魚釣用リール
【課題】回転体の材料選択の自由度を高く確保でき、省スペース化を図れるとともに、組み込み作業性に優れる軽量な磁気シール機構を備えた魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、ボールベアリング27を介して回転可能に支持される回転体23と、ボールベアリング27をシールする磁気シール機構35とを有する。 磁気シール機構35は、ボールベアリング27の磁性を有する内輪27aに並設される磁石40と、磁石40とボールベアリング27の外輪27bとの間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間(隙間)sをシールする磁性流体42とを有する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、ボールベアリング27を介して回転可能に支持される回転体23と、ボールベアリング27をシールする磁気シール機構35とを有する。 磁気シール機構35は、ボールベアリング27の磁性を有する内輪27aに並設される磁石40と、磁石40とボールベアリング27の外輪27bとの間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間(隙間)sをシールする磁性流体42とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を回転可能に支持する支持構造をシールするシール機構に特徴を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用リールは、ハンドルを回転操作することで、動力伝達機構を介して釣糸をスプールに巻回するよう構成されている。動力伝達機構には、ハンドルの回転操作に伴って回転駆動される駆動軸が設けられており、一般的に駆動軸は、リール本体に設けたボールベアリング(軸受け)を介して回転自在に支持されている。
【0003】
ところで、魚釣用リールを実際の釣場で使用する際には、リール本体に海水、砂、異物等が付着し易いという特有の問題があり、これらは、リール本体外部の隙間を介して内部に侵入し、前記駆動軸を支持するボールベアリングに付着・侵入してしまう。そして、ボールベアリングに海水、砂、異物等が付着したり侵入すると、ボールベアリングが腐食したり、回転性能が低下してしまう。
【0004】
このような問題の対策として、ボールベアリングに近接する駆動軸の外周に、弾性材からなるシール部材を接触させてボールベアリングの防水、防塵を図ることが一般的に行われているが、弾性材からなるシール部材の接触圧の影響で駆動軸の回転性能を低下させてしまう問題が指摘されている。
【0005】
そこで、駆動軸の回転性能を低下させることなく、ボールベアリングの防水・防塵を図る構成として、例えば、特許文献1には、磁気回路を構成する磁気保持リングとスプール軸(駆動軸)との間に磁性流体を保持してシールしたもの(磁気シール機構)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−319742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような磁気シール機構は、ハンドルの回転操作に伴って回転駆動される駆動軸に限らず、リールに設けられる軸受支持の全ての回転体に適用できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される磁気シール機構は、2枚の極板間に磁石が挟まれる構造であるため、すなわち、1つの磁石に対して極板を2枚必要とするため、全体の部品点数が多くなり、組み込み作業性が悪化して生産性が低下するという問題がある。また、磁石の厚み寸法と極板2枚の厚み寸法との和に相当する寸法の設置スペースが少なくとも軸受の片側で必要になるため、省スペース化を図ることが難しい。更に、極板が磁性体であることから、その比重が重く(鉄の比重に近い)、そのため、磁気シール機構全体の重量が重くなる。
【0009】
また、特許文献1に開示される磁気シール機構は、磁性流体が駆動軸等の回転体に直接に接触するように配置される構成のため、回転体を磁性材料によって形成する必要があり、したがって、回転体に必要な要求品質を満足させるための選択肢が制限される。また、回転体が磁性体であることから、リール全体の重量増大も招く。
【0010】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、回転体の材料選択の自由度を高く確保でき、省スペース化を図れるとともに、組み込み作業性に優れる軽量な磁気シール機構を備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ボールベアリングを介して回転可能に支持される回転体と、前記ボールベアリングをシールする磁気シール機構とを有する魚釣用リールにおいて、前記磁気シール機構は、前記ボールベアリングの磁性を有する内輪または外輪に並設される磁石と、該磁石と前記ボールベアリングの内輪または外輪との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間をシールする磁性流体とを有することを特徴とする。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、磁気シール機構が従来のように極板を有さず、磁石とボールベアリングの内輪または外輪との間で直接に磁性流体が保持されるため、全体の部品点数が少なくなり、組み込み作業性が良好となって生産性が向上する。また、極板を排除したことにより、極板の厚み寸法分だけ磁気シール機構の幅寸法を小さくできるため、省スペース化を図ることができる。また、比重の高い磁性体である極板を排除したことにより、磁気シール機構全体の軽量化を図ることもできる。更に、磁性流体が回転体に直接に接触するように配置されないため、回転体を磁性材料によって形成する必要がなく、したがって、回転体の材料選択の自由度を高く確保できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁石に対して前記ボールベアリングと反対側には1枚の極板が磁石に隣接して位置されることを特徴とする。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、磁石に隣接する極板の存在により、漏洩磁束を軽減することができ、シールが必要な部分における磁束密度を効果的に高めることが可能となる。また、この場合、極板を付加した分だけ、磁気シール機構全体の寸法および重量が増大するが、1つの磁石に対して1枚の極板しか必要ないため、1つの磁石に対して2枚の極板を必要とする従来の磁気シール機構の構造に比べれば、寸法および重量を小さく抑えることができる。更に、極板は、磁石に比べて高い寸法精度で加工できるため、特に径方向の寸法精度を高めて磁石と内輪または外輪との間の間隔を極板によって安定させることにより、組み込み精度を高めることができる(例えば、径方向のガタつきを防止できる)。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記磁石は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される非磁性体から成る支持体の端部に支持されることを特徴とする。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、支持体によって磁石を必要部位のみに集約して配置できるため、磁束密度の高い磁石の設置領域を必要最小限に抑えることができ、磁性流体の注入作業が容易となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記支持体は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接する基部と、該基部よりも厚さが薄い肉薄外周部とを有し、前記磁石が前記基部と前記肉薄外周部との間の段部に位置して支持されることを特徴とする。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、磁石が支持体の基部と肉薄外周部との間の段部に位置して支持されるため、磁石を安定して支持することができ、組み込み性も良好となる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、釣糸が巻回されるスプールを更に備え、前記回転体は、釣糸を前記スプールへと案内するためのラインローラであることを特徴とする。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、省スペースで軽量化が要求されるラインローラ部位での効果的なシールを実現できる。
【0021】
なお、上記構成の回転体としては、ハンドルを回転操作した際に駆動される部材、例えば、回転駆動軸(ハンドル軸(ドライブギア軸)、ピニオンギア軸、スプール軸、レベルワインド軸)、軸受を構成している部材の一部、或いは、前記したような駆動軸と共に一体回転する部材(駆動軸や摺動軸に内嵌、或いは外嵌されるカラー等)のみならず、ハンドルの回転操作とは無関係に回転する部材(ラインローラなど)も挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転体の材料選択の自由度を高く確保でき、省スペース化を図れるとともに、組み込み作業性に優れる軽量な磁気シール機構を備えた魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)の全体図である。
