説明

黒色磁性酸化鉄粒子粉末及びその製造方法

【課題】 本発明は、吸湿性の低く、低湿と高湿で吸湿性の差が小さいマグネタイト粒子粉末からなる黒色磁性酸化鉄粒子粉末に関するものであり、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末を用いて磁性トナーを製造した場合には、環境安定性に優れた磁性トナーを得ることができる。
【解決手段】 黒色磁性酸化鉄粒子において、25℃における相対湿度20%と80%の比表面積あたりの水分吸着量V80/V20が2.0以下である黒色磁性酸化鉄粒子粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、黒色であることから、塗料用、樹脂用、印刷インキ等の黒色着色顔料として用いることができ、また、磁性トナー用黒色磁性粒子として用いた場合には、吸湿性に優れていることにより、環境安定性に優れたトナーを構成でき、また電気特性が優れていることにより低温低湿環境下での画像特性の優れたトナーを構成できる。
【背景技術】
【0002】
従来、静電潜像現像法の一つとして、キャリアを使用せずに樹脂中にマグネタイト粒子粉末等の磁性粒子粉末を混合分散させた複合体粒子を現像剤として用いる所謂「一成分系磁性トナー」による現像法が広く知られ、汎用されている。
【0003】
近時、レーザービームプリンターやデジタル複写機の高速化や高画質化に加えて、あらゆる環境下で使用を可能にした装置の開発に伴って現像剤である磁性トナーの特性向上、とりわけ環境安定性の高いトナーが強く要求されている。
【0004】
そこで、黒色磁性酸化鉄粒子粉末についても前記磁性トナーに対する要求を満足させるために、更に一層の特性改善が強く望まれている。
【0005】
即ち、環境安定性に優れたトナーを得るためには、吸湿性が低く環境安定性に優れていること、また低温低湿環境下で画像特性の優れたトナーを得るには電気抵抗が低いことが要求されている。
【0006】
この理由は、レーザービームプリンターやデジタル複写機の高画質化に伴い磁性トナーが小粒子径し、磁性トナーの表面積が増えることにより、磁性トナーの帯電特性が環境の影響を受け易くなる。即ち、高温高湿環境下で吸湿性が低いとトナーの帯電性能は維持され、画像特性の低下を防ぐことができる。また、低温低湿環境下で電気抵抗が低いとトナーの帯電過剰を防ぐことができカブリや濃度低下を起こさない。
【0007】
従来、吸湿性の低い黒色磁性酸化鉄粒子を得るために様々な試みがなされている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−24445号公報
【特許文献2】特開2005−15337号公報
【特許文献3】特開2002−128525号公報
【特許文献4】特開号2008−282002公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の諸問題に鑑み、吸湿性が低く環境安定性が優れる黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、このような黒色磁性酸化鉄粒子粉末は未だ提供されていない。
【0010】
前出特許文献1記載のマグネタイト粒子は、温度25℃、相対湿度90%における比表面積基準で算出される水分吸着量(V90)が0.70mg/m以上であり十分とは言い難い。
【0011】
また、前出特許文献2記載のマグネタイト粒子粉末は、飽和磁化が低く、また吸湿性が十分とは言い難い。
【0012】
また、前出特許文献3記載のマグネタイト粒子は、飽和磁化が低く、また吸湿性が十分とは言い難い。
【0013】
また、前出特許文献4記載のマグネタイト粒子は、有機物で被覆されており、生産性が悪く、工業的ではない。また、トナーとした場合、低温低湿環境下ではチャージアップし易く、カブリ易い。
【0014】
そこで、本発明は、吸湿性が低く環境安定性に優れ、さまざまな環境下で使用される磁性トナーに好適に用いられる黒色磁性酸化鉄粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0016】
即ち、本発明は、温度25℃、相対湿度80%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V80)と相対湿度20%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V20)との関係が次式で表される黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明1)。
V80/V20 ≦ 2.0
【0017】
また、本発明は、温度25℃、相対湿度90%における比表面積基準で算出される水分吸着量(V90)が0.70mg/m未満である前記本発明の黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、炭素元素が0.05重量%以下である前記本発明のいずれかの黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、電気抵抗が1×10Ωcm以下である前記本発明のいずれかの黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明4)。
【0020】
また、本発明は、外部磁場796kA/m(10kOe)における飽和磁化が85.0Am/kg以上である前記本発明のいずれかの黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明5)。
