説明

魚釣用リール

【課題】エラストマー材料で形成した外装部材の表面に異物が付き難く、この外装部材を介して長期間にわたって衝撃を吸収することのできる魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】釣り竿に取付けられるリール本体(12)と釣り糸を巻回するスプール(18)とを有し、リール本体(12)に設けられたハンドル(14)を回転してスプール(18)に釣り糸を巻き取る魚釣用リール(10)であって、表面に塗装処理を施したエラストマー材料製のリヤキャップ(32)を備える魚釣用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールは、リール本体を介して釣り竿に取付けられ、水中の魚とやり取りの際に釣り竿と共に種々の魚釣り操作を行うため、対象とする魚種や釣法に応じた種々の形式のものが開発されている。
【0003】
例えばルアーフィッシングに用いられる両軸リールには、スプールを挟んで巻取りハンドルに対する反対側の側板の外側面を、なだらかな凸曲面に形成し、この中央付近に、ゴム、合成樹脂、合成皮革等からなる緩衝材を配置することにより、掌で握ったときの感触を良好にし、内部機構を保護するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、軟質ゴム、軟質合成樹脂等の軟質部材を、左右の側板間に配置した上部支柱の上面上で、リール本体を保持した手の親指が当たる位置に形成した魚釣用両軸受リールもある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−26866号公報
【特許文献2】実開昭63−124373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような緩衝材あるいは軟質部材を形成するゴムや合成樹脂等の柔軟な材料は、触れたときに好適な感触を与え、操作性を向上するものであるが、その材料の特性から表面が滑り難く、異物が付着すると、纏わりついて離れ難いという性質もある。このため、緩衝材等の表面に汚れが付着し易く、付着した異物が内部に浸み込み易い。この結果、緩衝材あるいは軟質部材の劣化が他の硬質部材よりも進行しやすく、長期の使用に耐えることは困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、エラストマー材料で形成した外装部材の表面に異物が付き難く、この外装部材を介して長期間にわたって衝撃を吸収することのできる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によると、釣り竿に取付けられるリール本体と釣り糸を巻回するスプールとを有し、リール本体に設けられたハンドルを回転してスプールに釣り糸を巻き取る魚釣用リールであって、表面に塗装処理を施したエラストマー材料製の外装部材を備える魚釣用リールが提供される。
【0009】
前記外装部材は、塗装処理された表面が、巻取時に移動する釣り糸の方向に向けて配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記外装部材は、実釣時に指で操作するハンドルノブと、摘み部と、レバー部との少なくとも1つに配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の魚釣用リールによると、エラストマー材料製の外装部材が表面を塗装処理されることにより、この表面に異物が付き難く、魚釣用リールの初期の機能および外観を長期間にわたって維持することができる。
【0012】
外装部材の塗装処理された表面が、巻取時に移動する釣り糸の方向に向けて配置される場合には、釣り糸を巻き取る際に、この釣り糸から水滴や異物が飛び散っても、外装部材に表面に付着し難く、付着した異物も容易に除去することができる。
【0013】
また、外装部材を、実釣時に指で操作するハンドルノブと、摘み部と、レバー部との少なくとも1つに配置する場合には、汚れ易く劣化し易い部位も、長期間にわたって汚れ難く、好適なフィット感を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい実施形態による魚釣用リールの説明図。
【図2】図1のII−II線方向に沿う部分断面図。
【図3】他の実施形態による魚釣用リールの説明図。
【図4】図3のIV−IV線方向から見た説明図。
【図5】図3のV−V線方向から見た説明図。
【図6】外装部材の塗膜とエラストマー材料とを示す概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2は、本発明の実施形態による魚釣用リールを示す。
【0016】
