説明

高速・高周波用IC部品の基板構造

【目的】 プリント基板とこれに面実装するIC部品の特性インピーダンスを高速信号に対応して整合できるようなIC部品の基板構造を得る。
【構成】 IC部品の基板構造において、一様な厚さのセラミック基板11を逆U字形に焼成する。信号端子リード14とアース端子リード15をセラミック基板11の湾曲部を含む両端部外面に密着して配設する。セラミック基板11の内面全面にアース導体16を密着接合し、その突出端を内側に折り曲げてその一方にアース端子リード15の下端部を接合し、両折曲部外面に半田メッキ膜17を設ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、面実装形の高速・高周波用IC部品がその信号端子部において、装着するプリント基板と安定した特性インピーダンス整合が得られるようにした基板構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、面実装形IC部品における信号端子部の端子接続構造は図2に示す構成例のものが一般に知られている。図2は側断面図を示しており、印刷配線板(以下P・C・Bという)1の上面中央部にはICチップ2が搭載され、また、両端縁部にはそれぞれ信号端子リード3及びアース端子リード4がP・C・B1表面上に印刷された導体箔5を介して配設されている。なお、6はボンデングワイヤーで、ICチップ2はこのボンデングワイヤー6を介して導体箔5を経てそれぞれ信号端子リード3及びアース端子リード4と接続され、電気的に導通されている。7はプラスチックカバーで前記部品全体を保護している。
このように構成されたIC部品はその信号端子リード3及びアース端子リード4をプリント基板(図示せず)の対応する接続部に半田接続することによって、プリント基板の送受信、電源電圧供給及びグランドアース接続が可能になる。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のIC部品は比較的遅い伝送速度の信号には対応できていたが、近年、伝送信号の高速化・高周波化が進み、プリント基板や実装IC部品に対しても高速信号を伝送するための対応が要求される情勢になり、上記構成のIC部品では高速信号を伝送するために必要な特性インピーダンスの整合がなされないという問題点があった。これを具体的に示すと、高速信号を移送する場合伝送線路上でその物理定数である特性インピーダンスを一定に保ち、いわゆるインピーダンス整合を図らねばならない。このため、IC部品等を実装するプリント基板レベルではマイクロストリップライン構造やストリップライン構造を伝送線路として用いることにしているが、このようなプリント基板に実装される部品レベルではまだ構造的対策が考慮されていないのが実情である。このため、プリント基板とこれに電気的接続がなされる面実装IC部品とでは特性インピーダンスの整合がとれないため、高速信号をプリント基板の伝送線路と既存のIC部品との間で正常に送受信するには技術的に不十分であった。
【0004】
本考案はこのような従来の技術の有していた、プリント基板の伝送線路と既存のIC部品との間に起きる特性インピーダンスの不整合によって高速信号の正常な送受信がなされないという問題点を除去するため、IC部品の基板を一定誘電率の誘電体例えばセラミック材とし、これを断面が一様な厚さの逆U字形に焼成し、さらに、その内側にプリント基板と導通させるためのアース導体を設け、プリント基板との安定した特定インピーダンス整合が得られる伝送線路構造を有するIC部品を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本考案の構成を、実施例に対応する図1を用いて説明すると、本考案は、面実装IC部品の基板構造であって、断面が一定の厚さの逆U字形でその外面中央にICチップ12の搭載部があるように構成されたセラミック基板11と、この基板11の両端部外面にそれぞれ密着して配列された信号
端子リード14及びアース端子リード15と、前記基板11の内面全面に密着し両突端部は内側に折り曲げられて一方にはアース端子リード15が接合し、外面には半田メッキ膜が施されたアース導体16とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】
このように構成されたものにおいては、セラミック基板11が断面逆U字形のセラミック材で焼成されたものであり、その外面の両端部の湾曲部11bにおいても、信号端子リード14及びアース端子リード15がそれぞれ密着して配設され、かつ、内面には全面に亘ってべたアース導体16が密着されているから、安定した特性インピーダンスが得られ、高速・高周波信号の送受信を行うことができる。
また、セラミック基板11の厚さ及び誘電率の調整によって伝送線路の特性インピーダンスを所望の値に選択実施することができる。
