説明

魚釣用リール

【課題】 着脱が容易であるのはもちろん、デザイン上や内部構造を配置する際の制約を緩和できる保護カバー体を有する魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】 魚釣用リール10はリール本体12の左フレーム14bを保護する左側板16bを着脱可能に有する。リール本体は、左フレームの縁部に設けられた突起132と、左フレームの縁部に設けられているとともに突起に対して離れた位置に設けられたネジ穴62aとを有する。左側板は、突出部140aと、着脱ネジ150とを有する。突起と突出部とを引っ掛け合った状態でネジ穴と着脱ネジとを互いに対して螺合することによって、リール本体の左フレームに対して左側板を装着可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着脱可能な保護カバー体を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受型魚釣用リールのハンドルと反対側(反ハンドル側)の側板のような保護カバー体は、スプールの着脱やバックラッシュ発生時の糸解し作業、あるいは、スプール制動装置の調節、清掃等が行えるように、フレームに対して1箇所のネジ部で容易に着脱可能に構成されているものがある。
その着脱方式として、例えば特許文献1には、側板の前方側部に設けたネジを緩めてフレームに対する係止状態を開放することで側板を取り外す方法が開示されている。また、特許文献2には、ハンドル側の側板から反ハンドル側の側板に向けて挿入されたネジ棒を緩めてフレームに対する側板の回転規制状態を解除後、側板を回転してフレームに対する係止状態を開放することで側板を取り外す方法が開示されている。
特許文献1、特許文献2のいずれの魚釣用リールにおいても、側板端面部とフレーム端面部との平行が維持された状態で、螺合により取り付け/取り外しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−256648号公報
【特許文献2】特開2005−218401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の魚釣用リールでは、フレームに対して側板をネジにより締め付ける前において、側板端面部とフレーム端面部とを平行状態に配置する必要がある。このため、側板のデザインや、側板とフレームとの間の内部構造上の制約が多くなる。
すなわち、側板を回転させた上、螺合する方法は、側板を回転可能にする必要から、側板とフレームの突き合わせ部分を平行にする必要上、デザイン上の制約が大きい。特に、上面において、突き合わせ部があると、その隙間から水分や汚れが入り込み、突き合わせ部の下方の内部機構に悪影響を及ぼすことがある。
また、側板を回転させる際に移動してしまうため、側板の回転中心以外の部分には側板の外部に突出する機構を採用し難いという問題がある。
【0005】
したがって、回転螺合方式の保護カバー体ではデザイン上や保護カバー体の内部構造を配置する際の制約が大きくなっている。
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、着脱が容易であるのはもちろん、デザイン上や内部構造を配置する際の制約を緩和できる保護カバー体を有する魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る魚釣用リールは、リール本体の被保護部を保護する保護カバー体を着脱可能に有する。前記リール本体は、前記被保護部の縁部に設けられたリール本体側引掛部と、前記被保護部の縁部に設けられているとともに前記リール本体側引掛部に対して離れた位置に設けられたリール本体側ネジ部とを有し、前記保護カバー体は、前記被保護部を覆う形状を有するカバー体本体と、前記カバー体本体に設けられ前記リール本体側引掛部に着脱可能に引っ掛けられるカバー体側引掛部と、前記カバー体本体に設けられているとともに前記カバー体側引掛部に対して離れた位置に設けられ前記リール本体側ネジ部に着脱可能に螺合されるカバー体側ネジ部とを有し、前記リール本体側引掛部と前記カバー体側引掛部とを引っ掛け合ったときに前記リール本体側ネジ部に対して前記カバー体側ネジ部が対峙するとともに、前記カバー体側引掛部が前記リール本体側引掛部に対して可動して前記リール本体側ネジ部に対して前記カバー体側ネジ部が接離可能であり、前記リール本体側引掛部と前記カバー体側引掛部とを引っ掛け合った状態で前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合することによって、前記リール本体の前記被保護部に対して前記保護カバー体を装着するようにしたことを特徴とする。
また、前記リール本体は、釣糸をスプールに巻き取るハンドルが取り付けられた第1の側部と、前記ハンドルに対して反対側の第2の側部とを有するフレームを備え、前記第2の側部に前記保護カバー体が着脱可能であることが好適である。
また、前記保護カバー体が前記フレームの第2の側部に装着されたとき、前記リール本体側引掛部と前記リール本体側ネジ部との間、および、前記保護カバー体の前記カバー体側引掛部と前記カバー体側ネジ部との間には、前記スプールのフランジ部の少なくとも一部が配置されることが好適である。
また、前記リール本体側ネジ部および前記カバー体側ネジ部の一方は雄ネジ部であり、他方は雌ネジ部であり、前記雄ネジ部は、前記雌ネジ部に螺合するネジ軸部と、前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合する際に回転操作される頭部とを有し、前記雄ネジ部の前記ネジ軸部は前記雌ネジ部に向かって付勢されていることが好適である。
また、前記リール本体側ネジ部および前記カバー体側ネジ部の一方は雄ネジ部であり、他方は雌ネジ部であり、前記雄ネジ部は、前記雌ネジ部に螺合するネジ軸部と、前記ネジ軸部とは別体で前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合する際に回転操作される頭部とを有し、前記ネジ軸部は、前記頭部に対して前記ネジ軸部の軸方向に移動可能で、前記ネジ軸部を前記頭部に対して前記雌ネジ部に向かって付勢する付勢手段と、前記頭部が回転操作されるのにしたがって一緒に回転する前記頭部に対する回り止め手段とを有することが好適である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、保護カバー体をリール本体の被保護部に装着する際に、保護カバー体およびリール本体がそれぞれ引掛部とネジ部とを有するので、リール本体の被保護部に内部構造を配置しても、保護カバー体を種々の形状に形成して、被保護部を保護することができる。このため、被保護部に対する保護カバー体の着脱が容易であるのはもちろん、保護カバー体を種々の形状にすることによってデザイン上の制約がなくなるとともに、被保護部と保護カバー体との間に種々の形状の内部構造を配置することができる。
第2の側部に保護カバー体を着脱可能とすることによって、例えば両軸受型魚釣用リールのフレームやフレームに装着する種々の形状の内部構造を保護することができる。