図1にその全体を示すように、本実施形態の魚釣用リールはスピニングリール10として形成してあり、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属や、ABS樹脂、PA樹脂等の高強度樹脂や、CFRP、GFRP等の繊維強化樹脂で剛性構造に形成したリールボディ12aに、一側に開口する内部空間N(図2)を形成し、リールボディ12aに固定される着脱可能の蓋体12bでその一側の開口を閉じたリール本体12を有し、このリール本体12から上方に延出する脚部12cの端部に形成された竿取付部12dを介して釣竿に取り付けられる。
【0017】
このリール本体12の内部空間N内には、図示しないハンドル軸、巻取駆動機構、およびスプール往復動機構が設けられており、ハンドル14に作用する駆動力が、ハンドル軸を介して巻取駆動機構およびスプール往復動機構に伝達される。リール本体12の側部に配置されたハンドル14を回転駆動することにより、巻取駆動機構はロータ16を回転駆動し、スプール往復動機構は巻取駆動機構と同期してスプール18を前後方向に往復動する。
【0018】
ロータ16はリール本体12の前部を収容する筒部16aと、この筒部の基端側から前方に延びる一対のアーム部16bとを有し、筒部16aがリール本体12内の巻取駆動機構に連結され、アーム部16bと共にリール本体12に対して回転する。また、スプール18は、釣り糸が巻回される巻回胴部18aと、ロータ16の筒部16aを覆うスカート部18bと前鍔部18cとを有し、その内部に配置した連結部を介してスプール往復動機構に連結される。
【0019】
ロータ16のアーム部16bのそれぞれの先端には、ベール支持部材20が回動可能に装着されており、ロータ16が回転駆動されたときに、このベール支持部材20に設けられたベール22を介してスプール18の巻回胴部18aに釣り糸が案内される。
【0020】
このベール22は、ラインスライダー24およびラインローラ26と共に、一方のアーム部16b内に配置した振分け機構により、図1に示す巻取り位置と、図示しない釣糸放出位置とに振分け配置することができる。また、他方のアーム部16内には、釣糸放出位置に配置されている状態でハンドル14を回転したときに、ベール支持部材20を図1に示す巻取り位置に復帰させる自動復帰機構が設けられている。これにより、ハンドル14を回転すると、ロータ16が回転し、釣り糸はベール22に沿って摺動し、ラインスライダー24を介してラインローラ26に案内され、このラインローラ26から、前後に往復動するスプール18の巻回胴部18a上にほぼ均等に巻回される。
【0021】
更に、ロータ16の筒部16a内には、このロータ16の回転状態を、逆転防止状態と正逆転可能状態とに切換える公知の逆転防止機構(図示しない)を設けてあり、リール本体12の後端側に配置した切換レバー28により、例えばロータ16が釣糸巻取方向(正転方向)および釣糸繰出方向(逆転方向)に自由に回転できる正逆転可能状態と、正転方向にのみ回転可能な逆転防止状態とに切換えることができる。
【0022】
図2に示すように、リール本体12の後壁部30には、例えば、内部空間N内に収容する種々の部材の組込みあるいは保守を容易とする開口部30aが形成され、更に、この後壁部30から種々の構造部30bが後方に突出する複雑な構造を有する。
【0023】
本実施形態では、このような複雑な外面形状を有するリール本体12の後部に、外装部材としてリヤキャップ32を装着し、開口部を閉じると共に突起部を外側から覆い、全体的に引掛かり部のない滑らかな外面に形成してある。
【0024】
このリヤキャップ32を装着するため、後壁部30の後端面34から側縁部に沿って突部36を後方に突出させ、この突部36の側部に、リール本体12の外方に開口する溝38を形成してある。後壁部30の後端面34との間にこの溝38を区画する棚部40は、少なくともリヤキャップ32の肉厚分だけリール本体12の外面13よりも内方に位置し、リヤキャップ32を装着したときに、リヤキャップ32の外面がリール本体12の外面と面一状に配置されることが好ましい。同様に、溝部38の深さおよび幅寸法も、後述するリヤキャップ32の係止縁部42に密に嵌合する大きさに形成することが好ましい。
【0025】
本実施形態のスピニングリール10は、釣り竿に取付けたときに、リール本体12の後部が下方に配置されるために、釣り竿と共に落下する場合には、このリヤキャップ32が配置される後部が最も強く地面に接触し、大きな衝撃を受けることになる。このため、リヤキャップ32は、エラストマー材料で形成してあり、大きな衝撃を受けた場合でも、破損するのを防止すると共に、リール本体12およびこれに設けられた種々の部材を保護することができる。
【0026】
