説明

黒色腫用の多抗原ベクター

【課題】癌の予防および治療を目的として免疫応答を刺激するための有用な試薬および方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2個の免疫原性標的を共発現させるための発現ベクターであって、該免疫原性標的は、NY-ESO-1、TRP-2、gp100、gp100M、MART抗原MART-1、MAGE抗原MAGE-1およびMAGE-3より成る群から選択されることを特徴とする発現ベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の予防および/または治療に使用するための多抗原ベクターに関する。特に、本発明は、黒色腫(メラノーマ)の治療および/または予防に使用するための多抗原ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、腫瘍関連抗原(TAA類)を用いた癌ワクチンの開発件数が急増しているが、これは、高密度マイクロアレイ(high density microarray)、SEREX、免疫組織化学(IHC)、RT-PCR、イン・サイチュー( in situ )ハイブリダイゼーション(ISH)およびレーザー捕獲顕微鏡(laser capture microscopy)などのようないくつかの技術を利用することにより、初期の腫瘍および正常細胞の発現プロファイリングに基づく分子の確認法が長足の進歩を遂げたからである(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。TAA類は、腫瘍細胞によって発現もしくは過剰発現され、一種もしくは数種の腫瘍に特異的である。そのような例としては、例えば、CEA抗原は、結腸直腸癌、乳癌および肺癌で発現される。非特許文献2では、レーザー捕獲顕微解剖およびcDNAマイクロアレイを組み合わせて用いることにより、侵襲性および転移性の癌腫において特異的に発現される数種の遺伝子を確認したことを報告している。DNAまたはウイルスなどのようないくつかの輸送系は、ヒトの癌に対する治療用ワクチンに使用することができ(非特許文献5)、免疫応答を誘起することができ、さらに、TAA類に対する免疫寛容を打破することもできる。腫瘍細胞は、T細胞共刺激分子(例えば、B7.1、またはIFN-γ、IL2などのサイトカイン類、またはGM-CSFなど)をコードする導入遺伝子を挿入することにより、より免疫原性を高めることができる。TAAと、サイトカインもしくは共刺激分子とを共発現させることにより、有効な治療用ワクチンを得ることができる(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ローゼンバーグ(Rosenberg)、Immunity,1999
【非特許文献2】スグロイ(Sgroi)ら、1999
【非特許文献3】シェーナ(Schena)ら、1995
【非特許文献4】オフリンガ(Offringa)ら、2000
【非特許文献5】ボネット(Bonnet)ら、2000
【非特許文献6】ホッジ(Hodge)ら、1995
【非特許文献7】ブロンテ(Bronte)ら、1995
【非特許文献8】チャンバーライン(Chamberlain)ら、1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
癌の予防および治療を目的として免疫応答を刺激するための有用な試薬および方法が希求されている。本発明は、癌の治療を試みたこれまでの研究がぶつかってきた幾多の困難を克服するような試薬および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、患者に投与し、癌を予防および/もしくは治療するための多抗原ベクターを提供する。特に、多抗原ベクターは、1個またはそれ以上の腫瘍抗原(「TA」)をコードしている。多抗原ベクターは、共刺激分子などの免疫刺激因子をもコードしており、および/もしくはアジュバントと共に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プラスミドpALVAC.Tricom(#33)およびpT1132の図
【図2−1】プラスミドpALVAC.Tricom(#33)のDNA配列(配列番号1および2)
【図2−2】図2−1の続き
【図2−3】図2−2の続き
【図2−4】図2−3の続き
【図2−5】図2−4の続き
【図2−6】図2−5の続き
【図2−7】図2−6の続き
【図2−8】図2−7の続き
【図2−9】図2−8の続き
【図2−10】図2−9の続き
【図2−11】図2−10の続き
【図2−12】図2−11の続き
【図2−13】図2−12の続き
【図2−14】図2−13の続き
【図3−1】ドナープラスミドpT1132のDNA配列(配列番号3および4)
【図3−2】図3−1の続き
【図3−3】図3−2の続き
【図3−4】図3−3の続き
【図3−5】図3−4の続き
【図3−6】図3−5の続き
【図3−7】図3−6の続き
【図3−8】図3−7の続き
【図3−9】図3−8の続き
【図3−10】図3−9の続き
【図3−11】図3−10の続き
【図3−12】図3−11の続き
【図3−13】図3−12の続き
【図3−14】図3−13の続き
【図3−15】図3−14の続き
【図4】プラスミドpT3217の図
【図5−1】ドナープラスミドpT3217のDNA配列(配列番号5および6)
【図5−2】図5−1の続き
【図5−3】図5−2の続き
【図5−4】図5−3の続き
【図5−5】図5−4の続き
【図5−6】図5−5の続き
【図5−7】図5−6の続き
【図5−8】図5−7の続き
【図5−9】図5−8の続き
【図5−10】図5−9の続き
【図5−11】図5−10の続き
【図5−12】図5−11の続き
【図5−13】図5−12の続き
【図5−14】図5−13の続き
【図5−15】図5−14の続き
【図5−16】図5−15の続き
【図6−1】NY-ESO-1(配列番号7)のアミノ酸配列
【図6−2】TRP-2(配列番号8)のアミノ酸配列
【図6−3】gp100(配列番号9)およびgp100M(配列番号10)のアミノ酸配列(*は同一アミノ酸残基を示す)
【図6−4】MART-1(配列番号11)のアミノ酸配列
【図6−5】MAGE-1(配列番号12)のアミノ酸配列
【図6−6】MAGE-3(配列番号13)のアミノ酸配列
【図6−7】B7.1(配列番号14)のアミノ酸配列
【図6−8】LFA-3(配列番号15)のアミノ酸配列
【図6−9】ICAM-1(配列番号16)のアミノ酸配列(成熟配列は28番目の残基(q)から始まる)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、癌の治療および/または予防に有用な試薬および方法を提供する。本明細書中に引用している全ての参考文献を参照として取り入れておく。
【0008】
ひとつの実施態様においては、本発明は、1個またはそれ以上の腫瘍抗原(「TA」)に対する免疫応答を誘導または増強することにより、癌を予防および/または治療することに関する。特定の実施態様においては、例えば、1個またはそれ以上のTA類を組み合わせて使用することができる。好ましい実施態様においては、腫瘍抗原をコードする核酸ベクター、または、ペプチドもしくはポリペプチドなどの形態の腫瘍抗原自身を投与した後に、宿主細胞内においてTAが発現することによって免疫応答が得られる。
【0009】
本明細書において使用しているように、「抗原」とは、ポリペプチドなどの分子、またはそれらの一部であり、抗原を投与された宿主内で免疫応答を起こす。免疫応答には、抗原の少なくとも1個のエピトープに結合するような抗体の産生、および/または、抗原のエピトープを発現する細胞に対する細胞性免疫応答の発生が含まれる。応答とは、通常の免疫応答が増強されたものであり、例えば、抗体産生の増加、抗原に対する親和性が高められた抗体の産生、または、細胞性免疫応答の増強(すなわち、免疫反応性T細胞の数または活性が増している)などによって増強される。免疫応答を起こす抗原は、免疫原性である、または免疫原と称される場合がある。本発明においては、「免疫原性標的」として好ましいのはTAである。本発明は、宿主の1個またはそれ以上の免疫原性標的内で発現するための発現ベクターを提供する。
【0010】
TAという語は、腫瘍関連抗原(TAA類)および腫瘍特異的抗原(TSA類)の両者を包含しており、癌様細胞は抗原の供給源である。TAAは、正常細胞上よりも腫瘍細胞表面で多量に発現される抗原であり、あるいは、胎児の発達中に正常細胞上で発現される抗原である。さらに、TAは、TAA類またはTSA類、それらの抗原性フラグメント、およびそれらの抗原性を保持している修飾体を包含する。
【0011】
一般的に、TA類は、発現パターン、機能または遺伝的起源に基づいて5つに分類される:精巣癌(CT)抗原(すなわち、MAGE、NY-ESO-1);メラノサイト分化抗原(すなわち、Melan A/MART-1、チロシナーゼ、gp100);突然変異抗原(すなわち、MUM-1、p53、CDK-4)、過剰発現した「自己」抗体(すなわち、HER-2/neu、p53);ならびに、ウイルス性抗原(すなわち、HPV、EBV)。本発明の実施にあたって適切なTAは、TAを投与された宿主内において抗腫瘍免疫応答を誘導する、または増強するような任意のTAである。適切なTA類としては次のようなものが挙げられる:gp100類(コックス(Cox)ら、Science,264:716-719(1994);米国特許第6,500,919 B1および国際公開第 01/30847号、162番がValであるものを「gp100M」と称する;米国特許第6,537,560 B1は、162番がPheである);MART-1/Melan A(カワカミ(Kawakami)ら、J.Exp.Med.,180:347-352(1994);米国特許第5,874,560号);gp75(TRP-1)(ワン(Wang)ら、J.Exp.Med.,186:1131-1140(1996));TRP-2(ワン(Wang)ら、J.Exp.Med.,184:2207(1996);米国特許第5,831,016号および第6,083,783号);チロシナーゼ(ウォルフェル(Wolfel)ら、Eur.J.Immunol.,24:759-764(1994);国際公開第200175117号;国際公開第200175016号;国際公開第200175007号);NY-ESO-1(国際公開第 98/14464号;国際公開第99/18206号;GenBankアクセッション番号P78358号;米国特許第5,804,381号);黒色腫プロテオグリカン(ヘルストーム(Hellstorm)ら、J.Immunol.,130:1467-1472(1983));MAGEファミリー抗原(すなわち、MAGE-1、2、3、4、6、12、51)(ヴァン・デル・ブルッゲン(Van der Bruggen)ら、Science,254:1643-1647(1991);米国特許第6,235,525号;CN 1319611号);BAGEファミリー抗原(ベール(Boel)ら、Immunity,2:167-175(1995));GAGEファミリー抗原(すなわち、GAGE-1、2)(ヴァン・デン・エインデ(Van den Eynde)ら、J.Exp.Med.,182:689-698(1995);米国特許第6,013,765号);RAGEファミリー抗原(すなわち、RAGE-1)(ゴーグラー(Gaugler)ら、Immunogenetics,44:323-330(1996);米国特許第5,939,526号);N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V(ギロー(Guilloux)ら、J.Exp.Med.,183:1173-1183(1996);p15(ロビンス(Robbins)ら、J.Immunol.,154:5944-5950(1995));β−カテニン(ロビンス(Robbins)ら、J.Exp.Med.,183:1185-1192(1996));MUM-1(クーリー(Coulie)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:7976-7980(1995));サイクリン依存性キナーゼ−4(CDK4)(ウォルフェル(Wolfel)ら、Science、269:1281-1284(1995));p21-ras(フォッサム(Fossum)ら、Int.J.Cancer,56:40-45(1994));BCR-abl(ボッキア(Bocchia)ら、Blood,85:2680-2684(1995))、p53(テオバルド(Theobald)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:11993-11997(1995));p185 HER2/neu(erb-B1)(フィスク(Fisk)ら、J.Exp.Med.,181:2109-2117(1995);上皮増殖因子受容体(EGFR)(ハリス(Harris)ら、Breast