説明

高速向流クロマトグラフ装置

【課題】 分離効率の高められた高速向流クロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】 高速向流クロマトグラフ装置はコイル状カラムを備える。コイル状カラムは公転軸を中心に公転しつつ、自転軸を中心に自転する。コイル状カラムは、公転軸に対して自転軸がねじれの位置に位置するように配置されている。コイル状カラムは、ハブ、フローチューブ等から構成され、フローチューブのうち、ハブの胴部にコイル状に巻き付けられたコイル形状部には、ロキュラーチューブ2が用いられる。ロキュラーチューブ2は、複数の隔室4が直列状に連通形成された管内を有する。ロキュラーチューブ2は、例えば鉗子によって一定間隔dごとに狭窄部6を形成することによって作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の隔室が連通形成されたチューブを試料分離用のカラムに用いた高速向流クロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料溶液から効率良く目的物質を分離するため、固定相となる溶媒と移動相となる溶媒との間の分配係数の差を利用して試料溶液から目的物質を分離する高速向流クロマトグラフ装置が発展しつつある。高速向流クロマトグラフ装置は、固定相となる溶媒及び移動相となる溶媒とが導入されるチューブが螺旋状に巻かれたコイル状カラムを有し、コイル状カラムは公転軸を中心に公転するとともに自転軸を中心に自転する。高速向流クロマトグラフ装置は、特許文献1に記載されたようなコイル状カラムの自転軸が公転軸に対してねじれの位置に位置するタイプ(交軸型高速向流クロマトグラフ装置)や、自転軸が公転軸に対して略平行をなしたタイプがある。これらの高速向流クロマトグラフ装置によって、コイル状カラム内に導入された試料溶液から、固定相として導入された溶媒と移動相として導入された溶媒とのうちのいずれかにタンパク質等の目的物質を溶出することができた。
【特許文献1】特開2006−064533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の高速向流クロマトグラフ装置は、試料溶液からの目的物質の分離に多くの時間を要してしまうことがあり、より短時間で目的物質の分離が可能な高速向流クロマトグラフ装置が求められていた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、試料溶液からの目的物質の分離をより短期間で実行できる高速向流クロマトグラフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、コイル状カラムを形成するためのチューブとして、複数の隔室が直列状に連通配置された管内を有するチューブを用いることにより分離効率が向上することを発見し、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、チューブがコイル状に配設されたコイル状カラムを備えた高速向流クロマトグラフ装置であって、前記チューブは、複数の隔室と、隔室間に形成された、隔室の断面よりも小さい断面を有する連通開口とを長さ方向に沿って交互に管内に形成したものであること特徴とするものである。
前記連通開口の内径は、前記隔室の内径よりも小さくして連通開口の断面を隔室の断面よりも小さくすることを特徴とする。
【0006】
本発明の高速向流クロマトグラフ装置では、前記連通開口を長さ方向に一定間隔ごとに形成することが好ましい。
【0007】
本発明の高速向流クロマトグラフ装置では、公転軸に対して自転軸がねじれの位置に位置するようにコイル状カラムを配置することが好ましい。
【0008】
本発明の高速向流クロマトグラフ装置では、コイル状カラムは、断面の大きな複数の隔室と隔室間に形成された断面の小さな連通開口とが長さ方向に沿って交互に管内に形成されたチューブを、自転軸の周囲にコイル状に配設したものであることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明は、前記高速向流クロマトグラフ装置を用いて試料を処理する工程を含む、目的物質の分離方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することにより、コイル状カラムの理論段数を高めることができる。