説明

高速高分離能のゲル電気泳動のためのシステム

ユーザーが高電圧の条件下、泳動時間を短縮して電気泳動実験を実施できる、電気泳動システム、製剤、および方法を説明する。電気泳動システム、製剤、または方法は、当該分野において既に使用されている比較可能なシステムより50%高い電界強度で泳動することができる。説明されるシステムおよび製剤では、225V超、250V超、275V超、300V超、325V超、または350V超の電圧で泳動することができる。電気泳動実験を実施するために必要とされる時間は、約30分未満、約20分未満、約15分未満、または約12分未満にまで短縮され得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ゲル電気泳動に使用するための技法および製剤に関する。より具体的には、本発明は、実質的に中性のpHでの、高速で高分離能のゲル電気泳動のための新規のシステムおよび製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ゲル電気泳動は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ポリペプチド、およびタンパク質等の生体分子を分離するための一般的な手順である。ゲル電気泳動では、分子は、印加した電場がフィルタリングゲルを通ってそれらを移動させる速度によってバンドに分離される。
【0003】
この技法に使用される基本的な装置は、ガラス管に密閉された、またはガラスもしくはプラスチックプレートの間にスラブとして挟まれたゲルから成る。ゲルは、開放型分子ネットワーク構造を有し、導電性の塩の緩衝溶液で飽和された細孔を画定する。ゲルを通るこれらの細孔は、移動する巨大分子の通過を可能にするのに十分に大きい。
【0004】
ゲルは、ゲルと電源のカソードまたはアノードとの間を電気的に接続する緩衝溶液と接触するチャンバーに設置される。巨大分子および追跡用色素を含有する試料は、ゲルの上部に設置される。電位をゲルに印加し、試料巨大分子および追跡用色素をゲルの底部に向かって移動させる。追跡用色素がゲルの端部に達する直前に電気泳動を停止する。その後、分離した巨大分子のバンドの位置を決定する。既知の大きさの追跡用色素および巨大分子と比較して特定のバンドにより移動した距離を比較することにより、他の巨大分子の大きさが決定される。
【0005】
ゲルを通って巨大分子が移動する速度は、ゲルの多孔度、巨大分子の大きさおよび形状、巨大分子の電荷密度、ならびに印加される電界強度の4つの主要因に依存する。電気泳動システムは、一般に、ゲル間および試料間で再現可能であるように、これらの要因を制御する試みである。しかしながら、ゲル間の均一性を維持することは、これらの要因のそれぞれがゲルシステムの化学における多くの可変要素に敏感であるため、困難である。
【0006】
ポリアクリルアミドゲルは、一般に、電気泳動に使用される。ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはPAGEは、ゲルが光学的に透明であり、電気的に中性であり、様々な細孔の大きさで作製することができるため、一般的である。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に、すなわち、SDS−PAGEとして使用される時、巨大分子の電荷密度は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)をシステムに添加することにより制御される。SDS分子は巨大分子と会合し、それらに均一な電荷密度を付与し、実質的に、あらゆる自然分子電荷の作用を無効にする。
【0007】
従来、SDS−PAGEゲルが通常注入され、塩基性pHで泳動された。タンパク質の分離に利用される最も一般的なPAGE緩衝液システムは、OrnsteinおよびDavisにより開発され(Ornstein,L.(1964)Ann.NY Acad.Sci.,121:321(非特許文献1)およびDavis,B.J.(1964)Ann.NY Acad.Sci.:121:404(非特許文献2))、Laemmli(Laemmli,1970,Nature227,680−686(非特許文献3))によってSDSと共に使用するために改変されたものである。Laemmli緩衝液システムは、0.375Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(トリス)から成り、分離ゲル中でHClを用いてpH8.8に滴定される。濃縮用ゲルは0.125Mのトリスから成り、pH6.8に滴定される。アノードおよびカソード泳動緩衝液は、0.024Mのトリス、0.192Mのグリシン、0.1%のSDSを含有する。別の緩衝液システムは、Schaeggerおよびvon Jagowにより開示される(Schaegger,H.and von Jagow,G.,Anal.Biochem.1987,166,368−379(非特許文献4))。
【0008】
Updykeらによる米国特許第7,422,670号(特許文献1)、同第6,783,651号(特許文献2)、同第6,143,154号(特許文献3)、同第6,059,948号(特許文献4)、同第6,096,182号(特許文献5)、同第6,162,338号(特許文献6)、同第5,922,185号(特許文献7)、および同第5,578,180号(特許文献8)は、分離が中性のpHで生じ、タンパク質が実質的に還元状態に留まる、ゲルおよび不連続緩衝液システムを説明する。ゲルシステムは、5.5〜7.5の範囲のpKを有するゲルアミンを含み、ゲル緩衝液のpHは、中性の範囲(pH6〜8)である。ゲルシステムは、ゲルマトリクスおよび保存溶液の改善された安定性を示す。ゲルは、実質的な性能の損失なしに1年を超えて冷蔵下で保存することができる。ゲルシステムは、2〜200kDaの範囲の分離を網羅することができるタンパク質の高分離能を可能にする。しかしながら、ゲルシステムの分離速度は改善することができ、これらのゲル製剤の分離能は、電界強度が50%増加する時、悪化する。
【0009】
低コンダクタンスを生む中性pHの不連続緩衝液システムでタンパク質分離能を維持しながら、または増加させながら、大幅に短縮された泳動時間で、SDS−PAGEゲル上でタンパク質試料を泳動することができ、さらに現在の電気泳動ゲル製剤より約50%大きい電界強度を使用して、そのような結果を達成するのに十分な緩衝能を維持する泳動ゲル製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,422,670号
【特許文献2】米国特許第6,783,651号
【特許文献3】米国特許第6,143,154号
【特許文献4】米国特許第6,059,948号
【特許文献5】米国特許第6,096,182号
【特許文献6】米国特許第6,162,338号
【特許文献7】米国特許第5,922,185号
【特許文献8】米国特許第5,578,180号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ornstein,L.(1964)Ann.NY Acad.Sci.,121:321
【非特許文献2】Davis,B.J.(1964)Ann.NY Acad.Sci.:121:404
【非特許文献3】Laemmli,1970,Nature227,680−686
【非特許文献4】Schaegger,H.and von Jagow,G.,Anal.Biochem.1987,166,368−379
【発明の概要】
【0012】
ここに記載される実施形態において、高電圧および短縮された泳動時間の条件下で、ユーザーが電気泳動実験を実施することを可能にする電気泳動システム、製剤、キット、および方法を説明する。システム、製剤、および方法は、当該分野において既に公知であるものを改良し、ユーザーが、現在の利用可能なシステムおよび製剤より高度の分離能および短縮された時間量で、電気泳動的に分離されたタンパク質試料を生成することを可能にする。今般開示される実施形態によって実践される電気泳動システム、製剤、または方法は、例えば、当該分野において既に使用される比較可能なシステムより50%大きい電界強度で泳動され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるシステム、方法、および製剤によって調製される電気泳動ゲルは、225V超、250V超、275V超、300V超、325V超、または350V超の電圧で泳動することができる。一部の実施形態において、本明細書に記載されるシステム、方法、および製剤によって調製される電気泳動ゲルは、約12v/cm〜約20v/cm、または少なくとも12.0〜13.0V/cm、少なくとも13.5〜14V/cm、少なくとも15.0〜15.5V/cm、少なくとも16.0〜17.0V/cm、または少なくとも17.5〜18.5V/cmの範囲の電界強度を使用することができる。
【0013】
一部の実施形態において、電気泳動実験を実施するために必要とされる時間は、約30分未満、約20分未満、約15分未満、または約12分未満に短縮することができる。
【0014】
一部の実施形態において、電気泳動は、定電流を使用して、本開示の基礎となるゲル製剤を使用して実施することができる。
【0015】
一部の実施形態において、電気泳動は、定電力を使用して、本開示の基礎となるゲル製剤を使用して実施することができる。
【0016】
ここに記載される実施形態による電気泳動システムおよび方法は、不連続緩衝液システムの一部であり得る。
【0017】
電気泳動システムは、ポリアクリルアミド電気泳動分離ゲルを含むことができる。一部の実施形態において、分離ゲルは、分離用ゲル部分、及び分離用部分の上に成型された任意の濃縮用ゲル部分を含む場合がある。一実施形態において、濃縮用部分に存在するポリアクリルアミド、架橋剤、またはポリアクリルアミドおよび架橋剤の双方の比率は、分離用部分に存在するポリアクリルアミドおよび/または架橋剤の比率とは異なる場合がある。
【0018】
一実施形態において、分離用部分は、ビス−アクリルアミド等の約1%〜約6%の適切な架橋剤と組み合わせて、約3%〜約25%のポリアクリルアミドを含むことができる。一実施形態において、分離用ゲル部分は、約2%〜約5%の架橋剤を使用して重合することができる。一実施形態において、分離用ゲルは、最大約25%のポリアクリルアミド、最大約20%のポリアクリルアミド、最大約15%のポリアクリルアミド、最大約12%のポリアクリルアミド、最大約10%のポリアクリルアミド、最大約8%のポリアクリルアミド、最大約6%のポリアクリルアミド、最大約5%のポリアクリルアミドを含むことができる。
【0019】
一実施形態において、電気泳動分離ゲルは、任意に、濃縮用部分、分離用部分、または濃縮用部分および分離用部分の双方に、例えば、スクロース、グリセロール等の稠密化剤(density agent)、または類似する非イオン性稠密化剤を含むことができる。製剤中の稠密化剤の量は、約0〜約10容量%、約0.5〜約5容量%、約1.0容量%〜約3.5容量%、または約1.5容量%〜約2容量%の範囲であり得る。一実施形態において、ゲル製剤に存在する密度濃度は、最大約10容量%、最大約8.5容量%、最大約5容量%、最大約4.5容量%、最大約4容量%、最大約3.5容量%、最大約3容量%、最大約2.5容量%、最大約2容量%、最大約1.5容量、または最大約1.0容量%であり得る。
【0020】
一実施形態において、少なくとも分離用ゲル部分は、ゲル両性電解質と組み合わせてゲルアミン緩衝液を有する緩衝液システムを含むことができる。代替的な実施形態において、濃縮用ゲル部分および分離用ゲル部分の双方は、ゲル両性電解質と組み合わせてゲルアミン緩衝液を含むことができる。
【0021】
種々のゲルアミン緩衝液を、本明細書に記載されるゲル組成物の調製に使用することができる。本発明の電気泳動分離ゲルおよびシステムに使用するのに特に適しているゲルアミン緩衝液は、一級有機アミンまたは置換アミンを含むことができる。ゲルアミン緩衝液のpK範囲は、中性に近く、通常、約5〜約8の範囲、約5.5〜約7.5の範囲、約6〜約7の範囲、約6.2〜約6.8の範囲、または約6.5であり得る。本明細書に記載される電気泳動システムおよび方法に使用するのに適しているゲルアミン緩衝液の例としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン(以後、「ビス−トリス」)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(以後、「ビス−トリスプロパン」)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以後、「トリス」)、トリエタノールアミン(triethaniolamine)、または約5.5〜約7.5の範囲でpKa値を有する任意のそれらの誘導体もしくは塩を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約150mM〜約350mMの範囲、または約165mM〜約325mMの範囲であり得る。通常、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約300mM未満であり得る。ある非限定的な実施形態において、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約175mM〜約300mM、または約190mM〜約295mMの範囲であり得る。一部の実施形態において、選択されるゲルアミン緩衝液は、アクリルアミド成分を重合してポリアクリルアミドマトリクスを形成した後、ゲルマトリクスに固定することができる。