Cancer Res.Treat,29:1-2(1994));癌胎児性抗原(CEA)(クウォン(Kwong)ら、J.Natl.Cancer Inst.,85:982-990(1995);米国特許第5,756,103号、第5,274,087号、第5,571,710号、第6,071,716号、第5,698,530号、第6,045,802号;EP 263933号;EP 346710号;EP 784483号);腫瘍関連突然変異ムチン(すなわち、MUC-1遺伝子産物)(ジェローム(Jerome)ら、J.Immunol.,151:1654-1662(1993));EBVのEBNA遺伝子産物(すなわち、EBNA-1)(リッキンソン(Rickinson)ら、Cancer Surveys,13:53-80(1992));ヒトパピローマウイルスのE7、E6タンパク質(レッシング(Ressing)ら、J.Immunol.,154:5934-5943(1995));前立腺特異的抗原(PSA)(シュー(Xue)ら、The Prostate,30:73-78(1997));前立腺特異的膜抗原(PSMA)(イスラエリ(Israeli)ら、Cancer Res.,54:1807-1811(1994));イディオタイプエピトープまたは抗原、例えば、免疫グロブリンイディオタイプまたはT細胞受容体イディオタイプ(チェン(Chen)ら、J.Immunol.,153:4775-4787(1994));KSA(米国特許第5,348,887号);キネシン2(デッツ(Dietz)ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2000,Sep.7;275(3):731-738);HIP-55、TGFβ−1抗アポトーシス因子(トゥーメイ(Toomey)ら、Br.J.Biomed.Sci.,2001;58(3):177-183);腫瘍タンパク質D52(ブリン(Bryne),J.A.ら、Genomics,35:523-532(1996));H1FT;NY-BR-1(国際公開第01/47959号);NY-BR62、NY-BR-75、NY-BR-85、NY-BR-87、NY-BR-96(スキャンラン(Scanlan),M.「ヒト腫瘍抗原の確認に関する血清学的および生物情報学的手法(Serologic and Bioinformatic Approaches to the Identification of Human Tumor Antigens)」、癌ワクチン2000(Cancer Vaccines 2000)より、癌研究所(Cancer Resaerch Institute)(ニューヨーク州ニューヨーク))、「野生型」(すなわち、ゲノムによって正常にコードされているもの、天然に存在するもの)、修飾されているもの、および突然変異型、さらに、それらの他のフラグメントおよび誘導体を含む。これらのTA類のうちの任意のものを単独で、または共免疫プロトコール中で互いに組み合わせて使用することができる。
【0012】
好ましいTA類は、黒色腫細胞に対する免疫応答の誘導に有用である。「黒色腫(メラノーマ)」という語は、黒色腫類、転移性黒色腫類、メラノサイトもしくはメラノサイト関連母斑細胞由来の黒色腫類、黒色癌、黒色上皮腫、黒色肉腫、イン・サイチュー( in situ )黒色腫、表在性拡大黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子黒色腫、先端黒子症黒色腫(acral lentiginous melanoma)、侵襲性黒色腫、および家族性非定型母斑および黒色腫(FAM-M)症候群などを含むが、これらに限定されるわけではない。一般的には、黒色腫は、染色体の異常、退行性の成長および発達障害(degenerative growth and development disorders)、細胞分裂促進剤、紫外線(UV)照射、ウイルス感染、遺伝子の組織発現が不適切、遺伝子発現の変化、または発癌性物質などの影響によって生じる。
【0013】
特定の場合においては、TAおよび他の抗原(例えば、血管形成関連抗原(angiogenesis-associated antigens、「AA」)など)を用いて患者を共免疫することが有効である。AAは、血管の誘導および/または連続的発達に関与する細胞に関連のある免疫原性分子(すなわち、ペプチド、ポリペプチド)である。例えば、AAは、血管の基本的構造要素である内皮細胞(「EC」)上で発現される。癌が癌である部位においては、AAは、腫瘍を供給している血管の内部または近傍で検出されることが好ましい。患者にAAに対する免疫化を行うことにより、抗AA免疫応答がもたらされ、それによって、腫瘍近傍または内部で起こっている血管形成過程が阻止される、および/または、阻害される。AA類の例としては、例えば、次のようなものが挙げられる:血管内皮増殖因子(すなわち、VEGF;ベルナルディーニ(Bernardini)ら、J.Urol.,2001,166(4):1275-1279;スターネス(Starnes)ら、J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122(3):518-523;ディアス(Dias)ら、Blood,2002,99:2179-2184)、VEGF受容体(すなわち、VEGF-R、flk-1/KDR;スターネス(Starnes)ら、J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,2001,122(3):518-523)、EPH受容体(すなわち、EPHA2;ゲレティ(Gerety)ら、1999,Cell,4:403-414);上皮増殖因子受容体(すなわち、EGFR;シアルデイロ(Ciardeillo)ら、Clin.Cancer Res.,2001,7(10):2958-2970)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(すなわち、bFGF;ダヴィッドソン(Davidson)ら、Clin.Exp.Metastasis 2000,18(6):501-507;プーン(Poon)ら、Am.J.Surg.,2001,182(3):298-304)、血小板由来細胞増殖因子(すなわち、PDGF-B)、血小板由来内皮細胞増殖因子(すなわち、PD-ECGF;ホン(Hong)ら、J.Mol.Med.,2001,8(2):141-148)、トランスフォーミング増殖因子(すなわち、TGF-α;ホン(Hong)ら、J.Mol.Med.,2001,8(2):141-148)、エンドグリン(バルザ(Balza)ら、Int.J.Cancer,2001,94:579-585)、Idタンパク質(ベネズラ(Benezra)ら、R.Trends Cardiovasc.Med.,2001,11(6):237-241)、uPA、uPARおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ類(MMP-2、MMP-9)などのプロテアーゼ類(ジョノフ(Djonov)ら、J.Pathol.,2001,195(2):147-155)、NOシンターゼ(Am.J.Ophthalmol.,2001,132(4):551-556)、アミノペプチダーゼ(ロスハティ(Rouslhati)ら、E.Nature Cancer,2:84-90,2002)、トロンボスポンジン類(すなわち、TSP-1、TSP-2;アルヴァレツ(Alvarez)ら、Gynecol.Oncol.,2001,82(2):273-278;セキ(Seki)ら、Int.J.Oncol,2001,19(2):305-310)、k-ras(ツァン(Zhang)ら、Cancer Res.,2001,61(16):6050-6054)、Wnt(ツァン(Zhang)ら、Cancer Res.,2001,61(16):6050-6054)、サイクリン依存性キナーゼ類(CDK類;Drug Resist.Updat.,2000,3(2):83-88)、微小管類(タイマー(Timar)ら、2001,Path.Oncol.Res.,7(2):85-94)、熱ショックタンパク質(すなわち、HSP90;タイマー(Timar)ら、同上)、ヘパリン結合因子(すなわち、ヘパリナーゼ;ゴージ(Gohji)ら、Int.J.Cancer,2001,95(5):295-301)、シンターゼ類(すなわち、ATPシンターゼ、チミジレートシンターゼ)、コラーゲン受容体インテグリン類(すなわち、αυβ3、αυβ5、α1β1、α2β1、α5β1)、表面プロテオグリカンNG2、AAC2-1またはAAC2-2など、「野生型」(すなわち、ゲノムによって正常にコードされている、天然に存在するもの)、ならびに、それらの修飾体、突然変異体、ならびにその他のフラグメントおよび誘導体類。これらの標的のうちの任意のものは、単独で、または互いに、もしくはその他の物質と組み合わせることにより、本発明の実施に利用することができる。
【0014】
核酸分子は、1個もしくはそれ以上の免疫原性標的、または、それらのフラグメントもしくは誘導体類(例えば、ATCCデポジットのDNA挿入体中に含まれているものなど)をコードするヌクレオチド配列を含む、あるいはそのようなヌクレオチド配列から構成されている。「核酸配列」または「核酸分子」という語は、DNAまたはRNA配列をさす。それらの語は、DNAまたはRNAについて既知の塩基性アナログ類のうちの任意のものから形成されている分子を包含し、そのようなアナログ類としては、例えば、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5'−メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、および2,6−ジアミノプリンなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
単離された核酸分子とは、次のいずれかひとつを満たすものである:(1)起源となる細胞から総ての核酸を単離した際に、天然に見出されるタンパク質、脂質、炭水化物またはその他の物質のうちの少なくとも約50%が除去されている;(2)天然の状態で核酸分子が結合しているポリヌクレオチドに全く結合していないか、または一部にしか結合していない;(3)天然では結合していないポリヌクレオチドに機能発揮できるように結合している;(4)天然では、より大きなポリヌクレオチド配列の一部として存在していることはない。好ましくは、本発明に従う単離された核酸は、他の任意の核酸分子、あるいは、天然に見出され、ポリペプチド産生における使用、または、治療、診断、予防もしくは研究のための使用を干渉するようなその他の混在物を実質的に含まない。本明細書において使用しているように、「天然に存在する」または「生来の」または「天然に見出される」という語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などのような生物学的材料に関して使用する場合には、自然界に見出され、人為的に操作されていない材料をさす。
【0016】