これによって試料溶液からの目的物質の分離にかかる期間の短縮化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の高速向流クロマトグラフ装置について説明する。本発明は、高速向流クロマトグラフ装置に使用されるコイル状カラムを、「ロキュラーチューブ」を用いて作製したものである。この「ロキュラーチューブ」は、複数の隔室と、隔室間に形成された、隔室の断面よりも小さな断面を有する連通開口とを、長さ方向に沿って交互に管内に形成したものである。ロキュラーチューブの構成材料、内径、外径、各狭窄部の形成間隔、断面形状等は下記に限らず適宜変更してよい。例えば、図1(a)に示すように、ロキュラーチューブ2は、管壁3、隔室4、狭窄部6、連通開口8を有する。隔室4は長さ方向Xに沿って複数形成されている。連通開口8は隔室4間に形成されており、これにより、管内2aには長さ方向Xに沿って隔室4と連通開口8とが交互に形成される。
【0012】
ロキュラーチューブ2は、例えば、管壁3の外径が2.5mm、内径が1.5mm、連通開口8が1.0mmのサイズに形成されている。ロキュラーチューブ2の構成材料としては、耐久性、対腐食性、対薬品性等の観点からフッ素樹脂製が好ましいが、適宜変更してよい。また、各狭窄部6間の間隔dは、例えば10〜50mmであり、好ましくは20mm〜40mmである。そして、隔室4は管内2aに規則正しく形成されている。狭窄部6では管壁3が内側に突出し、これにより管内2aに隔室4連通を仕切る連通開口8が形成される。連通開口8の内径は隔室4の内径よりも小さく、従って連通開口8の断面積A2は隔室4の断面積A1よりも小さい。これにより、連通開口8は各隔室4を区画する仕切りとして機能することが可能となる。連通開口8の内径に特に制限はなく、適宜調節するとよい。管内2aに隔室4と連通開口8を交互に設けたことにより、ロキュラーチューブ2は外径および内径が一定なノーマルチューブに比較して隔室4内に試料溶液を滞留させやすいものと考えられる。また、図1(b)に示すように、隔室4の内径を図1(a)のものよりも小さくし、あるいは狭窄部の間隔を図1(a)よりも短くすることができる。例えば、外径を2.0mm、内径を1.0mm、各狭窄部6の間隔dを20mmとしたロキュラーチューブ10を作製してもよい。
【0013】
ロキュラーチューブ2の作製方法としては、例えば、外径および内径が一定に形成されたノーマルチューブを一定間隔ごとに鉗子で挟み管内2aが狭められた狭窄部6を形成する方法が挙げられる。一定間隔ごとにノーマルチューブを鉗子でクランプし、この後にクランプを解除することにより、狭窄部6が一定間隔ごとに繰り返し形成され、管内2aに連通開口8が形成される。連通開口8が一定間隔で形成されることにより、連通開口8間に隔室4を形成することができる。
【0014】
なお、上記ではノーマルチューブを一定間隔ごとに鉗子でクランプすることで複数の隔室4が直列配置された管内を有するロキュラーチューブ2を作製したが、ロキュラーチューブの作製方法はこれに限らない。例えば、ロキュラーチューブをより効率的に量産したい場合には、チューブの肉厚を変更可能なノズルを備えた押出成形機を用いてロキュラーチューブを作製することもできる。図2に示すように、押出成形機14は外径を変えることなく肉厚を変更できるノズル16を備えており、このノズル16によって一定間隔ごとに肉厚部18が形成されたロキュラーチューブ23が押出成形される。肉厚部18の間には肉薄部19が形成され、これにより管内23aには隔室21と連通開口22とが交互に形成される。このように押出成形されるロキュラーチューブ23の肉厚を制御することで、管内に肉厚部18と肉薄部19とを形成することができ、肉厚部18が各隔室21間を区画する仕切りとして機能する。このように製造されたロキュラーチューブ23を用いることで、ユーザは鉗子でノーマルチューブに狭窄部を形成する手間が省け、より容易にコイル状カラムを形成することができる。また、上記では各隔室間に連通開口を1つだけ形成したが、隔室間の連通開口の数は複数でもよく、形状も任意である。ただし、隣り合う隔室間に形成された全ての連通開口の総面積よりも隔室の断面積を大きくして、連通開口部を、各隔室を区画する仕切りとして機能させる必要がある。
【0015】
また、上記の実施形態では、一定間隔ごとに狭窄部6を設けて複数の隔室4を管内に形成したが、隔室の形成態様はこれに限らない。例えば、40mm、30mm、20mmと順に狭窄部の形成間隔を周期的に変えて複数の隔室をチューブ内に形成する、あるいはランダムに狭窄部の形成間隔を変えて容量の異なる複数の隔室をチューブ内に形成してもよい。