【0022】
一部の実施形態において、本発明の電気泳動分離ゲルおよびシステムに使用するのに特に適しているゲル両性電解質は、アミン基を有し、水溶液中で双性イオンを形成することができるあらゆる生物学的緩衝液を含む。一部の実施形態において、本発明のゲル製剤に使用するのによく適したゲル両性電解質は、ゲルアミンのpKaより約1.5pH単位大きいpK値を有する。非限定的な例として、次の例示的なゲル両性電解質は、ここに記載される実施形態で使用されることが意図される:N−(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(以後、「トリシン」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、ジエチルオールグリシン(以後、「ビシン」)、ピペラジン−N,N′−ビス(2−エタンスルホン酸)(以後、「PIPES」)、3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(以後、「MOPSO」」)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「ACES」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「BES」)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「TES」)、−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(以後、「HEPES」)、2−アミノ−メチル−1,3−プロパンジオール3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(以後、「HEPPS」)、およびN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(以後、「TAPS」)。当然のことながら、少なくとも1つのアミンまたは置換アミンを有し、ゲルに使用するために選択されるゲルアミンより約1.5pH単位大きいpKaをさらに有するあらゆるゲル両性電解質が、ここに記載される実施形態の実践において、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく使用され得ることは、当業者には容易に明らかであろう。両性電解質は、約25mM〜約175mM、約45mM〜約100mM、約50mM〜約75mM、または約50mM〜約60mMの範囲の濃度でゲル製剤に存在し得る。
【0023】
一部の実施形態において、本発明の電気泳動分離ゲルおよびシステムは、電気泳動ゲルの所望のpHが達成されるように、適切な酸で滴定することができる。一実施形態において、電気泳動ゲルのpHが実質的に中性(すなわち、約pH5.5〜約pH7.5の範囲)であるように、十分な量の酸が使用され得る。実施形態において、電気泳動ゲルのpHが約pH5.5〜約pH7.5の範囲、約pH6〜約pH7の範囲、または約pH6.2〜約pH6.8の範囲であるように、十分な量の酸が使用され得る。実施形態において、電気泳動ゲルのpHを実質的に中性、例えば、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、または約7.2のpHに調節するために、十分な量の酸が使用され得る。通常、選択される酸は、塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、または酢酸イオン等の陰イオンの供給源を含むことができるが、これらに限定されない。ゲル製剤に存在する陰イオンは、部分的に、不連続ゲルシステムのリーディングイオン(leading ion)として機能することができる。本実施形態のゲル緩衝液システムの滴定に使用するのに適した酸の例は、塩酸(HCl)であるが、これに限定されない。一実施形態において、電気泳動ゲルは、一級アミンおよび/または両性電解質のおよそ半分程度のHCl(モル基準で)で滴定することができるため、緩衝液のpHはおよそ中性である。一部の実施形態において、電気泳動ゲルの滴定に使用される塩化物イオンの最終濃度は、約95mM〜約175mM、約120mM〜約160mM、約135mM〜約145mM、または約140mMの範囲であり得る。
【0024】
一実施形態において、電気泳動システムは、さらに、水性泳動緩衝液を含むことができる。水性泳動緩衝液は、泳動緩衝両性電解質を含むことができる。一実施形態において、泳動緩衝液は、ゲル両性電解質とは異なる両性電解質を含むことができる。一実施形態において、泳動緩衝両性電解質は、少なくとも1つのアミン基を有する少なくとも1つの有機緩衝両性電解質を含むことができる。一実施形態において、ここに記載されるシステムおよび方法に使用するのに特に適している泳動緩衝両性電解質のpKaは、ゲル緩衝両性電解質のpKaより低い。
【0025】
一部の実施形態において、本発明の電気泳動システムに使用するために選択される水性泳動緩衝両性電解質は、不連続緩衝液システムの基礎となり得る。そのようなシステムにおいて、緩衝両性電解質は、部分的に、不連続緩衝液システムのトレーリングイオン(trailing ion)の供給源として機能することができる。
【0026】
ここに記載するシステムおよび方法で使用するのに適した水性泳動緩衝両性電解質の例としては、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(以後、「DIPSO」)、N'−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(「POPSO」)、HEPPS、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(「HEPPSO」)、もしくは3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(「TAPSO」)、またはそれらのあらゆる適切な塩が挙げられるが、これらに限定されない。通常、水性泳動緩衝液中に存在する両性電解質の量は、約10mM〜約100mM、約15mM〜約75mM、約25mM〜約50mM、または約40mM〜約45mMの範囲である。泳動緩衝液は、任意に、SDSおよび/またはEDTAに加え、トリス等のさらなる緩衝剤を含むことができる。今般開示される実施形態で使用するのによく適した泳動緩衝液の例としては、25〜100mMのMES、25〜100mMのトリス、約0.05〜約0.5%のSDS、および約0.5mM〜約2mMのEDTAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
一部の実施形態において、ここに記載されるシステムおよび方法によって調製される不連続緩衝液電気泳動システムは、250Vを超える電圧で泳動され、30分未満で試料の完全な分離を達成することができる。一部の実施形態において、ここに記載されるシステムおよび製剤によって調製される電気泳動ゲルは、約225V超、約250V超、約275V超、約300V超、約325V超、または約350V超の電圧で泳動することができる。一部の実施形態において、記載されるシステムおよび方法ならびにゲルを使用する電気泳動実験を実施するために必要な時間は、約30分未満、約20分未満、約15分未満、または約12分未満に短縮することができる。
【0028】
一部の実施形態において、電気泳動は、定電流を使用して、本開示の基礎となるゲル製剤を使用して実施することができる。例えば、一部の実施形態において、本発明のゲル製剤は、最大約200mA、最大約175mA、最大約150mA、最大約125mA、または最大約115mAの定電流を使用して電気泳動に供することができる。
【0029】
そのような条件下で本発明の電気泳動分離システムおよび製剤を使用して電気泳動に供される試料は、実質的に、現在使用されているゲル製剤と同程度の分離を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
上記の簡単な説明ならびに本発明の方法および装置のさらなる目的、特色、および利点は、添付の図面と組み合わされる時、本発明による現時点で好ましいが、例示的である実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【図1】357mMのビス−トリス、210mMのCl、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、100mMのビス−トリス、75mMのトリシン、4重量%のスクロース、および20mMのBESを有する8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをMES SDS泳動緩衝液中で15分間、300Vで分離し、SimplyBlue(商標)SafeStainでゲルを染色した。
【図2】357mMのビス−トリス、210mMのCl、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、100mMのビス−トリス、75mMのトリシン、4重量%のスクロース、および20mMのBESを有する8%の分離用ゲル(S:R=41:59)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをMES SDS泳動緩衝液中で16分間、300Vで分離し、SimplyBlue(商標)SafeStainでゲルを染色した。
【図3】357mMのビス−トリス、150mMのHSO、pH6.1を有する4%の濃縮用ゲルを、100mMのビス−トリス、100mMのトリシン、および4重量%のスクロースを有する8%の分離用ゲル(S:R=41:59)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを、MES緩衝液中で18分間、300Vで分離し、SimplyBlue(商標)SafeStainでゲルを染色した。
【図4】図4Aは、178mMのビス−トリス、105mMのCl、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、178mMのビス−トリス、105mMのCl、トリシンなし、および4重量%のスクロースを有する8%の分離用ゲル(S:R=1:3)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1〜3、5、7、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン4に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン6に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で13分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図4Bは、178mMのビス−トリス、105mMのCl、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、178mMのビス−トリス、105mMのCl、トリシンなし、および4重量%のスクロースを有する8%の分離用ゲル(S:R=1:3)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1〜3、5、7、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン4に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン6に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で10分間、350Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。