このリヤキャップ32は、エラストマー材料で形成した本体44を備え、この本体44の外側表面に、エラストマー材の弾性を維持しつつ本体層を保護する塗膜層46を形成してある。
【0027】
なお、外装部材の弾性を維持しつつ表面を保護する塗膜層46は、エラストマー材料で所定形状に成形した本体の表面を、塗装処理することにより形成することができる。例えば、1〜50μmの厚さの下塗り層を形成し、この上に、金属、金属酸化物、金属化合物等の適宜の顔料を含有させた装飾層と、装飾層を保護する上塗り層とを積層することで形成することができる。この塗膜層46の厚さは、海水や餌等の釣り特有の環境からの保護のために、10μm〜200μmの範囲で、30μm〜80μm程度に形成することが好ましい。このような塗膜層の構成は、リヤキャップ32以外の後述する種々の外装部材に形成する場合でも同様である。
【0028】
このような塗膜層は、エラストマー材料の劣化を防止しつつ弾性機能を維持できるものであれば、塗装、蒸着、印刷等の適宜の方法により、各種の顔料を配合した1〜4層の塗料層を有する塗膜層で形成してもよい。例えば、スプレー塗装や蒸着により形成したもの、また、これらを組合せたもの、更に、これらの成形膜間に、印刷やレーザーマーキングによる装飾を付加してもよく、光沢を有する光輝性の外観や艶消し状の外観にすることも可能である。
【0029】
例えば光輝性の外観を有する塗膜層を形成する場合は、下塗り層をウレタンアクリル系塗料、アクリルシリコン系塗料等で1〜50μmの厚さに形成する。装飾層である中間層は、金属の真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、転写箔、アルミ顔料等の光輝性顔料入りの塗料で形成することができる。そして、上塗り層をウレタンアクリル系塗料、アクリルシリコン系塗料、UV硬化性塗料等で形成することができる。
【0030】
また、撥水性の塗膜層は、上塗り層にフッ素系塗料を用いることで形成することができ、フッ素系塗料として、例えばフッ素粒子を含有するフッ素系塗料、フッ素粒子を含有したシリコン系塗料が含まれる。更に、必要な場合には、蓄光材料を混入させて、蓄光性を付与することもできる。
【0031】
このような塗膜層は、例えば特開2006−1159に記載の方法で形成することもできる。
【0032】
また、エラストマー材料として、耐候性、耐水性、耐熱性に優れたスチレン系、耐衝撃性、耐磨耗性に優れたウレタン系、耐候性、耐油性、耐薬品性に優れた塩ビ系、透明性、耐薬品性に優れたフッ素系、耐候性、耐水性に優れたオレフィン系、耐衝撃性、耐熱性に優れたアミド系、耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性に優れたエステル系のものを、その用途に応じて用いることができる。いずれの場合も、好適な感触を維持して操作性を向上させるために、ゴム硬度が30〜80の範囲であることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、リヤキャップ32が上述のように大きな衝撃を受けるリール本体12の外装部材を形成しており、この本体44を、耐衝撃性の高いウレタン系又はアミド系のエラストマー材料で形成することが好ましい。硬度は、内部の機構への影響を考慮する為、過度に変形しない40〜80の範囲であることが好ましい。また、このリヤキャップ32が外部から目立つ部位に配置されることから、装飾層中にアルミ顔料等の各種光輝顔料を配合した塗膜層46で形成することが好ましい。
【0034】
この塗膜層46を本体44の外側表面に配置することにより、外部からの視認が容易で操作性が向上することに加え、リヤキャップ32の本体44を形成するエラストマー材料自体を外部環境から保護することができる。特に、塗膜層46が本体層44の生地を覆うため、釣り糸等が接触した場合でも、その表面に纏わり難く、釣り針も刺さり難くなり、エラストマー材料に穴が発生しにくく、耐久性も向上する。更に、外力等の負荷の作用で変形するため、仕掛けや異物の絡まりが減少し、快適な魚釣り操作を行うことができる。
【0035】
更に、このリヤキャップ32の表面に異物が付き難くなることに加え、海水等の水分あるいは魚や餌等の油分が付着した場合でも、これらの異物が本体44内に浸み込むことが防止される。また、長期間にわたって紫外線等に晒されても、劣化が進行し難くなる。このため、長期にわたって本体44のエラストマー材料の特性を維持することができ、魚釣用リールに作用する外力を緩衝し、耐久性を向上することができる。
【0036】
特に、ゴムに代表されるように、柔軟な材料は、光沢感がなく、特に薄暗い環境下での視認性が低下し、釣り場での準備や片付けを手際よく行うことが困難であり、誤操作、誤落下による破損等を引き起こしやすいが、塗膜層46が光輝性の顔料を含むことにより視認性が向上され、明方や夕方の薄暗い環境下でも、スピニングリール10の位置を容易に視認することができ、その取り扱いを確実かつ容易に行うことができる。