【0016】
次にロキュラーチューブがコイル状に配設されるコイル状カラムについて説明する。後述する高速向流クロマトグラフ装置では複数の4つのコイル状カラムが搭載されるが、これらのコイル状カラムは同様な構造を備えている。図3(a)および(b)に示すように、コイル状カラム31はリール状に形成されたハブ40を備え、このハブ40の胴部41(図8参照)にロキュラーチューブ2が巻き付けられている。ハブ40の一端部及び他端部にはフランジ42が備えられ、各フランジ42にはそれぞれ水平シャフト(自転軸)50が形成されている。水平シャフト50は保持フレーム35(図7参照)に軸支され、コイル状カラム31の自転軸線S1は水平シャフト50の中心を通る。
【0017】
一方のフランジ42と他方のフランジ42との間は、例えば50mm離間し直径30mmの柱形状の胴部41が形成されている。胴部41の外周には、ロキュラーチューブ2が一方のフランジ42から他方のフランジ42に向けてコイル状に巻き付けられたコイル形状部72が形成される。コイル形状部72は例えば5層構造に形成され、このような多層構造のコイル形状部72を備えたマルチレイヤー型のコイル状カラム31が後述する公転軸の周囲に配置されている。
【0018】
なお、上記では、ロキュラーチューブ2をハブ40の胴部41の外周に巻き付けたマルチレイヤー型のコイル状カラム31を例示したが、コイル状カラムの形態はこれに限らず、適宜変更してよい。例えば、図4に示すように、ロキュラーチューブをコイル状に巻いたコイル状カラムを、コイル内を貫通する貫通軸が互いに略平行をなすように所定ポイントの周囲に周回配置したエキセントリック型のカラムを作製してもよい。また、図5に示すように、リング状に形成された複数のコイル状カラムを重ね合わせたトロイダル型のカラムを作製してもよい。さらに、図6に示すように、内側から外側に多層状に巻き重ねられた複数の渦巻き状カラムを重ね合わせたスパイラル型のカラムを作製してもよい。
【0019】
図7および図8は、4つのコイル状カラム31〜34を備えたカラムユニット60の態様を示す。図7および図8に示すように、カラムユニット60は、第1〜第4コイル状カラム31〜34、各コイル状カラム31〜34を回転自在に保持する保持フレーム35等を備える。公転軸線Rは垂直シャフト62の中心を貫き、垂直シャフト62の周りに第1〜第4コイル状カラム31〜34が順に配置されている。各コイル状カラム31〜34は、各自転軸線S1〜S4が公転軸線Rに対してねじれの位置に位置するように配置され、かつ自転軸線S1〜S4を含む平面は公転軸線Rに対して略垂直に交差する。
【0020】
垂直シャフト62は中空であってその両端は開口しており、垂直シャフト62の中空部62a内には、ロキュラーチューブ2と一体形成されたフローチューブ65が挿通可能となっている。垂直シャフト62には、中空部62a内のフローチューブ65を垂直シャフト外部に導出するための第1穿孔67と、垂直シャフト外部から中空部62a内にフローチューブを導入するための第2穿孔68とが形成されている。
【0021】
図8に示すように、ポンプ(図示省略)に接続され二相溶媒や試料溶液を送液する送液部70と、コイル状に巻かれて二相溶媒や試料溶液を流すための流路を形成する4つのコイル形状部72と、第1〜第4コイル状カラム31〜34の各コイル形状部72間を接続する中継部74と、第4コイル状カラム34のコイル形状部72から液体を排出するための排液部76とは、フローチューブ65によって一体に形成されている。フローチューブ65としては、例えば、内径1.0mmのテフロン(登録商標)製のフローチューブを用いてコイル形状部72を形成することができる。
【0022】
フローチューブ65の送液部70は、垂直シャフト62の一端から中空部62aに導かれ第1穿孔67まで中空部62aを通される。第1穿孔67から導出されたフローチューブ65はコイル状に成形されて第1〜第4コイル状カラム31〜34のコイル形状部72を形成する。各コイル形状部72間は中継部74によって接続され、これにより各コイル形状部72は直列に接続される。第4コイル状カラム34から延び出たフローチューブ65の排液部76は第2穿孔68から中空部62aに導入され、垂直シャフト62の他端の開口から装置本体82(図9参照)の底部88に向けて導出される。垂直シャフト62の他端から導出された排液部76は底部88を介して高速向流クロマトグラフ装置80の外部に導かれ、例えばディテクタ(図示省略)に接続される。
【0023】
