説明

魚判別装置

【課題】 画像処理における誤った判断を防止し、魚が傷つくことを防止し、高効率に、魚の形状を判別する魚判別装置を提供することである。
【解決手段】 魚判別装置10において収容槽12は、少なくとも一部が透視性を有する側壁16を備える。撮像部13は、収容槽12の側方に配置され、側壁16のうち透視性を有する部分から収容槽12内の魚11を撮像する。判定部14は、撮像部13によって撮像された画像を解析し、その解析結果に基づいて収容槽12内の魚11の良不良を判定する。貯留槽17は、収容槽12に供給するための液体を貯留可能な貯留空間が形成され、貯留空間に液体を貯留する。連通管18は、収容槽12の底部と貯留槽17の底部とに接続され、収容槽12の内部空間と貯留槽17の貯留空間とを連通可能である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を判別する魚判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚の養殖においては、形状に異常が見られる稚魚を判別し、除去する必要がある。養殖において、形状がよく、健康な稚魚の個体数は多ければ多いほどよいことから、取扱う稚魚の個体数も多いことが望まれる。しかし稚魚が多くなれば多くなるほど、稚魚の良不良の判定に多くの時間と労力がかかるため、稚魚の良不良を判定することにも効率化が求められる。判定の対象となる判定対象物を撮像装置によって撮像し、画像処理によって判定する従来技術としては、コンベア上に判定対象物を乗せ、これを上方から撮像装置によって撮像して、その結果撮像装置から出力される撮像画像を画像処理によって判定する手段が知られている。
【0003】
図8は、従来技術に係る青果物形状判定設備1の構成図である。青果物形状判定設備1は、照明装置2と、撮像装置3と、画像処理装置4と、形状判定装置5とを備えて構成される。照明装置2は、青果物6の上面を照らし、撮像装置3は、照らされた青果物6を撮像する。画像処理装置4は、撮像装置3が撮像した青果物6の撮像画像から、青果物6の輪郭と重心位置とを抽出する。形状判定装置5は、重心位置を中心として所定角度毎に位置する前記輪郭の点の座標を求め、これら座標から各輪郭の点と重心位置との距離を演算し、この求めた距離によって青果物6の形状を判定する。形状判定装置による判定結果は、評価判定装置7によって評価される(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−267415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
青果物6の撮像画像から青果物6の形状を判定する装置では、判定の対象となる青果物6はコンベア上に乗せられて搬送され、搬送の途中で上方から撮像される。しかし魚を液体から取出し、コンベア上で撮像して、撮像した結果得られる撮像画像によって魚の形状を判定すると、魚の背部と腹部とを逆に判断し、誤った判定をするおそれがある。また液体から取出された魚は、固体と接触することで傷つくおそれがある。したがって、コンベア上で魚の向きを変化させると、魚を傷つけてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、画像処理における誤った判断を防止し、魚が傷つくことを防止し、高効率に、魚の形状を判別する魚判別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、魚判別装置は、収容槽と、撮像部と、判定部と、貯留槽と、連通管とを含んで構成される。収容槽は、少なくとも一部が透視性を有する側壁を備え、魚を正立状態で液体と共に収容する。撮像部は、収容槽の側方に配置され、側壁のうち透視性を有する部分から収容槽内の魚を撮像する。判定部は、撮像部によって撮像された画像を解析し、その解析結果に基づいて収容槽内の魚の良不良を判定する。貯留槽は、収容槽に供給するための液体を貯留可能な貯留空間が形成され、貯留空間に液体を貯留する。連通管は、収容槽の底部と貯留槽の底部とに接続され、収容槽の内部空間と貯留槽の貯留空間とを連通可能である。
【0008】
また本発明に従えば、魚判別装置は、仕切り壁と、光源とをさらに含むことを特徴とする。仕切り壁は、収容槽の内部空間を仕切り、この内部空間内で移動可能に設けられる。光源は、収容槽内の魚に光を照射する。
【0009】
また本発明に従えば、魚判別装置は、仕切りフィルムをさらに含んで構成される。仕切りフィルムは、透視性および可撓性を有し、側壁のうち撮像部側の部分から離れて収容槽の内部空間を仕切って設けられる。仕切り壁は、収容槽内の仕切りフィルムに向けて移動可能である。
【0010】
また本発明に従えば、魚判別装置は、可撓性フィルムをさらに含んで構成される。可撓性フィルムは、可撓性を有し、仕切り壁よりも撮像部側の、収容槽内に設けられる。
【0011】
また本発明に従えば、収容槽は、下方開口部と、底板とを含む。下方開口部は、収容槽の内部空間よりも下方に設けられ、内部空間に魚および液体を収容するときには閉じられ、内部空間内の魚および液体を放出するときには開かれる。底板は、下方開口部を開閉可能である。仕切りフィルムの下端部は、底板が下方開口部を閉じることによって、底板と下方開口部との間に挟持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、魚は、液体中に収容した状態で、撮像および判定が行われるので、魚が傷つくことを防止することができる。魚は、液体中では正立状態となるので、魚の背部と腹部とを誤認することを防止することができる。したがって、人間による判断に伴う判断の誤りを防止することができる。また撮像した画像を解析した解析結果に基づいて判定を行うので、人間が視認して判断する場合に比べて、精確かつ高効率に魚を判別することができる。
【0013】
また連通管は、収容槽の底部と貯留槽の底部とに接続され、収容槽の内部空間と貯留槽の貯留空間とを連通可能であるので、貯留槽内の液体を、収容槽の底部から供給することができる。収容槽への液体の供給に伴って、収容槽の内部空間に気体を巻き込むことがないので、収容槽の内部空間に気泡が発生することを防止することができる。したがって、撮像部によって撮像したときに、気泡が撮像されることを防止することができ、魚を判定するときに気泡が誤差となることを防止することができる。これによって、魚の判別の精度を高くすることができる。
【0014】
また本発明によれば、仕切り壁は内部空間内で移動可能であるので、魚を内部空間内で偏在させることができる。仕切り壁は、内部空間を仕切るので、偏在させられた魚が、仕切り壁を超えることを防止することができる。仕切り壁は、魚を偏在させた状態で、さらに押圧することができる。これによって、魚の動きを停止させることができ、かつ魚を刺激することができる。魚は刺激されることによって鰭を開く習性があるので、魚の鰭を開かせることができる。したがって、魚を停止させて撮像することと魚が鰭を開いた状態で魚を撮像することとを両立することができる。
