説明

鳥害防止用パイプ

【課題】既設のケーブルに容易に取付けることができ、かつ、柔軟性を有しケーブルから落下しない、安価の鳥害防止用パイプを提供する。
【解決手段】樹脂製の円形パイプ10の長手方向に沿ってSZ状にスリット11が設けられ、架空布設されたケーブルの側面から、当該ケーブルに被せることが可能なように形成されている。なお、スリット11のSZのピッチPが100mm以下で、スリット11のSZの角度θが180°〜450°で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空布設された通信ケーブルや光ケーブルを屋内に引き落とすドロップケーブル等に、鳥が留まりにくくした鳥害防止用パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱等から家屋等の建造物にドロップ、あるいは引き落とすケーブル上に、スズメ、カラス、ハト、ムクドリ等の鳥が止まると、ケーブル下に糞を撒き散らしたり近隣に対して騒音発生などの被害を与えることがある。特に、ケーブルが駐車場や停留場、交差点等を横切って張設されているような場合、ケーブル下の車や人に糞害をもたらすことが多い。このため、ケーブル上に鳥が止まりにくくするような、鳥害防止線や鳥害防止装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケーブルに鳥が留まりにくいように、ケーブルの上方にテグス糸を添設するための鳥害防止装置が開示されている。この装置は、ケーブルに仮止めされた後、本締めして固定されるヒンジ結合されたケーブル把持部と、テグス糸を巻き付けるテグス取付部を有している。
また、特許文献2には、モノフィラメントの防鳥線が開示され、設置時の作業性、耐久性等の観点からの検討がなされている。
この他、特許文献3には、ケーブルの外周に粘着物質を塗布した線材を、スパイラル状に巻き付ける方法が開示され、特許文献4には、ケーブルの外周に鳥が留まると回転する鳥害防止器を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−211534号公報
【特許文献2】特開2005−237229号公報
【特許文献3】特開2002−142653号公報
【特許文献4】特開平2−276416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に開示のような鳥害防止装置は、比較的に細径のケーブルにも着脱可能に取り付けられ、防鳥線をケーブル上に容易に添設することができる。しかしながら、防鳥線にフッ化ビニロンやナイロン糸等のテグスを用いているため、日が当たると反射して人の目に付き易く、車の運転者の視界に影響を与えたり住人には不快感を与える可能性がある。また、上記のテグス類はケーブルに比べて伸縮性が大きく、夏は伸びて弛みやすく、鳥害防止の効果低減し、冬は縮んで過度の張力がかかり切断されやすいという問題がある。
【0006】
引用文献2には、耐久性に優れ長期間の使用を可能とするモノフィラメントからなる防鳥線が提示されている。しかしながら、電線や通信線などのケーブルに対して、どのような形態で張設されるのかその使用形態が明らかでなく、また、光の乱反射を利用しているため、上記したように車の運転者の視界に影響を与えたり住人には不快感を与える可能性がある。また、引用文献3の方法は、ドロップケーブルに用いるような細径のケーブルには適さず、ケーブルに異物が付着しやすく景観上の問題があり、引用文献4の方法も同様に細径のケーブルには適さず、コスト的にも高いものとなる。
【0007】
これらの鳥害防止線や鳥害防止装置に対して、ケーブルに回転可能なパイプを手軽に被せて、鳥が留まりにくくすることが検討されている。電気ケーブルの補修、布設等で、既設ケーブルに電気絶縁等の目的でパイプを被せる方法はあるが、通常は、図5に示すような形態で行われている。図5(A)は、プラスチックパイプ1aに軸方向に直線状にスリット2を設け、このスリットを開いてケーブルに被せる形態、さらに、図5(B)のようにプラスチックパイプ1bに軸方向にスリットを設けて重ね部分3を設ける形態がある。また、図5(C)に示すように、プラスチックパイプ1cにスパイラル状のスリット5を設ける形態も考えられる。
【0008】
ドロップや引き落とし用の比較的に細径のケーブルに被せるパイプとして、鳥が止まりにくくするには、ある程度の硬さを有するプラスチックパイプが用いられるが、細径ケーブルの布設形態から曲げることも可能なものが要望されている。また、既設ケーブルに簡単に被せることができて作業性が良いこと、取付けたケーブルから外れないことが要求されている。
