」を通って延在している軸とによって規定されている仮想面に対して対称であるように設計されている。この2つの端部において、ストリップの形状のコーティング31は、環状の形態のそれぞれの層32、33と結合している。ベース4に向かって続いている方向において、環状層32との境界は、前記ベース及び環状層32から離れている電極23の自由端によって実質的に規定されており、ベース4から出て行く方向において、外側エンベロープ1の大きな割合を遮蔽する。環状コーティング33は、ベース4と、前記ベースに隣接している電極22の自由端との間に配されている。環状コーティング33から放電チャンバ21までの距離は、この場合において、外側エンベロープ1の長さのほぼ8分の1である。
【0024】
電極22、23間に生成されるアークによって発される光は、環状層32、33によって投影システム5のリフレクタ5の反射領域に限定される。ストリップの形状におけるコーティング31は、下向きの方向に発せられる光を遮蔽し、前記光の青色成分は反射され、従って、低いレベルの損失電力のみが、指向される白色光により達成されるであろう高い光収率を可能にする。
【0025】
投影システムの光収率にとって重要であるのは、前記リフレクタ上に入射する光の割合である。アーク26によって発される光の選択的な遮蔽及び反射/フィルタリングによって指向される白色光の生成は、前記リフレクタの大きさが減少されるのを可能にし、前記投影システムによって占有される全体的な空間が小さくされるのを可能にする。同時に、ソルトレーク25によって生成される散乱光及び黄色光は、除去される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両光投影システムのための高輝度放電ランプであって、バーナが内部に配されている外側エンベロープを担持しているベースを有しており、前記バーナは、2つの電極が内部に突出している放電チャンバを有しており、前記放電チャンバには、不活性ガス、金属ハロゲン化合物の混合物、及び所謂ソルトレークである塩貯留を少なくとも入れられている、高輝度放電ランプにおいて、前記外側エンベロープは、光を遮蔽すると共に、自身の幅が前記外側エンベロープの周りにおける90°と180°と間の角度を覆っている前記外側エンベロープの少なくとも40%の長さにわたって、前記外側エンベロープの前記ソルトレークに隣接している側に延在しているストリップの形状におけるコーティングを有していることを特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項2】
ストリップの形状における前記コーティングが、前記外側エンベロープの回転軸と、前記外側エンベロープの回転軸に対して垂直であると共に前記ソルトレークを通って延在する軸とによって規定される仮想面に対して対称であるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項3】
光を遮蔽すると共に、少なくとも一部環状の形態において前記外側エンベロープの周りに延在している少なくとも1つのコーティングが更に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項4】
前記ベースに向かって続く方向における環状コーティングの境界は、前記ベースから離れている前記電極の自由端によって実質的に規定されていることを特徴とする、請求項3に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項5】
前記環状コーティングは、前記ベースから出ている方向において前記外側エンベロープを完全に遮蔽していることを特徴とする、請求項4に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項6】
環状コーティングは、前記ベースと、前記ベースに隣接している前記電極の自由端との間に配されていることを特徴とする、請求項3乃至5の何れか一項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項7】
前記環状コーティングから前記放電チャンバまでの距離が前記外側エンベロープの長さの10分の1以上であることを特徴とする、請求項6に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項8】
前記環状コーティングは、前記本体が前記ベースに隣接している領域において前記外側エンベロープの本体を完全に遮蔽することを特徴とする、請求項6又は7に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項9】
少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部が、フィルタの形態であることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項10】
少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部が、反射表面の形態であることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項11】
少なくとも1つのコーティングの少なくとも一部が、前記バーナから出ている方向において黒色層が青色層に設けられている二層形態であることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか一項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の高輝度放電ランプを少なくとも1つ有する、自動車ヘッドランプのための投影システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−504644(P2011−504644A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534583(P2010−534583)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054847
【国際公開番号】WO2009/066244
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】