【図2】図1の魚釣用リールのラインローラ部分の要部断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】図3のA部拡大図である。
【図5】図7のB部拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図7】図6の要部拡大断面図である。
【図8】ラインローラ部分の組立方法を示す分解断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図12】図11の要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図14】図13の要部拡大断面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図16】図15の要部拡大断面図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る魚釣用リール(両軸受型リール)の全体図である。
【図18】図17の魚釣用リールのレベルワインド機構部の要部断面図である。
【図19】(a)は図18のC部の拡大断面図、(b)は図18のD部の拡大断面図である。
【図20】図19の(a)の部位の変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1〜図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用リールは、スピニングリールであり、リール本体1を有する。リール本体1内には、ハンドル3の回転操作によって回転駆動する駆動歯車(図示しない)が設けられており、この駆動歯車には、ピニオン(図示しない;駆動軸)が噛合している。ピニオン内には、スプール軸(図示しない)が軸方向に挿通されており、このスプール軸の先端には、釣糸が巻回されるスプール5が回転可能に取り付けられている。この場合、スプール軸(スプール)は、駆動歯車に係合するオシレーティング機構(図示しない)を介して、駆動歯車の回転によって前後動するように構成されている。
【0025】
また、ピニオンの先端には、このピニオンと一体的に回転するロータ7が取り付けられており、このロータ7には、一対の支持アーム9が設けられている。これらの支持アーム9には、夫々、支持部材11を介して、ベール13が釣糸放出状態と釣糸巻回状態とに回動可能に支持されている。そして、一方の支持部材11とベール13の端部との間には、釣糸をスプール5へと案内するための後述する釣糸案内装置15が介装されている。
【0026】
このような構成において、ハンドル3を回転操作すると、その回転運動は、駆動歯車を介してピニオンに伝達され、このピニオンを介してロータ7を回転させると共に、オシレーティング機構を介してスプール軸に伝達され、スプール5を前後動させる。これにより、釣糸は、釣糸案内装置15を介してスプール5に片寄ること無く均等に巻回される。
【0027】
図2および図3に示されるように、釣糸案内装置15は、一方の支持部材11にネジ19によって締結されており、このネジ19が螺入されるように軸方向に延出する支持部17が形成されたラインスライダ21を有している。なお、支持部17は、図示のように、ラインスライダ21に一体形成されていても良いし、支持部材11側に一体形成されていても良い。
【0028】
ラインスライダ21にはベール13の一方の基端部が接続されており、釣糸巻取開始時にベール13を釣糸巻回状態に回動させると、釣糸が、ベール13からラインスライダ21を介して、釣糸案内装置15の一構成部材であるラインローラ(回転体)23に案内されるようになっている。
【0029】
ラインローラ23は、2つの環状のボールベアリング25,27を介して支持部17に回転可能に支持されている。この場合、ラインローラ23は、中空の略筒体形状を成しており、その外周面は平滑化されている。これにより、釣糸巻取時にベール13からラインスライダ21を介して案内された釣糸は、ラインローラ23の外周面を滑らかに経由しながらスプール5に巻回される。なお、ラインローラ23の外周形状については、特に限定されることはない。
【0030】
2つのボールベアリング25,27は、ラインローラ23の内周面と支持部17の外周面との間に介在されており、軸方向(ラインローラ23の回転軸Aに沿った方向)に互いに離間して並列配置されている。また、ボールベアリング25,27は、支持部17の外周に回り止め嵌合される内輪25a,27aと、内輪25a,27aの外側に配される外輪25b,27bと、内輪25a,27aと外輪25b,27bとの間で転動可能に保持される複数の転がり部材(コロ)25c,27cとを備えており、隣接して設置される後述の磁気シール機構31,35によってシールされた状態となっている。
【0031】
これら2つのボールベアリング25,27の対向端(内側端)は、共に、ラインローラ23の内周面に突出形成された係止部29の両端面に当て付けられている。そして、ボールベアリング25の外側端は、第1の磁気シール機構材31およびOリング32を介して、支持部17に形成された係止部33に当て付けられており、一方、ボールベアリング27の外側端は、第2の磁気シール機構35およびOリング36を介して、支持部材11に形成されて支持部17の端部を覆う係止部37に当て付けられている。
【0032】
つまり、2つのボールベアリング25,27は、各係止部29,33,37によって軸方向への移動が規制された状態で維持されている。そして、第1および第2の磁気シール機構31,35は、ボールベアリング25,27の内部を外部に対して磁気的にシールするとともに、Oリング32,36は、支持部17とボールベアリング25,27との間または支持部17と支持部材11との間をシールするようになっている。
【0033】
次に、釣糸案内装置15に配される磁気シール機構31,35について説明する。
図3に明確に示されるように、磁気シール機構31(35)は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に密に接触した状態で並設される(支持部17上の外周に嵌着される)環状板の形態を成す磁石40を有する。この場合、磁石40は、図4に示されるように、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部40aとボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部40bとから成っており、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも小さく設定されている。したがって、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間には隙間sが形成される。また、この場合、ボールベアリング25(27)の少なくとも外輪25b(27b)は磁性を有しており(磁性体から成っており)、そのため、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間には、図4に矢印(磁力線の向き)で示されるような磁気回路が形成される。そして、この磁気回路が形成される隙間sには、磁性流体42が注油によって保持されている。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封してボールベアリング25(27)の内部をシールする。
【0034】
なお、磁性体としての外輪25b(27b)は、鉄系の材料、例えば、鋼材、SUS430、SUS440C、SUS630等によって形成される。また、磁性流体42は、例えばFe3O4のような磁性微粒子を、界面活性剤およびベースオイルに分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体42は、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間に形成される磁気回路によって隙間s内に安定して保持され、ボールベアリング25(27)内を外部に対して確実にシールする。
【0035】
なお、本実施形態では、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)も磁性体から成っているのが好ましく、その場合には、磁石40と内輪25a(27a)とが磁気的に結合される。また、変形例として、磁石40は、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)に密に接触した状態で並設されるとともに、ボールベアリング25(27)の磁性体としての内輪25a(27a)との間に形成される磁気回路によって磁性流体42を保持するようになっていてもよい。しかしながら、この場合には、磁石40が回転体としてのラインローラ23と一体で回転して、磁性流体42に大きな遠心力が作用するため、図示のように磁石40を固定側である内輪25a(27a)に隣接して位置させることが好ましい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、磁気シール機構31,35が従来のように極板を有さず、磁石40とボールベアリングの外輪25b,27b(または、内輪25a,27a)との間で直接に磁性流体42が保持されるため、全体の部品点数が少なくなり、組み込み作業性が良好となって生産性が向上する。また、極板を排除したことにより、極板の厚み寸法分だけ磁気シール機構31,35の幅寸法を小さくできるため、省スペース化を図ることができる。また、比重の高い磁性体である極板を排除したことにより、磁気シール機構31,35全体の軽量化を図ることもできる。更に、磁性流体42が回転体としてのラインローラ23に直接に接触するように配置されないため、ラインローラ23を磁性材料によって形成する必要がなく、したがって、ラインローラ23の材料選択の自由度を高く確保できる。なお、本実施形態では、磁性流体42の注油量を増大させてOリング32,36が位置する領域にわたって磁性流体42を保持させれば、Oリング32,36を省くこともできる。
