説明

魚釣用リール

【課題】 握持保持する際に装着部が手に接触することが回避でき、手に違和感を与えるのを防止するとともに、魚のヌメリ、海水、ゴミ等が装着部に付着し難い魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】 釣糸をスプール20に巻き取るハンドル30に対して反対側の左フレーム14bに左側板16bを装着して用いる魚釣用リール10にあっては、左フレーム14bに対して左側板16bを固定するために操作する着脱ネジ78の頭部78aを、左側板16bの下部の外周上に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、フレームに対する側板(サイドプレート)の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールのハンドルに対して反対側(反ハンドル側)の側板は、スプールの着脱やバックラッシュ発生時の糸解し作業、或いは、スプール制動装置の調節、清掃等が行えるように、フレームに対して着脱可能に構成されている。
着脱の方法としては、例えば特許文献1で見られるように、側板の前方側部に設けたネジを緩めてフレームに対する側板の回転規制状態を解除後、側板を回転しフレームに対する係止状態を解放することで側板を取り外す方法や、特許文献2で見られるように、ハンドル側の側板から反ハンドル側の側板に向けて挿入されたネジ棒を緩めてフレームに対する側板の回転規制状態を解除後、側板を回転しフレームに対する係止状態を解放することで側板を取り外す方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−256648号公報
【特許文献2】特開2005−218401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1は、側板の前方側部にネジが露出するので、魚釣用リールを握持保持する手の掌にネジの頭部が接触して違和感がある。また、手に付着している魚のヌメリや異物がネジの頭部に不必要に付着し易い。
また、特許文献2も、ネジの頭部がハンドル側の側板の上部に位置するので、海水、ゴミ等が付着し易く、釣糸も絡み付き易い。
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、握持保持する際に装着部が手に接触することが回避でき、手に違和感を与えるのを防止するとともに、魚のヌメリ、海水、ゴミ等が装着部に付着し難い魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明に係る、フレームの外側に側板を装着して構成されるリール本体の側部に、釣糸をスプールに巻き取るハンドルが取り付けられた魚釣用リールにあっては、前記フレームに対して側板を固定するために操作する固定操作部を前記ハンドルに対して反対側のリール本体の側部の下部の外周領域に配置したことを特徴とする。
また、前記固定操作部は、前記リール本体の後方側に向けて操作する方向が締め付け固定方向に設定されたネジを有することが好ましい。
また、前記固定操作部は、前記リール本体の側部の下部のうち、前記スプールのスプール軸よりも前方側に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
フレームに対して側板を固定するために操作する固定操作部をリール本体のハンドルに対して反対側の側部の下部の外周領域に配置したことによって、釣竿とともに魚釣用リールを握持保持する際に側部の下部の外周領域の固定操作部に手が接触するのを回避できるので、魚釣用リールを握持保持する際の側部に対する違和感がなく、魚のヌメリ、海水、ゴミ等が固定操作部に付着するのを防止できる。また、実釣時や釣場移動時に固定操作部に外力が加わり難くなるので、固定操作部やそれを受けるフレーム等に支障をきたすのを防止できる。
リールの後方側に向けて固定操作部を操作する方向が締め付け固定方向に設定されているので、実釣時にリールを持ち替える際、リールの後側を持った手に対して他の手でリールの対角上の前側を保持するのが通常の動作であるため、側部にある固定操作部は、右手から左手に、又は、左手から右手に持ち替える際に手が当たっても不必要な緩みを防止できる。
また、リール本体の側部の下部のうち、スプール軸よりも前方側は、釣竿およびリールを握持保持する際の手と側板との間に形成されるデッドスペース(特に手が触れ難い部分)となる。このため、この部分に固定操作部を配設することによって、固定操作部が手に触れることがより確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示す、図2および図3中の矢印I方向から観察した状態を示す概略的な上面図。
