説明

高輝度放電灯の劣化度合検出方法及び検出装置並びに照明器具

【課題】従来よりも早い段階で高輝度放電灯の劣化度合を検出する。
【解決手段】光束(照度)が減少している試験ランプ、つまり、劣化度合が進んでいる試料3,2ほど、グロー放電時間が長くなっていることがわかる。これは電極が損耗することにより、実効的な放電ギャップが変化したため、若しくは電極内容物と放電物質の変化が進み、プラズマの密度が上がり難くなるためと考えられる。試験ランプの運転履歴によらず、光束(照度)の減少に応じてグロー放電時間が長くなっているので、グロー放電時間から高輝度放電灯(メタルハライドランプ)の劣化度合を判断することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどの高輝度放電灯の劣化度合を検出する検出方法及び検出装置並びに、当該検出装置を搭載した照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどの高輝度放電灯(HIDランプ)が寿命末期に達したことを検出する方法として、特許文献1記載の検出方法が提案されている。
【0003】
特許文献1記載の検出方法は、高輝度放電灯から放射される光束を光電変換素子で計測し、当該光電変換素子で変換された電圧値(光束に比例した電圧値)がしきい値以下に低下したときに、当該高輝度放電灯が寿命末期に達したと判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−283280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、高輝度放電灯は、数キロボルトの始動電圧が印加されて放電が開始した後、グロー放電からアーク放電に移行して安定点灯状態になる。上記従来例では、アーク放電に移行した後の高輝度放電灯の光束量(電圧値)に基づいて寿命末期に達しているか否かを判断している。そのため、寿命末期に達している高輝度放電灯に対しても、少なくとも通常の始動期間(グロー放電からアーク放電に移行するまでに要する期間)が経過するまでは、点灯装置から電力が供給されることになり、無駄な電力が消費されるという問題や点灯回路に過大な負担が掛かるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、従来よりも早い段階で高輝度放電灯の劣化度合を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の劣化度合検出方法は、高輝度放電灯の劣化度合を検出する劣化度合検出方法であって、前記高輝度放電灯にグロー放電が生じている時間を計測し、当該グロー放電時間の長さに基づいて前記高輝度放電灯の劣化度合を検出することを特徴とする。
【0008】
この劣化度合検出方法において、前記高輝度放電灯から放射される光束を検出することで前記グロー放電時間を計測することが好ましい。
【0009】
本発明の劣化度合検出装置は、高輝度放電灯の劣化度合を検出する劣化度合検出装置であって、前記高輝度放電灯にグロー放電が生じている時間を計測するグロー放電時間計測手段と、当該グロー放電時間計測手段で計測される前記グロー放電時間の長さに基づいて前記高輝度放電灯の劣化度合を判断する判断手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この劣化度合検出装置において、前記グロー放電時間計測手段は、前記高輝度放電灯から放射される光束を検出することで前記グロー放電時間を計測することが好ましい。
【0011】
本発明の照明器具は、高輝度放電灯を保持する器具本体と、前記高輝度放電灯を点灯する点灯回路と、請求項3又は4の劣化度合検出装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この照明器具において、前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合が所定の上限値を超えたときに前記点灯回路を停止又は出力を減少させる制御装置を備えることが好ましい。
【0013】
この照明器具において、前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合を報知する報知手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高輝度放電灯の劣化度合検出方法及び検出装置並びに照明器具は、従来よりも早い段階で高輝度放電灯の劣化度合を検出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る高輝度放電灯の劣化度合検出方法を説明するための説明図である。