【0037】
図5〜図7は本発明の第2の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、ラインローラ23と各ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に樹脂製の環状カラー52A,52Bが介挿されており、環状カラー52a,52bの互いに対向する内端部は、径方向内側に屈曲して互いに当接することにより前述した係止部29を形成している。また、環状カラー52A,52Bの外端部は径方向外側に屈曲してラインローラ23の側端面と対向しており、このラインローラ23の側端面と環状カラー52A,52Bの屈曲外端部との間にはゴムワッシャ等から成るシール材53が介挿されている。このシール材53は、ラインローラ23と環状カラー52A,52Bとの間の隙間から係止部29を形成する環状カラー52A,52Bの屈曲内端部間の隙間を通じてボールベアリング25,27間の空間内に水などの異物が侵入するのを防止する役目を果たす。第1の実施形態の構成に比べ、ボールベアリングの外輪と対向する面積が増すため、磁力の強い部分が増え、水や異物に対するシール力が更に強くなる。また、本実施形態では、支持部17とボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)との間に管状体54も介挿されている。
【0038】
また、本実施形態の磁気シール機構31,35は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に並設される環状板の形態を成す磁石40(第1の実施形態と同様、N極に帯磁された第1の磁極部40aと極に帯磁された第2の磁極部40bとから成る)を有するが、磁石40と内輪25a(27a)との間に好ましくは非磁性体から成るワッシャ50が介挿されている。すなわち、磁石40が内輪25a(27a)と接触していない。また、磁石40は、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されている。したがって、この形態では、磁石40の外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路(図5には、磁力線が矢印で示されている)を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40の外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封すると同時に、磁石40の外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間も密封し(したがって、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間も密封し)、ボールベアリング25(27)の内部を確実にシールする。
【0039】
このように、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、磁性流体42によって広い範囲にわたりシールすることができるため、有益である。また、本実施形態では、図8に示されるように、環状カラー52A,52bと管状体54との間にボールベアリング25,27および磁気シール機構31,35が保持されて成る磁性流体シール付き軸受アセンブリを構成できるとともに、このアセンブリにラインローラ23を装着して1つのユニットUを構成することが可能となるため、図8の分解状態から、ユニットUと、支持部17を有するラインスライダ21と、支持部材11とをネジ19により締結して組み付けることができ、組み込み性が良好となる。なお、第1の実施形態でも前述したように、磁石40を外輪側に設けても良いことは言うまでもない。
【0040】
図9および図10は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態は第1の実施形態の変形例であり、Oリング32,36と各磁気シール機構31,35の磁石40との間に磁性体から成る極体60が挟持されている。すなわち、磁石40に対してボールベアリング31,35と反対側には、1枚の極板60が磁石40に隣接して位置されている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0041】
このような構成では、磁石40に隣接する極板60の存在により、漏洩磁束を軽減することができ、シールが必要な部分における磁束密度を効果的に高めることが可能となる。したがって、第1の実施形態に比べて更に高いシール性が得られる。また、この場合、極板60を付加した分だけ、磁気シール機構31,35全体の寸法および重量が増大するが、1つの磁石40に対して1枚の極板60しか必要ないため、1つの磁石に対して2枚の極板を必要とする従来の磁気シール機構の構造に比べれば、寸法および重量を小さく抑えることができる。更に、極板60は、磁石40に比べて高い寸法精度で加工できるため、特に径方向の寸法精度を高めて磁石40と内輪25a,27aまたは外輪25b,27bとの間の間隔を極板60によって安定させることにより、組み込み精度を高めることができる(例えば、径方向のガタつきを防止できる)。
【0042】
図11および図12は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態は第2の実施形態の変形例であり、Oリング32,36と各磁気シール機構31,35の磁石40との間に磁性体から成る極体60が挟持されている。すなわち、磁石40に対してボールベアリング31,35と反対側には、1枚の極板60が磁石40に隣接して位置されている。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。したがって、このような構成でも第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0043】
図13および図14は本発明の第5の実施形態を示している。本実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、磁気シール機構を構成する磁石の設置形態のみが図2の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の磁石40Aは、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接して位置される(具体的には、Oリング32,36とワッシャ50との間に介挿される)非磁性体(SUS304や真鍮など)から成る環状板としての支持体62の端部(支持端部)に支持されている(磁石40Aはボールベアリングの内輪に並設されている)。この場合、支持体62は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される基部と、この基部の反対側に位置して磁石40Aを支持する支持端部とを有する。また、磁石40Aは、支持体62の外周縁に環状の形態を成して固着された状態となっており、第2の実施形態と同様に、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部とボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部とから成るとともに、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されている。したがって、この形態では、磁石40Aの外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40Aの外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40Aの外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。したがって、第2の実施形態と同様のシール効果が得られる。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。また、プラマグの射出成形で可能な形状であるため、生産性が高い。
【0044】
このように、本実施形態によれば、支持体62によって磁石40Aを必要部位のみに集約して配置できるため、磁束密度の高い磁石の設置領域を必要最小限に抑えることができ、磁性流体42の注入作業が容易となる。なお、第1の実施形態でも前述したように、磁石40A(したがって、支持体62)を外輪側(回転側)に設けても良いことは言うまでもない。
【0045】