【図2】第1の実施の形態に係る、釣竿を取り付けた魚釣用リールを図1および図3中の矢印II方向から観察した状態を示す概略的な側面図。
【図3】第1の実施の形態に係る、釣竿を取り付けた魚釣用リールを図1および図2中の矢印III方向から観察した状態を示す概略的な正面図。
【図4】第1の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、かつ、左側板を取り外した状態を示す概略図。
【図5】第1の実施の形態に係る魚釣用リールの左側板を示し、(A)は左側板の正面図、(B)は左側板の背面図、(C)は図5(B)中の5C−5C線に沿う概略的な断面図。
【図6】第1の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、図4に示す魚釣用リールの左フレームに、図5に示す魚釣用リールの左側板を取り付けた状態を示す概略的な側面図。
【図7】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、(A)は図6中の7A−7A線に沿う概略的な断面図、(B)は図6中の7B−7B線に沿う概略的な断面図、(C)は図6中の7C−7C線に沿う概略的な断面図。
【図8】第1の実施の形態に係る魚釣用リールの左側板に用いられる着脱ネジの変形例を示す概略的な部分断面図。
【図9】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを示す、図10中の矢印IX方向から観察した状態を示す概略的な上面図。
【図10】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを図9中の矢印X方向から観察した状態を示す概略的な側面図。
【図11】第2の実施の形態に係る魚釣用リールの左側板を示し、(A)は左側板の正面図、(B)は左側板の背面図。
【図12】(A)は第2の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、かつ、左フレームに左側板を取り付けるためにスプール軸の第1軸部と、左側板のバックラッシュ防止機構の中心凹部とを嵌合させた状態を示す概略図、(B)はスプール軸の第1軸部と、左側板のバックラッシュ防止機構の中心凹部とを嵌合させた状態で左フレームに対して左側板を回動させてフレーム側係合部に側板側係合部を係合させるとともに、着脱ネジのネジ部を左フレームのネジ穴に配置した状態を示す概略図。
【図13】第2の実施の形態に係る魚釣用リールの左フレームのネジ穴に左側板の着脱ネジのネジ部を螺合させるための動作を示し、(A)は図12(A)中の13A−13A線に沿う概略的な断面図、(B)は図12(A)に示す状態から図12(B)に示す状態に向かう途中の状態を示す概略的な断面図、(C)は図12(B)中の13C−13C線に沿う概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から図7は、本発明の好ましい第1実施形態による魚釣用リール10を示す。
図1から図3に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。図2および図3に示すように、ここでは釣り人が左手LHで竿8および魚釣用リール10を保持し、図示しない右手で魚釣用リール10の右側部のハンドル30を回すように形成されている場合について説明する。もちろん、左手LHでハンドル30を操作するようにハンドル30の配置が逆(左側部)であっても良い。
【0009】
図1に示すように、魚釣用リール10のリール本体12は、図示しない連結部材等で一体化される左右一対のフレーム14a,14bのそれぞれの外側に、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせて側板16a,16bを取り付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、フレーム14a,14b間に配設されたリール取付脚部18を介して釣竿8に固定される。
なお、リール本体12の左右一対のフレーム14a,14bの上側であって、側板16a,16bの間にはサムレスト19が、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせて取り付けられている。この実施形態では、サムレスト19の外観は後述するスプール20に巻回された釣糸に親指F1をかけてサミング操作を行うためにリール10の後側が開いた略U字状である。
【0010】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右のフレーム14a,14b間に回転自在に支持され、右側板16aは、スプール20を回転駆動させる巻取り駆動部22を支持し、この右側板16aと右フレーム14aとの間に形成された空間内に、この巻取り駆動部22を形成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。なお、左右は図1中における左右方向を示し、前後は図1中の上下に相当する。
