説明

鳥獣進入防護柵

【課題】本発明は、従来の防御方法に加えて、鳥獣が持つ優れた視覚や嗅覚を逆に利用したり、鳥獣の習性を利用して眼前を遮断することにより、従来の欠点を無くした鳥獣進入防護柵を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、等間隔に配置した複数の縦鉄線に対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線を溶接して格子状の金網を形成する際に、前記縦鉄線と前記横鉄線の間に交差部に孔を空けた防護材を1枚挟みこんだことを特徴とする鳥獣進入防護柵の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猪などの進入を防止する鳥獣進入防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている猪などの防獣(鳥)フェンスとしては、溶接金網(高さ1m)やトタン(高さ900mm)を用いたものや、7000Vの高圧電流を通じて電気ショックで進入を防ぐものが一般的である。
【0003】
特許文献1に記載されているように、略等間隔に上下方向に渡って張られる複数の縦桟と、縦桟に対して直交方向に張られる複数の横桟とにより格子状に形成された格子フェンス部が、支柱に支えられて形成された猪進入防止柵の発明も公開されている。
【特許文献1】特開2002−233293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の柵は、獣や鳥の学習効果により易々クリアされ、防御効果が失われている。例えば、フェンスの場合、猪は助走が無くても1m程度は軽く飛び越えられ、助走を付ければ1.4mは軽く飛び越える運動能力を有する。
【0005】
また、電気ショックを利用する場合は、猪の鼻のように体毛の無い場所に電線が接触すればハンマーで打撃したような衝撃を与えることができるが、体毛が有る部分が接触した場合にはショックを与えられない。
【0006】
さらに、瓜坊と呼ばれる子猪は、配線された下を楽々と潜り抜けることができ、成獣でも20cmの隙間があれば有刺鉄線等を潜り抜けることが可能である。
【0007】
加えて、電気ショック方法は、雑草が生長すると配線に接触して漏電が発生し、電気ショックの効果が半減するため、絶えず草を刈り取っておく必要があり、人件費など多くのコストを要することとなる。
【0008】
そこで、本発明は、従来の防御方法に加えて、鳥獣が持つ優れた視覚や嗅覚を逆に利用したり、鳥獣の習性を利用して眼前を遮断することにより、従来の欠点を無くした鳥獣進入防護柵を提供することを目的とするものである。
【0009】
尚、猪は、優れた色彩感覚を持ち、特に青色に敏感に反応する。また、嗅覚もかなり鋭敏で、地中のタケノコやトリュフを見つけるのに活用されている。さらに、警戒心が強く前方が確認できないと進まない性質を持つことが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、等間隔に配置した複数の縦鉄線に対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線を溶接して格子状の金網を形成する際に、前記縦鉄線と前記横鉄線の間に交差部に孔を空けた防護材を1枚挟みこんだことを特徴とする鳥獣進入防護柵の構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、格子状の金網の縦鉄線と横鉄線を溶接する際に、間に防護材を挟んで先が見えないようにすることで、鳥獣の進入を防止することができる。
【0012】
また、防護材に鳥獣が嫌気する色や臭いを付けることにより、鳥獣の持つ潜在的性質を利用して不安感を高揚させることで、防止効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、鳥獣の進入を効果的に防止するという目的を、等間隔に配置した複数の縦鉄線に対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線を溶接して格子状の金網を形成する際に、前記縦鉄線と前記横鉄線の間に交差部に孔を空けた防護材を1枚挟みこんだことを特徴とする鳥獣進入防護柵により実現した。