【0015】
仕切り壁は透光性を有するので、光源からの光を魚に照射することができる。魚の鰭が開かれた状態で光を照射して撮像するので、鰭の色を薄く撮像することができる。これによって、撮像された魚の形状のうち、鰭を除いた残余の部分の輪郭を抽出することが可能となる。したがって、魚の鰭が魚体の輪郭に含まれることによる輪郭の変化を防止することができ、魚の輪郭を抽出するときに鰭の形状が誤差となることを防止することができる。これによって、魚の判別の精度を高くすることができる。
【0016】
また本発明によれば、仕切り壁は、仕切りフィルムに向けて移動可能であるので、魚を仕切りフィルムに押し当てることができる。仕切りフィルムは、収容槽の内部空間を仕切るので、仕切り壁が魚を仕切りフィルムに押し当てたときに、仕切りフィルムは変位することができる。これによって、魚に付与される押圧力を制限することができる。また仕切りフィルムは、可撓性を有し、変形可能であるので、仕切りフィルムが可撓性を持たない場合に比べて、仕切りフィルムと魚体との接触面積を大きくすることができる。したがって、魚と仕切りフィルムとの押圧力を広い面積で分散することができ、魚に対して局所的に大きな圧力が付与されることを防止することができる。これによって、魚を押圧して刺激することと、魚が傷つくことを防止することとを両立させることができる。
【0017】
また本発明によれば、魚判別装置は、可撓性フィルムをさらに含んで構成される。可撓性フィルムは、可撓性を有し、仕切り壁よりも撮像部側の、収容槽内に設けられる。これによって、仕切り壁が収容槽内の魚に接触するときに、仕切り壁によって魚が傷つくことを防止することができる。
【0018】
また本発明によれば、仕切りフィルムの下端部は、底板が下方開口部を閉じることによって、底板と下方開口部との間に挟持される。これによって、内部空間内の魚および液体を放出するときには、仕切りフィルムの下端部に対する挟持を解除することができる。したがって、仕切りフィルムによって仕切られる内部空間内の、仕切りフィルムの両側の液体が、開口部から放出されるときに、液体の放出に関して仕切りフィルムが抵抗となることを防止することができる。これによって、たとえば仕切りフィルムの下端部が下方開口部に固着されている場合に比べて、液体の放出にかかる時間を短縮することができる。したがって、魚の判別の効率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の鉛直な断面を表す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の平面図である。本実施形態に係る魚判別装置10は、生きている魚11の良不良を、その形状から判別する装置である。具体的には魚判別装置10は、生きている魚11の良不良を判定し、分別する。生きている魚のことを「魚」11と称する。本実施形態に係る魚判別装置10が判別の対象とする魚11は、鯛の稚魚とするけれども、本発明において魚判別装置10が判別の対象とする魚は、特に規定しない。たとえば他の実施形態において魚判別装置10は、スズキ目、フグ目、キンメダイ目、カサゴ目、トビウオ目、マトウダイ目、ダツ目、ボラ目、コイ目、タラ目、サケ目などの魚およびその稚魚を分離の対象とすることができる。
【0021】
本発明において、魚11を収容する液体は、水、または塩分を含む水であり、たとえば淡水、海水、汽水のいずれであってもよい。魚11の吻端から尾柄部の椎骨の末端までの長さを「標準体長」と称する。口ひげは吻端から除く。標準体長と一致する線分に垂直な方向において、最大となる背縁から腹縁までの長さを「体高」と称する。背びれおよび胸鰭は体高から除く。標準体長と一致する線分および体高に一致する線分に垂直な方向において、最大となる魚体の幅の大きさを「体幅」と称する。体幅から胸鰭、尻鰭は除く。
【0022】
本発明において、魚11が背部を上方に向け、腹部を下方に向けている状態を「正立状態」と称する。魚11の形状について、良不良を判断することを「判定」と称し、判定した判定結果に基づいて魚11を分別することを「判別」と称する。
【0023】
魚判別装置10は、収容槽12と、撮像部13と、判定部14とを含んで構成される。収容槽12は、少なくとも一部が透視性を有する側壁16を備え、魚11を正立状態で液体と共に収容する。撮像部13は、収容槽12の側方に配置され、側壁16のうち透視性を有する部分から収容槽12内の魚11を撮像する。判定部14は、撮像部13によって撮像された画像を解析し、その解析結果に基づいて収容槽12内の魚11の良不良を判定する。魚判別装置10は、貯留槽17と、連通管18とをさらに含んで構成される。貯留槽17は、収容槽12に供給するための液体を貯留可能な貯留空間が形成され、貯留空間に液体を貯留する。連通管18は、収容槽12の底部と貯留槽17の底部とに接続され、収容槽12の内部空間と貯留槽17の貯留空間とを連通可能である。
【0024】
収容槽12は、魚11を正立状態で収容し、撮像部13は魚11を正立状態で撮像するので、魚11の背部と腹部とを逆に判断されることが防止される。魚11は、液中で遊泳すると、外力によって強制しない限り、正立状態となる習性を有する。したがって、魚11が収容槽12に液体と共に収容され、かつ液体中で遊泳可能に収容されることで、魚11は自発的に正立状態となる。これによって、判別の誤りが防止される。
【0025】
また魚11は、液体とともに収容槽12に収容され、魚11は液体の中で撮像される。仮に魚11が液体から取出されて取扱われると、魚11が液体中で取扱われる場合に比べて、魚11には傷がつきやすく魚11の健康状態が悪化し、また傷からの感染が起こる可能性が増大する。これに対し、魚判別装置10は、魚11を液体の中で撮像することで、魚11が傷つくことを防止する。魚11の判別は、魚11の画像を解析することによって行う。これによって、人間による判断に伴う判断結果の誤りを防止する。
【0026】
本実施形態において収容槽12は、魚判別装置10に2つ設けられ、それぞれ大略的に直方体の形状に形成される。側壁16は高さ方向に軸線を有する四角筒状に形成され、側壁16の一部には透視性を有する部分が形成される。透視性を有する部分を「窓部」19と称すると、各収容槽12の窓部19は、板状部材によって形成される。各窓部19は、予め定める方向を厚み方向とし、同一の向きに臨んで配置される。予め定められる窓部19の厚み方向は、略水平に設定され、この方向を「撮像方向」と称する。窓部19は、収容槽12の側壁16のうち最も撮像方向一方に位置する部分に形成され、撮像方向一方に向かって外方に臨む。「略水平」は「水平」を含む。
【0027】