【図5】228mMのビス−トリス、210mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、および4重量%のスクロースを有するが、BESなしの8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示す。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜7、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で13分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。
【図6】図6Aは、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNOVEX(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、MES SDS泳動緩衝液中で32分間、200Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した、代表的なNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルを示す。図6Bは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、4%のスクロースを有するが、BESなしの8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で29分間、200Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色する。図6Cは、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、MES SDS泳動緩衝液中で20分間、250Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した、代表的なNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルを示す。図6Dは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、4%のスクロースを有するが、BESなしの8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で19分間、250Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色する。図6Eは、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、MES SDS泳動緩衝液中で16分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した、代表的なNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルを示す。図6Fは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、4%のスクロースを有するが、BESなしの8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜6、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン7に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で16分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色する。
【図7】図7Aは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、1.5%のスクロースを有するが、BESなしの8%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で14分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図7Bは、20ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、レーン1、3、8、10、11、13、18、および19は、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを添加され、レーン5は10μgの大腸菌可溶化液を添加され、レーン16は10μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを添加され、ゲルはMES緩衝液中で35分間、200Vで泳動され、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色された。図7Cは、20ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、レーン1、3、8、10、11、13、18、および19は、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを添加され、レーン5は10μgの大腸菌可溶化液を添加され、レーン16は10μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを添加され、ゲルは、MES緩衝液中で22分間、250Vで泳動され、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色された。図7Dは、図7A(灰色の棒)、図7B(黒色棒)、および図7C(白色棒)に記載されるゲル製剤を使用した、7つの独立した実験を平均した、Mark12(商標)タンパク質マーカー一式の各個別のバンド(画素領域により測定)の相対的な鮮鋭度を示す棒グラフである。X軸はバンド番号を示し、バンド番号1は、200kDaのMark12(商標)のバンドであり、バンド12は、2.5kDaのバンドである。図7Eは、示される非線形動態TOTALLAB(商標)v2003.02ソフトウェアまたはQCソフトウェアのいずれかを使用して、図7A、図7B、および図7Cに記載される各ゲル製剤について得られた平均R値を示すグラフである。
【図8】図8Aは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、1.75%のスクロースを有するが、BESなしの10%の分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で16分間、300Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図8Bは、10ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの10%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES緩衝液中で36分間、200Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図8Cは、10ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの10%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES緩衝液中で24分間、250Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図8Dは、図8A(灰色の棒)、図8B(黒色棒)、および図8C(白色棒)に記載されるゲル製剤を使用した、7つの独立した実験を平均した、Mark12(商標)タンパク質マーカー一式の各個別のバンド(画素領域により測定)の相対的な鮮鋭度を示す棒グラフである。X軸はバンド番号を示し、バンド番号1は、200kDaのMark12(商標)のバンドであり、バンド12は、2.5kDaのバンドである。図8Eは、示されるTOTALLAB(商標)ソフトウェアまたはQCソフトウェアのいずれかを使用して、図8A、図8B、および図8Cに記載される各ゲル製剤について得られた平均R値を示すグラフである。
【図9】図9Aは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%のスクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、1.5〜2%のスクロースを有するが、BESなしの4〜12%の勾配ゲルの上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で17分間、300Vで泳動し、ゲルをSimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図9Bは、10ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの4〜12%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES緩衝液中で37分間、200Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図9Cは、10ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの4〜12%のビス−トリスゲルの代表的な画像を示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、4〜7、9、および10に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン3に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加し、ゲルをMES緩衝液中で25分間、250Vで泳動し、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。図9Dは、図9A(灰色の棒)、図9B(黒色棒)、および図9C(白色棒)に記載されるゲル製剤を使用した、7つの独立した実験を平均した、Mark12(商標)タンパク質マーカー一式の各個別のバンド(画素領域により測定)の相対的な鮮鋭度を示す棒グラフである。X軸はバンド番号を示し、バンド番号1は、200kDaのMark12(商標)のバンドであり、バンド12は、2.5kDaのバンドである。図9Eは、示されるTOTALLAB(商標)ソフトウェアまたはQCソフトウェアのいずれかを使用して、図9A、図9B、および図9Cに記載される各ゲル製剤について得られた平均R値を示すグラフである。
【図10】図10Aは、357mMのビス−トリス、210mMのCl、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、2%重量%のスクロースを有するが、BESなしの12%分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1〜10に添加する。ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で15分間、300Vで泳動し、ゲルをSimplyBlue(商標)SafeStainでゲルを染色した。図10Bは、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、0%スクロース、pH6.5を有する4%の濃縮用ゲルを、228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、4%重量%のスクロースを有するが、BESなしの12%分離用ゲル(S:R=1:4)の上に成型した、一実施形態による代表的な試験ゲルを示し、ここで、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1〜10に添加する。ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で26分間、300Vで泳動し、ゲルをSimplyBlue(商標)SafeStainでゲルを染色した。図10Cは、図10A(黒色の棒)および図10B(斜線棒)に記載されるゲル製剤を使用した、4つの独立した実験を平均したMark12(商標)タンパク質マーカー一式の各個別のバンド(画素領域により測定)の相対的な鮮鋭度を示す棒グラフである。X軸はバンド番号を示し、バンド番号1は、200kDaのMark12(商標)のバンドであり、バンド12は、2.5kDaのバンドである。
【0031】
本発明は、種々の修正および変形形態が可能であるが、その特定の実施形態を図面において例として示し、本明細書で詳細に説明する。図面は原寸に比例しない場合がある。図面およびそれに対する詳細な説明は、本発明を開示される特定の形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、添付の請求項により定義される本発明の趣旨および範囲内に含まれる全ての修正、均等物、および変形を網羅することが意図されることを理解するべきである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態の詳細な説明
