説明

魚巣ブロック

【目的】 水路の護岸、落差工、魚道等に使用する魚巣ブロックにおいて、魚等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成し、減水時には水棲生物が魚巣から逃げ出せるようにする。
【構成】 魚巣ブロック1は、底盤2と、底盤2の後縁部に立設された左右方向に延びる縦壁3と、縦壁3の上端から前方に突設された支持壁4と、底盤2の前縁部に立設された左右方向に延びる受止め壁5と、底盤の左縁部に立設された前後方向に延びる塞止め壁7とを備え、受止め壁5及び塞止め7の一部に水棲生物の逃げ道6,8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川、人工運河等の水路の護岸、落差工、魚道等に使用するブロックに関し、特に、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲息に適した魚巣ブロックに係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来の魚巣ブロックを使用した護岸又は落差工としては、次のようなものが知られている。
(1) 実開平1−90821号公報記載のように、開口部付きの壁に囲まれた内部空間を備えた四角箱状の魚巣ブロックを使用し、この魚巣ブロックを水路の法面に沿って単純に積上げ、これらの魚巣ブロックの前面を一枚壁のように面一に並べてなる魚巣付き護岸。
【0003】(2) 実開昭59−69226号公報記載のように、水路の法面に沿った傾斜盤と、その後端に立設された縦壁と、縦壁の上端から前方へ水平に突設された水平壁と、それらの間の空間部とからなる魚巣ブロックを使用し、この魚巣ブロックの傾斜盤の後端に次の魚巣ブロックの傾斜盤の前端が当接するようにして水路の法面に並べ上げることにより、前記水平壁を階段状に配置してなる魚巣付き護岸。
【0004】(3) 実開平3−79325号公報記載のように、平面長方形の基盤部と、その後縁部及び前縁部に起立させた後方縦壁及び前方縦壁と、後方縦壁の上端に連設された水平壁とからなる魚巣ブロックを使用し、この魚巣ブロックを水路中に互いに間隔をおいて埋めてなる魚窪地。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の魚巣には次のような問題があった。まず、前記(1) の魚巣付き護岸においては、魚巣が魚巣ブロックの囲まれた内部に形成され、形状が自然の窪地とはかなり異なるとともに、内部の水があまり循環されないため、水棲生物の棲息に最適な環境とはいい難かった。また、この魚巣には直射日光が当たりにくいため、水温が上昇しにくく、水棲生物の棲息に好ましい水草、藻等の水中植物の生育が悪いという問題もあった。
【0006】また、前記(2) の魚巣付き護岸においては、魚巣が魚巣ブロックの傾斜盤と縦壁と水平壁との間の空間部に形成され、特に傾斜盤の上面が傾斜しているため、この上面に魚等の棲息に好ましい砂利、栗石又は玉石を敷設することができないという問題があった。また、この魚巣ブロックは、水路毎に異なる法面勾配に前記傾斜角を合わせて、その都度製造しなければならないという問題もあった。
【0007】また、前記(3) の魚窪地においては、魚巣が魚巣ブロックの基盤部と左方縦壁と右方縦壁とにより樋状に形成されるため、前記(1) と(2) の魚巣における問題は改善される。しかし、この魚巣ブロックにはそのどこにも水棲生物の逃げ道が設けられていなかったため、河川の流水量が著しく減少したときに、水棲生物が魚巣に閉じ込められてしまうという問題があった。
【0008】そこで、本発明の目的は、水路の護岸、落差工、魚道等に使用して、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成することができるとともに、水路の流水量が著しく減少したときには、水棲生物が魚巣から逃げ出すことができる新規な魚巣ブロックを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の魚巣ブロックは、底盤と、該底盤の後縁部に立設された左右方向に延びる縦壁と、該縦壁の上端から前方に突設された支持壁とを備えた構成とした(請求項1)。また、本発明の別の魚巣ブロックは、上下に間隔をおいて配された複数段の底盤と、該底盤の後縁部を連結する縦壁とを備えた構成とした(請求項2)。
【0010】前記各々の魚巣ブロックにおいて、底盤の前縁部に左右方向に延びる受止め壁を立設し、該受止め壁の一部に水棲生物の逃げ道を形成することもできる(請求項3)。また、底盤の左縁部、右縁部又は途中部に前後方向に延びる塞止め壁を立設し、該塞止め壁の一部に水棲生物の逃げ道を形成することもできる(請求項4)。これらの受止め壁又は塞止め壁は、底盤と一体形成されたものでもよいが、底盤とは別体形成されて該底盤に取付けられたものでもよい(請求項5)。