撮像方向に垂直かつ水平な方向を「並列方向」と称すると、2つの収容槽12は、並列方向に並んで配置される。収容槽12の外部空間から各収容槽12を撮像方向他方に見れば、各窓部19を通して内部空間を視認することができる。窓部19を形成する部材は、透明な部材である。収容槽12の側壁16のうち、最も撮像方向他方に位置する部分には、透光性を有し、外部から内部への光の透過を許容する透光窓21が形成される。透光窓21は、透光性を有していれば透視性を有していなくても構わないけれども、本実施形態において透光窓21は、透明な部材によって形成される。収容槽12の外部空間から各収容槽12に対して撮像方向一方に光を照射すると、各窓部19を通して内部空間に光が透過する。窓部19および透光窓21を除く残余の側壁16は、透明であっても透明でなくてもよく、本実施形態においては透視性も透光性もない不透明な部材で形成される。
【0028】
収容槽12は、下方開口部22と、底板24とを含む。下方開口部22は、収容槽12の内部空間よりも下方に設けられ、内部空間に魚11および液体を収容するときには閉じられ、内部空間内の魚11および液体を放出するときには開かれる。底板24は、下方開口部22を開閉可能である。収容槽12は、収容槽蓋体26をさらに含む。収容槽蓋体26は、収容槽12の内部空間よりも上方に設けられ、開閉可能である。底板24および収容槽蓋体26は、側壁16の一部に沿って撮像方向に移動することによって開閉する。具体的には、収容槽12の側壁16および下方開口部22に対し、撮像方向一方に変位することによって閉じ、撮像方向他方に変位することによって開かれる。底板24および収容槽蓋体26は、複動式空気圧シリンダ27によって駆動される。各複動式空気圧シリンダ27のシリンダ部は、魚判別装置10の筐体44に固定され、収容槽12に対して固定されている。
【0029】
収容槽蓋体26が開いた状態において、収容槽12の内部空間は上方に開放する。収容槽12の側壁16のうち、最も撮像方向一方に位置する側壁16の上端部には、高さ方向を厚み方向とする板状の天板28が形成される。天板28は並列方向全体にわたって収容槽12の内部空間を覆うけれども、天板28の撮像方向の寸法は、収容槽12全体の撮像方向の寸法に比べて短く設定される。本実施形態において天板28の撮像方向の寸法は、およそ魚11の体幅程度の寸法に設定される。収容槽蓋体26が閉じた状態において、収容槽蓋体26の最も撮像方向一方の端部は、天板28の最も撮像方向他方の端部に接触する。天板28のうち最も撮像方向他方の端部には、後に述べる仕切りフィルム58の上端部が接続される。
【0030】
収容槽12よりも撮像方向一方には、撮像部13が配置される。撮像部13は、写真機32と、光路切換部33とを含む。光路切換部33は、写真機32に入射する光路34を切換える。収容槽12の個数は、写真機32の個数よりも多く設定される。写真機32は、電荷結合素子(Charge Coupled Device, 略号「CCD」)を備え、撮像によって得られた画像はデジタルデータとして出力され、判定部14に入力される。
【0031】
本実施形態において写真機32は、魚判別装置10に1つ設置され、2つの収容槽12に対応する。写真機32は、2つの窓部19とほぼ同じ高さに設置され、窓部19を通過して写真機32に入射する光の光路34は、2つの窓部19および写真機32とほぼ同じ高さに形成される。各収容槽12から写真機32まで形成される各光路34は、固定反射鏡36と可動反射鏡38とを含む複数の部品によって規定される。
【0032】
光路切換部33は、角変位可能な可動反射鏡38と、可動反射鏡38を角変位駆動する鏡駆動部39とを含む。固定反射鏡36は、各収容槽12に対応して、収容槽12と同じ個数設けられる。本実施形態において固定反射鏡36は各収容槽12よりも撮像方向一方に配置され、窓部19から固定反射鏡36に到達する光を、反射して可動反射鏡38に向けて進行させる。具体的には各固定反射鏡36は撮像方向と並列方向とに45度の角度を成して配置され、可動反射鏡38よりも並列方向一方と、並列方向他方とに1つずつ配置される。
【0033】
可動反射鏡38は高さ方向を軸線として軸線まわりに角変位可能に形成され、鏡駆動部39によって角変位駆動される。可動反射鏡38は、角変位することによって収容槽12の個数と同じ数の姿勢をとることができ、本実施形態においては第1状態と第2状態とをとる。第1状態では、可動反射鏡38よりも並列方向一方に位置する固定反射鏡36からの光を反射して写真機32に向けて進行させ、第2状態では、可動反射鏡38よりも並列方向他方に位置する固定反射鏡36からの光を反射して写真機32に向けて進行させる。
【0034】
鏡駆動部39は、可動反射鏡38を角変位させることによって、第1状態と第2状態とに切換える。鏡駆動部39は、たとえばステッピングモータなどのモータを含んで形成されてもよい。光路切換部33は、可動反射鏡38の姿勢を規定するための、姿勢規定片42を含んで構成される。姿勢規定片42は2つ設けられ、2つのうちの一方は、第1状態から第2状態への角変位を阻止せず、第1状態から逆向きへの角変位を阻止する。2つのうち他方の姿勢規定片42は、第2状態から第1状態への角変位を阻止せず、第2状態から逆向きへの角変位を阻止する。これらの姿勢規定片42は、筐体44に固定して設けられる。これによって、第1状態および第2状態における姿勢、すなわち可動反射鏡38の向きを、規定することができる。
【0035】
さらに光路切換部33は、可動反射鏡38の角変位量を検出して、少なくとも第1状態と第2状態とを区別して検出結果を出力するエンコーダ46を含んで構成され、エンコーダ46からの検出結果は、電気信号として出力される。
【0036】
魚判別装置10は、仕切り壁48と、光源49とをさらに含んで構成される。仕切り壁48は、収容槽12の内部空間を仕切り、この内部空間内で移動可能に設けられる。光源49は、収容槽12内の魚11に光を照射する。仕切り壁48は、少なくとも透光性を有する部材で形成され、本実施形態においては透明な板状部材によって形成される。仕切り壁48は、その厚み方向を撮像方向に一致させて収容槽12の内部空間に配置される。収容槽12の内部空間の撮像方向に垂直な断面は長方形であり、仕切り壁48をその厚み方向に見たときの形状は、内部空間の撮像方向に垂直な断面とほぼ同じ形状に設定される。仕切り壁48をその厚み方向に見たときの大きさは、収容槽12の内部空間の撮像方向に垂直な断面の大きさとほぼ同じで、かつわずかに小さい大きさに設定される。
【0037】
仕切り壁48は、内部空間内で撮像方向に移動可能に設けられ、仕切り壁48と収容槽12の側壁16との間隙、仕切り壁48と底板24との間隙、および仕切り壁48と下方開口部22との間隙は、魚11の体幅よりも小さく設定される。以下、これら魚11の体幅よりも小さく設定される間隙を「仕切り壁周囲の間隙」と称する。仕切り壁48の上端部は、収容槽蓋体26の最も撮像方向一方の端部に接続され、仕切り壁48は、収容槽蓋体26が複動式空気圧シリンダ27によって撮像方向に移動することによって収容槽蓋体26と共に移動する。
【0038】