引掛部とネジ部との間の領域にスプールのフランジ部の少なくとも一部が配設されることによって、引掛部とネジ部との間を極力離すことができる。このため、引掛部とネジ部とが隣接した状態よりも保護カバー体の被保護部への固定を安定させることができる。
また、雄ネジのネジ軸部を雌ネジ部に向かって付勢することにより、雄ネジのネジ軸部を押圧したときに、雌ネジ部の軸方向に雄ネジのネジ軸部の軸方向を近づける(例えば一致させる)ことができる。
【0008】
また、雄ネジ部がネジ軸部と頭部とを別体に形成し、回り止め手段により頭部と共にネジ軸部を回転しかつネジ軸部の軸方向に移動できることにより、頭部を露出させるための大きな開口を必要とせず、この開口を介するゴミや水分等の異物の進入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る、釣竿に魚釣用両軸受型手巻きリールを取り付けた釣り具を保持した状態を示す概略図。
【図2】第1実施形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、図1中のII−II方向から見た概略図。
【図3】第1実施形態に係る魚釣用リールを示し、図2中のIII−III線に沿う概略的な部分横断面図。
【図4】第1実施形態に係る魚釣用リールの左フレームから左側板を取り外した状態を示す概略図。
【図5】第1実施形態に係る魚釣用リールの左フレームから取り外した左側板を示し、(A)は表面側を示す概略図、(B)は裏面側を示す概略図。
【図6】第1実施形態に係る魚釣用リールの図3中の矢印VIで示す部分の概略的な拡大図。
【図7】第1実施形態に係る魚釣用リールの左側板から着脱ネジを分解した状態を示す概略的な斜視図。
【図8】第1実施形態に係る魚釣用リールの左側板の着脱ネジを示し、(A)は図5(B)中の8A−8A線に沿う概略的な断面図、(B)は図8(A)中の8B−8B線に沿う概略的な断面図、(C)は図8(B)中の8C−8C線に沿う概略的な断面図。
【図9】第1実施形態に係る魚釣用リールの図2中のIX−IX線に沿う概略的な断面図。
【図10】第1実施形態に係る魚釣用リールの図2中のX−X線に沿う概略的な断面図を示し、(A)はサムレストの左側縁部に左側板の上側縁部の突起部を引っ掛けた状態を示す概略図、(B)はサムレストの左側縁部に左側板の上側縁部の突起部を引っ掛けた状態で着脱ネジのネジ部を左フレームのネジ穴に突き当てた状態を示す概略図、(C)は左フレームに対して左側板を押圧して、着脱ネジの軸部を軸方向に移動させて着脱ネジの軸部とネジ穴の軸方向を一致させた状態を示す概略図、(D)は着脱ネジの頭部を回転させてネジ部をネジ穴に螺合させた状態を示す概略図。
【図11】第2実施形態に係る魚釣用両軸受型手巻きリールを示す概略図。
【図12】第2実施形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、図11中のXII−XII方向から見た概略図。
【図13】第2実施形態に係る魚釣用リールの左フレームから左側板を取り外した状態を示す概略図。
【図14】第2実施形態に係る魚釣用リールの左フレームから取り外した左側板を示し、(A)は表面側を示す概略図、(B)は裏面側を示す概略図。
【図15】第2実施形態に係る魚釣用リールの左側板から着脱ネジを分解した状態を示す概略的な斜視図。
【図16】第2実施形態に係る魚釣用リールの左側板の着脱ネジを示し、(A)は図14(B)中の16A−16A線に沿う概略的な断面図、(B)は図16(A)中の16B−16B線に沿う概略的な断面図。
【図17】第2実施形態に係る魚釣用リールの図12中のXVII−XVII線に沿う概略的な断面図を示し、(A)はサムレストの左側縁部に左側板の上側縁部の突起部を引っ掛けた状態を示す概略図、(B)はサムレストの左側縁部に左側板の上側縁部の突起部を引っ掛けた状態で着脱ネジのネジ部を左フレームのネジ穴に突き当てた状態を示す概略図、(C)は左フレームに対して左側板を押圧して、着脱ネジの軸部を軸方向に移動させて着脱ネジの軸部とネジ穴の軸方向を一致させた状態を示す概略図、(D)は着脱ネジの頭部を回転させてネジ部をネジ穴に螺合させた状態を示す概略図。
【図18】第3実施形態に係る魚釣用スピニングリールのリール本体に保護カバー体を着脱可能とすることを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
図1から図10は、本発明の好ましい第1実施形態による魚釣用リール10を示す。
図1から図3に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。図2および図3に示すように、ここでは釣り人が左手LHで釣竿8および魚釣用リール10を保持し、図示しない右手で魚釣用リール10の右側部のハンドル30を回すように形成されている場合について説明する。もちろん、左手LHでハンドル30を操作するようにハンドル30の配置が逆(左側部)であっても良い。
【0011】
図1に示すように、魚釣用リール10のリール本体12は、一体成形、或いは、図示しない連結部材等で一体化される左右一対のフレーム14a,14bのそれぞれの外側に、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせて側板16a,16bを取り付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、フレーム14a,14b間に配設されたリール取付脚部18を介して釣竿8に固定される。
なお、リール本体12の左右一対のフレーム14a,14bの上側であって、側板16a,16bの間にはサムレスト19が、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせて取り付けられている。この実施形態では、サムレスト19の外観は後述するスプール20に巻回された釣糸に親指F1をかけてサミング操作を行うためにリール10の後側が開いた略U字状である。
【0012】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右のフレーム14a,14b間に回転自在に支持され、右側板16aは、スプール20を回転駆動させる巻取り駆動部22を支持し、この右側板16aと右フレーム(第1の側部)14aとの間に形成された空間内に、この巻取り駆動部22を形成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。なお、左右は図1中における上下方向を示し、前後は図1中の左右方向に相当する。
【0013】
このリール本体12のフレーム14a,14b間には、スプール軸26の両端部が、例えばボール軸受28a,28bを介して回転自在に支持されている。スプール軸26は、第1軸部26aと、第2軸部26bとを同軸上に備え、第2軸部26bはハンドル30側に配設され、第1軸部26aはハンドル30とは反対側(反ハンドル側)に配設されている。そして、スプール軸26の第1軸部26aはスプール20に装着されスプール20と一体的に回転する。スプール軸26の第2軸部26bは、ハンドル30の回転を軸受32a,32bに支持されたハンドル軸34、ハンドル軸34に回り止め嵌合されたドラグ機構44を経由してドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38が同軸上に配置されている。そして、スプール軸26の第1軸部26aと第2軸部26bとの端部(リール本体12の中央側端部)同士を突き合わせた場合、一緒に回転する。