【0021】
また、本発明は、前記黒色磁性酸化鉄粒子がSiまたはAl若しくはSi及びAlの被覆層を有する前記本発明のいずれかの黒色磁性酸化鉄粒子粉末である(本発明6)。
【0022】
また、本発明は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し1.01〜1.5等量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩溶液を70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して鉄の酸化反応率が40〜60%まで酸化反応を行い、核晶マグネタイト粒子を生成させる第一段反応、該第一段反応終了後の核晶マグネタイト粒子と水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応液のpHを5〜9に一旦調整した後、pHを9.5以上に再調整し、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して酸化反応を行う(第二段反応)からなる黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法において、第一段反応及び/又は第二段反応のときに水可溶性ケイ酸塩をFeに対しSi換算で1.5原子%以下添加することを特徴とする前記本発明のいずれかの黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法である(本発明7)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子は、殊に、環境安定性に優れ、あらゆる環境下でも画像特性を維持できるトナー用の顔料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0025】
先ず、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末について述べる。
【0026】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、組成的にはマグネタイト粒子((FeO)x・Fe、0<x≦1)からなる。
【0027】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子は、温度25℃、相対湿度80%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V80)と相対湿度20%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V20)との関係がV80/V20≦2.0である。前記比表面積基準で算出される水分吸着量の関係がV80/V20>2.0である場合には、環境安定性が悪く、特に高温高湿環境下での吸湿性が高いものとなる。より好ましくは1.0≦V80/V20≦1.98である。
【0028】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子は温度25℃、相対湿度90%における比表面積基準で算出される水分吸着量(V90)が0.70mg/m未満であることが好ましい。水分吸着量(V90)が0.70mg/mより大きい場合には吸湿性が高く環境安定性が悪くなる。より好ましい水分吸着量(V90)は0.1〜0.69mg/mであり、更により好ましくは0.2〜0.68mg/mである。
【0029】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子中の炭素含有量は0〜0.05重量%が好ましい。即ち、本発明の黒色磁性酸化鉄粒子は無機物で構成されているものであって、有機物で被覆されていないものである。
【0030】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の成型体密度が2.7g/cmである成型物の15Vの直流電圧印加時の電気抵抗値は1×10Ωcm以下が好ましく、より好ましくは8×10Ωcm以下である
【0031】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の平均粒子径(X)は0.05〜0.30μmが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合には、単位容積中の粒子が多くなり過ぎ粒子間の接点数が増えるため、粉体層間の付着力が大きくなり、磁性トナーとする場合に、樹脂中への分散性が悪くなる。0.30μmを越える場合には、一個のトナー粒子中に含まれる黒色磁性酸化鉄粒子の個数が少なくなり、各トナー粒子について黒色磁性酸化鉄粒子の分布に偏りが生じ、その結果、トナーの帯電の均一性が損なわれる。より好ましい平均粒子径は0.07〜0.28μmの範囲である。
【0032】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末はBET比表面積が3〜30m/gが好ましい。より好ましくは4〜20m/gである。BET比表面積が3m/gが未満の場合、平均粒子径が0.50μmを超えることとなり、上述した通り、トナー粒子とした場合にトナーの帯電の均一性が損なわれるとともに、着色力が小さくなり高解像度のトナーを得られない。BET比表面積が30m/gを超える場合、粉体層間の付着力が大きくなり、磁性トナーとする場合に、樹脂中への分散性が悪くなる。より好ましいBET比表面積は4〜20m/gである。