図15および図16は本発明の第6の実施形態を示している。本実施形態も、第2の実施形態の変形例であり、磁気シール機構を構成する磁石の設置形態が図2の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の磁石40Bは、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接して位置される(具体的には、第5の実施形態のワッシャ50と支持体62とを一体化した形態の)非磁性体(SUS304や真鍮など)から成る段付き形状の環状板としての支持体65の端部に支持されている。この場合、支持体65は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接する基部65aと、該基部65aよりも厚さが薄い肉薄外周部(支持端部)65bとを有しており、基部65aと肉薄外周部65bとの間の段部に環状の磁石40Bが位置して支持されている。そして、磁石40Aは、第2の実施形態と同様、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部とボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部とから成るとともに、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されており、したがって、磁石40Bの外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40Bの外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40Aの外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。したがって、第2の実施形態と同様のシール効果が得られる。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。
【0046】
このように、本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、磁石40Bが支持体65の基部65aと肉薄外周部65bとの間の段部に位置して支持されるため、磁石40Bを安定して支持することができ、組み込み性も良好となる。また、組み込み時の締め付け力が直接に磁石40Bにかからないため、磁力が破損しにくく、特にOリングを介在させない場合に有効である。すなわち、本実施形態の構成は、特にこのように割れやすい薄い磁石(1.0mm以下)を使用する場合に有効である(図13,14の実施形態も同様)。なお、本実施形態では、磁石40Bとボールベアリング25,27との間の隙間の調整を容易にするため、支持体65の基部65aの厚さT1と、肉薄外周部65bの厚さT2と、磁石40Bの厚さT3との間に、T1>T2+T3の関係が成り立つことが好ましい。また、第1の実施形態でも前述したように、磁石40B(したがって、支持体65)を外輪側(回転側)に設けても良いことは言うまでもない。
【0047】
図17〜図19は、本発明の第7の実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受型リールを示している。図示のように、両軸受型リールのリール本体100は、左右フレーム102a,102bと、これら左右フレーム102a,102bに所定の空間をもって装着される左右側板103a,103bとを備えている。左右フレーム102a,102b(左右側板103a,103b)間には、軸受130,130を介して駆動軸としてのスプール軸105が回転可能に支持されており、このスプール軸105には、釣糸が巻回されるスプール106が取り付けられている。
【0048】
右側板103b側には、ハンドル108を装着したハンドル軸109が回転可能に支持されている。このハンドル軸109には、巻き取り駆動機構が連結されており、ハンドル108を回転操作することで、巻き取り駆動機構を介してスプール106が回転駆動されるようになっている。なお、ハンドル軸109は、右側板との間に介在された一方向クラッチ110によって、釣糸巻取方向にのみ回転可能となっている。
【0049】
前記巻取り駆動機構は、ハンドル軸109にドラグ機構を介して回転可能に支持された駆動歯車112とこの駆動歯車112に噛合するピニオン113とを備えている。ピニオン113は、軸受を介して回転可能に支持されるとともに、公知のクラッチ機構を介してスプール軸105と継脱されるように構成されており、クラッチON状態では、ハンドル108の回転駆動力を駆動歯車112およびピニオン113を介してスプール106に伝達し、クラッチOFF状態では、駆動力伝達状態を解除してスプール106をフリー回転状態にするようになっている。なお、上記したクラッチ動作は、リール本体100から突出した操作レバー(図示せず)を操作することで行なわれる。
【0050】
左右側板103a,103b間には、スプール106の前方に、レベルワインド機構120が設けられている。レベルワインド機構120は、スプール106の前方で左右に往復動すると共に、釣糸が挿通される挿通孔を具備した釣糸案内体121と、左右側板103a,103b間に支持されて外周にエンドレスカム溝123aが形成されたウォームシャフト123とを有している。
【0051】
このウォームシャフト123は、左右フレーム間にボールベアリング180,181を介して回転可能に支持され、軸方向に沿って貫通孔が形成されている円筒部材125内に回転可能に収容されており、この貫通孔を介して前記釣糸案内体121に保持された係合ピンがエンドレスカム溝123aと係合して、釣糸案内体121を左右に往復駆動するようになっている。また、前記釣糸案内体121は、往復駆動する際、ウォームシャフト123の回りでの回り止めが成されるように、左右フレーム間に支持された案内ピラー(図示せず)に支持されている。
【0052】
ウォームシャフト123の右側板側の端部には、前記駆動歯車112と一体回転可能に軸方向に連設された歯車112aと噛合する歯車190が嵌合するように設けられている。この歯車190には、ハンドル108の巻取り操作による回転駆動力がハンドル軸109、駆動歯車112及び歯車112aを介して入力され、その回転駆動力がウォームシャフト123に出力されるようになっている。
【0053】
本実施形態においては、回転体としてのウォームシャフト123を回転可能に支持するボールベアリング180,181に磁気シール機構131,135が関連付けられている。具体的には、図18および図19に示されるように、磁気シール機構131(135)は、前述した第1の実施形態と同様の形態を成しており、ボールベアリング180(181)の外輪180b(181b)に密に接触した状態で並設される(円筒部材125内に嵌着される)環状板の形態を成す磁石40を有する。この場合、磁石40は、その内径が、ボールベアリング180(181)の内輪180a(181a)の外径よりも大きく設定されている。したがって、磁石40の内周縁と内輪180a(181a)の外側端との間には磁気回路を伴う隙間sが形成される。そして、この磁気回路を伴う隙間sには、磁性流体42が注油によって保持されている。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング180(181)の内輪180a(181a)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封してボールベアリング180(181)の内部をシールする。
【0054】
このように、本発明の磁気シール機構は、ラインローラ23のみならず、ウォームシャフト123を含むあらゆる種類の回転体および様々なタイプのリールに適用できる。また、第1の実施形態でも述べたが、本実施形態においても、磁性流体42の注油量を増大させれば、図20に示されるように、隙間s以外の周辺部を幅広くシールすることができ、前述した実施形態におけるOリングを省くこともできる。
【符号の説明】
【0055】
1,100 リール本体
23 ラインローラ
25,27,180,181 ボールベアリング
25a,27a,180a,181a 内輪
25b,27b,180b,181b 外輪
31,35,131,135 磁気シール機構
40,40A,40B 磁石
42 磁性流体
60 極板
62,65 支持体
65a 基部
65b 肉薄外周部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を回転可能に支持する支持構造をシールするシール機構に特徴を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、魚釣用リールは、ハンドルを回転操作することで、動力伝達機構を介して釣糸をスプールに巻回するよう構成されている。動力伝達機構には、ハンドルの回転操作に伴って回転駆動される駆動軸が設けられており、一般的に駆動軸は、リール本体に設けたボールベアリング(軸受け)を介して回転自在に支持されている。
【0003】
ところで、魚釣用リールを実際の釣場で使用する際には、リール本体に海水、砂、異物等が付着し易いという特有の問題があり、これらは、リール本体外部の隙間を介して内部に侵入し、前記駆動軸を支持するボールベアリングに付着・侵入してしまう。そして、ボールベアリングに海水、砂、異物等が付着したり侵入すると、ボールベアリングが腐食したり、回転性能が低下してしまう。
【0004】
