説明

魚の養殖装置

【課題】魚を高密度で養殖しながら、池水の酸素濃度を高くして魚を快適な環境で養殖する。
【解決手段】魚の養殖装置は、養殖池100の水中に、加圧された酸素を気泡状に噴射する気泡噴射器61と、養殖池100の水面に配設されて、気泡噴射器61で気泡状に噴射されて水面に浮上した酸素を下方の開口部70から回収する回収容器62と、この回収容器62で回収された酸素を加圧して気泡噴射器61に供給する加圧器63と、気泡噴射器61に加圧された酸素を供給する酸素供給源64とを備えている。養殖装置は、酸素供給源64から気泡噴射器61に加圧された酸素を供給し、気泡噴射器61から水中に気泡状に噴射される酸素を回収容器62で回収し、回収された酸素を加圧器63で気泡噴射器61に供給して養殖池100の水中に噴射している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池水に酸素を供給する魚の養殖装置に関し、とくにマグロの養殖に最適な魚の養殖装置に関する。ただし、本明細書において魚牧場に相当する養殖装置は、魚を大きくするためのみではなく、魚を一時的に畜養する装置を含む意味に使用する。
【背景技術】
【0002】
魚の養殖池は、池水の酸素濃度を高くして多量の魚を好ましい環境で飼育できる。このことを実現するために、池水の酸素濃度を高くする養殖装置が開発されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1は、養殖池の底に微細かつ均等な散気をする散気器を設けてなる養殖装置を記載している。また、特許文献2の養殖装置は、池水を自然に流下させる曝気水路を設け、この曝気水路に池水を流して酸素を補給している。
【0003】
これらの養殖装置は、散気器や曝気水路でもって池水の酸素濃度を向上できるが、能率よく速やかに池水の酸素濃度を相当に高くはできない。とくに、本発明者が先に開発した養殖装置(特許文献3参照)は、地上に設置して池水を一定の方向に強制的に流動させるものであるが、この養殖装置は、多量の魚を密集して養殖しながら魚の衝突を防止できるので、池水の酸素濃度を相当に高くすることが大切である。この養殖装置は、図1に示すように、複数のリング池91を同心に配置している。この養殖池は、各々のリング池91の池水を矢印で示すように流している。この養殖池は、リング池91の池水の流れに逆らうように魚を泳がせながら、回遊魚であるマグロなどを高密度に養殖できる。それは、マグロなどの魚を流れに逆らって遊泳させることで、きれいに整列して養殖できるからである。高密度で魚を養殖する装置は、とくに池水の酸素濃度を高くすることが大切であるが、従来の装置では、池水の酸素濃度を速やかに高くして、魚を快適な状態で高密度に養殖できない欠点があった。
【特許文献1】特開平8−37989号公報
【特許文献2】登録実用新案第3022030号公報
【特許文献3】実開昭63−119357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、魚を高密度で養殖しながら、池水の酸素濃度を高くして魚を快適な環境で養殖できる魚の養殖装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の魚の養殖装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
魚の養殖装置は、養殖池100の水中に、加圧された酸素を気泡状に噴射する気泡噴射器61と、養殖池100の水面に配設されて、気泡噴射器61で気泡状に噴射されて水面に浮上した酸素を下方の開口部70から回収する回収容器62と、この回収容器62で回収された酸素を加圧して気泡噴射器61に供給する加圧器63と、気泡噴射器61に加圧された酸素を供給する酸素供給源64とを備えている。養殖装置は、酸素供給源64から気泡噴射器61に加圧された酸素を供給し、気泡噴射器61から水中に気泡状に噴射される酸素を回収容器62で回収し、回収された酸素を加圧器63で気泡噴射器61に供給して養殖池100の水中に噴射している。
【0006】
本発明の請求項2の魚の養殖装置は、加圧器63をコンプレッサとしている。
【0007】
本発明の請求項3の魚の養殖装置は、回収容器62の液面を検出する液面センサ67を備え、この液面センサ67が加圧器63を制御して回収容器62の液面レベルを所定の範囲に制御する請している。
【0008】
本発明の請求項4の養殖装置は、酸素供給源64から気泡噴射器61に供給する酸素の供給量をコントロールする供給弁65を備えている。
【0009】
本発明の請求項5の魚の養殖装置は、養殖池100が、所定の幅を有する環状のリング池1を設けるリング壁2と、このリング壁2の間に設けられるリング池1の池水を強制的に流動させる強制流動器15と、リング池1の外側に配置されてリング池1の池水が循環される魚の取上池5とを備え、この取上池5に気泡噴射器61を配設している。
【0010】
本発明の請求項6の魚の養殖装置は、取上池5をリング池1に隣接して平行に配設して、強制流動器15で取上池5とリング池1の両方の池水を同じ方向に流動させている。
【0011】
本発明の請求項7の魚の養殖装置は、取上池5の幅をリング池1よりも狭くしている。
【0012】
本発明の請求項8の魚の養殖装置は、リング池1の外側リング壁2Aの外側に、外側リング壁2Aと平行に湾曲壁52を設けて、湾曲壁52と外側リング壁2Aとの間に取上池5を設けている。
【0013】
本発明の請求項9の魚の養殖装置は、取上池5とリング池1との連結部に、開閉ガイド54を設けており、この開閉ガイド54を開いてリング池1の魚を取上池5に案内するようにしている。
【0014】
本発明の請求項10の魚の養殖装置は、取上池5の両端をリング池1に連結して、取上池5の両端の連結部に開閉ガイド54を設けており、一方の開閉ガイド54を開いてリング池1の魚を取上池5に案内し、他方の開閉ガイド54を開いて取上池5の魚をリング池1に戻すようにしている。
【0015】