【0033】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子の外部磁場796kA/m(10kOe)における飽和磁化が85.0〜92.0Am/kgが好ましく、より好ましくは86.0〜90.0Am/kgであり、特に高速複写機用のトナーとして用いた場合に好適である。
【0034】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子は、粒子表面にSi化合物またはAl化合物若しくはSi化合物及びAl化合物を有することが好ましく、Siを0.02〜1.0重量%含有し、Al量が0.02〜1.0重量%含有することが黒色磁性酸化鉄粒子に耐熱層形成のために好ましい。Al量、Si量が1.0重量%を超える場合には吸着水分量が増加する場合があり、トナーとした場合、トナーの環境安定性に影響を及ぼす場合がある。Al量、Si量が0.02重量%未満では、耐熱層として不十分である。
【0035】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末においては、全Si含有量(粒子表面に形成した場合のSi化合物を含む)が、Feに対して0.02〜5.99原子%であることが好ましい。0.02原子%未満では、耐熱層として不十分である。5.99原子%を超える場合には吸着水分量が増加する場合があり、トナーとした場合、トナーの環境安定性に影響を及ぼす場合がある。より好ましいSi含有量は0.10〜3.00原子%である。
【0036】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の発熱開始温度は、120〜150℃であり、Si又はSiとAlによる被覆層を形成した場合には130℃以上となる。
【0037】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は特に限定されるものではないが、八面体が好ましい。
【0038】
次に、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造法について述べる。
【0039】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し1.01〜1.5等量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩溶液を70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して鉄の酸化反応率が40〜60%まで酸化反応を行い、核晶マグネタイト粒子を生成させる第一段反応、該第一段反応終了後の核晶マグネタイト粒子と水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応液のpHを5〜9に一旦調整した後pHを9.5以上に再調整し、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して酸化反応を行う第二段反応の後、次いで、濾別、水洗、乾燥することによって得ることができ、第一段反応及び/又は第二段反応のときに水可溶性ケイ酸塩をFeに対しSi換算で1.5原子%以下添加するものである。
【0040】
本発明においては、前記製造条件とすることによって、単位比表面積あたりの水分吸着量が低い、即ち吸湿性の低い粒子を得ることができる。
【0041】
本発明における第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄水溶液、又は、硫酸第一鉄及び塩化第一鉄水溶液等を使用することができる。
【0042】
本発明における水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸アルカリ水溶液及びアンモニア水等を使用することができる。
【0043】
第一段反応において水酸化アルカリ水溶液の量は、第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して1.01〜1.5当量である。好ましくは1.01〜1.3当量の範囲である。1.01当量未満の場合には、八面体以外の六面体、多面体や球状の粒子が混入してくる。1.5当量を超える場合には、粒度分布が大きくなり、均一な粒子径のものが得られない。
【0044】
第一段反応における鉄の酸化反応率は40〜60%である。酸化反応率が40%未満の場合は、後段の酸化反応が長くなり粒度分布が大きくなり、均一な粒子径のものが得られない。酸化反応率が60%を超える場合は、第二段反応における酸化反応が短くなり粒度分布が大きくなり、均一な粒子径のものが得られない。
【0045】
第一段反応における反応温度は70〜100℃である。70℃未満である場合には、針状晶ゲータイト粒子が混在してくる。100℃を越える場合もマグネタイト粒子は生成するが、オートクレーブ等の装置を必要とするため工業的に容易ではない。
【0046】
第一段反応における水酸化アルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液を使用することができる。
【0047】
酸化手段は酸素含有ガス(例えば、空気)を液中に通気することにより行う。
【0048】