【0011】
このリール本体12のフレーム14a,14b間には、スプール軸26の両端部が、例えばボール軸受28a,28bを介して回転自在に支持されている。スプール軸26は、第1軸部26aと、第2軸部26bとを同軸上に備え、第2軸部26bはハンドル30側に配設され、第1軸部26aはハンドル30とは反対側(反ハンドル側)に配設されている。そして、スプール軸26の第1軸部26aはスプール20に装着されスプール20と一体的に回転する。スプール軸26の第2軸部26bは、ハンドル30の回転を軸受32a,32bに支持されたハンドル軸34、ハンドル軸34に回り止め嵌合されたドラグ機構44を経由してドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38が同軸上に配置されている。そして、スプール軸26の第1軸部26aと第2軸部26bとの端部(リール本体12の中央側端部)同士を突き合わせた場合、一緒に回転する。
なお、ハンドル軸34には、公知のスタードラグ(ドラグ調整ノブ)42が配設され、ドライブギヤ36には公知のドラグ機構44が配設されているが、これらについては説明を省略する。
【0012】
ピニオンギヤ38は、公知のクラッチ(伝達機構)48を介して、側板16a,16b間に配置したクラッチレバー50と連動しており、このクラッチレバー50を下方に押圧作動することにより、クラッチ48がOFFとなり軸方向に沿って図1中の右側に移動することができる。例えば、クラッチレバー50の操作により、スプール軸26の第2軸部26bの右端部にピニオンギヤ38が嵌合した位置すなわち巻取状態と、スプール軸26の第2軸部26bの右端部からピニオンギヤ38を分離した状態(スプールフリー状態)とすることができる。又、ピニオンギヤ38が分離した状態で、ハンドル30を回転させると、図示しない公知の復帰機構を介して、ピニオンギヤ38がスプール軸26の第2軸部26bの右端部に嵌合して元の状態(巻取状態)に復帰し、スプール軸26の第1軸部26aと一体化されているスプール20が、ピニオンギヤ38と共に一体的に回転する。
【0013】
このスプール20は、軸方向の両側に形成された一対の鍔部20a間に位置する円筒状の胴部20bを有し、スプール軸26の第1軸部26aに一体的に装着され、一対の鍔部20aと釣糸巻回胴部20bの外周面とで形成される環状溝内に釣糸(図示しない)が巻回される。この環状溝の底部を形成する胴部20b上に釣糸(図示しない)を均等に巻回するため、ハンドル30の釣糸巻取り回転に連動して、一対の左右のフレーム14a,14b間を往復動する公知のレベルワインド機構52が配置されている。このレベルワインド機構52は、右側板16a内の駆動部と連動する係合子を左右に移動することにより、ハンドル30の回転操作にともなって、釣糸をスプール20の胴部20b上に均等に巻き取ることができる。
なお、フレーム14a,14b間には、レベルワインド機構52を覆い、釣糸が絡みつくのを防止する前カバー54が固定されている。
【0014】
図4に示す左フレーム14bに対しては図5に示す左側板16bを着脱可能であり、左フレーム14bに左側板16bを取り付けた状態を図6に示す。
図4に示すように、左フレーム14bは、平面部62と、この平面部62の縁部から外側(反ハンドル側)に延出された下側フランジ部64とを有する。下側フランジ部64は左フレーム14bの下側から後側にかけて連続的に形成されている。平面部62は後ろ側が略円形状で、前側に向かうにつれ次第に細くなっている。この形状は、サムレスト19の上側に左手LHの親指F1を載せ、左フレーム14bの下側フランジ部64を左手LHの人差し指F2で保持したときに、リール10と指F1,F2との間に隙間なく保持できる形状である。
【0015】
サムレスト19は、左フレーム14bの平面部62に対して例えばネジ65で例えば2箇所に固定されている。1つ目の固定箇所はサムレスト19のうち左フレーム14bに対してハンドル30と反対側に突出した左側縁部19aの下側である。2つ目の固定箇所は、サムレスト19の左側縁部19aの後側であって、下側フランジ部64の後側の端部の近傍である。なお、サムレスト19の後端部の外表面は面取りされ、下側フランジ部64の後側の端部との間の隙間が小さく、下側フランジ部64の後側の端部と、左フレーム14bの下側フランジ部64の後端部との間の境界部分は、指等に対する引っ掛かりなく滑らかに処理されている。
【0016】