さらに、IC部品のべたアース導体16の先端折曲部16aによって、面実装したプリント基板のアースとの広い導通面積が得られ、従来に比べて安定かつ確実なアースが得られる。
【0007】
【実施例】
以下、本考案の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本考案に係る高速・高周波用IC部品の基板構造の一実施例を示す側断面図である。同図において、基板11は誘電体としてのセラミック材で作られており、断面が一様な厚さの逆U字形に焼成されている。外面中央部11aにはICチップ12搭載用凹部があり、両端の湾曲部11bは一定曲率で湾曲し平板部と同一の厚さに形成されている。13,14はそれぞれセラミック基板11上に印刷された導体箔及び密着された信号端子リードで、このリード14の下端部は外側に折り曲げられている。15はアース端子リードで信号端子リード14と同様にセラミック基板11に密着され、下端部は内側に折り曲げられてセラミック基板11の内面全面に密着されたべたアース導体16と接合され、また、アース導体16の両端16a,16aは内側に折り曲げられ、その外面には半田メッキ膜17が施されている。なお、18はボンデング・ワイヤーでICチップ12と導体箔13との間を電気的に接続しており、19はIC部品表面を保護するためのカバーで図示していないが、その四隅の端縁部にはそれぞれセラミック基板11に引掛ける爪を有している。
上記のように構成したので、一様な厚さのセラミック基板11を挟んで、上下から信号端子リード14とアース端子リード15が密着して対設されているから、これらにより決定されるユニットキャパシタンス値などはほぼ一定となり、IC部品の特性インピーダンスは導体箔13,信号端子リード14の厚さと幅及びセラミック基板11の厚さと誘電率などのパラメータに支配されるようになる。
従って、本実施例によれば、従来構造(図2参照)の端子間隔を変えることなしに、セラミック基板11の厚さと誘電率を選択することによって特性インピーダンスの調整が可能となり、マイクロストリップライン構造等の伝送線路を用いた高速・高周波に対応可能なプリント基板側の特性インピーダンスとも整合可能になるから、プリント基板と面実装IC部品との接続点における反射が起らなくなり、最大の電力等を移送できるようになる。
【0008】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によれば、以下に記載するような効果を奏する。
セラミックなどの誘電体基板を一様な厚さの断面逆U字形に焼成し、その両湾曲部に沿って信号端子リード及びアース端子リードを配設するとともに、その内面一面にアース導体を配設したことにより、端子リードに沿って安定した回路素子が得られるようになるので、高速・高周波信号の送受信に好適である。
また、誘電体のセラミック基板はその厚さと誘電率の調整により、伝送線路の特性インピーダンスを任意の値に設計することが可能になり、プリント基板との特性インピーダンス整合が容易になる。
さらには、IC部品のべたアース導体により、プリント基板との導通が広い面積で行えるので、従来よりも安定したグランドを達成することができ、アース効果が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例を示す側断面図である。
【図2】従来の構成例を示す側断面図である。
【符号の説明】
11 セラミック基板
12 ICチップ
13 導体箔
14 信号端子リード
15 アース端子リード
16 アース導体
17 半田メッキ膜
18 ボンデングワイヤー
19 カバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 面実装IC部品の基板構造において、前記基板を所定誘電率の誘電体で断面が一定の厚さの逆U字形に形成するとともに、その外面中央部にはICチップ搭載部を設け、この基板においてその両端部外面にはそれぞれ信号端子リード、アース端子リードを定着させるとともに、内面には全面にアース導体を密着させて前記アース端子リードを接続し、該アース導体の突端部は内側に折り曲げて外面に半田メッキ膜を施したことを特徴とする高速・高周波用IC部品の基板構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】実開平7−3141
【公開日】平成7年(1995)1月17日
【考案の名称】高速・高周波用IC部品の基板構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−29998
【出願日】平成5年(1993)6月4日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)