高速炉用燃料要素、高速炉および高速炉施設の建設方法
【課題】受動的な安全性を向上させる。冷却性能を向上させる。
【解決手段】燃料要素容器9内に金属燃料2を密封した燃料要素3を水又は水と水蒸気との2相流33中に設置すると共に、燃料要素3内に炉心冷却水例えば水蒸気又は水蒸気と水との2相流34を循環させる冷却管10を設け、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、炉心冷却水34と水又は水と水蒸気33との2相流により燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。
【解決手段】燃料要素容器9内に金属燃料2を密封した燃料要素3を水又は水と水蒸気との2相流33中に設置すると共に、燃料要素3内に炉心冷却水例えば水蒸気又は水蒸気と水との2相流34を循環させる冷却管10を設け、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、炉心冷却水34と水又は水と水蒸気33との2相流により燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動的安全性を有する高速炉用燃料要素に関する。また、本発明は、受動的安全性を有する高速炉と、その高速炉を備えた高速炉施設の建設方法に関する。さらに、本発明は、使用済み燃料の貯蔵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速炉にはより高いレベルの安全性が求められており、動的な機器を用いることなく外乱による影響を収束させる受動的な安全性が研究されている。例えば、特開平9−72980号公報に開示されている高速炉では、冷却材流量喪失等の異常が発生した場合、冷却材の流出によりガス空間の体積を膨張させて炉心からの中性子ストリーミングを促し、炉内に負の反応度を挿入するようにしている。
【0003】
また、もんじゅ等の高速炉では、ペレット状に成形した燃料を燃料被覆管に充填・密封して燃料要素とし、多数の燃料要素をラッパ管に挿入して燃料集合体を構成している。ラッパ管の下部にはエントランスノズルが設けられており、冷却材である液体ナトリウムはエントランスノズルのオリフィス孔よりラッパ管内に流入し、各燃料要素の間を流れながら除熱を行い上方に流出する。つまり、各燃料要素の外側を液体ナトリウムで冷却している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−72980号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高速炉や高速炉用燃料要素の安全性には原理・思想の異なる手段を多重に設けることが肝要であり、受動的な安全性についてさらなる技術開発が要請されている。
【0006】
また、もんじゅ等の高速炉ではペレット状の燃料を使用し、燃料要素の外側を液体ナトリウムによって冷却する構成であるが、この構成が全ての高速炉や高速炉用燃料要素について最適であるとは限らず、燃料要素の外側に加えて内側も冷却した方が良い場合もある。
【0007】
さらに、これらの高速炉を実用化する為には、高速炉施設を経済的に建設する必要があると共に、使用済み燃料の貯蔵を経済的に行なう必要もある。
【0008】
本発明は受動的な安全性に優れた高速炉および高速炉用燃料要素を提供することを目的とする。また、本発明は冷却性能に優れた高速炉および高速炉用燃料要素を提供することを目的とする。さらに、本発明は経済性に優れた高速炉施設の建設方法を提供することを目的とする。また、本発明は経済性に優れた使用済み燃料の貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の高速炉用燃料要素は、金属燃料と、金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触し、冷却管内の炉心冷却材と燃料要素容器外の水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されるものである。ここで、請求項2記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項3記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。以下、例えば、炉心冷却材が水蒸気又は水蒸気と水との2相流である場合を例に説明する。ただし、炉心冷却材が不活性ガス等である場合も同様である。
【0010】
したがって、金属燃料で生じた熱は冷却管と燃料要素容器とに伝えられ、冷却管内の炉心冷却材即ち水蒸気、又は水蒸気と水との2相流(以下、水蒸気/水2相流という)と、燃料要素容器の外側の水、又は水と水蒸気の2相流(以下、水/水蒸気/水2相流という)によって除去される。なお、説明を分かり易くするために、冷却管内に流す炉心冷却材即ち水蒸気又は水蒸気/水2相流を内側冷却材、燃料要素の周囲の水又は水/水蒸気2相流を外側冷却材という。
【0011】
内側冷却材による冷却能力は外側冷却材による冷却能力よりも圧倒的に高く、炉心を構成する金属燃料は内側冷却材によって主に冷却される。燃料要素の周囲に炉心冷却材として多量の冷却水を流すのではなく、水蒸気又は水蒸気/水2相流の状態にすることで水の割合を少なくした内側冷却材を燃料要素内を循環する冷却管内に流すようにしている。このため、金属燃料に対して水(減速材)の割合が少なくなり、内側冷却材による高速中性子の減速等による減少は僅かであり、炉心において高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。一方、冷却材としての流量は確保できるので、炉心を良好に冷却することができる。
【0012】
複数の燃料要素を並べて高速炉の炉心を構成しても良いが、小型の高速炉の場合等には燃料要素1つだけで炉心を構成しても良い。複数の燃料要素を並べる場合には、各燃料要素の間に隙間をあけて周囲の外側冷却材が循環できるようにする。外側冷却材は燃料要素を冷却することで加熱されて自然対流し、各燃料要素を外側から冷却する。つまり、本発明では、内側冷却材と外側冷却材を使用して燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。ただし、各燃料要素間に外側冷却材が流れると、それに応じて高速中性子が減速される等して減少するので、各燃料要素間の外側冷却材の流量は最大でも炉心の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて各燃料要素間の隙間の広さを決定する。一方、燃料要素1つだけで炉心を構成する場合にも、内側冷却材と外側冷却材を使用して、燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。
【0013】
何らかの原因によって内側冷却材による高速炉用炉心の冷却が困難になったとしても、燃料要素は外側冷却材中に設置されているので、この外側冷却材によって燃料要素を冷却することができる。内側冷却材として例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を、外側冷却材として水又は水/水蒸気2相流をそれぞれ使用しているので、内側冷却材と外側冷却材とが接触したとしても液体ナトリウムと水とが接触した場合のように激しく反応することはない。
【0014】
また、請求項4記載の高速炉は、燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、炉心冷却材と水又は水と水蒸気との2相流により燃料要素の内と外から冷却を行うものである。
【0015】
また、請求項5記載の高速炉は、水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、燃料要素をプール内に設置するものである。このように、外側冷却材を貯めたプール内に燃料要素を設置するようにしても良い。ここで、請求項6記載の高速炉のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項7記載の高速炉のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。以下、例えば、炉心冷却材が水蒸気又は水蒸気と水との2相流である場合を例に説明する。ただし、炉心冷却材が不活性ガス等である場合も同様である。
【0016】
したがって、炉心を構成する金属燃料は炉心冷却材としての冷却管内の内側冷却材によって主に冷却される。燃料要素の周囲に炉心冷却材として多量の冷却水を流すのではなく、水蒸気又は水蒸気/水2相流の状態にすることで水の割合を少なくした内側冷却材を燃料要素内を循環する冷却管内に流すようにしている。このため、金属燃料に対して水(減速材)の割合が少なくなり、内側冷却材による高速中性子の減速等による減少は僅かであり、炉心において高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。一方、冷却材としての流量は確保できるので、炉心を良好に冷却することができる。
【0017】
複数の燃料要素を並べて炉心を構成しても良いが、小型の高速炉の場合等には燃料要素1つだけで炉心を構成しても良い。複数の燃料要素を並べる場合には、各燃料要素の間に隙間をあけて周囲の外側冷却材が循環できるようにする。外側冷却材は燃料要素を冷却することで加熱されて自然対流し、各燃料要素を外側から冷却する。つまり、本発明では、内側冷却材と外側冷却材を使用して燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。ただし、各燃料要素間に外側冷却材が流れると、それに応じて高速中性子が減速される等して減少するので、各燃料要素間の外側冷却材の流量は最大でも炉心の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて各燃料要素間の隙間の広さを決定する。一方、燃料要素1つだけで炉心を構成する場合にも、内側冷却材と外側冷却材を使用して、燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。
【0018】
何らかの原因によって内側冷却材による炉心の冷却が困難になったとしても、燃料要素は外側冷却材中に設置されているので、この外側冷却材によって燃料要素を冷却することができる。内側冷却材として例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を、外側冷却材として水又は水/水蒸気2相流をそれぞれ使用しているので、内側冷却材と外側冷却材とが接触したとしても液体ナトリウムと水とが接触した場合のように激しく反応することはない。
【0019】
また、請求項8記載の高速炉は、冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を燃料要素の下部に設置すると共に、冷却管に炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするものである。
【0020】
したがって、炉心冷却材は水の状態で熱交換器に供給され、ここで加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流となった後、燃料要素内を循環して金属燃料を冷却する。冷却によって高温になった水蒸気又は水蒸気/水2相流は再び熱交換器に流入し、炉心冷却前の冷却水を加熱する。
【0021】
また、請求項9記載の高速炉は、熱交換器が燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体である。したがって、反射体を利用して熱交換器を構成することができる。反射体は、例えばSUS等のステンレス鋼等である。
【0022】
また、請求項10記載の高速炉のように、燃料要素が原子炉容器内に設置され、水又は水と水蒸気との2相流が原子炉容器内に貯められているものでも良い。このように、原子炉容器内に炉心を配置する高速炉にできる。また、請求項11記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、炉心冷却材を冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするようにしても良い。
【0023】
さらに、請求項12記載の高速炉施設の建設方法は、既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設するものである。
【0024】
例えば、軽水炉を備えるプラントでは、原子炉建屋内に原子炉格納容器を設置し、その中に原子炉容器を収容している。原子炉格納容器はもともと放射性物質の封じ込めを目的としたものであり、内部に水又は水と水蒸気との2相流を貯めることができる。この原子炉格納容器をプールとして転用することで、既存の原子炉施設を利用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設することができる。
【0025】
また、請求項13記載の高速炉施設の建設方法は、既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設するものである。
【0026】
例えば、軽水炉を備えるプラントでは、原子炉建屋内に原子炉格納容器を設置し、その中に原子炉容器を収容している。原子炉容器はもともと放射性物質の封じ込めを目的としたものであり、内部に水又は水と水蒸気との2相流を貯めることができる。この原子炉容器を使用することで、既存の原子炉施設を利用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設することができる。
【0027】
また、請求項14記載の発明は、請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素を高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0028】
請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素には燃料要素容器内を循環する冷却管が設けられている。この冷却管に冷却材を循環させることで、使用済み燃料を内部から冷却することができる。冷却管を通り抜けた冷却材は高温になっており、この熱を発電、熱利用施設の熱源等に利用することができる。
【0029】
また、請求項15記載の発明は、請求項4から11のいずれか1つに記載された高速炉の燃料要素を当該高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0030】
請求項4から11のいずれか1つに記載された燃料要素には内部を循環する冷却管が設けられている。この冷却管に冷却材を循環させることで、使用済み燃料を内部から冷却することができる。冷却管を通り抜けた冷却材は高温になっており、この熱を発電、熱利用施設の熱源等に利用することができる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の高速炉用燃料要素では、金属燃料と、金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触し、冷却管内の炉心冷却材と燃料要素容器外の水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されるようにしているので、内側冷却材としての炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を燃料要素内で良好に循環させることができ、金属燃料を内から良好に冷却することができる。また、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、内側冷却材と外側冷却材とによって燃料要素の内と外から冷却を行うようにしているので、冷却性能を向上させることができる。また、たとえ燃料要素の内からの冷却が不能になったとしても、燃料要素を外から冷却することができるので、受動的な安全性をより一層向上させることができる。また、たとえ内側冷却材である炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流と外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流とが接触しても激しく反応することはなく安全である。また、液体金属に比べて水や水蒸気は取り扱いが容易であり、冷却材として液体金属を使用する高速炉に比べてその構造を簡単なものにすることができる。さらに、冷却材として水や水蒸気を使用することは軽水炉等において既に長年の運用実績があり、技術的な蓄積がある。これを高速炉用燃料要素に適用することで、より一層安全性が高い高速炉用燃料要素を実現することができる。
【0032】
ここで、請求項2記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項3記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。
【0033】