各コイル状カラム31〜34は、送液側から、第1コイル状カラム31、第2コイル状カラム32、第3コイル状カラム33、第4コイル状カラム34の順に直列に接続されている。各ハブ40の胴部41の外周におけるフローチューブ65の巻き付け方向は下記態様に限らず、適宜変更してよい。フローチューブ65の巻き付け方向は、例えば、第1コイル状カラム31を供給側から排出側に向かって右巻き、同様に第2コイル状カラム32を左巻き、第3コイル状カラム33を右巻き、第4コイル状カラム34を左巻きとした。各コイル形状部72は例えば5層構造に形成され、このような多層構造のコイル形状部72を備えたマルチレイヤー型の第1〜第4コイル状カラム31〜34が公転軸Rの周囲に軸対称に配置されている。なお、各コイル状カラム31〜34のコイル形状部72は、巻き数(ピッチ数)が同一であり、各コイル状カラム31〜34の重量はカラムユニット60の組み立て時に予め同一になるように調整されている。
【0024】
各コイル状カラム31〜34の回転態様は、例えば、カラムユニット60が左回りに回転する場合、第1〜第4コイル状カラム31〜34は供給側から排出側に向かって時計方向に自転する。これにより、フローチューブ65が捩れることなく各コイル状カラム31〜34は公転しつつ自転することができる。なお、カラムユニット60や第1〜第4コイル状カラム31〜34の回転方向は上記に限らず、カラムユニット60を右周りに回転させ、第1〜第4コイル状カラム31〜34を供給側から排出側に向かって反時計方向に回転させてもよい。
【0025】
図9に示すように、高速向流クロマトグラフ装置80は、装置本体82と、カラムユニット60とから構成され、装置本体82の上部は蓋85によって覆われる。装置本体82はカラムユニット60を収容するための収容スペースを内部に有し、このスペース内にカラムユニット60が収められている。カラムユニット60は重心を通る垂直シャフト62を有し、垂直シャフト62の上下両端は装置本体82に軸支されている。これにより垂直シャフト62は公転軸として機能し、垂直シャフト62の中心を貫通する公転軸線Rを中心としてカラムユニット60を回転させることができる。
【0026】
装置本体82は側壁86、及びこの側壁86に連なる底部88等を有し、側壁86と底部88とによって断面略円形状の収容スペースが形成されている。収容スペース内にはピラー90が備えられ、ピラー90は底部88に固着されている。ピラー90は、カラムユニット60を回転自在に安定保持するためのフレーム95を支持する。
【0027】
底部88には動力供給部91を備え、動力供給部91はモータ及びこのモータの駆動を制御するモータコントローラ等を備える。このような構成により、動力供給部91は、カラムユニット60を公転軸線Rまわりに回転するための動力と、後述する各コイル状カラムを自転させる動力とを発生させることができる。なお、図示はしないが、装置本体82の外側にはモータの回転数を調節するための操作部が設けられ、ユーザはこの操作部を操作することで、モータコントローラを介してカラムユニット60の公転速度等を調節することができる。
【0028】
蓋85は装置本体82の上部に開閉自在に装着されている。蓋85は、フローチューブ65を高速向流クロマトグラフ装置80内部に導入するための導入孔93、装置本体82の収容スペース内に空気を送り込むための空気孔等を備え、収容スペース内に収容されたカラムユニット60の駆動に適するように構成されている。
【0029】
次に本発明の作用について説明する。高速向流クロマトグラフ装置80のフローチューブ65のうち、送液部70はポンプに接続され、排液部76はディテクタに接続される。水系等の二相溶媒を構成する上下層のいずれか一方の層を固定相としてフローチューブ65内に充填する。
【0030】
固定相溶媒の充填後、第1〜第4コイル状カラム31〜34の公転及び自転を開始して固定相溶媒をコイル形状部72内に固定する。各コイル状カラム31〜34を回転作動させた後、生体関連物質(目的物質)等を含む試料溶液を移動相溶媒とともに第1〜第4コイル状カラム31〜34のコイル形状部72内に送液する。コイル形状部72はロキュラーチューブ2によって作製されており、これにより第1〜第4コイル状カラム31〜34の理論段数が高められている。なお、ロキュラーチューブによって理論段数が高められるメカニズムについては完全に解明されてはいないが、ロキュラーチューブ2を用いることでコイル形状部72内の液体の撹拌性が高まることが関係しているものと思われる。自転、公転の回転速度、回転方向、回転時間は任意に設定できる。(例えば、特開2006―064533号公報等を参照)コイル形状部72内に導入された試料溶液中の生体関連物質等は、例えば、固定相と移動相との間で分配、分離され、移動相溶媒と共に溶出する。排液部76を介して排出される移動相はディテクタに送液され生体関連物質が検出される。生体関連物質としては、例えば、タンパク質、アミノ酸、DNAやRNAなどの核酸類、酵素等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0031】