収容槽蓋体26が開いた状態において、仕切り壁48よりも撮像方向一方の内部空間は、上方に開かれ、魚11を上方から投入することができる。収容槽蓋体26が開いた状態で上方から収容槽12の内部空間に魚11を投入した場合、投入された魚11は仕切り壁48よりも撮像方向一方に位置する。魚11が投入された状態で仕切り壁48が撮像方向一方に移動すると、仕切り壁48よりも撮像方向一方に位置する液体は、仕切り壁周囲の間隙を撮像方向に移動し、これによって仕切り壁48は魚11の位置することのできる空間は、撮像方向一方に縮小される。
【0039】
魚判別装置10は、可撓性フィルム51をさらに含んで構成される。可撓性フィルム51は、可撓性を有し、仕切り壁48よりも撮像部13側の、収容槽12内に設けられる。可撓性フィルム51の形状および大きさは、仕切り壁48を撮像方向に見たときの形状および大きさにほぼ等しく設定され、可撓性フィルム51は、およそ仕切り壁48に平行に配置される。可撓性フィルム51の上端部は、仕切り壁48の上端部と共に収容槽蓋体26の撮像方向一方の端部に接続され、仕切り壁48および収容槽蓋体26に対して固定される。可撓性フィルム51のうち、上端部を除く残余の部分は、仕切り壁48に対して固着されておらず、可撓性フィルム51と仕切り壁48との間には、収容槽12内の液体の一部が位置することができる。
【0040】
可撓性フィルム51は、少なくとも透光性を有し、本実施形態においてはさらに透視性を有する。仕切り壁48も透光性を有する部材で形成され、収容槽12の側壁16のうち最も撮像方向他方に位置する部分にも透光窓21が形成されるので、収容槽12よりも撮像方向他方から内部空間に入射する光は、収容槽12内に位置する魚11を照射することができる。
【0041】
収容槽12よりも撮像方向他方には、光源49が配置される。光源49は、本実施形態において面状に発光する面光源であり、たとえば複数の発光ダイオード(light emitting diode, 略称「LED」)アレイを含んで構成される。光源49から発せられる光は、撮像方向に進行する平行光であることが好ましく、これはたとえば複数のLEDアレイよりも撮像方向一方に各LEDに対応して複数のコリメートレンズを配置することによって実現することができる。
【0042】
収容槽12の下部の下方開口部22は、収容部に魚11および液体が収容されるときには、底板24によって閉じられている。下方開口部22によって規定される下方開口52は、高さ方向に見て矩形に形成され、底板24は下方開口部22に対して撮像方向に変位することが可能である。本実施形態において底板24は、撮像方向一方に変位することによって下方開口部22を閉じ、撮像方向他方に変位することによって下方開口部22を開放する。ただし他の実施形態において底板24は、撮像方向他方に変位することで下方開口部22を閉じる構成とすることも可能である。底板24は、シリンダ部が魚判別装置10の筐体44に固定され、収容槽12に対して固定される複動式空気圧シリンダ27によって駆動変位される。
【0043】
下方開口部22によって撮像方向一方から規定される辺は、側壁16のうち最も撮像方向一方に位置する側壁16から、およそ魚11の体幅と同じ寸法離れて形成される。換言すれば、下方開口52のうち、最も撮像方向一方の辺から、窓部19が形成される側壁16の撮像方向他方の表面までの寸法は、天板28の撮像方向の寸法と同じに設定される。
【0044】
魚判別装置10は、一時貯蔵部54をさらに含んで構成される。一時貯蔵部54は、内部に貯蔵空間が形成される。貯蔵空間は、収容槽12よりも下方に形成される。一時貯蔵部54には、内部に貯蔵空間が形成され、収容槽12から下方に放出される魚11および液体を一時的に貯蔵する。一時貯蔵部54は、複数の貯蔵部構成体56を含む。複数の貯蔵部構成体56は、それぞれ互いに独立して予め定める所定方向に変位可能である。本実施形態において貯蔵部構成体56は、2つ形成され、貯蔵部構成体56が予め定める所定方向に離れることによって、貯蔵空間に貯蔵された魚11および液体は、下方に向けて放出可能される。
【0045】
一時貯蔵部54よりも下方には、複数の判別後通路構成体57が設けられる。各判別後通路構成体57は、貯蔵空間から下方に放出された魚11および液体が通過する通路を規定する。判別後通路構成体57によって規定される複数の通路は、所定方向に並んで配置される。複数の判別後通路構成体57によって規定される複数の通路は、本実施形態においては2つ形成され、2つの通路のうち、一方は良として判定された魚11に対応し、他方は不良として判定された魚11に対応する。他の実施形態において複数の判別後通路構成体57は、たとえば3つ設けられていてもよい。判別後通路構成体57に規定される通路を3つとする場合には、たとえば3つのうちの1つを良として判定された魚11に対応させ、他の1つを不良として判定された魚11に対応させ、残余の1つを再判定が必要と判定された魚11に対応させることができる。
【0046】
本実施形態において一時貯蔵部54に魚11および液体を貯蔵した状態から、2つの貯蔵部構成体56のうちの一方が変位すると、貯蔵空間に貯蔵された魚11および液体は、2つのうちの一方の判別後通路構成体57に向けて放出される。一時貯蔵部54に魚11および液体を貯蔵した状態から、2つの貯蔵部構成体56のうちの他方が変位すると、貯蔵空間に貯蔵された魚11および液体は、2つのうちの他方の判別後通路構成体57に向けて放出される。貯蔵部構成体56は、複動式空気圧シリンダ27によって駆動される。一時貯蔵部54において予め定められる所定方向は、本実施形態においては撮像方向とした。
【0047】
魚判別装置10は、仕切りフィルム58をさらに含んで構成される。仕切りフィルム58は、透視性および可撓性を有し、側壁16のうち撮像部13側の部分から離れて収容槽12の内部空間を仕切って設けられる。仕切り壁48は、収容槽12内の仕切りフィルム58に向けて移動可能である。仕切りフィルム58の下端部は、収容槽12の底板24が下方開口部22を閉じることによって、底板24と下方開口部22との間に挟持される。
【0048】
仕切りフィルム58の上端部は、天板28の最も撮像方向他方の端部に固着される。仕切りフィルム58のうち上端部を除く残余の部分は、固着されることなく配置される。仕切りフィルム58は、外力が付与されない状態において平坦に配置され、その厚み方向を撮像方向に一致させて、収容槽12の窓部19に臨んで配置される。仕切りフィルム58の並列方向の寸法は、収容槽12の内部空間の並列方向の寸法よりもわずかに小さく設定され、仕切りフィルム58の並列方向両端部と、収容槽12の並列方向両方の側壁16との間には、間隙が形成される。この間隙は、魚11の体幅よりも小さく設定される。
【0049】
仕切りフィルム58の高さ方向の寸法は、内部空間の高さ方向の寸法、すなわち天板28の下方の表面から下方開口部22の上方の表面までの高さ方向の寸法よりも大きく設定される。仕切りフィルム58の下端部は、底板24が開いた状態において内部空間から下方に突出する。仕切りフィルム58が、外力が付与されない状態において下方に下垂すると、仕切りフィルム58の下端部は、下方開口52のうち最も撮像方向一方の辺の付近に位置する。