また、請求項4記載の高速炉では、燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、炉心冷却材と水又は水と水蒸気との2相流により燃料要素の内と外から冷却を行うので、内側冷却材としての炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を燃料要素内で良好に循環させることができ、金属燃料を内から良好に冷却することができる。また、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、内側冷却材と外側冷却材とによって燃料要素の内と外から冷却を行うようにしているので、冷却性能を向上させることができる。また、たとえ燃料要素の内からの冷却が不能になったとしても、燃料要素を外から冷却することができるので、受動的な安全性をより一層向上させることができる。また、たとえ内側冷却材である炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流と外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流とが接触しても激しく反応することはなく安全である。また、液体金属に比べて水や水蒸気は取り扱いが容易であり、冷却材として液体金属を使用する高速炉に比べてその構造を簡単なものにすることができる。さらに、冷却材として水や水蒸気を使用することは軽水炉等において既に長年の運用実績があり、技術的な蓄積がある。これを高速炉に適用することで、より一層安全性が高い高速炉を実現することができる。
【0034】
また、請求項5記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、燃料要素をプール内に設置するようにしても良い。
【0035】
ここで、請求項6記載の高速炉のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項7記載の高速炉のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。
【0036】
また、請求項8記載の高速炉では、冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を燃料要素の下部に設置すると共に、冷却管に炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするので、炉心の熱を利用して炉心冷却材である水蒸気又は水蒸気/水2相流を発生させることができる。このため、炉心で発生させた熱をより有効に利用することができると共に、炉心冷却材としての流量の確保が容易である。
【0037】
また、請求項9記載の高速炉では、熱交換器が燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体であるので、反射体を利用して熱交換器を構成することができる。このため、別部材としての熱交換器が不要になり、製造コストを安くすることができる。また、高速炉を小型化することができる。
【0038】
また、請求項10記載の高速炉のように、燃料要素が原子炉容器内に設置され、水又は水と水蒸気との2相流が原子炉容器内に貯められているものでも良い。このように、原子炉容器内に炉心を配置する高速炉を構成することができる。また、請求項11記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、炉心冷却材を冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするようにしても良い。
【0039】
さらに、請求項12記載の高速炉施設の建設方法では、既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設するので、既存の原子炉施設を利用して、高速炉施設を建設することができる。このため、高速炉施設の建設に要する費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設の一部を有効活用できるので、その分だけ廃棄物を減らすことができて環境面でも優れている。さらに、老朽化した原子炉施設を再利用することができるので、原子力関係の施設を有効利用することができ、例えば原子炉の廃止措置に伴う放射線管理の負担等を軽減することができる。また、上述の効果を有する高速炉を備える高速炉施設を建設することができる。
【0040】
また、請求項13記載の高速炉施設の建設方法では、既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設するので、既存の原子炉施設を利用して、高速炉施設を建設することができる。このため、高速炉施設の建設に要する費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設の一部を有効活用できるので、その分だけ廃棄物を減らすことができて環境面でも優れている。さらに、老朽化した原子炉施設を再利用することができるので、原子力関係の施設を有効利用することができ、例えば原子炉の廃止措置に伴う放射線管理の負担等を軽減することができる。また、上述の効果を有する高速炉を備える高速炉施設を建設することができる。
【0041】
また、請求項14記載の使用済み燃料の貯蔵方法では、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するので、燃料要素容器内を循環する冷却管をそのまま利用して貯蔵中の使用済み燃料を冷却することができる。このため、低コストで使用済み燃料の崩壊熱を回収し熱エネルギーとして利用することができる。また、使用済み燃料を内部から冷却することができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。
【0042】
また、請求項15記載の使用済み燃料の貯蔵方法では、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するので、燃料要素内を循環する冷却管をそのまま利用して貯蔵中の使用済み燃料を冷却することができる。このため、低コストで使用済み燃料の崩壊熱を回収し熱エネルギーとして利用することができる。また、使用済み燃料を内部から冷却することができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0044】
図1に、本発明を適用した高速炉の実施形態の一例を示す。高速炉1は、金属燃料2を密封した燃料要素3をプール6内に設置すると共に、燃料要素3内に水蒸気又は水蒸気と水との2相流(水蒸気/水2相流)34を循環させて炉心27を冷却するものである。プール6内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。燃料要素3はプール6内に直接設置されている。
【0045】
なお、図1では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。各燃料要素3間の隙間7を流れるプール6内の水又は水と水蒸気の2相流(水/水蒸気/水2相流)33は高速中性子を減速させるので、高速炉1では負の反応度を与えることになる。このため、隙間7を流れる水の流量は最大でも炉心27の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて隙間7の広さを決定する。なお、本実施形態では、プール6内に貯める水又は水/水蒸気2相流33として、水33を使用する。ただし、水33に代えて、水と水蒸気とが混在した状態の水/水蒸気2相流33を使用しても良い。
【0046】
本実施形態では、炉心冷却材34として水(冷却材)を使用し、これを炉心27では水蒸気の状態又は水蒸気/水2相流の状態で使用する。炉心冷却材34としての水蒸気によって減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。また、炉心冷却材34としての水蒸気/水2相流は、水蒸気と高ボイド率の水とが混在した状態のものであり、減速材となる水の存在割合が小さく減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気/水2相流34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。即ち、水蒸気/水2相流34としては、高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる程度に高ボイド率の水と水蒸気とが混在したものを使用する。
【0047】
燃料要素3の横断面を図2に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器9と、燃料要素3内を循環し水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。燃料要素容器9内の金属燃料2の下には、例えばSUS等のステンレス鋼製の反射体29が設けられている。ただし、反射体29の材料はSUS以外のステンレス鋼でも良く、またステンレス鋼以外の材料でも良い。
【0048】
反射体29は熱交換器としても機能する。つまり、燃料要素3の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体29を熱交換器としても使用している。これにより、燃料要素3の下部に熱交換器が設置され、燃料要素3に炉心冷却材として冷却水34を供給し、後述するように炉心27冷却後の水蒸気又は水蒸気/水2相流34によって炉心27冷却前の液体状態の冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34にする。
【0049】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料、例えばジルコニウム合金やその他の材料を採用しても良い。冷却管10は、炉心冷却材34を循環させる流入管30と流出管31のいずれか一方より分岐して燃料要素3内に下から進入している。流入管30より分岐した冷却管(以下、流入側冷却管という)10と流出管31より分岐した冷却管(以下、流出側冷却管という)10とが1本ずつペアとなり、ペア毎に上端を連通させている。つまり、流入側冷却管10と流出側冷却管10とでU字管を構成している。各冷却管10の下端、具体的には流入側冷却管10の下端(上流端)と流出側冷却管10の下端(下流端)は反射体29を貫通している。冷却管10は反射体29に対して十分に接触しており、熱伝達が行われる。このように、金属燃料2と、金属燃料2を収容し、水又は水/水蒸気2相流33中に設置された燃料要素容器9と、燃料要素容器9内を循環し、水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備える高速炉用燃料要素3が構成される。
【0050】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0051】
燃料要素3は、例えば1.6mmの間隔(ただし燃料要素3の間隔。ピッチ間隔では100mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.1m×0.1m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば64本(図2では24本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば4mmである。冷却管10は、例えば13mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0052】
なお、実際には、例えば図3に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。金属燃料2は、例えば濃縮ウランとして10%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、ブランケット燃料は、例えば0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。
【0053】
プール6内はプール蓋20によって密閉されている。プール6内の水33の水面33aの上には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。水33の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0054】
プール6には、運転停止時にたとえ炉心冷却材34による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水33が蓄えられている。プール6内の水33の温度は、例えば常温である。なお、プール蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0055】
なお、プール6内の水33を冷却するプール冷却系を設け、高速炉1の通常運転時における水33の温度上昇や、運転停止時の水33の温度上昇を防止するようにしても良い。また、プール冷却系に代えて、二次冷却系との間で熱交換を行う熱交換器を設けても良い。
【0056】
プール蓋20の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図1では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、例えば冷却管10と並べらて設置された管32内に挿入される。即ち、制御棒や安全棒は燃料要素3内に挿入される。ただし、各燃料要素3間の隙間7に制御棒や案内棒を挿入するようにしても良い。
【0057】
次に、高速炉1の作動について説明する。
【0058】
流入管30を通じて液体状の炉心冷却材34即ち冷却水が供給され、熱交換器として機能する反射体29によって加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流(内側冷却材)34となる。ここで、供給される冷却水は例えば飽和温度に近い温度の冷却水であり、反射体29で加熱されることでただちに水蒸気又は水蒸気/水2相流34になり、この状態で炉心27へと進入する。つまり、炉心27の冷却は水蒸気34か、又は水蒸気/水2相流34によって行われるので、金属燃料2に対して減速材となる水の割合を少なくできて炉心冷却材34による高速中性子の減少は僅かであり、高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。
【0059】
反射体29で加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流34となった炉心冷却材34は運転中の炉心27の温度よりも十分低い。したがって、水蒸気又は水蒸気/水2相流34を使用して炉心27を冷却することができる。水蒸気又は水蒸気/水2相流34は流入側冷却管10→流出側冷却管10へと流れながら炉心27を冷却する。そして、炉心27を冷却して高温になった水蒸気34、又は炉心27を冷却して高温になり更に高ボイド率となった2相流34は反射体29を通過しながらこれを加熱した後、流出管31から流出する。この後、水蒸気又は水蒸気/水2相流34は、例えば図示しない気水分離器で気水分離され、分離した水蒸気のみを図示しない蒸気乾燥器で乾燥させた後、図示しない発電機の蒸気タービンに供給してこれを駆動し発電を行う。その後、水蒸気は図示しない復水器によって液体の状態に戻され、図示しないポンプによって吐出されて流入管30へと循環される。このように、高速炉1の通常運転時には、炉心27で発生した熱は炉心冷却材34を循環させる冷却系(以下、水/蒸気冷却系という)によって高速炉1の外へと伝えられ、炉心27の健全性が保たれる。
【0060】
また、燃料要素3はプール6内に設置されているため、プール6内の水(外側冷却材)33によっても冷却される。プール6内の水33は各燃料要素3間の隙間7を加熱されながら上昇し、自然対流によってプール6内を循環する。尚、プール6内の水33は隙間7では加熱されるため水蒸気/水2相流になっている場合がある。但し、燃料要素3間を抜けると周囲の水に冷却され水に戻る。なお、水33の温度が大きく上昇することが予測される場合等には上述したように図示しないプール冷却系や熱交換器を設けて水33の温度上昇を抑えるようにしても良い。
【0061】
このように、高速炉1では炉心冷却材34とプール6内の水33を使用して燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。
【0062】
ただし、炉心27の冷却能力は、プール6内の水33を利用した冷却系よりも炉心冷却材34を利用した水/蒸気冷却系の方が圧倒的に高い。このため、プール6内の水温は殆ど変化しない。また、炉心27で発生したエネルギーを例えば発電に有効利用することができる。
【0063】
高速炉1では核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、熱中性子を利用する場合に比べてプルトニウムの増殖率を大きくすることができる。このため、ウラン資源を有効利用することができると共に、炉心27を長寿命化することができる。
【0064】
また、高速炉1では、炉心冷却材34として水/蒸気を使用しているので、炉心冷却材として液体金属を使用する場合に比べて、その取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。
【0065】
水/蒸気冷却系に不具合が生じ高速炉1の運転が停止されると、炉心27の崩壊熱は金属燃料2から燃料要素容器9に伝わり、プール6内の水33によって除去される。各燃料要素3の間には僅かではあるが隙間7が存在しているので、プール6内の水33は隙間7を自然対流しながら燃料要素3を冷却する。プール6内には炉心27の崩壊熱を除去するのに十分な量の水が蓄えられているので、水を自然対流させることで炉心27の崩壊熱を除去し健全性を維持することができる。このため、受動的な安全性に優れている。
【0066】
この高速炉1では炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流34を使用しているので、たとえ炉心冷却材34がプール6内の水33に接触しても液体ナトリウムのように激しく反応することがなく、安全性に優れている。また、プール6内に燃料要素3を直接設置することが可能になり、構造を簡単にすることができる。
【0067】