【図2】本発明に係る高輝度放電灯の劣化度合検出装置、並びにその検出装置を搭載した照明器具の実施形態を示すブロック図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】本発明に係る蛍光灯の劣化度合検出装置、並びにその検出装置を搭載した照明器具の別の実施形態を示すブロック図である。
【図5】同上の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の技術思想をメタルハライドランプの劣化度合を検出する検出方法、検出装置、照明器具に適用した実施形態について説明する。但し、本発明に係る検出方法等で劣化度合が検出可能な高輝度放電灯はメタルハライドランプに限定されるものではなく、高圧水銀ランプや高圧ナトリウムランプなどの高輝度放電灯(HIDランプ)全般が該当する。
【0017】
まず、本発明に係る劣化度合検出方法の基本原理を説明する。本発明者らは、パナソニック製の調光用メタルハライドランプ(型番:ME150CE-W-D)を試験ランプとして、次のような実験を行った。試験ランプには、新品のもの(試料1)、10分点灯・20分消灯の運転モードで180時間点灯し、未使用時と比較して光束(照度)が20%減少しているもの(試料2)、通常の連続点灯で1000時間点灯し、未使用時と比較して光束(照度)が40%減少しているもの(試料3)を用意した。そして、常温(25℃)の実験室内において、試験ランプ(試料1〜3)をベースアップ方向に設置して10分間点灯した後に消灯して自然冷却させ、再点灯した際の放電現象を、高速度カメラにて1000枚/秒の速度で撮影した。さらに、冷却時間(消灯時間)を変化させることで試験ランプの発光管の始動時の温度を調整し、試験ランプがグロー放電からアーク放電に移行するまでの時間(グロー放電時間)を測定した。
【0018】
上述した実験で得られた各試験ランプ(試料1〜3)毎の冷却時間とグロー放電時間との関係を図1に示す。図1では、横軸を冷却時間、縦軸をグロー放電時間とし、試料1を「○」、試料2を「△」、試料3を「□」で表している。冷却時間が短いと発光管が高温のままで再点灯されるためにグロー放電時間が相対的に短くなるが、全ての試料1〜3において、冷却時間が長くなるとグロー放電時間も長くなることが確認できた。そして、光束(照度)が減少している試験ランプ、つまり、劣化度合が進んでいる試料3,2ほど、グロー放電時間が長くなっていることがわかる。これは電極が損耗することにより、実効的な放電ギャップが変化したため、若しくは電極内容物と放電物質の変化が進み、プラズマの密度が上がり難くなるためと考えられる。試験ランプの運転履歴によらず、光束(照度)の減少に応じてグロー放電時間が長くなっているので、グロー放電時間から高輝度放電灯(メタルハライドランプ)の劣化度合を判断することが可能である。しかも、従来例のように光束の減少量から高輝度放電灯の寿命末期を判断する方法と比較して、より早い段階で高輝度放電灯の劣化度合を判断(検出)することができる。
【0019】
図2は、上述した劣化度合検出方法を実現する検出装置を搭載した照明器具を示している。この照明器具は、商用交流電源ACから電源供給を受けてメタルハライドランプ10を点灯(矩形波点灯)する点灯回路1と、メタルハライドランプ10に始動電圧を印加する始動回路2と、制御部3と、報知部4と、器具本体5とを備える。
【0020】
点灯回路1は、商用交流電源ACの交流出力を直流出力に変換する電力変換回路や、直流出力を交番して低周波の矩形波交流出力をメタルハライドランプ10に供給する極性反転回路などで構成されている。また、始動回路2はパルストランスの2次側に誘起されるパルス状の高電圧(始動電圧)をメタルハライドランプ10に印加するものである。但し、このような点灯回路1及び始動回路2は従来周知であるから、詳細な構成及び動作の説明は省略する。また、器具本体5は、例えば、金属板などによって矩形板状又は箱状に形成され、点灯回路1、始動回路2、制御部3、報知部4を保持して天井や壁などに取り付けられるものである。
【0021】
制御部3は、例えば、マイクロコンピュータやメモリなどで構成されている。そして、制御部3では、商用交流電源ACからの電源供給が開始されると、点灯回路1を動作させるとともに始動回路2を制御してメタルハライドランプ10にパルス状の始動電圧を印加させる。図3(a)に示すように、メタルハライドランプ10がグロー放電からアーク放電に移行するにつれて、メタルハライドランプ10に流れる電流(ランプ電流)が増大している。故に、制御部3ではランプ電流を検出するとともに、ランプ電流の大きさがアーク放電の放電電流に応じたレベルを超えた時点で始動回路2を停止する。ここで、始動回路2の動作時間Txは、メタルハライドランプ10がグロー放電している時間(グロー放電時間)にほぼ一致していると考えられる。したがって、本実施形態では、制御部3が始動回路2の動作時間Txを計測し、この動作時間をグロー放電時間とみなしている。