【0037】
このようなリヤキャップ32は、リール本体12の底部、すなわち脚部12cに対して反対側で、ハンドル14が取付けられる部位の下方から後方に延び、更に、後壁部30に沿って脚部12c側に向けて、ハンドル14が取付けられる部位の後方に達する部位まで延設される端壁部32aと、この端壁部32aの両縁部からリール本体12の側方に延びる側壁部32bとを有する。この側壁部32bの先端側から内方に向けて係止縁部42が突出しており、これらの係止縁部42と、後壁部30の突部36に形成した溝部38とが密に嵌合することにより、リール本体12との接合部が密閉される。後壁部30に形成した開口30aからリール本体12の内部空間N内に異物が侵入するのが防止される。
【0038】
係止縁部42は、外面側にのみ塗膜層46が形成され、この塗膜層46を介して後壁部30の後端面34に接合する。これにより、側壁部32bと係止縁部42との間の角部が保護される。また、係止縁部42の内面および溝部38の底面に接触する端面には塗膜層46が形成されていないため、エラストマー材料がこれらの面で露出し、これらのエラストマー材料を介して突部36および棚部40に接合されることにより、この接合部における防水性能が向上される。更に、棚部40が、後端面34との間で係止縁部42を保持すると共に側壁部32bの外面とリール本体12の外面13との面一状態を保持することにより、リヤキャップ32に大きな外力が作用しても、外れることなくリール本体12に保持される。必要な場合には、図示しない小ネジ等でリヤキャップ32をリール本体12に固定することも可能である。
【0039】
このリヤキャップ32は、後壁部30の外方に突出する構造部30bに接触させることも可能であるが、図2に示すように間隙Sを設けることにより、大きな外力が作用したときにリヤキャップ32自体が間隙S内に変形してその衝撃を緩衝することが可能となる。
【0040】
更に、本実施形態のスピニングリール10は、ロータ16のアーム部16aの外側に配置するアームカバー48を、表面に塗装処理を施したエラストマー材料製の外装部材として形成してある。
【0041】
このアームカバー48は、リヤキャップ32の係止縁部42および後壁部の溝部38と同様な係止機構を形成する係止部を介してアーム部16aに係止すること可能であり、図示の実施形態では、更に、ネジ49によりアーム部16aの側部に確実に固定してある。
【0042】
このアームカバー48は、双方のアーム部16aに設けることにより、側方で回転するアーム部16aを保護することができる。一方のアーム部16aにのみ設ける場合には、糸を巻き取る際、糸に付着した水分、汚れ物は、ラインローラ26の部分で振り落とされるので、その近傍であるラインローラ26側のアーム部16aに設けることが好ましい。このアームカバー48は、組込む際に他の部材との間に段差が形成される場合には、成形性や組込後の変形を考慮して、硬度を60〜85の範囲とすることが好ましい。
【0043】
また、エラストマー材料は、アーム部16aに取付けられる他の部材の外側に一体に形成したものでもよい。例えばプレス加工された金属製部材に一体に設ける場合は、この金属製部材の外側に溶着してもよい。
【0044】
いずれの場合も、アーム部16aは、水分や、水中に浮遊する異物等が釣り糸を介して付着し易い部位であるため、本体を耐水性の高いスチレン系やオレフィン系のエラストマー材料で形成し、撥水性の高い塗膜層を設けることが望ましい。これにより、釣り糸から水滴や異物が飛び散っても、外装部材であるアームカバー48の表面に異物が付着し難く、付着した異物も容易に除去することができ、その手入れが容易となる。
【0045】
更に、釣り人が指で頻繁に操作するハンドル14のハンドルノブ14aを覆うグリップ部材15、および、切換レバー28の外周部を覆うレバーカバー29が、それぞれエラストマー材料で形成した本体を上述のような塗膜層で覆った外装部材として形成してある。
【0046】
ハンドル14のハンドルノブ14aに設けるグリップ部材15は、耐衝撃性、耐磨耗性に優れたウレタン系のエラストマー材料で本体を形成するのが特に好ましく、耐水性の高いスチレン系、オレフィン系のエラストマー材料で形成してもよい。
【0047】
また、切換レバー28を覆うレバーカバー29は、切換レバー28を左右に切換える際に比較的大きな力が作用するため、硬度が70〜90程度のエラストマー材料で本体を形成することが好ましい。このレバーカバー29の本体内に、切換レバー28の軸部(図示しない)と一体のプラスチック製コア部材を配置する場合には、硬度を40〜70程度のエラストマー材料で形成することができ、この場合には、釣り人に、より柔軟でフィット感のある感触を与えることができる。特に、操作性を向上するために、視認性を高くすることが好ましく、光輝性の塗膜層を本体の外周に形成することが好ましい。