本発明の高速炉1を備える施設21を新規に建設しても良いが、既存の原子炉施設22を改造しても良い。即ち、既存の原子炉施設22の原子炉格納容器23内から当該原子炉施設22の設備を撤去した後、原子炉格納容器23内に燃料要素3を設置すると共に水33を貯め、原子炉格納容器23をプール6に転用して高速炉施設21を建設することもできる。
【0068】
図4に、高速炉施設21の建設方法の一例を示す。図4(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。BWRプラント22では、原子炉建屋24内に原子炉格納容器23を設置し、その中に原子炉容器25を設置している。原子炉格納容器23内から原子炉容器25やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図4(B))。BWRプラント22では、燃料交換の際に原子炉格納容器23内に水を溜め原子炉容器25を水没させるため、原子炉格納容器23のプール6への転用は可能である。
【0069】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約40万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約4mになるので、原子炉格納容器23内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が1割増しの約40万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。なお、原子炉格納容器23の近傍には使用済燃料を一時的に保管するプール28があり、このプール28はそのまま利用できる。
【0070】
このように既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0071】
次に、本発明の使用済み燃料の貯蔵方法について説明する。高速炉1で使用した燃料要素3は使用済み燃料となるが、燃料要素3内には冷却管10が設けられているので、貯蔵時において冷却管10を利用して燃料要素3の崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして有効利用するものである。即ち、本発明の使用済み燃料の貯蔵方法は、冷却管10に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0072】
この使用済み燃料の貯蔵方法の一例を図11に示す。図11の例では、ガスタービン発電方式によって発電を行なっている。使用済み燃料である燃料要素3は、例えばコンクリートで作られた貯蔵建屋39内に並べられており、貯蔵建屋39によって密封されている。各燃料要素3の流入側冷却管10を供給管37に接続し、各燃料要素3の流出側冷却管10を排出管38に接続している。供給管37と排出管38は例えば発電用のガスタービン40に接続されている。貯蔵時に冷却管10内に循環させる冷却材は、例えば気体冷却材でも液体冷却材でも良い。気体冷却材としては例えばヘリウムガス、炭酸ガス、窒素ガス等の使用が、液体冷却材としては例えば水等の使用が可能である。
【0073】
図示しないポンプ等によって冷却材を供給管37→各燃料要素3→排出管38→ガスタービン40→供給管37へと循環させることで、各燃料要素3を冷却すると共に、各燃料要素3の崩壊熱を回収してガスタービン40で発電機41を駆動させて発電を行うことができる。即ち、使用済み燃料(燃料要素3)の崩壊熱を熱エネルギーとして有効利用することができる。なお、燃料要素3の外側には例えば冷却空気等が循環しており、燃料要素3の外側からも同時に冷却が行なわれる。ただし、燃料要素3の外側からの冷却を省略しても良い。
【0074】
本発明では、冷却管10に冷却材を循環させて燃料要素3の内側から崩壊熱を除去するので、効率よく崩壊熱を除去することができる。即ち、従来の使用済み燃料の貯蔵方法では、例えば特開2000−275395号公報に示す技術のように、使用済み燃料の外側からしか冷却を行うことができなかった。本願発明では、燃料要素3の外側からの冷却に加えて、内側からの冷却も行うことができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。また、燃料要素3の内側から崩壊熱を除去することができるので、隣り合う燃料要素3同士の間隔を狭くすることができ、燃料要素3を密に並べて貯蔵することができる。
【0075】
さらに、燃料要素3に予め設けられている冷却管10をそのまま利用することができるので、貯蔵時にわざわざ冷却管10を後付けする必要がなく、低コストで崩壊熱を熱エネルギーとして回収することができる。低コストで崩壊熱の回収が可能になるので、その実現はより現実的である。また、低コストで崩壊熱の有効利用が可能になるので、例えば使用済み燃料の貯蔵、その貯蔵施設による発電等を収益事業として実施することができる。
【0076】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0077】
例えば、上述の高速炉1では、粒子形状の金属燃料2を燃料要素容器9に充填していたが、例えば図5に示すように、粒子形状の金属燃料2の間に変形可能な金属製チューブ26を挿入し、金属燃料2の温度変化に伴う膨張・収縮に応じて金属製チューブ26を変形させるようにしても良い。金属製チューブ26の上部は不活性ガス溜11に開放されている。また、金属製チューブ26の横断面は、例えば楕円形を成している。
【0078】
また、粒子形状の金属燃料2を充填することに代えて、金属製チューブ26を設置した状態で、例えば溶融状態の金属燃料2を燃料要素容器9内に流し込んで冷却し固化することも考えられる。
【0079】
また、上述の説明では、反射体29を熱交換器として利用していたが、反射体29とは別に熱交換器を設けても良い。
【0080】
また、上述の説明では、水/蒸気冷却系によって図示しない蒸気タービンを駆動するようにしていたが、例えば水/蒸気冷却系と蒸気タービンとの間に二次冷却系や三次冷却系等を設けても良い。
【0081】
また、上述の説明では、炉心冷却材34として液体状の冷却水を炉心27に供給し、これを炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34にしていたが、炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流34を炉心27に供給するようにしても良い。
【0082】
また、上述の説明では、燃料要素3をプール6内に設置していたが、水又は水/水蒸気2相流33中、即ち外側冷却材33中であれば必ずしもプール6内に設置しなくても良い。例えば図6に示すように、原子炉容器25内に燃料要素3を設置すると共に、原子炉容器25内に水又は水/水蒸気2相流33を貯めるようにしても良い。なお、図6の高速炉1では図1の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0083】
原子炉容器25内には、運転停止時にたとえ外部からの冷却材の供給が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水又は水/水蒸気2相流33が蓄えられている。原子炉容器25内には円筒状のシュラウド8が設けられており、このシュラウド8内に燃料要素3は設置されている。本実施形態では、燃料要素3の冷却管10は燃料要素容器9を上下に貫通している。図示しない制御棒や安全棒は、例えば炉心の下から挿入される。ただし、炉心の上から挿入する構成としても良い。
【0084】
外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流33は流入管30から原子炉容器25内に供給され、原子炉容器25内の底部から燃料要素3の冷却管10内に流入し、炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34(内側冷却材)となって上昇する。また、原子炉容器25の底部の水又は水/水蒸気2相流33の一部はそのまま外側冷却材として燃料要素3の間の隙間7に流入し、ここで加熱されて上昇する。そして、水面33aの上に到達した水蒸気は流出管31から流出し、例えば発電等に使用される。また、燃料要素3の内側又は外側を通り抜けた流れの液相部分はシュラウド8を越えて外側冷却材となり、シュラウド8の外側を下降する。このようにして炉心冷却材の流れが形成され、炉心27が冷却される。
【0085】
なお、原子炉容器25内において冷却材を自然対流によって循環させても良いが、図示しないポンプ等を設けて強制的に循環させるようにしても良い。
【0086】
図6の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様に、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34は水蒸気又は水蒸気/水2相流であり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定しているので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0087】
また、図6の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様の効果を得ることができる。つまり、燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。また、燃料要素3の冷却のうち、内と外のいずれか一方が不能になったとしても、もう一方で冷却を行うことができるので、受動的な安全性に優れている。また、核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、プルトニウムの増殖率を大きくすることができ、ウラン資源を有効利用できると共に、炉心27を長寿命化することができる。また、冷却材として水/蒸気を使用しているので、液体金属を使用する場合に比べて取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。また、燃料要素3を水又は水/水蒸気33中に設置しているので、外部からの冷却水の供給が不能になったとしても、原子炉容器25内の水又は水/水蒸気33によって炉心27の崩壊熱を除去することができる。このため、受動的な安全性に優れている。また、冷却材に液体ナトリウムを使用していないので、安全性に優れている。
【0088】
また、上述の説明では、燃料要素3をプール6又は原子炉容器25内に設けることで水又は水/水蒸気2相流33中に設置するようにしていたが、プール6や原子炉容器25以外の容器類類内に設けることで水又は水/水蒸気2相流33に設置するようにしても良い。
【0089】
さらに、上述の説明では、既存の原子炉設備22の原子炉格納容器23を利用して高速炉施設21を建設していたが、原子炉格納容器23以外の設備を利用しても良い。例えば、図7に、高速炉施設21の建設方法の他の実施形態を示す。図7(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。BWRプラント22では、原子炉建屋24内に原子炉格納容器23を設置し、その中に原子炉容器25を設置している。原子炉容器25内から炉心やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水又は水/水蒸気2相流33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図7(B))。
【0090】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約40万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約4mになるので、原子炉容器25内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が1割増しの約40万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。なお、原子炉格納容器23の近傍には使用済燃料を一時的に保管するプール28があり、このプール28はそのまま利用できる。
【0091】
図7の例でも、図4の例と同様に、既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0092】
さらに、上述の説明では、既存の原子炉施設22としてBWRプラントを例に挙げ、BWRプラントを高速炉プラント21に改造していたが、BWRプラント以外の原子炉施設、例えばPWRプラント、ガス炉プラント等を高速炉プラント21に改造しても良いことは勿論である。
【0093】
また、上述の説明では、燃料要素3内の冷却管10に循環させる炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用していたが、水蒸気又は水蒸気/水2相流に限るものではなく、例えば不活性ガス等を使用しても良い。ここで、不活性ガスとしては、例えばヘリウムガスの使用が適している。炉心冷却材34として不活性ガスを使用することで、水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用する場合に比べて、炉心27の熱を除去する能力が向上し、高速炉1の出力密度を大きくすることができ、炉心27を小さくすることができる。特に、ヘリウムガスは炉心の熱を除去する能力が大きいので、出力密度の大きな高速炉1の実現に適している。また、炉心冷却材34として、例えば炭酸ガス、窒素ガス等を使用しても良く、この場合にも炉心27の熱を除去する能力が向上し、高速炉1の出力密度を大きくすることができ、炉心27を小さくすることができる。
【0094】
また、炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用した場合と同様に、不活性ガスによって減速される高速中性子の数は少ないので、不活性ガスで炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0095】
また、燃料要素3の上に崩壊熱冷却塔を設けても良い。崩壊熱冷却塔は、例えばSUS等のステンレス鋼製のブロックで、燃料要素容器9の上に設けられ、プール6内の水33に接触している。崩壊熱冷却塔内に冷却管10内を流れる炉心冷却材34を循環させることで、炉心冷却材34の熱をプール6内の水33に逃がす能力を向上させることができる。
【0096】
図12に、炉心冷却材34として例えばヘリウムガスを使用すると共に、燃料要素3の上に崩壊熱冷却塔36を設けた高速炉1を示す。なお、図12の高速炉1では図1の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0097】
崩壊熱冷却塔36内には例えばU字状の孔36aが設けられており、このU字状の孔36aの入口側には流入側冷却管10が、出口側には流出側冷却管10がそれぞれ接続され、全体としてU字状の循環路が形成されている。炉心冷却材34としてのヘリウムガスは、流入管30→流入側冷却管10→U字状の孔36a→流出側冷却管10→流出管31へと循環し、炉心27を冷却する。
【0098】
この高速炉1では崩壊熱冷却塔36を設けているので、図1の高速炉1に比べて、より多くの熱をプール6内の水33(外側冷却材)に逃がすことができ、外側冷却材による冷却能力を向上させることができる。即ち、燃料要素3で発生した崩壊熱の大部分は燃料要素3の表面からプール6内の水33に伝えられ、また、燃料要素3で発生した崩壊熱の一部は熱伝導および炉心冷却材34としてのヘリウムガスを経由して崩壊熱冷却塔36および反射体29に伝えられ、プール6内の水33に伝えられる。
【0099】
また、燃料要素3の下部には反射体29が設けられており、燃料要素3で発生する中性子を遮蔽することで、流入管30や流出管31等の放射化を防止している。これにより、放射性廃棄物の発生量を減らすことができる。
【0100】
なお、図1の高速炉1では、反射体29を、冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34に変換する熱交換器として積極的に機能させていたが、図12の高速炉1では、ヘリウムガスを加熱する熱交換器として積極的に機能させることは重要ではない。図12の高速炉1では、反射体29の機能として、中性子の漏れを防ぐ反射体としての機能と、特に何らかの原因によって内側冷却材の循環が停止した場合等に炉心27の熱を水33に逃がす機能が重要である。
【0101】
図12の高速炉1では、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34はヘリウムガスであり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定するので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0102】
また、図12の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様の効果を得ることができる。つまり、燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。また、燃料要素3の冷却のうち、内と外のいずれか一方が不能になったとしても、もう一方で冷却を行うことができるので、受動的な安全性に優れている。また、核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、プルトニウムの増殖率を大きくすることができ、ウラン資源を有効利用できると共に、炉心27を長寿命化することができる。また、内側冷却材としてガスを、外側冷却材として水/蒸気を使用しているので、冷却材として液体金属を使用する場合に比べて取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。また、燃料要素3を水又は水/水蒸気33中に設置しているので、外部からの冷却水の供給が不能になったとしても、原子炉容器25内の水又は水/水蒸気33によって炉心27の崩壊熱を除去することができる。このため、受動的な安全性に優れている。また、冷却材に液体ナトリウムを使用していないので、安全性に優れている。