このような問題の対策として、ボールベアリングに近接する駆動軸の外周に、弾性材からなるシール部材を接触させてボールベアリングの防水、防塵を図ることが一般的に行われているが、弾性材からなるシール部材の接触圧の影響で駆動軸の回転性能を低下させてしまう問題が指摘されている。
【0005】
そこで、駆動軸の回転性能を低下させることなく、ボールベアリングの防水・防塵を図る構成として、例えば、特許文献1には、磁気回路を構成する磁気保持リングとスプール軸(駆動軸)との間に磁性流体を保持してシールしたもの(磁気シール機構)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−319742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような磁気シール機構は、ハンドルの回転操作に伴って回転駆動される駆動軸に限らず、リールに設けられる軸受支持の全ての回転体に適用できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される磁気シール機構は、2枚の極板間に磁石が挟まれる構造であるため、すなわち、1つの磁石に対して極板を2枚必要とするため、全体の部品点数が多くなり、組み込み作業性が悪化して生産性が低下するという問題がある。また、磁石の厚み寸法と極板2枚の厚み寸法との和に相当する寸法の設置スペースが少なくとも軸受の片側で必要になるため、省スペース化を図ることが難しい。更に、極板が磁性体であることから、その比重が重く(鉄の比重に近い)、そのため、磁気シール機構全体の重量が重くなる。
【0009】
また、特許文献1に開示される磁気シール機構は、磁性流体が駆動軸等の回転体に直接に接触するように配置される構成のため、回転体を磁性材料によって形成する必要があり、したがって、回転体に必要な要求品質を満足させるための選択肢が制限される。また、回転体が磁性体であることから、リール全体の重量増大も招く。
【0010】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、回転体の材料選択の自由度を高く確保でき、省スペース化を図れるとともに、組み込み作業性に優れる軽量な磁気シール機構を備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ボールベアリングを介して回転可能に支持される回転体と、前記ボールベアリングをシールする磁気シール機構とを有する魚釣用リールにおいて、前記磁気シール機構は、前記ボールベアリングの磁性を有する内輪または外輪に並設される磁石と、該磁石と前記ボールベアリングの内輪または外輪との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間をシールする磁性流体とを有することを特徴とする。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、磁気シール機構が従来のように極板を有さず、磁石とボールベアリングの内輪または外輪との間で直接に磁性流体が保持されるため、全体の部品点数が少なくなり、組み込み作業性が良好となって生産性が向上する。また、極板を排除したことにより、極板の厚み寸法分だけ磁気シール機構の幅寸法を小さくできるため、省スペース化を図ることができる。また、比重の高い磁性体である極板を排除したことにより、磁気シール機構全体の軽量化を図ることもできる。更に、磁性流体が回転体に直接に接触するように配置されないため、回転体を磁性材料によって形成する必要がなく、したがって、回転体の材料選択の自由度を高く確保できる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁石に対して前記ボールベアリングと反対側には1枚の極板が磁石に隣接して位置されることを特徴とする。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、磁石に隣接する極板の存在により、漏洩磁束を軽減することができ、シールが必要な部分における磁束密度を効果的に高めることが可能となる。また、この場合、極板を付加した分だけ、磁気シール機構全体の寸法および重量が増大するが、1つの磁石に対して1枚の極板しか必要ないため、1つの磁石に対して2枚の極板を必要とする従来の磁気シール機構の構造に比べれば、寸法および重量を小さく抑えることができる。更に、極板は、磁石に比べて高い寸法精度で加工できるため、特に径方向の寸法精度を高めて磁石と内輪または外輪との間の間隔を極板によって安定させることにより、組み込み精度を高めることができる(例えば、径方向のガタつきを防止できる)。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記磁石は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される非磁性体から成る支持体の端部に支持されることを特徴とする。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、支持体によって磁石を必要部位のみに集約して配置できるため、磁束密度の高い磁石の設置領域を必要最小限に抑えることができ、磁性流体の注入作業が容易となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記支持体は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接する基部と、該基部よりも厚さが薄い肉薄外周部とを有し、前記磁石が前記基部と前記肉薄外周部との間の段部に位置して支持されることを特徴とする。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、磁石が支持体の基部と肉薄外周部との間の段部に位置して支持されるため、磁石を安定して支持することができ、組み込み性も良好となる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、釣糸が巻回されるスプールを更に備え、前記回転体は、釣糸を前記スプールへと案内するためのラインローラであることを特徴とする。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、省スペースで軽量化が要求されるラインローラ部位での効果的なシールを実現できる。
【0021】
なお、上記構成の回転体としては、ハンドルを回転操作した際に駆動される部材、例えば、回転駆動軸(ハンドル軸(ドライブギア軸)、ピニオンギア軸、スプール軸、レベルワインド軸)、軸受を構成している部材の一部、或いは、前記したような駆動軸と共に一体回転する部材(駆動軸や摺動軸に内嵌、或いは外嵌されるカラー等)のみならず、ハンドルの回転操作とは無関係に回転する部材(ラインローラなど)も挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、回転体の材料選択の自由度を高く確保でき、省スペース化を図れるとともに、組み込み作業性に優れる軽量な磁気シール機構を備えた魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)の全体図である。
【図2】図1の魚釣用リールのラインローラ部分の要部断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】図3のA部拡大図である。
【図5】図7のB部拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図7】図6の要部拡大断面図である。
【図8】ラインローラ部分の組立方法を示す分解断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図12】図11の要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図14】図13の要部拡大断面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る魚釣用リール(スピニングリール)のラインローラ部分の要部断面図である。
【図16】図15の要部拡大断面図である。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る魚釣用リール(両軸受型リール)の全体図である。
【図18】図17の魚釣用リールのレベルワインド機構部の要部断面図である。
【図19】(a)は図18のC部の拡大断面図、(b)は図18のD部の拡大断面図である。
【図20】図19の(a)の部位の変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1〜図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用リールは、スピニングリールであり、リール本体1を有する。リール本体1内には、ハンドル3の回転操作によって回転駆動する駆動歯車(図示しない)が設けられており、この駆動歯車には、ピニオン(図示しない;駆動軸)が噛合している。ピニオン内には、スプール軸(図示しない)が軸方向に挿通されており、このスプール軸の先端には、釣糸が巻回されるスプール5が回転可能に取り付けられている。この場合、スプール軸(スプール)は、駆動歯車に係合するオシレーティング機構(図示しない)を介して、駆動歯車の回転によって前後動するように構成されている。
【0025】
