説明

黒ピーナツ種皮抽出物、及び該抽出物を含む抗酸化剤

【解決すべき課題】従来産業廃棄物として処理されていた種皮を原料とした新規抗酸化剤を提供する。
【解決手段】黒ピーナツ種皮から極性溶媒で抽出して得られるアントシアニンとカテキン類とを含んでなる種皮抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒ピーナツ抽出物、及び該抽出物を含む抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界においては、食品に使用できない部分は産業廃棄物として莫大な経費をかけて処分している。ピーナツ産業においてもピーナツ種皮や殻が産業廃棄物として大量に排出されており、これらの有効利用が望まれている。
【0003】
近年、ピーナツ種皮についてはその成分分析および有効性の研究が行われ、ピーナツ種皮にはポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンが含まれていることが報告されている(非特許文献1)。また、ピーナツ種皮には抗酸化作用や造血機能回復効果があることが報告されている(非特許文献1、特許文献1)。そのため、ピーナツ種皮抽出物の健康食品としての検討が進められている。
【0004】
(先行文献)
【非特許文献1】http://homepage2.nifty.com/suzuichi/kenko.htm
【特許文献1】特開平10−120588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの研究によれば、一般のピーナツ種皮の抽出物はカテキン類を主成分としている。カテキン類は、緑茶等に含まれ、高い抗酸化作用を示すことが知られている。しかし、カテキン類は苦味と渋みを呈するため、食品添加剤等の用途に対しては単独では使用しにくく、他の甘味料と併用して使用されている。抗酸化作用が同等で、かつ苦味と渋みの度合が低ければ用途展開が広がると考えられる。そこで、本発明の目的は、優れた抗酸化作用を有するとともに苦味と渋みの度合が低減された新規材料を提供することにある。本発明の他の目的は従来廃棄されていた材料の有効利用を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は(1)黒ピーナツ種皮から極性溶媒で抽出して得られるアントシアニンとカテキン類とを含んでなる種皮抽出物である。
【0007】
(2)極性溶媒は、水であることが好ましい。
(3)水の温度は、5〜50℃の範囲にあることが好ましい。
(4)上記カテキン類は、エピカテキンガレートであり、また、
(5)上記アントシアニンは、シアニジン−3−ルチノシド、シアニジン−3−キシロールルチノシド、シアニジン−3−グルコシルルチノシドからなる群から選ばれる1種以上の化合物である。
【0008】
本発明はまた(6)上記黒ピーナツ種皮抽出物を含む抗酸化剤である。
【0009】
本発明はまた(7)上記抗酸化剤を含む食品類である。
【0010】
(8)上記食品類は、食物、飲料、栄養補給剤からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来廃棄されていた材料の有効利用を図ることができる。また、本発明によれば、ポリフェノール、特にカテキン類とアントシアニンとを高濃度に含有し、高い抗酸化作用、例えばラジカル消去能、及び脂質過酸化阻止能がある。従って、美容、健康増進、健康維持、老化防止、生活習慣病の予防、治療に役立つと考えられる。また抗酸化作用を有する成分としてカテキン類のみでなくアントシアニンを含むため、苦味と渋みの度合が低減された抗酸化剤、その抗酸化剤を含む食品類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について詳しく説明する。本発明では原料として黒ピーナツを用いる。黒ピーナツは、学名がArachis hypogeaea L、別名が黒落花生で、現在中国でのみ生産されている。その種皮は一般のピーナツが茶色であるのに対し、図1に示したように黒褐色を示す。
【0013】
本発明においては、抽出用原料として黒ピーナツの種皮を用いる。黒ピーナツ種皮から抽出物を得る方法としては、例えば黒ピーナツをそのまま抽出剤とともにジューサー等で撹拌処理することにより抽出物を得ることができるが、黒ピーナツから食品用に種を取り出した後に残された種皮のみを抽出用原料として用いることが廃棄物利用の点から好ましい。種皮はむいた状態で抽出に供してもよいし、抽出効率を上げるため、種皮を粉砕した後に供することもできる。
【0014】
本発明の黒ピーナツ種皮抽出物を得るためには、黒ピーナツ種皮を極性溶媒を用いて抽出する。極性溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の低級エステル、アセトン、メチルイソブチルケトン等を用いることができ、これらの極性溶媒を単独又は適宜組み合わせて用いることができる。これらの中では、水、エタノール又はこれらの混合物を用いることが好ましい。特に水が安価でかつ安全性の点から好ましい。抽出溶媒は、黒ピーナツ種皮1kg当り通常5〜25Lの範囲で用いることができる。
【0015】
本発明で黒ピーナツ種皮抽出する際の抽出温度は、通常0℃〜100℃、好ましくは、2〜60℃、特に好ましくは5℃〜40℃の範囲内である。抽出温度が高すぎると抽出物が褐変し、かつ酸化防止効果が低下するため好ましくない。また、抽出時間は、抽出温度等により異なるが、通常1分間〜24時間、好ましくは10分間〜10時間、特に好ましくは20分〜1時間である。
【0016】
上記の方法で黒ピーナツ種皮から抽出された抽出物は、主成分としてポリフェノール類を大量に含有している。本発明の黒ピーナツ種皮抽出物は、ポリフェノール類の中の特にカテキン類とアントシアニンとを含有している。黒ピーナツ種皮100重量部からの抽出物の量は、通常10〜20重量部程度であり、また黒ピーナツ抽出物100重量部当りのカテキン類の含量は通常40〜70重量部の範囲で、かつアントシアニンは通常5〜15重量部の範囲にある。
【0017】
本発明の黒ピーナツ抽出物はそのまま、あるいは濃縮して、更に粉末化して用いることが出来る。抽出物粉末は濃縮液を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥処理することにより得ることができる。
【0018】
本発明におけるカテキン類とは、ポリフェノールの1種であるフラボノイドの1種で、具体的には、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート等をいう。本発明の黒ピーナツ種皮抽出物には、上記カテキン類のうち特にエピカテキンガレートが最も多く含まれている。
