説明

鳥害防止体と鳥害防止具

【課題】電線などの架設体から、からすなどの鳥類の足場を奪い、架設体への鳥害となる糞尿による劣化防止と周辺環境の汚染防止に資する鳥害防止体と鳥害防止具とを提供する。
【解決手段】所要輪郭形状で軸状の支持体の外面に所要数の突起棒が突設され、電線など架設体へ被着部が配設される鳥害防止体において、支持体2は所要長の一対の半割軸体から成り、その軸心に半円状の挟持孔が全長に渡って開口され、該挟持孔の内面要所に位置決め用の小突起が周設され、前記被着部が半割軸体の半割面に、その長手方向中央で前後対称に突起部と該突起部に嵌着する溝部とが配設される鳥害防止体1である。また、挟持孔の長手方向前後端部に溜り溝を設けた鳥害防止体1もある。鳥害防止具14は鳥害防止体1が挟持孔において多数個所要ピッチで巻き線11に挟持され、突起部と溝部との嵌着により固定され、巻き線11によって電線など架設体17に巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、からすなどの鳥類が送電線や鉄塔、二次鉄構などの水平材、電柱間に張設される電線などの架設体に止まらぬようにこれらに巻き付けて、鳥類の糞尿によるこれらの劣化防止や周辺環境の汚れ防止に資する鳥害防止体と鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
からすなどの鳥類が送電線や電柱間に張設される電線などの架設体に止まらぬようにこれらに被着され、突起等の突出物によって鳥害防止を図る技術は、特開平7−39291号公報(特許文献1)、特開平9−248118号公報(特許文献2)、特開2000−116304号公報(特許文献3)、特開2001−314147号公報(特許文献4)、特開2003−219785号公報(特許文献5)、特開2007−97456号公報(特許文献6)等が提案されているが、何れも突出物と該突出物を支持する支持体(保護管、管状体、被覆管、帯状のベルト部、取付環状部等)を直接電線等の架設体に被覆するものであるため、該架設体への被着に多くの手間を要するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−39291号公報
【特許文献2】特開平9−248118号公報
【特許文献3】特開2000−116304号公報
【特許文献4】特開2001−314147号公報
【特許文献5】特開2003−219785号公報
【特許文献6】特開2007−97456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、からすなどの鳥類の足場を失わせる突起棒を設けた支持体を巻き線に取り付け、該巻き線を電線等の架設体に巻き付けて、現場での取り付け工事の省力化と、量産化と工場生産による生産コストの削減に寄与できる鳥害防止体と鳥害防止具の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載した鳥害防止体は、所要輪郭形状で軸状の支持体の外面に所要数の突起棒が突設されるとともに、電線等の架設体への被着部が配設されて成る鳥害防止体において、
前記支持体が、所要長の一対の半割軸体から成り、該半割軸体はその軸心に半円状の挟持孔が全長に渡って開口されるとともに、該挟持孔の内面所要位置に位置決め用の小突起が周設されて成り、
前記被着部が、前記半割軸体の半割面において、その長手方向中央で前後対称に突起部と、該突起部に嵌着する溝部とが配設されて成る。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した鳥害防止体において、
前記挟持孔の長手方向前後端部に接着剤を塗り着ける溜り溝を周設して成る。
請求項3に記載した鳥害防止具は、
前記鳥害防止体が、挟持孔で巻き線に挟持され、前記突起部と溝部との嵌着により固定され、所要長の巻き線に所要ピッチで多数個固着されて成る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に記載した鳥害防止体は、支持体が同一半割軸体の一対の組合わせで形成されるため、量産が可能となって低コストで生産でき、しかも、請求項3に記載した鳥害防止具は、工場生産で巻き線に対して一対の半割軸体による鳥害防止体を接合できるから、生産コストも削減され、しかも、現場での電線等の架設体への取り付け作業は、巻き線を巻き付けるだけの極めて簡易な作業であり、架設体に取り付けられた鳥害防止具の突起棒は、からすなどの鳥類の足場を与えず、無理矢理止まろうとしても巻き線の可撓性によって突起棒が揺動して足場が奪われ、架設体への鳥類の糞尿による劣化防止や周辺環境の汚れ防止に貢献できる上、架設体への降雪落下も促進されるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る鳥害防止体1を構成する半割軸体2aの要部の斜視図。
【図2】本発明に係る鳥害防止具14の巻き線11を縦断した説明用正面図。
【図3】本発明に係る他の実施態様における鳥害防止具14の巻き線11を縦断した説明用正面図。
【図4】本発明の鳥害防止具14の巻き線11を架設体17に巻き付けた使用状態の部分説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半割軸体が一対組み合わされた支持体は、その輪郭が正八面体であり、その二面幅は8mm、長さは15mm、挟持孔の直径は2mmであり、前記二面幅の中央にそれぞれ十字状に配設される突起棒の長さは56mmである。そして、挟持孔の内面に周設される位置決め用の小突起は、軸心方向に設けられるものから、該軸心に直交する周面に設けられるものなどである。