【0011】また、表面の少なくとも一部に凹凸を付けることが好ましく(請求項6)、その手段として次のものを例示できる。
■ 底盤の上面に複数の凸部又は凹部を一体形成する。
■ 底盤の上面に複数の突起物を取付ける。
■ 底盤、受止め壁若しくは塞止め壁又はこれらへの取付物を、凹凸のある透水性コンクリートで形成する(請求項7)。底盤の一部、受止め壁、塞止め壁等は、縦壁や支持壁ほど荷重がかからないので、透水性コンクリートで形成しても強度的に問題がない。底盤を透水性コンクリートで形成するときは、カーボン製、合成樹脂製、不銹鋼製等の錆びない補強筋を使用することが好ましい。
【0012】
【作用】請求項1記載の魚巣ブロックは、これを積上げて護岸、落差工等を構築したり、一列に並べて魚道を構築したりすることができる。この積上げるときは、下段の魚巣ブロックの縦壁及び支持壁の上面に、上段の魚巣ブロックの底盤を載せて支えることができる。そして、上段及び下段の魚巣ブロックの前後方向の相対位置を変えるだけで、勾配の異なる護岸、落差工等に対応する。また、請求項2記載の魚巣ブロックは、これを列設するだけで護岸、落差工等を構築することができる。
【0013】さらに、請求項1又は2記載の魚巣ブロックは、次の理由から、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣が形成される。まず、底盤の上面に自然に近い浅い窪みの魚巣が形成される。この底盤の上面には、砂利、栗石又は玉石(この順に寸法が大きくなる)のいずれかを単独で又は組み合わせて均一高さに又は凹凸状に敷設することができる。魚巣に変化を付ける意味では、砂利、栗石又は玉石を組み合わせて凹凸状に敷設することが好ましい。
【0014】また、底盤の前縁部の上方から前記魚巣に直射日光が適度に当たるので、水温が適度に上昇し、水草、藻等の水中植物の生育に良い環境を形成する。また、支持壁の下方に日陰が適度に形成されるので、水棲生物の休息等に良い環境を形成する。さらに、前記魚巣は水の循環が非常に良いので、酸素と栄養に富んだ環境を形成する。
【0015】さらに、請求項1又は2記載の魚巣ブロックは、底盤の前縁部に水棲生物が通る際の障壁が無いため、水路の流水量が著しく減少したときに、水棲生物は底盤の前縁部の上方を自由に通って魚巣から容易に逃げ出すことができる。
【0016】また、請求項3記載の魚巣ブロックによれば、受止め壁により、底盤に敷設した砂利、栗石又は玉石の前方へのこぼれ落ちが防止されるため、魚巣の環境が安定する。しかも、受止め壁の一部に水棲生物の逃げ道を形成したので、水路の流水量が著しく減少したときに、水棲生物はこの逃げ道を通って魚巣から逃げ出すことができる。
【0017】また、請求項4記載の魚巣ブロックによれば、塞止め壁により、底盤に敷設した砂利、栗石又は玉石の左右方向の移動が防止されるため、魚巣の環境が安定する。しかも、塞止め壁の一部に水棲生物の逃げ道を形成したので、水路の流水量が著しく減少したときに、水棲生物はこの逃げ道を通って魚巣から逃げ出すことができる。
【0018】また、請求項5記載の魚巣ブロックによれば、受止め壁又は塞止め壁を底盤とは別体形成したので、魚巣ブロックを成形する際に、受止め壁又は塞止め壁が無い分だけ形状が単純化し、型枠の設計と脱型とが容易になる。
【0019】また、請求項6記載の魚巣ブロックによれば、表面の少なくとも一部に凹凸を付けたので、魚巣の表面積が増え、自然の河床の状態に近付く。従って、砂利、栗石又は玉石の敷設をしなくてもあるいは敷設量を減らしても、水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣が形成される。また、水路歩行の際に、底盤の上面で滑りにくいので、滑落事故を防止することができる。さらに、請求項7記載の魚巣ブロックによれば、底盤、受止め壁若しくは塞止め壁又はこれらへの取付物を凹凸のある透水性コンクリートで形成したので、その多孔質性により酸素や栄養の供給が向上する。
【0020】
【実施例】以下、本発明を具体化した第一実施例の魚巣ブロックについて、図1〜図3を参照して説明する。この魚巣ブロック1は、補強鉄筋が埋設されたコンクリートにより図1に示すような形状に成形され、各部の厚さは200mmである。なお、以下で挙げる各部の寸法は例示であり、適宜変更することができる。
【0021】この魚巣ブロック1は四角板状に形成された水平な底盤2を備え、その左右方向の長さは1980mm、前後方向の幅は2000mmである。底盤2の後縁部には左右方向に延びる縦壁3が一体的に立設され、その底盤下面からの高さは1000mmである。縦壁3の上端には前方へ水平に突出した支持壁4が一体的に形成され、その縦壁後面からの突出幅は1000mmである。