【0022】
而して、メタルハライドランプ10の劣化度合が進むにつれ、グロー放電時間Txが長くなる。故に、制御部3が始動回路2の動作時間(グロー放電時間)Txを計測するとともに、その計測時間Txを多段階に設定されたしきい値と比較することでメタルハライドランプ10の劣化度合を複数段階で判断することができる。報知部4は、例えば、複数個の発光ダイオードを具備している。そして、この報知部4は、制御部3の制御の下で同時に発光させる発光ダイオードの個数によってメタルハライドランプ10の劣化度合を報知する。例えば、劣化度合が進むにつれて同時に発光させる発光ダイオードの個数が増加する。なお、本実施形態においては、制御部3がグロー放電時間計測手段及び判断手段に相当し、この制御部3によって劣化度合検出装置が構成されている。
【0023】
上述のように本実施形態の照明器具によれば、高輝度放電灯(メタルハライドランプ10)の劣化度合が報知部4で報知されるので、不点灯状態になる前にメタルハライドランプ10の交換を促すことができる。また、劣化度合が所定の上限値Tlimを超えたとき(図3(b)参照)、制御部3が点灯回路1を停止又は出力を減少させれば、寿命末期のメタルハライドランプ10を点灯させることに伴って点灯回路1にかかる負担を軽減することができる。なお、本実施形態では制御部3が制御装置に相当する。
【0024】
図4は、本発明に係る照明器具の別の実施形態を示している。本実施形態は、メタルハライドランプ10から放射される光束を検出することでグロー放電時間を計測する点に特徴がある。メタルハライドランプ10の近傍に光電変換素子6が設置されており、この光電変換素子6の出力が制御部3に取り込まれている。メタルハライドランプ10がグロー放電からアーク放電に移行する過程で光束が大幅に増大するので、図5に示すように、光電変換素子6の出力もグロー放電からアーク放電に移行する時点で大きく上昇する。したがって、制御部3では、光電変換素子6の出力に基づいてグロー放電時間Txを計測することができる。なお、グロー放電時間Txの計測手段以外の構成や動作は、上述した先の実施形態と共通であるから、詳細な発明は省略する。
【符号の説明】
【0025】
1 点灯回路
2 始動回路
3 制御部
4 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度放電灯の劣化度合を検出する劣化度合検出方法であって、前記高輝度放電灯にグロー放電が生じている時間を計測し、当該グロー放電時間の長さに基づいて前記高輝度放電灯の劣化度合を検出することを特徴とする高輝度放電灯の劣化度合検出方法。
【請求項2】
前記高輝度放電灯から放射される光束を検出することで前記グロー放電時間を計測することを特徴とする請求項1記載の高輝度放電灯の劣化度合検出方法。
【請求項3】
高輝度放電灯の劣化度合を検出する劣化度合検出装置であって、前記高輝度放電灯にグロー放電が生じている時間を計測するグロー放電時間計測手段と、当該グロー放電時間計測手段で計測される前記グロー放電時間の長さに基づいて前記高輝度放電灯の劣化度合を判断する判断手段とを備えることを特徴とする高輝度放電灯の劣化度合検出装置。
【請求項4】
前記グロー放電時間計測手段は、前記高輝度放電灯から放射される光束を検出することで前記グロー放電時間を計測することを特徴とする請求項3記載の高輝度放電灯の劣化度合検出装置。
【請求項5】
高輝度放電灯を保持する器具本体と、前記高輝度放電灯を点灯する点灯回路と、請求項3又は4の劣化度合検出装置とを備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項6】
前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合が所定の上限値を超えたときに前記点灯回路を停止又は出力を減少させる制御装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の照明器具。
【請求項7】
前記劣化度合検出装置で検出される劣化度合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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