【0048】
図3から図5は、魚釣用リールを両軸受リール10Aで形成した実施形態を示す。
【0049】
この両軸受リール10Aは、両軸受型手巻きリールとして形成してある。このリール本体52は、支柱52aで左右一対の側枠54a,54bを一体化したフレームを有し、このフレームの左右一対の側枠54a,54bのそれぞれの外側に、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の結合手段により、円形状あるいは円筒状形状の外形を有する外側板56a,56bを取付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、前後に延びる竿取付部52bを介して釣竿に固定される。
【0050】
釣糸が巻回されるスプール58は、左右の側枠54a,54b間に図示しないスプール軸を介して回転自在に支持される。図示の実施形態ではハンドル60側である右外側板56bは、スプール58を回転駆動させる巻取駆動機構(図示しない)を支え、この右外側板56b内に右側枠54bで区画された内部空間内に、通常の両軸受リールと同様に、ハンドル60の駆動力をスプール58に伝達する駆動力伝達機構、ドラグ機構、クラッチ機構およびレベルワインド機構等の各種機構が収容される。
【0051】
ハンドル60に作用する回転駆動力は、右外側板56bから突出する突出部62内に配置された図示しないハンドル軸を介して、巻取駆動機構に伝達される。このハンドル60と突出部62との間に配置されたスタードラグ64を回動することにより、ドラグ機構によるドラグ力を調整することができる。また、右外側板56bに配置されたセットスクリュー66により、スプール軸の軸端に作用する押圧力を調整し、スプール58が回転する際の摩擦力を調整することができる。
【0052】
左右の側枠54a,54b間のスプール58よりも後方側の部位には、リール本体52内のクラッチ機構をON/OFFするクラッチレバー68を配置してあり、このクラッチレバー68を操作することにより、スプール58に対して回転駆動力を伝達し又は遮断することができる。
【0053】
更に、リール本体52には、スプール58の前方側かつ上方側に、例えばスプール58の回転数に基づいて計測した糸長等の表示器70および操作ボタン72を有する制御ケース74を配置してある。
【0054】
本実施形態の制御ケース74は、リール本体52の外側板56a,56bから側方に突出することなく、前端側で、竿取付部52bよりも僅かに突出する。この制御ケース74は、表示部70および操作ボタン72を配置した上面76を平坦状に形成され、表示部70側枠54a,54b間の左右方向の中心位置よりも、ハンドル60の反対側に偏倚して配置され、操作ボタン72は、左右方向の中心位置よりもハンドル60側に偏倚し、押圧作動操作を容易にできる程度に、上面76から僅かに突出させて形成されている。
【0055】
これにより、ハンドル60の反対側から手の中に左外側板56aを握り込んだ状態で魚釣用リール10Aを握持したときに、親指を載置するスペースを広く確保でき、制御ケース74の上面76に親指を載置し易く、保持性を向上させることができる。更に、この状態から、操作ボタン72の操作も容易に行うことができる。このような上面76は、少なくとも表示部70の部分を透明にした樹脂部材で覆われることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、表示部70の周囲を覆う制御ケース74の上部カバー78が、表面に塗装処理を施したエラストマー材料製の外装部材として形成してある。この上部カバー78は、側枠54a,54bの最上部から制御ケース74の上面76の表示部70の周部に連続し、この上面76から側部75aおよび前部75b側まで延びる。これにより、魚釣用リール10Aを手で握り込み、親指を上部カバー78上に載置したときに、好適な感触を提供することができる。
【0057】
また、リール本体52内に配置されたレベルワインド機構により左右に往復動する釣糸案内体80を囲むフロントカバード82を上部カバー78の下側に隣接させて配置してある。このフロントカバー82は、釣糸案内体80が往復動するときに、釣り糸の移動を阻害しないように、上下方向および左右方向に広がる傾斜面84a,84bで形成した開口82aを釣糸案内窓として有し、この前部ガード82は、表面に塗装処理を施したエラストマー材料製の外装部材として形成してある。
【0058】