しかし、上記の図5(A)および図5(B)の場合は、パイプ2がケーブル1から脱落しやすく、柔軟性に欠けるという問題があり、図5(C)の場合は、柔軟性と落下に対する問題はないが、パイプをケーブル外周に回転させながらケーブルに被せる必要があり、作業性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、既設のケーブルに容易に取付けることができ、かつ、柔軟性を有しケーブルから落下しない、安価の鳥害防止用パイプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による鳥害防止用パイプは、樹脂製の円形パイプの長手方向に沿ってSZ状にスリットが設けられ、架空布設されたケーブルの側面から、当該ケーブルに被せることが可能なように形成されていることを特徴とする。なお、スリットのSZのピッチPが100mm以下で、スリットのSZの角度θが180°〜450°で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明による鳥害防止用パイプは、ドロップケーブルなどの比較的に細径のケーブルに、ケーブルから脱落することなく簡単容易に取付けることができる。そして、当該鳥害防止用パイプを用いることにより、景観上や耐久性に対する問題がなく、効果的に鳥害防止を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による鳥害防止用パイプの概略を説明する図である。
【図2】本発明による鳥害防止用パイプを光ドロップケーブルに被せた状態を示す図である。
【図3】本発明による他の鳥害防止用パイプを光ドロップケーブルに被せた状態を示す図である。
【図4】鳥害防止用パイプのSZ状スリットの形状、SZのピッチ、SZの反転角度を異ならせたときの検証結果を示す図である。
【図5】本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明による鳥害防止用パイプの一例を示し、図2はSZ状スリットの反転頂部を円弧状に形成する例を示し、図3はSZ状スリットの反転頂部をV字状に形成し、凸側を円弧状にした例を示している。図において、10〜10dは鳥害防止用パイプ、11〜11dはSZ状スリット、12は反転頂部、13は円弧、14は光ドロップケーブルを示す。
【0014】
本発明による鳥害防止用パイプ10は、図1に示すように、被せるケーブルの外径に応じた内径(例えば、15mm〜25mm)を有する太さの樹脂製の円形パイプで形成される。パイプの厚さは、0.5mm〜2mm、好ましくは1mm程度で、鳥の爪や嘴で容易に損傷を受けない厚さとされる。また、鳥が爪で掴んだ際に、円形パイプが潰されず円形形状を保っているような硬さを有している樹脂材料で形成される。樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂が価格的に安価で好ましいが、高密度ポリエチレン(HDPE)は硬すぎてケーブルに被せにくいので、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が望ましい。
【0015】
樹脂性の円形パイプには、その長手方向に沿って、S字状のスリットとZ字状のスリットを交互に形成したSZ状のスリット11が設けられる。パイプの長手方向にSZ状スリット11を設けることにより、スリットを長手方向に沿って順に開いていくことで既設ケーブルの側面から、パイプをケーブルに被せることができる。ケーブルに被せられた鳥害防止用パイプ10は、スリットがSZ状であることから、ケーブルから外れることなく保持され、また、ケーブルにはSZ状に回転させるだけで容易に被せることができる。
【0016】
樹脂性の円形パイプに形成するSZ状スリット11は、SZの反転頂部12間の距離(ピッチ)Pと、SZの反転部12の角度θにより、軸方向の柔軟性(曲げ性)、ケーブルに被せるときの作業性、SZ状スリット11を形成する作業性等が異なる。例えば、SZのピッチPが大き過ぎると直線状に近くなることから、円形パイプの柔軟性が低下し、ケーブルに被せる作業性も低下する。したがって、後述するようにSZ状スリットのSZのピッチPは、100mm以下とすることが好ましい。
【0017】
また、SZの角度θが小さ過ぎると、この場合もスリットが直線状に近くなることから円形パイプの柔軟性が低下する。しかし、SZの角度θが大きすぎると、ケーブルを被せる際の回転量が大きくなることから、ケーブルに被せる作業性が低下する。したがって、後述するように、SZ状スリットのSZの角度θは、180°〜450°の範囲内で形成されていることが好ましい。
【0018】
図2(A)の鳥害防止用パイプ10aは、SZ状スリット11aのSZの角度θが360°で、SZの反転頂部12が滑らかな円弧で形成した例を示し、図2(B)の鳥害防止用パイプ10bは、SZ状スリット11bのSZの角度θが180°で、SZの反転頂部12が滑らかな円弧で形成した例を示している。
図3(A)の鳥害防止用パイプ10cは、SZ状スリット11cのSZの角度θが360°で、SZの反転頂部12をV字状に形成した後、凸側を円弧状に丸めた例を示し、図3(B)の鳥害防止用パイプ10dは、SZ状スリット11dのSZの角度θが180°で、SZの反転頂部12をV字状に形成した後、凸側を円弧状に丸めた例を示している。
【0019】