【0103】
即ち、図12の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様に、炉心冷却材34を使用して燃料要素3を内側から冷却し、かつ、燃料要素3をプール6内の常温常圧の水33内に入れることにより、動的な機器なしに、金属燃料2の崩壊熱を伝熱のみでプール6内の水33に伝えることが出来るため、小型の高速炉は勿論のこと、中型、大型の高速炉でも崩壊熱の除去を受動的に達成できる。また、炉心冷却材34に水との化学的反応性が強いナトリウムではなく、水(図1の高速炉1)又はヘリウムガス等の不活性ガス(図12の高速炉1)を利用することで常温常圧の原子炉水プールに入れることが可能となっている。
【0104】
図13に、炉心冷却材34として不活性ガスや炭酸ガス、窒素ガス等のガスを使用した高速炉1の発電方式の概略構成を示す。炉心27を冷却することで高温になった炉心冷却材34はプール6の外に導かれ、発電に利用される。発電方式としては、高温になった炉心冷却材34をガスタービン40に導いて発電機41を駆動して発電する方式(図13(A):ガスタービン発電方式)、高温になった炉心冷却材34を蒸気発生器42に導いて蒸気を発生させて蒸気タービン43で発電機41を駆動して発電する方式(図13(B):蒸気発生器・蒸気タービン発電方式)、ガスタービン40による発電機41の駆動と蒸気タービン43による発電機41の駆動を併用する方式(図13(C):ガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式)が考えられる。
【0105】
図14に、炉心冷却材34として不活性ガスや炭酸ガス、窒素ガス等のガスを使用した高速炉1についての、高速炉施設21の建築方法の一例を示す。なお、図14について図4と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0106】
図14(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。原子炉建屋24内に設置された原子炉格納容器23内から原子炉容器25やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図14(B))。BWRプラント22では、燃料交換の際に原子炉格納容器23内に水を溜め原子炉容器25を水没させるため、原子炉格納容器23のプール6への転用は可能である。
【0107】
なお、高速炉プラント21への改造に伴い、BWRプラント22で使用していた図示しない蒸気タービンをガスタービン40に変更してガスタービン発電方式(図13(A))にしたり、あるいはBWRプラント22で使用していた蒸気タービンをそのまま使用するときには蒸気発生器42を新たに設置して蒸気発生器・蒸気タービン発電方式(図13(B))にしたり、あるいはガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式(図13(C))にする改造等も必要である。
【0108】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約80万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約5mになるので、原子炉格納容器23内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が2倍以上の約80万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。
【0109】
図14の例でも、図4の例と同様に、既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0110】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、ガスタービン発電方式によって発電を行なっていたが、例えば図13(B)に示す蒸気発生器・蒸気タービン発電方式によって発電を行なっても良く、図13(C)に示すガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式によって発電を行なっても良い。
【0111】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、除去した崩壊熱を発電を行なう熱エネルギーとして利用していたが、発電以外に熱エネルギーを利用しても良い。例えば、熱エネルギーを暖房や給湯設備等に使用しても良く、その他の目的に熱エネルギーを使用しても良い。
【0112】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、高速炉1で使用した燃料要素3を例に説明していたが、高速炉1で使用した燃料要素3以外の燃料要素であっても、内部に冷却管を循環させている燃料要素であれば適用可能である。
【実施例1】
【0113】
本発明の高速炉1の炉心27の寿命を確認するための実験を行った。図3に示す炉心27を設計し、その燃焼特性を計算した。炉心27の中心から半径1.6mの範囲(符号27aで示す領域)内に設置する燃料要素3の金属燃料2は濃縮ウランとして8.5%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、その周囲(符号27bで示す領域、半径1.8m)のブランケット燃料は0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。また、炉心27の高さは2mである。
【0114】
図8に燃料要素3の横断面を、図9に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば64個(8列×8列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。
【0115】
なお、炉心27の仕様は次の通りである。
・燃料要素ピッチP1:107.2mm
・燃料要素高さ:2m
・熱出力:1.4MW/燃料要素
・炉心出力:1GWe、電気出力:330MWe(効率33%)
・燃料要素数:714体
・炉心半径1.6m
・ブランケット(炉心の1/4体積)半径:1.8m
・炉心寿命:60年(130GWd/tの燃焼度)
・燃料濃縮度:8.5%、ブランケット:0.2%
・燃料要素U量:0.215t/燃料要素
・Uインベントリー:154t(濃縮U)、39t(劣化U)
・炉心平均ボイド率:50%、出口ボイド率:90%(飽和蒸気、二相流)
【0116】
また、燃料要素形状は次の通りである。
・冷却管(Zr):水/蒸気2相流、内径4mm、外径5.66mm、肉厚0.83mm
・燃料ユニット:U−10%Zr、ピッチP2:12.99mm
・燃料要素8×8形
・燃料要素被覆材(燃料要素容器):内寸法103.9mm、外寸法105.5mm、肉厚0.82mm
・燃料要素ピッチP1:107.2mm、燃料要素間隔:1.6mm
【0117】
実験の結果を図10に示す。燃焼度が200GW・d/T(ギガワット日/トン)を超えても1.00以上の反応度kを確保することができた。なお、一般的な軽水炉では、1.00以上の反応度kを確保できるのは50GW・d/T程度である。この結果からも明らかなように、本発明の高速炉1の炉心27は長寿命であることが確認できた。
【実施例2】
【0118】
本発明の炉心冷却材34としてヘリウムガスを使用した高速炉1の炉心27の寿命を確認するための実験を行った。図3に示す炉心27を設計し、その燃焼特性を計算した。炉心27の中心から半径1.6mの範囲(符号27aで示す領域)内に設置する燃料要素3の金属燃料2は濃縮ウランとして10.0%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、その周囲(符号27bで示す領域、半径2.0m)のブランケット燃料は0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。また、炉心27の高さは2mである。
【0119】
図15に燃料要素3の横断面を、図16に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば36個(6列×6列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。また、各燃料要素3には、例えば5本ずつ管32が設けられている。
【0120】
なお、炉心27の仕様は次の通りである。
・燃料要素高さ:2m
・炉心出力:1GWe、熱出力:3GW(効率33%)
・熱出力:1.4MW/燃料要素
・燃料要素発生熱量:1.44MW
・燃料要素数:2083体
・炉心半径2.0m
・炉心重金属重量:121t
・燃焼度:120GWd/T
・ブランケット外半径:2.4m(厚さ40cm)
・炉心寿命:約16年(燃料部分平均120GWd/tの燃焼度)
・燃料濃縮度:10%、ブランケット:0.2%
【0121】
また、燃料要素形状は次の通りである。
・冷却管(Heガス)内半径:5mm
・冷却管(SUS)外半径:5.37mm、肉厚:0.37mm
・燃料ユニット:U−10%Zr、ピッチP2:13.1mm
・燃料要素6×6形
・燃料要素被覆材(燃料要素容器):内寸法78.38mm、外寸法79.62mm、肉厚0.67mm
・燃料要素ピッチP1:80.84mm、燃料要素間隔:2.46(1.23×2)mm
【0122】
実験の結果を図17に示す。燃焼度が140000MWd/T(メガワット日/トン)を超えても1.00以上の炉心反応度kを確保することができた。なお、上述の通り、一般的な軽水炉では、1.00以上の反応度kを確保できるのは50GW・d/T程度である。この結果からも明らかなように、本発明の高速炉1の炉心27は長寿命であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明を適用した高速炉の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図3】図1の高速炉の炉心の概念図である。
【図4】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の実施形態の一例を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図5】金属燃料の間に金属チューブを設けた様子を示す図である。
【図6】本発明を適用した高速炉の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の他の実施形態を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図8】炉心寿命を確認するために行った第1の実験で想定した燃料要素の横断面図である。
【図9】図8の燃料要素を構成する燃料ユニットの横断面図である。
【図10】炉心寿命を確認するために行った第1の実験の計算結果を示し、炉心の燃焼特性を示すグラフである。
【図11】本発明を適用した使用済み燃料の貯蔵方法の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図12】本発明を適用した高速炉の更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図13】図12の高速炉で採用可能な発電方式を示し、(A)はガスタービン発電方式の概略構成図、(B)は蒸気発生器・蒸気タービン発電方式の概略構成図、(C)はガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式の概略構成図である。
【図14】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の更に他の実施形態を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図15】炉心寿命を確認するために行った第2の実験で想定した燃料要素の横断面図である。
【図16】図15の燃料要素を構成する燃料ユニットの横断面図である。
【図17】炉心寿命を確認するために行った第2の実験の計算結果を示し、炉心の燃焼特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0124】
1 高速炉
2 金属燃料
3 燃料要素
6 プール
9 燃料要素容器
10 冷却管
21 高速炉施設
22 BWRプラント(原子炉施設)
23 原子炉格納容器
25 原子炉容器
27 炉心
29 反射体(熱交換器)
33 水又は水と水蒸気との2相流
34 水蒸気又は水蒸気と水との2相流
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動的安全性を有する高速炉用燃料要素に関する。また、本発明は、受動的安全性を有する高速炉と、その高速炉を備えた高速炉施設の建設方法に関する。さらに、本発明は、使用済み燃料の貯蔵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速炉にはより高いレベルの安全性が求められており、動的な機器を用いることなく外乱による影響を収束させる受動的な安全性が研究されている。例えば、特開平9−72980号公報に開示されている高速炉では、冷却材流量喪失等の異常が発生した場合、冷却材の流出によりガス空間の体積を膨張させて炉心からの中性子ストリーミングを促し、炉内に負の反応度を挿入するようにしている。
【0003】
また、もんじゅ等の高速炉では、ペレット状に成形した燃料を燃料被覆管に充填・密封して燃料要素とし、多数の燃料要素をラッパ管に挿入して燃料集合体を構成している。ラッパ管の下部にはエントランスノズルが設けられており、冷却材である液体ナトリウムはエントランスノズルのオリフィス孔よりラッパ管内に流入し、各燃料要素の間を流れながら除熱を行い上方に流出する。つまり、各燃料要素の外側を液体ナトリウムで冷却している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−72980号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高速炉や高速炉用燃料要素の安全性には原理・思想の異なる手段を多重に設けることが肝要であり、受動的な安全性についてさらなる技術開発が要請されている。
【0006】
また、もんじゅ等の高速炉ではペレット状の燃料を使用し、燃料要素の外側を液体ナトリウムによって冷却する構成であるが、この構成が全ての高速炉や高速炉用燃料要素について最適であるとは限らず、燃料要素の外側に加えて内側も冷却した方が良い場合もある。
【0007】
さらに、これらの高速炉を実用化する為には、高速炉施設を経済的に建設する必要があると共に、使用済み燃料の貯蔵を経済的に行なう必要もある。
【0008】
本発明は受動的な安全性に優れた高速炉および高速炉用燃料要素を提供することを目的とする。また、本発明は冷却性能に優れた高速炉および高速炉用燃料要素を提供することを目的とする。さらに、本発明は経済性に優れた高速炉施設の建設方法を提供することを目的とする。また、本発明は経済性に優れた使用済み燃料の貯蔵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の高速炉用燃料要素は、金属燃料と、金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触し、冷却管内の炉心冷却材と燃料要素容器外の水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されるものである。ここで、請求項2記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項3記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。以下、例えば、炉心冷却材が水蒸気又は水蒸気と水との2相流である場合を例に説明する。ただし、炉心冷却材が不活性ガス等である場合も同様である。
【0010】
したがって、金属燃料で生じた熱は冷却管と燃料要素容器とに伝えられ、冷却管内の炉心冷却材即ち水蒸気、又は水蒸気と水との2相流(以下、水蒸気/水2相流という)と、燃料要素容器の外側の水、又は水と水蒸気の2相流(以下、水/水蒸気/水2相流という)によって除去される。なお、説明を分かり易くするために、冷却管内に流す炉心冷却材即ち水蒸気又は水蒸気/水2相流を内側冷却材、燃料要素の周囲の水又は水/水蒸気2相流を外側冷却材という。
【0011】
内側冷却材による冷却能力は外側冷却材による冷却能力よりも圧倒的に高く、炉心を構成する金属燃料は内側冷却材によって主に冷却される。燃料要素の周囲に炉心冷却材として多量の冷却水を流すのではなく、水蒸気又は水蒸気/水2相流の状態にすることで水の割合を少なくした内側冷却材を燃料要素内を循環する冷却管内に流すようにしている。このため、金属燃料に対して水(減速材)の割合が少なくなり、内側冷却材による高速中性子の減速等による減少は僅かであり、炉心において高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。一方、冷却材としての流量は確保できるので、炉心を良好に冷却することができる。
【0012】