本発明の請求項11の魚の養殖装置は、開閉ガイド54が、池水を通過させて魚を通過させない通水性を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の魚の養殖装置は、魚を高密度で養殖しながら、池水の酸素濃度を高くして魚を快適な環境で養殖できる特徴がある。それは、本発明の養殖装置が、加圧された酸素を養殖池の水中に噴射する気泡噴射器と、養殖池の水面に配設されて、気泡噴射器で噴射されて水面に浮上した酸素を下方の開口部から回収する回収容器と、回収容器で回収された酸素を加圧して気泡噴射器に供給する加圧器と、気泡噴射器に加圧された酸素を供給する酸素供給源とを備え、酸素供給源から気泡噴射器に加圧された酸素を供給し、気泡噴射器から水中に噴射される酸素を回収容器で回収し、回収された酸素を加圧器で気泡噴射器に供給して養殖池の水中に噴射しているからである。本発明の養殖装置は、酸素供給源から気泡噴射器に供給される酸素を、気泡噴射器から池水中に噴射して池水に溶解させると共に、池水に溶解されなかった酸素を回収容器で回収して、加圧器で加圧して気泡噴射器に供給して池水中に噴射するので、酸素供給源から供給される酸素を無駄にすることなく池水に循環させて、効率よく池水に溶解できる。したがって、池水の酸素濃度を高くして快適な環境としながら、魚を高密度で養殖できる。
【0017】
さらに、本発明の請求項2の魚の養殖装置は、加圧器をコンプレッサとしているので、回収した酸素を高圧に加圧して気泡噴射器に供給して、気泡噴射器から微細な気泡状に噴射できる。
【0018】
さらに、本発明の請求項3の魚の養殖装置は、回収容器の液面を検出する液面センサを備え、この液面センサが加圧器を制御して回収容器の液面レベルを所定の範囲に制御するので、回収容器に回収される酸素の量を最適な量に制御しながら、酸素供給源から供給される酸素を効率よく池水に溶解できる。
【0019】
さらに、本発明の請求項4の魚の養殖装置は、酸素供給源から気泡噴射器に供給する酸素の供給量をコントロールする供給弁を備えているので、酸素供給源からの酸素の供給量をコントロールして、池水の溶存酸素濃度を調整できる。
【0020】
さらに、本発明の請求項5の魚の養殖装置は、養殖池が、所定の幅を有する環状のリング池を設けるリング壁と、このリング壁の間に設けられるリング池の池水を強制的に流動させる強制流動器と、リング池の外側に配置されてリング池の池水が循環される魚の取上池とを備え、この取上池に気泡噴射器を配設しているので、遊泳するマグロなどの魚を損傷させることなく生育できる特徴がある。それは、取上池が、魚を取り出す時に使用する部分であって、通常は、魚を遊泳させない領域であるため、この領域に気泡噴射器や回収容器を配設しても、遊泳する魚がこれらの気泡噴射器や回収容器に衝突して損傷することがないからである。このように、取上池に気泡噴射器と回収容器を配置する養殖装置は、魚の衝突を有効に防止してながら、池水の溶存酸素濃度を高くできる。とくに、回遊速度が速く、要求酸素量の多い魚を、衝突による損傷を効果的に防止しながら、好ましい状態で養殖できる。
【0021】
さらに、本発明の請求項6の魚の養殖装置は、取上池をリング池に隣接して平行に配設して、強制流動器でもって、取上池とリング池の両方の池水を同じ方向に流動させている。この養殖装置は、リング池を流れに逆らって泳ぐ魚を、リング池から取上池によりスムーズに案内できる。また、取上池に案内された魚は、取上池においても流れに逆らって泳ぐことから、池水に対する速度は速くても、取上池に対する相対速度を遅くできる。魚の取上池に対する移動速度が、魚の遊泳速度と池水の流速との差となるからである。このため、取上池に案内された魚を簡単に補足して取り上げできる。また、酸素濃度が高くなった取上池の池水を、強制流動器でもって流動させて、リング池全体に循環できる。
【0022】
さらに、本発明の請求項7の養殖装置は、取上池の幅をリング池よりも狭くしているので、取上池に案内された魚を簡単に取り上げできる。
【0023】
さらにまた、本発明の請求項8の養殖装置は、リング池の外側リング壁の外側に、外側リング壁と平行に湾曲壁を設けて、湾曲壁と外側リング壁との間に取上池を設けている。この構造は、リング壁の外側に湾曲壁を設けて簡単に取上池を設けることができ、また、取上池とリング池とを平行に配設するので、リング池を泳ぐ魚をスムーズに取上池に案内できる。
【0024】
さらに、本発明の請求項9の養殖装置は、取上池のリング池との連結部に、開閉ガイドを設けており、この開閉ガイドを開いてリング池の魚を取上池に案内するようにしているので、リング池を泳ぐ魚を確実に取上池に案内できる。とくに、本発明の請求項10の養殖装置は、取上池の両端をリング池に連結して、両端の連結部に開閉ガイドを設けており、一方の開閉ガイドを開いてリング池の魚を取上池に案内し、他方の開閉ガイドを開いて取上池の魚をリング池に戻すようにしている。この構造の取上池は、リング池の魚を取上池にスムーズに案内し、取上池で魚の大きさなどを判定して、取り上げる魚は取上池から排出し、取り上げしない魚は、開閉ガイドを開いてリング池に簡単に戻すことができる。このため、取り上げする魚を簡単に選別しながら排出できる。また、本発明の請求項11の養殖装置は、開閉ガイドを、池水を通過させるが魚を通過させない通水性を有する構造とするので、開閉ガイドを閉じた状態としながら、酸素濃度が高くなった取上池の池水を、リング池に循環させてリング池の溶存酸素濃度を高くできる。また、取上池の池水を循環できるので、取上池の水が淀むのを有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための魚の養殖装置を例示するものであって、本発明は養殖装置を以下のものに特定しない。
【0026】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0027】
図2ないし図4は、マグロの養殖に最適な養殖装置を示している。図に示す養殖装置は、マグロ等の回遊魚の養殖に適している。ただし、本発明の養殖装置は、養殖する魚をマグロには特定せず、また回遊魚にも特定しない。マグロ以外の魚や回遊魚以外の魚の養殖にも使用できるからである。
【0028】
図の養殖装置は、地上に設置されて、マグロを遊泳させながら生育する養殖池100と、この養殖池100の池水に酸素を補給して、池水の溶存酸素濃度を高くする酸素補給装置60とを備える。養殖池100は、所定の幅を有する環状のリング池1を設けるリング壁2と、このリング壁2の間に設けられる各々のリング池1の池水を強制的に流動させる強制流動器15とを備える。
【0029】
酸素補給装置60は、養殖池100の水中に加圧された酸素を気泡状に噴射する気泡噴射器61と、養殖池100の水面に配設されて、気泡噴射器61で気泡状に噴射されて水面に浮上した酸素を下方の開口部70から回収する回収容器62と、この回収容器62で回収された酸素を加圧して気泡噴射器61に供給する加圧器63と、気泡噴射器61に加圧された酸素を供給する酸素供給源64とを備える。
【0030】
