説明

鴨居材及びそれを用いた枠材

【課題】 戸枠の外形寸法を同じにすることができる建具を案内する案内溝を有する鴨居材及び該鴨居材を備えた戸枠を提供する。
【解決手段】 鴨居材1の少なくとも正面に所要の幅の見付け2面を設け、該見付け面2より下の位置から鴨居材底面の引き戸案内用溝の近傍に至るまでを切り欠いて、切欠き部3と建具案内溝6との間に突条部5を形成し、該突条部5の切欠き部側の側面4を斜面ないし曲面としたことを特徴とする建具を案内する案内溝を有する鴨居材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に設けられる枠材に関するもので、特に建具案内溝を鴨居材に有する枠材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の出入り口としての開口部や大きな部屋を2つに仕切るなどの仕切り部には建具が多く使用されている。しかし、建具にはその使用目的に応じて種々の形式のものがあり、例えば、敷居材と鴨居材にそれぞれ設けた凹溝に下端と上端を挿入してスライドさせる引き戸や、引き戸あるいは折れ戸を鴨居材内に設けたレール内を自由に移動する吊り車によって吊り下げた形式のものなどが知られている(例えば、特許文献1)。
これらの例を図11に示す。図中、Aはシングルドア(開き戸)、Bは下端に戸車を備え上端にガイドを有する形式の引き戸、Cは敷居上または床上に設けたガイドに規制されてスライドされる上吊り引き戸、Dは上に吊り車下に戸車を備えたクローゼット用の折れ戸
の各戸と枠材を示す。この図からわかるように、Aの開き戸aの場合には上枠材(鴨居材)1aに案内溝等の加工を必要としないが、BからDの引き戸枠あるいは折れ戸枠の場合には建具b〜dの種類によって、枠材の形状、特に鴨居材1b〜1dの厚さ(上下方向の寸法)が異なるものとなっている。このことは、建具の上端に設けるガイドや建具の吊り車の形式によって鴨居材に設ける案内溝の加工深さが異なるためで、更にはBの例のように引き戸の上端部が鴨居材内に隠れるようにするなどの形式とすることによって、鴨居材に設ける案内溝の深さが異なるためである。
【特許文献1】特開2002−227505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、住宅等の建築で躯体を組み上げる際に設ける出入り口のための開口の大きさは、取り付ける戸枠やドアや引き戸の種類に応じて異なる大きさとすることは作業が煩雑となるためほぼ同じ大きさに作ることが望ましい。これら市場のニーズを満たすために枠材メーカーは、建具の外形、すなわち、上枠(鴨居材)、左右の縦枠および下枠(敷居材)からなる戸枠の大きさがほぼ同じものを製造することが一般的であった。縦枠が規格化できるだけあまり規格化できない建具の寸法もかえなければならない。
しかしながら、建具の種類によって鴨居材の厚さが異なる場合には、左右の縦枠の見付け面の幅(見付け幅)と鴨居材の見付け幅が異なるものとなったり、また見付け幅を揃えると鴨居材の厚さが異なる分だけケーシングの位置あるいは幅が一定のものにならず調和のとれないものとなっている。この鴨居材の見付けの不調和は、特に和室の場合には、室内の鴨居等との調和の問題もあり、重要である。また、建具の寸法を全て変えなければならないので、枠材より工数の多い建具の製造において共通の部材、共通の加工機設定で製造できないといった問題もある。そのため、従来は出入り口開口の上下方向の寸法をやや大きめとしていた。
本発明は、構造が簡単で、枠全体としての調和も、また、室内の鴨居等との調和もよく、煩雑な取付け作業の必要もない引き戸枠を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の引き戸枠は、鴨居材の前面および/または後面に所定の幅(上下方向の幅)の見付け面を設け、鴨居材の該見付け面の下端角部を切り欠いて、該切欠き部の引き戸正面から見える面を斜面ないし曲面としたことを特徴とするものである。
より詳しくは、本発明は、鴨居材の前面および/または後面(以下単に前面とのみ記す。)に見付け面を設け、該見付け面の下端の位置から鴨居材底面の引き戸案内用溝の近傍に至るまでを切り欠いて、切欠き部と引き戸案内用溝とで形成される突条部の切欠き部側の側面を斜面ないし曲面としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は上記の如く鴨居材の前面の形状を特殊な形状とすることによって、引き戸枠を正面から見たとき、鴨居材の見付け面を左右の縦枠ないしは敷居材あるいはたの鴨居材の見付け面と調和のとれた幅、例えば、縦枠の見付けと同じ幅に視認することができ、室内の他の建具等との調和を妨げることがない。