2個もしくはそれ以上の核酸またはアミノ酸配列の同一性は、配列を比較することによって確認する。当該分野において既知であるように、「同一性」とは、核酸またはアミノ酸の配列間の配列相関の程度を意味し、分子を構成している単位(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基)間のマッチ(match)によって判断する。同一性は、ギャップ配列(もし存在しているならば)を含む2個またはそれ以上の小さな配列間の同一マッチ(identical match)の割合として求めるが、これは、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、アルゴリズム)によって割り振られたものである。核酸配列間の同一性は、核酸配列が相互にハイブリダイズする能力からも求めることができる。ハイブリダイゼーションの過程を定義するにあたっては、「高ストリンジェント条件」および「緩和ストリンジェント条件(moderately stringent condition)」とは、核酸配列が相補的であるような核酸鎖がハイブリダイゼーションすることができる条件をさし、明らかに一致していない核酸のハイブリダイゼーションは排除されることを意味する。ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高ストリンジェント条件」の例としては、65〜68℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムを用いる、または、42℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムおよび50%のホルムアミドを用いる、などが挙げられる(例えば、サンブルック(Sambrook)、フリッシュ(Fritsh)およびマニアティス(Maniatis)著、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年);アンダーソン(Anderson)ら、「核酸ハイブリダイゼーション:実際法(Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach)」第4章(IRLプレス(IRL Press)社)などを参照)。「緩和ストリンジェント条件」とは、「高ストリンジェント条件」下で形成されるDNA二本鎖よりも塩基対の不一致の度合いが高い二本鎖を形成する条件をさす。緩和ストリンジェント条件の例としては、50〜65℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムを用いる、または、37〜50℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムおよび20%のホルムアミドを用いる、などが挙げられる。例えば、50℃、0.015Mのナトリウムイオンを用いる緩和ストリンジェント条件では、不一致は約21%まで許容される。ハイブリダイゼーション過程においては、非特異的および/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを低下させることを目的として、ハイブリダイゼーション用および洗浄用緩衝液にその他の物質を加えることができる。そのような物質の例としては、0.1%のウシ血清アルブミン、0.1%のポリビニルピロリドン、0.1%のピロリン酸ナトリウム、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO4(SDS)、フィコール、デンハルト溶液、超音波破砕サケ精子DNA(またはその他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランなどが挙げられるが、その他の適切な物質も用いることができる。これらの添加剤の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を及ぼすことなく変更することができる。通常、ハイブリダイゼーション実験は、pH6.8〜7.4で行うが、典型的なイオン強度条件、ハイブリダイゼーション速度は、pHとはほぼ無関係である。
【0017】
本発明の好ましい実施態様においては、ベクターを用い、免疫原性標的をコードする核酸配列を細胞に転移する。ベクターとは、核酸配列を宿主細胞に転移するために使用する任意の分子である。特定の場合においては、発現ベクターを使用する。発現ベクターとは、宿主細胞の形質転換に適した核酸分子であり、転移された核酸配列の発現を指示および/または制御する核酸配列を含む。発現には、転写、翻訳、およびもしイントロンが存在するならばスプライシングなどの過程が含まれるが、これらに限定されるわけではない。一般的には、発現ベクターは、1個またはそれ以上のフランキング配列を含み、ここで、該配列は、ポリペプチドをコードする異種核酸配列に対して、機能発揮できるように連結されている。フランキング配列は、同種配列(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または系統に由来)、異種配列(すなわち、宿主細胞の種もしくは系統とは別の種に由来)、ハイブリッド配列(すなわち、1つ以上の起源を有するフランキング配列の組み合わせ)、合成配列などを用いることができる。
【0018】
フランキング配列は、コード配列の複製、転写および/または翻訳に影響を及ぼせることがましく、機能発揮できるようにコード配列に連結されている。本明細書において使用している機能発揮できるように連結されている、とは、機能的関連性を持たせたポリヌクレオチド分子の連結をさす。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えている場合には、それらは機能発揮できるようにコード配列に連結されている。しかしながら、フランキング配列は、正しく機能している限りは、コード配列に隣接している必要はない。従って、例えば、未翻訳の転写された配列が、プロモーター配列とコード配列の間に存在する場合があり、そのような場合にも、プロモーター配列は、機能発揮できるようにコード配列に連結されていると考えることができる。同様に、エンハンサー配列は、コード配列の上流または下流に存在し、配列の転写に影響を与えることができる。
【0019】
特定の実施態様においては、フランキング配列は、標的細胞内で高レベルの遺伝子発現を行わせる転写制御配列であることが好ましい。転写制御配列には、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、レプレッサーエレメントまたはそれらの組み合わせなどが含まれる。転写制御配列は、構成性、組織特異的、細胞型特異的(すなわち、別の組織または細胞と比較したときに、ひとつの型の組織または細胞内で高レベルの転写を起こさせるような領域)、または制御可能(すなわち、テトラサイクリンなどの化合物との相互作用に反応する)である。転写制御領域の起源としては、任意の原核もしくは真核微生物、任意の脊椎もしくは非脊椎生物体、または、任意の植物を用いることができ、細胞内で核酸の転写が起こることにより、該細胞内のフランキング配列の機能が発揮される。本発明の実施にあたっては、多様な転写制御領域を用いることができる。
【0020】
適切な転写制御領域としては、CMVプロモーター(すなわち、CMV-隣接初期プロモーター);真核生物遺伝子由来のプロモーター(すなわち、エストロゲン誘導性のニワトリ卵白アルブミン遺伝子、インターフェロン遺伝子、糖質コルチコイド誘導性チロシンアミノトランスフェラーゼ遺伝子およびチミジンキナーゼ遺伝子);主要な初期および後期のアデノウイルスプロモーター;SV40初期プロモーター領域(バーノイスト(Bernoist)およびシャンボン(Chambon)、1981,Nature 290:304-310);ルイス肉腫ウイルス(RSV)の3'長末端反復に含まれるプロモーター(ヤマモト(Tamamoto)ら、1980,Cell 22:787-797);単純へルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)プロモーター(ワグナー(Wagner)ら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,78:1444-1445);メタロチオネイン遺伝子の制御配列(ブリンスター(Brinster)ら、1982,Nature 296:39-42);β−ラクタマーゼプロモーターなどの原核生物由来の発現ベクター(ヴィラ−カマロフ(Villa-Kamaroff)ら、1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,75:3727-3731);またはtacプロモーター(デボーア(DeBoer)ら、1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80:21-25)などが挙げられる。組織および/または細胞型特異的転写制御領域としては、例えば、膵臓の腺房細胞内で活性化されるエラスターゼI遺伝子制御領域(スイフト(Swift)ら、1984,Cell,38:639-646;オーニッツ(Ornitz)ら、1986, Cold Spring Harbor Symp.Quant. Biol.,50:399-409(1986);マクドナルド(McDonald)ら、1987,Hepatology 7:425-515);膵臓β細胞内で活性化されるインシュリン遺伝子制御領域(ハナハン(Hanahan)ら、1985,Nature 315:115-22);リンパ系細胞内で活性化される免疫グロブリン遺伝子制御領域(グロスチェドル(Grosschedl)ら、1984,Cell,38:647-658;アダムス(Adames)ら、1985,Nature 318:533-538;アレキサンダー(Alexander)ら、1987,Mol.Cell.Biol.,7:1436-1444);精巣、乳房、リンパ系およびマスト細胞内のマウス乳腺腫瘍ウイルス制御領域(レダー(Leder)ら、1986,Cell,45:485-495);肝臓内のアルブミン遺伝子制御領域(ピンカート(Pinkert)ら、1987,Genes and Devel.,1:268-276);肝臓内のα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(クラムローフ(Krumlauf)ら、1985,Mol.Cell.Biol.,5:1639-1648;ハマー(Hammer)ら、1987,Science,235:53-58);肝臓内のα−1−抗トリプシン遺伝子制御領域(ケルセイ(Kelsey)ら、1987,Genes and Devel.,1:161-171);骨髄細胞内のβ−グロブリン遺伝子制御領域(モグラム(Mogram)ら、1985,Nature,315:338-340;コリアス(Kollias)ら、1986,Cell,46:89-94);脳内の稀突起神経膠細胞内のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(リードヘッド(Readhead)ら、1987,Cell,48:703-712);骨格筋内のミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(サニ(Sani)ら、1875,Nature,314:283-286);視床下部内のゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(マソン(Mason)ら、1986,Science,234:1372-1378);および黒色腫細胞内のチロシナーゼプロモーター(ハート(Hart),I., Semin.Oncol.,1996 Feb;23(1)154-158;シダーズ(Siders)ら、Cancer Gene Ther.,1998,Sep.-Oct.;5(5): 281-291)などが挙げられる。光、熱、放射線、テトラサイクリン、もしくは熱ショックタンパク質などのような特定の化合物または条件の存在下において活性化される誘導性プロモーターも用いることができる(例えば、国際公開第00/10612号などを参照)。その他の適切なプロモーターも当該分野において既知である。
【0021】
上述したように、エンハンサーはフランキング配列としても適している。エンハンサーは、DNAのシス作用要素であり、通常、長さは約10〜300bpであり、プロモーターに作用して転写を増加させる。一般的に、エンハンサーは、方向および位置とは無関係であり、被制御コード配列の5'および3'末端で確認されている。哺乳類遺伝子から得られるいくつかのエンハンサー配列が知られている(すなわち、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)。同様に、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーは、真核細胞性プロモーター配列に有用である。エンハンサーは、ベクターに挿入する際に、核酸コード配列の5'位側または3'位側のいずれにも挿入することができるが、一般的には、プロモーターの5'側に挿入する。その他の適切なエンハンサーも当該分野において既知であり、本発明に用いることができる。
【0022】
本発明に使用する試薬の調製に際しては、細胞をトランスフェクトする、または形質転換する必要がある。トランスフェクションとは、細胞によって異質または外来性のDNAが取り込まれることをさし、外来性DNAが細胞膜内に導入された場合に、細胞はトランスフェクトされる。多数のトランスフェクション技術が当該分野において既知である(すなわち、グラハム(Graham)ら、1973,Virology,52:456;サンブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリーズ(Cold Spring Harbor Laboratories)、1989年);デイヴィス(Davis)ら、「分子生物学の基本法(Basic Methods in Molecular Biology)」(エルセヴィール(Elsevier)社、1986年);チュウ(Chu)ら、1981,Gene,13:197)。そのような技術を用い、適切な宿主細胞内に1個またはそれ以上の外来性DNA部位を導入することができる。
【0023】