【実施例1】
【0014】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である鳥獣進入防護柵について詳細に説明する。図1は、本発明である鳥獣進入防護柵の正面図である。
【0015】
鳥獣進入防護柵1は、等間隔に配置した複数の縦鉄線2aに対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線2bを溶接して格子状の金網2を形成する際に、前記縦鉄線2aと前記横鉄線2bの間に交差部2cに孔3aを空けた防護材3を1枚挟みこんだことを特徴とする。
【0016】
鳥獣進入防護柵1は、猪や豚などの獣や、鶏などの鳥が、入って来て欲しくない領域に進入するのを防止するために設ける仕切りである。尚、鳥獣の種類や防護目的に合わせて、設置位置や高さ、サイズ、配置個数などを適宜選択することができる。
【0017】
図2は、本発明である鳥獣進入防護柵の金網の正面図である。金網2は、複数の縦鉄線2aと複数の横鉄線2bを交差させて格子状にした枠である。尚、交差部2cは、縦鉄線2aと横鉄線2bが重なっている部分であり、空部2dは、縦鉄線2aも横鉄線2bもない表側から裏側へ貫通する空間である。
【0018】
複数の縦鉄線2aを平行に等間隔に配置し、複数の横鉄線2bを縦鉄線2aと直交するように一定間隔を置いて載せ、縦鉄線2aと横鉄線2bの各接点を溶接することにより、金網2を形成する。
【0019】
縦鉄線2a及び横鉄線2bは、各種金属材料を用いるが、竹や木材等の植物性材料、ビニール樹脂等の化学材料、又はこれらに類似した材料を、単一又は組み合わせた複合材料を用いることもできる。
【0020】
金網2の形状は、平状でも湾曲させても構わない。設置場所に応じて複雑な形状を採ることも可能である。また、1つのサイズを拡げても良いし、小さいサイズのものを複数組み合わせても良い。
【0021】
硬い材質で格子状にすることで、大きめの獣などが衝突しても通過されるのを物理的に防止する。尚、縦鉄線2aの間隔と横鉄線2bの間隔を狭くし、空部2dを小さくすれば、小動物にも対応することができる。
【0022】
図3は、本発明である鳥獣進入防護柵の保護材の正面図である。防護材3は、金網2の空部2dを塞ぎ、不透明性を持たせるものであり、金網2の縦鉄線2aと横鉄線2bの間に挟み込むことで、剥がれたり捲れたりすることなく取り付けることができる。
【0023】
防護材3は、布や樹脂など金網2に比べて軟らかい材質であり、目を粗くすれば網状となり、目を細かくすればシート状になる。小さい鳥などが衝突しても受け止めることも可能であるし、空部2dよりも小さい虫等の通過も制限することができる。
【0024】
防護材3は、金網2に挟めれば良いので、シート状、ロール状、短冊状、リボン状、錏状、すだれ状(ブラインド)、カーテン状(水平開き)等又はこれに類似する形状とすることができる。
【0025】
防護材3には、金網2に挟み込んだ際に交差部2cにあたる箇所に孔3aを空ける。孔3aの位置で縦鉄線2aと横鉄線2bとが溶接される。尚、網状であれば、網の目を利用して金網2の溶接をすることが可能である。
【0026】
防護材3には、鳥獣が嫌気する色を含浸又は塗布により着色する。鳥獣の種類により色は異なるが、鳥獣の持つ潜在的性質を利用して不安感等を高揚させることで、鳥獣が寄り付かないようにすることができる。
【0027】
また、防護材3に鳥獣が嫌気する臭いを付しても良い。色と同様に鳥獣を寄せ付けなければ、鳥獣の衝突により鳥獣進入防護柵1が破壊されたり、鳥獣自体が傷付くことも防ぐことができる。
【0028】
防護材3は、目的に応じて、バードネット、寒冷紗、農業用ネット、防草ネット又は他の素材等を使い分けることができる。例えば、不透明性を利用して不安感を煽る場合には、目が細かく透けない素材を用いる等である。
【0029】
図4は、本発明である鳥獣進入防護柵の交差部の拡大図である。図5は、本発明である鳥獣進入防護柵の側面図である。
【0030】
縦方向に配置した縦鉄線2aと、その上側に横方向に載置した横鉄線2bの間に、防護材3を挟み込むので、縦鉄線2aと横鉄線2bの交差部2cを溶接するには、防護材3の当該箇所に孔3aを空けておく。
【0031】