【0050】
側壁16のうち最も撮像方向一方に位置する側壁16と、仕切りフィルム58との間には、間隙が形成される。この間隙を「緩衝間隙」62と称すると、緩衝間隙62は、内部空間に内包される。緩衝間隙62の寸法は、天板28の撮像方向の寸法に一致する。収容槽12内に液体が収容された状態において緩衝間隙62には、液体が位置する。底板24が閉じた状態において仕切りフィルム58の下端部は、底板24と下方開口部22との間に挟まれ、仕切りフィルム58は、その上端部と下端部とにおいて固定される。したがって、底板24が閉じた状態において仕切りフィルム58が窓部19に接触することは、阻止される。また仕切りフィルム58よりも撮像方向他方に位置する魚11が、仕切りフィルム58よりも撮像方向一方に移動することは、仕切りフィルム58によって阻止される。
【0051】
底板24が開いて下方開口52が開放されると、内部空間の魚11および液体は、下方に放出される。このとき緩衝間隙62に位置する液体も、下方に放出される。底板24が閉じた状態で緩衝間隙62に位置していた液体は、下方開口52の開放によって仕切りフィルム58の下端部を、撮像方向他方に変位させる。仕切りフィルム58のうち上端部を除く残余の部分は、底板24が開いた状態において固定が解除されているので、緩衝間隙62に位置していた液体の下方への移動に対して、仕切りフィルム58が抵抗となることはない。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態に係る魚判別装置10を撮像方向に垂直な平面で切断して見た断面図である。貯留槽17は、収容槽12の高さ以上の高さに配置される。本実施形態において貯留槽17は、2つの収容槽12よりも並列方向一方に配置され、収容槽12の高さとほぼ同じ高さに配置される。貯留槽17の容積は収容槽12の容積よりも大きく設定される。貯留槽17には液体供給管63が接続される。液体供給管63は、貯留槽17内に液体を供給する。液体供給管63は、貯留槽17の底部に接続され、液体は、貯留槽17の下方から供給される。液体が液体供給管63から供給されるときには、貯留槽17内の液体と液体供給管63内の液体とが連続して供給されるので、液体がその重量に基づく駆動力によって移動することがなく、液体の供給によって液体に気泡が混入することは、防止される。
【0053】
魚判別装置10は、排出管64をさらに含んで構成される。排出管64は、開口端66を有する。開口端66は、貯留槽17内の予め定める所定高さに配置される。排出管64は所定高さよりも上方に漲溢した液体を排出する。本実施形態において排出管64は、高さ方向を軸線方向として、貯留槽17の底部から貯留槽17の貯留空間内に突出して配置される。開口端66の位置する所定高さは、収容槽12の下方開口部22から魚11の体高以上、上方で、かつ収容槽12の内部空間の高さを超えない高さに設定される。
【0054】
魚判別装置10が稼動するときには、貯留槽17内には、常時、液体供給管63から液体が供給される。貯留槽17内の液体は収容槽12内に供給され、魚11の放出に伴って収容槽12の下方に排出される。収容槽12内への液体の供給と収容槽12からの液体の排出が繰返される中で、複数の供給と排出に対応した一定時間において、貯留槽17内に供給される液体の量は、収容槽12内に移動して排出される液体の量よりも多く設定される。したがって、貯留槽17内において液体は、排出管64の開口端66の高さ、すなわち所定高さを常時、漲溢しつづける状態に維持される。
【0055】
貯留槽17内の貯留空間と収容槽12内の内部空間とは、連通管18によって連通可能であり、連通管18は貯留槽17の底部と収容槽12の底部とに接続される。連通管18は、貯留槽17内において、上方に向けて開放し、収容槽12内において上方に向けて開放可能である。貯留槽17内の液体は、収容槽12内に移動することができ、収容槽12内における液面の高さは、貯留槽17内の液面の高さ以上に維持される。魚判別装置10は、連通管蓋体68をさらに含んで構成される。連通管蓋体68は、連通管18の収容槽12側の端部に密着可能に設けられ、収容槽12内の内部空間から連通管18内部への液体の移動を阻止する。
【0056】
連通管蓋体68は、たとえばゴム弾性を有する平板状の樹脂から成り、収容槽12内において、連通管18の端部に上方から接触して配置される。連通管蓋体68は、連通管18から収容槽12内への液体の移動を阻止することなく、収容槽12内の内部空間から連通管18内への液体の移動は阻止する。したがって連通管蓋体68は、逆止弁としての機能を有する。貯留槽17内において液体は、所定の高さを漲溢し続けるけれども、また所定高さを超えることはないので、貯留槽17内の液面の高さは、一定に維持される。
【0057】
収容槽12の底板24が開くことによって、内部空間から下方に液体が魚11と共に放出されると、一旦収容槽12内の液面は下がる。これによって貯留槽17内の液体は、連通管18を通じて収容槽12内に移動し、収容槽12の内部空間には液体が下方から供給される。収容槽12内の液面が貯留槽17内の液面よりも上昇すれば、収容槽12内への液体の供給は停止し、かつ連通管蓋体68が閉じることによって、収容槽12内の液体が連通管18に逆流することは阻止される。
【0058】
本実施形態において判定部14は、デジタル情報の形態を有する画像情報を解析して、魚11の輪郭を抽出し、魚11の輪郭に基づいて、魚11の良不良を判定する部分である。本実施形態において判定部14は、魚判別装置10に1つ設けられ、コンピュータと、コンピュータの動作を規定するソフトウェアとを含んで構成される。判定部14は、魚11を撮像した画像情報から、魚11の輪郭を抽出して、魚11の形状を認識する。魚11の輪郭の抽出は、画像を構成する各画素について、明暗の程度に判断基準を設定して、判断基準よりも明るい部分と暗い部分とを分別することによって行う。ただし、画素の位置と明暗の程度を関数とし、これを微分する方法によって輪郭を抽出しても良い。
【0059】
判定部14は抽出された輪郭に対して正規化相関を行い、魚11の位置および姿勢の向きを検出する。正規化相関はパターンマッチングということもある。正規化相関によって、魚11の位置および姿勢の向きを決定した後、魚11の輪郭の形状について測定を行い、特徴抽出を行う。これはたとえば魚11の標準体長、体高、および標準体長と体高との比など複数の項目について、測定を行う。複数の項目の測定結果に基づいて、魚11に対して良不良の判定を行う。
【0060】