複数の燃料要素を並べて高速炉の炉心を構成しても良いが、小型の高速炉の場合等には燃料要素1つだけで炉心を構成しても良い。複数の燃料要素を並べる場合には、各燃料要素の間に隙間をあけて周囲の外側冷却材が循環できるようにする。外側冷却材は燃料要素を冷却することで加熱されて自然対流し、各燃料要素を外側から冷却する。つまり、本発明では、内側冷却材と外側冷却材を使用して燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。ただし、各燃料要素間に外側冷却材が流れると、それに応じて高速中性子が減速される等して減少するので、各燃料要素間の外側冷却材の流量は最大でも炉心の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて各燃料要素間の隙間の広さを決定する。一方、燃料要素1つだけで炉心を構成する場合にも、内側冷却材と外側冷却材を使用して、燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。
【0013】
何らかの原因によって内側冷却材による高速炉用炉心の冷却が困難になったとしても、燃料要素は外側冷却材中に設置されているので、この外側冷却材によって燃料要素を冷却することができる。内側冷却材として例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を、外側冷却材として水又は水/水蒸気2相流をそれぞれ使用しているので、内側冷却材と外側冷却材とが接触したとしても液体ナトリウムと水とが接触した場合のように激しく反応することはない。
【0014】
また、請求項4記載の高速炉は、燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、炉心冷却材と水又は水と水蒸気との2相流により燃料要素の内と外から冷却を行うものである。
【0015】
また、請求項5記載の高速炉は、水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、燃料要素をプール内に設置するものである。このように、外側冷却材を貯めたプール内に燃料要素を設置するようにしても良い。ここで、請求項6記載の高速炉のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項7記載の高速炉のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。以下、例えば、炉心冷却材が水蒸気又は水蒸気と水との2相流である場合を例に説明する。ただし、炉心冷却材が不活性ガス等である場合も同様である。
【0016】
したがって、炉心を構成する金属燃料は炉心冷却材としての冷却管内の内側冷却材によって主に冷却される。燃料要素の周囲に炉心冷却材として多量の冷却水を流すのではなく、水蒸気又は水蒸気/水2相流の状態にすることで水の割合を少なくした内側冷却材を燃料要素内を循環する冷却管内に流すようにしている。このため、金属燃料に対して水(減速材)の割合が少なくなり、内側冷却材による高速中性子の減速等による減少は僅かであり、炉心において高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。一方、冷却材としての流量は確保できるので、炉心を良好に冷却することができる。
【0017】
複数の燃料要素を並べて炉心を構成しても良いが、小型の高速炉の場合等には燃料要素1つだけで炉心を構成しても良い。複数の燃料要素を並べる場合には、各燃料要素の間に隙間をあけて周囲の外側冷却材が循環できるようにする。外側冷却材は燃料要素を冷却することで加熱されて自然対流し、各燃料要素を外側から冷却する。つまり、本発明では、内側冷却材と外側冷却材を使用して燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。ただし、各燃料要素間に外側冷却材が流れると、それに応じて高速中性子が減速される等して減少するので、各燃料要素間の外側冷却材の流量は最大でも炉心の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて各燃料要素間の隙間の広さを決定する。一方、燃料要素1つだけで炉心を構成する場合にも、内側冷却材と外側冷却材を使用して、燃料要素を内と外の両方から冷却することができる。
【0018】
何らかの原因によって内側冷却材による炉心の冷却が困難になったとしても、燃料要素は外側冷却材中に設置されているので、この外側冷却材によって燃料要素を冷却することができる。内側冷却材として例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を、外側冷却材として水又は水/水蒸気2相流をそれぞれ使用しているので、内側冷却材と外側冷却材とが接触したとしても液体ナトリウムと水とが接触した場合のように激しく反応することはない。
【0019】
また、請求項8記載の高速炉は、冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を燃料要素の下部に設置すると共に、冷却管に炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするものである。
【0020】
したがって、炉心冷却材は水の状態で熱交換器に供給され、ここで加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流となった後、燃料要素内を循環して金属燃料を冷却する。冷却によって高温になった水蒸気又は水蒸気/水2相流は再び熱交換器に流入し、炉心冷却前の冷却水を加熱する。
【0021】
また、請求項9記載の高速炉は、熱交換器が燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体である。したがって、反射体を利用して熱交換器を構成することができる。反射体は、例えばSUS等のステンレス鋼等である。
【0022】
また、請求項10記載の高速炉のように、燃料要素が原子炉容器内に設置され、水又は水と水蒸気との2相流が原子炉容器内に貯められているものでも良い。このように、原子炉容器内に炉心を配置する高速炉にできる。また、請求項11記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、炉心冷却材を冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするようにしても良い。
【0023】
さらに、請求項12記載の高速炉施設の建設方法は、既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設するものである。
【0024】
例えば、軽水炉を備えるプラントでは、原子炉建屋内に原子炉格納容器を設置し、その中に原子炉容器を収容している。原子炉格納容器はもともと放射性物質の封じ込めを目的としたものであり、内部に水又は水と水蒸気との2相流を貯めることができる。この原子炉格納容器をプールとして転用することで、既存の原子炉施設を利用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設することができる。
【0025】
また、請求項13記載の高速炉施設の建設方法は、既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設するものである。
【0026】
例えば、軽水炉を備えるプラントでは、原子炉建屋内に原子炉格納容器を設置し、その中に原子炉容器を収容している。原子炉容器はもともと放射性物質の封じ込めを目的としたものであり、内部に水又は水と水蒸気との2相流を貯めることができる。この原子炉容器を使用することで、既存の原子炉施設を利用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設することができる。
【0027】
また、請求項14記載の発明は、請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素を高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0028】
請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素には燃料要素容器内を循環する冷却管が設けられている。この冷却管に冷却材を循環させることで、使用済み燃料を内部から冷却することができる。冷却管を通り抜けた冷却材は高温になっており、この熱を発電、熱利用施設の熱源等に利用することができる。
【0029】
また、請求項15記載の発明は、請求項4から11のいずれか1つに記載された高速炉の燃料要素を当該高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0030】
請求項4から11のいずれか1つに記載された燃料要素には内部を循環する冷却管が設けられている。この冷却管に冷却材を循環させることで、使用済み燃料を内部から冷却することができる。冷却管を通り抜けた冷却材は高温になっており、この熱を発電、熱利用施設の熱源等に利用することができる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1記載の高速炉用燃料要素では、金属燃料と、金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触し、冷却管内の炉心冷却材と燃料要素容器外の水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されるようにしているので、内側冷却材としての炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を燃料要素内で良好に循環させることができ、金属燃料を内から良好に冷却することができる。また、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、内側冷却材と外側冷却材とによって燃料要素の内と外から冷却を行うようにしているので、冷却性能を向上させることができる。また、たとえ燃料要素の内からの冷却が不能になったとしても、燃料要素を外から冷却することができるので、受動的な安全性をより一層向上させることができる。また、たとえ内側冷却材である炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流と外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流とが接触しても激しく反応することはなく安全である。また、液体金属に比べて水や水蒸気は取り扱いが容易であり、冷却材として液体金属を使用する高速炉に比べてその構造を簡単なものにすることができる。さらに、冷却材として水や水蒸気を使用することは軽水炉等において既に長年の運用実績があり、技術的な蓄積がある。これを高速炉用燃料要素に適用することで、より一層安全性が高い高速炉用燃料要素を実現することができる。
【0032】
ここで、請求項2記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項3記載の高速炉用燃料要素のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。
【0033】
また、請求項4記載の高速炉では、燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、炉心冷却材と水又は水と水蒸気との2相流により燃料要素の内と外から冷却を行うので、内側冷却材としての炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流を燃料要素内で良好に循環させることができ、金属燃料を内から良好に冷却することができる。また、少なくとも運転時には金属燃料は冷却管の外周面及び燃料要素容器の内側面に接触しており、内側冷却材と外側冷却材とによって燃料要素の内と外から冷却を行うようにしているので、冷却性能を向上させることができる。また、たとえ燃料要素の内からの冷却が不能になったとしても、燃料要素を外から冷却することができるので、受動的な安全性をより一層向上させることができる。また、たとえ内側冷却材である炉心冷却材例えば水蒸気又は水蒸気/水2相流と外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流とが接触しても激しく反応することはなく安全である。また、液体金属に比べて水や水蒸気は取り扱いが容易であり、冷却材として液体金属を使用する高速炉に比べてその構造を簡単なものにすることができる。さらに、冷却材として水や水蒸気を使用することは軽水炉等において既に長年の運用実績があり、技術的な蓄積がある。これを高速炉に適用することで、より一層安全性が高い高速炉を実現することができる。
【0034】
また、請求項5記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、燃料要素をプール内に設置するようにしても良い。
【0035】
ここで、請求項6記載の高速炉のように、炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流でも良く、請求項7記載の高速炉のように、炉心冷却材は、不活性ガスでも良い。
【0036】
また、請求項8記載の高速炉では、冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を燃料要素の下部に設置すると共に、冷却管に炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするので、炉心の熱を利用して炉心冷却材である水蒸気又は水蒸気/水2相流を発生させることができる。このため、炉心で発生させた熱をより有効に利用することができると共に、炉心冷却材としての流量の確保が容易である。
【0037】
また、請求項9記載の高速炉では、熱交換器が燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体であるので、反射体を利用して熱交換器を構成することができる。このため、別部材としての熱交換器が不要になり、製造コストを安くすることができる。また、高速炉を小型化することができる。
【0038】
また、請求項10記載の高速炉のように、燃料要素が原子炉容器内に設置され、水又は水と水蒸気との2相流が原子炉容器内に貯められているものでも良い。このように、原子炉容器内に炉心を配置する高速炉を構成することができる。また、請求項11記載の高速炉のように、水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、炉心冷却材を冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にするようにしても良い。
【0039】
さらに、請求項12記載の高速炉施設の建設方法では、既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設するので、既存の原子炉施設を利用して、高速炉施設を建設することができる。このため、高速炉施設の建設に要する費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設の一部を有効活用できるので、その分だけ廃棄物を減らすことができて環境面でも優れている。さらに、老朽化した原子炉施設を再利用することができるので、原子力関係の施設を有効利用することができ、例えば原子炉の廃止措置に伴う放射線管理の負担等を軽減することができる。また、上述の効果を有する高速炉を備える高速炉施設を建設することができる。
【0040】
また、請求項13記載の高速炉施設の建設方法では、既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設するので、既存の原子炉施設を利用して、高速炉施設を建設することができる。このため、高速炉施設の建設に要する費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設の一部を有効活用できるので、その分だけ廃棄物を減らすことができて環境面でも優れている。さらに、老朽化した原子炉施設を再利用することができるので、原子力関係の施設を有効利用することができ、例えば原子炉の廃止措置に伴う放射線管理の負担等を軽減することができる。また、上述の効果を有する高速炉を備える高速炉施設を建設することができる。
【0041】
また、請求項14記載の使用済み燃料の貯蔵方法では、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するので、燃料要素容器内を循環する冷却管をそのまま利用して貯蔵中の使用済み燃料を冷却することができる。このため、低コストで使用済み燃料の崩壊熱を回収し熱エネルギーとして利用することができる。また、使用済み燃料を内部から冷却することができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。
【0042】
また、請求項15記載の使用済み燃料の貯蔵方法では、冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するので、燃料要素内を循環する冷却管をそのまま利用して貯蔵中の使用済み燃料を冷却することができる。このため、低コストで使用済み燃料の崩壊熱を回収し熱エネルギーとして利用することができる。また、使用済み燃料を内部から冷却することができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0044】
図1に、本発明を適用した高速炉の実施形態の一例を示す。高速炉1は、金属燃料2を密封した燃料要素3をプール6内に設置すると共に、燃料要素3内に水蒸気又は水蒸気と水との2相流(水蒸気/水2相流)34を循環させて炉心27を冷却するものである。プール6内には多数の燃料要素3が若干の隙間7をあけて並べられており、炉心27が構成されている。燃料要素3はプール6内に直接設置されている。
【0045】
