説明

魚釣用リール

【課題】左右のフレームに表示手段が載置される魚釣用リールにおいて、外観の自由度やデザインの自由度を高めることができるとともに、組付性の自由度を高める。
【解決手段】左右のフレーム2a,2bに載置される表示手段と、左右の側板3a,3bの両方に備えられ、フレーム2に取り付けられる部分から表示手段の側部に向けて延出する延出部31a,31bと、延出部31a,31bにそれぞれ係合する係合部を有して、延出部31a,31bに亘って装着される規制部材と、を備え、表示手段は、延出部31a,31bの間に包持され、規制部材によって、当該延出部31a,31bの間が離間する方向に拡がるのを規制されて当該延出部31a,31bの間に固定されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸型の魚釣用リールでは、スプールから繰り出される釣糸の糸長値等を表示することのできる表示手段としてのカウンターケースを備えたものが知られている。このカウンターケースは、単に水深や仕掛けの位置を数字等により表示するものから、リールの操作部や制御部を含むものも知られている。
カウンターケースは、一般的に、リール本体の左右のフレームに載置され、リール本体のフレームに対してねじ等の固定手段を用いて固定されている。
【0003】
また、カウンターケースの固定手法としては、特許文献1に示されるように、カウンターケースの左右側部に凸部を設け、これを両側から側板で挟み込むことで固定するようにしたものが知られている。
この魚釣用リールによれば、カウンターケースの取付作業性の向上、取付構造の簡素化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、ねじ等の固定手段を用いてカウンターケースを固定するようにした魚釣用リールでは、フレームにねじ等の固定を行うための構造を設ける必要があり、また、フレームに装着される側板の形状もこれを考慮したものとする必要がある。このため、側板の外観やデザインに影響を与えてしまい、魚釣用リールの外観の自由度やデザインの自由度が制限されたり、組付性の自由度が制限されたりするおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1のように、カウンターケースを両側から側板で挟み込むようにした魚釣用リールでは、ねじ等を用いない、あるいは、ねじ等を用いても最小限の数とすることが可能であるが、カウンターケースと側板との部材間等に隙間が生じたり、組込性の自由度が制限されたりするおそれがあり、さらに、側板形状をフレーム形状に対応した形状にしてカウンターケースを挟み込む必要が生じる等、魚釣用リールの外観の自由度やデザインの自由度が制限されるおそれがあった。
【0007】
本発明は、左右のフレームに表示手段が載置される魚釣用リールにおいて、外観の自由度やデザインの自由度を高めることができるとともに、組付性の自由度を高めることができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体を構成する左右のフレームと、左右の前記フレームに取り付けられる左右の側板と、左右の前記フレームに載置される表示手段と、左右の前記側板の両方に備えられ、前記フレームに取り付けられる部分から前記表示手段の側部に向けて延出する延出部と、両方の前記延出部にそれぞれ係合する係合部を有して、両方の前記延出部に亘って装着される規制部材と、を備え、前記表示手段は、両方の前記延出部の間に包持され、前記規制部材によって、当該延出部の間が離間する方向に拡がるのを規制されて当該延出部の間に固定されていることを特徴とする。
【0009】
この魚釣用リールによれば、表示手段は、フレームに取り付けられる部分から表示手段の側部に向けて延出する延出部の間に挟持されて固定されているので、ねじ等の固定手段を用いて表示手段がフレーム等に固定されるものに比べて、取付構造の自由度が制限され難くなる。また、側板の形状を必ずしもフレームに対応させる必要がなくなるので、側板の形状の自由度も制限され難くなる。
【0010】
また、本発明は、前記延出部には、これらの間から前記表示手段が抜けるのを規制する抜け止め規制部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この魚釣用リールによれば、延出部に抜け止め機能をもたせているので、別途、抜け止めのための構造や部材等を設ける必要がなくなる。
【0012】
また、本発明は、前記抜け止め規制部が、前記延出部の縁部から前記表示手段へ向けて突出形成され、前記表示手段に係止される鍔部であることを特徴とする。
【0013】
この魚釣用リールによれば、延出部に突出形成された鍔部を表示手段に係止することによって、延出部の間から表示手段が抜けるのを好適に防止することができる。
【0014】
また、本発明は、前記抜け止め規制部が、前記延出部における前記表示手段との対向面に設けられ、前記表示手段に設けられた突出部が係合する受部、または、前記表示手段に設けられた凹部に係合する凸部であることを特徴とする。
【0015】
この魚釣用リールによれば、延出部における表示手段との対向面に設けられた受部に表示手段に設けられた突出部を係合することにより、または、延出部における表示手段との対向面に設けられた凸部を表示手段に設けられた凹部に係合することによって、延出部の間から表示手段が抜けるのを好適に防止することができる。
【0016】
また、本発明は、前記延出部は、前記表示手段との対向面がその上部側に向けて窄まるように傾斜しており、前記表示手段は、前記対向面に沿う傾斜した外面を備えていることを特徴とする。
【0017】
この魚釣用リールによれば、延出部における表示手段との対向面と表示手段の外面との傾斜を備えた当接によって、延出部の間から表示手段が抜けるのを好適に防止することができる。
【0018】
また、本発明は、リール本体を構成する左右のフレームと、左右の前記フレームに取り付けられる左右の側板と、左右の前記フレームに載置される表示手段と、左右の前記側板の一方に備えられ、前記フレームに取り付けられる部分から前記表示手段の側部に向けて延出する延出部と、左右の前記側板の一方に備えられた前記延出部と他方の前記側板とにそれぞれ係合する係合部を有して、一方の前記延出部と他方の前記側板とに亘って装着される規制部材と、を備え、前記表示手段は、一方の前記延出部と他方の前記側板との間に包持され、前記規制部材によって、一方の前記延出部と他方の前記側板との間が離間する方向に拡がるのを規制されて、一方の当該延出部と他方の当該側板との間に固定されていることを特徴とする。
【0019】
この魚釣用リールによれば、表示手段は、フレームに取り付けられる部分から表示手段の側部に向けて延出する一方の延出部と他方の側板との間に固定されているので、ねじ等の固定手段を用いて表示手段がフレーム等に固定されるものに比べて、取付構造の自由度が制限され難くなる。また、側板の形状を必ずしもフレームに対応させる必要がなくなるので、側板の形状の自由度も制限され難くなる。