【0022】前記底盤2の前縁部には左右方向に延びる受止め壁5が一体的に立設され、その左右方向の長さは底盤2より短い1830mm、底盤上面からの高さは300mmである。従って、この前縁部において受止め壁5の右方には前後方向の逃げ道6が形成され、その開口幅は150mmである。
【0023】前記底盤2の左縁部の中程には前後方向に延びる塞止め壁7が一体的に立設され、その前後方向の幅は底盤2より短い1100mm、底盤上面からの高さは150mmである。従って、この左縁部において塞止め壁7の両端と縦壁3及び受止め壁5との間には左右方向の逃げ道8が形成され、その開口幅は250mmである。
【0024】前記支持壁4の前面9と受止め壁5の前面10には溝が縦横に100mm間隔で形成され、格子模様の凹凸面を形成している。この凹凸面は景観と魚巣の自然感の向上に寄与する。また、底盤2と支持壁4には、魚巣ブロック1を上下段に積上げたときに、これらを連結するボルトを通すための連結孔11が形成されている。
【0025】さて、本実施例の魚巣ブロック1を使用して、図2に示すような魚巣付き護岸を構築することができる。すなわち、水路の法面15の下部上面には栗石16が敷設され、該栗石16上には捨コンクリート17が打設される。この捨コンクリート17の上面には、複数の魚巣ブロック1が縦壁3の後面を法面15に向けて載置・列設され、その底盤2の上面に砂利、栗石又は玉石(以下、栗石等18という。)のいずれかが単独で又は組み合わされて均一高さに又は凹凸状に敷設されることにより一段目が形成される。この一段目より後方へシフトした位置には、同様にして二段目が形成され、さらに三段目が形成される。
【0026】また、本実施例の魚巣ブロック1を使用して、図3に示すような魚巣付き落差工を構築することができる。すなわち、河床13の段差部には階段状のコンクリート基盤14が河川の横断方向に延びるように現場打設される。このコンクリート基盤14の各段の上面には、複数の魚巣ブロック1が縦壁3の後面を上流側に向けて載置・列設され、その底盤2の上面に栗石等18が敷設されることにより一段目、二段目及び三段目が形成される。
【0027】前記護岸又は落差工において、二段目及び三段目の魚巣ブロック1は自重により十分に安定する。但し、上段の底盤2と下段の支持壁4の連結孔11に図示しないボルトを通してこれらを連結すれば、魚巣ブロック1同志のずれをさらに確実に防止することができ、また、河床洗掘、地盤沈下等が発生したときに、魚巣ブロック1同志の連結を柔構造的に保つことができる。また、図3に示すように。魚巣ブロック1に固定され後方に突出したアンカー鉄筋19をコンクリート基盤14内に埋設し、土圧及び流水圧による魚巣ブロック1のずれを防止することが好ましい。
【0028】なお、上段の魚巣ブロック1は下段の魚巣ブロック1に対して、真上に積上げてもよいし、千鳥に積上げてもよい。いずれの場合も前記ボルトによる連結が可能になっている。また、上段及び下段の魚巣ブロック1の前後方向の相対位置を変えることにより、護岸又は落差工の勾配を容易に変更することができる。
【0029】本実施例の魚巣ブロックは以上の通り構成されているので、次のような作用及び効果を奏する。
(1) 次の理由■〜■から、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を広い面積にわたり形成することができる。
■ 魚巣ブロック1の底盤2の上面に、縦壁3と受止め壁5と塞止め壁7とで囲まれた浅く広い窪みができ、この窪みが自然に近い魚巣を形成する。そして、この魚巣は各段の魚巣ブロック1毎に形成されるため、その総面積は非常に大きなものとなる。
【0030】■ 底盤2の上面は水平なので、前記の通り栗石等18を均一高さに又は凹凸状に敷設することができる。この栗石等18は、受止め壁5により前方へのこぼれ落ちが防止され、塞止め壁7により左右方向の移動が防止されるので、底盤2の上面に保持される。このように保持された栗石等18は、水棲生物の活動、産卵等に良い環境を形成する。
【0031】■ 受止め壁5の上端と支持壁4の前端との間から、前記魚巣に直射日光が適度に当たるので、水温が適度に上昇し、水草、藻等の水中植物の生育に良い環境を形成する。
■ 支持壁4の下方に日陰が適度に形成されるので、水棲生物の休息等に良い環境が形成される。
■ 前記魚巣は水流に沿った浅い窪みなので、水の循環が非常に良く、酸素と栄養に富んだ環境を形成する。
【0032】(2) 隣り合う受止め壁5の間には前後方向の逃げ道6が形成され、塞止め壁7の両脇には左右方向の逃げ道8が形成されているので、河川の流水量が著しく減少したときに、水棲生物はその魚巣から逃げ道6,8を通って、より下段の魚巣又は水路に逃げることができる。