上記の実施形態では、公転軸に対して自転軸がねじれの位置に位置するように各コイル状カラム31〜34が配置された高速向流クロマトグラフ装置80を例示したが、本発明はこれに限らない。例えば、図10に示すように、公転軸Rに対して各自転軸Sが平行に位置するようにコイル状カラムを配置した高速向流クロマトグラフ装置100に用いてもよい。
【実施例】
【0032】
図1で説明したロキュラーチューブを用いて作製されたコイル状カラム(図3参照)を備えた高速向流クロマトグラフ装置(図7〜9参照)を用いて試料溶液から生体関連物質を分離精製する実験を行った。
【0033】
実験1
ロキュラーチューブの作製
外径2.5mm、内径1.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブを40mm間隔で鉗子を用いてクランプした後にクランプを解除し、管内に複数の隔室が直列状に配置されたロキュラーチューブを作製した。同様に、外径2.5mm、内径1.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブを20mm間隔で鉗子を用いてクランプした後にクランプを解除し、管内に複数の隔室が直列状に配置されたロキュラーチューブを作製した。
【0034】
コイル状カラムの作製
作製されたロキュラーチューブをハブ40の胴部41の外周に5回周回させてマルチレイヤー型の5層のコイル状カラムを作製した。作製されたコイル状カラムを装置本体82に装着し高速向流クロマトグラフ装置80を作製した。
【0035】
実験条件
試料:標準タンパク質として、チトクロームC(2mg)、ミオグロビン(8mg)、リゾチーム(10mg)
水性二相溶媒:12.5%(w/w)ポリエチレングリコール1000−12.5%(w/w)KHPO水溶液
移動相:下層
回転(公転)速度:1000rpm、
公転方向:反時計方向
流速:0.4ml/分
検出:UV280nm
【0036】
結果
実験によって取得したクロマトグラムを図11に示し、取得した数値データを以下の表1に示す。
【表1】

【0037】
実験2
ロキュラーチューブの作製
外径2.0mm、内径1.0mmのテフロン(登録商標)製のチューブを40mm間隔で鉗子を用いてクランプした後にクランプを解除し、管内に複数の隔室が直列状に配置されたロキュラーチューブを作製した。また、同様に、外径2.0mm、内径1.0mmのテフロン(登録商標)製のチューブを20mm間隔で鉗子を用いてクランプした後にクランプを解除し、管内に複数の隔室が直列状に配置されたロキュラーチューブを作製した。
【0038】
コイル状カラムの作製
作製されたロキュラーチューブをハブ40の胴部41の外周に5回周回させて5層のマルチレイヤー型のコイル状カラムを作製した。作製されたコイル状カラムを装置本体82に装着し、高速向流クロマトグラフ装置80を作成した。
【0039】
実験条件
試料:標準タンパク質として、ミオグロビン(8mg)、リゾチーム(10mg)
水性二相溶媒:12.5%(w/w)ポリエチレングリコール1000−12.5%(w/w)KHPO水溶液
移動相:上層
回転(公転)速度:1000rpm、
回転方向:時計方向
流速:0.4ml/分
検出:UV280nm
【0040】
結果
実験によって取得したクロマトグラムを図12に示し、取得した数値データを以下の表2に示す。
【表2】


【0041】
結論
上層、下層のいずれの層を移動相とした場合でも、外径および内径が一定に形成されたノーマルチューブで分離した場合と比較して、ロキュラーチューブで分離した場合の方が理論段数を高くすることができる。これにより、ノーマルチューブと比較してロキュラーチューブはより高い分離度の達成が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】コイル形状部を形成するロキュラーチューブの部分断面図である。
【図2】ロキュラーチューブの量産方法の要部を説明する説明図である。
