説明

魚介類抽出物含有調味料及びその製造方法

【課題】 酸化臭が抑えられ、品質安定性に優れ、かつ低コストで力価の強い魚介類抽出物含有調味料を提供する。
【解決手段】 魚介類抽出物を含有する調味料であって、魚介類を抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を含有する、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料。魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合する、上記した魚介類抽出物含有調味料の製造方法。
【効果】 所期の目的を達成した、新たな魚介類抽出物含有調味料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類抽出物含有調味料及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類は調味料原料として広く用いられている。魚介類は我国の代表的な調味料原料であり、それを水又は温水に浸漬して得られた、いわゆるだしが多くの料理、食品に使用されている。だしに用いられる原料としては、鰹節、鯖節、宗田節等の節類や煮干し、干しえび、干し貝柱等の乾燥魚介類が主なものであり、また、生の魚介類も同様の原料として挙げられる。家庭、飲食店及び加工食品メーカーでは、通常、だしの必要量に応じて、これらの原料を用意し、水又は温水に浸漬するか又は煮出して抽出し、固液分離してだしを得る。これらのだしの特徴としては、原料由来のイノシン酸を始めとする核酸や、アミノ酸、ペプチド、有機酸の旨み成分と特有の香り成分も含有するので独特の風味を形成する。この旨みや香り成分の良好なだしを得るためには、熟練と手間を要し、例えば、原料と水との割合、抽出温度及び抽出時間の選択において相当の熟練を要する。また、節類を用いる場合、節類の削り具合を考慮する必要がある。更に、得られただしは香りの劣化や腐敗が生じるため長期保存が出来ないという問題がある。一方、これらのだし原料を水又は温水で抽出すると、飲食店、加工食品メーカーにおいて、その残渣の処理が労力、経済性の両面から大きな問題となる。
【0003】
こういった状況下で、最近では各調味料メーカーが調製した主に濃縮タイプの魚介類調味料を使用する飲食店や加工食品メーカーが増えている。一般的な濃縮タイプの魚介類調味料の製造方法は、原料となる魚介類を必要に応じて適宜破砕後、常圧あるいは加圧下で水、温水又はエタノール含有液で抽出し、常法通り固液分離し、常圧下や減圧下で加熱して水を蒸発させ濃縮するのが通常であり、必要により脱臭、脱色、脱油、分離等の処理を施す。魚介類を煮熟する際の副産物である煮汁をそのまま、あるいは酸又は酵素で一部分解した後濃縮する方法も知られている。しかしながら、魚介類調味料は、生の魚介類や乾燥魚介類の香気成分である揮発性含硫化合物、低級脂肪酸、フェノール類等が主体となって醸し出される上品かつ複雑な組成を有するものであり、濃縮処理によりこれらの香気成分が飛散したり、変質したりするため、従来の手作りのだしに比べて、香り、旨味において原料由来の香り成分が保持されていないという欠点を有し、より手作りのだしに近い良好な香りを保持した品質を有するものが要望されている。
【0004】
より高品質の魚介類調味料を得るために、エキスや風味だし、風味調味料といった分野において各種技術開発が進められている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。しかしながら、燻臭と肉質感を抽出により効率よく同時に得ることは難しく、燻臭だけでなく肉質感も併せ持った魚介類抽出物含有調味料はこれまでないというのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−62955号公報
【特許文献2】特開平6−303938号公報
【特許文献3】特開2000−279124公報
【特許文献4】特開2003−116484公報
【特許文献5】特開2007−20558公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術にかんがみ、酸化臭が抑えられ、品質安定性に優れ、かつ低コストで力価の強い魚介類抽出物含有調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、魚介類抽出物を含有する調味料であって、魚介類を抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を含有することを特徴とする、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料に関する。本発明の第2の発明は、抽出溶媒が、アルコール濃度30〜70v/v%である第1の発明の魚介類抽出物含有調味料に関する。本発明の第3の発明は、ヘキサナールが低減された第1又は第2の発明の魚介類抽出物含有調味料に関する。本発明の第4の発明は、1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムが増強された第1〜第3のいずれかの発明の魚介類抽出物含有調味料に関する。本発明の第5の発明は、魚介類抽出物を含有する調味料の製造方法において、魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することを特徴とする、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感のより引立った魚介類抽出物含有調味料の製造方法に関する。
【0008】