【0033】次に、図4に示す第二実施例の魚巣ブロック1は、■受止め壁及び塞止め壁を省略するか、又は、■受止め壁5及び塞止め壁7を底盤2とは別体形成し、該底盤2にボルト12で取付けた点において、第一実施例と相違するものである。受止め壁等を省略した場合には、上記のような減水時に水棲生物が底盤2の前縁部の上方を自由に通って容易に逃げ出すことができる。また、受止め壁5等を別体形成した場合には、魚巣ブロック1を成形する際に、底盤2に受止め壁5及び塞止め壁7が無い分だけ形状が単純化し、型枠の設計と脱型とが容易になる。
【0034】次に、図5に示す第三実施例の魚巣ブロック1は、底盤2の上面に形成した縦横に延びる複数の取付溝20に四角棒状の凸条突起物21を嵌合することにより、底盤2に凹凸を付けた点において、第一実施例と相違するものである。本実施例によれば、魚巣の表面積が増え、自然の河床の状態に近付くので、栗石等の敷設をしなくてもあるいは敷設量を減らしても、水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣が形成される。また、水路歩行の際に、底盤の上面で滑りにくいので、滑落事故を防止することができる。なお、栗石等を敷設したときは、前後方向に延びる凸条突起物21が塞止め壁として作用する。
【0035】次に、図6に示す第四実施例の魚巣ブロック1は、凹凸板25と受止め壁5とを凹凸のある透水性コンクリートで底盤2とは別体形成し、該底盤2の上にボルト12で取付けた点と、該凹凸板25に多数の四角錐台形状の凸部22と凹部26とを形成することにより、底盤2に間接的に凹凸を付けた点において、第一実施例と相違するものである。なお、底盤2の上面及び支持壁4の下面は、製造時の容易な脱型のためテーパ面になっている。本実施例は、第二実施例及び第三実施例と同様の効果を併せて奏するとともに、透水性コンクリートの多孔質性により酸素や栄養の供給が向上する。
【0036】次に、図7に示す第五実施例の魚巣ブロック1は、あまり荷重のかからない受止め壁5を凹凸のある透水性コンクリートで形成し、他の部位を通常のコンクリートで形成するとともに、該底盤2の上面に縦横に延びる複数の凸条23を一体形成することにより、受止め壁5と底盤2に凹凸を付けた点において、第一実施例と相違するものである。本実施例は、第三実施例と同様の効果を奏するとともに、透水性コンクリートの多孔質性により酸素や栄養の供給が向上する。
【0037】次に、図8に示す第六実施例の魚巣ブロック1は、受止め壁5と二本の塞止め壁7とを凹凸のある透水性コンクリートで底盤2とは別体形成し、該底盤2にボルト12で取付けた点と、受止め壁5及び塞止め壁7に水棲生物が通れるトンネル状の通り穴27を設けた点において、第一実施例と相違するものである。本実施例は、第四実施例と同様の効果を奏する。
【0038】次に、図9に示す第七実施例の魚巣ブロック1は、縦壁3の上半分と支持壁4とを、縦壁3の下半分までとは別体形成し、該縦壁3の下半分にボルト12で固定した点と、底盤2の途中部に二つの塞止め壁7を一体形成し、両塞止め壁7の中央部と支持壁4の前縁とに突設した支持突起24同志を当接させて、支持壁4の重量を補助的に支えた点において、第一実施例と相違している。本実施例は、第二実施例及び第三実施例と同様の効果を併せて奏する。
【0039】次に、図10に示す第八実施例の魚巣ブロック31について説明する。この魚巣ブロック31は三段分の魚巣ブロックを一体形成したものであって、上下に1000mmピッチで配された三段の底盤2及び最上部の天板32を備え、それらの左右方向の長さは2000mm、前後方向の幅は1000mmである。底盤2の後縁部はこれらと一体形成された背高の縦壁3によって連結されている。底盤2の前縁部には左右方向に延びる受止め壁5が一体的に立設され、その左右には前後方向の逃げ道6が形成されている。
【0040】また、この魚巣ブロック1の左右方向の中央部には底盤2同志(又は、底盤2と天板32)を連結して支持する支持壁33が一体的に立設され、その真中には水棲生物の通り穴34が貫設されている。この支持壁33は、省略してもよいし、同図に鎖線で示すように魚巣ブロック31の右端又は左端の一方又は両方に設けてもよい。下から二段目及び三段目の底盤2の左側端面には水棲生物が各段間を行き来できる通り溝36が設けられ、該底盤2の右側端面には通り溝36に浅く嵌合する嵌合突起37が設けられている。なお、底盤2の段数は適宜変更することができる。
【0041】さて、本実施例の魚巣ブロック31を使用して、図11に示すような魚巣付き護岸を構築することができる。すなわち、水路の法面15の下部上面にはコンクリート基盤35が打設され、該コンクリート基盤35の上面に魚巣ブロック31が傾斜した状態で載置・列設される。各々の底盤2の上面には栗石等18が敷設されるが、この構築法では底盤2が傾斜して栗石等18が後部に偏るため、第三乃至第六実施例のように底盤2の上面を凹凸面にして、栗石等18のみに頼らないことが好ましい。また、受止め壁5を省略しても、栗石等18の前方へのこぼれ落ちが起こらない。本実施例は、各段を前後方向及び左右方向にずらせないことを除いて、第一実施例と略同様の作用及び効果を奏する。