特定の実施態様においては、細胞のトランスフェクションの結果、該細胞が形質転換されることが好ましい。細胞の特性に変化が生じる場合に、細胞が形質転換されると表現し、改変されて新規な核酸を含んでいる状態を形質転換されていると表現する。トランスフェクション後、トランスフェクトされた核酸は、該細胞の染色体内に物理的に組み込まれることによって該細胞の核酸と組換えを起こし、または、複製されることなく、エピソームエレメント(episomal element)として一時的に保持され、あるいは、プラスミドとして独立して複製される。細胞分裂に伴って核酸が複製される場合に、細胞が安定して形質転換されていると表現する。
【0024】
本発明に従う発現ベクターは、免疫原性標的のフラグメントをも発現させる。フラグメントには、アミノ末端(リーダー配列あり、またはなし)および/またはカルボキシ末端で切断された配列を含む。フラグメントには、変異体(すなわち、対立遺伝子、スプライスされた遺伝子)、オーソロガス遺伝子、相同遺伝子、ならびに、元の配列と比較した場合に1個もしくはそれ以上のアミノ酸の付加、置換または内部欠失が生じているその他の変異体も含まれる。好ましい実施態様においては、アミノ酸の切断および/または欠失の数は、約1〜5個、5〜10個、10〜20個、20〜30個、30〜40個、40〜50個、またはそれ以上である。そのようなポリペプチドフラグメントは、アミノ末端メチオニン残基を追有することがある。そのようなフラグメントは、例えば、免疫原性標的に対する抗体、または細胞性免疫応答の作出などに利用することができる。
【0025】
変異体は、元の配列と比較した場合に、1個もしくはそれ以上の配列の置換、欠失および/または付加を有する配列である。変異体は、天然に存在するものもあれば、人為的に構築されたものもある。そのような変異体は、対応する核酸分子から調製することができる。好ましい実施態様においては、変異体は、1〜3個、1〜5個、1〜10個、1〜15個、1〜20個、1〜25個、1〜30個、1〜40個、1〜50個、もしくは50個以上のアミノ酸の置換、挿入、付加、および/または欠失を有する。
【0026】
対立遺伝子変異体とは、微生物または微生物集団の染色体上の与えられた位置を占めている配列の中で、天然に生じ得る数種の別型の中のひとつである。スプライス変異体とは、一次転写のスプライシングによって得られた数種のRNA転写体のうちのひとつから生成されたポリペプチドである。オーソロガス遺伝子とは、他の種と類似の核酸またはポリペプチド配列である。例えば、免疫原性標的のマウス型およびヒト型は、互いにオーソロガス遺伝子であると考えられる。配列の誘導体とは、元の配列から派生したもののうちのひとつであり、置換、付加、欠失、もしくは化学的に修飾された変異体を有する。変異体には融合タンパク質も含まれ、ここで、融合タンパク質とは、少なくとも1個の他の配列(異種ペプチドなど)のアミノもしくはカルボキシ末端において、出発材料となる1個もしくはそれ以上の配列(ペプチドなど)が融合したものをさす。
【0027】
「類似性」とは、同一性に関する概念であり、同一マッチ(identical matches)および保存性置換マッチ(conservative substitution matches)を含む相関性の測定を意味する類似性を除く。例えば、2個のポリペプチド配列が、10/20の同一アミノ酸を有し、残りは全て非保存性置換であるならば、同一性および類似性はいずれも50%である。同じ例において、保存性置換がさらに5ヶ所以上ある場合には、同一性は50%であるが、類似性は75%(15/20)である。故に、保存性置換が存在する場合には、2個のポリペプチド間の類似性は、2個のポリペプチド間の同一性よりも高くなる。
【0028】
置換は、保存性、非保存性、またはそれらの任意の組み合わせのいずれでもよい。ポリペプチドの配列に対する保存性アミノ酸修飾(およびそれらをコードするヌクレオチドへの対応する修飾)により、元のポリペプチドが有する機能的および化学的特性に類似したそれらを有するポリペプチドが産生される。例えば、「保存性アミノ酸置換」は、ある位置に存在する天然のアミノ酸残基の大きさ、極性、電荷、疎水性もしくは親水性、に対してほとんど、または全く影響を及ぼさず、特に、免疫原性を低下させないような非天然の残基で、該残基を置換することを含む。適切な保存性アミノ酸置換を表Iに示す。
【表1】

【0029】
当業者であれば、既知の技術を用いて免疫原性標的の適切な変異体を確認することができる。生物学的活性(すなわち、MHC結合、免疫原性)を破壊することなく、変更することができる分子内の適切な領域を判断するためには、当業者であれば、そのような活性に対して重要ではないと考えられている領域を標的にする。例えば、同種または他の種由来であって、類似活性を有する免疫原性標的が既知である場合には、当業者であれば、あるポリペプチドのアミノ酸配列をそのような類似ポリペプチドと比較する。そのような分析を行うことにより、分子内の保存されている残基および領域を確認することができる。そのような類似免疫原性標的と比較して保存されていない領域における変化は、ポリペプチドの生物学的活性および/または構造に不利な影響を及ぼしてはいないと考えられる。同様に、MHC結合に必要な残基は既知であり、修飾することによって結合性を向上させることができる。しかしながら、多くの場合、MHCへの結合が低下するような修飾は適切ではない。当業者であれば、比較的保存されている領域内においても、活性を保持しながら、天然に存在する残基を化学的に類似しているアミノ酸で置換することができる。故に、生物学的活性または構造に対して重要な領域であっても、免疫原性標的の生物学的活性を破壊することなく、または、構造に悪影響を及ぼすことなく、保存性アミノ酸置換を行うことができる。
【0030】
その他の好ましいポリペプチド変異体としては、グリコシル化変異体が挙げられ、これは、元のアミノ酸配列と比較して、グリコシル化部位の数および/または型が変化している。ひとつの実施態様においては、ポリペプチド変異体は、元のアミノ酸配列よりも多数の、または少数のN−結合グリコシル化部位を有する。N−結合グリコシル化部位は、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrという配列を有するという特徴があり、ここで、Xで表されている残基は、プロリン以外の任意のアミノ酸である。この配列を作出することを目的としてアミノ酸残基を置換することにより、N−結合炭化水素鎖が付加するための新規な部位が提供される。別の方法としては、この配列を排除するような置換を行うことにより、既存のN−結合炭化水素鎖を除去する。さらに、1個またはそれ以上のN−結合グリコシル化部位(一般的には、天然に存在する部位)を排除し、かつ、1個またはそれ以上の新規のN−結合部位を作出することにより、N−結合炭化水素鎖を再配列することができる。ペプチドのO−結合グリコシル化に影響を与えるためには、セリンおよび/またはスレオニン残基を修飾する。
【0031】
さらなる好ましい変異体としては、システイン変異体が挙げられるが、これは、元のアミノ酸配列セットと比較して、1個またはそれ以上のシステイン残基が欠失または他のアミノ酸(例えば、セリンなど)と置換されている。システイン変異体は、ペプチドまたはポリペプチドが不溶性封入体として単離された後などに、生物学的に活性なコンホメーションに再生される際に有用である。通常、システイン変異体は、天然のタンパク質よりもシステイン残基が少なく、一般的には、偶数個の残基を有しており、対を成していないシステインに由来する相互作用を最小限抑えている。
【0032】
別の実施態様においては、ペプチドまたはポリペプチドは、ポリペプチドの精製を補助する、1個またはそれ以上の融合セグメントに接着している。融合体は、ポリペプチド変異体のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれにおいても作出できる。融合体は、リンカーもしくはアダプター分子なしで直接接着することができ、または、リンカーもしくはアダプター分子を介して接着することができる。リンカーもしくはアダプター分子は、1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基であり、一般的には、約20〜約50個のアミノ酸残基からなっている。リンカーもしくはアダプター分子は、DNA制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼ用の解裂部位を有するように設計することもでき、それによって融合部位の分離が可能になる。一旦融合ポリペプチドを構築し、その後、本明細書に記載されている方法に従って誘導体化することもできる。適切な融合セグメントとしては、金属結合ドメイン(例えば、ポリヒスチジンセグメントなど)、免疫グロブリン結合ドメイン(すなわち、プロテインA、プロテインG、T細胞、B細胞、Fc受容体、または補体タンパク質抗体結合ドメイン)、糖結合ドメイン(例えば、マルトース結合ドメインなど)、および/または、「tag」ドメイン(すなわち、α−ガラクトシダーゼの少なくとも一部、連鎖球菌tagペプチド、T7 tagペプチド、FLAGペプチド、または、モノクローナル抗体などのように、ドメインに結合する化合物を用いて精製することができるその他のドメイン)などが挙げられる。一般的には、このtagは、ペプチドまたはポリペプチドに融合されており、発現に際して、宿主細胞から、目的のポリペプチドの配列をアフィニティー精製するための手段として使用することができる。アフィニティー精製は、例えば、アフィニティーマトリックスとしてtagに対する抗体を用いたカラムクロマトグラフィーによって行うことができる。所望するならば、解裂用のある種のペプチダーゼを使用するなどの多様な手段により、目的のポリペプチドの精製された配列からtagを除去することができる。以下に記載しているように、融合体は、TAと共刺激成分(co-stimulatory component)(例えば、CXC10(IP-10)、CCL7(MCP-3)またはCCL5(RANTES)などのようなケモカイン類など)との間でも作成可能である。
【0033】
融合モチーフは、小胞体などのようなMHCプロセシング区画への免疫原性標的の輸送を増加させる。形質導入配列またはトランスサイトーシス配列と称されるこれらの配列の例としては、HIV tat由来の配列(キム(Kim)ら、1997,J.Immunol.,159:1666を参照)、ショウジョウバエのアンテナペディア遺伝子由来の配列(シュッツェ(Schutze)−レデルマイアー(Redelmeier)ら、1996,J.Immunol.,157:650参照)、またはヒトのピリオド−1タンパク質(hPER1;特にSRRHHCRSKAKRSRHH)(配列番号17)などが挙げられる。
【0034】
さらに、ポリペプチドまたはそれらの変異体は、同種のペプチドもしくはポリペプチドに融合させてホモダイマーを、または、異種のペプチドもしくはポリペプチドに融合させてヘテロダイマーを形成することができる。異種のペプチドおよびポリペプチドとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:融合ポリペプチドの検出および/もしくは単離のためのエピトープ;膜貫通受容体タンパク質もしくはそれらの一部(細胞外ドメイン、または膜貫通および細胞内ドメインなど);膜貫通受容体タンパク質に結合するリガンドもしくはそれらの一部;触媒活性を有する酵素もしくはそれらの一部;オリゴマー化を促進するポリペプチドもしくはペプチド(ロイシンジッパードメインなど);安定性を向上させるポリペプチドもしくはペプチド(免疫グロブリン定常領域など);ペプチドもしくはポリペプチドとは別異の治療活性を有するペプチドもしくはポリペプチド;ならびに/または、それらの変異体。
【0035】
