説明

黄斑変性を処置するための方法および組成物

本開示内容は、有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物、例えば、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-プロスタグランジンFイソプロピルエステルを含む、哺乳類対象における黄斑変性を処置するための組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄斑変性、特に加齢黄斑変性、より具体的にはドライ型加齢黄斑変性を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
黄斑変性は、我々が見る画像を記録して、視神経を介して眼から脳へとそれらを送る眼の内部の後側の層である網膜の中央部分の劣化によりおこる。網膜の中央部分は、黄斑として知られており、読む能力、車を運転する能力、顔または色彩を認識する能力または対象物の細部を見る能力を制御する眼内の中心視力の焦点調節に関与している。
【0003】
加齢黄斑変性(AMD)は、65歳以上の人々のなかの法的盲の主要病因である。AMDに罹患している人々は、対象物の細部を見る能力を失う。この患者は、画像の端部を見ることはできるが、画像の中央部は、空白または暗点と呼ばれる暗黒部のようにみえる。この症状は、片眼または両眼においておこり得る。
【0004】
AMDには、「滲出型AMD」および「ドライ型AMD」として知られる2つの基本的な型がある。ドライ型AMDは、非血管新生型または非滲出型AMDとも言われる。AMD患者のおよそ85%〜90%の患者は、ドライ(萎縮)型AMDである。この型のAMD患者は、良好な中心視力(20/40またはそれよりも良い)を示すが、実質的な機能限界がある。ドライ型AMDでは、網膜の劣化は、黄斑下のドルーゼンの形成に関連がある。ドルーゼンとは、網膜色素上皮の基底膜下部の無細胞非晶質デブリの堆積物(小さい黄色沈着物)である。この現象は、黄斑の薄化および乾燥をもたらし、黄斑のその機能を喪失させる。現在、ドライ型AMDについての治療法は知られておらず、また該症状に関する承認された薬理学的処置もない。従って、黄斑変性を、低下させるかまたは抑制する処置についての強い必要性が存在する。
【0005】
プロスタグランジンン類(以後、PG(類)と示す)は、ヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含まれており、広範な生理学的活性を示す有機カルボン酸分類群のメンバーである。天然に存在するPG類(天然PG類)は、一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する:
【化1】


【0006】
一方、天然PG類の幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される。
下付1:13,14-不飽和-15-OH
下付2:5,6-および13,14-ジ不飽和-15-OH
下付3:5,6-、13,14-および17,18-トリ不飽和-15-OH。
【0007】
さらに、PGF類は9位のヒドロキシ基の配置によってαタイプ(ヒドロキシ基がα配置である)およびβタイプ(ヒドロキシ基がβ配置である)に分類される。
【0008】
また、幾つかの15-ケト-PG類(すなわち、ヒドロキシ基の代わりに15位にオキソ基を持つPG類)および13,14-ジヒドロ-15-ケト-PG類(すなわち、13と14位との間が単結合である)は、天然のPGのインビボ代謝中に酵素の作用によって自然に生成する物質として知られており、ある治療効果を示す。例えば、15-ケト-プロスタグランジン化合物は、眼の高血圧および緑内障の処置に有用であることが知られている(米国特許番号第5,001,153号および第5,151,444号、これらの引用文献は出典明示により本明細書に組み込まれる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,001,153号明細書
【特許文献2】米国特許第5,151,444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、15-ケト-プロスタグランジン化合物が、黄斑変性、特にAMD、より具体的にはドライ型AMDに対して、どのように作用するかは知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、ヒトを含む哺乳類対象における黄斑変性、特に加齢黄斑変性、より具体的にはドライ型加齢黄斑変性を処置するための方法および組成物を提供することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、哺乳類対象における黄斑変性を処置するための方法に関するもので、該方法はその必要のある対象に有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を投与することを含む。
【0013】
特に本発明は、哺乳類対象における加齢黄斑変性を処置するための方法に関するもので、その必要のある対象に有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を投与することを含む。
【0014】
より特別には、本発明は、哺乳類対象におけるドライ型加齢黄斑変性を処置するための方法に関するもので、その必要のある対象に有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を投与することを含む。
【0015】
さらに、本発明は、哺乳類対象における黄斑変性、特に加齢黄斑変性、より特別にはドライ型加齢黄斑変性を処置するための、有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を含む医薬組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、哺乳類対象における黄斑変性、特に加齢黄斑変性、より特別には、ドライ型加齢黄斑変性を処置するための医薬組成物の製造における15-ケトプロスタグランジン化合物の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBH)に起因するヒト網膜色素上皮細胞の経上皮電気抵抗(TER)の低下に対するイソプロピルウノプロストンの効果を示すグラフを表す。
