説明

高電圧トランス、電子装備および放射線容器

【課題】小型、低重量および低価格の構成を決定する要素の新規な配置の高電圧トランスを提供する。
【解決手段】高電圧トランスを構成する従来よりの高電圧要素(1,8)はグラウンドレベル(2)が中央領域に位置するように配置され、この領域から、負の電位が一端部(3)に向かって累進的に増加する一方、正の電位が反対側端部(4)に向かって累進的に増加する。好ましくは高電圧トランスは放射線容器(9)に適用できる。また、高電圧トランスは、絶縁要素の結合を必要としない等電位線を確立するために、構成する全ての要素がトランスのそれと同一の電圧分配を与えるという特別の特徴を有する。さらに、高電圧トランスは、容積、重量およびコストがかなり低減されるように、各要素を互いに非常に接近して配置することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
前記発明の名称で述べたように、本発明は、小型、低重量および低価格の構成を決定する要素の新規な配置(distribution)を提供する高電圧トランスに関する。
高電圧トランスのこれらの特徴は、より小さい容積でより安い価格およびコストを有するように、高電圧トランスを電子装備として結合させることを可能にする。これを実現するために、トランスを構成する要素の新規な配置の概念は、残りの電子装備を構成する要素の構成および配置にも採用される。
好ましくは、本発明は、放射線写真を撮るために使用される放射線容器(radiogenic vessels)に適用可能であるが、高電圧トランスの使用を必要とする電子装備のいかなる部分として使用されてもよいことは明らかである。
【背景技術】
【0002】
従来のX線室は、高電圧トランスによって動力を供給されるX線管からなる。この高電圧トランスは、通常、X線管からいくらか(例えば4ないし30メートル)離れて配置される。これら2つの間の接続は、高価であるという不都合を有する特別の高電圧ケーブルによってなされる。
【0003】
それらのかさ高さのために、高電圧ケーブルは、正しい場所にビームを位置決めするためのX線管の移動性を妨げるというさらなる不便がある。
【0004】
設備の簡素化、コスト低減および装備全体の容積の縮小を目的として、高電圧ケーブルを必要とせずに単一容器内でX線管と高電圧トランスを結合した装置からなる放射線容器が知られている。
【0005】
放射線容器の設計における最大の困難性は、それを構成する別々の要素(トンラス、高電圧コネクタ、整流器、フィルタ、分圧器、分流器、放電器、ケーブル布線など)の間での必要な電気的絶縁を実現することである。この絶縁は、次の3つの方法で可能である。
A)取り扱いやすさと低コストのために通常はシリコンオイルまたは鉱油などの絶縁液体またはガス状流体による容器の内部全体の乾燥環境での真空充填。
B)プラスチック、ガラス、磁器、樹脂などのような固体絶縁片の使用。
C)真空下での高電圧絶縁樹脂またはシリコンによる装置全体のカプセル化。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
明らかに、放射線容器の構成要素は種々の幾何学形状および異なる大きさを有しており、最大電圧の箇所の間に最小限の絶縁距離を絶対的に維持する必要がある。ほとんどの場合、このことは、少ない危険箇所間の絶縁距離が過大であることを意味する。結果として、放射線容器の容積は、厳格に必要とされるものよりも大きくなる。また、容積の過剰分は絶縁材料で占められなければならず、容器の重量と特にコストがかなり増加することになる。
【0007】
この問題を緩和するために高周波技術を用いた高電圧トランスの使用が当業界において知られているが、前記問題を小さくするものではあっても、容器は必要なものよりも大きな容量、重量およびコストをなおも有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した欠点を解決するために、本発明は、高電圧トランスを構成する従来よりの高電圧要素が0ボルトレベルまたはグラウンドレベルが中央領域に位置するように配置され、この領域から、負の電位が一端部に向かって累進的に増加するとともに、正の電位が反対側端部に向かって累進的に増加することを特徴とする新しい高電圧トランスを発展させたものである。
【0009】
