説明

鳥獣忌避剤

【課題】使い方が簡単であり、自然環境へ悪影響を及ぼすことなく長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を発揮し、製造も容易な鳥獣忌避剤を提供する。
【解決手段】鳥獣忌避剤10は、消石灰11と、木磁粉12と、人毛13と、木酢液14と、肉食獣の排泄物15との混練物16を造粒17した後、乾燥・固化18させることによって形成されたものである。鳥獣忌避剤10は、外径が3mm〜30mm程度の褐色の球状体であり、1粒の質量は約0.1g〜8g程度である。鳥獣忌避剤10を、鳥獣の侵入を回避したい領域若しくはその周辺の地面上に散布しておけば、当該鳥獣忌避剤10に含まれる人毛13、木酢液14及び肉食獣の排泄物15が、それぞれ人間の臭い、刺激臭及び肉食獣の臭いを発するため、鳥獣類は警戒して前記場所に接近しなくなり、優れた鳥獣忌避効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物や森林資源に被害を与えたり、住宅地やゴミ収集場所等に様々な悪影響を及ぼしたりする各種鳥獣を忌避するための薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鳥獣忌避剤としては、柑橘系の果皮から抽出した薬効成分を多孔性天然粘土鉱物に担持させ、その表面に皮膜処理を施したもの(例えば、特許文献1参照。)、揮発性で臭気を出す忌避剤を内蔵するマイクロカプセル粒子を水又は有機溶剤中に分散させたもの(例えば、特許文献2参照。)、ポリプデンとポリイソブチレンの共重合体等の特定化学成分を含むもの(例えば、特許文献3参照。)等がある。また、木酢液を主成分とする液状の鳥獣忌避剤も開発されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−78219号公報
【特許文献2】特開平11−12105号公報
【特許文献3】特開平11−292709号公報
【特許文献4】特開2004−43314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3記載の鳥獣忌避剤は、組成が複雑であり、入手が困難な成分も含んでいるため、容易に製造することができない。また、自然環境への影響が不明な化学成分を含んでいたり、鳥獣忌避作用が長期間持続しなかったりするものがある。一方、特許文献4記載の鳥獣忌避剤は自然環境への悪影響は小さいと思われるが、鳥獣忌避作用が比較的短期間で失われる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、使い方が簡単であり、自然環境へ悪影響を及ぼすことなく長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を発揮し、製造も容易な鳥獣忌避剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鳥獣忌避剤は、自然界から採取された固化剤と、木磁粉と、人毛と、木酢液と、肉食獣の排泄物と、を含むことを特徴とする。ここで、木磁粉とは、気密性を有するケーシング内に収容した木材、樹皮に、磁場を通過させた空気を供給しながら、約250℃程度の温度を維持して燻焼することによって形成される、磁性を有する粉状体をいう。
【0007】
このような構成の鳥獣忌避剤を、鳥獣類の接近を回避したい場所に予め散布すれば、当該鳥獣忌避剤に含まれる人毛、木酢液及び肉食獣の排泄物が、それぞれ人間の臭い、刺激臭及び肉食獣の臭いを発するため、鳥獣類は警戒して前記場所に接近しなくなり、優れた鳥獣忌避作用を得ることができる。この場合、固化剤は当該鳥獣忌避剤を一定形状に固める作用を有し、木磁粉は固化剤による固化物を多孔質化する作用を有し、人毛は木酢液や肉食獣の排泄物の臭いが短時間で蒸散するのを防ぐ作用を有している。さらに、木磁粉は、鳥類が嫌う磁性を有しているため、特に鳥類の接近を防止することができ、鳥類が当該鳥獣忌避剤を誤食して死亡する事故も防止することができる。
【0008】
また、本発明の鳥獣忌避剤を構成する固化剤、木磁粉、人毛、木酢液及び肉食獣の排泄物はいずれも自然界に存在するものであるため、自然環境へ悪影響を及ぼすことなく長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を発揮する。
【0009】
次に、本発明の鳥獣忌避剤は、自然界から採取された固化剤と、木磁粉と、人毛と、木酢液と、肉食獣の排泄物との混練物を造粒、固化させて形成したことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、前述と同様、自然環境へ悪影響を及ぼすことなく長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を得ることができる。また、固化剤と、木磁粉と、人毛と、木酢液と、肉食獣の排泄物との混練物を造粒、固化させるだけで完成するので、製造は容易である。さらに、粒状の鳥獣忌避剤を対象領域に散布すれば、所定の鳥獣忌避効果を得ることができるので、使い方も簡単である。