【図2】図2は、tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBH)に起因するヒト網膜色素上皮細胞の変性に対するイソプロピルウノプロストンの効果を示すグラグを表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、「15-ケト-プロスタグランジン化合物」(以後、「15-ケト-PG化合物」という)は、ヒドロキシ基、5員環の各配置、二重結合の数、置換基の存在または非存在、またはαまたはω鎖中のその他の修飾の代わりに、プロスタン酸骨格の15-位置でオキソ基を有する化合物の任意の誘導体または類似体(置換誘導体を含む)を包含し得る。
【0019】
本明細書において用いる15-ケト-PG化合物の命名は、上記式(A)に示したプロスタン酸の番号付け系に基づく。
【0020】
式(A)は、C-20炭素原子の基本骨格を示すが、本発明における15-ケト-PG化合物は同じ炭素原子数を持つものに限定されない。式(A)において、PG化合物の基本骨格を構成する炭素原子の番号は、カルボン酸から始まり(1と番号付け)、5員環に向かって2〜7をα鎖上の炭素原子に、8〜12を5員環の炭素原子に、13〜20をω鎖上の炭素原子に付している。炭素原子数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し;α鎖上で炭素原子数が増加する場合、2位にカルボキシ基(C-1)に代わる各置換基を有する置換化合物として化合物を命名する。同様に、ω鎖上で炭素原子数が減少する場合、20位から番号を順次抹消し;ω鎖上で炭素原子数が増加する場合、20位を超える炭素原子は置換基として命名する。化合物の立体配置は、特に断りのない限り、上記式(A)と同じである。
【0021】
一般に、PGD、PGEおよびPGFなる用語はそれぞれ、9位および/または11位にヒドロキシ基を有するPG化合物を表すが、本明細書および特許請求の範囲では、9位および/または11位にヒドロキシ基以外の置換基を有するものも含む。かかる化合物は9-デヒドロキシ-9-置換-PG化合物または11-デヒドロキシ-11-置換-PG化合物と称する。ヒドロキシ基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9-または11-デオキシ-PG化合物と命名する。
【0022】
上述のように、15-ケト-プロスタグランジン化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいている。しかし、化合物がプロスタグランジンと類似の部分的構造を有する場合には、「PG」の略語を利用することがある。従って、α鎖の炭素原子が2個延長されたPG化合物、すなわち、α鎖の炭素原子数が9であるPG化合物は、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-15-ケト-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の炭素原子数が11であるPG化合物は、2-デカルボキシ-2-(4-カルボキシブチル)-15-ケト-PG化合物と命名する。また、ω鎖の炭素原子が2個延長されたPG化合物、すなわち、ω鎖の炭素原子数が10であるPG化合物は、15-ケト-20-エチル-PG化合物と命名する。なお、これらの化合物はIUPAC命名法に基づいて命名することも可能である。
【0023】
本発明において用いる15-ケト-PGは、15位にヒドロキシ基の代わりにオキソ基を有する限り、あらゆるPG誘導体または類似体を包含し得る。従って、例えば、13-14位に二重結合を有する15-ケト-PGタイプ1化合物、13-14および5-6位に2つの二重結合を有する15-ケト-PGタイプ2 化合物、5-6、13-14および17-18位に3つの二重結合を有する15-ケト-PGタイプ3化合物、13-14位の二重結合が単結合である13,14-ジヒドロ-15-ケト-PG化合物が挙げられる。
【0024】
本発明において用いる化合物の代表的な例には、15-ケト-PGタイプ1、15-ケト-PGタイプ2、15-ケト-PGタイプ3、13,14-ジヒドロ-15-ケト-PGタイプ1、13,14-ジヒドロ-15-ケト-PGタイプ2、13,14-ジヒドロ-15-ケト-PGタイプ3ならびにその誘導体または類似体が挙げられる。
【0025】
類似体(置換誘導体を含む)または誘導体の例は、α鎖末端のカルボキシ基がエステル化された15-ケト-PG化合物;α鎖が延長された化合物;それらの生理学的に許容される塩;2-3位に二重結合を、または5-6位に三重結合を有する化合物、3、5、6、16、17、18、19および/または20位に置換基を有する化合物;9位および/または11位にヒドロキシ基の代わりに低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物などである。
【0026】
本発明によると、3、17、18および/または19位の好ましい置換基には、1-4個の炭素原子を有するアルキル、特にメチルおよびエチルなどがある。16位の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素、およびアリールオキシ、例えばトリフルオロメチルフェノキシなどがある。17位の好ましい置換基には、低級アルキル、例えばメチルおよびエチル、ヒドロキシ、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素、アリールオキシ、例えばトリフルオロメチルフェノキシなどがある。20位の好ましい置換基には、飽和または不飽和の低級アルキル、例えばC1-4アルキル、低級アルコキシ、例えばC1-4アルコキシ、および低級アルコキシアルキル、例えばC1-4アルコキシ-C1-4アルキルなどがある。5位の好ましい置換基には、ハロゲン原子、例えば塩素およびフッ素などがある。6位の好ましい置換基には、カルボニル基を形成するオキソ基などがある。9位および11位にヒドロキシ、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有するPG類の立体配置は、α、βまたはそれらの混合であり得る。
