説明

魚肉練製品及びその魚肉練製品の製造方法

【課題】従来の魚肉練製品に比べて弾力が高く、しかも食感に優れた魚肉練製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】魚肉と、粒度が250μm以下の玄米粉と、食塩と、澱粉と、を含有する魚肉すり身ペーストを加熱してなる魚肉練製品である。玄米粉の魚肉原料に対する添加量は0.5〜9重量%であり、澱粉の魚肉原料に対する添加量は1〜10重量%である。魚肉練製品の製造方法は、魚肉すり身を食塩で塩摺り後、粒度が250μm以下の玄米粉、澱粉および水を加えてらい潰し、魚肉すり身ペーストを得る工程、魚肉すり身ペーストを放置する工程、魚肉すり身ペーストを成形し、加熱する工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄米粉を魚肉原料に添加混合した魚肉練製品及びその製造方法に関し、詳しくは弾力の高まった魚肉練製品が得られる魚肉練製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微粒に調整された米粉を利用した魚肉練製品が提案されている。この魚肉練製品は、米粉の有する粘弾性等の性質を利用し食感に特徴を持たせたものである。
【0003】
ところで、魚肉を原料とした練製品の品質は、しなやかな弾力が品質尺度の一つである。この弾力は足、ゲル形成度などという表し方で表現される。この弾力は、坐りと呼ばれる過程によって得られ、この時の物性が最終製品の食感を左右する重要な決め手となる。通常、魚肉を食塩と共にらい潰した後、5〜15℃で18〜24時間、または30〜40℃で30〜90分間放置することにより、所定の弾力が得られる。
【0004】
しかし、従来の米粉を利用した魚肉練製品は未だ弾力が不十分であった。
【0005】
そこで、魚肉練製品の弾力を高める方法として、特開平7−151号公報(特許文献1)には豚などの血漿蛋白を添加する方法が記載され、特開平9−266770号公報(特許文献2)には卵白を添加する方法が記載されている。
【0006】
しかし、これらの血漿蛋白や卵白は、魚肉練製品の坐りを促進させたり、戻りを抑制する効果はあるが、血漿蛋白を使用した魚肉練製品はBSEの問題を生じるおそれがあり、卵白を使用した魚肉練製品は食物アレルギーを発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−151号公報
【特許文献2】特開平9−266770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の欠点を解決するためになされたもので、従来の魚肉練製品に比べて弾力が高く、しかも食感に優れた魚肉練製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、従来の血漿蛋白や卵白を用いた場合のようにBSEの問題の心配がなく、また卵白を用いた場合のように食物アレルギーの原因物質となることもなく、食感を高めた魚肉練製品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明らは、魚肉練製品への米粉の利用を検討する中で、250μm以下の粒度に調整された玄米粉を澱粉原料の一部として利用し、5〜15℃で18〜24時間、または30〜40℃で30〜90分間放置することにより、弾力が高まることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する:
(項目1) 魚肉と、粒度が250μm以下の玄米粉と、食塩と、澱粉と、を含有する魚肉すり身ペーストを加熱してなる魚肉練製品であって、
該玄米粉の魚肉原料に対する添加量が0.5〜9重量%であり、
該澱粉の魚肉原料に対する添加量が1〜10重量%である魚肉練製品。
(項目2) 魚肉すり身、食塩、粒度が250μm以下の玄米粉、澱粉および水を加えてらい潰し、魚肉すり身ペーストを得る工程、
該魚肉すり身ペーストを放置する工程、
該魚肉すり身ペーストを成形し、加熱する工程、
を包含し、
該玄米粉の魚肉原料に対する添加量が0.5〜9重量%であり、該澱粉の魚肉原料に対する添加量が1〜10重量%である魚肉練製品の製造方法。
(項目3) 前記粒度が250μm以下の玄米粉が、魚肉に対して2〜8重量%添加される項目2に記載の魚肉練製品の製造方法。
(項目4) 前記玄米粉の粒度が、125μm以下である項目2又は3に記載の魚肉練製品の製造方法。
(項目5) 前記魚肉すり身ペーストを放置する工程が、該魚肉すり身ペーストを、5〜15℃で18〜24時間、又は30〜40℃で30〜90分間放置することを包含する項目2〜4のいずれかに記載の魚肉練製品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、魚肉と、粒度が250μm以下の玄米粉と、食塩と、澱粉と、を含有する魚肉すり身ペーストを加熱してなる魚肉練製品であって、玄米粉の魚肉原料に対する添加量が0.5〜9重量%であり、澱粉の魚肉原料に対する添加量が1〜10重量%であるので、従来の魚肉練製品に比べて弾力が高く、しかも食感に優れた魚肉練製品を得ることができる。さらに、この魚肉練製品は、血漿蛋白、卵白、馬鈴薯澱粉を含有することがないので、従来の血漿蛋白や卵白を用いた場合のようなBSEの問題の心配がなく、卵白を用いた場合のような食物アレルギーの原因物質となることもない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の魚肉練製品の製造方法は、魚肉すり身を食塩で塩摺り後、粒度が250μm以下の玄米粉、澱粉、および水を加えてらい潰し、魚肉すり身ペーストを得る工程を包含する。