特定の実施態様においては、本発明に従う組成物中では、免疫原性標的をコードする核酸配列と、1個もしくはそれ以上の共刺激成分(細胞表面タンパク質、サイトカイン類またはケモカイン類など)とを組み合わせることが好ましい。共刺激成分は、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸などとして組成物中に組み込むことができる。適切な共刺激分子としては、例えば、次のようなものが挙げられる:CD28ファミリー(すなわち、CD28、ICOS;ハトロフ(Hutloff)ら、Nature,1999,397:263-265;ピーチ(Peach)ら、J.Exp.Med.,1994,180:2049-2058)に結合するポリペプチド、例えば、CD28結合ポリペプチドB7.1(CD80;シュワルツ(Schwartz)、1992;チェン(Chen)ら、1992;エリス(Ellis)ら、J.Immunol.,156(8):2700-2709)、B7.2(CD86;エリス(Ellis)ら、J.Immunol.,156(8): 2700-2709)、およびそれらの突然変異体/変異体(国際公開第00/66162号);インテグリンファミリー(すなわち、LFA-1(CD11a/CD18);セドウィック(Sedwick)ら、J.Immunol.,1999, 162:1367-1375;ヴルフィング(Wuelfing)ら、Science,1998,282: 2266-2269;ラブ(Lub)ら、Immunol.Today,1995,16:479-483)に結合するポリペプチド、ICAMファミリー(すなわち、ICAM-1、-2または-3)を含む;CD2ファミリー(すなわち、CD2、シグナリングリンパ球活性化分子(CDw150または「SLAM」;アヴァーサ(Aversa)ら、J.Immunol.,1997,158: 4036-4044)に結合するポリペプチド、例えば、CD58(LFA-3;CD2リガンド;デイヴィス(Davis)ら、Immunol.Today,1996,17:177-187)またはSLAMリガンド(サヨズ(Sayos)ら、Nature,1998, 395:462-469);熱安定抗原(HSAまたはCD24;ツォウ(Zhou)ら、Eur.J.Immunol.,1997,27: 2524-2528)に結合するポリペプチド;TNF受容体(TNFR)ファミリー(すなわち、4-1BB(CD137;ヴィナイ(Vinay)ら、Semin.Immunol.,1998,10:481-489)、OX40(CD134;ウェインバーグ(Weinberg)ら、Semin.Immunol.,1998,10:471-480;ヒギンス(Higgins)ら、J.Immunol.,1999,162:486-493)、およびCD27(レンズ(Lens)ら、Semin.Immunol.,1998,10: 491-499))、例えば、4-1BBL(4-1BBリガンド;ヴィナイ(Vinay)ら、Semin.Immunol.,1998,10: 481-489;デベネデッテ(DeBenedette)ら、J.Immunol.,1997,158:551-559)、TNFR関連因子−1(TRAF-1;4-1BBリガンド;サオーリ(Saoulli)ら、J.Exp.Med.,1998,187:1849-1862;アーチ(Arch)ら、Mol.Cell Biol.,1998,18:558-565)、TRAF-2(4-1BBおよびOX40リガンド;サオーリ(Saoulli)ら、J.Exp.Med.,1998,187:1849-1862;オシマ(Oshima)ら、Int.Immunol.,1998,10:517-526;カワマタ(Kawamata)ら、J.Biol.Chem.,1998,273: 5808-5814)、TRAF-3(4-1BBおよびOX40リガンド;アーチ(Arch)ら、Mol.Cell Biol., 1998,18:558-565;ジャン(Jang)ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,1998,242:613-620;カワマタ(Kawamata),Sら、J.Biol.Chem.,1998,273:5808-5814)、OX40L(OX40リガンド;グラマグリア(Gramaglia)ら、J.Immunol.,1998,161:6510-6517)、TRAF-5(OX40リガンド;アーチ(Arch)ら、Mol.Cell.Biol.,1998,18:558-565;カワマタ(Kawamata),Sら、J.Biol.Chem.,1998,273:5808-5814)、およびCD70(CD27リガンド;クーデルク(Couderc)ら、Cancer Gene Ther.,5(3):163-175)に結合するポリペプチドなど。CD154(CD40リガンドまたは「CD40L」;グルナサン(Gurunathan)ら、J.Immunol.,1998,161:4563-4571;シーン(Sene)ら、Hum.Gene Ther.,2001,12:1091-1102)も適している。
【0036】
1種またはそれ以上のサイトカイン類も共刺激成分または「アジュバント」に適しており、ポリペプチドとして、または、本発明に従う組成物内に含まれる核酸によってコードされているものとして用いる(パーミアニ(Parmiani)ら、Immunol.Lett.2000 Sep 15;74(1):41-44;ベルゾフスキー(Berzofsky)ら、Nature Immunol.1:209-219)。適切なサイトカイン類としては、例えば、インターロイキン2(IL-2)(ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、Nature Med.,4:321-327(1998))、IL-4、IL-7、IL-12(パードール(Pardoll)らによる総説,1992;ハリス(Harris)ら、J.Gene Med.,2000,Jul-Aug;2(4):243-249;ラオ(Rao)ら、J.Immunol.,156:3357-3365(1996))、IL-15(シン(Xin)ら、Vaccine,17:858-866,1999)、IL-16(クルイクシャンク(Cruikshank)ら、J.Leuk.Biol.,67(6):757-766,2000)、IL-18(J.Cancer Res.Clin.Oncol.,2001,127(12):718-726)、GM-CSF(CSF;ディシス(Disis)ら、Blood,88:202-210,1996)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)またはインターフェロン類(IFN-αまたはIFN−γなど)などが挙げられる。当該分野において知られているように、その他のサイトカイン類も本発明の実施に適している。
【0037】
ケモカイン類も、ポリペプチド型または核酸型のいずれも使用することができる。CXCL10(IP-10)およびCCL7(MCP-3)を腫瘍自己抗原に融合させた融合タンパク質は、抗腫瘍免疫性を誘導することが示されている(ビラギン(Biragyn)ら、Nature Biotech.,1999,17:253-258)。ケモカイン類であるCCL3(MIP-1α)およびCCL5(RANTES)(ボイヤー(Boyer)ら、Vaccine,1999,17(Supp.2):S53-S64)も、本発明の実施に使用することができる。その他の適切なケモカイン類も当該分野において既知である。
【0038】
抑制性または負の制御免疫メカニズムが阻止されることにより、免疫応答が増強されることは、当該分野において既知である。例えば、抗CTLA-4(シュリカント(Shrikant)ら、Immunity,1996,14:145-155;ストゥミュラー(Sutmuller)ら、J.Exp.Med.,2001,194:823-832)、抗CD25(ストゥミュラー(Sutmuller)ら、同上)、抗CD4(マツイ(Matsui)ら、J.Immunol.,1999,163:184-193)、融合タンパク質IL13Ra2-Fc(テラベ(Terabe)ら、Nature Immunol.,2000,1:515-520)およびそれらの組み合わせ(すなわち、抗CTLA-4および抗CD25、ストゥミュラー(Sutmuller)ら、同上)を用いて処理することにより、抗腫瘍免疫応答が促進制御されることが示されており、本発明の実施に適している。そのような処理は、本発明に従う免疫原性標的のひとつまたはそれ以上と組み合わせることもできる。
【0039】
これらの構成要素の任意のものを単独または他の材料と組み合わせて使用することができる。例えば、CD80、ICAM-1およびLFA-3の組み合わせ(「TRICOM」)は、抗癌免疫応答を強化することが示されている(ホッジ(Hodge)ら、Cancer Res.,59:5800-5807(1999))。その他の効果的な組み合わせとしては、例えば、IL-12+GM-CSF(アーラー(Ahler)ら、J.Immunol.,158:3947-3958(1997);イワサキ(Iwasaki)ら、J.Immunol.,158:4591-4601(1997))、IL-12+GM-CSF+TNF-α(アーラー(Ahler)ら、Int.Immunol.,13:897-908(2001))、CD80+IL-12(フルエンド(Fruend)ら、Int.J.Cancer,85:508-517(2000);ラオ(Rao)ら、同上)、およびCD86+GM-CSF+IL-12(イワサキ(Iwasaki)ら、同上)などが挙げられる。当業者であれば、本発明の実施にあたって有用な、さらなる組み合わせについて気付くはずである。さらに、当業者であれば、そのようなメカニズムを調節するために使用する、さらなる物質または方法に気付くはずである。これらの物質および方法、ならびに、当業者において既知のその他のものを本発明の実施に使用することができる。
【0040】
核酸に基づく免疫の効率を向上させるためのさらなる戦略としては、例えば、次のようなものが挙げられる:自己複製ウイルス性レプリコンの使用(カレー(Caley)ら、1999,Vaccine,17:3124-2135;デュベンスキー(Dubensky)ら、2000,Mol.Med.,6:723-732;ライトナー(Leitner)ら、2000,Cancer Res.,60:51-55)、コドンの最適化(リウ(Liu)ら、2000,Mol.Ther.,1:497-500;デュベンスキー(Dubensky)ら、同上;ハン(Huang)ら、2001,J.Virol.,75:4947-4951)、イン・ビボ(in vivo)エレクトロポレーション(ウィデラ(Widera)ら、2000,J.Immunol.,164:4635-3640)、CpG刺激性モチーフの取込み(グルナサン(Gurunathan)ら、Ann.Rev.Immunol.,2000,18:927-974;ライトナー(Leitner)ら、同上;チョウ(Cho)ら、J.Immunol.,168(10):4907-4913)、エンドサイト経路またはユビキチン処理経路を標的にする配列(トムソン(Thomson)ら、1998,J.Virol.,72:2246-2252;ヴェルダース(Velders)ら、2001,J.Immunol.,166:5366-5373)、マレック病ウイルス1型VP22配列(J.Virol.,76(6):2676-2682,2002)、プライム−ブースト法(グルナサン(Gurunathan)ら、同上;スリヴァン(Sullivan)ら、2000,Nature,408:605-609;ハンケ(Hanke)ら、1998,Vaccine,16:439-445;アマラ(Amara)ら、2001,Science,292:69-74)、ならびに、サルモネラ(Salmonella)などのような粘膜輸送ベクター(mucosal delivery vectors)の使用(ダージ(Darji)ら、1997,Cell,91:765-775;ウー(Woo)ら、2001,Vaccine,19:2945-2954)など。その他の方法も当該分野において既知であり、そのうちのいくつかを以下に記載する。
【0041】
化学療法剤、放射線、抗血管形成化合物またはその他の物質も、免疫原性標的を使用する癌の治療および/または阻害に利用することができる(セブティ(Sebti)ら、Oncogene,2000 Dec.27;19(56):6566-6573)。例えば、転移性黒色腫の治療に適切な化学療法剤処方としては、BELD(ブレオマイシン、ビンデシン、ロムスチンおよびダカルバジン;ヤング(Young)ら、1985,Cancer,55:1879-1881)、BOLD(ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ダカルバジン;セイグラー(Seigler)ら、1980,Cancer,46:2346-2348)、DD(ダカルバジン、アクチノマイシン;ホッホスター(Hochster)ら、Cancer Treatment Reports,69:39-42)、またはPOC(プロカルバジン、ビンクリスチン、ロムスチン;カルモ−ペレイラ(Carmo-Pereira)ら、1984,Cancer Treatment Reports,68:1211-1214)などが挙げられる。その他の適切な化学療法剤処方も使用することができる。
【0042】