なお、ハンドル軸34には、公知のスタードラグ(ドラグ調整ノブ)42が配設され、ドライブギヤ36には公知のドラグ機構44が配設されているが、これらについては説明を省略する。
【0014】
ピニオンギヤ38は、公知のクラッチ(伝達機構)48を介して、側板16a,16b間に配置したクラッチレバー50と連動しており、このクラッチレバー50を下方に押圧作動することにより、クラッチ48がOFFとなり軸方向に沿って図3中の右側に移動することができる。例えば、クラッチレバー50の操作により、スプール軸26の第2軸部26bの右端部にピニオンギヤ38が嵌合した位置すなわち巻取状態と、スプール軸26の第2軸部26bの右端部からピニオンギヤ38を分離した状態(スプールフリー状態)とすることができる。又、ピニオンギヤ38が分離した状態で、ハンドル30を回転させると、図示しない公知の復帰機構を介して、ピニオンギヤ38がスプール軸26の第2軸部26bの右端部に嵌合して元の状態(巻取状態)に復帰し、スプール軸26の第1軸部26aと一体化されているスプール20が、ピニオンギヤ38と共に一体的に回転する。
【0015】
このスプール20は、軸方向の両側に形成された一対のフランジ部20a間に位置する円筒状の胴部20bを有し、スプール軸26の第1軸部26aに一体的に装着され、一対のフランジ部20aと釣糸巻回胴部20bの外周面とで形成される環状溝内に釣糸(図示しない)が巻回される。この環状溝の底部を形成する胴部20b上に釣糸(図示しない)を均等に巻回するため、ハンドル30の釣糸巻取り回転に連動して、一対の左右のフレーム14a,14b間を往復動する公知のレベルワインド機構52が配置されている。このレベルワインド機構52は、右側板16a内の駆動部と連動する係合子を左右に移動することにより、ハンドル30の回転操作にともなって、釣糸をスプール20の胴部20b上に均等に巻き取ることができる。
なお、フレーム14a,14b間には、レベルワインド機構52を覆い、釣糸が絡みつくのを防止する前カバー54が固定されている。
【0016】
スプール20の一対のフランジ部20aのうち、一方のフランジ部20aには、後述するバックラッシュ防止機構(内部機構)70により制動力が付与される円筒状の導電体(被制動部)56が固定されている。導電体56は、スプール20と一体回転する。
導電体56は、スプール軸26の第1軸部26aに強固に固定されるボス部56aと、このボス部56aから半径方向外方に延びるディスク状部56bと、このディスク状部56bの外周縁部からハンドル30と反対側に延びる円筒状部56cとを有し、例えばアルミニウムあるいは銅等の非磁性の導電性材料で形成されている。
この導電体56は、円筒状部56cがこのような非磁性の導電性材料で形成されるものであれば、その全体を同一材料で形成することは必ずしも必要なく、例えばボス部56aおよびディスク状部56bをより軽量の樹脂材料等で形成してもよい。
【0017】
図4に示す左フレーム(第2の側部)14bに対しては図5に示す左側板16bを着脱可能であり、左フレーム14bに左側板16bを取り付けた状態を図1および図2に示す。
図4に示すように、左フレーム14bは、平面部62と、この平面部62の縁部から外側(反ハンドル側)に延出された下側フランジ部64とを有する。下側フランジ部64は左フレーム14bの下側から後側にかけて連続的に形成されている。平面部62は後側が略円形状で、前側に向かうにつれて次第に細く、上下方向が幅狭になっている。この形状は、サムレスト19の上側に左手LHの親指F1を載せ、左フレーム14bの下側フランジ部64を左手LHの人差し指で保持したときに、魚釣用リール10と親指F1との間に隙間なく保持できる形状である。
【0018】
サムレスト19は、左フレーム14bの平面部62に対して例えばネジ65で例えば2箇所に固定されている。1つ目の固定箇所はサムレスト19のうち左フレーム14bに対してハンドル30と反対側に突出した左側縁部19aの下側である。2つ目の固定箇所は、サムレスト19の左側縁部19aの後側であって、下側フランジ部64の後側の端部の近傍である。なお、サムレスト19の後端部の外表面は面取りされ、下側フランジ部64の後側の端部との間の隙間が小さく、下側フランジ部64の後側の端部と、左フレーム14bの下側フランジ部64の後端部との間の境界部分は、指等に対する引っ掛かりなく滑らかに処理されている。
【0019】
図3、図4および図6に示すように、左フレーム14bの平面部62には、その構造については簡単に説明するバックラッシュ防止機構70が配置されている。図6に示すように、バックラッシュ防止機構70は、スプール軸26と同軸上に中心軸を有しボール軸受28bの外側に同心状に配設されたそれぞれリング状の内側磁石70aおよび外側磁石70bを有する。図4に示すように、バックラッシュ防止機構70は、左フレーム14bの平面部62に設けられた複数の保持部63によって左フレーム14bの平面部62に係合保持されている。そして、バックラッシュ防止機構70は、左フレーム14bの平面部62及び下側フランジ部64と、サムレスト19の左側縁部19aとによって形成された空間に配置されている。なお、バックラッシュ防止機構70は左フレーム14bの平面部62に対して着脱可能であり、バックラッシュ防止機構70を取り外した状態でスプール20を着脱可能である。
【0020】
この実施形態に係るバックラッシュ防止機構70は、共に回動可能な第1調整部72と第2調整部74とを有する。
図6に示す第1調整部72は、スプール軸26と同軸上に中心軸を有し、図2に示すレバー状の操作部72aを介してその中心軸回りに回動可能である。第1調整部72は、内側磁石70aおよび外側磁石70bを一体的にスプール軸26の軸方向に沿って移動させることができる。すなわち、スプール20の導電体56に対して磁石70a,70bを接離させるので、磁石70a,70b間の間隙76に対して導電体56の円筒状部56cが入る量を調整することができる。このため、磁石70a,70bは、スプール20の導電体56を磁石70a,70b間の間隙76に対して配設量が大きくした状態(磁界の影響を強く受ける位置)と、小さくした状態(磁界の影響を配設量を大きくした状態よりも受け難い位置)との間を移動可能である。したがって、磁石70a,70bをスプール軸26の軸方向に移動させたときには、磁石70a,70bを周方向に移動させた場合よりも磁界が大きく変化する。このため、第1調整部72が操作されると、制動力の範囲が大きく調整される。
第2調整部74は、第1調整部72とは離れた位置にあり、スプール軸26の中心軸とは別の軸回りに回動可能である。図4に示すように、本実施形態では、第2調整部74は第1調整部72よりも前側に配設される。図6に示すように、第2調整部74は、内側磁石70aを外側磁石70bに対して周方向に移動させることができる。このとき、磁石70a,70bの配置が変化するので、磁石70a,70b間の磁界が変化する。このため、第2調整部74は、導電体56に対して周方向に磁石70a,70bを移動することによって制動力を微調整することができる。
なお、バックラッシュ防止機構70は必ずしも必要というものではなく、単にスプール軸26を保持するボール軸受28bが配設されている構造であっても良い。