鴨居材は通常立っている人の目線のやや上方にあるため、本発明の鴨居材の前記切欠き面が視覚的に存在感を希薄化し、鴨居材の見付け面と縦枠の見付け面とは同じ幅に見える効果を奏する。そのため、本発明の枠材は、建具の種類に応じて鴨居材の厚さが異なるものとなっても、前記切欠き面の大きさ、形状のみを考慮すればよいため、戸枠の大きさを一定なものとすることができ、量産が可能となる。また、枠材の取付けにあたり枠材を設ける壁面の開口の大きさを変えるなどのことが不要となる。鴨居材の左右の縦枠の長さ(高さ)の調整等を必要としないなど種々の利点を有する。
本発明の鴨居材によれば、鴨居材の見付け幅をドア用戸枠の見付けと同じとすることもできるので、調和を乱すことなくドア枠と引き戸枠あるいは折れ戸枠を同一の部屋に設けることもでき、両者の枠材を隣接して設けることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、引き戸が1枚だけの片引き戸枠や引き戸が2枚または2枚以上の引き戸枠のいずれにも適用でき、下荷重型の引き戸、上吊り引き戸のいずれにも適用でき、また、クローゼット、間仕切り等に用いられる折れ戸にも適用できる。
本発明における鴨居材は上記形状、すなわち、鴨居材の見付け面の下端角部を切り欠くことによって、該切欠き部と鴨居材の下面に設けられた引き戸用の溝との間に形成される突条部を有し、切欠き部側の突条部の側面を斜面ないし曲面とした形状のものであれば、1個の板材から作成したものでも、また、鴨居材本体と前記突条部とを別体として作成し両者を結合したものであってもよい。また、本発明の鴨居材は、樹脂、金属などを用いて押し出し成形にて作成してもよい。
【0007】
鴨居材に設ける見付け面の下端角部の切欠き形状は、見付け面下端から鴨居材の底面に後退した形で至る傾斜面や傾斜面に対応する形の凹んだ形のまたは凸形の曲面であってもよく、段部が形成される形に切り欠いて前記突条部の切欠き部側の側面を斜面ないし曲面としてもよい。
段部が形成される切欠き部の形状とは、例えば、鴨居材の底面部を鴨居材の正面から建具案内用溝の近傍まで鴨居材の底面とほぼ平行に所望の厚さに切り欠いて、切欠き部と建具案内用溝との間に突条部が形成された形状とする。
見付け幅は、枠材の大きさ、縦枠の見付け幅等に応じて選定されるが、切欠き部の形状(寸法)は見付け幅に対応させて選択するとよい。鴨居材の正面(見付け面)からの鴨居材の切欠き部の深さは、見付け幅の1〜2倍、好ましくは1.2〜1.8倍の幅で設けるとよい。鴨居材底面から見付け面下端側に向けて立ちあがる斜面の角度は45°〜60°程度とし、切欠き深さが大きいときは残余を鴨居材底面にほぼ平行な段部とするとよい。したがって、前記突条部の側面を前記角度の斜面とするとよい。曲面は前記斜面に対応させて設けるとよい。
本発明における上記切欠き部は、戸枠の鴨居材を、戸枠から1メートル程度離れたところから鴨居材の30cm下の位置の目線で見上げたとき、引き戸が閉じているときは見付け幅として見え、引き戸が開いたときに鴨居底面として見えるようにするとよい。
また、見付け面より奥まで切り欠くか凹んだ形状とすれば見付け面より光が当りずらく更によい。
【0008】
鴨居材底面に形成される突条部の寸法(高さ)は、鴨居材の厚さと見付け幅とによって異なるが、例えば、鴨居材の厚さは通常35mm前後であり、見付け幅を10mm前後、ケーシング取り付け部を15mm前後とすると、残余の10mm前後となるが、これらに限定されることなく任意に設定することができる。
突条部の寸法として、例えば、突条部によって引き戸と鴨居材との隙間を隠蔽せしめた引き戸枠の場合には、枠内寸法から、引き戸の寸法および引き戸下端と下枠部材(敷居、沓摺り、見きり縁)あるいは床表面までの寸法を引いた寸法以上とした引き戸枠としてもよい。
【実施例】
【0009】
以下図面に従って本発明を説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
図1は、従来の引き戸枠を示す図11に対応させて本発明の引き戸枠、特に鴨居材の断面形状を示す図である。図からわかるように、本発明の鴨居材1の形状とすることによって、建具の種類に関係なく鴨居材の上面の位置を同じにすることができ、それによってケーシング7の装着位置も同じ位置とすることができる。