図5は、本発明の一実施形態に係る魚判別装置10に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。魚判別装置10は、制御部69をさらに含んで構成される。制御部69は、収容槽12に収容される魚11および液体の位置および移動を制御し、複数の魚11の判別にかかる繰返し作業の、少なくとも一部を自動的に制御する。本実施形態において制御部69は、魚判別装置10に1つ設けられ、複数の収容槽12に対応して電気的接続が行われる。また本実施形態において制御部69は、コンピュータと、コンピュータの動作を規定するソフトウェアとを含んで構成される。
【0061】
制御部69は、複数の収容槽12に関して、収容槽蓋体26および仕切り壁48を変位駆動する複動式空気圧シリンダ27と、収容槽12の底板24を変位駆動する複動式空気圧シリンダ27と、一時貯蔵部54の貯蔵部構成体56を変位駆動する複動式空気圧シリンダ27と、光路切換部33の鏡駆動部39と、可動反射鏡38の角変位に関する姿勢を検出するエンコーダ46と、判定部14とに接続され、エンコーダ46および判定部14から出力される情報に応じて、前記複数の複動式空気圧シリンダ27および鏡駆動部39を制御する。
【0062】
判定部14には、写真機32から撮像した画像がデジタルデータとして入力される。本実施形態において制御部69は、写真機32とも電気的に接続され、写真機32が撮像を終了したという情報が、写真機32から制御部69に対して送信される。
【0063】
図6は、本発明の一実施形態において判定部14が行う処理の工程を表したフローチャートである。本処理開始後、ステップa1の画像取込工程に移行し、カメラから出力される画像情報を取得する。次にステップa2の前処理工程に移行し、画像のノイズの除去および輪郭の抽出を行う。次にステップa3の姿勢特定工程に移行し、魚11の位置および姿勢の向きを特定する。次にステップa4の測定工程に移行し、形状測定および特徴抽出を行う。次にステップa5の判定工程に移行し、形状測定および特徴抽出の結果に基づいて、魚11の良不良について判定を行う。その後、本処理は終了する。
【0064】
図7は、魚判別装置10による魚11の判別方法の工程を表すフローチャートである。本処理に先立って、収容槽蓋体26は開き、底板24は閉じ、貯蔵部構造体は魚11および液体の貯蔵可能に閉じられ、光源49は面光源として光を照射している状態に設定される。以下、この状態を「初期状態」と称する。初期状態において底板24は下方開口52を閉じているので、収容槽12内には液体が所定高さまで収容されている状態である。
【0065】
本処理開始後、ステップb1の魚投入工程に移行し、魚11を1匹、収容槽12内に投入する。この魚11の投入は、人手によって行う。本処理開始直後に、2つの収容槽12のうち、いずれの収容槽12の魚11を撮像および判別するかについては、予め定めておく。たとえば本実施形態においては、本処理開始後、まず並列方向一方の収容槽12において、魚11の撮像および判別を行う。
【0066】
次にステップb2の可動反射鏡駆動工程に移行し、可動反射鏡38を角変位駆動させ、並列方向一方の収容槽12の窓部19から写真機32への光路34を形成する。可動反射鏡38の姿勢が、すでに並列方向一方の収容槽12の窓部19から写真機32への光路34を形成した状態にあるときには、可動反射鏡38を角変位することなく、その姿勢を維持する。この工程は、制御部69がエンコーダ46から出力される情報に応じて、鏡駆動部39の駆動を制御することによって行われる。
【0067】
次にステップb3の収容槽蓋体26閉鎖工程に移行し、収容槽蓋体26を撮像方向一方に変位させる。これは制御部69が複動式空気圧シリンダ27を制御し、複動式空気圧シリンダ27が駆動することによって行われる。魚11はその習性から、収容槽12内に投入された直後、正立状態となる。収容槽蓋体26閉鎖工程が行われることによって、収容槽蓋体26に接続された仕切り壁48は、撮像方向一方に変位し、魚11を仕切りフィルム58に押付ける。これによって魚11は、強制的に停止させられ、かつ押圧されることによって刺激される。これによって魚11はその習性から、鰭を開いた状態となる。
【0068】
仕切り壁48の撮像方向一方には、可撓性フィルム51が設けられるので、仕切り壁48が魚11に直接接触することは防止され、魚11が傷つくことは防止される。また魚11が仕切り壁48の変位によって仕切りフィルム58に押付けられた状態において、仕切りフィルム58は、緩衝間隙62に変位し、変形する。これによって、仕切りフィルム58が可撓性を持たない場合に比べて、仕切りフィルム58は、魚体に対して広い面積で接触する。したがって、魚11と仕切りフィルム58との押圧力を広い面積で分散することができ、魚11に対して局所的に大きな圧力が付与されることを防止する。
【0069】
次にステップb4の撮像工程に移行し、収容槽12内の魚11の撮像を行う。これは制御部69が、エンコーダ46から出力される可動反射鏡38を姿勢の情報、または制御部69自身が複動式空気圧シリンダ27を制御して収容槽蓋体26を変位させたことに基づいて、写真機32を制御することによって行う。写真機32が撮像した画像情報は、デジタルデータとして写真機32から判定部14に送信される。また本実施形態では、撮像工程において、写真機32が撮像を終了したという情報が、写真機32から制御部69に対して送信される。
【0070】
次にステップb5の判定工程に移行し、判定部14によって判定を行う。判定は前述したように、写真機32からの画像情報を解析し、解析結果を判定基準に基づいて判定することによって行う。次にステップb6の底板開放工程に移行し、底板24を開く。これは制御部69が、写真機32が撮像を終了したという情報を受けて、底板24を変位させる複動式空気圧シリンダ27を制御することによって行われる。ただし他の実施形態においては、判定部14が判定を開始または終了したという情報を制御部69に対して送信し、制御部69はその情報を受けて底板24に接続される複動式空気圧シリンダ27を駆動させてもよい。これによって収容槽12内の魚11および液体は、一時貯蔵部54に移動する。
【0071】
次にステップa7の貯蔵部構造体変位工程に移行し、貯蔵部構造体の変位を行う。これは制御部69が、判定部14から出力される判定結果に基づいて、貯蔵部構造体に接続される複動式空気圧シリンダ27を制御して駆動させることによって行われる。判定部14からの判定結果が、良であれば、たとえば2つの貯蔵部構造体のうちの撮像方向一方を変位させて、魚11および液体を撮像方向一方の通路に移動させる。判定部14からの判定結果が、不良であれば、たとえば2つの貯蔵部構造体のうちの撮像方向他方を変位させて、魚11および液体を撮像方向他方の通路に移動させる。
【0072】
次にステップa8の初期化工程に移行し、収容槽蓋体26を開き、底板24を閉じ、貯蔵部構造体を、魚11および液体の貯蔵可能に閉じる。これによって、収容槽12内には液体が所定高さまで収容されている状態となる。この初期化工程は、制御部69自身が貯蔵部構造体を変位させたという情報に基づいて、制御部69が各複動式エアシリンダを制御することによって行う。その後、本処理は終了する。
【0073】