この方法によれば、最小電圧を有する要素が互いに最接近しており、最大電圧を有する要素がより隔離されている。これにより、この構成は、要素が互いに絶縁される必要がなく、要素が隔離されなければならない距離がかなり減少され、その結果、それらの容積、重量およびコストも低減されるという大きな利点を有する。
【0010】
トランスに含まれる従来よりの低電圧要素に関して、これらは絶縁手段によって高電圧要素から隔離されている。
【0011】
本発明の一実施形態では、高電圧要素と低電圧要素との間を隔離するための前記絶縁手段は、絶縁仕切りからなる。
【0012】
また、本発明は、電子装備を構成するトランスおよび残りの構成要素の両方がグラウンドレベルが中央領域に位置するように配置され、その領域から、負の電位が一端部に向かって累進的に増加する一方、正の電位が反対側端部に向かって累進的に増加し、これにより電子装備を構成する個々の要素間にグラウンドレベルから同じ距離で等電位電圧を確立するように、トランスが高電圧電源を必要とするタイプの一塊の電子装備に結合されていることを特徴とするものである。このために、それらの間に絶縁が不要であり、それらが隔離されなければならない距離がかなり小さくなる。また、同じ電位領域を占める要素が容積(parasite capacity)に影響することは絶対的になく、これによりそれらの付近やそれらの間の対向面について制限がない。
【0013】
結果として、それらの電圧レベルがそれの占める電位領域に合うように各要素を設計することによって、それらがほとんど接触するまで各要素を互いに対して持ち上げることが可能になる。
【0014】
この構成は、要素の組立を容易にするとともに、より小さい容積および重量を有することで位置決めおよび取り扱いが非常に容易になると同時に組立作業を短縮できる。
【0015】
また、本発明の高電圧トランスは、より高い機能的信頼性を提供するとともに、放射線容器内部に充填される絶縁流体からなる高電圧絶縁体の電気的ストレス(electrical stress)をより小さく低減する。
【0016】
本発明の一実施形態では、端部に向かっての電圧の累進的増加は直線的である。
【0017】
この説明をより良く理解するのを容易にするために、本発明の対象が表されている非制限的に図示された一連の図面を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面に基づいて本発明の説明が以下になされる。
【0019】
本発明のトランスは、二次コイル(secondary windings)からなる非常に特別な構成を提供する。前記二次コイルは、0ボルトレベルまたはグラウンドレベル2がコイルの中央領域に位置し、この領域から、負の電位が第1端部3に向かって直線的に増加するとともに正の電位が第2端部4に向かって直線的に増加するように配置されている。
【0020】
実施形態の例では、トランスは、8つの二次コイルを有するとともに、上述したように、第1端部3では−80kVの電圧まで、第2端部4では+80kVまで、レベル0から各端部まで電圧が直線的に増加する。
【0021】
トランスを構成する残りの高電圧構成要素は、整流器、フィルタ、抵抗分圧器などである。符号8で参照される区画(block)内に含まれるこれらの全ては、等電位線が二次コイル1と区画8との間に確立されるように、トランスの二次コイルのために意図されたものと同一の配置を提供し、これによりそれらの間の隔離距離を最小限に縮小することを可能にする。
【0022】
基本的に一次コイル5からなるトランスの低電圧構成要素に関して、これらは絶縁仕切り6によって高電圧部から隔離されていると言える。本実施形態において前記絶縁仕切り6は、二次コイル1および区画8(すなわち高電圧)から完全に絶縁されるようにL字形状を呈している。
低電圧要素5は磁極鉄心7の第1枝部に配置され、二次高電圧コイル1は磁極鉄心7の第2枝部に配置されている。
【0023】
本実施形態では、トランスは放射線容器9の一部を形成する。放射線容器9は、高電圧トランスに加えて、X線管10を含む。X線管10は、ブロックについて説明したのと同様に配置されている。トランスの別の二次コイル、換言すればその中央部分は、0ボルトレベルに対応して配置され、正のボルト数は端部4に向かって直線的に増加し、負のボルト数は端部3に向かって直線的に増加する。これは、等電位レベルが確立されるときにそれらを絶縁する必要がなく、これによりX線管10はブロック8または二次コイル1にほとんど接触するまで持ち上げられることができるようにするためである。この配置は、容積に影響することは絶対的になく、したがってそれらの付近やそれらの間の対向面についても制限がない。よって、この構造は容積をかなり低減する。