左フレーム14bの平面部62には、その構造については公知のものが種々あるので詳細には説明しないバックラッシュ防止機構56が配置されている。バックラッシュ防止機構56は、左フレーム14bの平面部62に設けられた複数の保持部56aによって左フレーム14bの平面部62に保持されている。
【0017】
そして、左フレーム14bの平面部62及び下側フランジ部64と、サムレスト19の左側縁部19aとによって形成された空間に、バックラッシュ防止機構56が配置されている。なお、バックラッシュ防止機構56は左フレーム14bの平面部62に対して着脱可能であり、バックラッシュ防止機構56を取り外した状態でスプール20を着脱可能である。
なお、バックラッシュ防止機構56は必ずしも必要というものではなく、単にスプール軸26を保持するボール軸受28bが配設され、保持部56aが形成されていれば良い。
【0018】
左フレーム14bの平面部62には、左側板16bの後述する着脱ネジ78が螺合するネジ穴62aが形成されている。このネジ穴62aは左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aに近接した位置に形成されている。また、左フレーム14bの平面部62には、左側板16bの後述するピン80が嵌合する孔部62bが形成されている。この孔部62bは左フレーム14bの下側フランジ部64の下側後方縁部64bに近接した位置に形成されている。
なお、図4に示すように、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aは、図4中、左上がりの傾斜に形成され、下側後方縁部64bは、図4中、右上がりの傾斜に形成されている。すなわち、図4中、下側前方縁部64aは、釣竿8が装着されるリール取付脚部18に対して前方側に向かうにつれて離れていくようになっている。また、下側後方縁部64bは、リール取付脚部18に対して後方側に向かうにつれて離れていくようになっている。
【0019】
図5(A)および図5(B)に示すように、左側板16bは、左手LHの掌を受ける外面部72と、上側縁部74と、下側縁部76とを一体的に有する。
外面部72は、左手LHの掌を受けるように膨出した表面部72aと、バックラッシュ防止機構56を収容する凹状の裏面部72bとを有する。上側縁部74および下側縁部76は外面部72の表面部72aおよび裏面部72bに滑らかに連続して形成されている。
【0020】
上側縁部74(図7(A)参照)は、この実施形態ではサムレスト19の左側縁部19aに嵌合する嵌合部として形成され、例えばその後方側で外方に向かって突出する突起部(爪部)74aを有する。そして、上側縁部74はその突起部74aによってサムレスト19の左側縁部19aの下側の所定の位置に嵌合される。左側板16bの上側縁部74とサムレスト19の左側縁部19aとが嵌合された場合、サムレスト19の左側縁部19aと左側板16bの外面部72との間の隙間は小さく、サムレスト19の左側縁部19aと左側板16bの外面部72との間の境界部分は、指等に対する引っ掛かりなく滑らかに処理されている。
【0021】
下側縁部76のうちスプール軸26よりも前側部76aには、図5(A)から図5(C)に示すように、着脱ネジ78が装着されている。着脱ネジ78は、前側部76aの凹部76cを通して頭部(固定操作部)78aの一部が回転操作可能となっている。なお、頭部78aの一部は、前側部76aの外表面に対して突出していても、前側部76aの外表面に対して引き込まれた状態にあっても、操作可能であれば良い。そして、着脱ネジ78のネジ部78bは外面部72の表面部72aに対して離れた側に突出し、左フレーム14bのネジ穴62aに螺合可能である。着脱ネジ78のネジ部78bおよび左フレーム14bのネジ穴62aは左ネジとして形成されている。これは、後述するが、釣竿8やリール10の操作の際に指が当たっても着脱ネジ78が締まる方向に力を加えるようにするためである。
【0022】
外面部72の裏面部72b側であって、下側縁部76の後側部76bには、図5(B)に示すように、左フレーム14bの平面部62の孔部62bに嵌合されるピン80が外面部72の表面部72aに対して離れた側に突出形成されている。このため、サムレスト19の左側縁部19aに嵌合する上側縁部74の突起部74aとともに左フレーム14bに対して左側板16bを位置決めすることができる。なお、図7(B)に示すように、ピン80は円筒状に形成された部分を有し、すなわち、空間80aを有するので、ピン80はピン80の中心軸方向に向かって弾性変形により伸縮できる。
【0023】