【0027】
さらに、上記の類似体は、天然のPG類よりもω鎖が短く、そのω鎖末端にアルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、フェノキシまたはフェニル基を有する化合物であってもよい。
【0028】
特に好ましい化合物には、13-14位に単結合を有する13,14-ジヒドロ-15-ケト-PG化合物;ω-鎖が伸張した化合物が挙げられる。
【0029】
本発明において用いる好ましい化合物は、式(I)により示される:
【化2】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、またはオキソであり、ここで該5員環は少なくとも1つの二重結合を有してもよく;
Aは、-CH3、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、-CH2-CH2-、-CH=CH-または-C≡C-であり;
R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されており;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である]。
【0030】
上記化合物のうち特に好ましい化合物の群は、式(II)により表される:
【化3】


[式中、LおよびMは水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソであり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、-CH3、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、-CH2-CH2-、-CH=CH-または-C≡C-であり;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり;
R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されており;
R2は、単結合または低級アルキレンであり;そして
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基である]。
【0031】
上式において、R1およびRaについての定義における「不飽和」なる用語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間に孤立して、分離してまたは連続して存在する、少なくとも1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を含むことを意図している。通常の命名法に従って、2つの連続した位置の間の不飽和結合は、2つの位置の低い数を表示することによって表され、2つの遠位の間の不飽和結合は、その両方の位置を表示することによって表される。
【0032】
「低または中級の脂肪族炭化水素」なる用語は、1〜14個の炭素原子(側鎖においては、1〜3個の炭素原子が好ましい)、好ましくは1〜10、特に1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0033】
「ハロゲン原子」なる用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0034】
「低級」なる用語は、本明細書を通して、特に断りのない限り、1〜6個の炭素原子を有する基を含むことを意図する。
【0035】
「低級アルキル」なる用語は、1〜6個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0036】
「低級アルキレン」なる用語は、1〜6個の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖の、二価の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t-ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0037】
「低級アルコキシ」なる用語は、低級アルキル-O-の基を意味し、ここで低級アルキルは上記に定義されるとおりである。
【0038】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」なる用語は、少なくとも1つのヒドロキシ基、例えばヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチルおよび1-メチル-1-ヒドロキシエチルにより置換されている、上記に定義される低級アルキルを意味する。
【0039】
「低級アルカノイルオキシ」なる用語は、式RCO-O-により表される基を意味し、ここでRCO-は、上記に定義される低級アルキル基の酸化により形成されるアシル基、例えばアセチルである。
【0040】
「シクロ(低級)アルキル」なる用語は、上記に定義されるが、3以上の炭素原子を含有する、低級アルキル基の環化により形成される環状基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0041】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」なる用語は、シクロ(低級)アルキル-O-の基を意味し、ここでシクロ(低級)アルキルは上記に定義されるとおりである。
【0042】
「アリール」なる用語は、非置換または置換芳香族炭化水素環(好ましくは単環式の基)、例えば、フェニル、トリル、キシリルを含み得る。置換基の例は、ハロゲン原子およびハロ(低級)アルキルであり、ここでハロゲン原子および低級アルキルは上記に定義される通りである。