本発明において使用される水可溶性ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウムや、ケイ酸カリウム等が使用できる。水可溶性ケイ酸塩の添加量はFeに対してSi換算で1.5原子%以下、好ましくは1.3原子%以下である。1.5原子%を越える場合、生成物中にゲータイトが混入し、目的の粒子を単一相として得ることができない。
【0049】
本発明において使用される水可溶性ケイ酸塩は、第一段反応または第二段反応、第一段反応および第二段反応の反応において適宜添加することができる。第一段反応の反応においては水酸化アルカリ水溶液、第一鉄塩水溶液又は、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄反応水溶液のいずれかに添加することができる。第二段反応の反応においては水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄反応水溶液に添加することができる。
【0050】
第一段反応における鉄の酸化反応率は40〜60%に達した後、一旦、懸濁液のpHを5〜9となるように硫酸水溶液等を適宜添加する。第一段反応と第二段反応との間で前記pH調整を行わない場合、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄反応水溶液の粘性が高くなり、反応温度の均一性や反応速度の均一性が損なわれ、結果として粒子の結晶成長速度が不均一となり結晶性が悪く、吸湿性が高いものとなる。また、均一な粒子径のものが得られない。
第一段反応と第二段反応との間で行うpH調整のpHが5未満の場合生成物中にゲータイトが混入し、目的の粒子を単一相として得ることができない。pHが9を超える場合、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄反応水溶液の粘性が高く粒度分布が大きくなり、均一な粒子径のものが得られない。
【0051】
懸濁液のpHを5〜9となるように硫酸水溶液等を適宜添加した後、反応溶液に水酸化アルカリ等を添加して、反応溶液のpHを9.5以上に調整する(第二段反応)。使用する水酸化アルカリ水溶液の量は残存するFe2+に対して1.00当量以上である。1.00当量未満の場合残存するFe2+が全量沈殿しない。実用上、1.00当量以上であって工業性を考慮した量が好ましい。
【0052】
反応溶液のpHを9.5以上に調整した後、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄反応水溶液に水可溶性ケイ酸塩を添加してもよい。
【0053】
前記第二段反応の反応温度は前記第一段反応と同一でよい。また、酸化手段も同一でよい。
【0054】
なお、原料添加後と第一段反応との間、第一段反応と第二段反応との間において、必要により十分な攪拌を行ってもよい。
【0055】
また、黒色磁性酸化鉄粒子の粒子表面に、Al、又はAl及びSiからなる化合物を形成する場合には、第二段反応終了後の黒色磁性酸化鉄粒子を含む縣濁液中に水可溶性アルミニウム塩、又は水可溶性アルミニウム塩及び水可溶性塩珪酸塩をAl量が0.02から1.0重量%、Si量が0.02〜1.0重量%になるように添加した後、pHを5〜9の範囲に調整してSiとAlを黒色磁性酸化鉄粒子表面に析出沈着させることにより得ることができる。
【0056】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、黒色であることから、塗料用、樹脂用、印刷インキ等の黒色着色顔料として用いることができる。また、本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末を用いた磁性トナーは、吸湿性が低いことにより、高温高湿環境下で帯電性能の劣化がなく高解像度の画質が得られるものである。
【0057】
本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末を用いた磁性トナーについて述べる。
【0058】
本発明における磁性トナーは、体積平均粒径が3〜20μm、好ましくは5〜15μmである。
【0059】
本発明における磁性トナーは、前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末及び結着樹脂とからなり、必要に応じて離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を含有してもよい。前記結着樹脂と前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末との割合は、前記結着樹脂100重量部に対して前記磁性酸化鉄粒子粉末20〜150重量部、好ましくは30〜120重量部である。
【0060】
前記磁性トナーに使用する結着樹脂としては、スチレン、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル等のビニル系単量体を重合又は共重合したビニル系重合体が使用できる。この結着樹脂を構成する単量体のスチレンとして、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン及びその置換体があり、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソブチル及びアクリル酸ヘキシルがあり、また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヘキシル等の二重結合を有するモノカルボン酸及びその置換体等がある。前記共重合体には、スチレン系成分を50〜95重量%含むことが好ましい。