図5(B)および図5(C)に示すように、左側板16bの下側縁部76の前側部76aの凹部76cに隣接した位置であって、外面部72の裏面部72b側には、着脱ネジ78を支持する支持部82が形成されている。支持部82には、着脱ネジ78の頭部78aから図5(C)中の下側(外面部72の裏面部72b側)に突出する軸部78cを回転可能に支持する丸穴部82aが形成されている。支持部82に隣接する位置には、1対のネジ穴84が形成されている。そして、着脱ネジ78のネジ部78bを受け入れる凹状部86aを有するプレート86で、着脱ネジ78の頭部78aを回転可能に押さえつつ、プレート86を留めネジ88で固定することにより、着脱ネジ78の頭部78aが支持部82とプレート86との間から脱落を防止した状態で回転操作可能に配設されている。
【0024】
以下、図4に示すリール本体12の左フレーム14bに図5(A)および図5(B)に示す左側板16bを取り付ける取付方法について説明する。
まず、左側板16bの上側縁部74の突起部74aをサムレスト19の左側縁部19aの下側に配置すると、左側板16bのピン80の先端側が左フレーム14bの孔部62bに嵌め込まれる。このとき、着脱ネジ78のネジ部78bはネジ穴62aの入口にある。そして、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部76とは離れた状態にある。
【0025】
図6に示す状態で着脱ネジ78の頭部78aを後側(図6中の右側)に向かって回転させると、左ネジの作用によりネジ部78bがネジ穴62aに螺合されていく。このため、左側板16bのピン80が左フレーム14bの孔部62bに対して深く嵌め込まれるとともに、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部76とが近接し、最終的には当接する。
このとき、図7(A)に示すように、サムレスト19の左側縁部19aに対して左側板16bの上側縁部74が嵌合し、図7(B)に示すように、左側板16bに設けられたピン80が左フレーム14bの孔部62bに嵌合して左フレーム14bの下側フランジ部64の下側後方縁部64bが左側板16bの下側縁部76の後側部76bに当接し、図7(C)に示すように、左側板16bに設けられた着脱ネジ78のネジ部78bが左フレーム14bのネジ穴62aに螺合し、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aが左側板16bの下側縁部76の前側部76aに当接した状態である。
【0026】
そして、釣竿8にリール取付脚部18を取り付けた状態で釣竿8およびリール10を握持保持する場合、通常は図2および図3に示すように握持保持する。すなわち、図3に示すように左手LHの親指F1をサムレスト19の上側に配し、図2および図3に示すように左手LHの掌の一部を左側板16bの外面部72の表面部72aに当てつつ人差し指F2から小指F5を釣竿8にかける。このとき、図2および図3に示すように、着脱ネジ78の頭部78aは左側板16bの下側縁部76の前側部76aに配設されているので、着脱ネジ78の頭部78aに指が当たらない。
【0027】
また、キャスティングする際には、釣竿8とリール10を左手LHから右手RHに持ち替えて、右手RHで釣竿8とリール10を持ってキャスティングを行う。このとき、右手ではリール10のハンドル30の後側、すなわち、リール10の右側後方を把持することとなる。このため、左側板16bの下部の外周上にある着脱ネジ78には手が当たることはない。
キャスティング後、リール10を右手から左手LHに持ち替える。この際、右手と左手LHで同時に釣竿8およびリール10を把持する瞬間がある。右手ではリール10の右側後方を握持しているため、左手LHは右手の左前方の部分をまず握る。すなわち、左手LHでリール10の左前方を握る。その後、右手を離して左手LHをリール10の左前方から左後方にずらして左手LHを本来の位置(図2および図3参照)を把持する。このように、リール10の左前方から左後方に向けて左手LHをずらす際、左側板16bの着脱ネジ78の頭部78aに触れる可能性があるが、その場合でも頭部78aを締め付ける方向に回転させることとなるので、誤って左側板16bが外れることが防止される。
【0028】
したがって、釣竿8とともにリール10を左手LHで握持保持する際に左側板16bの下部の外周上に頭部78aの一部が操作可能に露出された着脱ネジ78に手が接触するのを回避できるので、リール10を握持保持する際の左側板16bに対する違和感がなく、魚のヌメリ、海水、ゴミ等が着脱ネジ78に付着するのを防止できる。また、釣糸が絡むのも防止できる。また、実釣時や釣場移動時に着脱ネジ78に外力が加わり難くなるので、着脱ネジ78やそれを受ける左フレーム14bのネジ穴62a等に支障をきたすのを防止できる。