気泡噴射器61は、養殖池100の底部に配置されて、養殖池100の底部から池水中に酸素を微細な気泡状として噴射する。この気泡噴射器61は、無数の微細な噴霧口を有する。この噴霧口から加圧された酸素を水中に噴射して、酸素を微細な気泡状に噴射する。噴射される酸素は、より微細な気泡として池水に効率よく溶解できる。それは、微細な気泡とすることで、酸素と池水との接触面積を大きくできるからである。したがって、気泡噴射器61は、酸素を微細な気泡状として水中に噴射する。微細な気泡状として池水中に噴射された酸素は、一部が池水に溶解されるが全体が溶解されることなく、溶解されなかった酸素は、気泡となって水面に浮上する。
【0031】
酸素供給源64は、加圧された酸素を気泡噴射器61に供給する。酸素供給源64は、加圧された酸素を蓄える酸素ボンベ64Aである。酸素ボンベ64Aは、簡単な構造で、気泡噴射器61に加圧酸素を供給できる。ただ、この酸素供給源には、空気から酸素を分離して、分離された酸素を加圧して気泡噴射器に供給する酸素発生装置も使用できる。酸素供給源64は、供給弁65を介して気泡噴射器61に連結される。供給弁65は、気泡噴射器61に供給する酸素の流量をコントロールする。供給弁65は、池水の溶存酸素濃度が所定の範囲となるように、酸素の供給量をコントロールする。供給弁65は、たとえば、池水の溶存酸素濃度が10ppmとなるように、気泡噴射器61に供給する酸素量をコントロールする。ただし、池水の溶存酸素濃度は、養殖する魚の種類、大きさ、数等で変化するので、たとえば、溶存酸素濃度を5ppmないし30ppm、好ましくは5ppmないし20ppmの範囲で最適値にコントロールすることができる。さらに、図3に示すように、池水の溶存酸素を酸素濃度センサ66で検出して、この酸素濃度センサ66で供給弁65を制御して、池水の溶存酸素濃度を制御範囲にコントロールすることもできる。
【0032】
気泡噴射器61から池水に噴射された酸素は、気泡となって水面に浮上する。池水を浮上する気泡は、その一部を池水に溶解させる。ただ、気泡の酸素は、すべてが池水には溶解されない。池水に溶解されない酸素は、気泡の状態で水面に浮上する。水面に浮上する酸素は、回収容器62に回収される。したがって、回収容器62は、下方を開口して浮上する気泡を蓄える。回収容器62は、回収する酸素を漏らさないように、周囲に周壁71を設けて、この周壁71の下部を水中に挿入している。この回収容器62は、下方の開口部70を池水で閉塞する気密容器としている。また、この回収容器62は、浮上する酸素の気泡を回収するので、酸素の気泡が浮上する位置に配置している。図の回収容器62は、フロート72を固定して、フロート72で池水の水面に浮かせている。ただ、回収容器は、養殖池に固定して、養殖池の定位置に配置することもできる。
【0033】
加圧器63は、回収容器62で回収される酸素を吸入して気泡噴射器61に供給する。図の加圧器63は、加圧する酸素を、酸素供給源64の酸素を水中に噴射する気泡噴射器61に供給する。ただし、本発明の養殖装置は、図5に示すように、加圧器63で加圧された酸素を、酸素供給源64から酸素を噴射する気泡噴射器61とは別に設けた気泡噴射器61に供給して、この気泡噴射器61から池水中に噴射することもできる。加圧器63は、コンプレッサや有圧ファンが使用できる。コンプレッサからなる加圧器63は、回収した酸素を高圧に加圧して気泡噴射器61に供給できる。このため、気泡噴射器61から微細な気泡状に噴射できる。有圧ファンは簡単な構造で、多量の酸素を回収容器から吸入して気泡噴射器に供給できる。
【0034】
回収容器62は、池水中を浮上する酸素の気泡を回収するにしたがって、内部の液面レベルが低下する。図の回収容器62は、液面レベルを検出する液面センサ67を備えており、この液面センサ67で加圧器63を制御している。液面センサ67は、図6に示すように、回収容器62内の液面レベルが下限レベルまで低下すると、加圧器63を運転する。運転される加圧器63は、回収容器62内の酸素を吸入して液面レベルを上昇させる。加圧器63に吸入された酸素は、気泡噴射器61から養殖池100の底部に気泡状に噴射される。液面レベルが上昇して上限レベルまで上昇すると、図7に示すように、液面センサ67は加圧器63の運転を停止させる。加圧器63の運転が停止されると、液面レベルが上昇しなくなる。加圧器63の運転が停止されると、回収される酸素で液面レベルは次第に低下する。液面レベルが低下すると、液面センサ67は再び加圧器63を運転して液面レベルを上昇させる。液面センサ67は、このように加圧器63を運転して、回収容器62内の液面レベルを上限レベルと下限レベルの範囲に制御する。
【0035】
回収容器62内の液面レベルが下限レベルまで低下して、液面センサ67が加圧器63を運転する状態において、液面レベルが上昇しないと、液面センサ67が供給弁65の開度を絞るように制御して、供給弁65が気泡噴射器61に供給する酸素量を少なくする。この状態で、液面センサ67は液面レベルが上昇するまで、供給弁65の開度を絞って供給酸素量を少なくする。供給弁65が絞られて、気泡噴射器61が噴射する酸素量が少なくなって、回収容器62に浮上する酸素量よりも、加圧器63が供給する酸素量が多くなると、回収容器62の液面レベルは上昇する。液面レベルが上昇して上限レベルになると、液面センサ67は加圧器63の運転を停止する。以上の運転を繰り返して、酸素供給源64から気泡噴射器61に酸素が供給され、さらに回収容器62に回収される酸素を加圧器63で加圧して気泡噴射器61に供給する。気泡噴射器61から池水中に噴射される酸素は、一部が池水に溶解され、溶解されなかった酸素は、回収容器62と加圧器63と気泡噴射器61を循環して池水に溶解される。したがって、酸素供給源64から供給される酸素は効率よく池水に溶解される。
【0036】
酸素補給装置60を設けている養殖池100は、図2と図8に示す環状のリング池1を同心に複数列に配置している。リング池1は、所定の幅と高さを有する溝形で上方を開口している。図の養殖池100は、4列のリング池1を同心に設けている。4列のリング池1は、最内周リング池1Aと最外周リング池1Dとの間に中間リング池1B、1Cを設けて、各々のリング池1の幅を均一にしている。ただ、各々のリング池の幅は、外側に向かって次第に広くすることもできる。リング池1は、たとえば、最内周リング池1Aの内径を5mとして、各々のリング池1の幅を3.5mとする。このリング池1は、内側から外側に向かって各々のリング池1の面積を次第に大きくできる。また、リング池1を構成するリング壁2の高さは、たとえば2.7mとする。ただし、養殖池は、リング池の幅とリング壁の高さを特定するものではない。リング池の幅と深さは、養殖し、あるいは畜養する魚の種類や大きさを考慮して最適値に設計される。たとえば、リング池の幅は1m〜5m、リング壁の高さは50cm〜5mとすることができる。さらに、以上の養殖池100は、4列のリング池1を設けているが、養殖池は、5列以上又は2ないし3列のリング池を設けることができる。