【0020】
また、本発明は、前記規制部材が、前記リール本体の前部に設けられた釣糸挿通口に装着されるようになっており、当該釣糸挿通口の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能することを特徴とする。
【0021】
この魚釣用リールによれば、規制部材が釣糸挿通口の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能するので、指ガード用のカバーを別途設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ねじ等の固定手段を用いて表示手段がフレーム等に固定されるものに比べて、取付構造の自由度が制限され難くなるので、フレームに表示手段が載置される魚釣用リールにおいて、外観の自由度やデザインの自由度を高めることができる。
また、規制部材により延出部の間が離間する方向に拡がることが規制されているので、部材間に隙間が生じたりすることを好適に防止することができるようになり、組付性も向上する。したがって、生産性が高まるとともに、高品位の魚釣用リールを製造することができる。つまり、側板等の寸法精度が高精度でなくても、隙間を生じることなく表示手段を挟持することが可能となり、ガタツキ等を排除して固定強度を高めることが可能となる。
また、隙間を生じることなく表示手段を挟持することが可能となるので、延出部を、例えば、弾性変形可能な部材で形成することによって、表示手段との密着性を高めることができるようになり、保持性が向上する。また、組付性も高まって生産性も向上する。
【0023】
また、延出部に、表示手段が抜けるのを規制する抜け止め規制部が設けられている構成では、別途、抜け止めのための構造や部材等を設ける必要がなくなるので、抜け止めのための構造が簡単になり、組付性も高まる。これにより、コストを低減することができる。
【0024】
さらに、抜け止め規制部が、鍔部で構成されたものは、延出部の縁部に鍔部を突出形成することで、抜け止め規制部を簡単に設けることができるので、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、両方の延出部の間から表示手段が抜けるのを確実に防止することができる。
【0025】
また、抜け止め規制部が、延出部において表示手段との対向面に設けられた受部、または凸部で構成されたものは、当該対向面に受部または凸部を形成することで、抜け止め規制部を簡単に設けることができるので、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、両方の延出部の間から表示手段が抜けるのを確実に防止することができる。
【0026】
またさらに、延出部における表示手段との対向面がその上部側に向けて窄まるように傾斜し、これらの対向面に沿う傾斜した外面が表示手段に備えられた構成では、延出部の対向面と表示手段の外面との傾斜によって、抜け止め規制部を簡単に構成することができ、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、両方の延出部の間から表示手段が抜けるのを確実に防止することができる。
【0027】
また、表示手段が、一方の延出部と他方の側板との間に固定されている構成では、ねじ等の固定手段を用いて表示手段がフレーム等に固定されるものに比べて、取付構造の自由度が制限され難くなるので、フレームに表示手段が載置される魚釣用リールにおいて、外観の自由度やデザインの自由度を高めることができる。
また、規制部材により一方の延出部と他方の側板との間が離間する方向に拡がることが規制されているので、部材間に隙間が生じたりすることを好適に防止することができるようになり、組付性も向上する。したがって、生産性が高まるとともに、高品位の魚釣用リールを製造することができる。つまり、側板等の寸法精度が高精度でなくても、規制部材によって、隙間を生じることなく表示手段を挟持することが可能となり、ガタツキ等を排除して固定強度を高めることが可能となる。
また、規制部材によって、隙間を生じることなく表示手段を挟持することが可能となるので、延出部を、例えば、弾性変形可能な部材で形成することによって、表示手段との密着性を高めることができるようになり、保持性が向上する。また、組付性も高まって生産性も向上する。
【0028】
また、規制部材が釣糸挿通口の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能する構成では、指ガード用のカバーを別途設ける必要がなくなるので、部品点数の増加やそれに伴う重量の増大を好適に抑えることができ、さらには、製造工数の増加も抑制することができる。このことはコストの低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールを示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図である。
【図2】(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【図3】(a)は後面図、(b)は内部構造を模式的に示した上面図である。
【図4】フレームと側板との分解斜視図である。
【図5】前板を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は組み付けた状態の側面図である。
【図6】カウンターケースを示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図(縦向きで表示)、(c)は後面図(縦向きで表示)、(d)は下面図、(e)は側面図、(f)は断面図である。
【図7】(a)はカウンターケースの挟持状態を示す縦断面図、(b)は同じく図7(a)のA−A線に沿う横断面図、(c)は右側板の先端内面を示す側面図である。
【図8】(a)〜(c)は組付手順を示す説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールを示す図であり、(a)はカウンターケースの挟持状態を示す縦断面図、(b)は同じく図9(a)のB−B線に沿う横断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールを示す図であり、(a)はカウンターケースの挟持状態を示す縦断面図、(b)は同じく図10(a)のC−C線に沿う横断面図である。
【図11】規制部材のその他の例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図11(a)のD−D線に沿う横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態においては、魚釣用リールとして電動リールを例示するが、本発明に係る魚釣用リールを限定する趣旨ではなく、電動モータを内蔵していない両軸型の魚釣用リールにも好適に適用することができる、ここで、以下の説明において、「前後」「左右」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。