また、ピニオンの先端には、このピニオンと一体的に回転するロータ7が取り付けられており、このロータ7には、一対の支持アーム9が設けられている。これらの支持アーム9には、夫々、支持部材11を介して、ベール13が釣糸放出状態と釣糸巻回状態とに回動可能に支持されている。そして、一方の支持部材11とベール13の端部との間には、釣糸をスプール5へと案内するための後述する釣糸案内装置15が介装されている。
【0026】
このような構成において、ハンドル3を回転操作すると、その回転運動は、駆動歯車を介してピニオンに伝達され、このピニオンを介してロータ7を回転させると共に、オシレーティング機構を介してスプール軸に伝達され、スプール5を前後動させる。これにより、釣糸は、釣糸案内装置15を介してスプール5に片寄ること無く均等に巻回される。
【0027】
図2および図3に示されるように、釣糸案内装置15は、一方の支持部材11にネジ19によって締結されており、このネジ19が螺入されるように軸方向に延出する支持部17が形成されたラインスライダ21を有している。なお、支持部17は、図示のように、ラインスライダ21に一体形成されていても良いし、支持部材11側に一体形成されていても良い。
【0028】
ラインスライダ21にはベール13の一方の基端部が接続されており、釣糸巻取開始時にベール13を釣糸巻回状態に回動させると、釣糸が、ベール13からラインスライダ21を介して、釣糸案内装置15の一構成部材であるラインローラ(回転体)23に案内されるようになっている。
【0029】
ラインローラ23は、2つの環状のボールベアリング25,27を介して支持部17に回転可能に支持されている。この場合、ラインローラ23は、中空の略筒体形状を成しており、その外周面は平滑化されている。これにより、釣糸巻取時にベール13からラインスライダ21を介して案内された釣糸は、ラインローラ23の外周面を滑らかに経由しながらスプール5に巻回される。なお、ラインローラ23の外周形状については、特に限定されることはない。
【0030】
2つのボールベアリング25,27は、ラインローラ23の内周面と支持部17の外周面との間に介在されており、軸方向(ラインローラ23の回転軸Aに沿った方向)に互いに離間して並列配置されている。また、ボールベアリング25,27は、支持部17の外周に回り止め嵌合される内輪25a,27aと、内輪25a,27aの外側に配される外輪25b,27bと、内輪25a,27aと外輪25b,27bとの間で転動可能に保持される複数の転がり部材(コロ)25c,27cとを備えており、隣接して設置される後述の磁気シール機構31,35によってシールされた状態となっている。
【0031】
これら2つのボールベアリング25,27の対向端(内側端)は、共に、ラインローラ23の内周面に突出形成された係止部29の両端面に当て付けられている。そして、ボールベアリング25の外側端は、第1の磁気シール機構材31およびOリング32を介して、支持部17に形成された係止部33に当て付けられており、一方、ボールベアリング27の外側端は、第2の磁気シール機構35およびOリング36を介して、支持部材11に形成されて支持部17の端部を覆う係止部37に当て付けられている。
【0032】
つまり、2つのボールベアリング25,27は、各係止部29,33,37によって軸方向への移動が規制された状態で維持されている。そして、第1および第2の磁気シール機構31,35は、ボールベアリング25,27の内部を外部に対して磁気的にシールするとともに、Oリング32,36は、支持部17とボールベアリング25,27との間または支持部17と支持部材11との間をシールするようになっている。
【0033】
次に、釣糸案内装置15に配される磁気シール機構31,35について説明する。
図3に明確に示されるように、磁気シール機構31(35)は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に密に接触した状態で並設される(支持部17上の外周に嵌着される)環状板の形態を成す磁石40を有する。この場合、磁石40は、図4に示されるように、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部40aとボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部40bとから成っており、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも小さく設定されている。したがって、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間には隙間sが形成される。また、この場合、ボールベアリング25(27)の少なくとも外輪25b(27b)は磁性を有しており(磁性体から成っており)、そのため、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間には、図4に矢印(磁力線の向き)で示されるような磁気回路が形成される。そして、この磁気回路が形成される隙間sには、磁性流体42が注油によって保持されている。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封してボールベアリング25(27)の内部をシールする。
【0034】
なお、磁性体としての外輪25b(27b)は、鉄系の材料、例えば、鋼材、SUS430、SUS440C、SUS630等によって形成される。また、磁性流体42は、例えばFe3O4のような磁性微粒子を、界面活性剤およびベースオイルに分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体42は、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間に形成される磁気回路によって隙間s内に安定して保持され、ボールベアリング25(27)内を外部に対して確実にシールする。
【0035】
なお、本実施形態では、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)も磁性体から成っているのが好ましく、その場合には、磁石40と内輪25a(27a)とが磁気的に結合される。また、変形例として、磁石40は、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)に密に接触した状態で並設されるとともに、ボールベアリング25(27)の磁性体としての内輪25a(27a)との間に形成される磁気回路によって磁性流体42を保持するようになっていてもよい。しかしながら、この場合には、磁石40が回転体としてのラインローラ23と一体で回転して、磁性流体42に大きな遠心力が作用するため、図示のように磁石40を固定側である内輪25a(27a)に隣接して位置させることが好ましい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、磁気シール機構31,35が従来のように極板を有さず、磁石40とボールベアリングの外輪25b,27b(または、内輪25a,27a)との間で直接に磁性流体42が保持されるため、全体の部品点数が少なくなり、組み込み作業性が良好となって生産性が向上する。また、極板を排除したことにより、極板の厚み寸法分だけ磁気シール機構31,35の幅寸法を小さくできるため、省スペース化を図ることができる。また、比重の高い磁性体である極板を排除したことにより、磁気シール機構31,35全体の軽量化を図ることもできる。更に、磁性流体42が回転体としてのラインローラ23に直接に接触するように配置されないため、ラインローラ23を磁性材料によって形成する必要がなく、したがって、ラインローラ23の材料選択の自由度を高く確保できる。なお、本実施形態では、磁性流体42の注油量を増大させてOリング32,36が位置する領域にわたって磁性流体42を保持させれば、Oリング32,36を省くこともできる。
【0037】
図5〜図7は本発明の第2の実施形態を示している。これらの図から分かるように、本実施形態では、ラインローラ23と各ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に樹脂製の環状カラー52A,52Bが介挿されており、環状カラー52a,52bの互いに対向する内端部は、径方向内側に屈曲して互いに当接することにより前述した係止部29を形成している。また、環状カラー52A,52Bの外端部は径方向外側に屈曲してラインローラ23の側端面と対向しており、このラインローラ23の側端面と環状カラー52A,52Bの屈曲外端部との間にはゴムワッシャ等から成るシール材53が介挿されている。このシール材53は、ラインローラ23と環状カラー52A,52Bとの間の隙間から係止部29を形成する環状カラー52A,52Bの屈曲内端部間の隙間を通じてボールベアリング25,27間の空間内に水などの異物が侵入するのを防止する役目を果たす。第1の実施形態の構成に比べ、ボールベアリングの外輪と対向する面積が増すため、磁力の強い部分が増え、水や異物に対するシール力が更に強くなる。また、本実施形態では、支持部17とボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)との間に管状体54も介挿されている。
【0038】