以下に、本発明の鴨居材の断面形状または端面形状の各例を示す。これらの例は、本発明の典型的な例を示すもので、鴨居材の前面にのみ示した切欠き部の形状は、同様に鴨居材の後面に設けられることがあるものとし、また、異なる建具のための戸枠に適用されることがあるものとする。
【0010】
図2は、切欠き部3の形状が鴨居材1の見付け2面の下端から後退した傾斜面の形で切欠き面4が設けられた鴨居材の例を示す。図3は、斜面に代えて凹んだ曲面の切欠き面4の例、図4は張出した曲面4とした例を示す。
図5は切欠き部3を見付け2面(鴨居材の正面)の位置から引き戸用の溝6の近傍まで切り欠いて溝6に沿った突条部5を形成した形状とした例である。切欠き部3側の突条部側面を切欠き面4として斜面とし、切り欠きによって形成された段面3aはほぼ水平な面か緩やかな傾斜面とした例である。図中、8はケーシング装着用溝を示す。
図6〜図10に、本発明の他の例を示す。図中、上記と同じものは同一符号を付して説明を省略した。図6、図7はクローゼット等に用いられる折れ戸用の鴨居材、図8は引き違い戸用の鴨居材の例、図9は突条部5の切欠き面4に段部4aを設けた例、図10は突条部5の立ち上がり部を曲面とした例である。以上、ケーシングが装着される鴨居材の例を示したが、ケーシングを装着しない鴨居材にも同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は鴨居材(上枠材)の下端角部を切り欠いて特定の形状とすることによって、引き戸の種類が異なっても鴨居材に設ける見付けの位置やケーシングの装着位置を同じにすることができ、鴨居材の厚さが異なっても各枠材の外形の寸法を統一することもできるので、戸枠の生産を容易にすることができる。
本発明は、引き戸枠について説明したが、これに限定されることなく、開き戸(ドア)の場合でも、上枠材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示す側面模式図である。
【図2】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の鴨居材の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の鴨居材の別の例を示す断面図である。
【図5】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図8】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の鴨居材の一例を示す断面図である。
【図11】従来の各引き戸等の枠材を示す側面模式図である。
【符号の説明】
【0013】
1:鴨居材、 2:見付け、 3:切欠き部、 4:切欠き面、 5:突条部、 6:引き戸用溝、 7:ケーシング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具を案内する案内溝を有する鴨居材の前面および/または後面に所定の幅の見付け面を設け、鴨居材の該見付け面の下端角部を切り欠いて切欠き部を形成し、引き戸枠正面から見える該切欠き部の面を斜面ないし曲面としたことを特徴とする枠材。
【請求項2】
鴨居材の前面および/または後面に縦枠の見付けとほぼ同じ幅の見付け面を設け、該見付け面の下端の位置から鴨居材底面の建具を案内する案内用溝の近傍に至るまでを切り欠いて切欠き部と案内用溝との間に突条部を形成し、該突条部の切欠き部側の側面を斜面ないし曲面としたことを特徴とする請求項1記載の枠材。
【請求項3】
突条部の寸法を、枠内寸法から、建具寸法および建具下端と下枠部材(敷居、沓摺り、見きり縁)あるいは床表面までの寸法を引いた寸法以上として、突条部によって建具と鴨居材との隙間を隠蔽せしめたことを特徴とする請求項2記載の枠材。
【請求項4】
切欠き部の形状を、鴨居材の底面部を鴨居材の正面から建具を案内する案内用溝の近傍まで鴨居材の底面とほぼ平行に所望の厚さに切り欠いて切欠き部と該案内用溝との間に突条部が形成された形状としたことを特徴とする請求項2記載の枠材。
【請求項5】
建具を案内する案内溝を有する鴨居材の前面におよび/または後面に縦枠の見付けとほぼ同じ幅の見付け面を設け、該見付け面の下端の位置から鴨居材底面の該案内用溝の近傍に至るまでを切り欠いて、切欠き部と該案内用溝との間に突条部を形成し、該突条部の切欠き部側の側面を斜面ないし曲面としたことを特徴とする建具を案内する案内溝を有する鴨居材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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