当該分野において、多数の抗血管形成化合物が知られており、それらは、免疫原性標的ワクチンおよび/または化学療法剤処方との共投与に適している(例えば、タイマー(Timer)ら、2001,Pathology Oncol.Res.,7(2):85-94などを参照)。そのような物質の例呈としては、例えば、増殖因子(すなわち、ANG-2、NK1,2,4(HGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β))、サイトカイン類(すなわち、IFN-α、-β、-γなどのインターフェロン類、血小板因子4(PF-4)、PR-39)、プロテアーゼ類(すなわち、解裂AT-III、コラーゲンXVIIIフラグメント(Endostatin))、HmwKallikrein-d5プラスミンフラグメント(Angiostatin)、プロトロンビン-F1-2、TSP-1、 プロテアーゼ阻害剤(すなわち、TIMP-1、-2または-3などのメタロプロテアーゼ類の組織阻害剤;マスピン;PAI-1などのプラスミノーゲンアクチベーター−インヒビター;色素上皮由来の因子(PEDF))、Tumstatin(イレックス(ILEX)社から市販)、抗体生成物(すなわち、コラーゲン結合抗体HUIV26、HUI77、XL313;抗VEGF;抗インテグリン(すなわち、Vitaxin(リクシス(Lxsys)社から市販)))、ならびにグリコシダーゼ類(すなわちヘパリナーゼ-I、-III)などの生理的物質が挙げられる。抗血管形成能を有することが知られている、もしくは有すると考えられている「化学的」または修飾された生理的物質としては、例えば、ビンブラスチン、タキソール、ケトコナゾール、サリドマイド、ドレスタチン、コンブレスタチンA、ラパマイシン(グバ(Guba)ら、2002,Nature Med.,8:128-135)、CEP-7055(セファロン(Cephalon)社から市販)、フラボン酢酸、Bay 12-9566(バイエル(Bayer)社)、AG3340(アゴーロン(Agouron)社)、CGS27023A(ノバルティス(Novartis)社)、テトラサイクリン誘導体(すなわち、COL-3(コラゲニックス(Collagenix)社))、Neovastat(アターナ(Aeterna)社)、BMS-275291(ブリストル−マイヤーズ−ス
クイブ(Bristol-Myers Squibb)社)、低投与量5-FU、低投与量メトトレキセート(MTX)、イルソフラジン(irsofladine)、ラジシコール(radicicol)、シクロスポリン、カプトプリル、セレコキシブ(celecoxib)、D45152-硫化多糖類、陽イオンタンパク質(Protamine)、陽イオンペプチド−VEGF、Suramin(多硫化ナフチルウレア)、VEGFの機能または産生を干渉する化合物(すなわち、SU5416またはSU6668(スージェン(Sugen)社、PTK787/ZK22584(ノバルティス(Novartis)社))、Distamycin A、Angiozymic(リボザイム)、イソフラビノイド類、スタンロスポリン(stanrosporine)誘導体類、ゲニステイン、EMD121974(メルク(Merck)KcgaA)タイロホスチン類(tyrphostins)、イソキノロン類、レチノール酸、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470、オクトレオチド、2−メトキシエストラジオール、アミノステロール類(すなわち、スクアラミン)、グルタチオンアナログ類(すなわち、N−アセチル−L−システイン)、コンブレタスタチンA-4(オキシジーン(Oxigene)社)、Eph受容体阻止剤(Nature,414:933-938,2001)、Rh-Angiostatin 、Rh-Endostatin(国際公開第01/93897号)、サイクリック−RGDペプチド、アキューチンディスインテグリン(accutin-disintegrin)、ベンゾジアゼペン類(benzodiazepenes)、ヒト型化抗avb3 Ab、Rh-PAI-2、アミロライド、p−アミドベンザミジン、抗uPA ab、抗uPAR Ab、L−フェニルアラニン−N−メチルアミド類(すなわち、Batimistat、Marimastat)、AG3340およびミノサイクリンなどが挙げられる。その他多くの適切な物質が当該分野において既知であり、本発明の実施にふさわしい。
【0043】
本発明は、癌の治療法として「踏襲的でない」方法と組み合わせて利用することもできる。例えば、最近の報告では、ある種の嫌気性菌を投与することにより、腫瘍の増殖を抑えられることが示されている。ひとつの実験においては、ノーヴィ菌(Clostridium novyi)を修飾してファージエピソーム上に存在する毒性遺伝子を除去し、直腸結腸腫瘍を有するマウスに投与している(ダン(Dang)ら、P.N.A.S.USA,98(26):15155-15160,2001)。化学療法と組み合わせることにより、この処置が、マウス体内で腫瘍の壊死を引き起こすことが示された。本明細書に記載されている物質および方法は、そのような治療法と組み合わせることができる。
【0044】
免疫原性標的をコードする核酸は、可能ないくつかの技術のうちの任意のものを用いて投与することができる。宿主に核酸を導入する際に首尾よく使用されているウイルス性ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルスなどが挙げられる。そのようなウイルス性ベクターの多くは当該分野において入手可能であることは、当該分野においては自明である。本発明に従うベクターは、当業者によって広く実施されている標準的な組み換え技術を利用して構築することができる。そのような技術は、一般的な分子生物学の参考文献、例えば、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(サンブルック(Sambrook)ら、1989年、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)社)、「遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)」(酵素学における方法論(Methods in Enzymology)、185巻、ゲッデル(Goeddel)ら編、1991年、アカデミック・プレス(Academic Press)社、カリフォルニア州サンディエゴ)、および「PCRプロトコール:方法論および応用への指針(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」(イニス(Innis)ら、1990年、アカデミック・プレス(Academic Press)社、カリフォルニア州サンディエゴ)などが挙げられる。
【0045】
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルス由来のもの、ならびに、マウスもしくはトリレトロウイルス由来のものである。適切なレトロウイルスの例としては、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)などが挙げられる。多くのレトロウイルスベクターは、複数の外来性核酸配列を取り込むことができる。組み換えレトロウイルスは欠損性であるので、感染性のベクター粒子を産生するためには、補助が必要である。このような補助は、例えば、レトロウイルス構造遺伝子をコードするヘルパー細胞系などから供給することができる。適切なヘルパー細胞系としては、Ψ2、PA317およびPA12などが挙げられる。そのような細胞系を用いて産生されたベクターのビリオンを利用してNIH3T3細胞などのような組織細胞系に感染させ、大量のキメラレトロウイルスビリオンを産生させることができる。レトロウイルスベクターは、従来から行われている方法(すなわち、注射)、または、標的細胞の近傍に「産生細胞系(producer cell line)」を埋め込むこと(カルヴァー(Culver),K.ら、1994,Hum.Gene Ther.,5(3):343-379;カルヴァー(Culver),K.ら、Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol.,59:685-690;オールドフィールド(Oldfield),E.、1993,Hum.Gene Ther.4(1):39-69)によって投与することができる。産生細胞系を操作してウイルスベクターを産生させ、標的細胞の近傍にウイルス粒子を放出させる。放出されたウイルス粒子の一部が標的細胞と接触し、これらの細胞に感染することにより、本発明に従う核酸が標的細胞に送達される。標的細胞の感染に続いて、ベクターの核酸の発現が起こる。
【0046】
アデノウイルスベクターは、真核細胞への遺伝子導入(ローゼンフィールド(Rosenfield),M.ら、1991,Science,252(5004):431-434;クリスタル(Crystal),R.ら、1994,Nat.Genet.,8(1):42-51)、真核細胞性遺伝子の発現実験(レヴレロ(Levrero),M.ら、1991,Gene,101(2):195-202)、ワクチン開発(グラハム(Graham),Fおよびプレヴェック(Prevec),L.、1992,Biotechnology,20:363-390)、および動物モデル(ストラトフォード−ペリカデット(Stratford-Perricaudet),L.ら、Bone Marrow Transplant.,9(Suppl.1):151-152;リッチ(Rich),D.,1993,Hum.Gene Ther.,4(4):461-476ら、)に対して特に有用であることが示されている。イン・ビボ(in vivo)の別異の組織に組換えAdを投与するための実験的経路としては、気管内点滴注入(ローゼンフィールド(Rosenfield),M.ら、1992,Cell,68(1):143-155)、筋肉内注射(クァンティン(Quantin),B.,ら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89(7):2581-2584)、末梢静脈内注射(ハーツ(Herz),J.およびゲラード(Gerard),R.、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90(7):2812-2816)、および脳への定位固定植付け(ル・ガル・ラ・サール(Le Gal La Salle),G.ら、1993,Science,259(5097):988-990)などが挙げられる。
【0047】
アデノ関連ウイルス(AAV)は、高い感染性、宿主範囲の広さ、および宿主細胞ゲノムへの特異的インテグレーションを示す(ハーモナット(Hermonat),P.ら、1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81(20):6466-6470)。さらに、単純へルペスウイルスI(HSV-I)は、興味をそそられるもうひとつのベクター系であるが、向神経特性を有することから、神経系への使用に特に適している(ゲラー(Geller),A.ら、1991,Trends Neurosci.,14(10):428-432;グロリオーソ(Glorioso)ら、1995,Mol.Biotechnol.,4(1):87-99;グロリオーソ(Glorioso)ら、1995,Annu.Rev.Microbiol.,49:675-710)。
【0048】
もうひとつの有用な発現ベクターはポックスウイルスである(スミス(Smith)ら、1983,Gene,25(1):21-28;モス(Moss)ら、1992,Biotechnology,20:345-362;モス(Moss)ら、1992,Curr.Top.Microbiol. Immunol.,158:25-38;モス(Moss)ら、1991,Science,252:1662-1667)。有用であることが示されているポックスウイルスとしては、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、鶏痘、カナリアポックス、ALVAC、およびALVAC(2)などが挙げられる。
【0049】
NYVAC(vP866)は、既知または推定ビルレンス因子をコードするゲノム中の6個の非必須領域を欠失させたワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン株由来である(例えば、米国特許第5.364,773号および第5,494,807号参照)。欠失位置は、外来遺伝子挿入用の受入位置として操作されている。欠失領域は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK-;J2R);出血性領域(u;B13R+B14R);A型封入体領域(ATI;A26L);赤血球凝集素遺伝子(HA;A56R);宿主域遺伝子領域(C7L-K1L);およびリボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニット(I4L)である。NYVACは、遺伝子操作されたワクシニアウイルスであり、ビルレンスと宿主域に関与する遺伝子産物をコードする18個のオープンリーディングフレームフレームを特異的に欠損させることによって生成されたものである。NYVACは、TA類の発現に有用であることが示されている(例えば、米国特許第6,265,189号などを参照)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lリバース、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBも、それぞれ、アクセッション番号VR-2559、VR-2558、VR-2557、VR-2556、ATCC-97913、ATCC-97912およびATCC-97914として、ブダペスト協定に基づいてATCCに寄託されている。