【0021】
図4に示すように、左フレーム14bの平面部62には、左側板16bの後述する着脱ネジ88が螺合するネジ穴(リール本体側ネジ部)62aが形成されている。このネジ穴62aは左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aに近接した位置に形成されている。また、左フレーム14bの平面部62には、左側板16bの後述するピン90が嵌合する孔部(リール本体側位置決め補助部)62bが形成されている。この孔部62bは左フレーム14bの下側フランジ部64の下側後方縁部64bに近接した位置に形成されている。
【0022】
なお、図4中、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aは左上がりの傾斜に形成され、下側後方縁部64bは右上がりの傾斜に形成されている。すなわち、図4中、下側前方縁部64aは、釣竿8が装着されるリール取付脚部18に対して前方側に向かうにつれて離れていくようになっている。また、下側後方縁部64bは、リール取付脚部18に対して後方側に向かうにつれて離れていくようになっている。
【0023】
図5(A)および図5(B)に示すように、左側板16bは、左手LHの掌を受ける外面部82と、上側縁部84と、下側縁部86とを一体的に有する。
外面部82は、左手LHの掌を受けるように膨出した表面部82aと、バックラッシュ防止機構70を収容するとともに平面部62に対向する凹状の裏面部82bとを有する。上側縁部84および下側縁部86は外面部82の表面部82aおよび裏面部82bに滑らかに連続して形成されている。外面部82には、さらに、左フレーム14bに左側板16bを装着した状態で第2調整部74を操作可能な開口部83を有する。そして、外面部82は、上側縁部84および下側縁部86とともにバックラッシュ防止機構70および左フレーム14bを保護する保護カバー体本体を形成する。
【0024】
上側縁部84(図10参照)は、この実施形態ではサムレスト19の左側縁部(リール本体側引掛部)19aに引っ掛けられて嵌合するための嵌合部(カバー体側引掛部)として形成され、例えばその後方側で外方に向かって突出する突起部(爪部)84aを有する。そして、上側縁部84はその突起部84aによってサムレスト19の左側縁部19aの下側の所定の位置に嵌合される。すなわち、突起部84aは、リール本体12に対して左側板16bを引っ掛ける引掛部(カバー体側引掛部)を形成する。左側板16bの上側縁部84とリール本体12のサムレスト19の左側縁部19aとが嵌合された場合、サムレスト19の左側縁部19aと左側板16bの外面部82との間の隙間は小さく、サムレスト19の左側縁部19aと左側板16bの外面部82との間の境界部分は、指等に対する引っ掛かりなく滑らかに処理されている。
【0025】
図5、図7および図8に示すように、下側縁部86のうちスプール軸26よりも前側部86aには、着脱ネジ(カバー体側ネジ部)88が装着され、後側部86bには、図5および図9に示すように、左フレーム14bの平面部62の孔部62bに嵌合されるピン(カバー体側位置決め補助部)90が配設されている。前側部86aには、着脱ネジ88を操作するための凹部86cが開口し、前側部86aと後側部86bとの間には、第1調整部72の操作部72a(図2)の先端を外部に露出する凹部86dが開口している。
【0026】
ピン90は、外面部82の裏面部82b側に、外面部82の表面部82aに対して離れる側に突出形成されている。そして、図5および図9に示すピン90によって、サムレスト19の左側縁部19aに嵌合する上側縁部84の突起部84aとともに左フレーム14bに対して左側板16bを位置決めすることができる。
なお、図9に示すように、ピン90は円筒状に形成された部分を有し、すなわち、空間90aを有するので、ピン90はピン90の中心軸方向に向かって弾性変形により伸縮できる。
【0027】
図5および図7に示すように、着脱ネジ88は、前側部86aの凹部86cを通して頭部(固定操作部)88aの一部が回転操作可能となっている。なお、頭部88aの一部は、前側部86aの外表面に対して突出していても、前側部86aの外表面に対して引き込まれた状態にあっても、親指F1の指腹で操作可能であれば良い。そして、図8(A)および図8(B)に示す着脱ネジ88の後述する軸部88bのネジ部(雄ネジ部)94は外面部82に対して離れた側に突出し、左フレーム14bのネジ穴(雌ネジ部)62aに螺合可能である。着脱ネジ88の軸部88bのネジ部94および左フレーム14bのネジ穴62aは左ネジとして形成されている。これは、釣竿8やリール10の操作の際に指が当たっても着脱ネジ88が締まる方向に力を加えるようにするためである。
【0028】
図7および図8(A)に示すように、着脱ネジ88は、頭部88aと、この頭部88aに対して別体に形成されたネジ軸部である軸部88bと、コイルバネ88cとを備え、プレート106および固定ネジ108により左側板16bに対して脱落を防止した状態に配置されている。
図8(B)に示す着脱ネジ88の軸部88bは、頭部88aに対して回り止めされている(図8(C)参照)とともにコイルバネ88cを左側板16bの後述する支持部102との間に受けるフランジ部92と、左フレーム14bのネジ穴62aに螺合するネジ部94と、支持部102の丸穴部102aに配設される軸支部96とを有する。ネジ部94は、フランジ部92から外面部82に対して離れる方向に延出されている。軸支部96はフランジ部92から外面部82に近接する方向に延出されている。そして、コイルバネ88cにより、着脱ネジ88の軸部88bは、ネジ部94を外面部82から離れる方向に付勢されている。すなわち、ネジ部94を押圧すると、軸支部96が丸穴部102aの内部に入り込み、頭部88aに対する突出量が小さくなる。
【0029】
図5(B)、図8(A)および図8(B)に示すように、左側板16bの下側縁部86の前側部86aの凹部86cに隣接した位置であって、外面部82の裏面部82b側には、着脱ネジ88を支持する筒状の支持部102が形成されている。支持部102には、着脱ネジ88の頭部88aから図8(A)および図8(B)中の下側(外面部82側)に突出する軸部88bの軸支部96を回転可能に支持する丸穴部102aが形成されている。図5(B)および図8(A)に示すように、支持部102に隣接する位置には、1対のネジ穴104が形成されている。そして、着脱ネジ88の軸部88bを受け入れる凹状部106aを有するプレート106で、着脱ネジ88の頭部88aを回転可能に押さえつつ、プレート106を固定ネジ108で固定することにより、着脱ネジ88の頭部88aが支持部102とプレート106との間から脱落を防止した状態で回転操作可能に配設されている。
【0030】
なお、図7および図8(A)に示すように、着脱ネジ88の頭部88aの外観は、通常のネジの頭部やナットのように外周部に刻み目状の凹凸が滑り止めとして形成されている。図8(C)に示すように、頭部88aの内周面は、対向する1対の頭部側平面(回り止め手段)112を有する。
着脱ネジ88の軸部88bのフランジ部92には、頭部88aの頭部側平面112に当接される1対の軸部側平面(回り止め手段)114を有する。これら平面112,114同士が軸方向に摺動可能なように突き合わせられた状態で頭部88aを回すと、軸部88bも一緒に回転する。すなわち、これら平面112,114は、頭部88aと軸部88bとの間の回り止め手段を形成する。