この処理は、2つの収容槽12に関して交互に行う。撮像部13による撮像および判定部14による判定に係る時間は、可動反射鏡38の角変位に係る時間を含めても、液体が収容槽12の所定高さまで満たされること、および各複動式エアシリンダによって初期状態に戻ることに係る時間に比べて、短時間で終了する。したがって撮像部13が複数の収容槽12に対応して設けられることによって、1つの収容槽12を用いて魚11の判別を行う時間内に他の収容槽12を初期状態に戻すことができ、単位時間当たりに行うことのできる魚11の判別の回数を多くすることができる。
【0074】
本実施形態によれば、魚判別装置10において収容槽12は、少なくとも一部が透視性を有する側壁16を備え、魚11を正立状態で液体と共に収容する。撮像部13は、収容槽12の側方に配置され、側壁16のうち透視性を有する部分から収容槽12内の魚11を撮像する。判定部14は、撮像部13によって撮像された画像を解析し、その解析結果に基づいて収容槽12内の魚11の良否を判定する。魚11は、液体中に収容した状態で、撮像および判定が行われるので、魚11が傷つくことを防止することができる。魚11は、液体中では正立状態となるので、魚11の背部と腹部とを誤認することを防止することができる。したがって、人間による判断に伴う判断の誤りを防止することができる。また撮像した画像を解析した解析結果に基づいて判定を行うので、人間が視認して判断する場合に比べて、精確かつ高効率に魚11を判別することができる。
【0075】
また貯留槽17は、収容槽12に供給するための液体を貯留可能な貯留空間が形成され、貯留空間に液体を貯留する。連通管18は、収容槽12の底部と貯留槽17の底部とに接続され、収容槽12の内部空間と貯留槽17の貯留空間とを連通可能である。これによって、貯留槽17内の液体を、収容槽12の底部から供給することができる。収容槽12への液体の供給に伴って、収容槽12の内部空間に気体を巻き込むことがないので、収容槽12の内部空間に気泡が発生することを防止することができる。したがって、撮像部13によって撮像したときに、気泡が撮像されることを防止することができ、魚11を判定するときに気泡が誤差となることを防止することができる。これによって、魚11の判別の精度を高くすることができる。
【0076】
また本実施形態によれば、仕切り壁48は、収容槽12の内部空間を仕切り、この内部空間内で移動可能に設けられる。光源49は、収容槽12内の魚11に光を照射する。仕切り壁48は内部空間内で移動可能であるので、魚11を内部空間内で偏在させることができる。仕切り壁48は、内部空間を仕切るので、偏在させられた魚11が、仕切り壁48を超えることを防止することができる。仕切り壁48は、魚11を偏在させた状態で、さらに押圧することができる。これによって、魚11の動きを停止させることができ、かつ魚11を刺激することができる。魚11は刺激されることによって鰭を開く習性があるので、魚11の鰭を開かせることができる。したがって、魚11を停止させて撮像することと魚11が鰭を開いた状態で魚11を撮像することとを両立することができる。
【0077】
仕切り壁48は透光性を有するので、光源49からの光を魚11に照射することができる。魚11の鰭が開かれた状態で光を照射して撮像するので、鰭の色を薄く撮像することができる。これによって、撮像された魚11の形状のうち、鰭を除いた残余の部分の輪郭を抽出することが可能となる。したがって、魚11の鰭が魚体の輪郭に含まれることによる輪郭の変化を防止することができ、魚11の輪郭を抽出するときに鰭の形状が誤差となることを防止することができる。これによって、魚11の判別の精度を高くすることができる。
【0078】
またさらに、光源49は、赤い色の光を発する光源とした。生体の細胞は、可視光のうち波長の長い光を透過し易い。したがって、光源の光として赤い光を用いることによって、光が魚11の鰭を透過しやすくすることができる。これによって、魚11が鰭を開いたときに、鰭の像と魚体の像との区別を容易にすることができる。したがって、鰭を除く魚体の輪郭が抽出しやすくなり、盛ん11の判別の精度を高くすることができる。
【0079】
また本実施形態によれば、仕切りフィルム58は、透視性および可撓性を有し、側壁16のうち撮像部13側の部分から離れて収容槽12の内部空間を仕切って設けられる。仕切り壁48は、収容槽12内の仕切りフィルム58に向けて移動可能である。仕切り壁48は、仕切りフィルム58に向けて移動可能であるので、魚11を仕切りフィルム58に押し当てることができる。仕切りフィルム58は、収容槽12の内部空間を仕切るので、仕切り壁48が魚11を仕切りフィルム58に押し当てたときに、仕切りフィルム58は変位することができる。これによって、魚11に付与される押圧力を制限することができる。また仕切りフィルム58は、可撓性を有し、変形可能であるので、仕切りフィルム58が可撓性を持たない場合に比べて、仕切りフィルム58と魚体との接触面積を大きくすることができる。したがって、魚11と仕切りフィルム58との押圧力を広い面積で分散することができ、魚11に対して局所的に大きな圧力が付与されることを防止することができる。これによって、魚11を押圧して刺激することと、魚11が傷つくことを防止することとを両立させることができる。
【0080】
また本実施形態によれば、可撓性フィルム51は、可撓性を有し、仕切り壁48よりも撮像部13側の、収容槽12内に設けられる。これによって、仕切り壁48が収容槽12内の魚11に接触するときに、仕切り壁48によって魚11が傷つくことを防止することができる。またさらに、可撓性フィルム51のうち、上端部を除く残余の部分は、仕切り壁48に対して固着されておらず、可撓性フィルム51と仕切り壁48との間には、収容槽12内の液体の一部が位置することができる。したがって、仕切り壁48が魚11に接触し、魚11を押圧したときに、仕切り壁48から魚11に付与される衝撃を和らげることができる。したがって、魚11が傷つくことを防止することができる。
【0081】
また本実施形態によれば、下方開口部22は、収容槽12の内部空間よりも下方に設けられ、内部空間に魚11および液体を収容するときには閉じられ、内部空間内の魚11および液体を放出するときには開かれる。底板24は、下方開口部22を開閉可能である。仕切りフィルム58の下端部は、底板24が下方開口部22を閉じることによって、底板24と下方開口部22との間に挟持される。これによって、内部空間内の魚11および液体を放出するときには、仕切りフィルム58の下端部に対する挟持を解除することができる。したがって、仕切りフィルム58によって仕切られる内部空間内の、仕切りフィルム58の両側の液体が、開口部から放出されるときに、液体の放出に関して仕切りフィルム58が抵抗となることを防止することができる。これによって、たとえば仕切りフィルム58の下端部が下方開口部22に固着されている場合に比べて、液体の放出にかかる時間を短縮することができる。したがって、魚11の判別の効率を高くすることができる。