【0050】
本発明の実施においては、ALVACに基づく組換えウイルス(すなわち、ALVAC-1およびALVAC-2)も使用に適している(例えば、米国特許第5,756,103号などを参照)。ALVAC(2)は、ワクシニアプロモーターの制御下にワクシニアのE3LおよびK3L遺伝子を有する以外はALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号;ビアッティ(Beattie)ら、1995a,1995b,1991;チャン(Chang)ら、1992;ダヴィース(Davies)ら、1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)は、TA類などの外来性DNA配列の発現に有用であることが示されている(タータグリア(Tartaglia)ら、1993a,b;米国特許第5,833,975号)。ALVACは、ATCCアクセッション番号VR-2547として、ブダペスト協定に基づき、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collecion;ATCC)(アメリカ合衆国バージニア州マナサス、大学通り10801番地、郵便番号20110-2209)に寄託されている。
【0051】
さらに別の有用なポックスウイルスベクターは、TROVACである。TROVACとは、弱毒鶏痘であり、鶏痘ウイルスのFP-1ワクチン株からプラーククローニングによって単離して得られ、1日齢のヒナへのワクチン接種が認められている。TROVACも同様に、アクセッション番号2553として、ブダペスト協定に基づいてATCCに寄託されている。
【0052】
「非ウイルス性」プラスミドも本発明の実施に適している。好ましいプラスミドベクターは、細菌、昆虫および/または哺乳類宿主細胞に適合するものである。そのようなベクターとしては、例えば、PCR-II、pCR3、およびpcDNA3.1(インヴィトロジェン(Invitrogen)社、カリフォルニア州サンディエゴ)、pBSII(ストラタジーン(Stratagene)社、カリフォルニア州ラホーヤ)、pET15(ノヴァジェン(Novagen)社、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX(ファルマシア・バイオテク( Pharmacia Biotech )社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、pEGFP-N2(クロンテック( Clontech )社、カリフォルニア州パロアルト)、pETL(BlueBacII;インヴィトロジェン(Invitrogen)社)、pDSR-alpha(国際公開第90/14363号)、およびpFastBacDual(ギブコ−BRL(Gibco-BRL)社、ニューヨーク州グランドアイランド)、ならびにBluescript(登録商標)プラスミド誘導体類(COLE-1に基づく多コピーファージミド;ストラタジーン・クローニングシステムズ(Stratagene Cloning Systems)社、カリフォルニア州ラホーヤ)、Taq−増幅PCR産物をクローニングするように設計されたPCRクローニングプラスミド類(例えば、TOPO(商標)TA cloning(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体類;インヴィトロジェン(Invitrogen)社、カリフォルニア州カールスバッド)などが挙げられる。細菌由来のベクターも本発明に使用することができる。そのようなベクターとしては、例えば、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、乳酸桿菌属(Lactbacillus)、カルメット・ゲラン菌(Bacille calmette guerin:BCG)および連鎖球菌(Streptococcus)などが挙げられる(例えば、国際公開第88/6626号、国際公開第90/0594号、国際公開第91/13157号、国際公開第92/1796号および国際公開第92/21376号を参照)。その他多数の非ウイルス性プラスミド発現ベクターおよび発現系が当該分野において知られており、本発明に使用することができる。
【0053】
適切な核酸送達技術としては、DNA−リガンドコンプレックス、アデノウイルス−リガンド−DNAコンプレックス、DNAの直接注入、CaPO4沈殿法、遺伝子銃(gene gun)技術、エレクトロポレーション(電気穿孔)、およびコロイド分散系などが挙げられる。コロイド分散系には、巨大分子コンプレックス、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームなどの脂質に基づく系などが挙げられる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームであり、これは、人工膜を有する小胞であって、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボ(in vivo)での送達ビヒクルとして有用である。リポソームは、RNA、DNAおよびそのままの形のビリオンを水性の内部に封入することができ、生物学的に活性な形で細胞に送達することができる(フラレイ(Fraley)ら、1981,Trends Biochem.Sci.,6:77)。通常、リポソームの組成は、リン脂質の組み合わせであり、特に、相遷移温度が高いリン脂質と、ステロイド類、特にコレステロールとを組み合わせる。その他のリン脂質、またはその他の脂質も用いることができる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価陽イオンの存在によって決まる。リポソーム生成に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質類、セレブロシド類およびガングリオシド類などが挙げられる。特に有用なものはジアシルホスファチジルグリセロール類であり、ここで、脂質部位は14〜18個の炭素原子を有しており、特に好ましくは、16〜18個の炭素原子を有しており、飽和している。代表的なリン脂質の例としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンなどが挙げられる。
【0054】
免疫原性標的は、1種またはそれ以上のアジュバントと組み合わせて投与し、免疫応答を促進することができる。アジュバントの例を下の表IIに示す。
【表2】

【0055】
本発明に従う組成物の宿主への投与は、当業者において既知である多様な技術のうちの任意のものを用いて行うことができる。組成物は、製剤学で従来から行われている方法に従って加工することにより、ヒトおよびその他の哺乳類を含む患者に投与するための薬剤(すなわち、「医薬組成物」)にする。好ましくは、医薬組成物は、DNA、ウイルスベクター粒子、ポリペプチドもしくはペプチドなどの所与量を含む投与単位様式にする。ヒトまたはその他の哺乳類への適切な日投与量は、患者の状態およびその他の因子によって大きく異なるが、常套法を用いて決定することができる。
【0056】
医薬組成物は、従来から用いられており、薬剤学的に許容されるキャリヤー、アジュバント、およびビヒクルを含む投与単位製剤として、経口、非経口、吸入スプレー、経肛門、結節内、または局所に投与することができる。本明細書において使用している「薬剤学的に許容されるキャリヤー」または「生理的に許容されるキャリヤー」とは、医薬組成物としての核酸、ポリペプチドもしくはペプチドの送達を完遂させる、または促進させるのに適した1種もしくはそれ以上の材料をさす。「医薬組成物」とは、治療有効量の核酸またはポリペプチドを含む組成物である。「有効量」および「治療有効量」とは、有効な免疫応答を誘起する、または増強させるために使用する核酸もしくはポリペプチドの量をさす。本発明に従う組成物は、宿主内において抗腫瘍免疫応答の誘導または増強をもたらし、それによって、腫瘍の発達から宿主を保護し、ならびに/または現存する腫瘍を身体から排除する。
【0057】
経口投与用には、医薬組成物は、カプセル、錠剤、懸濁液、または液体などを含むいくつかの剤型のうちの任意のものにすることができる。液体は、生理食塩水、デキストロース、または水を含む適切なキャリヤーを用いた組成物として、注射によって投与することができる。本明細書において使用している非経口とは、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、灌流または腹膜内投与などを含む。薬物の直腸投与用の坐剤は、カカオ脂およびポリエチレングリコール類(常温では固体だが、直腸温度では液体であるようなもの)などの適切な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって調製することができる。
【0058】
本発明に従う組成物を用いて宿主もしくはその他の対象の疾患または疾病を治療するための免疫化用投与方式は、疾患の型、年齢、体重、性別、患者の医学的状態、状態の重篤度、投与経路および使用する特定の化合物を含む多様な因子に基づいて決まる。例えば、ポックスウイルスベクターは、投与量あたり1×106個の感染性粒子を含む組成物として投与することができる。従って、投与用式は多岐にわたるが、標準的な方法を用いて型どおりに決定することができる。
【0059】
プライム−ブースト法(国際公開第01/30382号)も用いることができ、このとき、標的免疫原は、最初に、ある型で感作段階の投与を行い、続いて、増強段階においては、別の型で投与を行う。感作および増強段階での標的免疫原の型は異なっている。例えば、感作段階で核酸を用いた場合には、増強段階ではペプチドとして投与する。同様に、感作段階で組換えウイルスのひとつの型(すなわち、ALVAC)を用いた場合には、増強段階では、ウイルスの別の型(すなわち、NYVAC)を用いる。この感作−増強投与法は、強力な免疫学的応答を誘導することが示されている。本発明の実施にあたっては、様式を多様に組み合わせることが適切である。
【0060】
本発明に従う組成物は、単一の活性な薬物として投与することができるが、1種もしくはそれ以上の組成物または物質(すなわち、その他の免疫学的標的、共刺激分子、アジュバント)と組み合わせて用いることもできる。組み合わせとして投与する場合には、個々の構成成分は、同時もしくは別の時間に投与する別の組成物として製剤化するか、または、ひとつの組成物として混合することができる。
【0061】
水性または油性の滅菌注射用懸濁液などのような注射用製剤は、適切な分散もしくは湿潤剤、ならびに懸濁剤を用い、既知の方法に従って調製することができる。注射用製剤は、非毒性非経口用希釈剤もしくは溶媒を用いた滅菌注射用溶液または懸濁液にすることもできる。使用可能な適切なビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液および塩化ナトリウム等張液などが挙げられる。例えば、ポックスウイルスなどのウイルスベクターは、0.4%のNaCl中で調製する。さらに、滅菌した固定油も、溶媒または懸濁剤として従来から使用されている。そのような用途には、合成モノ−またはジ−グリセリド類を含む任意の商標の固定油を用いることができる。またさらに、オレイン酸などの脂肪酸類も注射剤の調製に使用される。
【0062】
局所投与用には、適切な局所投与量の組成物を一日1〜4回、好ましくは2〜3回投与する。投与量は、投与を行わない日をはさんで隔日投与することもできる。適切な組成物は、製剤の重量に対して0.001〜10重量%、例えば、1〜2重量%を含有しているが、10重量%までであり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは、製剤の0.1〜1%である。局所投与に適した製剤としては、皮膚を通過する浸透に適した液体もしくは半液体製剤(例えば、塗布剤、ローション剤、軟膏、クリームまたはパスタ剤など)、ならびに、目、耳、もしくは鼻への投与に適した滴剤などが挙げられる。
【0063】