また、本実施形態の磁気シール機構31,35は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に並設される環状板の形態を成す磁石40(第1の実施形態と同様、N極に帯磁された第1の磁極部40aと極に帯磁された第2の磁極部40bとから成る)を有するが、磁石40と内輪25a(27a)との間に好ましくは非磁性体から成るワッシャ50が介挿されている。すなわち、磁石40が内輪25a(27a)と接触していない。また、磁石40は、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されている。したがって、この形態では、磁石40の外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路(図5には、磁力線が矢印で示されている)を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40の外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40の外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封すると同時に、磁石40の外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間も密封し(したがって、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間も密封し)、ボールベアリング25(27)の内部を確実にシールする。
【0039】
このように、本実施形態の構成によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、磁性流体42によって広い範囲にわたりシールすることができるため、有益である。また、本実施形態では、図8に示されるように、環状カラー52A,52bと管状体54との間にボールベアリング25,27および磁気シール機構31,35が保持されて成る磁性流体シール付き軸受アセンブリを構成できるとともに、このアセンブリにラインローラ23を装着して1つのユニットUを構成することが可能となるため、図8の分解状態から、ユニットUと、支持部17を有するラインスライダ21と、支持部材11とをネジ19により締結して組み付けることができ、組み込み性が良好となる。なお、第1の実施形態でも前述したように、磁石40を外輪側に設けても良いことは言うまでもない。
【0040】
図9および図10は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態は第1の実施形態の変形例であり、Oリング32,36と各磁気シール機構31,35の磁石40との間に磁性体から成る極体60が挟持されている。すなわち、磁石40に対してボールベアリング31,35と反対側には、1枚の極板60が磁石40に隣接して位置されている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
【0041】
このような構成では、磁石40に隣接する極板60の存在により、漏洩磁束を軽減することができ、シールが必要な部分における磁束密度を効果的に高めることが可能となる。したがって、第1の実施形態に比べて更に高いシール性が得られる。また、この場合、極板60を付加した分だけ、磁気シール機構31,35全体の寸法および重量が増大するが、1つの磁石40に対して1枚の極板60しか必要ないため、1つの磁石に対して2枚の極板を必要とする従来の磁気シール機構の構造に比べれば、寸法および重量を小さく抑えることができる。更に、極板60は、磁石40に比べて高い寸法精度で加工できるため、特に径方向の寸法精度を高めて磁石40と内輪25a,27aまたは外輪25b,27bとの間の間隔を極板60によって安定させることにより、組み込み精度を高めることができる(例えば、径方向のガタつきを防止できる)。
【0042】
図11および図12は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態は第2の実施形態の変形例であり、Oリング32,36と各磁気シール機構31,35の磁石40との間に磁性体から成る極体60が挟持されている。すなわち、磁石40に対してボールベアリング31,35と反対側には、1枚の極板60が磁石40に隣接して位置されている。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。したがって、このような構成でも第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0043】
図13および図14は本発明の第5の実施形態を示している。本実施形態は、第2の実施形態の変形例であり、磁気シール機構を構成する磁石の設置形態のみが図2の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の磁石40Aは、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接して位置される(具体的には、Oリング32,36とワッシャ50との間に介挿される)非磁性体(SUS304や真鍮など)から成る環状板としての支持体62の端部(支持端部)に支持されている(磁石40Aはボールベアリングの内輪に並設されている)。この場合、支持体62は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される基部と、この基部の反対側に位置して磁石40Aを支持する支持端部とを有する。また、磁石40Aは、支持体62の外周縁に環状の形態を成して固着された状態となっており、第2の実施形態と同様に、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部とボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部とから成るとともに、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されている。したがって、この形態では、磁石40Aの外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40Aの外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40Aの外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。したがって、第2の実施形態と同様のシール効果が得られる。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。また、プラマグの射出成形で可能な形状であるため、生産性が高い。
【0044】
このように、本実施形態によれば、支持体62によって磁石40Aを必要部位のみに集約して配置できるため、磁束密度の高い磁石の設置領域を必要最小限に抑えることができ、磁性流体42の注入作業が容易となる。なお、第1の実施形態でも前述したように、磁石40A(したがって、支持体62)を外輪側(回転側)に設けても良いことは言うまでもない。
【0045】
図15および図16は本発明の第6の実施形態を示している。本実施形態も、第2の実施形態の変形例であり、磁気シール機構を構成する磁石の設置形態が図2の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態の磁石40Bは、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接して位置される(具体的には、第5の実施形態のワッシャ50と支持体62とを一体化した形態の)非磁性体(SUS304や真鍮など)から成る段付き形状の環状板としての支持体65の端部に支持されている。この場合、支持体65は、ボールベアリング25(27)の内輪25a(27a)に隣接する基部65aと、該基部65aよりも厚さが薄い肉薄外周部(支持端部)65bとを有しており、基部65aと肉薄外周部65bとの間の段部に環状の磁石40Bが位置して支持されている。そして、磁石40Aは、第2の実施形態と同様、ボールベアリング25(27)側に面するN極に帯磁された第1の磁極部とボールベアリング25(27)の反対側に面するS極に帯磁された第2の磁極部とから成るとともに、その外径が、ボールベアリング25(27)の外輪25b(27b)の内径よりも大きく設定されており、したがって、磁石40Bの外周縁と磁性体である外輪25b(27b)の外側端との間の磁気回路を伴う隙間sに磁性流体42を注油すると、磁性流体42は、磁石40Bの外周縁と外輪25b(27b)の外側端との間の隙間のみならず、磁石40Aの外周縁と環状カラー52A,52Bの内周面との間の隙間にも保持される。したがって、第2の実施形態と同様のシール効果が得られる。なお、それ以外の構成は第2の実施形態と同一である。
【0046】
このように、本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、磁石40Bが支持体65の基部65aと肉薄外周部65bとの間の段部に位置して支持されるため、磁石40Bを安定して支持することができ、組み込み性も良好となる。また、組み込み時の締め付け力が直接に磁石40Bにかからないため、磁力が破損しにくく、特にOリングを介在させない場合に有効である。すなわち、本実施形態の構成は、特にこのように割れやすい薄い磁石(1.0mm以下)を使用する場合に有効である(図13,14の実施形態も同様)。なお、本実施形態では、磁石40Bとボールベアリング25,27との間の隙間の調整を容易にするため、支持体65の基部65aの厚さT1と、肉薄外周部65bの厚さT2と、磁石40Bの厚さT3との間に、T1>T2+T3の関係が成り立つことが好ましい。また、第1の実施形態でも前述したように、磁石40B(したがって、支持体65)を外輪側(回転側)に設けても良いことは言うまでもない。