定義
本明細書全体を通して使用される用語は、一般に、各用語が使用される当該分野、本発明の内容内、および特定の内容において、通常の意味を有する。本発明のデバイスおよび方法、ならびにそれらをどのように作製し、使用するかを説明することによって、実施者にさらなる手引きを提供するために、特定の用語が以下、または本明細書の別の箇所で説明される。同様のことに対する言い方が一つではないことが理解されるだろう。ゆえに、代替的な用語および同義語が、本明細書で説明される用語のいずれか1つ以上について使用されてもよく、その用語が本明細書において詳記されているか、またはより詳細に説明されているかどうかに関わらず、いかなる特別な意味合いも課されるものではない。特定の用語について、同義語が提供される。1つ以上の同義語の説明が、他の同義語の使用を妨げることはないものとする。本明細書で説明されるいずれかの用語の例を含む、本明細書のいずれかの箇所での例の使用は、例示的であるに過ぎず、本明細書に記述される実施形態のいずれかの、またはいかなる例示的用語の範囲および意味をも決して制限するものではない。
【0033】
本明細書に使用される、「不連続緩衝液」、「不連続システム」、および「不連続緩衝液システム」という用語は、一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動システムに使用される2つの水性緩衝液システムのうちの1つを指す。不連続緩衝液システムは、機能的および化学的に、連続緩衝液システムとは異なる。通常、連続システムは、単一の分離ゲルのみを有し、槽およびゲルで同じ緩衝液を使用する。不連続システムでは、濃縮用ゲルと呼ばれる非制限的な粗孔ゲルが、分離ゲル(時折、「分離用ゲル」とも呼ばれる)の上に重ねられる。各ゲルは、同じ、または異なる緩衝液で作製することができ、槽の緩衝液は、ゲルの緩衝液とは異なる。不連続性は、早く移動するリーディングイオン(例えば、塩化物)と、ゆっくり移動するトレーリングイオン(MES、MOPS、グリシン、またはトリシン)のイオン移動度の相違によって作り出される。分析物分子の明瞭な開始ゾーンを作り出す不連続システムの濃縮作用により、不連続システムで得られる分離能は、分析物の希釈溶液を含有する試料において、連続システムで得られる分離能より非常に高い。連続緩衝液システムと不連続緩衝液システムの相違は、本発明が属する分野の当業者に周知である。
【0034】
「バンド鮮鋭度」という用語は、それらが種々のゲル製剤に現れる移動したバンドの鮮鋭度を比較するために使用される相対的用語である。本用語は、特に、種々のゲル製剤のうちの2つ以上の間の相対的バンド鮮鋭度を比較する時に使用される。バンド鮮鋭度を決定するために、種々の方法を使用することができる。例えば、得られる分離能の程度により、バンド鮮鋭度、またはバンド鮮鋭度が改善される程度が、視覚的検査により決定されてもよい。バンド鮮鋭度のより定量的推定を得るために、ユーザーは、ゲル撮像ソフトウェアを利用することができる。当該分野において通常使用されるゲル分析ソフトウェアの例としては、例えば、TOTALLAB(商標)ソフトウェア(Nonlinear Dynamics Ltd,Durham,NC)、GEL−PRO(商標)分析器(Media Cybernetics,Bethesda,MD)、またはLABIMAGE(登録商標)1D L300ゲル分析ソフトウェア(LabImage,Leipzig,Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。バンド鮮鋭度は、ゲルの各分離されたバンドの領域を測定し、領域を各ウェルの幅(一般に、一定である)で割ることにより決定することができる。バンド鮮鋭度を決定する別の方法は、ゲル分析アルゴリズムにより検出される個別のピークの幅を直接測定することであってもよい。
【0035】
ユーザーが、高電圧および短縮された泳動時間の条件下で電気泳動実験を実施できる、電気泳動システム、製剤、および方法を本明細書で説明する。システム、製剤、および方法は、当該分野において既に公知であるものを改良し、ユーザーが、現在の利用可能なシステムおよび製剤より高分離能および短縮された泳動時間量で、電気泳動的に分離されたタンパク質を生成することを可能にする。ここで開示される実施形態によって実践される電気泳動システム、製剤、または方法は、当該分野において既に使用される比較可能なシステムより50%大きい電界強度で泳動することができる。例として、ここに記載されるシステムおよび製剤によって調製される電気泳動ゲルは、約225V超、約250V超、約275V超、約300V超、約325V超または約350V超の電圧で泳動することができる。電気泳動を実施するために必要とされる時間は、約30分未満、約20分未満、約15分未満、または約12分未満に短縮することができる。一部の実施形態において、電気泳動は、定電流を使用して、本開示の基礎となるゲル製剤を使用して実施することができる。例えば、一部の実施形態において、本発明のゲル製剤は、最大約200mA、最大約175mM、最大約150mM、最大約125mM、または約115mMの定電流を使用する電気泳動に供することができる。
【0036】
実施形態において、電気泳動システムは、ゲルおよび緩衝液システムを含むことができ、分離は、実質的に中性のpHで生じる。いかなる特定の理論またはメカニズムにも拘束されることなく、pH中性の電気泳動システムの使用は、電気泳動に供される試料(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物等)内の生体分子が、完全に、または実質的に減少せず、加水分解されないままであることを確実にすると考えられている。好都合に、中性のpHでは、タンパク質の一級アミノ基は、非重合アクリルアミドとの反応が低く、それによって、より高い分離能および改善されたバンド鮮鋭度を可能にする。加えて、中性のpHでは、チオール基は、SDS−PAGEが従来実施されるよりアルカリ性の条件下よりも酸化しにくい。本開示の基礎となるゲル製剤は、一部の実施形態において、不連続緩衝液システムの一部として使用される時に最適に機能し得る。不連続緩衝液システムは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、またはアノードおよびカソードチャンバーの双方において、ゲルに存在する緩衝液とは異なる水性緩衝液を使用するものである。水性泳動緩衝液の濃度は、電気泳動ゲルの緩衝液濃度とは異なっていてもよい。一部の実施形態において、本開示によるゲル製剤は、濃縮用ゲルおよび分離用ゲルを含むことができる。
【0037】
得られるゲル電気泳動システムは、高電圧でゲルマトリクスおよび緩衝溶液の改善された安定性を示し、それによって、バンド分離能を損なうことなく従来の電気泳動システムより高電圧でのゲル電気泳動の実施を可能にする。今般記載される製剤および方法によって調製されるゲルは、性能を損なうことなく、少なくとも最大約16ヵ月間冷蔵下で保管することができる。加えて、重合開始剤を含まない保存緩衝液および保存ゲル溶液は、性能を損なうことなく、数週間以上室温で保管することができる。本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用することにより、例えば、8%のポリアクリルアミドゲルは、15分未満で、約2〜250kDaの分離範囲でタンパク質試料を分離することができる。
【0038】
一部の実施形態において、ゲル製剤は、濃縮用ゲルおよび分離用ゲルを含むことができる。分離用ゲルに対する濃縮用ゲルの割合(S:Rとも表示される)は、約0.5:9.5、約1:9、約1.5:8.5、約2:8、約2.5:7.5、約3:7、約3.5:6.5、約4:6、約4.5:5.5、または約1:1であることができる。濃縮用ゲルおよび分離用ゲルという用語の意味は、不連続ゲル電気泳動システムの内容について使用される時、当該分野の通常の技能を有する実施者に周知である。通常、濃縮用ゲル中に存在するポリアクリルアミドおよび/または架橋剤(例えば、ビス−アクリルアミド)の比率は、分離用ゲル中に存在するポリアクリルアミドおよび/または架橋剤の比率より低い場合がある。一部の実施形態において、濃縮用ゲル中に存在するポリアクリルアミドの比率は、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満である。
【0039】
電気泳動システムおよび製剤の一実施形態において、約3%〜約25%(%T)のアクリルアミドの分離用ポリアクリルアミドゲルは、ビスアクリルアミド等の、約1%〜約6%の適切な架橋剤(%C)を使用して重合される。実施形態において、ゲルは、ゲル緩衝液の存在下、約2%〜約5%の架橋剤(%C)を使用して重合される。実施形態において、ポリアクリルアミドゲルは、25%のアクリルアミド、24%のアクリルアミド、23%のアクリルアミド、22%のアクリルアミド、21%のアクリルアミド、20%のアクリルアミド、19%のアクリルアミド、18%のアクリルアミド、17%のアクリルアミド、16%のアクリルアミド、15%のアクリルアミド、14%のアクリルアミド、13%のアクリルアミド、12%のアクリルアミド、11%のアクリルアミド、10%のアクリルアミド、9%のアクリルアミド、8%のアクリルアミド、7%のアクリルアミド、6%のアクリルアミド、または5%のアクリルアミドを含むことができる。
【0040】
電気泳動システムおよび製剤の実施形態において、化学的還元環境を維持するために、ゲル、緩衝液、または添加液のうちの1つ以上に還元剤を任意に含むことができる。種々の適切な還元剤が当該分野において公知であり、それらのいずれも本明細書に開示される実施形態で使用するのに適している。例として、チオグリコール酸(TGA)または亜硫酸水素ナトリム等の還元剤が製剤に添加され得るが、これらに限定されない。そのような還元剤の適切な濃度範囲は、約0.5mM〜約20mM、約1mM〜約15mM、約2mM〜約10mM、または約5mM〜約7.5mMであり得る。任意の還元剤を含む一部の実施形態において、還元剤は、ゲル泳動緩衝液に添加することができる。
【0041】
好ましくはあるが、ある非限定的な実施形態において、SDSは、実質的に電気泳動ゲルに含まれず、代わりに泳動緩衝液および/または添加液中に提供される。種々の適切な泳動緩衝液が、以下により詳細に記載される。
【0042】
一部の実施形態において、ここに記載される実施形態によるポリアクリルアミドゲルは、一級有機アミン、または一もしくは二置換アミン緩衝液を含むことができる。ゲルアミン緩衝液のpK範囲は、中性に近く、通常、約5〜約8の範囲、約5.5〜約7.5の範囲、約6〜約7の範囲、約6.2〜約6.8の範囲、または約6.5であり得る。ゲルアミン緩衝液のpK範囲は、中性に近く、通常、約5〜約8の範囲、約5.5〜約7.5の範囲、約6〜約7の範囲、約6.2〜約6.8の範囲、または約6.5であり得る。本明細書に記載される電気泳動システムおよび方法に使用するのに適したゲルアミン緩衝液の例としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン(以後、「ビス−トリス」)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(以後、「ビス−トリスプロパン」)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以後、「トリス」)、トリエタノールアミン(triethaniolamine)、または約5.5〜約7.5の範囲でpKa値を有するそれらの誘導体もしくは塩を含むが、これらに限定されない。当然のことながら、少なくとも1つの一級アミン、または置換アミンを有し、5.5〜7.5の範囲のpKaをさらに有するあらゆるゲルアミン緩衝液が、ここに記載される実施形態の実践中、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく使用され得ることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0043】
一部の実施形態において、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約150mM〜約350mMの範囲、または約165mM〜約325mMの範囲であり得る。通常、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約300mM未満であり得る。ある非限定的な実施形態において、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝液の濃度は、約175mM〜約300mM、または約190mM〜約295mMの範囲であり得る。