上部カバー78は、制御ケース74内の電子部品を保護するために、耐衝撃性の高いウレタン系、アミド系のエラストマー材料や、耐水性の高いスチレン系、オレフィン系のエラストマー材料で本体を形成することが好ましい。特に、パッキンとしての機能性も重視し、硬度は45〜65程度に形成することが好ましい。なお、電動リールのように、駆動モータの近くに配置する場合は、駆動モータの発生する熱に耐えるために、耐熱性の高いスチレン系やアミド系のエラストマー材料を用いることが好ましい。
【0059】
制御ケース74に設ける操作ボタン72は、ボタン操作の必要性から、耐屈曲性の高いエステル系のエラストマー材料で形成し、頻繁な押圧操作に耐えるものであることが好ましい。特に、暗い中でも視認を容易とするために、光輝性や蓄光性の塗膜層を形成することが好ましい。この操作ボタン72は、上部カバー78の内側に配置してもよく、制御ケース74の内部の防水性を維持しつつ、その上端部を、上部カラー78から上方に突出させてもよい。
【0060】
また、フロントカバー82は、隣接する上部カバー78および左右の外側板56a,56bとの間に段差が形成される場合には、その段差が目立つこと、および、内側に配置されるレベルワインド機構のカム軸等を保護するために、例えば上部カバー78よりも硬めに形成し、例えば硬度が70〜90程度に形成することが好ましい。なお、これよりも低い硬度に形成する場合には、フロントカバー82の肉厚を厚くすることが好ましい。これにより、寸法が多少ばらついても防水性の問題を解消できる。
【0061】
このフロントカバー82は、釣り糸から水滴等の異物がかかり易く、釣り糸の先に結ばれた金属類が当たることがあるため、耐水性の高いスチレン系、オレフィン系のエラストマー材料、または、耐衝撃性の高いウレタン系、アミド系のエラストマー材料で本体を形成することが特に好ましい。また、薄暗い環境の下でも、釣り糸を釣糸案内体80のラインガイドに容易に通すことができるようにするため、光を反射させやすい光輝性や蓄光性の塗料を用いることが好ましい。また、開口82aを通る釣り糸からの水滴が付着し難く、付着した水滴等の異物の除去を容易にするため、このフロントカバー82の塗膜層を撥水性の塗料を用いて形成することも好ましい。
【0062】
また、釣り用リール10Aを操作する際、後方に配置されたクラッチレバー68は指で頻繁に押圧操作する必要があり、このため、クラッチレバー68の全体、または、少なくとも上側の外周部のカバー部の本体をエラストマー材料で形成し、この本体の表面を塗装処理することが好ましい。エラストマー材料は、耐水性の高いスチレン系、オレフィン系、または、耐磨耗性の高いウレタン系を用いることが好ましく、好適な操作感を得るために、硬度を50〜80程度に形成することが好ましい。
【0063】
このクラッチレバー68のエラストマー材料製の本体の表面には、薄暗い環境下で視認できるように、光輝性や蓄光性のある塗膜層を形成することが好ましい。また、水滴がかかりやすく、操作する指から汚れも付着し易いため、撥水性の塗膜層を形成してもよい。
【0064】
更に、ハンドル60側に位置するセットスクリュー66の全体または外周カバー部についても、その本体をエラストマー材料で形成し、この表面を光輝性を有する塗膜層で覆った外装部材としてもよい。この場合には、特に、突出部62の近部で、スタードラグ64と右外側板56bとの間の狭い空間内に配置されるセットスクリュー66の視認が容易で、その汚れを抑制し、保守が容易となる。
【0065】
本実施形態では、ハンドル60の外端に、スプール58と平行に配置した支軸(図示しない)上にハンドルノブ86を回転自在に配置してある。このハンドルノブ86は、その軸方向に沿う僅かに凹設された中央部86aから、外方に向けて次第に拡径し、最大外径部86bに達した後、この最大外径部86bから外端に向けて球面状の外面を形成しつつ縮径した形状に形成してある。中央部86aと最大外径部86bとの間の凹状の曲面部には、本実施形態では3本の溝88を周方向に延設し、滑り難くい表面形状に形成してある。
【0066】
図6に外周側の部位を拡大して示すように、このハンドルノブ86は、少なくとも外周部位を、エラストマー材料で形成した本体90とし、この本体90の表面に塗膜層92を形成した外装部材に形成してある。
【0067】
本体90を形成するエラストマー材料は耐衝撃性、耐磨耗性の高いウレタン系であることが特に好ましく、耐水性に優れたスチレン系、オレフィン系を用いてもよい。また、塗膜層92は、本体90を保護しつつ弾性を維持できるものであれば、例えば装飾性を重視して形成してもよいが、撥水性の塗料を用いる場合には、溝88内にも配置することにより、溝88内に入り込んだ水を容易に排出することができる。この溝88の幅を外方に向けて広く形成し、溝88の底部に形成される角部89aを丸めて湾曲面に形成することにより、水分の流れが良好になる。また、溝88の外側の角部89bも、丸めて湾曲面にすることにより、溝88内からの水分の排出が容易で、滑りにくく、握持する手に対して、滑らかで柔軟な感触を与えることができる。
