説明

魚介酢とその製造方法

【課題】魚介類の風味を有する魚介酢と、その製造方法の提供。
【解決手段】魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料と醸造酢又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料とによって製造される。魚介酢の製造方法は、魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を、醸造酢に所定時間浸漬させて魚介類の風味を付加させる。別法は、所定のデンプン成分に糖化酵素を付加して糖を製造する糖化工程20と、製造された糖に魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をぺーストにしたペースト魚介類材料を混入させる素材混入工程30と、得られた混合物に酵母菌を付加して発酵させてアルコールを得る酵母発酵工程40と、該アルコールに酢酸菌を付加して発酵させて酢酸を得る酢酸発酵工程60と、酢酸発酵工程で得られた酢酸を熟成発酵させる熟成工程70とによって少なくとも構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、モズク、シラス、エビ等の魚介類、もしくは、甘エビの殻、蟹の甲羅、ウナギ残渣等の魚介類の残渣を利用し、魚介類の風味を有した魚介酢とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、昆布類及び/又は魚介類の風味に優れ、塩かど・酢かどがなく、味なれのした熟成感のある、工業的に生産可能な複合調味料及びその製造方法を提供するものである。この特許文献1の複合調味料は、醤油、みりん、並びに凍結濃縮昆布類抽出物及び/又は凍結濃縮魚介類抽出物のうち、少なくとも2つを配合後、熟成及び/又は加熱工程を包含するものである。
【0003】
特許文献2は、魚介類、特にカタクチイワシ、マイワシなどを原料として、アレルギー物質のヒスタミン含有量が少なく、また睡眠中の突然死の原因と考えられているチラミン含有量も少なく、魚の臭みの少ない、低塩分又は無塩の魚介類発酵調味液を効率よく製造する方法を提供するものである。この方法において、カタクチイワシ、マイワシなどの魚介類をその漁獲時から選別、輸送、搬入、仕込み時から10日間の間に、酢酸などの酸性溶液に接触させ、食塩或いは、食塩及びエタノール共存下、或いは、エタノール存在下で酵素加水分解処理するものである。
【0004】
特許文献3は、魚醤油の製造期間を短縮するために、魚介類を容器に漬け込んで魚を熟成する際に、容器に酢酸エチルを加えるようにした調味料の製造方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−327797号公報
【特許文献2】特開2008−212051号公報
【特許文献3】特開2011−50356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1は、醤油、みりんと魚介類の抽出物とを配合した複合調味料を開示し、特許文献2は、イワシを酢酸溶液に接触させて食塩もしくはエタノールで酵素加水分解処理した発酵調味液を開示し、特許文献3は、魚介類を漬け込んだ容器に、酢酸エチルを加えた調味料を開示する。
【0007】
上述したように、従来の調味料には、魚介類の風味を生かした酢はなかった。そこで本願発明の発明者は、しらす等の小さい魚類や、甘エビの身をとった残りの殻、蟹の甲羅等の甲殻類の殻や、ウナギ残渣等の利用価値の少ない原料を利用して、魚介類の風味を有する酢を製造することを思い立ち、魚介酢を発明するにいたった。
【0008】
したがって、本願発明は、魚介類の風味を有する魚介酢と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明のかかる魚介酢は、魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料と、醸造酢とによって製造されるものである。尚、この場合の魚介類は、モズクなどの海藻、シラス等の小魚、甘エビの殻、蟹の甲羅、ウナギ残渣等の加工廃棄物である。
【0010】
乾燥させて粉末化した乾燥粉末魚介類材料を用いることによって、魚介類の臭みを軽減できるものである。さらに、乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を用いることによって、風味、味、成分が分解する速度を速めることが可能となるものである。
【0011】
また、本願発明の魚介酢の製造方法は、魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を、醸造酢に所定時間浸漬させて魚介類の風味を付加させるものである。
【0012】
この方法においては、短期間に魚介類の風味や味わいを醸造酢に移行することができるという効果を奏するが、栄養素はあまり残らないという不具合もある。
【0013】
さらに、本願発明の魚介酢の製造方法は、所定のデンプン成分に糖化酵素を付加して糖を製造する糖化工程と、製造された糖に、魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入させる素材混入工程と、これによって製造された混合物に酵母菌を付加して発酵させてアルコールを得る酵母発酵工程と、該アルコールに酢酸菌を付加して発酵させて酢酸を得る酢酸発酵工程と、酢酸発酵工程で得られた酢酸を熟成発酵させる熟成工程とによって少なくとも構成されるものである。
【0014】
この方法においては、発酵用のデンプン成分に魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入させて、酵母発酵及び酢酸発酵させて、熟成させるために、より旨味のある魚介酢を製造することができるものである。
【0015】