【0011】
ここで、前記固化剤として、消石灰、リグニン、穀粉のいずれか1以上を用いることができる。これらの物質はいずれも自然界から採取されるものであるため、自然環境へ悪影響を回避することができる。
【0012】
また、前記木磁粉として、杉の樹皮を原料とするものを用いることができる。このような構成とすれば、鳥獣忌避剤の多孔質化及び磁性強化に有効であるほか、日本の木材産業において比較的多く発生する杉の樹皮を有効活用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、使い方が簡単であり、自然環境へ悪影響を及ぼすことなく長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を発揮し、製造も容易な鳥獣忌避剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態である鳥獣忌避剤を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の鳥獣忌避剤10は、外径が3mm〜30mm程度の褐色の球状体であり、1粒の質量は約0.1g〜8g程度であるが、これに限定するものではない。鳥獣忌避剤10の使い方についても特に限定しないが、例えば、鳥獣の侵入を回避したい領域若しくはその周辺の地面に散布するのが一般的である。
【0016】
鳥獣忌避剤10を、鳥獣類の接近を回避したい場所に予め散布しておけば、当該鳥獣忌避剤10に含まれる人毛の擂潰物、木酢液及び肉食獣の排泄物が、それぞれ人間の臭い、刺激臭及び肉食獣の臭いを発するため、鳥獣類は警戒して前記場所に接近しなくなり、優れた鳥獣忌避作用を得ることができる。
【0017】
鳥獣忌避剤10を散布する場合、その散布領域は線状、面状、スポット状等、任意に設定することができるが、ある程度の広さをもった領域に面状に散布すれば、その散布領域に侵入してきた動物は広範囲に存在する鳥獣忌避剤10が発する人間及び肉食獣の臭い等により、自分の周り全てを多くの人間や肉食獣に包囲されたように錯覚し、パニック状態に陥る可能性が高いため、その侵入動物は強烈な体験を学習し、二度と接近しなくなる、という顕著な効果を得ることができる。
【0018】
鳥獣忌避剤10の使い方は限定するものではないので、例えば、通気性を有する袋や箱に鳥獣忌避剤10を充填したものを対象領域に配置したり、対象地域の樹木等に吊り下げたりすることもできる。
【0019】
次に、図2,3に基づいて、鳥獣忌避剤10の製造方法について説明する。図2は図1に示す鳥獣忌避剤の製造工程を示す図、図3は図2に示す木磁粉及び木酢液の製造工程を示す図である。
【0020】
図2に示すように、原材料である、消石灰11と、木磁粉12と、人毛13と、木酢液14と、肉食獣の排泄物15と、を充分に混合して、混練物16を作る。本実施形態においては、消石灰15を50g〜150g、木磁粉12を500g〜1500g、人毛13を7g〜10g、木酢液14を400ml〜600ml、肉食獣の排泄物15を7g〜10gを混合しているが、これは一例であり、これに限定するものではない。
【0021】
消石灰11、木磁粉12、人毛13、木酢液14及び肉食獣の排泄物15が均一に混じり合った混練物16が形成されたら、これを造粒装置(図示せず)に投入して造粒17を行った後、乾燥装置(図示せず)を用いて乾燥・固化18させると、褐色で球状をした鳥獣忌避剤10が完成する。
【0022】
消石灰11は天然の石灰岩から製造されたものを使用し、人毛13は美容院や理容院から回収される頭髪を使用し、肉食獣の排泄物15は動物園などから排出される肉食獣の糞尿を合法的に入手したものを使用している。なお、美容院や理容院から回収される頭髪を擂潰装置(図示せず)で擂り潰して作られた人毛13の擂潰物を使用することもできる。
【0023】
木磁粉12及び木酢液14については、図3に示す燻焼装置20を用いて製造したものを使用することができる。燻焼装置20においては、気密性を有するケーシング21内に杉の樹皮22が収容され、外周に磁石24が配置された給気経路23内を経由して導入される空気をケーシング21内に供給しながら、約250℃程度の温度を維持して杉の樹皮22を燻焼する。このように、磁石24によって給気経路23内に形成された磁場を通過した空気をケーシング21内に供給しながら、約250℃程度の温度を維持して杉の樹皮22を燻焼すると、燻焼完了後、ケーシング21内には、磁性を有する木磁粉12が残留する。
【0024】