【0037】
図の養殖池100は、地面に円形のリング壁2を垂直に固定して、リング池1の両側にリング壁2を設けている。図9と図10の養殖池100は、地面に土間コンクリート23を打設し、この土間コンクリート23の上にプラスチック板からなる底板24を固定している。さらに、底板24の上に、リング壁2となる円形のプラスチック板を接着又は溶着して垂直に固定してリング池1を設けている。土間コンクリート23は、たとえば厚さを20cmとし、プラスチック板は5mm厚のポリエチレン板を使用する。ただ、土間コンクリートとプラスチック板は厚くして強固にできるので、リング池の大きさによって最適値とする。さらに、図9と図10の養殖池100は、最外周の外側リング壁2Aの外側にはコンクリート25を固定して補強している。
【0038】
隣接するリング池1の間のリング壁2は、一部に開口部3を設けている。この開口部3は、池水を通過できる通水性区画材4で魚が通過しないように閉塞している。図11に示す通水性区画材4は、複数の水平ロッド31を上下に離して連結している格子30である。格子30の水平ロッド31は、水平面内においてリング壁2に沿う方向に変形している。格子30を構成する水平ロッド31の間隔は、池水を通過させて魚を通過させない隙間、たとえば、1cmないし5cmとしている。格子30の通水性区画材4は、リング壁2の開口部3を、池水を通過させて魚を通過しないように塞いでいる。ただ、養殖池は、通水性区画材を格子に特定しない。通水性区画材には、池水を通過できるが魚が通過しないように閉塞できる他のすべてのもの、たとえば、網やネットも使用できる。
【0039】
格子30の通水性区画材4は、リング壁2に沿う方向に変形している水平ロッド31を、水平面内において、通水性区画材4を連結しているリング壁2と同じ曲率半径に湾曲している。この養殖池100は、リング壁2と格子30をひとつの円周上に配置して、リング池1に沿って遊泳する魚が格子30に接触するのを有効に防止できる。水平ロッド31は、ステンレス等の金属製の丸パイプである。
【0040】
通水性区画材4の格子30は、図12と図13に示すように、水平ロッド31を上下ロッド32で連結している。上下ロッド32は、水平ロッド31の中間の複数カ所を連結して、水平ロッド31の間隔を一定に保持している。上下ロッド32は、水平ロッド31を貫通して一定の間隔に連結する。上下ロッド32は、水平ロッド31を一定の間隔に保持するスペーサ筒33に挿通している。スペーサ筒33は、上下の水平ロッド31に挟着されて、水平ロッド31の間に固定される。上下ロッド32は一端に鍔34を有し、他端に雄ネジ35を設けており、この雄ネジ35にナット36をねじ込んで、水平ロッド31を固定している。さらに、図の通水性区画材4の格子30は、スペーサ筒33の表面を回転パイプ37でカバーしている。回転パイプ37は、スペーサ筒33の表面を回転できるようにカバーする。したがって、回転パイプ37はその内径をスペーサ筒33の外径よりも大きく、かつ全長をスペーサ筒33よりも短くしている。回転パイプ37はステンレス等の金属パイプである。
【0041】
さらに、通水性区画材4の格子30は、水平ロッド31の両端を、溝形連結材38の溝内に挿入して、この溝形連結材38を介して連結している。溝形連結材38もステンレス等の金属製の溝形鋼である。この格子30は、溝形連結材38と水平ロッド31を貫通するように止ネジ39で固定している。止ネジ39は、水平ロッド31を直径方向に貫通するように、溝形連結材38と水平ロッド31を貫通して、水平ロッド31を溝形連結材38に固定している。水平ロッド31と溝形連結材38は、図示しないが、止ネジによらずリベットで連結することができ、また溶接して連結することもできる。
【0042】
以上に示す格子30の通水性区画材4は、水平ロッド31や回転パイプ37や溝形連結材38をステンレス等の金属製としている。金属製の格子30である通水性区画材4は、全体を強固にできる特徴がある。ただ、格子の通水性区画材は、水平ロッドや回転パイプや溝形連結材を、プラスチック製とすることもできる。プラスチック製の格子は、たとえば、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等のプラスチックで製作される。このように、プラスチックで製作される通水性区画材は、全体を軽くしながら、低コストに製造できる。
【0043】
格子30の通水性区画材4は、溝形連結材38を介して格子30の片側を水平面内で傾動できるように、リング壁2の開口部3の一方の側縁3Aに連結している。図14の拡大断面図に示すように、格子30は、溝形連結材38とリング壁2の開口部3の内面に固定している蝶番40を介して傾動できるようにリング壁2に連結している。格子30の通水性区画材4は、蝶番40と反対側の側縁を脱着部4Aとして、開口部3の他方の側縁3Bに脱着できるように連結している。さらに、図11に示す通水性区画材4は、水平面内でスムーズに傾動できるように、脱着部4Aである溝形連結材38の下端にローラー41を設けている。この通水性区画材4は、リング池1の底面に沿ってローラー41を回転させて、スムーズに傾動できる。
【0044】
以上の格子30の通水性区画材4は、脱着部4Aを外して内側のリング壁2に連結して、魚を内側のリング池1から外側のリング池1に移送する。図示しないが、通水性区画材は、脱着部を外側のリング壁に連結して、外側の魚を内側に移送することもできる。図2と図8に示す通水性区画材4は、リング池1の幅よりも広くして、内側又は外側のリング壁2に連結する状態で、リング壁2に対して傾斜する姿勢としている。この通水性区画材4は、魚をスムーズに隣のリング池1に移送できる。
【0045】
さらに、図2と図8の養殖池100は、リング池1の外側に魚の取上池5を設けている。図の養殖池100は、リング池1の外側リング壁2Aの外側に、外側リング壁2Aと平行に湾曲壁52を設けて、湾曲壁52と外側リング壁2Aとの間に取上池5を設けている。取上池5は、最も外側の最外周リング池1Dの外側に隣接して、最外周リング池1Dと平行に設けている。取上池5は、その幅をリング池1よりも狭くしている。取上池5の幅は、たとえば、50cm以上であって1.5m以下とすることができる。