【0043】
「アリールオキシ」なる用語は、式ArO-により表される基を意味し、ここでArは上記に定義されるアリールである。
【0044】
「複素環基」なる用語は、所望により置換された炭素原子、および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1種または2種のヘテロ原子を1〜4、好ましくは1〜3個有する、5〜14、好ましくは5〜10員環の、単環式から三環式の、好ましくは単環式の複素環基を含み得る。複素環基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、2−ピロリニル、ピロリジニル、2−イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリル、フェノチアジニルを含む。この場合、置換基の例は、ハロゲン、およびハロゲン置換低級アルキル基を含み、ここでハロゲン原子および低級アルキル基は上記の通りである。
【0045】
「複素環オキシ基」なる用語は、式HcO-により表される基を意味し、ここでHcは上記に記載の複素環基である。
【0046】
Aの「官能性誘導体」なる用語は、塩(好ましくは医薬上許容される塩)、エーテル、エステルおよびアミドを含む。
【0047】
好適な「医薬上許容される塩」は、慣用される非毒性塩、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等の無機塩基との塩;または、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等の有機塩基との塩を含む。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によって、または塩交換によって調製し得る。
【0048】
エーテルの例には、アルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテルおよび1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;およびオクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、およびセチルエーテル等の中または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;フェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルなどがある。
【0049】
エステルの例には、脂肪族エステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステル;および、例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;およびベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルなどがある。
【0050】
Aのアミドは、式-CONR'R''で表される基を意味し、ここでR'およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキルもしくはアリールスルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミドおよびジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリドおよびトルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキルもしくはアリールスルホニルアミド等を含む。
【0051】
好ましいLおよびMの例には、双方がヒドロキシである組合せの、PGFタイプと称される5員環構造;Lがヒドロキシであり、Mがオキソである組合せの、PGEタイプと称される5員環構造、ならびにLがオキソであり、Mが水素である組合せの、11-デオキシ-PGタイプと称される5員環構造を有するものである。
【0052】
好ましいAの例は、-COOH、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドである。
【0053】
好ましいBの例は、13,14-ジヒドロタイプと称される構造を提供する-CH2-CH2-である。
【0054】
好ましいX1およびX2の例は、水素またはハロゲンであり、好ましくはそれらの少なくとも1つがハロゲンであり、より好ましくは、両方がハロゲン原子、特にフッ素原子であって、これは16,16-ジフルオロタイプと称される構造を提供する。
【0055】
好ましいR1は、1〜10個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する炭化水素である。さらに、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は、所望により酸素、窒素または硫黄により置換される。
【0056】
R1の例には、例えば、以下の基が含まれる:
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-O-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-O-CH2-、
-CH2-C≡C-CH2-O-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-、
-CH2-C≡C-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、および
-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-CH2-。
【0057】
好ましいRaは、1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を含有する炭化水素である。Raは1個の炭素原子を有する1または2の側鎖を有し得る。
【0058】