【0031】
(第1実施形態)
図1(a)(b)に示すように、魚釣用リールは、後記する電動モータMや減速機構G等(図3(b)参照)が設けられるフレーム2と、このフレーム2を覆うように配設される側板3とを備えたリール本体1を有している。リール本体1の上面前部には、表示手段としてのカウンターケース20が載置(配置)されている。
【0032】
フレーム2は、リール本体1の骨格をなす部分であり、左フレーム2a、右フレーム2b、およびスプール4の前方に配設される前フレーム2c(図1(a)、図4参照)を備えてなる。これらの左フレーム2a、右フレーム2b、前フレーム2cは、全体として一体に形成されている。なお、各左フレーム2a、右フレーム2b、前フレーム2cを別体に形成して、固定手段等により一体化してもよいし、部分的に一体に形成してもよい。
【0033】
左右フレーム(左右のフレーム)2a,2bは、図4に示すように、略板状を呈しており、これらの間には、釣糸が巻回されるスプール4(図1(b)参照、以下同じ)が回転自在に支持されている。左右フレーム2a,2bの外側面には、側板3を構成する左側板3a,右側板3b(左右の側板)がそれぞれ装着される。左フレーム2aと左側板3aとの間には、端子部Tやクラッチ機構C等(図3(b)参照)の構成部材が取り付けられ、また、右フレーム2bと右側板3bとの間には、動力伝達機構D(図3(b)参照)等の構成部材が取り付けられる。
左フレーム2aの後部側には、スプール4を支持するスプール軸5(図3(b)参照)が挿通される挿通孔5aが形成され、また、右フレーム2bには、スプール4が挿通配置される挿通孔4bが形成されている。
また、左右フレーム2a,2b間には、図3(a)(b)に示すように、クラッチレバー8が設けられている。
【0034】
図4に示すように、左右フレーム2a,2bの上縁には、カウンターケース20が載置される段差状の載置部6a,6bが形成されている。載置部6a,6bは、カウンターケース20の後記する下面形状に対応した載置面を有しており、前後方向中央部分に形成された傾斜状の段差部6a1,6b1を境にして、前部側の載置面に比べて後部側の載置面が一段高く形成されている。また、載置部6a,6bの後端部には、立上部6a2,6b2が形成されている。
段差部6a1,6b1には、カウンターケース20の下面の段部27a2,27b2(図6(d)参照)が当接し、また、立上部6a2,6b2には、カウンターケース20の後端部26a1,26b1(図6(d)参照)が当接するようになっている。
【0035】
載置部6a,6bの前端部には、前フレーム2cに装着される前板3cに対向する当接面6a3,6b3が形成されている。この当接面6a3,6b3には、前フレーム2cの左右後端に形成された当接部336a,336bがそれぞれ当接するようになっている。
【0036】
左右フレーム2a,2bは、複数の図示しない支柱を介して一体化されており、図1(a)に示すように、下方の支柱2dには、図示しない釣竿のリールシートに装着されるリール脚2eが設けられている。
このような左右フレーム2a,2b、前フレーム2cからなるフレーム2は、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材で形成することができる。
【0037】
前フレーム2cは、左右フレーム2a,2bに開口部を有する略円筒状を呈しており、その内部には、電動モータM(図3(b)参照、以下同じ)が収容されるようになっている。前フレーム2cは、その横断面形状が略小判形状とされており、収容される電動モータMの外形状に対応したものとなっている。
前フレーム2cの上部外面2c1は、平らに面取りされており、この上部外面2c1と上方に配置されるカウンターケース20の下面のカバー部材20d(図6(d)参照)との間には、釣糸が挿通される釣糸挿通口S1(図1(a)参照、以下同じ)が形成される。上部外面2c1は、リール本体1の前方へ向けて若干傾斜する下り傾斜状とされている。このように、上部外面2c1を傾斜して形成することにより、図示しない釣竿の釣糸ガイドへ向けた釣糸の傾斜配置が可能となっている。
【0038】
前フレーム2cに前板3cを装着した状態で、上部外面2c1の前縁部2c2には、前板3cの後端縁部337が位置するようになっており、上部外面2c1と前板3cの案内面331a(図5(a)参照)とが連続するよう構成されている。
前フレーム2cの前端部には、左右フレーム2a,2bに亘るように、板状のリブ2c3が一体的に形成されている。このリブ2c3には、前板固定用のねじ孔2c4,2c4が形成されている。
【0039】
側板3は、左フレーム2aを覆う左側板3aと、右フレーム2bを覆う右側板3bと、前フレーム2cを覆う規制部材としての前板3cと、を備え、釣人の手によって握持されたり、保持されたりする部分(釣人の手が接触する部分)となる。
左側板3a、右側板3b、および前板3cは、個々に一体形成されており、左フレーム2a、右フレーム2b、および前フレーム2cにそれぞれ装着されて、全体として一体化される。そして、後記するようにして、これらの左側板3a、右側板3b、および前板3cと、フレーム2(左フレーム2a、右フレーム2b)との間に形成される空間部にカウンターケース20が収容されて(包持されて)固定されるようになっている。
【0040】
左側板3aおよび右側板3bは、左右フレーム2a,2bの載置部6a,6bに載置されたカウンターケース20を、左右方向の両側から包持することのできる左右一対の延出部31a,31bを備えている。
延出部31a,31bは、左右フレーム2a,2bの上縁部から上方へ立ち上がりつつ前方へ向けてそれぞれ一体的に延出しており、フレーム2を左右方向に二分する仮想直線(図示せず)を挟んで左右対称な形状とされ、図1(b)に示すように、上面視で基端側(後端側)に比べて先端側(前端側)が内方に向けてそれぞれ円弧状に湾曲する(円弧状に窄まる)舌片状を呈している(図4参照)。
【0041】
延出部31a,31bには、図4に示すように、その上縁部32a1,32b1から前縁部32a2,32b2に沿って、鍔部32a,32bが形成されている。
鍔部32a,32bは、延出部31a,31bの内方となるカウンターケース20側へ向けて一体的に突出形成されており、カウンターケース20の左外側面24aおよび右外側面24bに形成された後記する溝部25a,25bに対してそれぞれ係止されるようになっている(図6(a)(b)参照)。つまり、鍔部32a,32bは、カウンターケース20の溝部25a,25bに係止されてカウンターケース20の移動(上方向への移動、前方向への移動)を規制し、延出部31a,31bの間からカウンターケース20が抜けるのを規制する、抜け止め規制部として機能するようになっている。
【0042】
