説明

黄顔料

【課題】
ソルトミリング工程により一旦微粒化した顔料が再凝集して、かえって比表面積が小さくなるような問題のない特定の構造を有する微粒化された金属錯体を提供する
【解決手段】
比表面積が160〜350m2/gである、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定範囲の比表面積を有する黄顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの形成に多用される黄顔料としてはC.I.ピグメントイエロー150(以下、PY150)が知られている。特に、PY150は、緑画素の形成のために、C.I.ピグメントグリーン36やC.I.ピグメントグリーン7と組合せて用いられる。
カラーフィルタにおいては、そのコントラストを高くするために、用いられる顔料の粒子径を小さくすること、すなわち、比表面積をより大きくすることが望まれていた。そして、かかる黄顔料の具体的な比表面積として、90m/gであるPY150が知られていた(特許文献1)。
【0003】
このような微粒化顔料が求められる分野において、顔料を微粒化する方法としては、ソルトミリング法が周知であり、通常実施されている。この方法は、有機顔料と水溶性無機塩とを水溶性溶剤の存在下で、ミルなどの混練装置を用いて顔料を摩砕して粒子を小さくし、摩砕後、水を用いて、水溶性無機塩および水溶性溶剤を洗い流して、微粒化顔料の水スラリーを得て、ろ過、水洗して微粒化顔料の水ケーキを得るという方法である。該方法により得られる、水ケーキは、これを乾燥することにより、水分を除去して固形状の顔料を得、該固形状の顔料を粉砕することにより、微粒化された粉体状の顔料が得られる。
【0004】
しかしながら、例えば、特許文献1の0002段落に、「黄顔料の微細化は多大なエネルギーと時間を要するため、必要以上の微細化は好ましくない。微細化を進めすぎると再凝集力の増大でかえってコントラストが低下する場合もある。」と記載されているように、水ケーキの乾燥工程において、ソルトミリング工程により一旦微粒化した顔料が再凝集して、かえって比表面積が小さくなることがあり、問題とされていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−188120 0021段落、0088〜0095段落
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下で、本発明は、このような問題のない特定の構造を有する微粒化された金属錯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記したような課題を解決し得る顔料を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、比表面積が特定の範囲にある特定構造の顔料を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、比表面積が160〜350m/gである、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体を提供する。
【0008】

【0009】
[式中、環XおよびYは、それぞれ独立に、=O、=S、=NR、−N(R)R、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CON(R)R、−SO、−N(R)CN、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜11のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の置換基を有していてもよく、環XおよびYのそれぞれについて環内および環外二重結合の合計は3つである。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
は、水素原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基またはアシル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表し、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができる。
は、−OH、−N(R)R、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rに関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができる。
m、n、oおよびpは、それぞれ1であるか、あるいは式(I)において環XとY内の結合として点線で示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。]
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る、比表面積が160〜350m/gである式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体は、微粒化黄顔料の使用が求められる分野、例えばカラーフィルタ用の黄顔料として用いることにより、そのコントラストの向上が達成できる。
【0011】

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体は、その比表面積が160〜350m/gである。

【0013】
[式中、環XおよびYは、それぞれ独立に、=O、=S、=NR、−N(R)R、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CON(R)R、−SO、−N(R)CN、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜11のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の置換基を有していてもよく、環XおよびYのそれぞれについて環内および環外二重結合の合計は3つである。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
は、水素原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基またはアシル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表し、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができる。
は、−OH、−N(R)R、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rに関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができる。
m、n、oおよびpは、それぞれ1であるか、あるいは式(I)において環XとY内の結合として点線で示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。]
【0014】
前記の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチル−n−プロピル基、2−メチル−n−プロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、2−エチル−n−プロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、3−エチル−n−ブチル基、(1−メチル)エチル−n−プロピル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
前記の炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。
前記の炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記の炭素数7〜11のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチル基などが挙げられる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、好ましくはニッケルおよびクロムが挙げられる。
前記の互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体は、有機顔料として知られている(特開2000−129152)。
中でも、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体が、式(II)で表される化合物のニッケル錯体であることが好ましい。
【0015】