一方、杉の樹皮22の燻焼過程においては、燻焼装置20のケーシング21から煙及び蒸気等が排出されるが、これらの煙及び蒸気等を、所定の冷却回収装置(図示せず)を用いて冷却すると木酢液14が形成される。このように、鳥獣忌避剤10の原料の一部である、木磁粉12及び木酢液14は、図3に示す燻焼装置20を用いて杉の樹皮22を燻焼することによって生成される木磁粉12及び木酢液14を用いることができる。
【0025】
鳥獣忌避剤10を構成する消石灰11、木磁粉12、人毛13、木酢液14及び肉食獣の排泄物15はいずれも自然界に存在するものであるため、鳥獣忌避剤10を自然の野山や平野に散布しても自然環境へ悪影響を及ぼすことがなく、長期間に渡って確実な鳥獣忌避作用を発揮する。木磁粉12の原料として杉の樹皮22を使用することにより、日本の木材産業において比較的多く発生する杉の樹皮22を有効活用することができる。
【0026】
また、消石灰11、木磁粉12、人毛13、木酢液14及び肉食獣の排泄物15の混練物16を造粒17、乾燥・固化18させれば鳥獣忌避剤10が完成するので、製造は容易である。さらに、球状の鳥獣忌避剤10を対象領域に散布すれば、所定の鳥獣忌避効果を得ることができるので、使い方も簡単である。なお、自然界から採取された固化剤としては、消石灰11以外に、リグニンや穀粉(小麦粉、米粉等)を使用することもできる。
【0027】
次に、図4,図5に基づいて、本発明のその他の実施の形態について説明する。図4は本発明のその他の実施の形態である鳥獣忌避剤を示す断面図、図5は図4に示す鳥獣忌避剤の使い方を示す斜視図である。
【0028】
図4(a)に示す鳥獣忌避剤30は、前述した鳥獣忌避剤10(図1参照)よりも外径の大きな球状であり、その直径方向に貫通孔31が設けられ、貫通孔31両端の開口部31aが外周面に露出している。図4(b)に示す鳥獣忌避剤40は楕円球状であり、その長径方向に貫通孔41が設けられ、貫通孔41両端の開口部41aが外周面に露出している。
【0029】
図5(a)に示すように、下端に結び目を設けたロープRを複数の鳥獣忌避剤30の貫通孔31に通して、いわゆる数珠繋ぎにすれば、対象地域の樹木等に吊り下げて使用することができる。また、図5(b)に示すように、複数の鳥獣忌避剤40の貫通孔41に通した状態としたロープRを水平方向に張設することもできる。このような使い方をすれば鳥獣忌避剤30,40は地上より高い位置に配置されるため、その配置領域や消耗状態(経時変化)等が分かり易くなる。また、鳥獣忌避剤30,40が踏み潰されたり、地中に埋没したりするのを回避することもできる。なお、鳥獣忌避剤30,40の使い方はこれらに限定するものではないので、使用条件に応じて任意に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の鳥獣忌避剤は、鳥獣による被害を受ける可能性のある山間部や平野部あるいは住宅地域などにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態である鳥獣忌避剤を示す斜視図である。
【図2】図1に示す鳥獣忌避剤の製造工程を示す図である。
【図3】図2に示す木磁粉及び木酢液の製造工程を示す図である。
【図4】本発明のその他の実施の形態である鳥獣忌避剤を示す断面図である。
【図5】図4に示す鳥獣忌避剤の使い方を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10,30,40 鳥獣忌避剤
11 消石灰
12 木磁粉
13 人毛
14 木酢液
15 肉食獣の排泄物
16 混練物
17 造粒
18 乾燥・固化
20 燻焼装置
21 ケーシング
22 杉の樹皮
23 給気経路
24 磁石
31,41 貫通孔
31a,41a 開口部
R ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然界から採取された固化剤と、木磁粉と、人毛と、木酢液と、肉食獣の排泄物と、を含むことを特徴とする鳥獣忌避剤。
【請求項2】
自然界から採取された固化剤と、木磁粉と、人毛と、木酢液と、肉食獣の排泄物との混練物を造粒、固化させて形成したことを特徴とする鳥獣忌避剤。
【請求項3】
前記固化剤が、消石灰、リグニン、穀粉のいずれか1以上である請求項1又は2記載の鳥獣忌避剤。
【請求項4】
前記木磁粉が、杉の樹皮を原料とするものである請求項1〜3のいずれかに記載の鳥獣忌避剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27953(P2009−27953A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193698(P2007−193698)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(399078420)株式会社丸京石灰 (1)
【Fターム(参考)】