【0019】
本発明におけるアントシアニンは、フラボノイドの一種であり、アグリコン成分と配糖体とが結合してなる化合物である。更に糖に有機酸が結合してなる構造体を含む。本発明の黒ピーナツ種皮抽出分に含有されるアントシアニン成分では、アグリコン成分はシアニジンが主成分であり、かつ配糖体はグルコース、キシロース、ラムノース、アラビノースでありうる。上記アグリコン成分と配糖体とが結合したアントシアニンとしては、具体的には、シアニジン−3−ルチノシド、シアニジン−3−キシロールルチノシド、シアニジン−3−グルコシルルチノシド、シアニジン−3−ソホロシド、シアニジン−3−サンブビオシド等でありうる。
【0020】
本発明の抽出物は実施例に示すようにラジカル消去能、及び脂質過酸化阻止能等の優れた抗酸化作用を示すため、そのまま、あるいは食品等の材料に配合して他の成分と混合して抗酸化剤として使用することができる。
【0021】
本発明の抗酸化剤をそのまま単独で摂取する際には、抽出物の粉末をそのまま食品等に振り掛けるか、あるいは、水またはお湯に溶解させて摂取することができる。水またはお湯に溶解させるにはテイバッグのようなものに抽出物粉末を分包して使用することができる。抽出物は粉末でなく濃縮物を用いることもできる。
【0022】
本発明の抗酸化剤は、食品等に添加して用いることが好ましい。本発明で食品等とは具体的には、食物、飲料、または栄養補強剤等をいう。本発明の抗酸化剤は、これらの抗酸化性能を高めることができる。
【0023】
本発明の抗酸化剤を配合して効果のある食物としては、例えば、うどん、そば、パスタ等の麺類、パン等、生菓子、おしるこ、ぜんざい、みつまめ等の甘味食物、アイスクリーム、ソフトクリーム等の冷菓、豆腐、コンニャク、カンテン、トコロテン、ゼリー、羊羹等、スナック菓子等を挙げることができる。
【0024】
本発明における飲料としては、例えば、乳酸菌飲料、果汁飲料、野菜飲料、茶系飲料、清涼飲料、アルコール飲料、コーヒー、乳製品飲料等を挙げることができる。
【0025】
茶系飲料としては、緑茶、烏龍茶、紅茶、グアバ葉茶、ジャスミン茶等を挙げることができる。また、果汁飲料としては、りんご、ぶどう、梨、桃、いちご、柿、みかん、ブルーベリー等、野菜飲料としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ等の野菜汁飲料を挙げることができる。
【0026】
本発明の抗酸化剤は他の成分とともに栄養補強剤の1成分として使用することができる。栄養補強剤として本発明の抗酸化剤と混合可能な材料としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ソルビン酸等のビタミン類、界面活性剤、甘味料、無機金属塩類、pH調整剤、香料、賦形剤、結合剤、着色剤等を挙げることができる。
【0027】
上記界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンモノグリセリンモノ脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、ポリオキシエチレン高級脂肪族アルコール等を挙げることができる。
【0028】
本発明の抗酸化剤には甘味料を配合することができる。本発明において配合することのできる甘味料としては、例えば、マンノース、果糖、葡萄糖、糖蜜、砂糖、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、デキストリン等の糖類を挙げることができる。
【0029】
(無機金属塩類)
本発明の抗酸化剤には無機金属塩を配合することができる。この無機金属塩として用いることのできる金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、クロム、マンガン、アルミニウム、鉄等を挙げることができる。また無機金属塩としては、具体的には、塩化カリウム、硫酸カリウム、燐酸カリウム、炭酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシクム、燐酸カルシウム、炭酸カルシクム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、燐酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、燐酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、炭酸鉄等を挙げることができる。
【0030】
本発明の抗酸化剤に用いることのできる賦形剤としては、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、卵黄レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸等を挙げることができる。
【0031】
本発明の抗酸化剤に用いることのできる結合剤としては、例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、スターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖等を挙げることができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例を挙げて本発明につき更に詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例になんら制約されるものではない。なお、本発明の実施例では、黒ピーナツ抽出物の成分、及び性能の評価は、次の方法により行った。
【0033】
(総ポリフェノール量の定量)
総ポリフェノール量は、フォーリン・チオカルトー法により定量した。サンプル1mgを試験管に採取し、脱イオン水5mLに溶解した。この溶液1mLを採り、更に脱イオン水4mLを加えて希釈した。この希釈した溶液1mLをとり、これに50%フェノール溶液1mLを添加し、10秒間撹拌した。その後10%炭酸ナトリウム溶液1mLを添加し、10秒間撹拌後1時間静置した。次いで卓上遠心分離機で遠心分離し、その上清を分光光度計(日立製、機種U-1100)で750nmの吸収値を測定した。この吸収値をAsampleとした。また、ブランクとしてサンプルの代わりに脱イオン水を用いた吸収値Ablankを求めた。没食子酸溶液で求めた標準曲線から下記(1)式で総ポリフェノール量を算出し、没食子酸当量にて表示した。
【0034】
【数1】