なお、図1では2つの燃料要素3を記載しているが、実際には多数の燃料要素3が設けられている。各燃料要素3間の隙間7を流れるプール6内の水又は水と水蒸気の2相流(水/水蒸気/水2相流)33は高速中性子を減速させるので、高速炉1では負の反応度を与えることになる。このため、隙間7を流れる水の流量は最大でも炉心27の核分裂連鎖反応を維持できる程度の流量とし、この流量にあわせて隙間7の広さを決定する。なお、本実施形態では、プール6内に貯める水又は水/水蒸気2相流33として、水33を使用する。ただし、水33に代えて、水と水蒸気とが混在した状態の水/水蒸気2相流33を使用しても良い。
【0046】
本実施形態では、炉心冷却材34として水(冷却材)を使用し、これを炉心27では水蒸気の状態又は水蒸気/水2相流の状態で使用する。炉心冷却材34としての水蒸気によって減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。また、炉心冷却材34としての水蒸気/水2相流は、水蒸気と高ボイド率の水とが混在した状態のものであり、減速材となる水の存在割合が小さく減速される高速中性子の数は少ないので、水蒸気/水2相流34で炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。即ち、水蒸気/水2相流34としては、高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる程度に高ボイド率の水と水蒸気とが混在したものを使用する。
【0047】
燃料要素3の横断面を図2に示す。燃料要素3は、内部が密閉された燃料要素容器9と、燃料要素3内を循環し水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備えると共に、少なくとも運転時には金属燃料2は冷却管10の外周面及び燃料要素容器9の内側面に接触しており、燃料要素3の内と外から冷却を行うようにしている。つまり、高速炉1が運転されて金属燃料2が高温になると金属燃料2は膨張するが、少なくとも膨張したときには金属燃料2は燃料要素容器9と冷却管10に十分に接触し、金属燃料2で生じた熱を燃料要素容器9と冷却管10に良好に伝達することができる。燃料要素容器9内の金属燃料2の下には、例えばSUS等のステンレス鋼製の反射体29が設けられている。ただし、反射体29の材料はSUS以外のステンレス鋼でも良く、またステンレス鋼以外の材料でも良い。
【0048】
反射体29は熱交換器としても機能する。つまり、燃料要素3の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体29を熱交換器としても使用している。これにより、燃料要素3の下部に熱交換器が設置され、燃料要素3に炉心冷却材として冷却水34を供給し、後述するように炉心27冷却後の水蒸気又は水蒸気/水2相流34によって炉心27冷却前の液体状態の冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34にする。
【0049】
燃料要素容器9は、例えばステンレス鋼製のボックスである。また、冷却管10は、例えばステンレス鋼製の管である。ただし、これらの材料はステンレス鋼に限るものではなく、ステンレス鋼以外の材料、例えばジルコニウム合金やその他の材料を採用しても良い。冷却管10は、炉心冷却材34を循環させる流入管30と流出管31のいずれか一方より分岐して燃料要素3内に下から進入している。流入管30より分岐した冷却管(以下、流入側冷却管という)10と流出管31より分岐した冷却管(以下、流出側冷却管という)10とが1本ずつペアとなり、ペア毎に上端を連通させている。つまり、流入側冷却管10と流出側冷却管10とでU字管を構成している。各冷却管10の下端、具体的には流入側冷却管10の下端(上流端)と流出側冷却管10の下端(下流端)は反射体29を貫通している。冷却管10は反射体29に対して十分に接触しており、熱伝達が行われる。このように、金属燃料2と、金属燃料2を収容し、水又は水/水蒸気2相流33中に設置された燃料要素容器9と、燃料要素容器9内を循環し、水蒸気又は水蒸気/水2相流34が流れる冷却管10とを備える高速炉用燃料要素3が構成される。
【0050】
金属燃料2は、例えばU−Zr等の金属燃料である。ただし、U−Zrに限るものではなく、その他のウラン合金、プルトニウム合金等でも良く、金属ウラン、金属プルトニウム等でも良い。金属燃料2は、例えば粒子形状を成しており、燃料要素容器9内に充填されている。燃料要素容器9内には金属燃料2が例えば充填率(スミヤー密度)50〜80%程度で充填されており、金属燃料2の隙間には例えばHe等の不活性ガスが充填されている。また、金属燃料2の上方空間は、例えばHe等の不活性ガス溜11となっている。粒子状の金属燃料2を充填しているので、燃料要素容器9内で金属燃料2が動くことができ、運転時の体積膨張を逃がすことができる。また、金属燃料2の核分裂によって発生したクリプトンやキセノン等のガスは不活性ガス溜11に溜められる。金属燃料2で発生した熱は接触によって燃料要素容器9や冷却管10に直接伝達されるが、隙間に充填された不活性ガスによっても伝達される。
【0051】
燃料要素3は、例えば1.6mmの間隔(ただし燃料要素3の間隔。ピッチ間隔では100mm)をあけて並べられている。また、燃料要素3の大きさは、横断面のサイズが例えば0.1m×0.1m、高さが例えば2mである。1つの燃料要素3には、例えば64本(図2では24本のみ図示)の冷却管10が設けられている。冷却管10の内径は、例えば4mmである。冷却管10は、例えば13mmの間隔をあけて並べられている。ただし、これらの数値は一例であり、これらの数値に限るものではない。必要な冷却能力や出力等に応じて適宜設計する。
【0052】
なお、実際には、例えば図3に示すように、炉心27の中央27aに上述の金属燃料2を充填した燃料要素3を配置し、その周囲27bにブランケット燃料を充填した燃料要素3を配置し、高速中性子の漏れ防止とプルトニウムの増殖が図られている。金属燃料2は、例えば濃縮ウランとして10%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、ブランケット燃料は、例えば0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。
【0053】
プール6内はプール蓋20によって密閉されている。プール6内の水33の水面33aの上には、例えばHe、窒素、アルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガス溜13となっている。水33の温度変化に伴う体積変動を、不活性ガス溜13の体積を変化させることで吸収することができる。
【0054】
プール6には、運転停止時にたとえ炉心冷却材34による冷却が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水33が蓄えられている。プール6内の水33の温度は、例えば常温である。なお、プール蓋20は放射性物質を閉じ込める機能も有している。
【0055】
なお、プール6内の水33を冷却するプール冷却系を設け、高速炉1の通常運転時における水33の温度上昇や、運転停止時の水33の温度上昇を防止するようにしても良い。また、プール冷却系に代えて、二次冷却系との間で熱交換を行う熱交換器を設けても良い。
【0056】
プール蓋20の上面には、制御棒や安全棒を駆動する駆動機構18が設置されている。なお、図1では制御棒と安全棒をまとめて棒19で示しているが、実際には複数の制御棒と複数の安全棒が設置されており、駆動機構18によって位置制御される。制御棒や安全棒は、例えば冷却管10と並べらて設置された管32内に挿入される。即ち、制御棒や安全棒は燃料要素3内に挿入される。ただし、各燃料要素3間の隙間7に制御棒や案内棒を挿入するようにしても良い。
【0057】
次に、高速炉1の作動について説明する。
【0058】
流入管30を通じて液体状の炉心冷却材34即ち冷却水が供給され、熱交換器として機能する反射体29によって加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流(内側冷却材)34となる。ここで、供給される冷却水は例えば飽和温度に近い温度の冷却水であり、反射体29で加熱されることでただちに水蒸気又は水蒸気/水2相流34になり、この状態で炉心27へと進入する。つまり、炉心27の冷却は水蒸気34か、又は水蒸気/水2相流34によって行われるので、金属燃料2に対して減速材となる水の割合を少なくできて炉心冷却材34による高速中性子の減少は僅かであり、高速中性子を利用した核分裂連鎖反応を維持できる。
【0059】
反射体29で加熱されて水蒸気又は水蒸気/水2相流34となった炉心冷却材34は運転中の炉心27の温度よりも十分低い。したがって、水蒸気又は水蒸気/水2相流34を使用して炉心27を冷却することができる。水蒸気又は水蒸気/水2相流34は流入側冷却管10→流出側冷却管10へと流れながら炉心27を冷却する。そして、炉心27を冷却して高温になった水蒸気34、又は炉心27を冷却して高温になり更に高ボイド率となった2相流34は反射体29を通過しながらこれを加熱した後、流出管31から流出する。この後、水蒸気又は水蒸気/水2相流34は、例えば図示しない気水分離器で気水分離され、分離した水蒸気のみを図示しない蒸気乾燥器で乾燥させた後、図示しない発電機の蒸気タービンに供給してこれを駆動し発電を行う。その後、水蒸気は図示しない復水器によって液体の状態に戻され、図示しないポンプによって吐出されて流入管30へと循環される。このように、高速炉1の通常運転時には、炉心27で発生した熱は炉心冷却材34を循環させる冷却系(以下、水/蒸気冷却系という)によって高速炉1の外へと伝えられ、炉心27の健全性が保たれる。
【0060】
また、燃料要素3はプール6内に設置されているため、プール6内の水(外側冷却材)33によっても冷却される。プール6内の水33は各燃料要素3間の隙間7を加熱されながら上昇し、自然対流によってプール6内を循環する。尚、プール6内の水33は隙間7では加熱されるため水蒸気/水2相流になっている場合がある。但し、燃料要素3間を抜けると周囲の水に冷却され水に戻る。なお、水33の温度が大きく上昇することが予測される場合等には上述したように図示しないプール冷却系や熱交換器を設けて水33の温度上昇を抑えるようにしても良い。
【0061】
このように、高速炉1では炉心冷却材34とプール6内の水33を使用して燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。
【0062】
ただし、炉心27の冷却能力は、プール6内の水33を利用した冷却系よりも炉心冷却材34を利用した水/蒸気冷却系の方が圧倒的に高い。このため、プール6内の水温は殆ど変化しない。また、炉心27で発生したエネルギーを例えば発電に有効利用することができる。
【0063】
高速炉1では核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、熱中性子を利用する場合に比べてプルトニウムの増殖率を大きくすることができる。このため、ウラン資源を有効利用することができると共に、炉心27を長寿命化することができる。
【0064】
また、高速炉1では、炉心冷却材34として水/蒸気を使用しているので、炉心冷却材として液体金属を使用する場合に比べて、その取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。
【0065】
水/蒸気冷却系に不具合が生じ高速炉1の運転が停止されると、炉心27の崩壊熱は金属燃料2から燃料要素容器9に伝わり、プール6内の水33によって除去される。各燃料要素3の間には僅かではあるが隙間7が存在しているので、プール6内の水33は隙間7を自然対流しながら燃料要素3を冷却する。プール6内には炉心27の崩壊熱を除去するのに十分な量の水が蓄えられているので、水を自然対流させることで炉心27の崩壊熱を除去し健全性を維持することができる。このため、受動的な安全性に優れている。
【0066】
この高速炉1では炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流34を使用しているので、たとえ炉心冷却材34がプール6内の水33に接触しても液体ナトリウムのように激しく反応することがなく、安全性に優れている。また、プール6内に燃料要素3を直接設置することが可能になり、構造を簡単にすることができる。
【0067】
本発明の高速炉1を備える施設21を新規に建設しても良いが、既存の原子炉施設22を改造しても良い。即ち、既存の原子炉施設22の原子炉格納容器23内から当該原子炉施設22の設備を撤去した後、原子炉格納容器23内に燃料要素3を設置すると共に水33を貯め、原子炉格納容器23をプール6に転用して高速炉施設21を建設することもできる。
【0068】
図4に、高速炉施設21の建設方法の一例を示す。図4(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。BWRプラント22では、原子炉建屋24内に原子炉格納容器23を設置し、その中に原子炉容器25を設置している。原子炉格納容器23内から原子炉容器25やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図4(B))。BWRプラント22では、燃料交換の際に原子炉格納容器23内に水を溜め原子炉容器25を水没させるため、原子炉格納容器23のプール6への転用は可能である。
【0069】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約40万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約4mになるので、原子炉格納容器23内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が1割増しの約40万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。なお、原子炉格納容器23の近傍には使用済燃料を一時的に保管するプール28があり、このプール28はそのまま利用できる。
【0070】
このように既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0071】
次に、本発明の使用済み燃料の貯蔵方法について説明する。高速炉1で使用した燃料要素3は使用済み燃料となるが、燃料要素3内には冷却管10が設けられているので、貯蔵時において冷却管10を利用して燃料要素3の崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして有効利用するものである。即ち、本発明の使用済み燃料の貯蔵方法は、冷却管10に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用するものである。
【0072】
この使用済み燃料の貯蔵方法の一例を図11に示す。図11の例では、ガスタービン発電方式によって発電を行なっている。使用済み燃料である燃料要素3は、例えばコンクリートで作られた貯蔵建屋39内に並べられており、貯蔵建屋39によって密封されている。各燃料要素3の流入側冷却管10を供給管37に接続し、各燃料要素3の流出側冷却管10を排出管38に接続している。供給管37と排出管38は例えば発電用のガスタービン40に接続されている。貯蔵時に冷却管10内に循環させる冷却材は、例えば気体冷却材でも液体冷却材でも良い。気体冷却材としては例えばヘリウムガス、炭酸ガス、窒素ガス等の使用が、液体冷却材としては例えば水等の使用が可能である。
【0073】
図示しないポンプ等によって冷却材を供給管37→各燃料要素3→排出管38→ガスタービン40→供給管37へと循環させることで、各燃料要素3を冷却すると共に、各燃料要素3の崩壊熱を回収してガスタービン40で発電機41を駆動させて発電を行うことができる。即ち、使用済み燃料(燃料要素3)の崩壊熱を熱エネルギーとして有効利用することができる。なお、燃料要素3の外側には例えば冷却空気等が循環しており、燃料要素3の外側からも同時に冷却が行なわれる。ただし、燃料要素3の外側からの冷却を省略しても良い。
【0074】
本発明では、冷却管10に冷却材を循環させて燃料要素3の内側から崩壊熱を除去するので、効率よく崩壊熱を除去することができる。即ち、従来の使用済み燃料の貯蔵方法では、例えば特開2000−275395号公報に示す技術のように、使用済み燃料の外側からしか冷却を行うことができなかった。本願発明では、燃料要素3の外側からの冷却に加えて、内側からの冷却も行うことができるので、崩壊熱によって最も高温になっている部分を直接的に冷却することができ、効率よく冷却を行なうことができる。また、燃料要素3の内側から崩壊熱を除去することができるので、隣り合う燃料要素3同士の間隔を狭くすることができ、燃料要素3を密に並べて貯蔵することができる。
【0075】
さらに、燃料要素3に予め設けられている冷却管10をそのまま利用することができるので、貯蔵時にわざわざ冷却管10を後付けする必要がなく、低コストで崩壊熱を熱エネルギーとして回収することができる。低コストで崩壊熱の回収が可能になるので、その実現はより現実的である。また、低コストで崩壊熱の有効利用が可能になるので、例えば使用済み燃料の貯蔵、その貯蔵施設による発電等を収益事業として実施することができる。
【0076】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0077】
例えば、上述の高速炉1では、粒子形状の金属燃料2を燃料要素容器9に充填していたが、例えば図5に示すように、粒子形状の金属燃料2の間に変形可能な金属製チューブ26を挿入し、金属燃料2の温度変化に伴う膨張・収縮に応じて金属製チューブ26を変形させるようにしても良い。金属製チューブ26の上部は不活性ガス溜11に開放されている。また、金属製チューブ26の横断面は、例えば楕円形を成している。