【0082】
またさらに、連通管蓋体68は、連通管18の収容槽12側の端部に密着可能に設けられ、収容槽12内の内部空間から連通管18内部への液体の移動を阻止する。これによって、連通管18を通過して貯留槽17から収容槽12内に移動した液体が、逆流することを防止することができる。したがって、貯留槽17と収容槽12とを液体が往復して振動することを防止することができる。これによって、連通管蓋体68が設けられない場合に比べて、収容槽12内の液面を、早く安定させることができる。したがって、魚11を撮像可能となるまでの時間を短縮することができる。したがって、魚11の判別の効率を高くすることができる。
【0083】
またさらに、光路切換部33は、写真機32に入射する光路34を切換える。収容槽12の個数は、写真機32の個数よりも多く設定される。これによって、1つの写真機32で複数の収容槽12内の魚11を撮像することができる。魚11の撮像および判定にかかる時間は、撮像および判定が終了した魚11の排出と他の魚11および液体の収容とにかかる時間よりも長い。したがって、写真機32の少なくとも一部が複数の収容槽12内の魚11を撮像することによって、写真機32の個数が収容槽12の個数以上である場合に比べて、単位時間当たりに判別できる魚11の個体するを多くすることができる。これによって、魚11の判別の効率を高くすることができる。
【0084】
またさらに、排出管64は、開口端66を有する。開口端66は、貯留槽17内の予め定める所定高さに配置される。排出管64は所定高さよりも上方に漲溢した液体を排出する。これによって、貯留槽17内の高さを、所定高さに定めることができる。貯留槽17内の貯留空間内の液体は、貯留空間と収容槽12内の内部空間とが連通管18によって連通された状態で内部空間に移動するので、内部空間に移動した液体の液面の高さを、所定高さに定めることができる。貯留槽17への液体を、その液面が所定高さを超える程度に漲溢させつづければ、貯留槽17内の液面の高さを自動的に所定高さに定めることができるので、収容槽12内の液面の高さを容易に定めることができる。
【0085】
(変形例)
本実施形態において収容槽蓋体26、底板24および貯蔵部構造体は、複動式空気圧シリンダ27を用いて変位させたけれども、他の実施形態においては、たとえばソレノイド、電磁プランジャを用いて変位させる構成とすることも可能である。
【0086】
本実施形態において、判別部と制御部69とは、それぞれ互いに別のコンピュータであるものとしたけれども、判別部と制御部69とは、異なる機能を平衡して行えれば、足りる。たとえば他の実施形態において、判別部と制御部69とは、1つのコンピュータによって実現されてもよい。この場合には、1つのコンピュータを判別部としても、制御部69としても機能させるプログラムをコンピュータに搭載させる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の鉛直な断面を表す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る魚判別装置10の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る魚判別装置10を撮像方向に垂直な平面で切断して見た断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る魚判別装置10に含まれる電気的接続関係を表すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態において判定部14が行う処理の工程を表したフローチャートである。
【図7】魚判別装置10による魚11の判別方法の工程を表すフローチャートである。
【図8】従来技術に係る青果物形状判定設備の構成図である。
【符号の説明】
【0088】
10 魚判別装置
11 魚
12 収容槽
13 撮像部
14 判定部
16 側壁
17 貯留槽
18 連通管
33 光路切換部
34 光路
36 固定反射鏡
38 可動反射鏡
48 仕切り壁
49 光源
51 可撓性フィルム
58 仕切りフィルム
64 排出管
66 開口端
68 連通管蓋体
69 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部分が透視性を有する側壁を備え、魚を正立状態で液体と共に収容する収容槽と、
前記収容槽の側方に配置され、前記側壁のうち透視性を有する部分から前記収容槽内の魚を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像を解析し、その解析結果に基づいて前記収容槽内の魚の良不良を判定する判定部と、
前記収容槽に供給するための前記液体を貯留可能な貯留空間が形成され、貯留空間に前記液体を貯留する貯留槽と、
前記収容槽の底部と前記貯留槽の底部とに接続され、前記収容槽の内部空間と前記貯留槽の貯留空間とを連通可能な連通管とを含むことを特徴とする魚判別装置。
【請求項2】
前記収容槽の内部空間を仕切り、前記内部空間内で移動可能に設けられ、透光性を有する仕切り壁と、
前記収容槽内の魚に光を照射する光源とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の魚判別装置。
【請求項3】
透視性および可撓性を有し、前記側壁のうち撮像部側の部分から離れて前記収容槽の内部空間を仕切って設けられる仕切りフィルムをさらに含み、
前記仕切り壁は、前記収容槽内の前記仕切りフィルムに向けて移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の魚判別装置。
【請求項4】
可撓性を有し、前記仕切り壁よりも前記撮像部側の、前記収容槽内に設けられる可撓性フィルムをさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の魚判別装置。
【請求項5】
前記収容槽は、
その内部空間よりも下方に設けられ、前記内部空間に前記魚および前記液体を収容するときには閉じられ、前記内部空間内の前記魚および前記液体を放出するときには開かれる下方開口部と、
下方開口部を開閉可能な底板とを含み、
前記仕切りフィルムの下端部は、前記底板が前記下方開口部を閉じることによって前記底板と前記下方開口部との間に挟持されることを特徴とする請求項4に記載の魚判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−4828(P2010−4828A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169634(P2008−169634)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(592002950)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】