また、延出部31a,31bの内面には、図4に示すように、鍔部32a,32bの下縁に沿うようにして、帯状の当接面33a,33b(図7(c)参照、当接面33bのみを図示)が形成されている。このような当接面33a,33bは、カウンターケース20の溝部25a,25bの下縁部25a1,25b1(図6(b)(e)参照)に対応しており、組付時には、図7(a)に示すように、各下縁部25a1,25b1に対してそれぞれ密着するようになっている。つまり、カウンターケース20は、延出部31a,31bの鍔部32a,32bによる係止および当接面33a,33bによる密着によって、延出部31a,31bの間に挟持される(固定される)ようになっている。
【0043】
一方、延出部31a,31bは、前記したように、上面視(図1(b)参照)で基端側(後端側)に比べて先端側(前端側)が内方に向けてそれぞれ円弧状に湾曲しているので(円弧状に窄まっているので)、図7(b)に示すように、カウンターケース20の前端部において、鍔部32a,32bが溝部25a,25bに係止されることと相まって、カウンターケース20の前方への抜けが好適に防止されている。
【0044】
本実施形態では、図7(a)に示すように、延出部31a,31bが、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの下部に対して密着することなく、隙間を空けて対向配置されている。つまり、少なくともカウンターケース20の上部部分において、延出部31a,31bが前記した鍔部32a,32bや当接面33a,33bを介して密着するように構成されている。
このように延出部31a,31bの内面の全てを密着することなく、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの下部に対して意図的に隙間を空けて延出部31a,31bを対向配置することによって、延出部31a,31bやカウンターケース20の寸法精度の誤差を隙間によって吸収することができるようになり、カウンターケース20に対する延出部31a,31bの接触圧(挟持圧)のばらつきを抑制することができる。これにより、延出部31a,31bとカウンターケース20との密着性を確保することができる。したがって、延出部31a,31bやカウンターケース20の寸法精度が高精度でなくても、隙間を生じることなくカウンターケース20を挟持することが可能となり、ガタツキ等を排除して固定強度を高めることが可能となる。また、密着性を確保することができるので、水分等の侵入を好適に防止することができる。
なお、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの略全体(溝部25a,25b等を含む)に、延出部31a,31bの内面略全体(鍔部32a,32bや当接面33a,33bを含む内面略全体)が密着するように構成してもよい。
【0045】
延出部31a,31bは、図4に示すように、前縁部32a2,32b2が側面視(図7(c)参照、前縁部32b2のみ図示)で下り傾斜状に形成されており、先端部の下部には、下方へ向けて係合片34a,34bがそれぞれ突設されている。
係合片34aは、前板3cの後記する上部333の縁部内面333a(図5(a)参照)に係合されるようになっており、また、係合片34bは、同じく、上部333の縁部内面333b(図5(a)参照)に係合されるようになっている。つまり、延出部31a,31bは、それぞれの係合片34a,34bが前板3cの上部333の縁部内面333a,333bに係合されることで、相互の間隔が拡がる方向に開く(左右方向に開く)ことが規制されて延出部31a,31bの間に固定されている。ここで、縁部内面333a,333bは、特許請求の範囲における「係合部」に相当する。
また、図4に示すように、延出部31a,31bの後側には、カウンターケース20の後端左右に設けられた円筒部23a,23b(図6(a)参照)を覆うカバー部36a,36bがそれぞれ形成されている。
さらに、カバー部36a,36bの後側には、係合溝部36a1,36b1が形成されている。この係合溝部36a1,36b1には、カウンターケース20の左右後端部に設けられた係合片26a,26bが係合されるようになっている。
【0046】
このほか、左側板3aには、速度切換スイッチ37a(図1(a)(b)参照)用の取付孔37やハンドル軸7c(図3(b)参照)が挿通される軸孔30aが形成されており、軸孔30aには、ハンドル軸7c(図3(b)参照)がベアリング30a1を介して回転自在に支持されている。また、左側板3aには、ブレーキ調節つまみ3a1が回転可能に取り付けられている。
また、右側板3bには、前部下端に、給電用端子の設置孔39が開口形成されている。
【0047】
このような左側板3aおよび右側板3bは、図示しないねじを左右フレーム2a,2bの内面に設けられたボス部(図4において右側板3bにおけるボス部38b1〜38b3のみ図示)に螺合することにより左右フレーム2a,2bにそれぞれ固定されるようになっている。
【0048】
前板3cは、図5(c)に示すように、側面視で略Z形状を呈しており、図5各図に示すように、下部311と、支持部332a,332bと、上部333と、を有して構成され、これらによって囲われる開口S2を有している。開口S2は、前フレーム2cに前板3cを装着することによって、釣糸挿通口S1に挿通するようになっており(図1(a)参照)、釣糸挿通口S1の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能する。
なお、図1(a)に示すように、釣糸挿通口S1の後方には、レベルワインド機構を構成する釣糸ガイド2gが設けられている。
【0049】
下部311は、図5(c)に示すように、側断面略く字形状(一部破線で図示)を呈しており、前フレーム2cの前面(図4参照)を覆う状態に装着される(図1(a)参照)。下部311の後面下端には、前フレーム2cのリブ2c3のねじ孔2c4(図4参照)に対応する位置にボス部331cが設けられている。
【0050】
支持部332a,332bは、下部311の左右両側部から後方斜め上方へ向けて立設されており、上端部には、後方へ向けて舌片状の当接部336a,336bが突出形成されている。この当接部336a,336bは、フレーム2に設けられた当接面6a3,6b3(図5(d)参照、一方のみ図示)に対して当接可能であり、前板3cは、この当接によって前フレーム2cの前部に位置決めされるようになっている。
位置決めされた状態で、左側の支持部332aは、左側板3aの延出部31aの前端下方に形成された傾斜部35a(図4参照)の内側側方に位置してこれに接続されるようになっている。同様に、支持部332bは、右側板3bの延出部31bの前端下方に形成された傾斜部35b(図4参照)の内側側方に位置してこれに接続されるようになっている。
【0051】