上記の式(I)および(II)において環およびαおよび/またはω鎖の立体配置は、天然のPG類の立体配置と同じかまたは異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの立体配置を有する化合物および非天然タイプの立体配置の化合物の混合物も含む。
【0059】
本発明の代表的な化合物の例は、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチルPGF化合物、およびその誘導体または類似体である。本発明の最も好ましい化合物の例は、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチルFイソプロピルエステル(以後、「イソプロピルウノプロストン」とも示す)である。
【0060】
本発明において、13および14位の間にジヒドロを有し、15位にケト(=O)を有するPG化合物は、11位のヒドロキシと15位のケトの間にヘミアセタールが形成されることにより、ケト-ヘミアセタール平衡の状態にある場合がある。
【0061】
例えば、X1およびX2の両方がハロゲン原子、特にフッ素原子である場合は、その化合物は互変異性体として二環式化合物を含むことが確認されている。
【0062】
かかる上記の互変異性体が存在する場合、両互変異性体の比率は分子の残りの構造または存在する置換基の種類により変動する。場合により、一方の異性体が他方と比較して圧倒的に存在することもある。しかし、本発明は両方の異性体を含むと解されたい。
【0063】
さらに、本発明において用いられる15-ケト-PG化合物は、二環式化合物およびその類似体または誘導体を含む。
【0064】
二環式化合物は、式(III)により表される:
【化4】

[式中、Aは、-CH3、または-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
X1'およびX2'は、水素、低級アルキル、またはハロゲンであり;
Yは
【化5】

であり、
ここで、R4'およびR5'は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4'およびR5'が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはなく、
R1は、非置換、またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されており;
R2'は、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基により置換された、飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基であり;
R3'は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基である]。
【0065】
さらに、本発明において用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわらずケト型に基づく式または名称により表し得るが、かかる構造または名称はヘミアセタール型の化合物を除外することを意図するものではないことに留意されたい。
【0066】
本発明においては、いずれかの異性体、例えば、個々の互変異性体、それらの混合物、または光学異性体、それらの混合物、ラセミ混合物、および他の立体異性体を、同じ目的に用いることが可能である。
【0067】
本発明において用いられるいくつかの化合物は、米国特許第5,073,569号、第5,166,174、第5,221,763号、第5,212,324号、第5,739,161号および第6,242,485号明細書(これらの引用文献は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法により調製され得る。
【0068】
本発明によると、哺乳類対象は、本発明に用いられる化合物を投与することによって本発明により処置されうる。該対象は、いずれの哺乳類対象であってもよく、ヒトを含む。化合物は、全身または局所適用することが出来る。通常、化合物は、経口投与、静脈内注射 (点滴を含む)、眼局所投与(例えば、眼周囲 (例えば、テノン下)、結膜下、眼球内、硝子体内、前房内、網膜下、上脈絡膜下、および眼球後投与)等によって投与することが出来る。
【0069】
投与量は、動物の系統、年齢、体重、処置すべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等に応じて変化し得る。1日に0.00001〜500mg/kg、より好ましくは0.0001〜100mg/kg量を、1日に1〜4回全身投与または連続投与することにより、満足のいく効果が得られうる。
【0070】
本化合物は、従来法により投与に適した医薬組成物として製剤化するのが好ましい。その組成物は、経口投与、眼局所投与、注射またはかん流に適したもの、ならびに外用薬であり得る。
【0071】
本発明の組成物は生理学的に許容し得る添加剤をさらに含んでいてもよい。そのような添加剤には本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、潤滑剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬用基剤、エアゾール剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性物質(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子等)、安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0072】
本発明の組成物における上記に規定の化合物の量は、組成物の処方に応じて変化させてよく、一般に0.000001〜10.0%、より好ましくは0.00001〜5.0%、最も好ましくは0.0001-1%であり得る。
【0073】