【0078】
また、粒子形状の金属燃料2を充填することに代えて、金属製チューブ26を設置した状態で、例えば溶融状態の金属燃料2を燃料要素容器9内に流し込んで冷却し固化することも考えられる。
【0079】
また、上述の説明では、反射体29を熱交換器として利用していたが、反射体29とは別に熱交換器を設けても良い。
【0080】
また、上述の説明では、水/蒸気冷却系によって図示しない蒸気タービンを駆動するようにしていたが、例えば水/蒸気冷却系と蒸気タービンとの間に二次冷却系や三次冷却系等を設けても良い。
【0081】
また、上述の説明では、炉心冷却材34として液体状の冷却水を炉心27に供給し、これを炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34にしていたが、炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流34を炉心27に供給するようにしても良い。
【0082】
また、上述の説明では、燃料要素3をプール6内に設置していたが、水又は水/水蒸気2相流33中、即ち外側冷却材33中であれば必ずしもプール6内に設置しなくても良い。例えば図6に示すように、原子炉容器25内に燃料要素3を設置すると共に、原子炉容器25内に水又は水/水蒸気2相流33を貯めるようにしても良い。なお、図6の高速炉1では図1の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0083】
原子炉容器25内には、運転停止時にたとえ外部からの冷却材の供給が不能になったとしても、炉心27の崩壊熱を除去し炉心27の健全性を維持することができる程度に十分な量の水又は水/水蒸気2相流33が蓄えられている。原子炉容器25内には円筒状のシュラウド8が設けられており、このシュラウド8内に燃料要素3は設置されている。本実施形態では、燃料要素3の冷却管10は燃料要素容器9を上下に貫通している。図示しない制御棒や安全棒は、例えば炉心の下から挿入される。ただし、炉心の上から挿入する構成としても良い。
【0084】
外側冷却材である水又は水/水蒸気2相流33は流入管30から原子炉容器25内に供給され、原子炉容器25内の底部から燃料要素3の冷却管10内に流入し、炉心27の熱で水蒸気又は水蒸気/水2相流34(内側冷却材)となって上昇する。また、原子炉容器25の底部の水又は水/水蒸気2相流33の一部はそのまま外側冷却材として燃料要素3の間の隙間7に流入し、ここで加熱されて上昇する。そして、水面33aの上に到達した水蒸気は流出管31から流出し、例えば発電等に使用される。また、燃料要素3の内側又は外側を通り抜けた流れの液相部分はシュラウド8を越えて外側冷却材となり、シュラウド8の外側を下降する。このようにして炉心冷却材の流れが形成され、炉心27が冷却される。
【0085】
なお、原子炉容器25内において冷却材を自然対流によって循環させても良いが、図示しないポンプ等を設けて強制的に循環させるようにしても良い。
【0086】
図6の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様に、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34は水蒸気又は水蒸気/水2相流であり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定しているので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0087】
また、図6の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様の効果を得ることができる。つまり、燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。また、燃料要素3の冷却のうち、内と外のいずれか一方が不能になったとしても、もう一方で冷却を行うことができるので、受動的な安全性に優れている。また、核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、プルトニウムの増殖率を大きくすることができ、ウラン資源を有効利用できると共に、炉心27を長寿命化することができる。また、冷却材として水/蒸気を使用しているので、液体金属を使用する場合に比べて取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。また、燃料要素3を水又は水/水蒸気33中に設置しているので、外部からの冷却水の供給が不能になったとしても、原子炉容器25内の水又は水/水蒸気33によって炉心27の崩壊熱を除去することができる。このため、受動的な安全性に優れている。また、冷却材に液体ナトリウムを使用していないので、安全性に優れている。
【0088】
また、上述の説明では、燃料要素3をプール6又は原子炉容器25内に設けることで水又は水/水蒸気2相流33中に設置するようにしていたが、プール6や原子炉容器25以外の容器類類内に設けることで水又は水/水蒸気2相流33に設置するようにしても良い。
【0089】
さらに、上述の説明では、既存の原子炉設備22の原子炉格納容器23を利用して高速炉施設21を建設していたが、原子炉格納容器23以外の設備を利用しても良い。例えば、図7に、高速炉施設21の建設方法の他の実施形態を示す。図7(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。BWRプラント22では、原子炉建屋24内に原子炉格納容器23を設置し、その中に原子炉容器25を設置している。原子炉容器25内から炉心やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水又は水/水蒸気2相流33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図7(B))。
【0090】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約40万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約4mになるので、原子炉容器25内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が1割増しの約40万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。なお、原子炉格納容器23の近傍には使用済燃料を一時的に保管するプール28があり、このプール28はそのまま利用できる。
【0091】
図7の例でも、図4の例と同様に、既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0092】
さらに、上述の説明では、既存の原子炉施設22としてBWRプラントを例に挙げ、BWRプラントを高速炉プラント21に改造していたが、BWRプラント以外の原子炉施設、例えばPWRプラント、ガス炉プラント等を高速炉プラント21に改造しても良いことは勿論である。
【0093】
また、上述の説明では、燃料要素3内の冷却管10に循環させる炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用していたが、水蒸気又は水蒸気/水2相流に限るものではなく、例えば不活性ガス等を使用しても良い。ここで、不活性ガスとしては、例えばヘリウムガスの使用が適している。炉心冷却材34として不活性ガスを使用することで、水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用する場合に比べて、炉心27の熱を除去する能力が向上し、高速炉1の出力密度を大きくすることができ、炉心27を小さくすることができる。特に、ヘリウムガスは炉心の熱を除去する能力が大きいので、出力密度の大きな高速炉1の実現に適している。また、炉心冷却材34として、例えば炭酸ガス、窒素ガス等を使用しても良く、この場合にも炉心27の熱を除去する能力が向上し、高速炉1の出力密度を大きくすることができ、炉心27を小さくすることができる。
【0094】
また、炉心冷却材34として水蒸気又は水蒸気/水2相流を使用した場合と同様に、不活性ガスによって減速される高速中性子の数は少ないので、不活性ガスで炉心27を冷却しても高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0095】
また、燃料要素3の上に崩壊熱冷却塔を設けても良い。崩壊熱冷却塔は、例えばSUS等のステンレス鋼製のブロックで、燃料要素容器9の上に設けられ、プール6内の水33に接触している。崩壊熱冷却塔内に冷却管10内を流れる炉心冷却材34を循環させることで、炉心冷却材34の熱をプール6内の水33に逃がす能力を向上させることができる。
【0096】
図12に、炉心冷却材34として例えばヘリウムガスを使用すると共に、燃料要素3の上に崩壊熱冷却塔36を設けた高速炉1を示す。なお、図12の高速炉1では図1の高速炉1と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0097】
崩壊熱冷却塔36内には例えばU字状の孔36aが設けられており、このU字状の孔36aの入口側には流入側冷却管10が、出口側には流出側冷却管10がそれぞれ接続され、全体としてU字状の循環路が形成されている。炉心冷却材34としてのヘリウムガスは、流入管30→流入側冷却管10→U字状の孔36a→流出側冷却管10→流出管31へと循環し、炉心27を冷却する。
【0098】
この高速炉1では崩壊熱冷却塔36を設けているので、図1の高速炉1に比べて、より多くの熱をプール6内の水33(外側冷却材)に逃がすことができ、外側冷却材による冷却能力を向上させることができる。即ち、燃料要素3で発生した崩壊熱の大部分は燃料要素3の表面からプール6内の水33に伝えられ、また、燃料要素3で発生した崩壊熱の一部は熱伝導および炉心冷却材34としてのヘリウムガスを経由して崩壊熱冷却塔36および反射体29に伝えられ、プール6内の水33に伝えられる。
【0099】
また、燃料要素3の下部には反射体29が設けられており、燃料要素3で発生する中性子を遮蔽することで、流入管30や流出管31等の放射化を防止している。これにより、放射性廃棄物の発生量を減らすことができる。
【0100】
なお、図1の高速炉1では、反射体29を、冷却水34を加熱して水蒸気又は水蒸気/水2相流34に変換する熱交換器として積極的に機能させていたが、図12の高速炉1では、ヘリウムガスを加熱する熱交換器として積極的に機能させることは重要ではない。図12の高速炉1では、反射体29の機能として、中性子の漏れを防ぐ反射体としての機能と、特に何らかの原因によって内側冷却材の循環が停止した場合等に炉心27の熱を水33に逃がす機能が重要である。
【0101】
図12の高速炉1では、炉心27の冷却を主に行う内側冷却材34はヘリウムガスであり、また、炉心27における核分裂連鎖反応を考慮して外側冷却材が流れる隙間7の広さを決定するので、炉心27において高速中性子による核分裂連鎖反応を維持できる。
【0102】
また、図12の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様の効果を得ることができる。つまり、燃料要素3の内と外の両方から冷却を行うことができるので、金属燃料2を良好に冷却することができ冷却性能に優れている。また、燃料要素3の冷却のうち、内と外のいずれか一方が不能になったとしても、もう一方で冷却を行うことができるので、受動的な安全性に優れている。また、核分裂連鎖反応に高速中性子を利用するので、プルトニウムの増殖率を大きくすることができ、ウラン資源を有効利用できると共に、炉心27を長寿命化することができる。また、内側冷却材としてガスを、外側冷却材として水/蒸気を使用しているので、冷却材として液体金属を使用する場合に比べて取り扱いが容易であり、原子炉の構造を簡単なものにすることができる。また、燃料要素3を水又は水/水蒸気33中に設置しているので、外部からの冷却水の供給が不能になったとしても、原子炉容器25内の水又は水/水蒸気33によって炉心27の崩壊熱を除去することができる。このため、受動的な安全性に優れている。また、冷却材に液体ナトリウムを使用していないので、安全性に優れている。
【0103】
即ち、図12の高速炉1でも、図1の高速炉1と同様に、炉心冷却材34を使用して燃料要素3を内側から冷却し、かつ、燃料要素3をプール6内の常温常圧の水33内に入れることにより、動的な機器なしに、金属燃料2の崩壊熱を伝熱のみでプール6内の水33に伝えることが出来るため、小型の高速炉は勿論のこと、中型、大型の高速炉でも崩壊熱の除去を受動的に達成できる。また、炉心冷却材34に水との化学的反応性が強いナトリウムではなく、水(図1の高速炉1)又はヘリウムガス等の不活性ガス(図12の高速炉1)を利用することで常温常圧の原子炉水プールに入れることが可能となっている。
【0104】
図13に、炉心冷却材34として不活性ガスや炭酸ガス、窒素ガス等のガスを使用した高速炉1の発電方式の概略構成を示す。炉心27を冷却することで高温になった炉心冷却材34はプール6の外に導かれ、発電に利用される。発電方式としては、高温になった炉心冷却材34をガスタービン40に導いて発電機41を駆動して発電する方式(図13(A):ガスタービン発電方式)、高温になった炉心冷却材34を蒸気発生器42に導いて蒸気を発生させて蒸気タービン43で発電機41を駆動して発電する方式(図13(B):蒸気発生器・蒸気タービン発電方式)、ガスタービン40による発電機41の駆動と蒸気タービン43による発電機41の駆動を併用する方式(図13(C):ガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式)が考えられる。
【0105】
図14に、炉心冷却材34として不活性ガスや炭酸ガス、窒素ガス等のガスを使用した高速炉1についての、高速炉施設21の建築方法の一例を示す。なお、図14について図4と同一の部材については同一の符号を付してあり、それらの説明を省略する。
【0106】
図14(A)は、例えば既存のBWR(沸騰型軽水炉)プラント22である。原子炉建屋24内に設置された原子炉格納容器23内から原子炉容器25やその他の設備を撤去し、高速炉1の燃料要素3を設置すると共に水33を貯めることで、BWRプラント22を高速炉プラント21に改造することができる(図14(B))。BWRプラント22では、燃料交換の際に原子炉格納容器23内に水を溜め原子炉容器25を水没させるため、原子炉格納容器23のプール6への転用は可能である。
【0107】
なお、高速炉プラント21への改造に伴い、BWRプラント22で使用していた図示しない蒸気タービンをガスタービン40に変更してガスタービン発電方式(図13(A))にしたり、あるいはBWRプラント22で使用していた蒸気タービンをそのまま使用するときには蒸気発生器42を新たに設置して蒸気発生器・蒸気タービン発電方式(図13(B))にしたり、あるいはガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式(図13(C))にする改造等も必要である。
【0108】
例えば、36万KWe級のBWRプラント22では、原子炉建屋24の内部空間の直径は38m、原子炉格納容器23の内部空間の直径は17m、原子炉容器25の直径は9mである。約80万KWe級の高速炉プラント21では炉心27の直径が約5mになるので、原子炉格納容器23内に設置することができる。即ち、36万KWe級のBWRプラント22を改造して、出力が2倍以上の約80万KWe級の高速炉プラント21を建設することができる。
【0109】
図14の例でも、図4の例と同様に、既存の原子炉施設22を利用して最新の高速炉施設21を建設することができるので、高速炉施設21の建設が容易になると共に、その建設費用を安く抑えることができる。また、既存の原子炉施設22の一部を有効活用することができるので、その分だけ廃棄物を減らすことができる。さらに、建設から年数の経った高経年軽水型原子力発電所を最新の高速炉施設21に改造することで、高経年原子炉の保守・管理負担が解消される。
【0110】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、ガスタービン発電方式によって発電を行なっていたが、例えば図13(B)に示す蒸気発生器・蒸気タービン発電方式によって発電を行なっても良く、図13(C)に示すガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式によって発電を行なっても良い。
【0111】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、除去した崩壊熱を発電を行なう熱エネルギーとして利用していたが、発電以外に熱エネルギーを利用しても良い。例えば、熱エネルギーを暖房や給湯設備等に使用しても良く、その他の目的に熱エネルギーを使用しても良い。
【0112】
また、上述の使用済み燃料の貯蔵方法では、高速炉1で使用した燃料要素3を例に説明していたが、高速炉1で使用した燃料要素3以外の燃料要素であっても、内部に冷却管を循環させている燃料要素であれば適用可能である。
【実施例1】
【0113】
本発明の高速炉1の炉心27の寿命を確認するための実験を行った。図3に示す炉心27を設計し、その燃焼特性を計算した。炉心27の中心から半径1.6mの範囲(符号27aで示す領域)内に設置する燃料要素3の金属燃料2は濃縮ウランとして8.5%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、その周囲(符号27bで示す領域、半径1.8m)のブランケット燃料は0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。また、炉心27の高さは2mである。