なお、図示しないが、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aは、着脱ネジ78の頭部78aの一部を受け入れるように凹状に形成されていても良い。したがって、上述した頭部78aの一部が操作可能に露出された左側板16bの下部の外周上とは、左側板16bの下側縁部76の領域、又は、左側板16bの下側縁部76および左フレーム14bの下側フランジ部64を合わせた領域であり、特に、左側板16bの下側縁部76の前側部76aの領域、又は、左側板16bの下側縁部76の前側部76aおよび左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aを合わせた領域であることが好ましい。すなわち、左フレーム14bに左側板16bを装着したときの着脱ネジ78の頭部78aはリール本体12の左側部の下部の外周領域にあり、特に、左側部の下部の前側の外周領域にあることが好ましい。
【0029】
さらに、左側板16bにある着脱ネジ78は、その頭部78aの一部のみが左側板16bの下部の外周上に操作可能に露出された状態にあるので、実釣時や携帯時に魚釣用リール10を右手から左手に持ち替える際に着脱ネジ78の頭部78aが手に触れる機会があっても、左ネジとして形成され、これはリール本体12の後方側に向けて操作する方向が締め付け固定方向に設定されているので、左フレーム14bに対する左側板16bの不必要な緩みを防止できる。
【0030】
また、左側板16bにある着脱ネジ78は、その頭部78aの一部のみが左側板16bの下部の前方側の外周上(左側部の下部の前方側の外周上)に操作可能に露出された状態にあるので、釣竿8およびリール10を握持保持する際の掌と左側板16bとの間に形成されるデッドスペース(特に手が触れ難い部分)に配設されていることにより、着脱ネジ78が手に触れることがより確実に回避できる。
【0031】
なお、左側板16bを左フレーム14bに対して取り外す際には、着脱ネジ78の頭部78aを前側(図2中の左側)に回転させると、ネジ部78bがネジ穴62aに深く螺合された状態から次第に浅くなり、左側板16bの下側縁部76が左フレーム14bの下側フランジ部64から離れていく。そして、サムレスト19の左側縁部19aに対する左側板16bの突起部74aの嵌合を解除すると、左側板16bのピン80が左フレーム14bの孔部62bに嵌合された状態も解除される。着脱ネジ78の頭部78aを左フレーム14bから離隔する方向に引っ張ることで、左フレーム14bに対して容易に左側板16bを開くことができる。
このように、着脱ネジ78を左側板16bに設けることにより、着脱ネジ78の頭部78aを左フレーム14bに対して離隔する方向に引っ張ることで、左側板16bを左フレーム14bに対して容易に取り外すことができる。
【0032】
なお、この実施形態では、左側板16bに着脱ネジ78を配置した場合について説明したが、左フレーム14bの下側フランジ部64の特に下側前方縁部64aに着脱ネジ78を配置する構造であっても良い。この場合、ネジ部78bは左側板16bの外面部72側に向かって延出されており、右ネジとして形成される。そして、着脱ネジ78の頭部78aは、左フレーム14bに左側板16bを装着したときに左フレーム14bの下側フランジ部64だけに配置されるように形成されていても良いし、左フレーム14bに加えて左側板16bの両方に配置されるように形成されていても良い。この場合であっても着脱ネジ78の頭部78aはリール本体12の左側部の下部の前側の外周領域に配置されていると言える。
また、ハンドル30をリール本体12の左側に設ける場合、着脱ネジ78は右フレーム14a又は右側板16aに設けられ、右フレーム14aの場合は左ネジとして、右側板16aの場合は右ネジとして形成される。
【0033】
また、この実施形態では、頭部78aとネジ部78bとが固定された着脱ネジ78を用いる場合について説明したが、図8に示すように、頭部78aに対してネジ部78bがその軸方向に移動可能に形成されていることが好適である。
図8に示す着脱ネジ78は、ネジ部78bおよび軸部78cが一体的に形成されている。頭部78aには付勢リング78dが固定されている。付勢リング78dは、ネジ部78bおよび軸部78cの軸方向の移動は許容するが、周方向の移動は規制する構造を有する。例えば、ネジ部78bおよび軸部78cには軸方向に沿って図示しない溝が形成され、頭部78aに固定された付勢リング78dは溝に嵌まる図示しない内方突起を有し、その溝に沿って内方突起が軸方向には移動するが、周方向への移動は規制されている。そして、付勢リング78dと支持部82との間には、コイルバネ90等の弾性部材が配設されている。コイルバネ90によってネジ部78bおよび軸部78cを図8中の上側に付勢している。すなわち、ネジ部78bは頭部78aに対して離れる方向に付勢されている。
この着脱ネジ78を用いると、左側板16bの着脱ネジ78のネジ部78bを左フレーム14bのネジ穴62aに螺合させる際に、ネジ穴62aの軸方向に対して着脱ネジ78のネジ部78bの軸方向を上述した実施形態よりも近接させることができる。このため、着脱ネジ78のネジ部78bをより容易にネジ穴62aに対して着脱可能に螺合することができる。