【0016】
互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体である化合物を、本発明で規定される比表面積まで微粒化するには、ソルトミリング工程と乾燥工程との間に、溶剤処理することにより達成される。
【0017】
前記のソルトミリング法は、有機顔料の微粒化において、通常、用いられている方法であり、有機顔料、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の混合物を、混練して、顔料の粒子径を小さくする方法であり、本発明においても適用でき、その条件は、混練に用いる装置、スケール等により、適宜調整できる。
本発明に用いられる有機顔料は、水に溶解しなければ特に限定されない。
【0018】
ソルトミリングにおいて用いられる水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料を微小化するために使用され、市販の食塩などを粉砕機にて粉砕し、使用される。
これらの無機塩の使用量は、有機顔料に対して質量比で、好ましくは3質量倍以上20質量倍以下、より好ましくは3質量倍以上10質量倍以下である。無機塩の使用量が前記の範囲にあると、所望の粒子径の有機顔料が得られ、また、後の工程における洗浄処理が多大でなく、さらにソルトミリング処理装置の容積効率の点から有機顔料の処理量が少なくならないので、好ましい。
【0019】
ソルトミリングにおいて用いられる水溶性の溶剤は、ソルトミリング時に湿潤剤として用いられるものであり、水溶性であれば特に限定されない。しかし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発しやすい状態になるため、安全性の点から高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤は、好ましくは有機顔料に対して質量比で、0.5〜10質量倍用いられる。前記の範囲にあると、混練が可能であり、また混合物が液状に近くならず、混練時に適度にシェアがかかり、有機顔料の微細化ができるので、好ましい。
前記の水溶性の溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
【0020】
混練終了後、ろ過などの方法で、水溶性の溶剤を除き、水溶性の無機塩および残っている水溶性の溶剤を完全に除去するまで、水で洗浄し、微粒化された有機顔料の水ケーキを得る。
【0021】
そして、ソルトミリング工程を経て得られる、有機顔料の水ケーキは、乾燥して粉砕される前に、一旦、溶剤中に分散されて、攪拌される。
ここで、用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、その他の溶剤などが挙げられる。
前記のアルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール;
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、;
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル;
エーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジオキサン、テトラヒドロフラン;
脂肪族炭化水素系溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、;
芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン;
その他の溶剤としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
前記の溶剤のうち、好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられ、より好ましくはイソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0022】
また、溶剤中に分散される攪拌前に、当該溶剤と混和しかつ当該溶剤よりも水への溶解性が高い溶剤によって一旦水ケーキを湿潤させ、当該水への溶解性が高い溶剤を濾別などの方法で除去した後に、溶剤中に分散させて攪拌されることが好ましい。
【0023】
攪拌における温度は、好ましくは用いられる溶剤の沸点以下であり、臭気や引火の危険性の観点から、より好ましくは30℃以下である。
【0024】
攪拌における溶剤の量は、水ケーキ中の水量に対して質量比で、好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜30倍、とりわけ好ましくは10〜20倍である。溶剤の量が前記の範囲にあると、処理量や水の除去性の点から、好ましい。
なお、水ケーキ中の水量は、赤外線加熱乾燥質量測定法などによって、測定することができる。
【0025】
攪拌における処理時間は、好ましくは5〜120分、より好ましくは10〜90分、とりわけ好ましくは20〜60分である。処理時間が前記の範囲にあると、水ケーキの塊がなくなり水の溶剤への置き換えが効率よくなる傾向があり、好ましい。
【0026】
攪拌に用いられる装置としては、ディスパーなどが挙げられる。
【0027】
次いで、攪拌後に、顔料がろ過されて溶剤と分離され、残った顔料をさらに溶剤で洗浄してから、乾燥される。
ここで洗浄に用いられる溶剤は、前記の攪拌時に用いられた溶剤と同一でも異なってもよく、好ましくは、攪拌時に用いられた溶剤よりも揮発性の高い溶剤が好ましい。
【0028】
乾燥は、溶剤の沸点以上の温度で行われることが好ましいが、沸点よりも低い温度であっても乾燥時間を延長することにより対応することができる。
また、加熱による溶剤の引火、発火の観点から、減圧しながら乾燥を行うことが好ましい。減圧する場合、その圧力は、10〜1.0×10Pa程度が好ましい。
【0029】
乾燥後、得られた該固形状の顔料は、通常行われている方法により、粉砕されて、粉体状の顔料として得られる。
【0030】
上記の各工程を、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体に対して行うことで、比表面積が160〜350m/gである、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体を得ることができる。
また、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体の比表面積として、好ましくは160〜340m/g、より好ましくは180〜330m/g、とりわけ好ましくは200〜310m/gである。
【0031】
本発明の比表面積が160〜350m/gである、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体は、着色用の組成物として用いることができ、好ましくはカラーフィルタの着色組成物、中でも緑画素を形成するために用いることができる。