【0031】
また、図2に示すように、左フレーム14bに対して左側板16bを取り付けた場合、左側板16bの上側縁部84の突起部84aと着脱ネジ88との間にバックラッシュ防止機構70の第1調整部が配設される。すなわち、左フレーム14bに対して左側板16bを取り付けた場合、上側縁部84の突起部84aと着脱ネジ88との間には、スプール20のフランジ部20aが配設される。このとき、特に、突起部84aと着脱ネジ88との間にはスプール軸26が配置される位置関係にあることが好適である。すなわち、突起部84aと着脱ネジ88とは、隣接した位置になく、離れた位置にあることが好適である。
【0032】
以下、図4に示すリール本体12の左フレーム14bに図5(A)および図5(B)に示す左側板16bを取り付ける取付方法について説明する。
まず、図10(A)に示すように、サムレスト19が固定された左側板16bの上側縁部84の突起部84aをサムレスト19の左側縁部19aの下側に配置する。このように、サムレスト19の左側縁部19aの下側に左側板16bの上側縁部84の突起部84aを引っ掛けた状態にすると、左側板16bは左フレーム14bに対してヒンジ状に開閉可能である。このとき、サムレスト19の左側縁部19aは、図4に示すように、左フレーム14bの上側で前後方向全体にわたって形成されているので、左側板16bの上側縁部84を点でなく線や面として受けることができる。具体的には、外面部82の表面部82aと上側縁部84との境界付近がサムレスト19の左側縁部19aに当接された状態となる。このため、左側板16bを左フレーム14bに対してヒンジ状に開閉する場合は安定した状態に開閉可能となる。
この状態で左側板16bの下側縁部86を左フレーム14bの下側フランジ部64に対して近接させると、左側板16bのピン90の先端側が左フレーム14bの孔部62bに嵌め込まれる。このとき、図10(B)に示すように、着脱ネジ88の軸部88bのネジ部94はネジ穴62aの入口開口の周縁部に接触あるいは対向する状態にある。すなわち、着脱ネジ88の軸部88bのネジ部94とネジ穴62aとが対峙する。しかし、この段階においては、着脱ネジ88の軸心とネジ穴62aの軸心とが大きくずれた状態にある。そして、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部86とは離れた状態にある。
【0033】
この状態で左フレーム14bに対して左側板16bを押し込むと、図10(C)に示すように、コイルバネ88cのバネ付勢力に抗して着脱ネジ88の軸部88bが外面部82の方向(図10(C)中の左方向)に移動する。このため、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部86とが近接し、最終的には当接する。このとき、左フレーム14bのネジ穴62aと着脱ネジ88の軸部88bとの軸方向は略一致した状態にある。また、図9に示すように、左側板16bのピン90が左フレーム14bの孔部62bに対して深く嵌め込まれた状態にある。このため、左フレーム14bに対する左側板16bの位置が規定される。
この状態で着脱ネジ88の頭部88aを後側(図2中の右側)に向かって回転(左回転)させると、図10(D)に示すように、左ネジの作用により着脱ネジ88のネジ部94がネジ穴62aに螺合されていく。このとき、図10(D)に示すように、サムレスト19の左側縁部19aに対して左側板16bの上側縁部84が嵌合し、図9に示すように、左側板16bに設けられたピン90が左フレーム14bの孔部62bに嵌合して左フレーム14bの下側フランジ部64の下側後方縁部64bが左側板16bの下側縁部86の後側部86bに当接し、図10(D)に示すように、左側板16bに設けられた着脱ネジ88のネジ部94が左フレーム14bのネジ穴62aに螺合し、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aが左側板16bの下側縁部86の前側部86aに当接した状態である。
【0034】
このように、左フレーム14bに対して左側板16b自体を回転させることなく装着することができる。
【0035】
そして、このような魚釣用リール10のリール取付脚部18を釣竿8に取り付けた状態で釣竿8およびリール10を握持保持する場合、左手LHの親指F1をサムレスト19の上側に配し、左手LHの掌の一部を左側板16bの外面部82の表面部82aに当てつつ人差し指から小指を釣竿8にかける。このとき、着脱ネジ88の頭部88aは左側板16bの下側縁部86の前側部86aに配設されているので、着脱ネジ88の頭部88aに指が当たらない。
【0036】
なお、左側板16bを左フレーム14bに対して取り外す際には、着脱ネジ88の頭部88aを前側(図2中の左側)に回転(右回転)させると、ネジ部94がネジ穴62aに深く螺合された状態から次第に浅くなり、左側板16bの下側縁部86が左フレーム14bの下側フランジ部64から離れていく。そして、サムレスト19の左側縁部19aに対する左側板16bの上側縁部84の突起部84aの嵌合を解除すると、左側板16bのピン90が左フレーム14bの孔部62bに嵌合された状態も解除される。着脱ネジ88の頭部88aを左フレーム14bから離隔する方向に引っ張ることで、左フレーム14bに対して容易に左側板16bを開くことができる。
このように、着脱ネジ88を左側板16bに設けることにより、着脱ネジ88の頭部88aを左フレーム14bに対して離隔する方向に引っ張ることで、左側板16bを左フレーム14bに対して容易に取り外すことができる。
【0037】
すなわち、本実施形態では、バックラッシュ防止機構(被保護部)70や左フレーム(被保護部)14bを左側板(保護カバー体)16bで保護する場合、リール本体12にサムレスト19の左側縁部(リール本体側引掛部)19aと、左側縁部19aに離れた位置のネジ穴(リール本体側ネジ部)62aとを有する。一方、左側板16bは、バックラッシュ防止機構70や左フレーム14bを覆う外面部(カバー体本体)82と、サムレスト19の左側縁部19aに着脱可能に引っ掛けられる突起部(カバー体側引掛部)84aを有する上側縁部(カバー体側引掛部)84と、左フレーム14bのネジ穴62aに着脱可能に螺合される着脱ネジ(カバー体側ネジ部)88とを有する。そして、左側板16bの突起部84aおよび上側縁部84とリール本体12のサムレスト19の左側縁部19aとを引っ掛け合った状態でネジ穴62aに着脱ネジ88を螺合することによって、簡単に左側板16bを左フレーム14bに装着することができる。
【0038】
このため、左側板16bで左フレーム14bやバックラッシュ防止機構70を保護することができるとともに、左側板16bを容易に着脱可能とすることができる。また、左側板16bの形状を左フレーム14bやバックラッシュ防止機構70の形状に合わせて適宜の形状とすることによって、被保護部である左フレーム14bやバックラッシュ防止機構70の形状や合わせ部の形状についても制約をなくすことができる。そして、本実施形態の左側板16bのように、魚釣用リール10の外観デザインの自由度を高くすることができる。
【0039】