本発明者らは、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料を提供すべく、鋭意検討を行った。その結果、燻臭と肉質感を併せ持った魚介類抽出物含有調味料を得るために、特定のアルコール濃度の抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を含有することにより、酸化臭が抑えられ、品質安定性に優れ、かつ低コストで力価の強い魚介類抽出物含有調味料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の魚介類抽出物含有調味料は、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料である。特に、加熱劣化や保存中の経時劣化に関係するヘキサナールが低減された魚介類抽出物含有調味料となる。また、特に、肉質感に関係する1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムが増強された魚介類抽出物含有調味料となる。更に、魚介類抽出物を含有する調味料の製造方法において、魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することにより、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感のより引立った魚介類抽出物含有調味料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明で使用する魚介類は、動物分類学上の魚類、貝類以外にホヤ等の原索動物、ウニ、ナマコ等の棘皮動物、えび、かに等の甲殻類、いか、たこ等の貝類以外の軟体動物のことをいう。当該魚介類には生及び乾燥魚介類があり、更に加工処理が施された節類も含まれる。ここでいう節類とは、魚介類を煮熟後、焙乾させたもの、又はそれにかび付けしたものであればよく、特にその種類は限定されない。例えば、鰹節(枯節、荒節、裸節、なまり節等)、雑節(宗田節、鯖節、うるめ節、まぐろ節、むろあじ節、いわし等)がある。また、乾燥魚介類とは、魚介類を煮熟後、天日、乾燥機で乾燥させたものであればよく、特にその種類は限定されない。例えば、煮干し、干しえび、干し貝柱等がある。これらの節類、乾燥魚介類は必要により裁断、破砕、粗粉砕等を行い本発明の原料に用いる。また、これらの原料は混合して使用することもできる。
【0011】
本発明の魚介類抽出物含有調味料は、魚介類抽出物を含有する調味料であって、魚介類を抽出溶媒存在下で磨砕して得られる磨砕処理物を、更に抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を含有することを特徴とするものである。
特に、アルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して得られる磨砕処理物を、更に抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することにより、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料とすることができる。
【0012】
本発明における「磨砕」とは、前記した魚介類をすりおろしたり、すりつぶしたりして微細状にすることをいう。また、磨砕する前に、必要により裁断、破砕、粗粉砕等を行い、抽出溶媒存在下で磨砕をする。粗粉砕、磨砕を工業的に行うには、市販の粗粉砕機、例えば、増幸産業(株)製のカッターミル、市販の磨砕機、例えば、増幸産業(株)製のスーパーマスコロイダーや米国アーシェル社製のコミトロールプロセッサーを適宜使用すればよい。
【0013】
鰹節を例として以下詳しく説明する。通常、鰹節加工メーカーでは、鰹節を粗粉砕、乾燥、微粉砕、殺菌、包装という工程を経て鰹節製品を出荷している。粗粉砕、微粉砕という工程は、溶媒存在下でないので、以下、「乾式粉砕」と略述する。乾式粉砕により得られる鰹節は、粉砕時に発生する熱による劣化や粉砕直後から空気に触れることによりはじまる酸化劣化は避けられない。一方、本発明で用いる抽出溶媒存在下での磨砕という工程(以下、「湿式粉砕」と略述する)で得られる鰹節は、熱がかからないので酸化臭が抑えられ、また、後述する抽出を、特に好ましくはすぐに行うため、削りたての風味を保持したものとなる。
【0014】
本発明では、魚介類の湿式粉砕は抽出溶媒存在下で行う。抽出溶媒として、アルコールを用い、その濃度は、30〜70v/v%であることが好ましい。燻臭と肉質感とのバランスのよさの観点より、40〜60v/v%であることがより好ましい。抽出溶媒のアルコール濃度が30v/v%未満であると、肉質感があり素だしに近い風味はあるものの力価が弱く高コストとなる。また、抽出溶媒のアルコール濃度が70v/v%超であると、燻臭が強すぎ素だし感に欠ける。なお、本発明における「アルコール濃度」とはエチルアルコール(エタノール)の濃度をいう。魚介類と抽出溶媒との固液比に特に限定はなく、熱を発生しないように湿式粉砕できる条件を適宜選択すればよい。湿式粉砕するときの温度は、熱がかからないように室温程度として行う。また、例えば磨砕機を用いて湿式粉砕する場合には、クリアランス(砥石間隔)は1500μm以下として行えばよい。湿式粉砕後に抽出作業を行うが、抽出温度は20〜80℃の範囲から適宜選択すればよい。温度が20℃より低いと魚介類の風味成分の抽出が不十分となり、80℃より高いと魚介類の風味成分の劣化や苦味を生じることになり好ましくない。抽出効率の観点より、好ましい抽出温度は40℃以上である。抽出時間は、10分から2、3時間の範囲から適宜選択すればよく、低い温度のときは抽出時間を長くとり、高い温度のときは短くする。例えば抽出温度が60℃であれば、60℃達温後10分程度で十分抽出されることになる。