【0032】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1
市販のPY150(イエローE4 GN−GT;LANXESS製 比表面積;126.6m/g):100g、塩化ナトリウム:400g、およびジエチレングリコール:150gをステンレス製1Lニーダー(モリヤマ製)に仕込み、10時間混練した。次にこの混合物を10Lの水に投入し、ディスパーで3時間撹拌した後、ろ過、水洗をくりかえして塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、固形分25質量%の顔料の水ケーキを得た。
微粒化された上記PY150の水ケーキを顔料分で3gを、300mLのビーカー中にアセトン300mL中に入れて、ディスパーを用いて、30分間、攪拌した。
アセトン溶液中に、PY150のダマがないことを確認した後、No.2(東洋濾紙(株)製)のろ紙でヌッチェを用いて、該アセトン溶液を吸引ろ過した。吸引ろ過を進め、ろ紙上の溶剤が切れる手前でヌッチェにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100mLを注ぎ、一旦プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを吸引して、濾別した。同じ作業をもう一度繰り返して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む溶剤ケーキを得た。
得られた溶剤ケーキを、バット上に広げ、オーブン中で、170℃で1時間乾燥した。
乾燥後、PY150を粉砕して、PY150を粉体状で得た。
得られたPY150の比表面積を、比表面積測定装置(モノソーブ;ユアサアイオニクス(株)製)を用いて測定したところ、200.3m/gであった。
【0035】
比較例1
微粒化されたPY150の水ケーキを、溶剤処理することなく、バット上に広げて、オーブン中で、80℃で1時間乾燥する以外は実施例1と同様に行った。得られたPY150の比表面積は、82.9m/gであった。
【0036】
実施例2
実施例1において原料として用いたPY150(比表面積126.6m/g)を、92.3m/gの比表面積を有するものに代える以外は、実施例1と同様に処理して、PY150を粉体状で得た。得られたPY150の比表面積は、230.0m/gであった。
【0037】
比較例2
比較例1において、原料として用いたPY150(比表面積126.6m/g)を、92.3m/gの比表面積を有するものに代える以外は、比較例1と同様に行った。得られたPY150の比表面積は、94.3m/gであった。
【0038】
実施例3
実施例1において原料として用いたPY150(比表面積126.6m/g)を、106.2m/gの比表面積を有するものに代える以外は、実施例1と同様に処理して、PY150を粉体状で得た。得られたPY150の比表面積は、216.1m/gであった。
【0039】
比較例3
比較例1において、原料として用いたPY150(比表面積126.6m/g)を、106.2m/gの比表面積を有するものに代える以外は、比較例1と同様に行った。得られたPY150の比表面積は、117.7m/gであった。
【0040】
実施例4
塩化ナトリウム:700g、およびジエチレングリコール:160gとする以外は、実施例1と同様にして、固形分25質量%の顔料の水ケーキを得た。
得られた水ケーキを、実施例1と同様に処理して、PY150を粉体状で得た。得られたPY150の比表面積は308.9m/gであった。
【0041】
比較例4
実施例4で得られた微粒化されたPY150の水ケーキを、溶剤処理することなく、バット上に広げて、オーブン中で、80℃で1時間乾燥する以外は実施例4と同様に行った。得られたPY150の比表面積は、0.2m/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の、比表面積が160〜350m/gの式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体は、カラーフィルタ用の着色材として用いることができ、得られるカラーフィルタにおいてコントラストが高いことが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が160〜350m2/gである、互変異性構造の形態において式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体。

[式中、環XおよびYは、それぞれ独立に、=O、=S、=NR、−N(R)R、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CON(R)R、−SO、−N(R)CN、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜11のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の置換基を有していてもよく、環XおよびYのそれぞれについて環内および環外二重結合の合計は3つである。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
は、水素原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基またはアシル基を表す。
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表し、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができる。
は、−OH、−N(R)R、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
〜Rに関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができる。
m、n、oおよびpは、それぞれ1であるか、あるいは式(I)において環XとY内の結合として点線で示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。]
【請求項2】
互変異性体の形態で式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体が、式(II)で表される化合物のニッケル錯体である請求項1に記載の金属錯体。

【請求項3】
請求項1または2に記載の金属錯体を含む着色組成物。

【公開番号】特開2007−2076(P2007−2076A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182914(P2005−182914)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】