なお、この実施形態では、円盤状でない左側板16bを円形状でない左フレーム14bに装着することについて説明したが、外観デザインが円盤状の左側板を円形状の左フレームに装着できるようにそれぞれに互いに対する引掛部およびネジ部を形成しても良い。
【0040】
また、左側板16bを左フレーム14bに装着したとき、突起部84aと着脱ネジ88との間にバックラッシュ防止機構70、スプール20のフランジ部20aやスプール軸26を配置することができる。左側板16bを左フレーム14bに対してこのように装着することによって、すなわち、突起部84aと着脱ネジ88の軸部88bとを遠い位置に配置することによって、突起部84aと着脱ネジ88とが隣接した位置にあるよりも左側板16bを左フレーム14bに対して安定的に装着することができる。このように突起部84aと着脱ネジ88の軸部88bとを遠い位置に配置することにより、突起部84aをサムレスト19の左側縁部19aに引っ掛けた状態で着脱ネジ88の軸部88bを左フレーム14bのネジ穴62aに突き合わせたときに、着脱ネジ88の軸部88bの軸方向をネジ穴62aの軸方向に近づける(極力一致させる)ようにすることができる。このため、ネジ穴62aおよび着脱ネジ88のネジ部94に大きな力が加えられることが防止され、左側板16bの左フレーム14bに対する着脱をし易くすることができる。すなわち、ネジ穴62aおよび着脱ネジ88にかける負荷を低減させて安定化させた状態で着脱することができる。この関係は、着脱ネジ88の軸部88bが左側板16bの外面部82に対して近接する方向(着脱ネジ88の軸部88bの軸方向)に移動しない場合に特に大きな効果を発揮する。また、このような左側板16bによって、バックラッシュ防止機構70、スプール20、スプール20のスプール軸26を受けるボール軸受28bを確実に保護することができる。
【0041】
一方、本実施形態で説明したように、軸部88bがコイルバネ88cのバネ付勢力により軸方向に動くことによって、着脱ネジ88のネジ部94がネジ穴62aの軸方向に対して斜めに当接された状態を緩和することができる(軸方向を略一致させることができる)ので、着脱ネジ88とネジ穴62aとを螺合する際に、図10(C)および図10(D)に示す状態で左側板16bを左フレーム14bに容易に着脱することができる。また、軸方向を一致させるために、左側板16bや左フレーム14bに変形負荷が作用しなくなるため、耐久性が向上する。
【0042】
さらに、左側板16bにある着脱ネジ88は、その頭部88aの一部のみが左側板16bの下部の外周上に操作可能に露出された状態にあるので、実釣時や携帯時に魚釣用リール10を右手から左手に持ち替える際に着脱ネジ88の頭部88aが手に触れる機会があっても、左ネジとして形成され、これはリール本体12の後方側に向けて操作する方向が締め付け固定方向に設定されているので、左フレーム14bに対する左側板16bの不必要な緩みを防止できる。
軸部88bとは別体に形成された頭部88aは、前側部86aの凹部86c内で回転するだけで、平面112,114を介して軸部88bを回転し、ネジ部94をネジ穴62aに螺合しつつ軸部88bのみを軸方向に沿って移動することができる。頭部88aは軸部88bと共に軸方向移動する必要はない。凹部86cが外部に開口する面積は、指で操作するために必要な量だけ頭部88aを露出できるものであればよい。このため、凹部86cが外部に開口する面積を極めて小さくし、ゴミや水分等の異物の浸入を効果的に防止することができる。
【0043】
なお、この実施形態では、左側板16bに着脱ネジ88を配置した場合について説明したが、左フレーム14bの下側フランジ部64の特に下側前方縁部64aに着脱ネジ88を配置する構造であっても良い。この場合、ネジ部94は左側板16bの外面部82側に向かって延出されており、右ネジとして形成される。そして、着脱ネジ88の頭部88aは、左フレーム14bに左側板16bを装着したときに左フレーム14bの下側フランジ部64だけに配置されるように形成されていても良いし、左フレーム14bに加えて左側板16bの両方に配置されるように形成されていても良い。
また、ハンドル30をリール本体12の左側に設ける場合、着脱ネジ88は右フレーム14a又は右側板16aに設けられ、右フレーム14aの場合は左ネジとして、右側板16aの場合は右ネジとして形成される。
【0044】
また、左フレーム14bの孔部62bおよび左側板16bのピン90は、左フレーム14bに対して左側板16bを位置決めするのに設けられていることが好適であるが、補助的に設けられているもので、必ずしも必要というわけではない。
【0045】
次に、第2実施形態について図11から図17を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
この実施形態ではサムレスト19のうち、図11から図13に示すように左フレーム14bの平面部62に対して左側に突出した左側縁部19aが除去され、図14(A)および図14(B)に示すように左側板16bの上側縁部84の突起部84aが除去された例について説明する。
【0046】
図13に示すリール本体12のサムレスト19の左側端面は、左フレーム14bの下側フランジ部64の左側板側の端面64dと面一又は略面一の状態にあることが好ましい。ここでは、サムレスト19の左側端面は左フレーム14bの下側フランジ部64の左側板側の端面64dの一部であるとして説明する。
【0047】
左フレーム14bの平面部62のうち、上側かつ後側の部分には、左方向に突出した突起(リール本体側引掛部)132が形成されている。図17(A)から図17(D)に示すように、突起132は、左フレーム14bの平面部62に対して左方向に突出し、その先端が上側に屈曲している。なお、突起132は近接するサムレスト19の左縁部に略平行に幅を持った状態に形成されていることが好ましい。
図13に示すように、左フレーム14bの突起132とネジ穴62aとの間には、スプール20やバックラッシュ防止機構70が着脱可能に配設されている。
【0048】
図14(A)および図14(B)に示すように、この実施形態に係る左側板16bは、左手LHの掌を受ける外面部82と、上側縁部140と、下側縁部86とを一体的に有する。
図14(B)に示すように、左側板16bの下側縁部86は上側縁部140と左側板16bの前端側および後端側で環状に連続して形成されている。そして、左側板16bの上側縁部140および下側縁部86のうち、左フレーム14bおよびサムレスト19との当接面は平面状に形成されている。
また、上側縁部140には、下側縁部86に向かって突出する突出部140aが形成されている。突出部140aは、近接する上側縁部140の縁部に略平行に幅を持った状態に形成されていることが好ましい。突出部140aは、左側板16bが左フレーム14bに装着されたときに、突出部140aと後述する着脱ネジ150との間にバックラッシュ防止機構70やスプール20のフランジ部20aを横切るような位置関係であって、特に、スプール軸26を横切るような位置関係にあることが好ましい。
【0049】