上部333は、図5各図に示すように、支持部332a,332bの上端部に連続して設けられており、図5(d)に示すように、カウンターケース20の前端下部の装着部28(図6(d)参照)に当接可能な円弧状(図5(a)参照)に形成されている。上部333は、前縁部333cがリブ状に上方へ突出形成されており、図5(a)に示すように、前縁部333cの中央部分の縁部内面335dには、カウンターケース20の後記する前端片28c,28c(図6(b)(d)参照)が係合可能となっている。また、前縁部333cの両側部分の縁部内面333a,333bには、左右側板3a,3bの延出部31a,31bに設けられた係合片34a,34b(図4参照)がそれぞれ係合可能となっている。
【0052】
上部333には、前縁部333cから後方へ延出された左右一対のフック部334,334が形成されている。このフック部334,334は、フック部分を上に向けて形成されており、カウンターケース20の後記する係止溝28e,28e(図6(d)(f)参照)に対して弾力をもって係止可能となっている。
また、上部333には、中央後部に凹部338が形成されている。この凹部338には、カウンターケース20の下面に設けられた後記する突部28d(図6(d)参照)が係止されるようになっている。
つまり、前板3cは、下部311が前フレーム2cに固定されるとともに、上部333がカウンターケース20の装着部28に固定され、このように固定された状態で、係合片34a,34bを介して両方の延出部31a,31bに亘って装着され、延出部31a,31bの間が離間する方向に拡がるのを規制してカウンターケース20を固定している。
【0053】
カウンターケース20は、図6(a)に示すように、上面視で前方へ向けて緩やかに窄まる先細り形状とされており、上面には、釣糸の送り出し量等を表示するカウント表示部21や複数の操作ボタン22が配置されている。カウンターケース20の後部には、環状の操作レバー23が軸方向を左右方向に向けて回動可能に設けられている。操作レバー23の左右側部には、操作レバー23の図示しない軸端を覆う円筒部23a,23bが形成されている。
カウンターケース20の左右後端部には、係合片26a,26bが設けられている。この係合片26a,26bは、図4に示すように、左側板3aおよび右側板3bのカバー部36a,36bの後方に設けられた係合溝部36a1,36b1に係合されようになっており、左右フレーム2a,2bに左側板3aおよび右側板3bを取り付けることによって、押圧保持されるようになっている。これにより、カウンターケース20の後部が、左右フレーム2a,2bと左右側板3a,3bとの間に挟持されて、抜け止め保持されることとなる。
【0054】
カウンターケース20の左外側面24aには、図6(b)(e)に示すように、溝部25aが形成されており、右外側面24bには、図6(b)に示すように、溝部25bが形成されている。溝部25aには、前記したように、左側板3aの延出部31aに設けられた鍔部32aが係止可能であり、また、溝部25bには、右側板3bの延出部31bに設けられた鍔部32bが係止可能である。つまり、溝部25a,25bに鍔部32a,32bがそれぞれ係止されることによって、カウンターケース20は、上方向および前方向への移動がそれぞれ規制された状態で、左右側板3a,3bの延出部31a,31bに挟持されるようになっている。
【0055】
また、左外側面24aおよび右外側面24bには、図6(a)(b)(e)に示すように、側方へ向けて膨出する膨出部24a1,24b2が設けられている。これらの膨出部24a1,24b1は、左右側板3a,3bの内側面との間隔を狭めるスペーサ的な役割をなす。
【0056】
カウンターケース20の下面は、図6(d)に示すように、平らなカバー部材20dで水密に塞がれている。カウンターケース20の組付時において、カバー部材20dは、左右フレーム2a,2bの上縁の載置部6a,6bの前部側(段差部6a1,6b1(図4参照)よりも前側)に位置して、これに載置されるようになっている。
なお、カバー部材20dの左右両側部には、図示しないリードを保持するための枠状の保持部29a,29bが形成されている。本実施形態では、右側の保持部29bにボス部29cが一体的に設けられており、組付時には、このボス部29cを利用して右側板3bにカウンターケース20を予め組み付けておくようにしてもよい。
【0057】
カバー部材20dの前方には、カウンターケース20の上部ヘ向けて凹設された装着部28が形成されている。装着部28には、前板3cの上部333(図5(a)参照、以下同じ)が装着されるようになっており、上部333の前縁部333cの縁部内面335d(図5(a)参照、以下同じ)に係合可能な前端片28c,28cが突出形成されている。
また、装着部28には、上部へ向けてさらに凹設された係止溝28e,28eが形成されている。これらの係止溝28e,28eには、前板3cの前縁部333cから後方へ延出された左右一対のフック部334,334が係止可能である。
【0058】
装着部28の後部には、カバー部材20dの前端部に設けられた突部28dが位置しており、この突部28dは、前板3cの上部333(図5(a)参照)に形成された凹部335(図5(a)参照)に係止可能である。カウンターケース20の前端部は、前板3cの凹部335に突部28dが係止されることで、また、前記した前端片28c,28cの係止やフック部334,334の係止によって、ガタツキが抑えられた状態で両方の延出部31a,31bの間に保持されるようになっている。
【0059】
カウンターケース20の後部に配置される操作レバー23は、下面側が金属製のカバー27で覆われている。カバー27は、カウンターケース20の上部へ向けて凹設された左右側部27a,27bを有している。カウンターケース20の組付時において、これらの左右側部27a,27bは、左右フレーム2a,2bの上縁の載置部6a,6bの後部側(段差部6a1,6b1(図4参照)よりも後側)に位置して、これに載置される(左右方向の移動が規制された状態に載置される)ようになっている。
【0060】
カウンターケース20の内部には、図6(f)に示すように、基板P1が収容されており、基板P1には表示部品21aや操作ボタン22が接続されている。
【0061】
次に、フレーム2に側板3を組み付ける際の手順について、図8を参照しつつ各図を参照して説明する。
まず、図8(a)に示すように、左右フレーム2a,2bに跨るようにして、カウンターケース20を、載置部6a,6b(図4参照、以下同じ)に載置する。このとき、カウンターケース20の後端部26a1,26b1(図6(d)参照)を載置部6a,6bの立上部6a2,6b2(図4参照)に当接させることで、カウンターケース20を容易に位置決めすることができる。
【0062】
左右フレーム2a,2bの載置部6a,6bに、カウンターケース20を載置すると、カウンターケース20の下面のカバー部材20d(図6(d)参照)が載置部6a,6bの前部側(段差部6a1,6b1(図4参照)よりも前側)に位置し、段差部6a1,6b1(図4参照)を挟んで載置部6a,6bの後部側にカウンターケース20の後部のカバー27(図6(d)参照)が位置する。そして、カウンターケース20の後部側においては、カウンターケース20の上部へ向けて凹設された左右側部27a,27b(図6(d)参照)に載置部6a,6bが係合した状態となり、これによって、カウンターケース20の後端側は、左右方向の移動が抑えられた状態で左右フレーム2a,2bに載置されることとなる。