【0046】
さらに、養殖池100は、取上池5とリング池1との連結部に開閉ガイド54を設けており、この開閉ガイド54を介して、取上池5を最外周リング池1Dに連結している。この養殖池100は、開閉ガイド54を開いて、リング池1の魚を取上池5に案内する。外側リング壁2Aは、取上池5と最外周リング池1Dとの連結部に開口部3を設けており、この開口部3を開閉ガイド54で閉塞している。図2と図8の養殖池100は、取上池5の両端をリング池1に連結しており、取上池5の両端の連結部に開閉ガイド54を設けている。この取上池5は、一方の開閉ガイド54を開いてリング池1の魚を取上池5に案内し、他方の開閉ガイド54を開いて取上池5の魚をリング池1に戻すことができる。ただ、養殖池は、取上池の一端のみをリング池に連結することもできる。
【0047】
図2に示す開閉ガイド54は、図11に示す前述の通水性区画材4と同じ構造の格子30としている。格子30である開閉ガイド54は、池水を通過させて、魚を通過させない通水性を有する構造として、魚を確実に取上池5に案内できる。ただ、開閉ガイドは、必ずしも格子とする必要はなく、網やネットを使用して、池水を通過できるが、魚が通過させない構造とすることもできる。このように、開閉ガイド54が通水性を有する構造は、取上池5の水を淀ませることなく、取上池5からリング池1に、また、リング池1から取上池5に池水を流動させて、取上池5とリング池1とに理想的に池水を循環できる特徴がある。とくに、通水性を有する開閉ガイド54は、全体を軽くして、水の抵抗を少なくできるので、取上池5やリング池1に池水を循環させる状態においても、簡単かつスムーズに開閉できる。ただ、養殖池は、開閉ガイドを、必ずしも、池水を通過できる通水性を有する構造とする必要はない。それは、この開閉ガイド54が、魚を取上池5に案内するときにのみ、最外周リング池1Dを取上池5に連結するための部材であって、通常時において、池水を通過させる必要はないからである。したがって、開閉ガイドは、通水性のない部材とすることもできる。
【0048】
図2と図8に示す開閉ガイド54は、最外周リング池1Dの外側壁である外側ガイド壁2Aから内側壁に移動できるように連結しており、開閉ガイド54を最外周リング池1Dの内側壁に連結して、最外周リング池1Dの魚を取上池5に移動できるようにしている。開閉ガイド54は、水平面内で傾動できるように、外側リング壁2Aの開口部3の一方の側縁3Aに連結している。この開閉ガイド54は、図14に示す構造と同様にして、すなわち、開口部3の側縁3Aに固定される蝶番を介して、傾動できるように外側リング壁2Aに連結することができる。さらに、開閉ガイド54は、反対側の側縁を脱着部54Aとして、開口部3の他方の側縁3Bに脱着できるように連結している。図2と図8に示す開閉ガイド54は、最外周リング池1Dの幅よりも広くして、内側壁に連結する状態で、リング壁2に対して傾斜する姿勢としている。この開閉ガイド54は、魚をスムーズに取上池5に移送できる。
【0049】
図8において、取上池5の右端に連結している開閉ガイド54は、図の鎖線で示す位置(図2において矢印Aで示す方向)に移動して、最外周リング池1Dの魚を取上池5に移送する。開閉ガイド54を実線位置に連結して、最外周リング池1Dの魚を取上池5に移送することなく、最外周リング池1Dに遊泳させる。さらに、図8において取上池5の左上端部に連結している開閉ガイド54は、図の鎖線で示す位置(図2において矢印Bで示す方向)に移動して、取上池5に移した魚を最外周リング池1Dに戻すことができる。最外周リング池1Dに取上池5を連結して、開閉ガイド54で最外周リング池1Dの魚を取上池5に移送できる養殖池100は、魚を取上池5に入れて簡単に取り出しできる。また、取上池5に移動して取り出ししない魚は、開閉ガイド54を操作して、取上池5から最外周リング池1Dに簡単に移動できる。このため、取り出しする魚を選別しながら能率よく魚を養殖池100から取り出しできる。
【0050】
図2と図8の養殖装置は、酸素補給装置60の気泡噴射器61と回収容器62を取上池5に配設している。気泡噴射器61は、取上池5の底に配設され、回収容器62は、取上池5の上部に配設している。取上池5は、図8の矢印で示すように、強制流動される池水が循環される。取上池5は、強制流動される池水を、流入側の開閉ガイド54から流入させて、排出側の開閉ガイド54からリング池1に排出する。したがって、取上池5に気泡噴射器61と回収容器62を配設する養殖装置は、取上池5の池水をリング池1に循環して、リング池1の溶存酸素濃度を高くできる。取上池5の開閉ガイド54は、魚を取上するとき以外は閉じる状態とする。したがって、取上池5は、開閉ガイド54を閉じる状態でマグロなどの魚を遊泳させない領域となる。この領域に気泡噴射器61と回収容器62を配設する養殖装置は、遊泳するマグロなどの魚が、気泡噴射器61や回収容器62に衝突して損傷することがない。とくに、マグロのように高速で回遊する魚は、養殖中の衝突による損傷がはなはだしいが、取上池5に気泡噴射器61と回収容器62を配置する構造は、魚の衝突を有効に防止しながら、池水の溶存酸素濃度を高くできる。このため、回遊速度が速いために要求酸素量の多いマグロを、衝突による損傷を効果的に防止しながら、好ましい状態で養殖できる。さらに、取上池5は、魚を遊泳させる領域ではないので、リング池1に比較して強制流動させる流速を遅くできる。このことは、気泡噴射器61から噴射する気泡が流れで移動される水平距離を短くして、いいかえると、池水中に噴射された気泡を上方に浮上させて、その上方に配設する回収容器62で効率よく回収できる。このため、酸素を無駄にすることなく、効率よく回収して池水に溶解できる特徴も実現する。さらに、図の養殖装置は、リング池1の中央部から排水するので、リング池1の外周部に設けた取上池5の池水に酸素を補給しながら、この池水を外周から中心部に流動することで、池水の全体に酸素を効率よく補給できる特徴も実現する。
【0051】
この養殖装置は、魚を取上池5から取り上げるとき、気泡噴射器61と回収容器62は取上池5から取り除かれる。取上池5に入れた魚が衝突して損傷するのを防ぐためである。ただし、気泡噴射器は、取上池の底に埋設して、その上面を取上池の底面と同一面に配設して魚の衝突を防止できる。この気泡噴射器は、魚を取上池に入れるときに取り除く必要はなく、酸素を噴射しながら魚を取り上げできる。フロート72で取上池5に浮かせて配設している回収容器62は、簡単に取上池5から外して取り出すことができる。