【0061】
前記共重合体の製造には、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合法が用いられる。また、結着樹脂にはこのような成分以外にも必要に応じてポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等、公知の重合体あるいは共重合体を使用することができる。
【0062】
磁性トナーを作成するにあたって、結着樹脂100重量部に対して、本発明に係る磁性酸化鉄粒子粉末は、20〜150重量部、好ましくは30〜120重量部使用するのがよい。
【0063】
離型剤として、炭素数8以上のパラフィン、ポリオレフィン等が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィンワックス、パラフィンラテックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス等を使用することができる。これらのポリオレフィンの配合量は、一般に1〜10重量%の範囲であることが好ましい。
【0064】
着色剤としては、必要に応じて任意の適当な顔料や染料が使用できる。例えば、カーボンブラック、クロームイエロー、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、群青、キナクリドン、ベンジジンイエローなどが使用できる。
【0065】
荷電制御剤としては、フッ素系界面活性剤、アゾ系金属錯塩、サリチル酸クロム錯体、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸の金属錯塩、ニグロシン等のアジン系染料、四級アンモニウム塩、カーボンブラックなどが使用できる。
【0066】
また、他の添加剤として、研磨剤として、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、タングステンカーバイドなどが使用でき、帯電補助剤、導電性付与剤、ケーキング防止剤、流動性付与剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子を添加してもよい。
【0067】
本発明における磁性トナーを作成する方法としては、混合、混練、粉砕による公知の方法によって行うことができ、具体的には、前記磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末及び前記結着樹脂、必要に応じて着色剤、離型剤、荷電制御剤、その他の添加剤等をまず混合機により十分に混合した後、加熱混練機によって樹脂等を溶融、混練して相溶化させた中に磁性酸化鉄粒子等を分散させ、冷却固化後、得られた樹脂混練物について粉砕及び分級を行って磁性トナーを得ることができる。
【0068】
前記混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機を使用することができる。前記加熱混練機としては、ロールミル、ニーダー、二軸スクリュ−型、エクストルーダー等の加熱混練機を使用することができる。前記粉砕はカッターミル、ジェットミル等の粉砕機によって行うことができ、前記分級も公知の方法により行うことができる。
【0069】
本発明における磁性トナーを得る他の方法として、懸濁重合法又は乳化重合法があり、懸濁重合法においては、重合性単量体及び磁性酸化鉄粒子粉末、着色剤、必要に応じて、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させてトナー粒子を形成することができる。
【0070】
乳化重合法においては、単量体、磁性トナー用磁性酸化鉄粒子粉末、着色剤、重合開始剤などを水中に分散させて重合を行う過程に乳化剤を添加することによって適度な粒度のトナー粒子を形成することができる。
【0071】
<作用>
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、吸湿性が低く環境安定性に優れるものであり、磁性トナーとして使用した場合においても、あらゆる環境下で使用されても画像特性が損なわれないものである。
【0072】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、吸湿性が低く、しかも低湿および高湿での吸湿性の差が小さくできたので環境安定性に優れたマグネタイト粒子とすることができたものである。
【実施例】
【0073】
本発明の代表的な実施例は次の通りである。
【0074】
<測定方法>
黒色磁性酸化鉄粒子の粒子形状及び平均粒子径は、「走査型電子顕微鏡S−4800」((株)日立ハイテクノロジーズ製)により観察し、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
【0075】
また、比表面積は「Mono Sorb MS−II」(湯浅アイオニックス株式会社製)を用いて比表面積はBET方により測定した値で示した。
【0076】
磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を使用し、外部磁場796kA/m(10kOe)までかけて測定した。
【0077】
第一段反応の第一鉄塩の酸化反応率は、反応溶液中のFe2+含有量を測定し、下記式によって算出した。
(A−B)÷A×100=酸化反応率(%)
但し、Aは第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液との混合直後の反応溶液中のFe2+の含有量、Bは水酸化第一鉄とマグネタイト粒子との混合物を含む第一鉄塩反応溶液中のFe2+含有量である。