図2(A)〜図3(B)は、本発明による鳥害防止用パイプ10a〜10dを光ドロップケーブル14に被せた状態を示す。いずれの例も、鳥が光ドロップケーブル14に被せた鳥害防止用パイプ10a〜10dを掴んで止まろうとしたときに、鳥害防止用パイプがケーブル上で回転し、鳥が止まることができないようにすることができる。
【0020】
図4は、上述したSZ状スリットの形状、SZのピッチP、SZの角度θを異ならせたときの検証結果を示す図である。
柔軟性は、パイプを300mmの径に巻いたときのパイプの状態により三段階に分類した。表中に○で示すものは、全体に筒形状が維持された場合である。△で示すものは数カ所パイプの変形が見られた場合である。×で示すものはパイプが完全に座屈した場合である。
【0021】
作業性は、5mの長さのドロップケーブルに鳥害防止用パイプを被せるときの被せやすさを三段階に分類した。筒状の治具を使用して鳥害防止用パイプのスリットを広げ、その広がった部分をドロップケーブルに被せ、治具から鳥害防止用パイプを引き抜いて鳥害防止用パイプの形状を元に戻して鳥害防止用パイプをドロップケーブルに被せることを鳥害防止用パイプの長さ方向に連続して繰り返した。表中に○で示すものは、鳥害防止用パイプが治具から一度も外れることなくドロップケーブルに鳥害防止用パイプを被せることができた場合である。△で示すものは鳥害防止用パイプが数回治具から外れて多少手間がかかった場合である。なお、ドロップケーブルに鳥害防止用パイプを被せることができない場合を×としたが、表に示す例ではなかった。
【0022】
試料No.1は、SZ状スリットの反転頂部をV字状、ピッチPを50mm、角度θを360°とした例で、柔軟性と製造性は良かったが、作業性については鳥害防止用パイプをドロップケーブルに被せるのに多少の手間を要した。試料No.2は、図3に示した形態で、試料No.1のSZ状スリットの反転頂部で凸側を丸めた形状とし、ピッチPを40mm、角度θを360°とした例で、凸側を丸めたことでV字状部の閉じ合わせが改善され、作業性は良くなったが、製造性については凸側を丸めることで多少低下した(図4には△で示す)。
【0023】
試料No.3は、図1,2に示したSZ状スリットの反転頂部を滑らかな円弧で形成し、ピッチPを40mm、角度θを270°とした例で、試料No.1,2に比べて角度θが多少小さいことから柔軟性に劣るが、ケーブルに被せる作業性が良く、また、スリットを入れる作業が簡単で製造性が良くなった。
試料No.4は、試料No.2のピッチPを1/2の20mmにすると共に、角度θを270°とした例で、ピッチPを小さくしたことから柔軟性が極めて良くなった。ケーブルに被せる作業性と、スリットを入れる製造性についてはほぼ同程度であった。
【0024】
試料No.5は、試料No.3のピッチPを2.5倍の100mmにすると共に、角度θを280°とした例で、試料No.3と柔軟性、作業性、製造性に大差はなかった。
試料No.6は、試料No.3のピッチPをほぼ同程度の50mmにすると共に、角度θを1/3.5の80°とした例で、作業性と製造性は良好であったが、角度θを小さくしたことからスリットが直線状に近くなり柔軟性が大きく低下した。
また、試料No.7は、試料No.5のピッチPを2倍の200mmにとした例で、製造性は良好であったが、ピッチPを大きくしたことから、柔軟性が低下する以外に作業性も低下した。
【0025】
上記の検証結果から、SZ状スリットのピッチPが大き過ぎると、パイプの柔軟性が低下し、ケーブルに被せる作業性も低下することが確認された。したがって、検証結果からSZ状スリットのピッチPは100mm以下とすることが好ましい。
また、SZ状スリットの角度θが小さ過ぎると、この場合もパイプの柔軟性が低下することが確認された。しかし、SZの角度θが大き過ぎても、ケーブルを挿入する際の回転作業量が増大し、ケーブルをSZ状スリットに通過させる作業が多くなり製造性が低下することが想定される。したがって、SZ状スリットの角度θは、検証結果から180°〜450°程度の範囲内で形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0026】
10〜10d…鳥害防止用パイプ、11〜11d…SZ状スリット、12…反転頂部、13…円弧、14…光ドロップケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の円形パイプの長手方向に沿ってSZ状にスリットが入れられ、架空布設されたケーブルの側面から、当該ケーブルに被せることが可能なように形成されていることを特徴とする鳥害防止用パイプ。
【請求項2】
前記スリットのSZのピッチが100mm以下で形成されていて、かつ前記スリットのSZの角度が180°〜450°で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鳥害防止用パイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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