【0035】
(総フラバン量の定量)
総フラバン量は、バニリン−硫酸法を用いて行った。サンプル2mgをガラス試験管に秤量し、50%エタノール5mLに溶解した。この溶液1mLに更に50%エタノール4mLを加え希釈した。この希釈サンプル0.5mLに50%エタノール1mLを加え、これに分注器を用いて1%バニリン硫酸3mLを添加し、20秒間撹拌後、20秒間氷水中で冷却した。その後室温に放置後分光光度計(日立製、機種U-1100)で500nmの吸収値を測定した。この吸収値をAsample、ブランク1としてサンプルの代わりに50%エタノールを用いた吸収値をAblank1、ブランク2として1%バニリン−硫酸の代わりに70%硫酸を用いた吸収値Ablank2とした。また、総フラバン量は、下記(2)式より総フラバン量を算出し、(+)−カテキン溶液で同様の方法で求めた標準曲線から(+)−カテキン当量で表した。
【0036】
【数2】

【0037】
(アントシアニンの定量)
アントシアニン含量は、次の方法を用いて行った。サンプル1mgをガラス試験管に秤量し、1%塩酸メタノール2mLに溶解した。この溶液0.5mLに更に1%塩酸メタノール3mLを加え希釈した。この希釈サンプルを分光光度計(日立製、機種U-1100)で530nmの吸収値を測定した。ブランクとしてサンプルの代わりに1%塩酸メタノールの吸収値を求めた。シアニジン−3−グリコキシド溶液で同様の方法で標準曲線求めた。下記(3)式よりアントシアニン量を算出し、シアニジン−3−グリコキシド当量で表した。
【0038】
【数3】