そして、図15から図16(B)に示すように、着脱ネジ150は、軸部152と、軸部152に一体的に固定された頭部154と、軸部152の外周に配設されるコイルバネ156とを有する。軸部152は、一端に配設されたネジ部(雄ネジ部)152aと、他端に配設された軸支部152bとを有する。そして、軸部152の軸支部152bが左側板16bの支持部102の丸穴部102aに配設され、プレート106および固定ネジ108によって着脱ネジ150が押さえられている。そして、着脱ネジ150のネジ部152aは、外面部82に対して離れる方向に配置されている。
なお、頭部154のうち、支持部102に近接する側には、コイルバネ156の一端を支持する凹部154aが形成されている。このため、この着脱ネジ150は、第1実施形態の着脱ネジ88とは異なり、着脱ネジ150全体が軸部152の軸方向に移動する。
【0050】
この着脱ネジ150は、軸部152の軸支部152bが支持部102の丸穴部102aに回転可能に支持され、かつ、プレート106により左側板16bに対する脱落が防止されている。
なお、ネジ部152aは、第1実施形態のネジ部94と同様に左ネジとして形成されている。
【0051】
以下、図13に示すリール本体12の左フレーム14bに図14(A)および図14(B)に示す左側板16bを取り付ける取付方法について説明する。
まず、図17(A)に示すように、左側板16bの上側縁部140の突出部140aを左フレーム14bの突起132に引っ掛ける。このように、左側板16bの上側縁部140の突出部140aを左フレーム14bの突起132に引っ掛けた状態にすると、左フレーム14bの突起132を支点として左側板16bの下側縁部86が左フレーム14bの下側フランジ部64に対して接離可能なようにヒンジ状に開閉可能である。このとき、突起132および突出部140aは幅をもっているので、左側板16bの突出部140aが突起132の幅方向に移動することによる脱落が極力防止される。このため、左側板16bを左フレーム14bに対してヒンジ状に開閉する場合は安定した状態に開閉可能となる。
この状態で左側板16bの下側縁部86を左フレーム14bの下側フランジ部64に対して近接させると、左側板16bのピン90の先端側が左フレーム14bの孔部62bに嵌め込まれる。このとき、図17(B)に示すように、着脱ネジ150の軸部152のネジ部152aはネジ穴62aの入口にある。そして、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部86とは離れた状態にある。
【0052】
この状態で左フレーム14bに対して左側板16bを押し込むと、図17(C)に示すように、コイルバネ156のバネ付勢力に抗して着脱ネジ150の軸部152および頭部154がプレート106側から外面部82の方向(図17(C)中の左方向)に移動する。このため、左フレーム14bの下側フランジ部64と、左側板16bの下側縁部86とが近接し、最終的には当接する。このとき、左フレーム14bのネジ穴62aと着脱ネジ150の軸部152との軸方向は略一致した状態にある。また、図9に示すように、左側板16bのピン90が左フレーム14bの孔部62bに対して深く嵌め込まれた状態にある。このため、左フレーム14bに対する左側板16bの位置が規定される。
この状態で着脱ネジ150の頭部154を後側(図12中の右側)に向かって回転させると、図17(D)に示すように、左ネジの作用により着脱ネジ150のネジ部152aがネジ穴62aに螺合されていく。このとき、図9に示すように、左側板16bに設けられたピン90が左フレーム14bの孔部62bに嵌合して左フレーム14bの下側フランジ部64の下側後方縁部64bが左側板16bの下側縁部86の後側部86bに当接し、図17(D)に示すように、左側板16bに設けられた着脱ネジ150のネジ部152aが左フレーム14bのネジ穴62aに螺合し、左フレーム14bの下側フランジ部64の下側前方縁部64aが左側板16bの下側縁部86の前側部86aに当接した状態である。
【0053】
このように、左フレーム14bに対して左側板16b自体を回転させることなく装着することができる。
なお、本実施形態では左フレーム14bに突起132が形成されているものとして説明したが、サムレスト19の左端部に突起132が形成されていても良い。また、サムレスト19と左フレーム14bは一体に成形されても良い。また、突起132と突出部140aとが逆の配置であることも好ましい。すなわち、左側板16bの上側縁部140に突起132が形成され、左フレーム14bに突出部140aが形成されていることも好ましい。
この実施形態による効果は第1実施形態で説明した効果と同様の効果を有するので、ここでの説明は省略する。
なお、着脱ネジ150がリール本体12の左フレーム14bに配設され、左側板16bにネジ穴62aが形成されていることが好適なことはもちろんである。
【0054】
ここで、図17(A)に示す状態のように着脱ネジ150のネジ部152aとネジ穴62aとの間が螺合されていないときに、リール本体12の上下を逆にして左側板16bから手を離しても、左側板16bがリール本体12から脱落しないように引っ掛けることができるようにしても良い。すなわち、左側板16bの突出部140aやリール本体12の突起132には、両者が連結される状態が含まれるものである。このとき、突出部140aと突起132とは簡単に着脱可能なように接続されることが好ましい。
また、本実施形態の着脱ネジ150の代わりに、第1実施形態で説明した着脱ネジ88を用いることもできる。
【0055】
次に、第3の実施の形態について図18を用いて説明する。
本実施形態は、魚釣用リールとしてスピニングリール210を用いた例である。
【0056】
図18に示すように、スピニングリール210は、リール取付脚部212aを有するリール本体212と、ハンドル214と、駆動機構216と、ロータ218と、スプール220と、ベール222と、制動装置224とを有する。
ここで、各部(リール本体212、ハンドル214、駆動機構216、ロータ218、スプール220、ベール222、制動装置224)の構造については、例えば公知の構造を用いることができる。
【0057】
そして、リール本体212には、本実施形態ではオシレートギヤ方式の駆動機構216が配設され、リール本体212の後端には、ハンドル214のハンドル軸214aに同軸状に一体的に形成された小歯車(図示せず)に連動する連動歯車(オシレート歯車)232と図示しない偏芯突部が配設される案内溝234等が配設されている。
【0058】
そして、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域(被保護部)238には、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域238をカバーして保護する保護カバー体240が着脱可能に配設される。保護カバー体240のカバー体本体242は、本実施形態では例えば蓮華(中華料理などに使うさじ)のような形状を有する。
保護カバー体240は、カバー体本体242と、このカバー体本体242の一端部に設けられたカバー体側引掛部252と、カバー体本体242の他端部に設けられたカバー体側ネジ部246とを有する。
【0059】
一方、リール本体212の下側部にはリール本体側引掛部244が形成され、後端部にはリール本体側ネジ部254が形成されている。
カバー体側引掛部252は、リール本体212の下側部のリール本体側引掛部244に引っ掛けることができる。そして、カバー体側引掛部252をリール本体側引掛部244に引っ掛けた状態の場合、リール本体212に対して保護カバー体240をヒンジ状に動かすことができる。