【0078】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末のSi量及びAl量は「蛍光X線分析装置RIX−2100」(理学電気工業株式会社製)にて測定し、黒色磁性酸化鉄粒子粉末に対して元素換算で求めた値である。
【0079】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面のSi量は、下記の方法で測定した。
即ち、黒色磁性酸化鉄粒子粉末とイオン交換水を混合した後、分散させて懸濁液としたものを水酸化アルカリ水溶液と混合して30分間以上攪拌した後、懸濁液を濾過、乾燥して得られた黒色磁性酸化鉄粒子粉末のSi量を測定し、前記アルカリによる処理前の全Si量との差をもって粒子表面のSi量とした。
【0080】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の発熱開始温度は、「示差走査熱量計DSC6200」(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定した。
【0081】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の炭素含有量は、堀場製作所製炭素・硫黄分析装置EMIA−820を用いて炭素量を測定した。
【0082】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の電気抵抗値は、下記の測定方法により測定した値で示した。
【0083】
即ち、黒色磁性酸化鉄粒子粉末の印加電圧15Vでの電気抵抗値は、測定対象の粒子粉末0.5gを秤量し、KBr錠剤成形器(島津製作所製)を用い、ハンドプレス(島津製作所製 SSP−10型)のゲージ読み値で14MPaの圧力で10秒間、加圧成形する(この条件で、密度が2.7g/cm程度成型体が得られるが、他の成形器を使用する場合は、適宜、密度が2.7g/cm程度となる条件を設定すればよい。なお、密度が2.5〜2.8g/cm大幅に超える場合には、電気抵抗値が変化し、測定値の比較が困難となる。)。次に、加圧成形した試料をステンレス電極間にセットする。その際、電極間をフッ素樹脂性ホルダーで外部と完全に隔離する。セットした試料にホイーストンブリッジ(横河電機社製 TYPE 2768型)で15Vの電圧を印加して抵抗値を測定する。そのときの測定値R(Ω)と試料の電極面積A(cm)および厚みt(cm)を測定し、下記の式により体積固有抵抗値X(Ωcm)を計算する。
X=R/(A/t)
【0084】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の比表面積基準で算出される各相対湿度での水分吸着量は、「高精度蒸気吸着量測定装置BELSORP−aqua3」(日本ベル(株))を用いて、黒色磁性酸化鉄粒子粉末を120℃にて2時間脱気処理し、25℃の吸着温度にて水蒸気吸着等温線を測定し、相対湿度20%、80%、90%における水蒸気吸着量を求め、前述したBET方により測定した当該黒色磁性酸化鉄粒子粉末の比表面積の値で割って算出した。
【0085】
黒色磁性酸化鉄粒子粉末の比表面積基準で算出される相対湿度20%および80%における水分吸着量の関係式(V80/V20)の値は、前述した比表面積基準で算出される各相対湿度での水蒸気吸着量で割って算出した。
【0086】
<磁性トナーの製造>
下記配合割合で混合した混合物を140℃に設定された2本ロールミルで約15分間混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕した。さらにこれを分級により微粉、粗粉をカットし、体積平均径10.4μmの磁性トナーを得た。
【0087】
スチレン−n−ブチルアクリレート 100重量部
(共重合比=85:15、Mw=250000、Tg=62℃)
黒色磁性酸化鉄粒子粉末 80重量部
負荷電制御剤 1.5重量部
低分子量エチレン−プロピレン共重合体 2重量部
【0088】
得られた磁性トナーからなる一成分系現像剤を調整し、温度33℃、湿度80%(H/H環境下)に24時間静置した磁性トナーを用いて、下記の方法で帯電量の立ち上がりを評価することで、帯電性能を評価した。
【0089】
帯電量の立ち上がりは、「ブローオフ帯電量測定装置TB−200」(東芝ケミカル社製)を用い、キャリアはTFV−200/300(パウダーッテック社製)を用いて磁性トナーの濃度を5%とし、混合時間を30分として測定値が一定となるまでの時間を測定し、下記3段階で評価した。
○:10秒で一定となった。
△:20秒で一定となった。
×:30秒で一定となった。
【0090】
実施例1
Fe2+ 1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液16l(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液18.4l (Fe2+に対し1.15当量に該当する。)を混合し、第一鉄塩懸濁液の生成を行った。この際、ケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を12.8g(Feに対してSi換算で0.24原子%に該当する。)を0.5lのイオン交換水に希釈したものを水酸化ナトリウムに添加した。上記第一鉄塩懸濁液を温度90℃において毎分70lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が50%になるところまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液を得た(第一段反応)。