【0042】次に、図12に示す第九実施例の魚巣ブロック41は、縦壁3を傾斜させた点と、受止め壁5を底盤2とは別体形成し、該底盤2にボルト12で取付けた点と、支持壁33を省いた点と、底盤2の上面に透水性コンクリートで形成した凹凸部材38をボルト12で取付けた点において、第八実施例と相違するものである。本実施例によれば、縦壁3がそのままで法面の傾斜に対応するので、底盤2が略水平に保たれ、栗石等を敷設しやすいという効果がある。
【0043】なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0044】
【発明の効果】本発明に係る請求項1乃至4記載の魚巣ブロックは、上記の通り構成されているので、水路の護岸、落差工、魚道等に使用して、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成することができるとともに、水路の流水量が著しく減少したときには、水棲生物が魚巣から逃げ出すことができるという優れた効果を奏する。
【0045】また、請求項5記載の魚巣ブロックによれば、魚巣ブロックを成形する際に、型枠の設計と脱型とが容易になる。
【0046】また、請求項6記載の魚巣ブロックによれば、砂利、栗石又は玉石の敷設をしなくてもあるいは敷設量を減らしても、水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣が形成されるとともに、水路歩行の際の滑落事故を防止することができる。さらに、請求項7記載の魚巣ブロックによれば、透水性コンクリートの多孔質性により酸素や栄養の供給が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第一実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図2】同魚巣ブロックにより構築した魚巣付き護岸の斜視図である。
【図3】同魚巣ブロックにより構築した魚巣付き落差工の断面図である。
【図4】第二実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図5】第三実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図6】第四実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図7】第五実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図8】第六実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図9】第七実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図10】第八実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図11】同魚巣ブロックにより構築した魚巣付き護岸の断面図である。
【図12】第九実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【符号の説明】
1 魚巣ブロック 2 底盤
3 縦壁 4 支持壁
5 受止め壁 6 逃げ道
7 塞止め壁 8 逃げ道
20 取付溝 21 凸条突起物
22 凸部 23 凸条
24 支持突起 25 凹凸板
26 凹部 31 魚巣ブロック
38 凹凸部材 41 魚巣ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 底盤と、該底盤の後縁部に立設された縦壁と、該縦壁の上端から前方に突設された支持壁とを備えた魚巣ブロック。
【請求項2】 上下に間隔をおいて配された複数段の底盤と、該底盤の後縁部を連結する縦壁とを備えた魚巣ブロック。
【請求項3】 底盤の前縁部に左右方向に延びる受止め壁が立設され、該受止め壁の一部に水棲生物の逃げ道が形成された請求項1又は2記載の魚巣ブロック。
【請求項4】 底盤の左縁部、右縁部又は途中部に前後方向に延びる塞止め壁が立設され、該塞止め壁の一部に水棲生物の逃げ道が形成された請求項1又は2記載の魚巣ブロック。
【請求項5】 受止め壁又は塞止め壁は、底盤とは別体形成され、該底盤に取付けられたものである請求項3又は4記載の魚巣ブロック。
【請求項6】 表面の少なくとも一部に凹凸が付けられた請求項1又は2記載の魚巣ブロック。
【請求項7】 底盤、受止め壁若しくは塞止め壁又はこれらへの取付物が凹凸のある透水性コンクリートで形成された請求項6記載の魚巣ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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