なお、半割軸体の半割面において、長手方向中央で前後対称に設けられる突起部と該突起部に嵌着される溝部とは挟持孔の軸心を挟んで同一のものから、相互に突起部と該突起部に嵌着される溝部とから成るものでも提供される。
【実施例】
【0009】
本発明の鳥害防止体1を実施例により説明すると、図1に示すように、鳥害防止体1を構成する支持体2は、輪郭形状が正八面体の対向二面幅の中心から長手方向に向けて半割りした一対の同一半割軸体2aから成るもので、その軸心に半円状の挟持孔3が全長に渡って開口されるとともに、その前後端には接着剤を塗り着けるための溜り溝4が周設され、内面には軸心に沿って所要長の位置決め用の小突起5が周設され、巻き線11に被着される被着部6としての半割面6aには軸心を挟んで長手方向中央から前方で右方には突起部7が立設され、左方には該突起部7に嵌着する溝部8が凹設され、長手方向中央から後方で前後対称に軸心を挟んで左方には突起部7が立設され、右方には該突起部7に嵌着する溝部8が凹設され、外面を形成する両斜面9にはその長手方向中央部で90°の開き角度で突起棒10が一体に配設されて成る。
【0010】
このようにして成る半割軸体2aは射出成形により量産され、一方の半割軸体2aの挟持孔3に可撓性の巻き線11が押し込まれ、他方の半割軸体2aの前後を反転して被せると左右の各突起部7がそれぞれ左右の溝部8に嵌着し、小突起5が巻き線11の軸心方向の上下の周面に食い込み、かつ、各突起部7の外面に長手方向に沿って配設した膨出部12が、溝部8の外方側の内面に凹設した凹溝13に弾性変形を伴って嵌着し、一層強固に巻き線11に挟持され、その上、前後端の溜り溝4に接着剤を塗り着けることによって軸心方向へのずれ防止がより強固に図られ、順次に図2に示すように、巻き線11に対して所要のピッチ(120mm)で一対の半割軸体2a、2aから成る支持体2が多数個設けられて鳥害防止具14が生産されるものである。
【0011】
このほか、半割軸体2aの他の実施態様としては、図3に示すように、半割軸体2aの長手方向中央より前方には両側面に切欠き部15を設け、後方には該切欠き部15に嵌着する一対の突出壁16を立設して成り、挟持孔3の内面には前記した小突起5が軸心方向に沿って所要長設けられ、その前後端には前記と同様の溜り溝4が設けられ、外面を形成する両斜面9にはその長手方向中央部で90°の開き角度で突起棒10が一体に配設され、前記と同様に射出成形により量産されるものである。
そして、一方の半割軸体2aの半円状の挟持孔3に巻き線11が押し込まれ、他方の半割軸体2aの前後を反転して被せ、両側面の切欠き部15に一対の突出壁16を嵌着すべく押圧すると、各小突起5が巻き線11の軸心方向の上下の周面に食い込み、かつ、切欠き部15の縦縁の要所全長に渡って凹設された各凹溝13に各突出壁16の内面の要所全長に渡って配設した膨出部12が嵌着されて一層強固に巻き線11に挟持され、その上、前後端の溜り溝4に接着剤を塗り着けることによって軸心方向へのずれ防止(位置決め)がより強固に図られるものである。
このようにして成る鳥害防止具14が図4に示すように、電線等の架設体17に対して巻き線11によって巻き付けられて使用されるものである。
その結果、架設体17からはからすなどの鳥類の足場が奪われ、架設体への鳥類の糞尿付着が解消されて劣化防止が図られるとともに、周辺環境の汚染防止も図られ、さらには、降雪期による架設体への着雪も、鳥害防止具14の鳥害防止体1の揺動によって振り払われ、雪荷重の負担も軽減されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、電線等の架設体に巻き付けられて使用され、支持体に放射状に配設された突起棒によってからすなどの鳥類の足場を奪い、糞尿などによる架設体の劣化防止や周辺環境の汚染防止が図られる上、可撓性の巻き線を介して支持体が揺動し易いものであるため、架設体への着雪も軽減されるものであるから、電力業界及び配線工事業界にとって極めて有益な技術である。
【符号の説明】
【0013】
1:鳥害防止体
2:支持体
2a:半割軸体
3:挟持孔
4:溜り溝
5:小突起
6:被着部
6a:半割面
7:突起部
8:溝部
9:斜面
10:突起棒
11:巻き線
12:膨出部
13:凹溝
14:鳥害防止具
15:切欠き部
16:突出壁
17:架設体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要輪郭形状で軸状の支持体の外面に所要数の突起棒が突設されるとともに、電線等の架設体への被着部が配設されて成る鳥害防止体において、
前記支持体が、所要長の一対の半割軸体から成り、該半割軸体はその軸心に半円状の挟持孔が全長に渡って開口されるとともに、該挟持孔の内面所要位置に位置決め用の小突起が周設されて成り、
前記被着部が、前記半割軸体の半割面において、その長手方向中央で前後対称に突起部と、該突起部に嵌着する溝部とが配設されて成る鳥害防止体。
【請求項2】
前記挟持孔の長手方向前後端部に接着剤を塗り着ける溜り溝を周設して成る請求項1記載の鳥害防止体。
【請求項3】
前記鳥害防止体が、挟持孔で巻き線に挟持され、前記突起部と溝部との嵌着により固定され、所要長の巻き線に所要ピッチで多数個固着されて成る鳥害防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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