【0044】
一部の実施形態において、ゲルアミン緩衝液は、その他の水性成分が混合される時、および重合反応開始前に、水性溶液として、分離用ゲル、濃縮用ゲル、または分離用ゲルおよび濃縮用ゲルの双方に直接添加することができる。あるいは、ゲルアミン緩衝液は、所望の濃度のゲルアミン緩衝液を含有する水性溶液に重合したゲルを浸漬し、ゲルアミン緩衝液を重合したゲルマトリクスに浸透させることによりゲルマトリクスに組み込むことができる。
【0045】
一部の実施形態において、電気泳動システムの基礎となるポリアクリルアミドゲルは、上述のゲルアミンと組み合わせてゲル両性電解質を含むことができる。本発明のゲル製剤と使用するのに適したゲル両性電解質は、アミン基を有し、水性溶液中で双性イオンを形成することができるあらゆる生物学的緩衝液を含み得るが、これに限定されない。一部の実施形態において、本発明のゲル製剤と使用するのによく適したゲル両性電解質は、ゲルアミンのpKa値より約1.5pH単位大きいpK値を有する。非限定的な例として、次の例示的なゲル両性電解質は、ここに記載される実施形態で使用されることが意図される:N−(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(以後、「トリシン」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、ジエチルオールグリシン(以後、「ビシン」)、ピペラジン−N,N′−ビス(2−エタンスルホン酸)(以後、「PIPES」)、3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(以後、「MOPSO」)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「ACES」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「BES」)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(以後、「TES」)、−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(以後、「HEPES」)、2−アミノ−メチル−1,3−プロパンジオール3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(以後、「HEPPS」)、およびN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(以後、「TAPS」)。当然のことながら、少なくとも1つのアミンまたは置換アミンを有し、ゲルに使用するために選択されるゲルアミンより約1.5pH単位大きいpKaをさらに有するあらゆるゲル両性電解質が、ここに記載される実施形態の実践において、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく使用され得ることは、当業者には容易に明らかであろう。両性電解質は、約25mM〜約175mM、約45mM〜約100mM、約50mM〜約75mM、または約50mM〜約60mMの範囲の濃度でゲル製剤に存在し得る。
【0046】
一部の実施形態において、ゲル両性電解質は、その他の水性成分が混合される時、かつ重合反応開始前に、水性溶液として、分離用ゲル、濃縮用ゲル、または分離用ゲルと濃縮用ゲルの双方に直接添加することができる。あるいは、ゲル両性電解質は、所望の濃度のゲル両性電解質を含有する水性溶液に重合したゲルを浸漬し、ゲル両性電解質を重合したゲルマトリクスに浸透させることによりゲルマトリクスに組み込むことができる。
【0047】
一部の実施形態において、本発明の緩衝液ゲルシステムおよび製剤は、電気泳動ゲルの所望のpHが達成されるように、適切な酸で滴定することができる。実施形態において、電気泳動ゲルのpHが実質的に中性(すなわち、約pH5.5〜約pH7.5の範囲)であるように、十分な量の酸が使用され得る。実施形態において、電気泳動ゲルのpHが約pH5.5〜約pH7.5の範囲、約pH6〜約pH7の範囲、または約pH6.2〜約pH6.8の範囲であるように、十分な量の酸が使用され得る。実施形態において、電気泳動ゲルのpHを実質的に中性、例えば、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、または約7.2のpHに調節するために、十分な量の酸が使用され得る。排他的ではないが、通常、選択される酸は、塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、または酢酸イオン等の陰イオンの供給源を含むことができる。ゲル製剤に存在する陰イオンは、部分的に、不連続ゲルシステムのリーディングイオンとして機能することができる。本発明の実施形態のゲル緩衝液システムの滴定に使用するのに適した酸の例としては、塩酸(HCl)であるが、これに限定されない。実施形態において、電気泳動ゲルは、一級アミンおよび/または両性電解質のおよそ半分程度のHCl(モル基準で)で滴定することができるため、緩衝液のpHはおよそ中性である。一部の実施形態において、電気泳動ゲルの滴定に使用される塩化物イオンの最終濃度は、約95mM〜約175mM、約120mM〜約160mM、約135mM〜約145mM、または約140mMの範囲であり得る。
【0048】
一部の実施形態において、不連続緩衝液システムでリーディングイオンとして機能する陰イオンは、濃縮用ゲル、分離用ゲル、または濃縮用ゲルと分離用ゲルの双方に存在することができる。ここに記載されるゲル製剤に使用するのに適したリーディングイオンの例としては、塩化物、リン酸イオン、硫酸イオン、または酢酸イオン等の陰イオンを含むことができるが、これらに限定されない。そのような陰イオンの供給源は、HClまたはあらゆる酸ハロゲン化物、リン酸、硫酸、または酢酸を含むことができる。
【0049】
一実施形態において、リーディングイオンの濃度は、分離用ゲルより濃縮用ゲルにおいて高い場合がある。別の実施形態において、リーディングイオンの濃度は、実質的に、分離用ゲルと濃縮用ゲルにおいて同じであり得る。一部の実施形態において、濃縮用ゲル中のリーディングイオンの濃度は、最大約350mM、最大約300mM、最大約250mM、最大約200mM、最大約150mM、最大約125mM、最大約110mM、最大約100mM、または最大約75mMであり得る。
【0050】
一部の実施形態において、ここに記載される実施形態による電気泳動ゲルは、任意に、例えば、スクロース、グリセロール、または類似する剤等の稠密化剤を含むことができる。製剤に含まれる稠密化剤の量は、約0〜約8重量%、約0.5〜約5重量%、約1.0重量%〜約3.5重量%、または約1.5重量%〜約2重量%の範囲であり得る。実施形態において、ゲル製剤中に存在するスクロースの濃度は、最大約10%、最大約8.5%、最大約5%、最大約4.5%、最大約4%、最大約3.5%、最大約3%、最大約2.5%、最大約2%、最大約1.5%、最大約1%、または最大約0.5%であり得る。一部の実施形態において、電気泳動ゲル中に存在する稠密化剤の量は、変動し得る。そのような実施形態は、例えば、米国特許第6,472,503号および同第6,197,173号に記載される方法等の、勾配ゲルの調製中に有利に使用することができる。
【0051】
上に開示される製剤によって調製されるゲルは、水性泳動緩衝液システムを使用して電気泳動に供することができる。通常、水性泳動緩衝液システムは、少なくとも1つのアミン基を有する、少なくとも1つの緩衝両性電解質を含むことができる。一実施形態において、本発明の不連続電気泳動システムと使用するために選択される泳動緩衝両性電解質は、水性泳動緩衝液と使用される電気泳動ゲルに存在するゲル緩衝両性電解質とは異なる。一実施形態において、選択される泳動緩衝両性電解質のpKは、使用されるゲル緩衝両性電解質のpKより低い場合がある。
【0052】
ある特定の好ましい実施形態において、選択される水性泳動緩衝両性電解質は、好ましくは、不連続緩衝液システムの基礎となるだろう。そのようなシステムにおいて、泳動緩衝両性電解質は、部分的に、不連続緩衝液システムのトレーリングイオンの供給源として機能することができる。実施形態において、ここに記載されるシステムおよび方法で使用するのに特に適した泳動緩衝両性電解質のpKaは、ゲル緩衝両性電解質のpKaより低い。
【0053】
ここに記載するシステムおよび方法で使用するのに適した水性泳動緩衝両性電解質の例としては、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(以後、「DIPSO」)、N'−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(「POPSO」)、HEPPS、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(「HEPPSO」)、もしくは3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(「TAPSO」)、またはそれらのあらゆる適切な塩が挙げられるが、これらに限定されない。通常、水性泳動緩衝液中に存在する両性電解質の量は、約10mM〜約100mM、約15mM〜約75mM、約25mM〜約50mM、または約40mM〜約45mMの範囲である。泳動緩衝液は、任意に、SDSおよびEDTAに加え、トリス等のさらなる緩衝剤を含むことができる。今般開示される実施形態で使用するのによく適した泳動緩衝液の例としては、25〜100mMのMES、25〜100mMのトリス、約0.05〜約0.5%のSDS、および約0.5mM〜約2mMのEDTAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
このゲルおよび緩衝液システムは、ゲルマトリクスおよび保存溶液の改善された安定性も有する。このシステムによって調製されるゲルは、アクリルアミド加水分解により性能を損なうことなく、1年を超えて冷蔵下で保管することができる。また、重合開始剤を含まない保存緩衝液および保存ゲル溶液は、性能を損なうことなく、少なくとも数週間、室温で保管することができる。
【0055】
このゲル製剤の実施形態において、電気泳動ゲルは、中性に近いpKaを有する一級有機アミンまたは置換アミン、および上述のモル以下の酸または両性電解質緩衝液を含むゲル緩衝溶液で均一に飽和されるため、緩衝液のpHは、約pH6〜pH8、好ましくは約pH6.5〜pH7.5、最も好ましくは6.5〜7.0である。電気泳動ゲルは、あらゆるアガロースもしくはポリアクリルアミドゲル、またはアガロースとポリアクリルアミドの双方を含有する複合ゲルであり得る。好ましくは、電気泳動ゲルは、約1%〜約6%の架橋剤(%C)を使用して重合される、3%〜25%(%T)のアクリルアミドを含む。より好ましくは、このポリアクリルアミドゲルは、約2%〜約5%の架橋剤(%C)を使用して重合される。好ましくは、アミンは、ビス−トリスまたはN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、最も好ましくはビス−トリスを含む。適切な酸および双性イオン化合物は、トリシン、ビシン、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸、2−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス−(ヒドロキシメチル)−2−エタンスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、および3−(N−トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸である。
【0056】
ゲルおよび緩衝液システムにおいて、ポリアクリルアミドマトリクスの加水分解によりゲルの性能が低下するにつれて、電流が増加し、移動速度が減少する。荷電種を生み出す、高濃度で存在する中性物質の任意の分解が、電気泳動を乱す傾向があるだろう。この乱れは、生み出された余分な電流から発生し、これは、次に、分離を補助することなくジュール加熱を増加させる。加えて、カソードおよびアノードの緩衝液中に存在しない、ゲル中に形成される陰イオンおよび陽イオンの加水分解産物から、不連続が生じる。ゲル緩衝種または添加物の加水分解は、独立して、ゲルマトリクス組成物から起こる。移動速度の減少は、ゲルのポリアクリルアミドのアルカリに触媒された加水分解により生じる、ゲル中の高い固定電荷に起因する場合がある。固定電荷は、著しい水の向流をもたらし、これは、巨大分子の移動速度を遅らせ得る。低分離能、電流の増加、移動速度の減少を生み出すゲルの不安定性の問題は、中性近くに緩衝したゲルを用い、且つ中性近くのpKaを有する緩衝物質を用いることによって解決することができることが分かっている。そのような緩衝液システムは、ゲルが塩基安定性ポリマーで作製されていても、新鮮な、または既製のポリアクリルアミドゲルの、及び尿素またはホルムアミド等のアルカリ不安定性の材料を含有する、新鮮な、または既製のゲルの性能を改善する。