【0063】
その後、図8(b)に示すように、左右フレーム2a,2bに左右側板3a,3bをそれぞれ装着し、左右側板3a,3bの延出部31a,31bでカウンターケース20を左右両側から包持する。この際、延出部31a,31bに設けられた鍔部32a,32b(図4参照、以下同じ)をカウンターケース20の左右外側面24a,24b(図4参照)の溝部25a,25b(図4参照)に対してそれぞれ係止する。これにより、カウンターケース20は、延出部31a,31bの鍔部32a,32bによる係止および当接面33a,33b(図4参照)による密着によって、延出部31a,31bの間に挟持される(図7(a)参照)。
【0064】
次に、図8(c)に示すように、前フレーム2cに前板3cを装着する。装着に際しては、前板3cを、左右側板3a,3bの前端部とカウンターケース20の装着部28(図6(d)参照)との間に形成される空間部に押し込むようにして挿入する。挿入時には、カウンターケース20の下面に設けられた突部28d(図6(d)参照)に、前板3cの上部333の凹部338(図5(a)参照)が係合して前板3cの挿入が案内され、スムーズな挿入が実現される。
【0065】
その後、左右フレーム2a,2bの当接面6a3,6b3(図4参照)に、前板3cの支持部332a,332bの当接部336a,336b(図4参照)がそれぞれ当接する位置まで、前板3cを挿入する。そうすると、カウンターケース20の前端片28c,28c(図6(d)参照)が、前板3cの上部333の縁部内面335d(図5(a)参照)に係止され、これとともに、延出部31a,31bの係合片34a,34b(図4、図7(c)参照)が、上部333の縁部内面333a,333a(図5(a)参照)にそれぞれ係止される。
さらに、カウンターケース20の係止溝28e,28e(図6(d)参照)に、前板3cの左右一対のフック部334,334(図5(a)参照)が係止され、これによって、装着部28に上部333が装着される。
【0066】
装着部28に上部333が装着された状態で、延出部31a,31bの傾斜部35a,35b(図4参照)の内側側方には、前板3cの支持部332a,332bが位置してそれぞれ接続されるようになっている(図2(a)(b)参照)。
前板3cの装着後、図4に示すように、前フレーム2cのリブ2c3のねじ孔2c4,2c4を通じてねじ2c5,2c5を挿通し、これを前板3cの下部331のボス部331c,331cにそれぞれ螺合する。これによって、前フレーム2cに前板3cが固定される。
これにより、フレーム2に側板3が固定され、フレーム2と側板3との間にカウンターケース20がねじ等の固定手段を用いることなく挟持されて固定される。
【0067】
ここで、カウンターケース20は、図1(b)において破線の矢印で示すように、延出部31a,31bにより左右方向から挟持されるとともに、図2(a)(b)において破線の矢印で示すように、鍔部32a,32bの係止によってフレーム2との間に上方向および前方向から抑えられ、さらに、図5(d)において破線の矢印で示すように、前板3cの装着により鍔部32a,32bとの間に(延出部31a,31bとの間に)、前方斜め下方向から抑えられる。
つまり、カウンターケース20は、フレーム2、延出部31a,31b(左右側板3a,3b)および前板3cで囲われる収容空間内に、ねじ等の固定手段を用いずに収容され、延出部31a,31bの間から抜ける方向に移動することが、規制された状態に固定される。
【0068】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、延出部31a,31bは、左右フレーム2a,2bに取り付けられる部分からカウンターケース20の左右外側面24a,24bに向けて延出しており、カウンターケース20は、延出部31a,31bの間に包持され、規制部材としての前板3cによりこれらの間が離間する方向に拡がるのを規制されて固定されているので、ねじ等の固定手段を用いてカウンターケース20がフレーム2等に固定されるものに比べて、取付構造の自由度が制限され難くなり、フレーム2にカウンターケース20が載置される魚釣用リールにおいて、外観の自由度やデザインの自由度を高めることができる。
【0069】
また、前板3cの装着により、左右側板3a,3bの延出部31a,31bの間が、離間する方向に拡がることが規制されているので、例えば、カウンターケース20と左右側板3a,3bとの間等の部材間に、隙間が生じたりすることを好適に防止することができるようになり、組付性も損なわれることがない。したがって、生産性が高まるとともに、高品位の魚釣用リールを製造することができる。つまり、左右側板3a,3b等の寸法精度が高精度でなくても、前板3cの装着によって、隙間を生じることなくカウンターケース20を挟持することが可能となる。これにより、ガタツキ等を排除して保持強度を高めることが可能とり、高品位の魚釣用リールが得られる。
また、前板3cの装着によって、隙間を生じることなくカウンターケース20を挟持固定することが可能となるので、延出部31a,31bを、例えば、弾性変形可能な部材で形成することによって、カウンターケース20との密着性を高めることができるようになり、保持性が向上する。また、組付性も高まって生産性も向上するようになる。
【0070】
さらに、カウンターケース20の溝部25a,25bに係止される鍔部32a,32bを、延出部31a,31bに対して形成することで、カウンターケース20の抜け止めを規制する抜け止め規制部を簡単に設けることができるので、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、延出部31a,31bの間からカウンターケース20が抜けるのを確実に防止することができる。
また、抜け止めを規制するための構成が簡単であるので、そのためのコストの増加が最小限で済む。また、抜け止めを規制するための特別な設置スペースも必要としないので、全体としてコンパクトな魚釣用リールを実現することができる。
【0071】
また、前板3cが釣糸挿通口S1の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能し、釣糸挿通口S1の前方に指ガード用のカバーを別途設ける必要がなくなるので、部品点数の増加やそれに伴う重量の増大を抑えることができ、さらには、製造工数の増加も抑制することができる。このことはコストの低減に寄与する。
【0072】
(第2実施形態)
図9を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態では、第1実施形態で説明した鍔部32a,32bを設ける代わりに、延出部31a1,31b1におけるカウンターケース20との対向面31a’,31b’を、その上部側に向けて窄まるように傾斜形成して、カウンターケース20の抜け止めを図る構成としてある。