【図3】ロキュラーチューブをハブ外周にコイル状に巻き付けたマルチレイヤー型コイル状カラムの部分斜視図である。
【図4】ロキュラーチューブをコイル状に巻いた複数のコイル形状部を、コイル内を貫通する貫通軸が互いに略平行をなすように所定ポイントの周囲に周回配置したエキセントリック型カラムの概略的な斜視図である。
【図5】リング状に形成された複数のコイル状カラムを重ね合わせたトロイダル型カラムの概略的な斜視図である。
【図6】内側から外側に多層状に巻き重ねられた複数の渦巻き状カラムを重ね合わせたスパイラル型カラムの概略的な斜視図である。
【図7】カラムユニットを、自転軸S1〜S4を含む平面と垂直な方向から観察した説明図である。
【図8】第1〜第4コイル状カラムの接続態様を概略的に示したカラムユニットの説明図である。
【図9】高速向流クロマトグラフ装置の概略図である。
【図10】ロキュラーチューブを用いて作製されたコイル状カラムの自転軸が公転軸に対して平行をなすようにコイル状カラムを配置した高速向流クロマトグラフ装置の概略図である。
【図11】実験1の条件下で実施した分離実験の結果を示すチャートである。
【図12】実験2の条件下で実施した分離実験の結果を示すチャートである。
【符号の説明】
【0043】
2 ロキュラーチューブ
4 隔室
6 狭窄部
8 連通開口
10 ロキュラーチューブ
31 第1コイル状カラム
32 第2コイル状カラム
33 第3コイル状カラム
34 第4コイル状カラム
40 ハブ
41 胴部
42 フランジ
50 水平シャフト(自転軸)
60 カラムユニット
62 垂直シャフト(公転軸)
62a 中空部
65 フローチューブ
70 送液部
72 コイル形状部
74 中継部
76 排液部
80 高速向流クロマトグラフ装置
R 公転軸線
S 自転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブがコイル状に配設されたコイル状カラムを備えた高速向流クロマトグラフ装置であって、
前記チューブは、複数の隔室と、隔室間に形成された、隔室の断面よりも小さい断面を有する連通開口とを長さ方向に沿って交互に管内に形成したものである、高速向流クロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記連通開口を長さ方向に一定間隔ごとに形成した請求項1に記載の高速向流クロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記連通開口の内径は前記隔室の内径よりも小さい、請求項1または2に記載の高速向流クロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記コイル状カラムは公転しつつ自転するものであり、
公転軸に対して自転軸がねじれの位置に位置するように前記コイル状カラムを配置した請求項1〜3のいずれか1つに記載の高速向流クロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記コイル状カラムは、複数の隔室と、隔室間に形成された、隔室の断面よりも小さい断面を有する連通開口とが長さ方向に沿って交互に管内に形成されたチューブを、自転軸の周囲にコイル状に配設したものである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の高速向流クロマトグラフ装置。
【請求項6】
複数の隔室と、隔室間に形成された、隔室の断面よりも小さい断面を有する連通開口とが長さ方向に沿って交互に管内に形成されたチューブを、コイル状に配設したことを特徴とするカラム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の高速向流クロマトグラフ装置を用いて試料溶液を処理する工程を含む、試料溶液中の目的物質の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−107451(P2010−107451A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281852(P2008−281852)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第69回 分析化学討論会 講演要旨集、第21回 バイオメディカル分析科学シンポジウム 講演要旨集
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)