【0057】
いずれか1つの特定の理論または作用メカニズムに拘束されることなく、アノードおよびカソード緩衝液に対してゲル中に異なる緩衝物質を使用することが有利であることが決定している。一部の実施形態において、陰イオンはアノード緩衝液外に移動しないため、ゲルまたはカソード緩衝液に使用される陰イオン物質は、アノード緩衝液中に存在する必要がない。
【0058】
これらの緩衝液システムは、保管および泳動中のpH中性のゲル、最低限の費用、および最速の泳動時間の利益を提供する。
【0059】
本発明の不連続電気泳動ゲルを調製するための種々の方法は、当業者に公知であり、いかなるそのような方法は、限定されることなく電気泳動ゲルを調製するために利用することができる。当業者が不連続電気泳動ゲルを調製するために使用することができる例示的な方法の1つを以下に説明する。しかしながら、本実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく、不連続電気泳動ゲルを調製する他の方法が同様に利用され得ることは、容易に理解されるだろう。
【0060】
実施形態において、アクリルアミドおよびビス−アクリルアミドの保存水溶液が調製され得る。任意に、アクリルアミドおよびビス−アクリルアミドの単一保存溶液を調製することができる。加えて、スクロース、ゲルアミン、ゲル両性電解質、および酸を含有する塩化物の分離保存水溶液を調製することができる。任意に、SDSおよび還元剤の分離保存溶液を調製することができる。最後に、過硫酸アンモニウム(APS、通常10重量%)およびテトラメチルエチレンジアミン(TEMED、通常4重量%〜10%)の保存溶液が調製される。APSおよびTEMEDを除く最終組成物が各構成物の正しい濃度が存在するように、各個別の成分の所望の濃度、および適切な希釈液(例えば、水)で調節された容量を有するように、適切な量の種々の保存溶液を混合することができる。この時点で、APSおよびTEMEDは、アクリルアミドおよびビス−アクリルアミドの重合が開始するように添加される。その後、混合物をガラスまたはプラスチックのプレートの間に成型することができる。ゲルが成型されるプレート間の空間が2mm〜0.5mm離れるように、プレートは相互に離され得る。加えて、プレート間の間隔は、少なくとも3方が密閉される。任意に、薄層のブタノールまたは水性緩衝液を重合ゲルの表面に添加して、重合ゲル組成物の表面張力を低減し、重合ゲルの上端が実質的に真っすぐであることを確実にすることができる。重合ゲル組成物をプレート間に成型した後、ゲル組成物を適切な量の時間静止させ、実質的に完全なアクリルアミドおよびビス−アクリルアミドモノマーの重合を達成する。
【0061】
一部の実施形態において、濃縮用ゲル溶液は別々に調製され、重合した分離用ゲルの上に成型される。種々の他のS:R比も上述および以下に例示するように利用されるが、完全に重合した電気泳動ゲルのS:R比は、通常、約1:4または約1.9:7.5である。濃縮用ゲルが成型された後、しかし、重合反応が進行して完了する前に、1つ以上のくしが、2つのガラス、またはプラスチック製のくしの間の水性重合濃縮用ゲル組成物中に挿入され、これによって、試料が使用直前に添加され得る複数のウェルを画定することができる。あるいは、濃縮用ゲルが使用されない実施形態において、くしを上述の重合水性分離用ゲル混合物中に挿入することができる。通常、必須ではないが、電気泳動ゲルが使用可能になるまで、くしは所定の位置に保持され得、その後くしが取り外され、重合したポリアクリルアミドゲルマトリクスによって良好に画定されたウェルに試料が添加される。
【0062】
一部の実施形態において、ポリアクリルアミドの比率は、電気泳動ゲルの長さによって変動し得る。種々のそのような勾配ゲルは、当該分野において広く知られており、そのいずれかをここに記載される製剤と使用するために適応させることができる。勾配ゲルは、約2%〜約30%のポリアクリルアミド、約3%〜約27%のポリアクリルアミド、約4%〜約20%のポリアクリルアミド、または約5%〜約15%のポリアクリルアミドであり得る。一部の実施形態において、勾配ゲルは、約3%〜約12%のポリアクリルアミド、約3%〜約20%のポリアクリルアミド、約3%〜約15%のポリアクリルアミド、約4%〜約12%のポリアクリルアミド、約4%〜約20%のポリアクリルアミド、約4%〜約15%のポリアクリルアミドであり得る。勾配ポリアクリルアミドゲルを調製するのに適したあらゆる方法が、制限なく本明細書の製剤を有する勾配ゲルを調製するために使用することができる。そのような方法は、本実施形態が属する当業者に広く知られている。そのような方法は、例えば、米国特許第6,488,880号、同第6,267,579号、同第4,594,064号、および同第5,071,531号に開示されている。実施形態において、勾配ゲルは、任意に、上に説明される方法により成型される濃縮用ゲルを含むことができ、本明細書に組み込まれる。
【0063】
一部の実施形態において、電気泳動ゲルシステムおよび組成物は、ゲルの重合後、気密または水密パッケージに封入することができる。気密または水密パッケージを、成型されたゲルによる水分保持を最大にし、ゲルの脱水化を防ぐように特定的に適応させることができ、これは、その性能に不利に影響を及ぼす場合がある。一実施形態において、各ゲルは、気密または水密パッケージに個別に封入され、キットの一部として顧客に提供され得る。一実施形態において、キットは、複数のそのような個別に封入された電気泳動ゲルを含むことができる。一実施形態において、キットは、2〜100個の個別に封入された電気泳動ゲル、5〜75個の個別に封入された電気泳動ゲル、10〜50個の個別に封入された電気泳動ゲル、15〜35個の個別に封入された電気泳動ゲル、または20〜25個の個別に封入された電気泳動ゲルを含み得る。ゲル一式は、それ自体、エンドユーザーに配送され、個別に封入されたゲルを適切な環境で保管するのに適した適切な容器に封入することができる。ここに記載される組成物および方法により調製される電気泳動ゲルは、約1℃〜約25℃、または約4℃〜約22℃の範囲の温度で、最大6ヶ月間、最大5ヶ月間、最大4ヶ月間、最大3ヶ月間、最大2ヶ月間、または最大1カ月間、保管安定である。一部の実施形態において、複数の個別に封入された電気泳動分離ゲルを含有するキットは、任意に、1つ以上の適切な水性泳動緩衝液と組み合わせて顧客に提供することができる。水性泳動緩衝液は、使用可能な濃度で提供されるか、または代替的に、ユーザーが必要に応じて希釈することができる濃縮形態で提供することができる。水性泳動緩衝液は、例えば、20X保存溶液、15X保存溶液、10X保存溶液、5X保存溶液、または2X保存溶液で提供することができる。
【0064】
一実施形態において、電気泳動分離ゲルは、ゲルの長さに沿った電場の印加を促進する適切な槽システムの中に取り付けることができる。そのような槽システムは、水性泳動緩衝液が、上に詳細に開示され、本明細書に組み込まれる、ゲルと接触し、電圧がゲルの長手軸全体に沿って等しく印加されることを確実にするように構成される。
【0065】
以下の実施例は、本発明の一部の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明の実践においてよく機能するように発明者により発見された技法を示し、よって、その実践の好ましい様式を構成すると考えられ得ることを、当業者は理解するべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、1つ以上の変更が開示される特定の実施形態になされても、本発明に記載される実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様の、または類似した結果が得られることを理解するべきである。
【実施例】
【0066】
以下の実験は、本明細書に具体化される高速泳動ゲル製剤の使用に適した種々の構成物の範囲を決定するために実施された。特に、ゲル緩衝液構成物および塩の種々の組合せを評価する。特に指示のない限り、以下に定義される組成物を有する分離用ポリアクリルアミドゲルは、8%のポリアクリルアミドおよび4.4%のビス−アクリルアミド架橋剤(8%T/4.4%C)であった。4%のポリアクリルアミドおよび3.8%のビス−アクリルアミド架橋剤(4%T/3.8%C)を有する濃縮用ゲルは、分離用ゲルの上に手動で成型された。特に明記しない限り、分離用ゲルに対する濃縮用ゲルの割合(S:R)は約1:4であり、ゲルの厚さは約1mmであり、ゲルはミニゲルカセットに手動で成型された。
【0067】
以下に記載する種々のゲル製剤を試験するために使用された試料は、示されるレーンで、次のMark12(商標)、SeeBlue Plus2(登録商標)Pre−stainedマーカー、Novex(登録商標)Sharp Pre−stained、および大腸菌可溶化液(全て、Life Technologies Corporation,Carlsbad,CAから入手)のうちの1つ以上から構成された。高処理量(10μL)でのその高塩濃度、およびNuPAGE(登録商標)ゲルを条件付けるための選択の標準としてのその過去の使用により、Mark12(商標)が選択された。インスリンのB鎖に対応する3.5kDaのバンドの視覚的追跡を容易にするために、Novex(登録商標)Sharp Pre−stained standardsが選択され、そのためゲル泳動の完了を容易に監視することができる。19〜22kDaのローダミン標識されたミオグロビンバンドの移動は電圧量により変動できることが知られているため、SeeBlue Plus2(登録商標)が選択された。例えば、SeeBlue Plus2(登録商標)タンパク質標準は、ターボモード(すなわち、250V)で、NuPAGE(登録商標)ゲル上で泳動され、ミオグロビンバンドは、ゲルが通常モード(すなわち、200V)で泳動される時より低い見かけ分子量で泳動される。大腸菌可溶化液は、複雑なタンパク質試料の移動を観測するために選択された。
【0068】
実施例1
検討された最初の試験ゲル製剤は、以下の組成を有する8%のSDS−PAGE分離用ゲルであった:100mMのビス−トリス、75mMのトリシン、4容量%のスクロース、および20mMのBES。濃縮用ゲルは、以下の組成を有した:分離用ゲルの上に成型される357mMのビス−トリスおよび210mMの塩化物、pH6.5。ゲルのS:R比は、1:4であった。
【0069】
Ponceau S追跡用色素を含む5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを各レーンのゲルに添加し、ゲルをNuPAGE(登録商標)MES SDS泳動緩衝液(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA)中で15分間、300Vで泳動した。ゲル泳動の完了は、各試料に個別に添加されたPonceau S追跡用色素のゲルの底への移動に基づき決定された。泳動の完了時、SimplyBlue(商標)SafeStain(Invitrogen Corp,Carlsbad,CAから入手)を使用して、ゲルをCoomassie(登録商標)G−250で染色した。
【0070】
図1は、このゲル製剤から得たマーカーバンドの移動パターンを示す。3.5kDaのインスリンBバンド(図1に示される)は、ゲルの長さの約2/3移動したのみであった。これは、(Ponceau S)追跡用色素がより低い分子量タンパク質より速く移動したことを示す。加えて、55.4kDaグルタミン酸デヒドロゲナーゼのバンドより速く移動するバンド(図1に示される)は、55.4kDaバンドよりゆっくり移動するものより拡散しているように見え、6kDaのアプロチニンのバンドおよび3.5kDaのインスリンBのバンドの外縁は、ゲルの底に向かって湾曲する。よって、15分間のゲル泳動時間は改善されるが、このゲル製剤を使用したバンドの分離能は最適ではなかった。
【0071】
実施例2
55.4kDaのグルタミン酸デヒドロゲナーゼのバンドより大きく移動するバンドの濃縮および分離を改善する試みで、S:R比を41:59に変更したことを除き、SDS−PAGE試験ゲルを、基本的に、実施例1に記載されるように成型した。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを各レーンのゲルに添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で16分間、300Vで泳動した。ゲル泳動の完了は、Ponceau S追跡用色素のゲルの底への移動に基づき決定され、ゲルは、上述のようにSimplyBlue(商標)SafeStainで染色された。