【0114】
図8に燃料要素3の横断面を、図9に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば64個(8列×8列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。
【0115】
なお、炉心27の仕様は次の通りである。
・燃料要素ピッチP1:107.2mm
・燃料要素高さ:2m
・熱出力:1.4MW/燃料要素
・炉心出力:1GWe、電気出力:330MWe(効率33%)
・燃料要素数:714体
・炉心半径1.6m
・ブランケット(炉心の1/4体積)半径:1.8m
・炉心寿命:60年(130GWd/tの燃焼度)
・燃料濃縮度:8.5%、ブランケット:0.2%
・燃料要素U量:0.215t/燃料要素
・Uインベントリー:154t(濃縮U)、39t(劣化U)
・炉心平均ボイド率:50%、出口ボイド率:90%(飽和蒸気、二相流)
【0116】
また、燃料要素形状は次の通りである。
・冷却管(Zr):水/蒸気2相流、内径4mm、外径5.66mm、肉厚0.83mm
・燃料ユニット:U−10%Zr、ピッチP2:12.99mm
・燃料要素8×8形
・燃料要素被覆材(燃料要素容器):内寸法103.9mm、外寸法105.5mm、肉厚0.82mm
・燃料要素ピッチP1:107.2mm、燃料要素間隔:1.6mm
【0117】
実験の結果を図10に示す。燃焼度が200GW・d/T(ギガワット日/トン)を超えても1.00以上の反応度kを確保することができた。なお、一般的な軽水炉では、1.00以上の反応度kを確保できるのは50GW・d/T程度である。この結果からも明らかなように、本発明の高速炉1の炉心27は長寿命であることが確認できた。
【実施例2】
【0118】
本発明の炉心冷却材34としてヘリウムガスを使用した高速炉1の炉心27の寿命を確認するための実験を行った。図3に示す炉心27を設計し、その燃焼特性を計算した。炉心27の中心から半径1.6mの範囲(符号27aで示す領域)内に設置する燃料要素3の金属燃料2は濃縮ウランとして10.0%のものを使用したU−10%Zr合金(Zrが10%、Uが90%)、その周囲(符号27bで示す領域、半径2.0m)のブランケット燃料は0.2%の劣化ウランを使用したU−10%Zr合金である。また、炉心27の高さは2mである。
【0119】
図15に燃料要素3の横断面を、図16に燃料ユニット35の断面をそれぞれ示す。この例では、金属燃料2として、一旦溶融させたものを型に流し込んで冷却し固化させた燃料ユニット35を使用している。1つの燃料要素容器9内には、例えば36個(6列×6列)の燃料ユニット35が並べられている。各燃料ユニット35には予め冷却管10又は制御棒や安全棒を挿入する管32を設置した後に、溶融金属燃料を流し込んでいる。また、各燃料要素3には、例えば5本ずつ管32が設けられている。
【0120】
なお、炉心27の仕様は次の通りである。
・燃料要素高さ:2m
・炉心出力:1GWe、熱出力:3GW(効率33%)
・熱出力:1.4MW/燃料要素
・燃料要素発生熱量:1.44MW
・燃料要素数:2083体
・炉心半径2.0m
・炉心重金属重量:121t
・燃焼度:120GWd/T
・ブランケット外半径:2.4m(厚さ40cm)
・炉心寿命:約16年(燃料部分平均120GWd/tの燃焼度)
・燃料濃縮度:10%、ブランケット:0.2%
【0121】
また、燃料要素形状は次の通りである。
・冷却管(Heガス)内半径:5mm
・冷却管(SUS)外半径:5.37mm、肉厚:0.37mm
・燃料ユニット:U−10%Zr、ピッチP2:13.1mm
・燃料要素6×6形
・燃料要素被覆材(燃料要素容器):内寸法78.38mm、外寸法79.62mm、肉厚0.67mm
・燃料要素ピッチP1:80.84mm、燃料要素間隔:2.46(1.23×2)mm
【0122】
実験の結果を図17に示す。燃焼度が140000MWd/T(メガワット日/トン)を超えても1.00以上の炉心反応度kを確保することができた。なお、上述の通り、一般的な軽水炉では、1.00以上の反応度kを確保できるのは50GW・d/T程度である。この結果からも明らかなように、本発明の高速炉1の炉心27は長寿命であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明を適用した高速炉の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の高速炉の燃料要素の断面図である。
【図3】図1の高速炉の炉心の概念図である。
【図4】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の実施形態の一例を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図5】金属燃料の間に金属チューブを設けた様子を示す図である。
【図6】本発明を適用した高速炉の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の他の実施形態を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図8】炉心寿命を確認するために行った第1の実験で想定した燃料要素の横断面図である。
【図9】図8の燃料要素を構成する燃料ユニットの横断面図である。
【図10】炉心寿命を確認するために行った第1の実験の計算結果を示し、炉心の燃焼特性を示すグラフである。
【図11】本発明を適用した使用済み燃料の貯蔵方法の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図12】本発明を適用した高速炉の更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図13】図12の高速炉で採用可能な発電方式を示し、(A)はガスタービン発電方式の概略構成図、(B)は蒸気発生器・蒸気タービン発電方式の概略構成図、(C)はガスタービン/蒸気発生器・蒸気タービン併用発電方式の概略構成図である。
【図14】本発明を適用した高速炉施設の建設方法の更に他の実施形態を示し、(A)は改造する前の既存BWRプラントの概略構成図、(B)は改造後の高速炉プラントの概略構成図である。
【図15】炉心寿命を確認するために行った第2の実験で想定した燃料要素の横断面図である。
【図16】図15の燃料要素を構成する燃料ユニットの横断面図である。
【図17】炉心寿命を確認するために行った第2の実験の計算結果を示し、炉心の燃焼特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0124】
1 高速炉
2 金属燃料
3 燃料要素
6 プール
9 燃料要素容器
10 冷却管
21 高速炉施設
22 BWRプラント(原子炉施設)
23 原子炉格納容器
25 原子炉容器
27 炉心
29 反射体(熱交換器)
33 水又は水と水蒸気との2相流
34 水蒸気又は水蒸気と水との2相流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属燃料と、前記金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、前記燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には前記金属燃料は前記冷却管の外周面及び前記燃料要素容器の内側面に接触し、前記冷却管内の前記炉心冷却材と前記燃料要素容器外の前記水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されることを特徴とする高速炉用燃料要素。
【請求項2】
前記炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流であることを特徴とする請求項1記載の高速炉用燃料要素。
【請求項3】
前記炉心冷却材は、不活性ガスであることを特徴とする請求項1記載の高速炉用燃料要素。
【請求項4】
燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、前記燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には前記金属燃料は前記冷却管の外周面及び前記燃料要素容器の内側面に接触しており、前記炉心冷却材と前記水又は水と水蒸気との2相流により前記燃料要素の内と外から冷却を行うことを特徴とする高速炉。
【請求項5】
前記水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、前記燃料要素を前記プール内に設置することを特徴とする請求項4記載の高速炉。
【請求項6】
前記炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流であることを特徴とする請求項4又は5記載の高速炉。
【請求項7】
前記炉心冷却材は、不活性ガスであることを特徴とする請求項4又は5記載の高速炉。
【請求項8】
前記冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を前記燃料要素の下部に設置すると共に、前記冷却管に前記炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の前記冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にすることを特徴とする請求項6記載の高速炉。
【請求項9】
前記熱交換器は前記燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体であることを特徴とする請求項8記載の高速炉。
【請求項10】
前記燃料要素は原子炉容器内に設置されており、前記水又は水と水蒸気との2相流は前記原子炉容器内に貯められていることを特徴とする請求項4記載の高速炉。
【請求項11】
前記水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、前記炉心冷却材を前記冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にすることを特徴とする請求項10記載の高速炉。
【請求項12】
既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、前記原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、前記原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設することを特徴とする高速炉施設の建設方法。
【請求項13】
既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、前記原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、前記既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設することを特徴とする高速炉施設の建設方法。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素を高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、前記冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用することを特徴とする使用済み燃料の貯蔵方法。
【請求項15】
請求項4から11のいずれか1つに記載された高速炉の燃料要素を当該高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、前記冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用することを特徴とする使用済み燃料の貯蔵方法。
【請求項1】
金属燃料と、前記金属燃料を収容し、水又は水と水蒸気との2相流中に設置された燃料要素容器と、前記燃料要素容器内を循環し、炉心冷却材が流れる冷却管とを備え、少なくとも運転時には前記金属燃料は前記冷却管の外周面及び前記燃料要素容器の内側面に接触し、前記冷却管内の前記炉心冷却材と前記燃料要素容器外の前記水又は水と水蒸気との2相流により内と外から冷却されることを特徴とする高速炉用燃料要素。
【請求項2】
前記炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流であることを特徴とする請求項1記載の高速炉用燃料要素。
【請求項3】
前記炉心冷却材は、不活性ガスであることを特徴とする請求項1記載の高速炉用燃料要素。
【請求項4】
燃料要素容器内に金属燃料を密封した燃料要素を水又は水と水蒸気との2相流中に設置すると共に、前記燃料要素内に炉心冷却材を循環させる冷却管を設け、少なくとも運転時には前記金属燃料は前記冷却管の外周面及び前記燃料要素容器の内側面に接触しており、前記炉心冷却材と前記水又は水と水蒸気との2相流により前記燃料要素の内と外から冷却を行うことを特徴とする高速炉。
【請求項5】
前記水又は水と水蒸気との2相流を貯めたプールを備え、前記燃料要素を前記プール内に設置することを特徴とする請求項4記載の高速炉。
【請求項6】
前記炉心冷却材は、水蒸気又は水蒸気と水との2相流であることを特徴とする請求項4又は5記載の高速炉。
【請求項7】
前記炉心冷却材は、不活性ガスであることを特徴とする請求項4又は5記載の高速炉。
【請求項8】
前記冷却管の上流端と下流端との間で熱交換を行う熱交換器を前記燃料要素の下部に設置すると共に、前記冷却管に前記炉心冷却材として冷却水を供給し、炉心冷却後の水蒸気又は水蒸気と水との2相流の熱によって炉心冷却前の前記冷却水を加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にすることを特徴とする請求項6記載の高速炉。
【請求項9】
前記熱交換器は前記燃料要素の下方への中性子の漏れを防ぐ反射体であることを特徴とする請求項8記載の高速炉。
【請求項10】
前記燃料要素は原子炉容器内に設置されており、前記水又は水と水蒸気との2相流は前記原子炉容器内に貯められていることを特徴とする請求項4記載の高速炉。
【請求項11】
前記水又は水と水蒸気との2相流は原子炉容器内に貯められた炉心冷却材であり、前記炉心冷却材を前記冷却管に流入させて炉心の熱で加熱し水蒸気又は水蒸気と水との2相流にすることを特徴とする請求項10記載の高速炉。
【請求項12】
既存の原子炉施設の原子炉格納容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、前記原子炉格納容器内に請求項5から9のいずれか1つに記載の燃料要素を設置すると共に請求項5から9のいずれか1つに記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、前記原子炉格納容器をプールに転用して請求項5から9のいずれか1つに記載の高速炉を備えた施設を建設することを特徴とする高速炉施設の建設方法。
【請求項13】
既存の原子炉施設の原子炉容器内から当該原子炉施設の設備を撤去した後、前記原子炉容器内に請求項10又は11記載の燃料要素を設置すると共に請求項10又は11記載の水又は水と水蒸気との2相流を貯め、前記既存の原子炉施設の原子炉容器を使用して請求項10又は11記載の高速炉を備えた施設を建設することを特徴とする高速炉施設の建設方法。
【請求項14】
請求項1から3のいずれか1つに記載された高速炉用燃料要素を高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、前記冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用することを特徴とする使用済み燃料の貯蔵方法。
【請求項15】
請求項4から11のいずれか1つに記載された高速炉の燃料要素を当該高速炉で使用した後の使用済み燃料の貯蔵方法において、前記冷却管に冷却材を循環させながら貯蔵を行ない、発生する崩壊熱を除去すると共に、除去した崩壊熱を熱エネルギーとして利用することを特徴とする使用済み燃料の貯蔵方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図6】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図6】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−343321(P2006−343321A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106857(P2006−106857)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年10月9日から13日 GLOBAL2005技術プログラム委員会、社団法人日本原子力学会主催の「International Conference GLOBAL 2005(GLOBAL 2005 国際会議)」において文書をもって発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年10月9日から13日 GLOBAL2005技術プログラム委員会、社団法人日本原子力学会主催の「International Conference GLOBAL 2005(GLOBAL 2005 国際会議)」において文書をもって発表
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
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