防護材3を単に金網2に接着等する訳ではないので、防護材3は金網2から簡単に剥がすことはできない。そのため、鳥獣進入防護柵1の品質を維持し、寿命を大幅に延ばすことが可能となる。
【0032】
図6は、本発明である鳥獣進入防護柵の使用状況を示す図である。鳥獣進入防護柵1は、鳥獣の進入を防止したい場所に、鳥獣の種類に応じて、必要なサイズ及び必要な高さで設置する。尚、防護材3の取付範囲も、鳥獣の種類に応じて、決定すれば良い。
【0033】
例えば、猪の場合、鳥獣進入防護柵1の高さは、猪が飛び越えることができない高さで、且つ、下側を潜り抜けられないように設置し、防護材3は、向こう側が見えないように猪の視界を遮ることができる範囲で取り付ける。
【実施例2】
【0034】
図7は、本発明である鳥獣進入防護柵の第2実施例の正面図である。図8は、本発明である鳥獣進入防護柵の第2実施例の側面図である。
【0035】
鳥獣進入防護柵1aは、等間隔に配置した複数の縦鉄線2aに対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線2bを溶接して格子状の金網2を形成し、前記金網2を2枚の防護材4、4aで挟み込み、前記防護材4、4a同士を接着したことを特徴とする。
【0036】
鳥獣進入防護柵1aでは、金網2を防護材4と防護材4aで挟み込み、金網2の空部2dを利用して防護材4と防護材4aの内側同士を接着又は熱融着することにより、金網2に防護材4、4aを取り付ける。
【0037】
金網2の交差部2cが接着されない箇所となるので、防護材4及び防護材4aに孔を空ける必要はない。金網2を溶接してから防護材4、4aを貼り付ければ良いので、加工が非常に容易である。
【0038】
防護材4と防護材4aを貼着するので目の細かい素材を選択する必要がある。また、金網2の交差部2cで盛り上がり、空部2dで窪む状態となるため、軟らかい素材を用いることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明である鳥獣進入防護柵の正面図である。
【図2】本発明である鳥獣進入防護柵の金網の正面図である。
【図3】本発明である鳥獣進入防護柵の保護材の正面図である。
【図4】本発明である鳥獣進入防護柵の交差部の拡大図である。
【図5】本発明である鳥獣進入防護柵の側面図である。
【図6】本発明である鳥獣進入防護柵の使用状況を示す図である。
【図7】本発明である鳥獣進入防護柵の第2実施例の正面図である。
【図8】本発明である鳥獣進入防護柵の第2実施例の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 鳥獣進入防護柵
1a 鳥獣進入防護柵
2 金網
2a 縦鉄線
2b 横鉄線
2c 交差部
2d 空部
3 防護材
3a 孔
4 防護材
4a 防護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等間隔に配置した複数の縦鉄線に対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線を溶接して格子状の金網を形成する際に、前記縦鉄線と前記横鉄線の間に交差部に孔を空けた防護材を1枚挟みこんだことを特徴とする鳥獣進入防護柵。
【請求項2】
等間隔に配置した複数の縦鉄線に対し、一定間隔ごとに複数の横鉄線を溶接して格子状の金網を形成し、前記金網を2枚の防護材で挟み込み、前記防護材同士を接着したことを特徴とする鳥獣進入防護柵。
【請求項3】
防護材に鳥獣が嫌気する色を含浸又は塗布により着色したことを特徴とする請求項1又は2に記載の鳥獣進入防護柵。
【請求項4】
防護材に鳥獣が嫌気する臭いを付したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鳥獣進入防護柵。
【請求項5】
防護材をバードネット、寒冷紗、農業用ネット又は防草ネットのいずれかとしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鳥獣進入防護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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