経口投与のための固体組成物の例には、錠剤、トローチ剤、舌下錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤等がある。固体組成物は1以上の活性成分と少なくとも1つの不活性希釈剤を混合して調製してもよい。その組成物に、不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、潤滑剤、崩壊剤および安定剤をさらに含ませてもよい。錠剤および丸剤は、所望により、腸溶性または胃腸溶性フィルムによって被覆してもよい。
【0074】
それらは2以上の層によって被覆してもよい。それらは徐放性物質に吸収させても、またはマイクロカプセル化してもよい。さらに、本組成物は、ゼラチン等の易分解性物質を用いてカプセル化してもよい。それらは、脂肪酸またはそのモノ、ジもしくはトリグリセリド等の適切な溶媒にさらに溶解させて軟カプセルとしてもよい。即効性が必要な場合は舌下錠を用いてもよい。
【0075】
経口投与のための液体組成物の例としては、乳剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤等が挙げられる。そのような組成物は、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば精製水またはエチルアルコールをさらに含んでもよい。この組成物は、不活性希釈剤以外の添加剤、例えば湿潤剤や懸濁剤といった補助剤、甘味剤、香味剤、芳香剤および保存剤等を含んでいてもよい。
【0076】
本発明の組成物は、1以上の活性成分を含有する噴霧用組成物の形態であってもよく、これは既知の方法にしたがって調製することが出来る。
【0077】
非経口投与のための本発明の注射用組成物の例としては、滅菌した水性もしくは非水性溶液剤、懸濁剤および乳剤等が挙げられる。
【0078】
水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0079】
溶液剤および懸濁剤のための非水性希釈剤には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油等)、アルコール(エタノール等)およびポリソルベート等があり得る。この組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等の添加剤をさらに含んでもよい。それらは、例えば細菌保留フィルターを通して濾過することによって、滅菌剤を配合することによって、またはガスもしくは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。
【0080】
注射用組成物は、使用前に注射用の滅菌溶媒に溶解させる滅菌粉末組成物として提供することもできる。
【0081】
本化合物は、眼用組成物、例えば、点眼液および眼軟膏として調製されてもよい。剤形は、眼科分野に用いられる眼局所投与のための全ての眼用製剤を含み得る。
【0082】
点眼液は、活性成分を滅菌水溶液、例えば、生理食塩水および緩衝液に溶解することによって調製されてもよい。点眼液は、使用前に溶解される粉末組成物として、または使用前に溶解される粉末組成物を組合せることにより提供され得る。眼軟膏は、活性成分を基剤に混合することにより調製される。製剤は常套の方法に従って調製される。
【0083】
浸透圧調節剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、水酸化ナトリウム、塩酸、マンニトール、イソソルビトール、プロピレングリコール、グルコースおよびグリセリンが挙げられるが、眼科分野において通常用いられる限り、それらに限定するものではない。
【0084】
さらに、眼科分野において通常用いられる添加剤を、所望により本発明の組成物に添加してもよい。かかる添加剤としては、例えば、緩衝剤(例えば、ホウ酸、リン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびクロロブタノール)、増粘剤(例えば、糖類、例えば、ラクトースおよびマンニトール、マルトース; 例えば、ヒアルロン酸またはその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウム;例えば、ムコ多糖、例えば、コンドロイチン硫酸;例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーおよび架橋ポリアクリル酸)が挙げられ、これらはいずれも引用により本明細書に含まれる。
【0085】
本発明の組成物を眼軟膏として調製する際に、上記添加剤の他に、組成物は通常用いられる眼軟膏基剤を含んでいてもよい。かかる眼軟膏基剤としては、これらに限定されないが、油性基剤、例えば、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン、セレン50、プラスチベース、マクロゴールまたはそれらの組合せ;界面活性剤により乳化された油性相と水性相を有する乳濁基剤;および水溶性基剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシプロピルメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0086】
本発明に従って、好ましい実施形態は、眼用組成物が、実質的に塩化ベンザルコニウムを含まないことを包含する。本明細書において用いられる「該眼用組成物は、実質的に塩化ベンザルコニウムを含まない」なる語とは、該組成物が塩化ベンザルコニウムを含有しないか、または該組成物が可能な限り少ない塩化ベンザルコニウムを含有することを意味する。本発明における「実質的に塩化ベンザルコニウムを含まない眼用組成物」は、塩化ベンザルコニウムを、0.01%以下、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下の濃度で含有してもよい。
【0087】
本発明の点眼液は、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウムを含まない滅菌単位用量型(1日型または単回単位用量型)製剤として製剤してもよい。
【0088】