【0091】
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に16.1Nの硫酸を適量加えpH8に調整した。(中継条件)。
【0092】
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に3.0Nの水酸化ナトリウム溶液9.2lを加え(残存するFe2+ に対し1.15当量に該当する。)、この際、ケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を20.8g(Feに対してSi換算で0.39原子%に該当する。)を0.5lのイオン交換水に希釈したものを水酸化ナトリウムに添加した。温度90℃において毎分70lの空気を通気してマグネタイト粒子を生成させた(第二段反応)。
【0093】
次いで、上記マグネタイト粒子を含む懸濁液にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を10.1g、1.9mol/lの硫酸アルミニウム溶液10.9lを加えた。16.1Nの硫酸を適量加えpH7に調整し、耐熱層を形成した。
【0094】
生成粒子は、常法により、水洗、濾別、乾燥、粉砕した。得られたマグネタイト粒子は八面体であり、平均粒子径が0.18μm、比表面積が7.1m/g、Si含有量が0.58原子%、表面Si含有量0.15原子%、Al含有量0.86原子%、飽和磁化が87.9Am/kg、電気抵抗が5×10Ωcm、発熱開始温度が187℃であった。帯電量の立ち上がりは○であった。
【0095】
また、この黒色磁性酸化鉄粒子粉末は、温度25℃、相対湿度20%、80%における関係式V80/V20の値が1.77であって、相対湿度90%(V90)は0.54mg/mと吸湿性の低く、環境安定性に優れるものであった。
【0096】
実施例2〜11、比較例4〜6;
第一段反応における水酸化アルカリ水溶液の種類および量、第一段反応時の酸化反応率、第二段反応時のアルカリ水溶液の種類および量、SiおよびAlの種類および添加量、耐熱層を形成する際のSiおよびAlの種類および添加量を変化させた以外は前記実施例1と同様にしてマグネタイト粒子粉末を得た。
【0097】
比較例1
Fe2+ 1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液16l(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液16.8l(Fe2+に対し1.05当量に該当する。)を混合し、第一鉄塩懸濁液の生成を行った。この際、ケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を75.7g(Feに対してSi換算で1.42原子%に該当する。)を0.5lのイオン交換水に希釈したものを水酸化ナトリウムに添加した。上記第一鉄塩懸濁液を温度90℃において毎分70lの空気を通気して酸化反応を行い、マグネタイト粒子を生成した。
【0098】
次いで、上記マグネタイト粒子を含む懸濁液にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を1.2g、1.9mol/lの硫酸アルミニウム溶液1.1lを加えた。16.1Nの硫酸を適量加えpH7に調整し、耐熱層を形成した。
【0099】
生成粒子は、常法により、水洗、濾別、乾燥、粉砕してマグネタイト粒子粉末を得た。
【0100】
比較例2〜3;
水酸化アルカリ水溶液の量、Siの添加量、耐熱層を形成する際のSiおよびAlの種類および添加量を変化させた以外は前記比較例1と同様にしてマグネタイト粒子粉末を得た。
【0101】
比較例1〜3は、第一段反応及び第二段反応を区別することなく継続して行ったものである。
【0102】
比較例4
Fe2+ 1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液16l(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液14.4l(Fe2+に対し0.90当量に該当する。)を混合し、第一鉄塩懸濁液の生成を行った。上記第一鉄塩懸濁液を温度90℃において毎分70lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が40%になるところまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液を得た(第一段反応)。
【0103】
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に3.0Nの炭酸ナトリウム溶液3.21l加え(Fe2+24molに対し第一段反応の水酸化ナトリウム溶液と合わせて1.1当量に該当する。)、温度90℃において毎分70lの空気を通気してマグネタイト粒子を生成させた。
【0104】
次いで、上記マグネタイト粒子を含む懸濁液にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を10.1g、1.9mol/lの硫酸アルミニウム溶液10.9lを加えた。16.1Nの硫酸を適量加えpH7に調整し、耐熱層を形成した。
【0105】