【0052】
図15は、取上池5の魚を損傷なく簡単に取り出しできる取上具10を示す。これ等の図に示す取上具10は、取上池5に入れて内側に魚を案内する載せ部10Aと、この載せ部10Aの両端に連結している引上部10Bとを備える。この取上具10は、図に示すように、載せ部10Aに魚を入れて、引上部10Bで引き上げて、魚を取上池5から簡単に、しかも損傷させない状態で取り出しできる。図15の取上具10は、シート材11の両側に2本のロッド14を連結して、シート材11を載せ部10Aとし、ロッド14を引上部10Bとしている。載せ部10Aであるシート材11は、非通水性の底シート12の両側に通水ネット13を連結したものである。通水ネット13は、網材やシートに多数の貫通孔を設けて通水できるようにしてなるシートである。
【0053】
この取上具10は、以下のようにして、取上池5の魚を取り出しする。
(1)図8において、取上池5の右端に連結している開閉ガイド54を実線位置として、取上池5に魚を入れない状態で、2本のロッド14の間隔を取上池5の幅にほぼ等しくなるように広げて、シート材11を取上池5につり込む。
(2)その後、図8において取上池5の右端の開閉ガイド54を鎖線で示す位置(図2において矢印Aで示す方向)に移動して、最外周リング池1Dの魚を取上池5に移動させる。このとき、取上池5の左上の開閉ガイド54は、取上池5の魚が最外周リング池1Dに戻らないように、実線で示す位置として、取上池5の左上端を閉塞する。
(3)引上部10Bである2本のロッド14をつり上げると、載せ部10Aであるシート材11の上の魚が取上池5から取り上げられる。このとき、魚は、図15に示すように、底シート12に縦に乗って暴れることがなく、また、水はシート材11の通水ネット13から排水される。したがって、魚が底シート12の上に乗った状態で、水切りして取り出し、能率よく、しかも魚を損傷することなく取り出しできる。
【0054】
リング池1の池水は、強制流動器15で同じ方向に回転するように流動される。さらに強制流動器15は、リング池1の外側に隣接して配設される取上池5の池水も、リング池1と同じ方向に流動させている。すなわち、図の強制流動器15は、取上池5とリング池1の両方の池水を同じ方向に流動させている。この養殖池100は、開閉ガイド54を開いて取上池5を最外周リング池1Dに連結する状態で、最外周リング池1D内を流れに逆らって泳ぐ魚を、最外周リング池1Dから取上池5に、よりスムーズに案内できる。また、取上池5に案内された魚は、取上池5においても流れに逆らって泳ぐことから、取上池5に案内された魚を簡単に補足して取り上げできる。それは、池水に対する魚の速度は速くても、取上池5に対する相対速度を遅くできるからである。
【0055】
図2及び図8ないし図10の強制流動器15は、ポンプ16と、このポンプ16で加圧して排出される池水を噴射するノズル18を固定している給水パイプ17とからなる。これらの図の養殖池100は、対向する位置に給水パイプ17を配置している。図8と図9において左側に配置される給水パイプ17に池水を供給するポンプ16は水中ポンプで、池水を吸入し、これを加圧して給水パイプ17に供給する。図8と図9において右側に配置される給水パイプ17に池水を供給するポンプ16は、後述する浄化槽28で浄化された水を吸入し、これを加圧して給水パイプ17に供給する。給水パイプ17は、リング池1の液面から上方に離れて配置される。この給水パイプ17は、リング池1を遊泳する魚が衝突することがない。給水パイプ17は、所定の間隔で複数のノズル18を固定している。ノズル18は、ポンプ16から供給される池水をリング池1の水面に噴射して、リング池1の池水を加速して、リング池1に沿って回転させる。ノズル18は、リング池1の池水を流す方向に傾斜して、リング池1の水面に池水を噴射する。養殖池100の対向する位置に配置される両方の給水パイプ17は、ノズル18から噴射する池水で、池水を同じ方向に回転させる。給水パイプ17は、リング池1に直交するように配置される。この構造の強制流動器15は、リング池1の池水を一定の方向に流れるように加速しながら、池水に酸素を補給できる。ただ、養殖池は、強制流動器を以上の構造には特定しない。強制流動器には、リング池の池水を一定の方向に加速して流すことができる全ての構造にできるからである。
【0056】
強制流動器15でリング池1に沿って回転するように流される池水は、最内周リング池1Aの内側に異物を集積させる。ここに集められる異物をリング池1から排出するために、最内周リング池1Aの池底の内側に、池水を流入させる排水開口6を設けて、この排水開口6に排水管7を連結している。図8の養殖池100は、最内周リング池1Aの池底の内側に沿って排水リング8を設けて、この排水リング8に排水開口6を設けている。図16は、排水リング8を示す斜視図である。この図の排水リング8は、上方を開口する溝形として排水開口6を設けている。さらに、この図の排水リング8は、複数のリングユニット8Aに分割されて、分割されたリングユニット8Aを連結具9で連結している。この構造の排水リング8は、同じ形状のリングユニット8Aをプラスチックで成形し、これを連結具9で連結して簡単に施工できる。リングユニット8Aは、最内周リング池1Aの内側に沿う曲率半径に湾曲する形状であって、上方を開口する溝形に成形される。さらに、リングユニット8Aは、連結具9に挿入して連結される連結部8aを筒状とし、この連結部8aを筒状の連結具9に挿入して簡単に連結できる。とくに、リングユニット8Aと連結具9をプラスチックで成形し、これを接着剤で接着して簡単に連結できる。この構造の排水リング8は、3つのパイプをT字状に連結しているチーズを連結具9に使用し、この連結具9にリングユニット8Aと排水管7を連結して、排水リング8に排水管7を簡単に連結できる。
【0057】
溝形の排水リング8で上方を排水開口6とする構造は、最内周リング池1Aの内側に集められる異物を速やかに外部に排出できる。ただし、養殖池は、最内周リング池に設ける排水開口をこの構造には特定しない。たとえば、最内周リング池の底部内周に沿って複数の排水開口を設け、各々の排水開口に排水管を連結する構造、また排水リングを多数の貫通孔のあるパイプとすることもできる。また、最内周リング池の底面を内周に沿って溝のある形状に成形し、この溝に排水開口を設けて排水管を連結する構造とすることもできる。
【0058】