【0073】
延出部31a1,31b1は、図9(a)に示すように、カウンターケース20との対向面31a’,31b’が、その上部側に向けて窄まるように傾斜形成されており、本実施形態では、対向面31a’,31b’が、カウンターケース20に向けて湾曲凹状に形成されている。
カウンターケース20は、延出部31a1,31b1の対向面31a’,31b’に沿う傾斜した外面24a’,24b’を有しており、本実施形態では、外面24a’,24b’が対向面31a’,31b’に密着するように湾曲突状(湾曲アール状)に形成されている。
【0074】
本実施形態では、延出部31a1,31b1が、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの下部に対して密着することなく、隙間を空けて対向配置されている。つまり、少なくともカウンターケース20の上部部分において、延出部31a1,31b1が密着するように構成されている。
このように延出部31a1,31b1の内面の全てを密着することなく、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの下部に対して意図的に隙間を空けて延出部31a1,31b1を対向配置することによって、延出部31a1,31b1やカウンターケース20の寸法精度の誤差を隙間によって吸収することができるようになり、カウンターケース20に対する延出部31a1,31b1の接触圧(挟持圧)のばらつきを抑制することができる。これにより、延出部31a1,31b1の対向面31a’,31b’とカウンターケース20の外面24a’,24b’との密着性を確保することができる。したがって、延出部31a1,31b1やカウンターケース20の寸法精度が高精度でなくても、隙間を生じることなくカウンターケース20を挟持することが可能となり、ガタツキ等を排除して固定強度を高めることが可能となる。また、密着性を確保することができるので、水分等の侵入を好適に防止することができる。
なお、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの略全体(傾斜した外面24a’,24b’を含む)に、延出部31a1,31b1の内面略全体(対向面31a’,31b’を含む内面略全体)が密着するように構成してもよい。
【0075】
一方、延出部31a1,31b1は、図9(b)に示すように、横断面形状が、カウンターケース20の左右外側面24a,24bに対応して、先端側に向けて窄まるように傾斜形成されている。
なお、図示はしないが、前板3cは、第1実施形態と同様の取付構造によって固定されている。
【0076】
このような構成を有する本実施形態の魚釣用リールによれば、カウンターケース20に向けて湾曲凹状に形成された延出部31a1,31b1の対向面31a’,31b’を、カウンターケース20の湾曲突状に形成された外面24a’,24b’に密着させることによって、延出部31a1,31b1の間にカウンターケース20を抜け止め状態に挟持固定することができる。これにより、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、延出部31a,31bの間からカウンターケース20が抜けるのを確実に防止することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、延出部31a1,31b1の対向面31a’,31b’を湾曲凹状に形成したものを示したが、これに限られることはなく、直線傾斜状に形成してもよい。この場合、カウンターケース20の外面24a’,24b’を、延出部31a1,31b1の対向面31a’,31b’に沿う直線傾斜状に形成して、対向面31a’,31b’が密着するように構成する。このような構成によっても、延出部31a1,31b1の間にカウンターケース20を抜け止め状態に挟持することができ、同様の作用効果が得られる。
【0078】
(第3実施形態)
図10を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、突出部24a2,24b2と受部31a3,31b3との係合によって延出部31a2,31b2の間にカウンターケース20を抜け止め挟持した点にある。なお、図示はしないが、前板3cは、第1実施形態と同様の取付構造によって固定されている。
【0079】
延出部31a2,31b2には、図10(a)(b)に示すように、カウンターケース20との対向面に、カウンターケース20に設けられた突出部24a2,24b2が係合する受部31a3,31b3が形成されている。ここで、突出部24a2,24b2は、円柱状を呈しており、カウンターケース20の左右外側面24a,24bから延出部31a2,31b2に向けて突出形成されている。受部31a3,31b3は、突出部24a2,24b2に対応する位置に設けられており、突出部24a2,24b2が係合される大きさを備えた有底の丸穴状とされている。
【0080】
なお、図10(a)(b)においては、延出部31a2,31b2およびカウンターケース20の左右外側面24a,24bが、断面鉛直状とされたものを示したが、これに限られることはなく、断面傾斜状、断面湾曲傾斜状とされたものであってもよい。
【0081】
このような構成を有する本実施形態の魚釣用リールによれば、延出部31a2,31b2におけるカウンターケース20との対向面に、カウンターケース20に設けられた突出部24a2,24b2が係合する受部31a3,31b3を形成することで、抜け止め規制部を簡単に設けることができるので、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、両方の延出部31a2,31b2の間からカウンターケース20が抜けるのを確実に防止することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、延出部31a2,31b2にカウンターケース20の突出部24a2,24b2が係合する受部31a3,31b3を設けたが、これに限られることはなく、延出部31a2,31b2に、カウンターケース20に設けられた受部に係合する突出部を設けてもよい。
【0083】
また、突出部42a2,42b2は、円柱状としたものを示したが、これに限られることはなく、角柱状や筒状としてもよい。また、設置する個数や配置する位置も任意に設定することができる。
さらに、第2実施形態で説明した傾斜状の構成を本実施形態に組み合わせて構成してもよい。
【0084】
(第4実施形態)
図11を参照して第4実施形態の魚釣用リールについて説明する。本実施形態が前記第1〜第3実施形態と異なるところは、延出部31a,31bの前部間に亘るようにして、規制部材として機能する規制バンド360を装着した点にある。
【0085】