【0014】
本発明で使用する魚肉すり身は、水産練製品の原料に広く使用されている魚肉すり身が適している。
【0015】
例えば、魚肉すり身は市販のすり身を用いることができ、グチ、スケソウダラ、エソ、アジ、サバ、イワシ、ひらめ、イトヨリ、キンメダイ、ホッケ、タラ、メルルーサ等を常法により製造されたものを1種又は2種以上用いることができる。好ましくは、スケソウダラ由来のすり身を50%以上用いることが好ましい。なお、魚肉すり身とは、魚体より肉質部分を取り分け、その肉質部分を粗砕して水中に分散させて水溶性蛋白質を取り除いた荒ずりすり身、これに食塩を加えて更に擂り潰した塩ずりすり身、これらを冷凍した冷凍すり身等を含む。
【0016】
本発明で使用される玄米粉の粒度は250μm以下であり、好ましい玄米粉の粒度は125μm以下であり、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0017】
なお、玄米粉は通常の方法によって調製された乾式製粉や湿式製粉の玄米粉を使用することができる。
【0018】
なお、玄米粉の粒度が250μmを超えると、製造される魚肉練製品の弾力は弱くなる
また、発芽玄米粉を使用した場合でも、同様の方法で調製された発芽玄米粉であれば同じような効果が得られる。
【0019】
玄米粉の魚肉原料に対する添加量は、0.5〜9重量%であり、好ましくは2〜8重量%であり、さらに好ましい添加量は2〜6重量%である。
【0020】
玄米粉の添加量が魚肉原料に対して0.5〜9%の範囲より少なくても、又は多くても、製造される魚肉練製品の弾力は弱くなり、本発明の目的とする食感は得られない。
【0021】
本発明で使用される澱粉としては、例えば、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉、加工澱粉などの、玄米以外の澱粉を使用することができる。加工澱粉としては、澱粉構成糖のグルコースのフリーな水酸基をエステル化したエステル化澱粉、水酸基の水素原子をアルキル基と置換したエーテル化澱粉、澱粉の水酸基同士が結合した架橋澱粉及び澱粉糖の還元末端を酸化剤で酸化した酸化澱粉等がある。好ましいものは馬鈴薯澱粉を原料として調製された加工澱粉ある。
【0022】
澱粉の使用量は、魚肉原料に対して1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは2〜8重量%、最も好ましくは2〜6重量%である。澱粉の使用量が1%未満の場合は冷凍変性を起こし易く、また10重量%を超える場合には食感が悪くなる。
【0023】
魚肉すり身と粒度が250μm以下の玄米粉、澱粉および水を混合して魚肉ペーストを得る工程では、常法に従ってこれらを撹拌混合し均一な混合物とすればよい。
【0024】
次に、得られた魚肉すり身ペーストを所定条件で放置する。魚肉すり身ペーストを放置する条件は、限定するものではないが、魚肉すり身ペーストを5〜15℃で18〜24時間、または30〜40℃で30〜90分間放置すればよい。
【0025】
その後、魚肉すり身ペーストを成形し、加熱する。例えば、魚肉すり身ペーストを耐熱性のあるプラスチックや金属等の加熱容器に入れて、90〜100℃、20〜40分加熱蒸煮して、十分にゲル化を促進させることにより、目的とする最終製品を得ることができる。
【0026】
このようにして、魚肉と、粒度が250μm以下の玄米粉と、食塩と、澱粉と、を含有する魚肉すり身ペーストを成形してなる魚肉練製品が得られる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は本実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す割合で、魚肉すり身2kgに食塩60gを添加混合して塩摺りを行った後、馬鈴薯澱粉から得られた加工澱粉200g、冷水1400gをさらに加え、均一なペースト状になるまでらい潰した。
【0028】
ペースト状になった魚肉すり身ペースト約300gを折径48mmのポリ塩化ビニリデン製チューブに、長さ350mmとなるように充填した。次に、これを15℃で24時間静置後、90℃で約20分間蒸気加熱して魚肉練製品を得た。その後、流水にて冷却後、4℃の冷蔵庫内で5時間程度保存した。
【0029】
次に、定法に従って、レオメータ(不動工業(株)製、RT−2002D・D)を用いて直径5mmの球形プランジャー(進入速度60mm/分)で魚肉練製品のゼリー強度を測定した。
【0030】
本試料を対照とし、さらに125μmに粒度を調整した玄米粉と加工澱粉の添加割合を異にする実験区7区を設け、対象区同様、それらの魚肉練製品のゼリー強度を測定した。なお、玄米粉は加工澱粉と同じタイミングで加えた。
【0031】
その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