さらに、眼用組成物には、眼の後部まで持続的に活性化合物を提供するために、徐放性の剤形、例えば、ゲル製剤、リポソーム製剤、脂質マイクロエマルジョン製剤、ミクロスフェア製剤、ナノスフェア製剤およびインプラント製剤が挙げられる。
【0089】
本発明において使用される点眼液の活性成分の濃度および投与回数は、例えば、使用される化合物、対象の種類(例えば、動物またはヒト)、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与方法、投与用量および処置期間等により変化する。従って、好適な濃度および投与回数を所望により選択できる。本発明の一形態であるイソプロピルウノプロストンの例を挙げると、0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、より好ましくは少なくとも0.12%、0.15%または0.18%のイソプロピルウノプロストンを含有する製剤を、通常、成人に1-10回/日投与することができる。
【0090】
本明細書において用いる「処置」なる用語は、例えば、予防、治療、症状の軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる疾患または症状の管理手段をいう。
【0091】
本発明の医薬組成物は、単一の活性成分または2以上の活性成分の組合せを含むものでもよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を考慮して適宜増減するとよい。
【0092】
さらに、本発明の製剤は、本発明の目的に反しない限り他の薬理学的に有効な成分を好適に含んでいてもよい。
【0093】
本発明のさらなる詳細は、試験例を参照してすすめるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0094】
実施例1
方法
ヒト網膜色素上皮細胞[American Type Culture Collection(ATCC)から入手したARPE-19細胞]を試験に使用した。ARPE-19細胞を、10%子ウシ血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地中でCorning Transwell 0.4 μm の孔サイズフィルター(Corning Incorporated, NY, USA)上で増殖させた。培養細胞の経上皮電気抵抗(TER)を、EVOM電圧抵抗器を用いて決定した。培養細胞のTERを、培養細胞を用いて測定した耐性値から、フィルターのみを用いて測定した耐性値を控除することにより決定した。
【0095】
該細胞を、TERがおよそ50 Ohm/1.2 cm2に達するまで増殖させた。次いで、それらを、0.1% デカン中の100 μM tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBH)、DMS0 (終濃度0.1% DMSO)中の100 nM 化合物A(イソプロピルウノプロストン、即ち13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-PGFイソプロピルエステル)、またはtBHと化合物Aとの組合せを用いて処理した。TERを、処置後の0、6、18、24および48時間に決定した。結果を図1に示す。
【0096】
TERがおよそ50 Ohm/1.2 cm2に達するまで成長させたARPE-19細胞を、0.1% デカン中の100 μM tBH、DMS0(終濃度0.1% DMSO)中の100 nM 化合物A、またはtBHと化合物Aとの組合せを用いて処理した(最初の処置)。最初の処置の20時間後に、3,000ダルトンのFITC-標識デキストランを、細胞培養物の頂端表面に0.1 mg/mlの濃度で添加して、該培養物をさらにインキュベートした。次いで、側底表面が浸積している培地の蛍光を、44時間で測定した。FITCに対する波長は、494 ex/518 emであった。結果を図2に示す。
【0097】
結果
tBHは、TERを急速かつ大きく低下させた。化合物Aは、tBHに起因するTERの低下を防止した(図1)。また、3,000ダルトンの蛍光デキストランの頂端側から側底側の培地への通過により測定したとおり、化合物Aは、tBHに起因するバリア機能の低下を防止した(図2)。これらの結果は、化合物Aが、反応性酸素種に起因する網膜色素上皮細胞の損傷を防止するということを示す。
【0098】
結果は、化合物Aが黄斑変性、特にAMDの処置に有用であることを示す。
【0099】
実施例2
ピリジニウムビス-レチノイド(A2E)を含有する網膜色素上皮(RPE)細胞における、化合物Aによる光誘導性の細胞死の保護
【0100】
方法
ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19細胞)を試験に使用した。ARPE-19細胞を、25 cm2または75 cm2の培養フラスコ中のDMEM/F12培地(10% FBSおよび1% ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液を追加した)中で維持した。実験のために、該細胞を、マルチウェルチャンバースライド上に播種した。該細胞がスライドに付着したことを確認した後に、該培地を、ピリジニウムビス-レチノイド(A2E)を含有する培養培地に交換し、該細胞を5〜14日間培養した。該培地を、リン酸塩緩衝生理食塩水(A2E含有)に交換し、次いで該細胞を、ハロゲン光源から放出された青色光(430 nm)に20分間暴露した。ジメチルスルホキシドに溶解した化合物Aを、光暴露の1時間前に添加した(終濃度は10および50 nMであった)。この光暴露後、該細胞を、DMEM/F12培地中で24時間培養した。その後、該細胞を、10% WST-8(A2Z不含)を含有するDMEM/F12培地中で4時間培養した。450 nmの吸光度を測定した。この吸光度における増加は、細胞生存力を示す。
【0101】
結果
化合物Aは、A2E/光暴露により誘導される細胞死を防止した(表1)。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示した結果は、化合物Aが、黄斑変性、特にAMDの処置に有用であるということを示す。