【0039】
(色調評価)
サンプル10mgをガラス試験管に秤量し、pHを調整したマクベイン氏緩衝液5mLに溶解し、色差計(日本電色工業製ZE2000)を用いてハンター値(a及びb)を測定して評価した。
【0040】
(褐変度)
サンプル10mgをマクベイン氏緩衝液5mLに溶解し、分光光度計(日立製作所製U-1100)を用いて420nmの吸収値(Abs.420)と530nmの吸収値(Abs.530)を測定し、(Abs.420)/(Abs.530)で算出した。
【0041】
(ラジカル消去能)
ラジカル消去能はDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)のラジカルに対する消去能を測定することで評価した。サンプル1mgをガラス試験管に秤量し、50%エタノール5mLに溶解した。この溶液から、0、0.01、0.02、0.05、0.10および0.20mg/mLの濃度の溶液を作成した。この溶液0.3mLに400μMDPPH、0.2MMES緩衝液および50%エタノール液を等量混合した混合液0.9mLを加え、10秒間激しく撹拌後、110秒間静置した。その後、分光光度計(日立製、機種U-1100)で520nmの吸収値を測定した。この吸収値をAsampleとした。コントロールとしてサンプルの代わりに50%エタノールを用いた吸収値を測定し、A controlとした。また、ブランクとして0.2MMES緩衝液および50%エタノール液を等量混合した混合液を用いた吸収値Ablankを求めた。また、DPPHラジカル消去能は△A520=Acontrol−(Asample−Ablank)と下記(4)式より算出し、IC50値にて評価した。
【0042】
【数4】

【0043】
(脂質過酸化阻止能)
リノール酸の自動酸化に対する抗酸化能(以下「脂質過酸化阻止能」という。)を、β−カロテン褪色法で行った。すなわち、サンプル1mgをガラス試験管に秤量し、50%エタノール2mLに溶解した。この溶液から、0、0.01、0.05、0.10、0.20および0.50mg/mLの濃度の溶液を作成した。この溶液0.1mLにリノール酸−β−カロチンエマルジョン4.9mLを加え、10秒間激しく撹拌後、分光光度計(日立製、機種U-1500)で470nmの吸収値を測定した。この吸収値をA0とした。その後速やかに溶液を長試験管に戻し、50℃恒温槽に漬け、30分間反応させた。反応後再び470nmの吸収値を測定した。この吸収値をA30とした。これらの吸収値の差A0−A30を△Acontrolとした。そして、下記(5)式により脂質過酸化阻止率を算出した。脂質過酸化阻止率は、IC50値にて評価した。
【0044】
【数5】

【0045】
実施例で用いた原料の入手先は次ぎのとおり。
(黒ピーナツ)
A社から提供していただいた黒ピーナツ(中国産)を用いた。
【0046】
(実施例1)
(抽出用原料の準備)
黒ピーナツの種皮は黒ピーナツから手作業で剥き、回収した。回収した種皮を小型ミル・ミキサー内に投入し、30秒間回転処理することにより粉砕し、粉末化した。黒ピーナツ粉末はサンプル瓶に移し、試験に使用するまで−30℃で保存した。
【0047】
(抽出操作)
200mL容三角フラスコに脱イオン水50mLを加え、予め30℃で10分間予熱した。次ぎにこの脱イオン水中に黒ピーナツ種皮粉末0.5gを加え、30分静置して抽出した。抽出は暗所で行った。抽出試験後、固形分を濾紙、ついでメンブレンフイルター(0.45μm、酢酸セルロース)で吸引濾過して除去した。濾液をサンプル瓶に移し、−30℃にて凍結した。その後、凍結乾燥して固形抽出分を得た。原料種皮100重量部に対する固形抽出物の重量比は13重量部であった。
【0048】
(実施例2〜実施例7)
(抽出温度の影響)
実施例1において、抽出する水の温度を30℃からそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃とする以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。水の温度が高い程抽出物の量がやや多くなる傾向が認められた。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例8)
実施例1で得た黒ピーナツの水温30℃での水抽出物の総ポリフェノール量を上述のフォーリン・チオカルトー法により定量した。結果を表2と図2に示す。
【0051】
(実施例9〜実施例14)
(抽出温度の影響)
実施例8において、抽出する水の温度を30℃からそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃に変更する以外は実施例8と同様に行った。結果を表2と図2に示す。水温5〜60℃までは総ポリフェノール量に有意差は認められず、550μg/mg(抽出物)程度であるが、水温80℃および100℃抽出物では総ポリフェノール量が減少する傾向が認められた。
【0052】
【表2】

【0053】
(実施例15)
実施例1で得た黒ピーナツの水温30℃での水抽出物の総フラバン量を上述のバニリン−硫酸法により定量した。結果を表3と図3に示す。
【0054】
(実施例16〜実施例21)
(抽出温度の影響)
実施例15において、抽出する水の温度を30℃からそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃に変更する以外は実施例15と同様に行った。結果を表3と図3に示す。水温45と60℃において総フラバン量が最も多く、種皮抽出物の25.8重量%という値になった。水温100℃抽出物では種皮抽出物中の総フラバン量が減少し、16.2重量%であった。
【0055】
【表3】