【0015】
抽出溶媒として、水(アルコール濃度0v/v%)又はアルコール濃度80v/v%である含水エタノール溶液を用い、湿式粉砕して、固液分離後、得られた磨砕処理物を、種々の比率で混合しても燻臭と肉質感をバランスよく併せ持つものは得られず、特定のアルコール濃度の抽出溶媒存在下での湿式粉砕、その後の抽出により得られる抽出物を含有してはじめて素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料となる。
【0016】
アルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒の場合を例として更に説明する。魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である含水エタノール溶液存在下で湿式粉砕して、磨砕処理物を得、該処理物を20〜80℃で抽出して、必要により固液分離を行い、抽出物を得る。抽出に使用する溶媒は、該処理物を分別した含水エタノール溶液か、あるいは新たな30〜70v/v%の含水エタノール溶液のみか、又はそれを前記の分別した液に一部加えたものでよい。得られた抽出物は、アルコール濃度30〜70v/v%である含水エタノール溶液で抽出された液部分であり、この抽出物を含有することにより、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料とすることができる。
【0017】
アルコール濃度30〜70v/v%である含水エタノール溶液での魚介類抽出残渣(固形部分)を、温度20〜100℃の水や熱水で抽出して、前記した抽出物に併せてもよい。また、アルコール濃度30〜70v/v%である含水エタノール溶液で抽出して得られた抽出物を、必要により固液分離を行い、これに更に新たに魚介類を粗粉砕したものを加え、湿式粉砕して、磨砕処理物を得、該処理物を前記と同様に、20〜80℃で抽出後、必要により固液分離を行い、抽出物を得ることも有効である。前記と同様、魚介類抽出残渣を、温度20〜100℃の水や熱水で抽出して併せてもよい。本発明により、別々に調製した2種類以上の該磨砕処理物を併せて、その後抽出溶媒中で抽出して抽出物を得てもよいし、2種類以上の該磨砕処理物を抽出溶媒中で抽出してそれぞれの抽出物を得た後併せてもよい。磨砕処理物を抽出溶媒中で抽出しているときに新たに魚介類を加えて再度磨砕処理するという連続した工程とすることも有効である。このように、魚介類抽出物を含有する調味料の製造方法において、魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することにより、乾式粉砕での不都合点である粉砕時に発生する熱による劣化や粉砕直後から空気に触れることによりはじまる酸化劣化に関係するヘキサナールが低減され、また、肉質感に関係する1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムが増強された、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感のより引立った魚介類抽出物含有調味料を製造することができる。
【0018】
本発明で得られる魚介類抽出物含有調味料は、そのままでも使用できるが、必要に応じて、食塩、アミノ酸、核酸系物質、有機塩類、エタノール、香料等の副原料を加えてもよい。なお、例えばスプレードライにより、乾燥、粉末化してもよく、特定の形態に限定されるものではない。本発明で得られる魚介類抽出物含有調味料は、つゆ、だし等の液体調味料や漬物、惣菜等のさまざまな食品に好適に使用できる魚介類抽出物含有調味料である。
【0019】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
鰹節10kgをカッターミル〔増幸産業(株)製〕で粗粉砕し、アルコール濃度30v/v%である含水エタノール溶液40リットルを加え、スーパーマスコロイダー〔増幸産業(株)製〕で磨砕して磨砕処理物を得、その処理物を、該処理物から分別された、アルコール濃度30v/v%である含水エタノール溶液中で60℃まで加温して10分間保持して抽出後、ろ過して鰹節の抽出物である抽出液を得た。これは湿式粉砕の試料に相当する。他方、鰹節10kgをハンマーミルで粗粉砕し、120℃で乾燥後、ネアミル〔(株)ダルトン製〕で微粉砕して乾式粉砕鰹節を得た。乾式粉砕鰹節にアルコール濃度30v/v%である含水エタノール溶液40リットルを加え、60℃まで加温して10分間保持して抽出後、ろ過して抽出液を得た。これは乾式粉砕の試料に相当する。それぞれの試料について、8名のパネラーにより酸化臭の強さ、好ましさの官能評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1より、本発明である湿式粉砕の試料は、酸化臭が抑えられ、燻臭と肉質感のバランスがよく素だし感の引立ったものとなった。なお、それぞれの試料には明確な差があり、8名のパネラー全員が、対照である乾式粉砕の試料に酸化臭の強さを指摘し、本発明である湿式粉砕の試料を好ましいと指摘した。
【0023】