【0047】
図17〜図19は、本発明の第7の実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受型リールを示している。図示のように、両軸受型リールのリール本体100は、左右フレーム102a,102bと、これら左右フレーム102a,102bに所定の空間をもって装着される左右側板103a,103bとを備えている。左右フレーム102a,102b(左右側板103a,103b)間には、軸受130,130を介して駆動軸としてのスプール軸105が回転可能に支持されており、このスプール軸105には、釣糸が巻回されるスプール106が取り付けられている。
【0048】
右側板103b側には、ハンドル108を装着したハンドル軸109が回転可能に支持されている。このハンドル軸109には、巻き取り駆動機構が連結されており、ハンドル108を回転操作することで、巻き取り駆動機構を介してスプール106が回転駆動されるようになっている。なお、ハンドル軸109は、右側板との間に介在された一方向クラッチ110によって、釣糸巻取方向にのみ回転可能となっている。
【0049】
前記巻取り駆動機構は、ハンドル軸109にドラグ機構を介して回転可能に支持された駆動歯車112とこの駆動歯車112に噛合するピニオン113とを備えている。ピニオン113は、軸受を介して回転可能に支持されるとともに、公知のクラッチ機構を介してスプール軸105と継脱されるように構成されており、クラッチON状態では、ハンドル108の回転駆動力を駆動歯車112およびピニオン113を介してスプール106に伝達し、クラッチOFF状態では、駆動力伝達状態を解除してスプール106をフリー回転状態にするようになっている。なお、上記したクラッチ動作は、リール本体100から突出した操作レバー(図示せず)を操作することで行なわれる。
【0050】
左右側板103a,103b間には、スプール106の前方に、レベルワインド機構120が設けられている。レベルワインド機構120は、スプール106の前方で左右に往復動すると共に、釣糸が挿通される挿通孔を具備した釣糸案内体121と、左右側板103a,103b間に支持されて外周にエンドレスカム溝123aが形成されたウォームシャフト123とを有している。
【0051】
このウォームシャフト123は、左右フレーム間にボールベアリング180,181を介して回転可能に支持され、軸方向に沿って貫通孔が形成されている円筒部材125内に回転可能に収容されており、この貫通孔を介して前記釣糸案内体121に保持された係合ピンがエンドレスカム溝123aと係合して、釣糸案内体121を左右に往復駆動するようになっている。また、前記釣糸案内体121は、往復駆動する際、ウォームシャフト123の回りでの回り止めが成されるように、左右フレーム間に支持された案内ピラー(図示せず)に支持されている。
【0052】
ウォームシャフト123の右側板側の端部には、前記駆動歯車112と一体回転可能に軸方向に連設された歯車112aと噛合する歯車190が嵌合するように設けられている。この歯車190には、ハンドル108の巻取り操作による回転駆動力がハンドル軸109、駆動歯車112及び歯車112aを介して入力され、その回転駆動力がウォームシャフト123に出力されるようになっている。
【0053】
本実施形態においては、回転体としてのウォームシャフト123を回転可能に支持するボールベアリング180,181に磁気シール機構131,135が関連付けられている。具体的には、図18および図19に示されるように、磁気シール機構131(135)は、前述した第1の実施形態と同様の形態を成しており、ボールベアリング180(181)の外輪180b(181b)に密に接触した状態で並設される(円筒部材125内に嵌着される)環状板の形態を成す磁石40を有する。この場合、磁石40は、その内径が、ボールベアリング180(181)の内輪180a(181a)の外径よりも大きく設定されている。したがって、磁石40の内周縁と内輪180a(181a)の外側端との間には磁気回路を伴う隙間sが形成される。そして、この磁気回路を伴う隙間sには、磁性流体42が注油によって保持されている。すなわち、磁性流体42は、磁石40とボールベアリング180(181)の内輪180a(181a)との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の隙間(空間)sを密封してボールベアリング180(181)の内部をシールする。
【0054】
このように、本発明の磁気シール機構は、ラインローラ23のみならず、ウォームシャフト123を含むあらゆる種類の回転体および様々なタイプのリールに適用できる。また、第1の実施形態でも述べたが、本実施形態においても、磁性流体42の注油量を増大させれば、図20に示されるように、隙間s以外の周辺部を幅広くシールすることができ、前述した実施形態におけるOリングを省くこともできる。
【符号の説明】
【0055】
1,100 リール本体
23 ラインローラ
25,27,180,181 ボールベアリング
25a,27a,180a,181a 内輪
25b,27b,180b,181b 外輪
31,35,131,135 磁気シール機構
40,40A,40B 磁石
42 磁性流体
60 極板
62,65 支持体
65a 基部
65b 肉薄外周部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールベアリングを介して回転可能に支持される回転体と、前記ボールベアリングをシールする磁気シール機構とを有する魚釣用リールにおいて、
前記磁気シール機構は、前記ボールベアリングの磁性を有する内輪または外輪に並設される磁石と、該磁石と前記ボールベアリングの内輪または外輪との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間をシールする磁性流体とを有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記磁石に対して前記ボールベアリングと反対側には1枚の極板が磁石に隣接して位置されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記磁石が非磁性体から成る支持体によって支持され、該支持体は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される基部と、この基部の反対側に位置して前記磁石を支持する支持端部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記支持端部は、前記基部よりも厚さが薄い肉薄外周部として形成され、前記磁石が前記基部と前記肉薄外周部との間の段部に位置して支持されることを特徴とする請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
釣糸が巻回されるスプールを更に備え、前記回転体は、釣糸を前記スプールへと案内するためのラインローラであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項1】
ボールベアリングを介して回転可能に支持される回転体と、前記ボールベアリングをシールする磁気シール機構とを有する魚釣用リールにおいて、
前記磁気シール機構は、前記ボールベアリングの磁性を有する内輪または外輪に並設される磁石と、該磁石と前記ボールベアリングの内輪または外輪との間に配されてこれらの間に形成される磁気回路に保持されることによりこれらの間の空間をシールする磁性流体とを有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記磁石に対して前記ボールベアリングと反対側には1枚の極板が磁石に隣接して位置されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記磁石が非磁性体から成る支持体によって支持され、該支持体は、前記ボールベアリングの内輪または外輪に隣接して位置される基部と、この基部の反対側に位置して前記磁石を支持する支持端部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記支持端部は、前記基部よりも厚さが薄い肉薄外周部として形成され、前記磁石が前記基部と前記肉薄外周部との間の段部に位置して支持されることを特徴とする請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
釣糸が巻回されるスプールを更に備え、前記回転体は、釣糸を前記スプールへと案内するためのラインローラであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−44946(P2012−44946A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191455(P2010−191455)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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