比較例5
Fe2+ 1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液16l(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液15.2l(Fe2+に対し0.95当量に該当する。)を混合し、第一鉄塩懸濁液の生成を行った。上記第一鉄塩懸濁液のpHを8とし、温度90℃において毎分70lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が95%になるところまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液を得た(第一段反応)。
【0106】
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に3.0Nの水酸化ナトリウム溶液1.61l加え(Fe2+ 24molに対し第一段反応の水酸化ナトリウム溶液と合わせて1.05当量に該当する。)、温度90℃において毎分70lの空気を通気してマグネタイト粒子を生成させた。
【0107】
比較例6
Fe2+ 1.5mol/lを含む硫酸第一鉄水溶液16l(Fe2+ 24mol)と3.0Nの水酸化ナトリウム溶液15.2l(Fe2+に対し0.95当量に該当する。)を混合し、第一鉄塩懸濁液の生成を行った。上記第一鉄塩懸濁液を温度90℃において毎分70lの空気を通気して、第一鉄塩の酸化反応率が95%になるところまで酸化反応を行い、マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液を得た(第一段反応)。
【0108】
次いで、上記マグネタイト核晶粒子を含む第一鉄塩懸濁液に3.0Nの水酸化ナトリウム溶液1.61l加え(Fe2+ 24molに対し第一段反応の水酸化ナトリウム溶液と合わせて1.05当量に該当する。)、温度90℃において毎分70lの空気を通気してマグネタイト粒子を生成させた。
【0109】
次いで、上記マグネタイト粒子を含む懸濁液にケイ素成分として3号水ガラス(SiO 28.8wt%)を17.0g、1.9mol/lの硫酸アルミニウム溶液9.5lを加えた。16.1Nの硫酸を適量加えpH7に調整し、耐熱層を形成した。
【0110】
このときの製造条件を表1に、生成マグネタイト粒子粉末の諸特性を表2にそれぞれ示す。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る黒色磁性酸化鉄粒子は、環境安定性に優れていることから電子写真用磁性トナー用磁性粉として好適に用いることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度25℃、相対湿度80%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V80)と相対湿度20%において比表面積基準で算出される水分吸着量(V20)との関係が次式で表される黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
V80/V20 ≦ 2.0
【請求項2】
温度25℃、相対湿度90%における比表面積基準で算出される水分吸着量(V90)が0.70mg/m未満である請求項1記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項3】
炭素元素が0.05重量%以下である請求項1又は2記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項4】
黒色磁性酸化鉄粒子の電気抵抗が1×10Ωcm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項5】
外部磁場796kA/m(10kOe)における飽和磁化が85.0Am/kg以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項6】
黒色磁性酸化鉄粒子において、該黒色磁性酸化鉄粒子がSiまたはAl若しくはSi及びAlの被覆層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末。
【請求項7】
第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中の第一鉄塩に対し1.01〜1.5等量の水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩溶液を70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して鉄の酸化反応率が40〜60%まで酸化反応を行い、核晶マグネタイト粒子を生成させる第一段反応、該第一段反応終了後の核晶マグネタイト粒子と水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応液のpHを5〜9に一旦調整した後、pHを9.5以上に再調整し、70〜100℃の温度範囲に加熱しながら酸素含有ガスを通気して酸化反応を行う第二段反応からなる黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法において、第一段反応及び/又は第二段反応のときに水可溶性ケイ酸塩をFeに対しSi換算で1.5原子%以下添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の黒色磁性酸化鉄粒子粉末の製造方法。