規制バンド360は、図11(b)に示すように、横断面が略コ字形状を呈しており、カウンターケース20の前部を左右方向に横切るようにして、延出部31a,31b間に装着され(図11(a)(b)参照)、延出部31a,31b間が離間する方向に拡がるのを規制している。
【0086】
延出部31aの前端部には、図11(b)に示すように、規制バンド360の左側部361aのフック部(係合部)362aが係合される係合受部31a5が形成されており、また、延出部31bの前端部には、規制バンド360の右側部361bのフック部(係合部)362bが係合される係合受部31b5が形成されている。
カウンターケース20には、延出部31aの係合受部31a5を収容する凹部24a5が形成されており、また、延出部31bの係合受部31b5を収容する凹部24b5が形成されている。
また、カウンターケース20の前端部には、規制バンド360が収容される収容溝20fが形成されている。
【0087】
このような構成を有する本実施形態の魚釣用リールによれば、延出部31a,31bの前部間に亘るようにして、規制バンド360を簡単に装着することができ、組み付けが簡単で生産性の向上に寄与する。また、簡単な固定構造であるので、外観の自由度やデザインの自由度を高めつつ、延出部31a,31bの間からカウンターケース20が抜けるのを確実に防止することができる。
また、抜け止めを規制するための構成が簡単であるので、そのためのコストの増加が最小限で済む。
また、収容溝20fに規制バンド360が収容されて装着されるので、延出部31a,31bに対してカウンターケース20が上下方向に変位するのを好適に抑えることができる。
なお、本実施形態では、前記第1実施形態で説明した前板3cは必ずしも設けなくてもよい。
【0088】
前記各実施形態においては、例えば第1実施形態のものを例にとると、延出部31a,31bが、左右側板3a,3bの両方に備えられ、両方の延出部31a,31bの間にカウンターケース20が挟持される構成をそれぞれ示したが、これに限られることはなく、左右側板3a,3bの一方に備えられた延出部31a(または31b)と他方の右側板3b(3a)との間にカウンターケース20を挟持するように構成して、前板3cや規制バンド360によってこれらの間が離間する方向に拡がるのを規制するように構成してもよい。この場合にも前記した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0089】
また前記第1実施形態において、鍔部32a,32bは、延出部31a,31bの上縁部32a1,32b1および前縁部32a2,32b2に亘って連続形成されたものを示したが、これに限られることはなく、非連続に形成されたものであってもよい。また、同様に、溝部25a,25bも連続形成されたものを示したが、鍔部32a,32bに対応して、非連続に形成されたものとしてもよい。
【0090】
また、前記各実施形態では、延出部31a,31b(31a1,31b1等)の間に、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの略全体が覆われるように包持されるものを示したが、これに限られることはなく、カウンターケース20の左右外側面24a,24bの一部が覆われるように包持される(左右外側面24a,24bの一部が露出するように包持される)構成としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 リール本体 20 カウンターケース(表示手段)
2 フレーム 31a,31b 延出部
2a 左フレーム 32a,32b 鍔部
2b 右フレーム 24a2,24b2 突出部
2c 前フレーム 31a3,31b3 受部
3 側板 S1 釣糸挿通口
3a 左側板
3b 右側板
3c 前板(規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体を構成する左右のフレームと、
左右の前記フレームに取り付けられる左右の側板と、
左右の前記フレームに載置される表示手段と、
左右の前記側板の両方に備えられ、前記フレームに取り付けられる部分から前記表示手段の側部に向けて延出する延出部と、
両方の前記延出部にそれぞれ係合する係合部を有して、両方の前記延出部に亘って装着される規制部材と、を備え、
前記表示手段は、
両方の前記延出部の間に包持され、前記規制部材によって、当該延出部の間が離間する方向に拡がるのを規制されて当該延出部の間に固定されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記延出部には、これらの間から前記表示手段が抜けるのを規制する抜け止め規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記抜け止め規制部は、
前記延出部の縁部から前記表示手段へ向けて突出形成され、前記表示手段に係止される鍔部であることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記抜け止め規制部は、
前記延出部における前記表示手段との対向面に設けられ、前記表示手段に設けられた突出部が係合する受部、または、前記表示手段に設けられた凹部に係合する凸部であることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記延出部は、前記表示手段との対向面がその上部側に向けて窄まるように傾斜しており、
前記表示手段は、前記対向面に沿う傾斜した外面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
リール本体を構成する左右のフレームと、
左右の前記フレームに取り付けられる左右の側板と、
左右の前記フレームに載置される表示手段と、
左右の前記側板の一方に備えられ、前記フレームに取り付けられる部分から前記表示手段の側部に向けて延出する延出部と、
左右の前記側板の一方に備えられた前記延出部と他方の前記側板とにそれぞれ係合する係合部を有して、一方の前記延出部と他方の前記側板とに亘って装着される規制部材と、を備え、
前記表示手段は、
一方の前記延出部と他方の前記側板との間に包持され、前記規制部材によって、一方の前記延出部と他方の前記側板との間が離間する方向に拡がるのを規制されて、一方の当該延出部と他方の当該側板との間に固定されていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項7】
前記規制部材は、前記リール本体の前部に設けられた釣糸挿通口に装着されるようになっており、当該釣糸挿通口の少なくとも一部を覆う指ガード用のカバーとして機能することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−21978(P2013−21978A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160266(P2011−160266)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】