更に、GC/MSにより香気成分を解析した。分析は、キャピラリーカラムDB−5(J&W社製)を接続したガスクロマトグラフ6890A(アジレント社製)に質量検出器5973〔横河アナリティカルシステムズ(株)製〕を連結したもので、ヘッドスペース部分を固相マイクロ抽出法により常法通り行った。図1は、GC/MS分析の結果を示すクロマトグラムであり、上段に本発明である湿式粉砕の試料、下段に対照である乾式粉砕の試料、横軸は時間(分)、縦軸はアバンダンス(イオン存在量)である。本発明である湿式粉砕の試料は、対照である乾式粉砕の試料と比べて、ヘキサナール等の酸化臭のピークが顕著に低くなっていた。乾式粉砕の試料のヘキサナール、1−ペンテン−3−オール、ヘプタナールのピークエリア値をそれぞれ1としたときに、湿式粉砕の試料のそれぞれのピークエリア値は、0.09、0.14、0.30であった。
【実施例2】
【0024】
鰹節30kgをカッターミルで粗粉砕し、アルコール濃度40v/v%である含水エタノール溶液60リットルを加え、スーパーマスコロイダー〔増幸産業(株)製〕で磨砕して磨砕処理物を得、その処理物を、該処理物から分別された、アルコール濃度40v/v%である含水エタノール溶液中で60℃まで加温して10分間保持して抽出後、ろ過して鰹節の抽出物である抽出液を得た。これは一段抽出の試料に相当する。一方、同様に磨砕して磨砕処理物を得、その処理物を、前記同様にアルコール濃度40v/v%である含水エタノール溶液中で60℃まで加温して10分間保持して抽出後、ろ過して鰹節の抽出物である抽出液を得、更に該抽出液に鰹節15kgをカッターミルで粗粉砕したものを加え、スーパーマスコロイダー〔増幸産業(株)製〕で磨砕して磨砕処理物を得、その処理物を、該処理物から分別された、アルコール濃度40v/v%である含水エタノール溶液中で60℃まで加温して10分間保持して抽出後、ろ過して鰹節の抽出物である抽出液を得た。これは二段抽出の試料に相当する。
【0025】
一段抽出の試料、二段抽出の試料のいずれにおいても、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立ったものとなった。特に二段抽出の試料は、一段抽出の試料より肉質感が際立ちより素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料であった。
【0026】
実施例1と同様の方法により、GC/MSにより香気成分を解析した。図2は、GC/MS分析の結果を示すクロマトグラムであり、上段に一段抽出の試料、下段に二段抽出の試料、横軸は時間(分)、縦軸はアバンダンス(イオン存在量)である。二段抽出の試料は、一段抽出の試料と比べて、1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムのピークが顕著に高くなっていた。一段抽出の試料の1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムのピークエリア値をそれぞれ1としたときに、二段抽出の試料の1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムのそれぞれのピークエリア値は、2.94、2.42、1.17であった。前記したこれら成分は、肉質感に関係するものである。
【0027】
このように、二段抽出して得られる抽出物を配合することにより、燻臭だけでなく肉質感がありより素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の魚介類抽出物含有調味料は、酸化臭が抑えられ、削りたての風味を保持しているという品質安定性に優れている。魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して得られる磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することにより、低コストで力価の強い魚介類抽出物含有調味料を得ることができる。工業的規模での製造も可能であり、本発明は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1におけるGC/MS分析の結果を示すクロマトグラムであり、上段に本発明である湿式粉砕の試料、下段に対照である乾式粉砕の試料を示している。
【図2】実施例2におけるGC/MS分析の結果を示すクロマトグラムであり、上段に一段抽出の試料、下段に二段抽出の試料を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類抽出物を含有する調味料であって、魚介類を抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を含有することを特徴とする、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感の引立った魚介類抽出物含有調味料。
【請求項2】
抽出溶媒が、アルコール濃度30〜70v/v%であることを特徴とする請求項1に記載の魚介類抽出物含有調味料。
【請求項3】
ヘキサナールが低減された請求項1又は2に記載の魚介類抽出物含有調味料。
【請求項4】
1−オクテン−3−オール、2−エチル−1−ヘキサノール、メトキシ−フェニル−オキシムが増強された請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚介類抽出物含有調味料。
【請求項5】
魚介類抽出物を含有する調味料の製造方法において、魚介類をアルコール濃度30〜70v/v%である抽出溶媒存在下で磨砕して磨砕処理物を得、該処理物を、その後抽出溶媒で抽出して得られる抽出物を配合することを特徴とする、燻臭だけでなく肉質感があり素だし感のより引立った魚介類抽出物含有調味料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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