【0056】
(実施例22)
実施例1で得た黒ピーナツの水温30℃での水抽出物のアントシアニン含量を上述の方法により定量した。結果を表4と図4に示す。
【0057】
(実施例23〜実施例28)
(抽出温度の影響)
実施例22において、抽出する水の温度を30℃からそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃に変更する以外は実施例22と同様に行った。結果を表4と図4に示す。水温80℃までは水温によるアントシアニン含量に有意差は認められないが、水温100℃の水抽出物ではアントシアニン含量が減少する傾向が認められた。
【0058】
【表4】

【0059】
(実施例29〜実施例35)
実施例1〜7で得た黒ピーナツの色調の抽出する水の温度による差を見た。結果を表5と図5に示す。水温45℃までは差が認められないが、水温60℃以上で次第に黄色化が進み、80℃以上で黄変が急激に進行する傾向が認められた。
【0060】
【表5】

【0061】
(実施例36〜実施例42)
実施例1〜7で得た黒ピーナツの褐変度の抽出する水の温度による差を見た。結果を表6と図6に示す。水温30℃までは差が認められないが、水温が45℃以上では抽出物の褐変が進み、抽出水温が80℃以上では褐変が急激に進行する傾向が認められた。
【0062】
【表6】

【0063】
(実施例43)
(ラジカル消去能)
実施例1で得た黒ピーナツの水温30℃での水抽出物のラジカル消去能を上述の方法により測定した。結果を表7と図7に示す。
【0064】
(実施例44〜実施例49)
(抽出温度の影響)
実施例43において、抽出する水の温度を30℃からそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃に変更する以外は実施例43と同様に行った。結果を表7と図7に示す。ラジカル消去能は水温30℃で最も高く、水温80℃まではラジカル消去能に有意差は認められないが、水温100℃ではラジカル消去能が減少する傾向が認められた。
【0065】
【表7】

【0066】
(実施例50)
(脂質過酸化阻止能)
実施例1で得た黒ピーナツの水温30℃での水抽出物の脂質過酸化阻止能を上述のバニリン−硫酸法により定量した。結果を表8と図8に示す。
【0067】
(実施例51〜実施例56)
(抽出温度の影響)
実施例50において、抽出する水の温度を30℃のからそれぞれ5℃、15℃、45℃、60℃、80℃または100℃に変更する以外は実施例50と同様に行った。結果を表8と図8に示す。ラジカル消去能と逆に水温が高くなる程脂質過酸化阻止能が高くなる傾向が認められた。
【0068】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の黒ピーナツ種皮抽出物は抗酸化作用に優れているため、そのままあるいは他の素材に混合して健康食品、健康飲料、食品類への抗酸化剤、栄養補強剤としての利用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の抽出物の原料である黒ピーナツの写真である。
【図2】図2は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物中の、総ポリフェノール量の抽出温度による差を示したグラフである。
【図3】図3は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物中の、総フラバン量の抽出温度による差を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物中の、アントシアニン含量の抽出温度による差を示したグラフである。
【図5】図5は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物の、色調の抽出温度による差を示したグラフである。
【図6】図6は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物の、褐変度の抽出温度による差を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物の、ラジカル消失能の抽出温度による差を示したグラフである。
【図8】図8は、本発明の黒ピーナツ種皮抽出物の、脂質過酸化阻止能の抽出温度による差を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒ピーナツ種皮から極性溶媒で抽出して得られるアントシアニンとカテキン類とを含んでなる種皮抽出物。
【請求項2】
極性溶媒が水であることを特徴とする請求項1に記載の種皮抽出物。
【請求項3】
水の温度が5〜50℃の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の種皮抽出物。
【請求項4】
カテキン類が、エピカテキンガレートであることを特徴とする請求項1〜3に記載の種皮抽出物。
【請求項5】
アントシアニンが、シアニジン−3−ルチノシド、シアニジン−3−キシロールルチノシド、シアニジン−3−グルコシルルチノシドからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜4に記載の種皮抽出物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の黒ピーナツ種皮抽出物を含む抗酸化剤。
【請求項7】
請求項6に記載の抗酸化剤を含む食品類。
【請求項8】
食品類が食物、飲料、栄養補給剤からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項7に記載の食品類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−326966(P2007−326966A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159530(P2006−159530)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(801000050)財団法人くまもとテクノ産業財団 (38)
【Fターム(参考)】