排水開口6を大きく開口する構造は、最内周リング池1Aの内側に集められる異物を速やかに排出できる。ただ、畜養される魚が排水開口に対して小さいと、魚が排水開口に侵入し、あるいは、排水開口で傷つくおそれがある。したがって、養殖池100は、図9の一部拡大断面図に鎖線で示すように、排水開口6に網材19を配置して、畜養される魚が排水開口6に侵入するのを防止することができる。この網材19には、集められる異物を通過できるが、畜養される魚が通過できない網目のものを使用する。また、排水リングを多数の貫通孔のあるパイプとする構造は、パイプに開口される貫通孔の大きさを、異物を通過できるが魚が通過できない大きさとして魚の侵入を防止できる。
【0059】
排水管7は、図10に示すように、リング池1の底に埋設されて外部に引き出され、外部の引出部に立上部7Aを設けている。立上部7Aは、上端開口部7aから池水を排水して、池水の水面レベルをコントロールする。池水の水面レベルは、立上部7Aの上端開口部7aのレベルにほぼ等しくなるので、立上部7Aの上端開口部7aの上下位置を調整してリング池1の水面レベルをコントロールできる。
【0060】
図10に示す立上部7Aは、池水の水面レベルをコントロールする調整部29を設けて、上端開口部7aの高さを調整できる構造としている。図の調整部29は、立上部7Aの上端部に連結してなる連結筒29Aと、この連結筒29Aの上側に、脱着自在に連結される調整筒29Bとからなる。この構造の調整部29は、連結筒29Aに連結される調整筒29Bの長さで上端開口部7aの高さを調整できる。すなわち、この調整部29は、連結筒29Aに連結する調整筒29Bの長さを短くして、上端開口部7aを低く、すなわち、池水の水面レベルを低くでき、また、連結筒29Aに連結する調整筒29Bの長さを長くして、上端開口部7aを高く、すなわち、池水の水面レベルを高くできる。この構造の調整部29は、極めて簡単な構造で、池水の水面レベルを自由に調整できる。ただ、立上部は、図示しないが、伸縮できる二重筒構造として、上端開口部の高さを自由に調整することもできる。
【0061】
排水管7から排水される池水は、排水槽26に蓄えられる。排水管7の上端開口部7aは排水槽26の内部にあって、ここから排水する池水を排水槽26に蓄える。排水管7から排水槽26に流入される池水は、ポンプ27で浄化槽28に供給される。浄化槽28は、ポンプ27から供給される池水を物理濾過し、さらに生物濾過して清澄な池水とする。浄化槽28で清澄になった池水は、さらにポンプ16に吸入されて給水パイプ17に送られる。給水パイプ17は、供給される池水をノズル18から勢いよく噴射して、リング池1に沿って強制的に流動させる。図の養殖池100は、リング池1の池水を、最内周リング池1Aの池底の内側に設けた排水開口6→排水管7→排水槽26→ポンプ27→浄化槽28→ポンプ16→供給パイプ17→リング池1に循環して、清澄に保持する。また、循環させる池水をノズル18から噴射して、池水を強制的に流動させている。ただし、養殖池は、排水管から排水される池水を循環することなく外部に排水することで浄化槽を設けない構造とすることもでき、また、浄化槽で清澄になった池水をノズルから噴射することなく、リング池に循環することもできる。
【0062】
図2、図8及び図9の養殖池100は、リング池1の上方に、各々のリング池1に交差するように、すなわち、リング池1に橋渡しするように交差材20を配置している。図の交差材20は、作業用の歩み板21と、リング池1に水を噴射して池水を加速して流動させる強制流動器15の給水パイプ17である。交差材20は、これらの部材に特定するものでないが、用途を問わず交差材20があると、リング池1の魚に損傷を与える。リング池1の流れに逆らって遊泳する魚が水面から飛び上がって衝突するからである。交差材20は、ここに衝突したほとんどの魚を死滅させる。
【0063】
以上の弊害を解消するために、図2と図8に示すように、交差材20の下面から下流方向に延長して帯状の軟質材22を配置している。図に示す帯状の軟質材22は、魚が衝突しても損傷しない可撓性シート22Aである。可撓性シート22Aは、図17に示すように、一端を交差材20の上流側の下面に固定すると共に、他端部を交差材20の下流方向に延長して水面上に浮設している。この可撓性シート22Aは、図17に示すように、下流側の先端部が池水の流れの方向に向かって流されて水面上に浮設される。さらに、給水パイプ17である交差材20に配設される可撓性シート22Aは、ノズル18から噴射される池水が上面に供給されて、池水を一定の方向に流れるように加速して同じ方向に回転させる。魚はリング池1の流れに逆らって泳ぐので、水面に飛び上がる魚は、図17において右側から左側に飛び跳ねようとする。このとき、可撓性シート22Aの下側において、水面に飛び上がろうとする魚は、図の矢印Aで示すように、可撓性シート22Aの下面に衝突して水中に落下して、交差材20に衝突するのが阻止される。また、可撓性シート22Aの下流側において、水面に沿って飛び跳ねる魚は、図の矢印Bで示すように、可撓性シート22Aの上面に落下するが、この魚は、図18に示すように、可撓性シート22Aに設けたスリット22aを通過して水中に戻り、あるいは、強制流動器15のノズル18から噴射される水圧で下流方向に押し流されて水中に戻る。このため、流れに逆らって飛び上がる魚が交差材20に衝突して損傷するのが阻止される。
【0064】
図18の可撓性シート22Aは、池水の流れに沿ってリング池1に浮設できるように、両側をリング壁2の内面に沿う湾曲形状としている。さらに、図の可撓性シート22Aは、上面に乗り上げた魚を水中に戻すために、下流側の端部から中間部にかけて、複数列のスリット22aを開口して設けている。このスリット22aは、上面に魚が乗り上げた状態では、図の鎖線で示すように拡開して、可撓性シート22Aの上面から下面に魚を通過させて水中に戻す。ただ、図示しないが、このスリットは、下流側の端縁まで延長して開口して、可撓性シートの全体形状をのれん状とすることもできる。可撓性シート22Aは、水面から飛び上がる魚が交差材20に衝突するのを阻止できるように、飛び跳ねた魚が水面上を前進する距離よりも長く、たとえば、魚の体長の2〜5倍の長さとして、先端部を池水の流れに沿って浮設している。
【0065】
以上の養殖装置は、取上池5に気泡噴射器61と回収容器62を配設するが、高速で遊泳しない魚の養殖装置にあっては、リング池に気泡噴射器と回収容器を配設することができる。また、本発明は、養殖池をリング池に特定せず、たとえば四角形、円形、あるいは楕円形とする養殖池に、気泡噴射器と回収容器を配設して、池水に酸素を補給して溶存酸素濃度を高くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明者が先に開発した魚の養殖装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる魚の養殖装置の斜視図である。