【0034】
次に、第2実施形態について図9から図13を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
この実施形態では、図9から図12に示す魚釣用リール10の左フレーム14bからバックラッシュ防止機構が除去され、左側板16bの外面部72の裏面部72bに軸受28bを有するバックラッシュ防止機構120が装着されている。なお、バックラッシュ防止機構120の内部構造については公知のものが種々あるので詳細には説明しない。また、左側板16bに設けられている着脱ネジ78は、この実施の形態では、図8に示す着脱ネジ78を用いる場合について説明する。さらに、この実施形態ではサムレスト19のうち、左フレーム14bの平面部62から左側に突出した左側縁部19aが除去され、左側板16bの上側縁部74の突起部74a(図5−図7等参照)が除去された例について説明する。
【0035】
図11(A)および図11(B)に示すように、左側板16bの外面部72の凹状の裏面部72bにはバックラッシュ防止機構120が固定された状態に収容されている。バックラッシュ防止機構120の外観は略円形状であり、その中心部にはスプール軸26の第1軸部26aが回転可能に配設されるように軸受28bを介して中心凹部120aが形成されている。バックラッシュ防止機構120の外周縁部には、左フレーム14bに対して左側板16bを所定の位置に着脱可能に固定するために、所定の間隔ごとに形成された側板側係合部120bが形成されている。ここでは、側板側係合部120bは中心凹部120aを中心として例えば略120度おきに3箇所形成されているが、側板側係合部120bの位置は適宜に設定可能である。
左側板16bの上側縁部74は、この実施形態では、左側板16bを左フレーム14bに装着したときに、サムレスト19の左側端面19bおよび左フレーム14bの後述する上側フランジ部66に当接するとともに、サムレスト19の左側端面19bとの間の隙間が小さく、左側板16bの上側縁部74と、サムレスト19の左側端面19bとの間の境界部分は、指等に対する引っ掛かりなく滑らかに処理されている。
そして、図11(B)に示すように、左側板16bの下側縁部76は上側縁部74と左側板16bの前端側および後端側で環状に連続して形成されている。そして、左側板16bの上側縁部74および下側縁部76のうち、左フレーム14bおよびサムレスト19の左側端面19bとの当接面は平面状に形成されている。
なお、第1実施形態で説明したピン80(図5、図7(B)参照)は左側板16bから除去されている。
【0036】
一方、図12(A)および図12(B)に示す左フレーム14bは、第1実施形態で説明したバックラッシュ防止機構56を収容する必要がないので、下側フランジ部64の平面部62に対する突出量は第1実施形態に比べて小さくなっている。そして、下側フランジ部64に後端側で連続して上側フランジ部66が形成されている。下側フランジ部64および上側フランジ部66のうち、左側板16bの上側縁部74および下側縁部76との当接面は平面状に形成されている。なお、上側フランジ部66のうち、左側板16bの上側縁部74との当接面は、サムレスト19の左側端面19bと面一に形成されていることが好ましい。
図12(A)および図12(B)に示すように、左フレーム14bの平面部62は、スプール軸26の第1軸部26aが配設されたスプール20を着脱可能な開口部124を有する。開口部124の外周縁部には、バックラッシュ防止機構120の側板側係合部120bが係合されるフレーム側係合部124aが形成されている。フレーム側係合部124aは例えば略120度おきに3箇所形成されている。
左フレーム14bのうち、平面部62のネジ穴62aに隣接した位置には、短溝126が形成されている。この短溝126は、スプール軸26の第1軸部26aを中心とする円弧の一部である。短溝126が形成された円弧上には、さらにネジ穴62aがある。そして、この短溝126には、着脱ネジ78のネジ部78bが配設される。なお、着脱ネジ78のネジ部78bは上述した図8に示すように、軸方向に沿って伸縮する。
【0037】
次に、この実施形態に係る左側板16bを左フレーム14bに着脱する作用について説明する。ここでは、左フレーム14bに対して左側板16bを取り付ける作用について説明する。
スプール軸26の第1軸部26aが一体的に配設されたスプール20を左フレーム14bの平面部62の開口部124を通した所定の位置に装着する。そして、図12(A)に示すように、左側板16bの裏面部72bに収容されたバックラッシュ防止機構120の中心凹部120aにスプール軸26の第1軸部26aの端部を配置する。このとき、図13(A)に示すように、左フレーム14bの平面部62の短溝126には着脱ネジ78のネジ部78bが配置されている。