【0072】
得られたゲル(図2)は、このゲル製剤から得たマーカーバンドの移動パターンを示す。さらに1分間の泳動時間を必要としたが、3.5kDaのインスリンBバンドは、ゲルの全長を移動した。最外側レーンの200kDaのミオシンバンド(すなわち、レーン1、2、9、および10、星印で示される)は、レーン3〜8に見られる対応するバンドより拡散した。加えて、55.4kDaグルタミン酸デヒドロゲナーゼのバンドより速く移動するバンド(図2に示される)は、55.4kDaバンドよりゆっくり移動するものより拡散し、6kDaのアプロチニンのバンドおよび3.5kDaのインスリンBのバンドの外縁は、ゲルの底に向かって湾曲した。
【0073】
実施例3
SDS−PAGE試験ゲルを、基本的に、実施例2に記載されるように成型し、以下のように変更した:8%(8%T/4.4%C)分離用ゲルは、100mMのビス−トリスおよび100mMのトリシンを使用して作製された。分離用ゲルの上に成型された4%(4%T/3.8%C)濃縮用ゲルは、6.1のpHであり、357mMのビス−トリスおよび150mMの硫酸を使用して作製された。この実施例において、硫酸は、Clよりゆっくり移動するリーディングイオン(SO−2)を提供するために使用された。ゲルのS:R比は41:59であった。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを各レーンのゲルに添加し、ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で18分間、300Vで泳動した。ゲル泳動の完了は、ゲルが上述のようにSimplyBlue(商標)SafeStainで染色された後、Ponceau S追跡用色素のゲルの底への移動に基づき決定された。
【0074】
図3は、このゲル製剤から得たマーカーバンドの移動パターンを示す。示されるように、濃縮用ゲルに硫酸を使用することは、不十分な結果をもたらし、MES緩衝液の緩衝能および分離能を上回るように思えた。
【0075】
実施例4
2つの同一の8%のSDS−PAGE分離用ゲルは、各ゲルのビス−トリス量を178mMに減らし、塩化物を105mMに減らし、トリシンを含まないことを除き、基本的に、実施例2に記載されるように成型された。178mMのビス−トリス、pH6.5の105mMの塩化物を含む4%の濃縮用ゲルを各分離用ゲルの上に成型した。ゲルのS:R比は1:3であった。
【0076】
5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1〜3、5、7、9、および10の各ゲルに添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン4に添加し、10μg大腸菌可溶化液をレーン6に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加した。ゲルのうちの1つ(図4Aに示される)をMES SDS泳動緩衝液中で13分間、300Vで泳動し、第2のゲル(図4Bに示される)をMES泳動緩衝液中で10分間、350Vで泳動した。ゲル泳動の完了は、レーン8の染色済み3.5kDaのバンドの移動を視覚化することにより決定された。上記のようにゲルをSimplyBlue(商標)SafeStainで染色した。
【0077】
バンドはレーン4および8のバンドより広いが、図4Aおよび4Bに見られる3.5kDaのインスリンBのバンドは、図1〜3に示されるゲルより良好な移動特徴を示す。全体的に、350Vで泳動された図4Bに示されるゲルにおいて、より低い分子量に対応するバンドは、300Vで泳動された図4Aに示されるゲルの対応するバンドより広かった。加えて、350Vで泳動されたゲルの66〜6kDa範囲のバンドで、いくらかのバンド分裂が見られた(図4B)。
【0078】
実施例5
ビス−トリスの濃度を228mMに増加し、塩化物の濃度を140mMに調節し、トリシンの濃度を50mMに減らし、BESを取り除き、分離用ゲルのpHが6.5であったことを除き、8%のSDS−PAGE分離用ゲルを、基本的に、実施例1に記載されるように成型した。228mMのビス−トリス、140mMのCl、50mMのトリシン、および0重量%のスクロースを含む4%の濃縮用ゲルを分離用ゲルの上に成型した。5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーをレーン1、2、5〜7、9、および10に添加し、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardをレーン3に添加し、10μgの大腸菌可溶化液をレーン4に添加し、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardをレーン8に添加した。ゲルをMES SDS泳動緩衝液中で13分間、300Vで泳動した。ゲル泳動の完了は、レーン8の3.5kDaのバンドの移動を視覚化することにより決定された。図5に示されるゲルは、上記のSimplyBlue(商標)SafeStainで染色された。より低い分子量のバンドの拡張は減少し、バンドの鮮鋭度は、50〜100mMのトリシンおよび120〜160mMの塩化物を添加することにより改善された。
【0079】
実施例6
図6は、市販のSDS−PAGEゲル製剤(NuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスMidi gels、図6A、6C、および6E)と、実施例5に記載される試験ゲル製剤、つまり、228mMのビス−トリス、140mMの塩化物、および4%のスクロースを含む50mMのトリシン、ならびに同じ緩衝組成だがスクロースを含まない4%の濃縮用ゲルを有する、8%のSDS−PAGE分離用ゲルとの間の電気泳動の特徴の相違を示し、ここで、S:R比は、1.9:5.6である(図6B、6D、および6Fに示される試験ゲル)。以下の試料を調製し、ゲルのそれぞれの上に成型した:レーン1、2、5、6、9、および10は、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを含有し、レーン7は、10μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを含有し、レーン3は、5μLのSeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardを含有し、レーン4は、10μgの大腸菌抽出物を含有し、レーン8は、5μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを含有した。NuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルおよび試験ゲル製剤は、それぞれ、MES SDS泳動緩衝液中で32分間および29分間、200V(図6Aおよび6B)で、それぞれ、20分間よび19分間、250V(図6Cおよび6D)で、それぞれ、16分間および13分間、300V(図6Eおよび6F)で泳動された。ゲル泳動の完了後、ゲルは、上述のように、SimplyBlue(商標)SafeStainで染色された。
【0080】
250Vおよび300V(図6C〜6F)で、より低い分子量インスリンBのバンド(矢印で示される)は、試験ゲル製剤(図6Dおよび6F)について、NuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリス(図6Cおよび6E)より鮮鋭な分離能および短い泳動時間を示した。加えて、試験した全ての電圧で、SeeBlue Plus2(登録商標)Pre−Stained Protein Standardの14および17kDaのバンドは、試験ゲル製剤(図6B、6D、および6F、レーン3、囲み領域)において、NuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリス(図6A、6C、および6E、レーン3、囲み領域)より良好な分離能および分離を示した。
【0081】
実施例7
以下の実験において、試験SDS−PAGEゲルを、以下の記述を除き、基本的に、実施例5および6に記載されるように成型した。実験条件の各組において、合計7つの試験SDS−PAGEゲルを成型した。試験SDS−PAGE製剤を示される時間の間、300Vで泳動した。各実験において、2つのNuPAGE(登録商標)Novexゲルを示される条件(200Vまたは250V)のそれぞれについて試験した。全てのゲルは、示される時間の間、示される電圧において、MES SDS泳動緩衝液中で泳動された。泳動の終わりに、各ゲルをSimplyBlue(商標)SafeStainで染色し、撮像した。各バンドの鮮鋭度は、TOTALLAB(商標)ソフトウェア(Nonlinear Dynamics Ltd,Durham,NC)を使用して決定された。バンドの鮮鋭度は、各バンドの領域を測定し、その領域を各ウェルの幅(ウェルの幅は、一定の10ウェル/ゲルに保持した)で割ることにより決定された。各バンドの移動(そのR値により決定される)は、TOTALLAB(商標)ソフトウェアおよびQCソフトウェアを使用して決定された。
【0082】
図7において、実施例6に記載されるように8%のSDS−PAGE試験ゲルを成型し、NuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリス製剤と比較した。図7Aは、MES緩衝液中で14分間、300Vで泳動された、試験SDS−PAGEゲルから得られた代表的な画像を示し、ここで、レーン1、2、4〜7、9、および10は5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを添加され、レーン3は10μgの大腸菌可溶化液を添加され、レーン8は10μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを添加された。図7Bは、MES緩衝液中で35分間、200Vで泳動された、20ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスの代表的な画像を示し、ここで、レーン1、3、8、10、11、13、18、および19は5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを添加され、レーン5は10μgの大腸菌可溶化液を添加され、レーン16は10μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを添加された。図7Cは、ゲルがMES SDS泳動緩衝液中で22分間、250Vで泳動されたことを除き、図7Bに記載されるのと同じゲルの代表的な画像を示す。図7Dは、各実験条件について得られたMark12(商標)タンパク質マーカーの各個別のバンドの相対的鮮鋭度(画素領域により測定される)を要約した棒グラフである。300Vで泳動された試験ゲル製剤は、灰色の棒で示され、200Vで泳動されたNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスゲルは、黒色棒で示され、ターボプロトコルを使用して250Vで泳動されたNuPAGE(登録商標)Novexの8%のビス−トリスは、白色棒として示される。x軸は、Mark12(商標)タンパク質マーカーバンドのどれが分析されたかを示し、y軸は画素領域を示す。図7Eは、示される非線形動態TOTALLAB(商標)v2003.02ソフトウェアまたはQCソフトウェアのいずれかを使用して、各ゲル製剤について得られた平均R値を示す。
【0083】
図8A〜8Eに示される結果は、以下を除き、基本的に、図7A〜7Eに記載されるように得られた。図8Aに示される試験ゲルのポリアクリルアミドの濃度は、10%に増加され、ゲルは、MES緩衝液中で16分間、300Vで泳動された。図8Bおよび8Cにおいて、10ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの10%のビス−トリスゲルを使用し、レーンは以下のように添加された:レーン1、2、5〜6、9、および10は、5μLのMark12(商標)タンパク質マーカーを含有し、レーン3は、10μgの大腸菌可溶化液を含有し、レーン8は、10μLのNovex(登録商標)Sharp Pre−Stained Protein Standardを含有した。図8Bにおいて、ゲルは、MES緩衝液中で36分間、200Vで泳動され、図8Cにおいて、ゲルは、MES緩衝液中で24分間、250Vで泳動された。図8Dおよび8Eに示されるゲルの分析は、図7Dおよび7Eにおいて記載されるように実施された。
【0084】