ここで、図18に示す状態に魚釣用リール210を保持したときに、カバー体側ネジ部246とリール本体側ネジ部254との間が螺合されていない状態で、カバー体240から手を離してもカバー体240がリール本体212から脱落しないように引っ掛けることができる。すなわち、カバー体側引掛部252やリール本体側引掛部244の引掛部には、両者が連結される状態が含まれるものである。このとき、カバー体側引掛部252とリール本体側引掛部244とが簡単に着脱可能なように接続されていることが好ましい。
【0060】
カバー体側ネジ部246には、ここでは第1実施形態で説明したのと同様な着脱ネジ88が配設されている。リール本体側ネジ部254には第1実施形態で説明したネジ穴62aと同様なネジ穴が形成されている。このため、カバー体側引掛部252とリール本体側引掛部244とを引っ掛けた状態で、カバー体側ネジ部246の着脱ネジ88のネジ部94をリール本体側ネジ部254に当接させた状態でカバー体側ネジ部246の着脱ネジ88の頭部88aを回転させると、保護カバー体240をリール本体212に固定することができる。
【0061】
この実施形態によれば、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域238に保護カバー体240を着脱可能に固定することができる。このため、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域238を保護カバー体240で保護することができるとともに、保護カバー体240をリール本体212に対して容易に取り付け/取り外しすることが可能となる。また、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域238の形状に合わせて保護カバー体240を形成することにより、被保護部の形状や合わせ部の形状についての制約を無くすことができ、デザイン上、設計上の自由度を拡大させることができる。例えば、保護カバー体240の外周に装飾を施しても良いし、保護カバー体240の内部に内部機構を配置するようにしても良い。
【0062】
なお、着脱ネジ88のネジの頭部88aをリール本体212の後端部に設けても良いことはもちろんである。また、本実施形態では、リール本体212の下側部から後端部にかけての領域(被保護部)238に保護カバー体240を配置することについて説明したが、他の部分にこのような保護カバー体を配置できることはもちろんである。
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0063】
10…魚釣用リール、12…リール本体、14b…左フレーム、16b…左側板、19…サムレスト、19a…左側縁部、20…スプール、30…ハンドル、62…平面部、62a…ネジ穴、62b…孔部、64…下側フランジ部、64a…下側前方縁部、64b…下側後方縁部、70…バックラッシュ防止機構、72…第1調整部、74…第2調整部、76…間隙、82…外面部、82a…表面部、82b…裏面部、83…開口部、84…上側縁部、84a…突起部、86…下側縁部、86a…前側部、86b…後側部、86c…凹部、88…着脱ネジ、88a…頭部、88b…軸部、88c…コイルバネ、90…ピン、92…フランジ部、94…ネジ部、96…軸支部、102…支持部、102a…丸穴部、104…ネジ穴、106…プレート、106a…凹状部、108…固定ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の被保護部を保護する保護カバー体を着脱可能に有する魚釣用リールであって、
前記リール本体は、前記被保護部の縁部に設けられたリール本体側引掛部と、前記被保護部の縁部に設けられているとともに前記リール本体側引掛部に対して離れた位置に設けられたリール本体側ネジ部とを有し、
前記保護カバー体は、前記被保護部を覆う形状を有するカバー体本体と、前記カバー体本体に設けられ前記リール本体側引掛部に着脱可能に引っ掛けられるカバー体側引掛部と、前記カバー体本体に設けられているとともに前記カバー体側引掛部に対して離れた位置に設けられ前記リール本体側ネジ部に着脱可能に螺合されるカバー体側ネジ部とを有し、
前記リール本体側引掛部と前記カバー体側引掛部とを引っ掛け合ったときに前記リール本体側ネジ部に対して前記カバー体側ネジ部が対峙するとともに、前記カバー体側引掛部が前記リール本体側引掛部に対して可動して前記リール本体側ネジ部に対して前記カバー体側ネジ部が接離可能であり、
前記リール本体側引掛部と前記カバー体側引掛部とを引っ掛け合った状態で前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合することによって、前記リール本体の前記被保護部に対して前記保護カバー体を装着するようにしたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記リール本体は、釣糸をスプールに巻き取るハンドルが取り付けられた第1の側部と、前記ハンドルに対して反対側の第2の側部とを有するフレームを備え、
前記第2の側部に前記保護カバー体が着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記保護カバー体が前記フレームの第2の側部に装着されたとき、
前記リール本体側引掛部と前記リール本体側ネジ部との間、および、前記保護カバー体の前記カバー体側引掛部と前記カバー体側ネジ部との間には、前記スプールのフランジ部の少なくとも一部が配置されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記リール本体側ネジ部および前記カバー体側ネジ部の一方は雄ネジ部であり、他方は雌ネジ部であり、
前記雄ネジ部は、前記雌ネジ部に螺合するネジ軸部と、前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合する際に回転操作される頭部とを有し、
前記雄ネジ部の前記ネジ軸部は前記雌ネジ部に向かって付勢されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記リール本体側ネジ部および前記カバー体側ネジ部の一方は雄ネジ部であり、他方は雌ネジ部であり、
前記雄ネジ部は、前記雌ネジ部に螺合するネジ軸部と、前記ネジ軸部とは別体で前記リール本体側ネジ部と前記カバー体側ネジ部とを互いに対して螺合する際に回転操作される頭部とを有し、
前記ネジ軸部は、前記頭部に対して前記ネジ軸部の軸方向に移動可能で、前記ネジ軸部を前記頭部に対して前記雌ネジ部に向かって付勢する付勢手段と、前記頭部が回転操作されるのにしたがって一緒に回転する前記頭部に対する回り止め手段とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−50291(P2011−50291A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201047(P2009−201047)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】