【0104】
製剤例1
滅菌条件下で、以下に示した量(w/v%)の成分を精製水に溶解し、滅菌低密度ポリエチレン(LDPE)容器に充填して、眼用溶液を得た(1滴:およそ35 μL)。
【0105】
【表2】

【0106】
製剤例2
滅菌条件下で、以下に示した量(w/v %)の成分を精製水に溶解し、単位用量型容器に充填して、滅菌単回単位用量の眼用溶液を得た。
【0107】
【表3】

【0108】
製剤例3
滅菌条件下で、以下に示した量(w/v %)の成分を精製水に溶解し、用量単位型容器に充填して、滅菌単回単位用量眼用溶液を得た。
【0109】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象において黄斑変性を処置するための、有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、以下一般式(I)により示される化合物である、請求項1に記載した組成物。
【化1】


[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、またはオキソであり、ここで該5員環は、少なくとも1つの二重結合を有してもよく;
Aは、-CH3、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、-CH2-CH2-、-CH=CH-または-C≡C-であり;
R1は、非置換、またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基により置換された、二価の飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素中の少なくとも1つの炭素原子は所望により酸素、窒素または硫黄により置換されており;そして
Raは、非置換、またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基によって置換された、飽和または不飽和の低または中級の脂肪族炭化水素基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;複素環オキシ基である]。
【請求項3】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項4】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、15-ケト-20-低級アルキル-プロスタグランジン化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項5】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-低級アルキル-プロスタグランジン化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項6】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、15-ケト-20-エチル-プロスタグランジン F 化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項7】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-プロスタグランジンF化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項8】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-プロスタグランジンF化合物である、請求項1に記載した組成物。
【請求項9】
該15-ケト-プロスタグランジン化合物が、13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-プロスタグランジンFイソプロピルエステルである、請求項1に記載した組成物。
【請求項10】
該黄斑変性が、加齢黄斑変性である、請求項1-9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
該加齢黄斑変性が、ドライ型加齢黄斑変性である、請求項10に記載した組成物。
【請求項12】
該組成物が、局所投与のための組成物として製剤される、請求項1-9のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
該組成物が、眼局所投与のための眼用組成物である、請求項12に記載した組成物。
【請求項14】
該眼用組成物が、点眼液として製剤される、請求項13に記載した組成物。
【請求項15】
該点眼液が、保存剤を含まない滅菌単位用量型点眼液として製剤される、請求項14に記載した組成物。
【請求項16】
該眼用組成物が、塩化ベンザルコニウムを実質的に含まない、請求項13に記載した組成物。
【請求項17】
哺乳類対象における黄斑変性を処置するための医薬組成物の製造のための、15−ケトプロスタグランジン化合物の使用。
【請求項18】
哺乳類対象における黄斑変性を処置するための、15-ケト-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項19】
哺乳類対象における黄斑変性を処置するための方法であって、有効量の15-ケト-プロスタグランジン化合物を、その必要のある対象に投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524025(P2012−524025A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544722(P2011−544722)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/JP2010/057108
【国際公開番号】WO2010/119986
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】