図9A〜9Eに示される結果は、以下を除き、基本的に、図8A〜8Eに記載されるように得られた。9Aに示されるSDS−PAGE試験ゲルを、MES緩衝液中で17分間、300Vで泳動された4〜12%のポリアクリルアミド勾配ゲルとして成型した。図9Bおよび9Cにおいて、12ウェルのNuPAGE(登録商標)Novexの4〜12%のビス−トリスゲルを使用し、レーンは、図8Bおよび8Cについて記載されるように添加された。図9Bにおいて、ゲルは、MES緩衝液中で37分間、200Vで泳動され、図9Cにおいて、ゲルは、MES緩衝液中で25分間、250Vで泳動された。図9Dおよび9Eに示されるゲルの分析は、図7Dおよび7Eにおいて記載されるように実施された。
【0085】
実施例8
図10に示される以下の実験において、2つの試験SDS−PAGEゲルは、図10Aに示される分離用ゲルのスクロースの濃度が2重量%に減少され、図10Bに示される分離用ゲルのスクロースの濃度が4重量%に維持されることを除き、基本的に、実施例6から8に記載されるように成型された。図10Aにおいて、ゲルは、15分間、300Vで泳動された。図10Bにおいて、ゲルは、26分間、300Vで泳動され、図10Cは、図10Aおよび10Bに示されるゲルについて得られた相対的なバンドの鮮鋭度を示す。
【0086】
本特許において、ある米国特許、米国特許出願、および他の資料(例えば、論文)が、参照により組み込まれてきた。しかしながら、そのような米国特許、米国特許出願、および他の資料の本文は、そのような本文と本明細書に記述される他の説明および図面の間に矛盾が存在しない限り、単に参照により組み込まれるものとする。そのような矛盾がある場合、参照によりそのように組み込まれた米国特許、米国特許出願、および他の資料におけるいかなるそのような矛盾する本文は、特定的に、本特許に参照により組み込まれないものとする。
【0087】
本発明の種々の態様のさらなる修正および代替実施形態は、この説明を考慮すれば当業者に明らかであろう。したがって、この説明は、単なる例示的なものであって、本発明を実行する一般的な様式を当業者に教示する目的のためであると解釈されるべきである。本明細書に示され、記載される本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態として取られることを理解する。全てが、本発明に対するこの記述の利点を得た後で当業者に明らかであるように、要素および材料は、本明細書に図示され記載されるものと置換することができ、部分およびプロセスは、入れ替えることができ、本発明のある特色は独立して使用することができる。変更は、以下の請求項に記載される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に行うことができる。加えて、本明細書に記載される特色は、ある実施形態において、独立して組み合わせることができることを理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル緩衝液システムを含む電気泳動分離ゲルを含む、不連続緩衝液電気泳動システムであって、
前記緩衝液システムは、
ゲルアミン緩衝液と、
ゲル両性電解質と、
緩衝両性電解質を含む水性泳動緩衝液と
を含む、不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項2】
前記分離ゲルは、アクリルアミド、アガロース、またはアクリルアミドおよびアガロースを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項3】
前記分離ゲルは、アクリルアミドを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項4】
前記分離ゲルは、約6〜約25重量%のアクリルアミドを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項5】
前記分離ゲルは、約8〜約20重量%のアクリルアミドを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項6】
前記分離ゲルは、約8〜約15重量%のアクリルアミドを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項7】
前記電気泳動分離ゲルは、その一端と連結された濃縮用ゲルをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項8】
前記濃縮用ゲルは、約4重量%のアクリルアミドを含む、請求項7に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項9】
前記ゲル両性電解質は、緩衝両性電解質とは異なる、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項10】
前記ゲルアミン緩衝液のpKは、約5.5〜約7.5の範囲である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項11】
前記ゲルアミン緩衝液は、ビス−トリスである、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項12】
前記ゲルアミン緩衝液の濃度は、約190mM〜約295mMの範囲である、請求項10または請求項11のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項13】
前記ゲルアミン緩衝液の濃度は、約300mM未満である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項14】
前記ゲルアミン緩衝液の濃度は、約175mM〜約300mMである、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項15】
前記ゲル両性電解質のpKは、前記ゲルアミンのpKより約1.5pK単位大きい、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項16】
前記ゲル両性電解質のpKは、約7〜約9である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項17】
前記ゲル両性電解質のpKは、約8〜約8.5である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項18】
前記ゲル両性電解質のpKは、約8.1〜約8.3である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項19】
前記ゲル両性電解質は、トリシン、ビシン、グリシンアミド、またはアセトアミドグリシンである、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項20】
前記ゲル両性電解質は、トリシンまたはビシンである、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項21】
前記ゲル両性電解質の濃度は、約25mM〜約125mMの範囲である、請求項19または20のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項22】
前記ゲル両性電解質の濃度は、約50mM〜約100mMの範囲である、請求項19または20のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項23】
前記ゲル両性電解質の濃度は、約50mMである、請求項19または20のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項24】
前記ゲル緩衝液システムのpHは、約6〜約8の範囲である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項25】
前記ゲル緩衝液システムのpHは、約6.0〜約7.5の範囲である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項26】
前記ゲル緩衝液システムのpHは、約6.5である、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項27】
前記pHは、酸の添加により調節される、請求項24〜26のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項28】
前記酸はHClである、請求項27に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項29】
前記ゲル緩衝液システムは、Clイオンの供給源をさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項30】
前記ゲル緩衝液システムは、約95mM〜約170mMのClイオンをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項31】
前記ゲル緩衝液システムは、約135mM〜約145mMのClイオンをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項32】
前記泳動緩衝液中の前記緩衝両性電解質のpKは、前記ゲル両性電解質のpKより低い、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項33】
前記緩衝両性電解質は、MES、ADA、PIPES、ACES、BES、TES、HEPES、MOPS、CAPSO、DIPSO、POPSO、HEPPS、HEPPSO、それらの塩、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項34】
前記緩衝両性電解質は、MES、MOPS、またはDIPSOを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項35】
前記緩衝両性電解質はMESを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項36】
前記緩衝両性電解質はMOPSを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項37】
前記緩衝両性電解質はDIPSOを含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項38】
前記電気泳動分離ゲルは、スクロースをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項39】
前記スクロースの濃度は、約5重量%未満である、請求項38に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項40】
前記スクロースの濃度は、約3重量%未満である、請求項38に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項41】
前記スクロースの濃度は、約2重量%未満である、請求項38に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項42】
前記スクロースの濃度は、約1.5重量%未満である、請求項38に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項43】
少なくとも前記分離ゲルにSDSをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項44】
前記分離ゲルおよび前記泳動緩衝液にSDSをさらに含む、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項45】
前記分離ゲルはスラブゲルである、請求項1に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項46】
前記スラブゲルは、2枚のガラスまたはプラスチックプレートの間にある、請求項45に記載の不連続緩衝液電気泳動システム。
【請求項47】
少なくとも第1の適切な容器に、
それぞれが、請求項1〜47のいずれかに記載の不連続緩衝液電気泳動システムを含む、1つ以上のゲルカセットと、
請求項1〜47のいずれかに記載の水性泳動緩衝液と
を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−502599(P2013−502599A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526921(P2012−526921)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046510
【国際公開番号】WO2011/028535
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【出願人】(312011202)
【出願人】(312011213)