【図3】図2に示す魚の養殖装置の酸素補給装置の概略断面図である。
【図4】図3に示す酸素補給装置の平面図である。
【図5】酸素補給装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図6】図3に示す酸素補給装置の使用状態を示す概略断面図である。
【図7】図3に示す酸素補給装置の使用状態を示す概略断面図である。
【図8】図2に示す魚の養殖装置の概略平面図である。
【図9】図8に示す魚の養殖装置のA−A線断面に相当する概略断面図である。
【図10】図8に示す魚の養殖装置のB−B線断面に相当する概略断面図である。
【図11】図2に示す魚の養殖装置の通水性区画材を示す斜視図である。
【図12】図11に示す通水性区画材の分解斜視図である。
【図13】図11に示す通水性区画材の垂直断面図である。
【図14】リング壁の開口部と通水性区画材の連結構造を示す拡大断面図である。
【図15】取上具の一例を示す斜視図である。
【図16】排水リングの一例を示す斜視図である。
【図17】図2に示す養殖装置の軟質材を示す断面図である。
【図18】図17に示す軟質材の平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1…リング池 1A…最内周リング池
1B…中間リング池
1C…中間リング池
1D…最外周リング池
2…リング壁 2A…外側リング壁
3…開口部 3A…側縁
3B…側縁
4…通水性区画材 4A…脱着部
5…取上池
6…排水開口
7…排水管 7A…立上部
7a…開口部
8…排水リング 8A…リングユニット
8a…連結部
9…連結具
10…取上具 10A…載せ部
10B…引上部
11…シート材
12…底シート
13…通水ネット
14…ロッド
15…強制流動器
16…ポンプ
17…給水パイプ
18…ノズル
19…網材
20…交差材
21…歩み板
22…軟質材 22A…可撓性シート
22a…スリット
23…土間コンクリート
24…底板
25…コンクリート
26…排水槽
27…ポンプ
28…浄化槽
29…調整部 29A…連結筒
29B…調整筒
30…格子
31…水平ロッド
32…上下ロッド
33…スペーサ筒
34…鍔
35…雄ネジ
36…ナット
37…回転パイプ
38…溝形連結材
39…止ネジ
40…蝶番
41…ローラー
52…湾曲壁
54…開閉ガイド 54A…脱着部
60…酸素補給装置
61…気泡噴射器
62…回収容器
63…加圧器
64…酸素供給源 64A…酸素ボンベ
65…供給弁
66…酸素濃度センサ
67…液面センサ
70…開口部
71…周壁
72…フロート
91…リング池
100…養殖池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖池(100)の水中に、加圧された酸素を気泡状に噴射する気泡噴射器(61)と、養殖池(100)の水面に配設されて、前記気泡噴射器(61)で気泡状に噴射されて水面に浮上した酸素を下方の開口部(70)から回収する回収容器(62)と、この回収容器(62)で回収された酸素を加圧して気泡噴射器(61)に供給する加圧器(63)と、前記気泡噴射器(61)に加圧された酸素を供給する酸素供給源(64)とを備え、
前記酸素供給源(64)から気泡噴射器(61)に加圧された酸素が供給され、気泡噴射器(61)から水中に気泡状に噴射される酸素が回収容器(62)で回収され、回収された酸素が加圧器(63)で気泡噴射器(61)に供給されて養殖池(100)の水中に噴射されるようにしてなる魚の養殖装置。
【請求項2】
前記加圧器(63)がコンプレッサである請求項1に記載される魚の養殖装置。
【請求項3】
前記回収容器(62)の液面を検出する液面センサ(67)を備え、この液面センサ(67)が加圧器(63)を制御して回収容器(62)の液面レベルを所定の範囲に制御する請求項1に記載される魚の養殖装置。
【請求項4】
前記酸素供給源(64)から気泡噴射器(61)に供給する酸素の供給量をコントロールする供給弁(65)を備える請求項1に記載される魚の養殖装置。
【請求項5】
前記養殖池(100)が、所定の幅を有する環状のリング池(1)を設けるリング壁(2)と、このリング壁(2)の間に設けられるリング池(1)の池水を強制的に流動させる強制流動器(15)と、リング池(1)の外側に配置されてリング池(1)の池水が循環される魚の取上池(5)とを備え、この取上池(5)に前記気泡噴射器(61)を配設してなる請求項1に記載される魚の養殖装置。
【請求項6】
前記取上池(5)がリング池(1)に隣接して平行に配設され、前記強制流動器(15)が取上池(5)とリング池(1)の両方の池水を同じ方向に流動させている請求項5に記載される魚の養殖装置。
【請求項7】
前記取上池(5)の幅がリング池(1)よりも狭い請求項5に記載される魚の養殖装置。
【請求項8】
前記リング池(1)の外側リング壁(2A)の外側に、外側リング壁(2A)と平行に湾曲壁(52)を設けて、湾曲壁(52)と外側リング壁(2A)との間に前記取上池(5)を設けている請求項5に記載される魚の養殖装置。
【請求項9】
前記取上池(5)のリング池(1)との連結部に、開閉ガイド(54)を設けており、この開閉ガイド(54)を開いてリング池(1)の魚を取上池(5)に案内するようにしてなる請求項5に記載される魚の養殖装置。
【請求項10】
前記取上池(5)の両端をリング池(1)に連結しており、取上池(5)の両端の連結部に開閉ガイド(54)を設けており、一方の開閉ガイド(54)を開いてリング池(1)の魚を取上池(5)に案内し、他方の開閉ガイド(54)を開いて取上池(5)の魚をリング池(1)に戻すようにしてなる請求項9に記載される魚の養殖装置。
【請求項11】
前記開閉ガイド(54)が、池水を通過させて魚を通過させない通水性を有する請求項9に記載される魚の養殖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−165372(P2009−165372A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5054(P2008−5054)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(505121752)
【Fターム(参考)】