【0024】
絶縁仕切り6とは別に、容器は従来より絶縁流体で満たされており、容積が小さくなることで必要な絶縁流体の量もより少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施する可能な例による放射線容器の内部の側面概略図。
【図2】図1の放射線容器の内部の平面図における下部概略図。
【図3】前各図に表される放射線容器の側面の内部概略図。
【符号の説明】
【0026】
1…一次コイル、2…0ボルトレベルまたはグラウンドレベル、3…一端部、4…反対側端部、5…一次コイル、6…絶縁仕切り、8…ブロック、9…放射線容器、10…X線管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次高電圧コイル(1)を有する高電圧要素(1、8)と、
絶縁手段(6)によって前記高電圧要素(1、8)から隔離されている低電圧要素(5)とを備えている高電圧トランスであって、
前記二次高電圧コイル(1)及び前記低電圧要素(5)が、ループ状に形成された磁極鉄心(7)に配置され、
該高電圧トランスは、端側に向かって負の電位が増加する第1端部(3)と、端側に向かって正の電位が増加する第2端部(4)との間において前記二次高電圧コイル(1)の中央領域内に位置する0ボルトレベルまたはグラウンドレベル(2)をさらに備えていて、
前記二次高電圧コイル(1)が、前記グラウンドレベル(2)から同じ距離のところに位置する二次高電圧コイル(1)に等電位電圧が確立されるように、前記第1端部(3)と前記第2端部(4)との間に配置され、
絶対値でみて最も低い等電位電圧を伴った二次高電圧コイル(1)は、互いに離間し絶対値でみて最も高い等電位電圧を伴った二次高電圧コイル(1)に比べて、互いに近接していることを特徴とする高電圧トランス。
【請求項2】
前記低電圧要素(5)が前記磁極鉄心(7)の第1枝部に配置される一方、前記二次高電圧コイル(1)が前記磁極鉄心(7)の第2枝部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の高電圧トランス。
【請求項3】
低電圧要素(5)から前記高電圧要素(1,8)を隔離する前記絶縁手段は、絶縁仕切り(6)からなることを特徴とする請求項2に記載の高電圧トランス。
【請求項4】
前記端部(3,4)に向かっての電圧の増加が直線的であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の高電圧トランス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の高電圧トランスを含むことを特徴とする一塊の電子装備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の高電圧トランスと、
0ボルトレベルまたはグラウンドレベル(2)が前記二次高電圧コイル(1)の中央領域に位置するのに対応して、0ボルトレベルまたはグラウンドレベルがそれ自身の中央領域に位置するように配置されたX線管と、
前記グラウンドレベルから前記第1端部(3)に向かって増加する負の電位と、
前記グラウンドレベルから前記第2端部(4)に向かって増加する正の電位とを備え、
前記グラウンドレベルから同じ距離にある要素に等電位電圧を確立するようにしたことを特徴とする放射線容器(9)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−262928(P2008−262928A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196335(P2008−196335)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2002−557173(P2002−557173)の分割
【原出願日】平成14年1月10日(2002.1.10)
【出願人】(501211420)ソシエダッド・エスパニョーラ・デ・エレクトロメディシナ・イ・カリダッド・ソシエダッド・アノニマ (1)
【Fターム(参考)】