表1の結果から、玄米粉を魚肉すり身に対して0.5重量%使用した区分1から玄米粉を魚肉すり身に対して9重量%使用した区分6が、魚肉練製品の弾力が高められたことがわかる。
(実施例2)
魚肉すり身ペーストの放置条件として、15℃で24時間静置に代えて、40℃で60分間静置したこと以外は、実施例1と同様の条件および方法にて魚肉練製品を得た。その後、流水にて冷却後、4℃の冷蔵庫内で5時間程度保存した。
【0033】
次に、定法に従って、レオメータ(不動工業株製、RT−2002D・D)を用いて直径5mmの球形プランジャー(進入速度60mm/分)でゼリー強度を測定した。
【0034】
その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

表2の結果から、玄米粉を魚肉すり身に対して0.5重量%使用した区分1から玄米粉を魚肉すり身に対して9重量%使用した区分6が、表1の結果と同様に、魚肉練り製品の弾力が高められたことがわかる。
(実施例3)
表3に示すように、粒度を異にする玄米粉を使用したこと以外は、実施例1の実験区2と同様の条件および方法で実施し、魚肉練製品を得た。
【0036】
対象区同様、実験区4区の魚肉練製品のゼリー強度を測定した。
【0037】
その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

表3の結果から、玄米粉の粒度が250μmより大きくなると(区分3および区分4)、魚肉練り製品の弾力が低下することがわかる。
(実施例4)
粒度を異にする玄米粉を使用したこと以外は、実施例2の実験区2と同様の条件および方法で実施し、魚肉練製品を得た。
【0039】
対象区同様、実験区4区の魚肉練製品のゼリー強度を測定した。
【0040】
その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

表4の結果から、表3の結果と同様に、玄米粉の粒度が250μmより大きくなると(区分3および区分4)、魚肉練り製品の弾力が低下することがわかる。
(実施例5)
発芽玄米粉を使用したこと以外は、実施例1の実験区2、及び実施例2の実験区2と同様の条件及び方法で実施し、魚肉練製品を得、ゼリー強度を測定した。
【0042】
その結果を表5および表6に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

表5、表6の結果から、発芽玄米粉を使用した場合にも玄米粉と同様に弾力が高められたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、従来の魚肉練製品に比べて弾力が高く、しかも食感に優れた魚肉練製品として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉と、粒度が250μm以下の玄米粉と、食塩と、澱粉と、を含有する魚肉すり身ペーストを加熱してなる魚肉練製品であって、
該玄米粉の魚肉原料に対する添加量が0.5〜9重量%であり、
該澱粉の魚肉原料に対する添加量が1〜10重量%である魚肉練製品。
【請求項2】
魚肉すり身、食塩、粒度が250μm以下の玄米粉、澱粉および水を加えてらい潰し、魚肉すり身ペーストを得る工程、
該魚肉すり身ペーストを放置する工程、
該魚肉すり身ペーストを成形し、加熱する工程、
を包含し、
該玄米粉の魚肉原料に対する添加量が0.5〜9重量%であり、該澱粉の魚肉原料に対する添加量が1〜10重量%である魚肉練製品の製造方法。
【請求項3】
前記玄米粉が、魚肉に対して2〜8重量%添加される請求項2に記載の魚肉練製品の製造方法。
【請求項4】
前記玄米粉の粒度が、125μm以下である請求項2又は3に記載の魚肉練製品の製造方法。
【請求項5】
前記魚肉すり身ペーストを放置する工程が、該魚肉すり身ペーストを、5〜15℃で18〜24時間、又は30〜40℃で30〜90分間放置することを包含する請求項2〜4のいずれかに記載の魚肉練製品の製造方法。

【公開番号】特開2013−102704(P2013−102704A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246792(P2011−246792)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【Fターム(参考)】