【0038】
左側板16bはスプール軸26の第1軸部26aを枢軸として左フレーム14bに対して回動可能である。そして、左フレーム14bに対して左側板16bの前側を下側に、後側を上側に回動させると、左フレーム14bの開口部124のフレーム側係合部124aに対してバックラッシュ防止機構120の側板側係合部120bが係合する。
このとき、図13(B)に示すように、着脱ネジ78のネジ部78bは頭部78aに対する突出量が小さくなる(軸部78cが支持部82の丸穴部82aに対する配設量が大きくなる)ように弾性力により軸方向に移動しながら、スプール軸26を中心とする円弧の一部である短溝126に沿って平面部62のネジ穴62aに向かって移動し、図13(C)に示すように着脱ネジ78のネジ部78bがネジ穴62aに嵌められる。
【0039】
このとき、左フレーム14bの上側フランジ部66は左側板16bの上側縁部74に対向し、左フレーム14bの下側フランジ部64は左側板16bの下側縁部76に対向する。さらには、サムレスト19の左側端面19bは、左側板16bの上側縁部74に対向する。
この状態で着脱ネジ78の頭部78aを後方(図10中の右側)に回転させて、着脱ネジ78のネジ部78bを左フレーム14bの平面部62のネジ穴62aに螺合していく。
【0040】
このため、左フレーム14bの上側フランジ部66は左側板16bの上側縁部74に当接し、左フレーム14bの下側フランジ部64は左側板16bの下側縁部76に当接する。さらには、サムレスト19の左側端面19bは、左側板16bの上側縁部74に当接する。
【0041】
この状態で、第1実施形態で説明したようにリール取付脚部18に釣竿8を取り付けて魚釣用リール10を釣竿8とともに握持保持して用いることができる。
【0042】
一方、左フレーム14bに対して左側板16bを取り外す作用については、取り付ける作用の逆であるため、詳細な説明を省略する。
この実施の形態によれば、左側板16bを左フレーム14bに対して回動させることによって、所定の位置に嵌合することができる。そして、左側板16bにバックラッシュ防止機構120が収容され、左フレーム14bに対して左側板16bを取り外したら直ぐにスプール20を取り外すことができるので、スプール20の交換やメンテナンス性を向上できる。
他の効果は上述した第1実施形態で説明したので、ここでの記載を省略する。
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0043】
12…リール本体、14b…左フレーム、16b…左側板、18…リール取付脚部、19…サムレスト、19a…左側縁部、20…スプール、26…スプール軸、26a…第1軸部、26b…第2軸部、28a,28b…ボール軸受、30…ハンドル、52…レベルワインド機構、54…前カバー、56…バックラッシュ防止機構、56a…保持部、62…平面部、62a…ネジ穴、62b…孔部、64…下側フランジ部、64a…下側前方縁部、64b…下側後方縁部、65…ネジ、72…外面部、74…上側縁部、74a…突起部、76…下側縁部、76a…前側部、76b…後側部、76c…凹部、78…着脱ネジ、78a…頭部(固定操作部)、78b…ネジ部、78c…軸部、80…ピン、82…支持部、82a…丸穴部、84…ネジ穴、86a…凹状部、86…プレート、88…留めネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの外側に側板を装着して構成されるリール本体の側部に、釣糸をスプールに巻き取るハンドルが取り付けられた魚釣用リールであって、
前記フレームに対して側板を固定するために操作する固定操作部を前記ハンドルに対して反対側のリール本体の側部の下部の外周領域に配置したことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記固定操作部は、前記リール本体の後方側に向けて操作する方向が締め付け固定方向に設定されたネジを有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記固定操作部は、前記リール本体の側部の下部のうち、前記スプールのスプール軸よりも前方側に設けられていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−24527(P2011−24527A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175606(P2009−175606)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】