さらにまた、前記酢酸発酵工程において、再度乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入させることが望ましい。これによって、魚介類の風味、味、成分をさらに強めることができるものである。
【0016】
また、前記魚介類は、モズク等の海草類であることが望ましく、またシラス等の小魚、甘エビの身をとった残りの殻、蟹の甲羅、ウナギ残渣を、乾燥させて粉末にしたものであってもよいものである。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、料理に使用する醸造酢に、魚介類の風味、旨味、成分を含ませることができるので、魚介の旨味を簡単に料理に付与できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の魚介酢の製造工程の一例を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の実施例について説明する。
【0020】
本願発明において、重要な点は、魚介類素材、特に、モズク等の海草類、シラス等の小魚、甘エビの身をとった残りの殻、蟹の甲羅、ウナギ残渣等の魚介類の廃棄物を、乾燥させた後、粉末にした乾燥粉末魚介類材料、又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を使用することである。
【実施例1】
【0021】
本願発明に係る製造方法の第1の実施例は、所定量の醸造酢に、上記乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を浸漬し、1週間程度保存して魚介酢を製造するものである。この方法では、簡単に御意類の風味や旨味を醸造酢に移すことができるものである。
【実施例2】
【0022】
本願発明に係る製造方法の第2の実施例は、図1に示すように、第1工程10において、醸造酢の原料となるデンプン成分を用意する。魚介類の素材原料には、アルコール発酵となる糖成分がないことから糖化になるデンプン質成分を仕込み時に入れる。このデンプン成分としては、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、コンニャク、レンコン、栗、ドングリ、ソテツの実などからとったデンプン、米、麦等の穀物などからとったデンプンを使用することが可能である。
【0023】
第2工程20では、上記デンプン成分に、糖化酵素(アミラーゼ)を付加して、デンプンを糖化し、第3工程30でこの糖化されて生成された糖に、乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料からなる魚介類素材を混入し、第4工程40で、酵母菌を付加し、アルコール発酵を行う。この発酵期間は通常1ヶ月程度である。この後、第6工程60での酢酸菌で酢酸発酵を行い、さらに1〜2ヶ月の熟成発酵(第7工程70)を経て魚介酢を生成するものである。また、この実施例では、風味、味、成分をより強めるために第6工程60の前に又は同時に第5工程50として、再度前記魚介類素材を混入するものである。
【0024】
本願発明によれば、酵母菌によるアルコール発酵の前に乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入するため、魚介の素材原料の成分が発酵と同時に分解されることで、魚介類の風味、旨味、成分をより強く移行させることができるものである。
【0025】
同様に、酢酸菌を付加して酢酸発酵させる前に、同様に乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入することによって、さらに魚介類の風味、旨味、成分をより強く移行させることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料と、醸造酢とによって製造されることを特徴とする魚介酢。
【請求項2】
魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を、醸造酢に所定時間浸漬させて魚介類の風味を付加させることを特徴とする魚介酢の製造方法。
【請求項3】
所定のデンプン成分に糖化酵素を付加して糖を製造する糖化工程と、
製造された糖に魚介類を乾燥させて粉末にした乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入させる素材混入工程と、
これによって製造された混合物に酵母菌を付加して発酵させてアルコールを得る酵母発酵工程と、
該アルコールに酢酸菌を付加して発酵させて酢酸を得る酢酸発酵工程と、
酢酸発酵工程で得られた酢酸を熟成発酵させる熟成工程とによって少なくとも構成されることを特徴とする魚介酢の製造方法。
【請求項4】
前記酢酸発酵工程において、再度乾燥粉末魚介類材料又は魚介類をペーストにしたペースト魚介類材料を混入させることを特徴とする請求項3記載の魚介酢の製造方法。
【請求項5】
前記魚介類は、モズクを含む海草類又はシラスを含む小魚であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに載の製造方法。
【請求項6】
前記魚介類乾燥粉末材料は、甘エビの身をとった残りの殻、蟹の甲羅、ウナギ残渣を含む魚介類加工廃棄物を、乾燥させて粉末にしたものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一つに記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−66444(P2013−66444A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208547(P2011−208547)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(511231827)有限会社NEWビジネス研究所 (1)
【出願人】(511231838)浅間酒造有限会社 (1)
【Fターム(参考)】