【0068】
なお、このような溝88は、ハンドルノブ86に限るものではなく、例えばセットスクリュー66およびクラッチレバー68の表面に設けてもよい。また、溝88の延設方向は、周方向に限らず、滑り止めに好適な方向に沿って適宜に形成することができ、その範囲も外装部材の全表面に形成し、あるいはその一部にのみ形成することができる。このような溝88は、塗膜層がエラストマー材料で形成した本体の弾性を維持するため、痛み等の不快感を与えることもない。
【0069】
また、撥水性の塗料に替えて親水性の塗料を用いてもよく、その場合も、親水性により、汚れが付着しても水の膜が流れ落とす機能を付与できる。
【0070】
以上の説明では、リヤキャップ32、アームカバー48、レバーカバー29およびハンドルノブ14a等のスピニングリールの外装部材、上部カバー78、フロントカバー82、セットスクリュー66、クラッチレバー68、ハンドルノブ86等の両軸受リール10Aの外装部材を、それぞれ上述のように、エラストマー材料製の本体の表面を塗装処理して塗膜層を形成したが、これらの部材に限らず、表面に異物が付き難い部材であれば、これと同様にエラストマー材料の表面を覆う塗膜層により、魚釣用リールの初期の機能および外観を長期間にわたって維持することができる。
【0071】
光輝性の塗膜層を形成する場合には、明方や夕方の薄暗い環境下でも、その外装部材を通じて魚釣用リールの視認性が向上することで取扱性も向上し、釣り場での釣り具の準備、片付けの困難性を解消し、誤操作、落下による破損を防止して快適な釣りが楽しめる。また、光輝性の塗膜層を形成することで、太陽光を反射させるので、耐光劣化が進みにくく、長期間にわたり品質を維持できる。更に、塗膜層が蓄光性を有する場合には、更に視認性が向上し、夜釣りのように、完全に暗い環境下でも、快適な釣りが楽しめる。
【0072】
特に、スピニングリール10のアームカバー38、両軸受リールのフロントカバー82のように、巻取の際に釣り糸から水滴がかかり易い部位では、この釣り糸から水滴や異物が飛び散っても、外装部材に表面に付着し難く、付着した異物も容易に除去することができ、その手入れが容易となる。また、実釣時に指で操作するハンドルノブ14a,86と、摘んで操作する摘み部すなわちレバーカバー29やセットスクリュー66と、レバー部すなわちクラッチレバー68との少なくとも1つのエラストマー材料に塗膜層を配置する場合には、汚れ易く劣化し易い部位も、長期間にわたって汚れ難く、好適なフィット感を維持することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限るものではない。例えば、図1に示すスピニングリールのハンドルノブ14aを扁平状形状に形成することに代え、図3〜5に示す両軸リールのハンドルノブ86と同様に形成してもよい。また、エラストマー材料の種類についても、上述のものに限らず、例えば天然ゴムやニトリルゴム、クロロプレンゴム等を利用しても良い。
【符号の説明】
【0074】
10…スピニングリール、10A…両軸受リール、12,52…リール本体、18,58…スプール、14,60…ハンドル、32…リヤキャップ(外装部材)、82…フロントカバー(外装部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿に取付けられるリール本体と釣り糸を巻回するスプールとを有し、リール本体に設けられたハンドルを回転してスプールに釣り糸を巻き取る魚釣用リールであって、
表面に塗装処理を施したエラストマー材料製の外装部材を備えることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記外装部材は、塗装処理された表面が、巻取時に移動する釣り糸の方向に向けて配置される請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記外装部材は、実釣時に指で操作するハンドルノブと、摘み部と、レバー部との少なくとも1つに配置される請求項1又は2に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−273625(P2010−273625A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130426(P2009−130426)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】