医薬組成物は、固体(顆粒、粉末または坐剤を含む)に調製することもできる。医薬組成物は、滅菌などの従来から行われている薬剤学的操作に供することができ、および/または、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液などのような従来から使用されているアジュバントを用いることができる。経口投与用の固体投与剤型としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒などが挙げられる。そのような固体投与剤型においては、活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、ショ糖、乳糖またはでんぷんなど)と事前に混合することができる。そのような投与剤型には、通常行われているように、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどのような滑沢剤なども加えることができる。カプセル、錠剤、丸剤の場合には、投与剤型に緩衝剤を含む。さらに、錠剤および丸剤には腸溶コーティングを施すことができる。経口投与用の液体投与剤型としては、薬剤学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、および、エリキシルなどが挙げられ、当該分野において一般的に使用される不活性希釈剤(水など)を含む。そのような組成物には、湿潤剤、甘味料、香味料および香料などのようなアジュバントを用いることもできる。
【0064】
本発明に従う核酸またはポリペプチドを含む医薬組成物は、いくつかの剤型のうちの任意の型にすることができ、いくつかの投与経路のうちの任意の経路で投与することができる。好ましい実施態様においては、組成物を非経口経路(経皮、筋肉内または皮下)で投与し、宿主内で免疫応答を誘導させる。別の方法としては、リンパ節(節内)または腫瘍塊(すなわち、腫瘍内投与)の内部に直接投与する。例えば、0、7および14日目に皮下投与を行う。TA類を含む組成物を用いた免疫に適した方法は当該分野において既知であり、p53(ホルスタイン(Hollstein)ら、1991)、p21-ras(アルモグエラ(Almoguera)ら、1988)、HER-2(フェンドリー(Fendly)ら、1990)、黒色腫関連抗原(MAGE-1;MAGE-2)(ヴァン・デル・ブルッゲン(van der Bruggen)ら、1991)、p97(フー(Hu)ら、1988)、黒色腫関連抗原E(国際公開第99/30737号)および癌胎児性抗原(CEA)(カントール(Kantor)ら、1993;フィッシュバイン(Fishbein)ら、1992;カウフマン(Kaufman)ら、1991)などについて示されている。
【0065】
投与可能な組成物の好ましい実施態様としては、例えば、懸濁液、シロップもしくはエリキシルなどのような液体製剤中に核酸またはポリペプチドを含有しているものなどが挙げられる。注射可能な製剤の好ましい例としては、非経口、皮下、皮内、筋肉内もしくは静脈内投与に適した核酸またはポリペプチド、例えば、滅菌懸濁液またはエマルションなどが挙げられる。例えば、組換えポックスウイルスは、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどのような適切なキャリヤー、希釈剤または賦形剤と予め混合することができる。組成物は、等張性生理食塩水緩衝液などで用時調製する凍結乾燥製剤として提供することもできる。さらに、組成物は、その他の抗悪性新生物剤、抗腫瘍剤もしくは抗癌剤および/または、抗悪性新生物剤、抗腫瘍剤もしくは抗癌剤の副作用を軽減または緩和するような物質と同時に、あるいは続けて投与することができる。
【0066】
本発明に従う組成物を含むキットも提供される。キットには、適切なキャリヤー、希釈剤または賦形剤を入れた別容器を含む。キットには、同時あるいは順次投与用の、抗悪性新生物剤、抗腫瘍剤もしくは抗癌剤および/または、抗悪性新生物剤、抗腫瘍剤もしくは抗癌剤の副作用を軽減または緩和するような物質を追加することもできる。さらに、キットには、構成成分の混合もしくは調合、ならびに/または投与のための説明書を加えることができる。
【0067】
具体例を示した以下の実施例を読むことにより、本発明およびその多数の利点がよりよく理解できるものと思われる。
【実施例】
【0068】
実施例1:多抗原構築体vT416の構築
標準的な技術を用い、ALVACベクター内に発現ベクターvT416(ALVAC-NY-ESO-1/Trp-2-LFA-3/ICAM-1/B7.1-E3L/K3L)を構築した。NY-ESO-1、Trp-2、LFA-3、ICAM-1、B7.1、vvE3LおよびvvK3LをコードするDNA配列をALVACゲノム内の様々な遺伝子座に挿入した。NY-ESO-1(チェン(Chen)ら、1997,PNAS,94:1914)およびTRP-2(ワン(Wang)ら、1996,J.Exp.Med.,184:2207)をコードするDNA配列は、C5遺伝子座に挿入した。LFA-3(ワルナー(Wallner)ら、(1987)J.Exp.Med.,166:923-932)、ICAM-1(スタントン(Staunton)ら、(1988)Cell,52:925-933)およびB7.1(チェン(Chen)ら、(1992)Cell,71:1093-1102)をコードするDNA配列は、C3遺伝子座に挿入した。LFA-3、ICAM-1およびB7.1は、TRICOMという名称で知られている発現カセットを形成する。vvE3L(チャン(Chang)ら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4825-4829)およびvvK3L(ビーティー(Beattie)ら、1991,Virology,183:419-422)をコードするDNA配列は、C6遺伝子座に挿入した。使用したプロモーターは次の通りである:
【表3】

【0069】
プロモーターsE/Lについては、チャクラバーティ(Chakrabarti)らによる記載がある(Bio Techniques,23:1094-1097,1997)。使用したドナープラスミドを以下に示す:
【表4】

【0070】
ALVACドナープラスミドpT1132に NY-ESO-1およびTRP-2のDNA配列を挿入した。次に、標準的な技術を用い、このドナープラスミドをpALVAC.Tricom(C3)#33と共に用いることにより、これらの遺伝子を発現するALVAC−TRICOM組換え体を作出した。プラスミドpALVAC.Tricom(C3)#33およびpT1132を図1に示す。pALVAC.Tricom(C3)#33およびpT1132のDNA配列を図2および図3にそれぞれ示す。
【0071】
実施例2:多抗原構築体vT419の構築
標準的な技術を用い、ALVACベクター内に発現ベクターvT419(ALVAC-gp100M/Mart-1/Mage-1,3ミニジーン−-LFA-3/ICAM-1/B7.1-E3L/K3L)を構築した。gp100M/MART-1/MAGE-1,3ミニジーン、LFA-3、ICAM-1、B7.1、vvE3LおよびvvK3LをコードするDNA配列は、ALVACゲノム内の多様な遺伝子座に挿入した。gp100M/MART-1/MAGE-1,3ミニジーンはC5遺伝子座に挿入した。LFA-3(ワルナー(Wallner)ら、(1987)J.Exp.Med.,166:923-932)、ICAM-1(スタントン(Staunton)ら、(1988)Cell,52:925-933)およびB7.1(チェン(Chen)ら、(1992)Cell,71:1093-1102)をコードするDNA配列は、C3遺伝子座に挿入した。LFA-3、ICAM-1およびB7.1は、TRICOMという名称で知られている発現カセットを形成する。vvE3L(チャン(Chang)ら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4825-4829)およびvvK3L(ビーティー(Beattie)ら、1991,Virology,183:419-422)をコードするDNA配列は、C6遺伝子座に挿入した。使用したプロモーターは次の通りである:
【表5】

【0072】
プロモーターsE/Lについては、チャクラバーティ(Chakrabarti)らによる記載がある(Bio Techniques,23:1094-1097,1997)。使用したドナープラスミドを以下に示す:
【表6】

【0073】
gp100(M)、Mart-1およびMage-1,3ミニジーンは、ALVAC C5ドナープラスミドpT3217に挿入した。次に、標準的な技術を用い、このドナープラスミドをpALVAC.Tricom(C3)#33と共に用いることにより、これらの遺伝子を発現するALVAC−TRICOM組換え体を作出した。このドナープラスミドをC5遺伝子座に挿入した。プラスミドpALVAC.Tricom(C3)#33を図1および2に示す。pT3217プラスミドを図4に示す。pT3217のDNA配列を図5に示す。
【0074】
実施例3:多抗原ベクターの免疫学的評価
第1回目の動物実験の結果から、ワクチンを2回に分けて接種した場合には、4種類の抗原のうちの3種類(Mart-1、NY-ESO-1およびgp100)に対しては、高い免疫学的応答を示す傾向が示唆された。しかしながら、これらの差異は、統計的に有意ではなかった。詳細に説明すると、HLA-A2/Kbトランスジェニックマウス(一群5匹)に対し、vT419(ALVAC(2)-gp100M/MART-1/MAGE-1/3ミニジーン/TRICOM)およびvT416(ALVAC(2)-TRP-2/NY-ESO-1/TRICOM)を組み合わせて一ヶ所に、または別々に皮下に注射することによって免疫した。対照マウスは、元のALVAC(2)を用いて免疫した。マウスには、3週間間隔で3回ワクチン接種を行い、最終接種の3週間後に、ペプチドを用いてイン・ビトロ(in vitro)で再刺激を行ってから、IFN-gELISPOTおよびCTLアッセイによって各個体のT細胞応答を分析した。対照マウスと比較すると、多抗原ベクターをワクチン接種したマウス(2ヶ所)は、MART-1に対しては、統計的に有意なELISPOT応答を示した。gp100MおよびNY-ESO-1に対するIFN-γ応答も検出されたが、これらの応答は、応答にばらつきがあったことと、試験に用いた培養数が少なかったことから、統計的に有意ではなかった。TRP-2抗原に対するELISPOT応答は試験を行った全群で上昇していた(対照群を含む)が、これはおそらく、主要ペプチドであるA2−制限TRP-2ペプチド(180〜188)がH-2Kbと交差反応をし、イン・ビトロ(in vitro)での培養後に感受性マウスにおいて、アビジチーの低いT細胞応答を誘導したためと考えられ、故に、統計的に有意ではなかった。興味深いことに、一般的に、vT416とvT419との混合物を注射されたマウスにおけるELISPOT応答は、各ウイルスを別々に接種されたマウスよりも低かったが、これらの差異は統計的に有意ではなかった。CTLデータは、強力な抗gp100応答および境界線上の抗MART-1応答を除いてはほぼ否定的であり、例外の2例は、いずれもvT416とvT419を別々に(2ヶ所に)投与したマウスで生じたものである。全体的に、前向きなデータが得られたこれらの結果から、多抗原ベクターは、MART-1に対して応答を惹起できることが確認され、さらに、抗gp100および抗NY-ESO-1応答を誘起できることが示唆された。
【0075】
黒色腫多抗原であるALVAC組換え体を用いた、さらに2種類の前臨床動物試験が終了している。これらの試験においては、HLA-A2/Kbトランスジェニックマウス(一群5匹)に、vT419(ALVAC(2)-gp100M/MART-1/MAGE-1/3ミニジーン/TRICOM)およびvT416(ALVAC(2)-TRP-2/NY-ESO-1/TRICOM)を組み合わせて一度に、または別々に皮下に注射することによって免疫した。対照マウスには元のALVAC(2)を用いて免疫した。ワクチン接種後、ペプチドを用いてイン・ビトロ(in vitro)で再刺激を行った後、IFN-γ ELISPOTアッセイにより、個々のマウスにおけるT細胞応答を評価した。先に実施した多抗原を用いた実験(免疫原性が高められるというデータが得られた)とは異なり、最近の2つの実験では、対照免疫マウスにおけるバックグラウンド応答が高かったことから、決定的なデータが得られなかった。故に、全体的な結果は確定できないと判断した。
【0076】
多抗原構築体の免疫原性を確認すること、および最初の実験から得られた結果を再現することを目的として、別の前臨床動物実験を行った。HLA-A2/Kbトランスジェニックマウス(一群10匹)に、vT419(ALVAC(2)-gp100M/MART-1/MAGE-1/3ミニジーン/TRICOM)およびvT416(ALVAC(2)-TRP-2/NY-ESO-1/TRICOM)を別々に皮下に注射することによって免疫した。対照マウスには元のALVAC(2)を用いて免疫した。gp100、Mart-1およびTRP-2に対しては、統計的に有意な ELISPOT応答が検出され、NY-ESO-1に対しても若干の応答が観察された(これは統計的に有意であるか否かの境界線であった)。
【0077】
本発明の好ましい実施態様について記載してきたが、当業者であれば、変形および変更が可能であることは自明である。従って、本発明の範囲に含まれるそのような全ての等価な変形は、請求項に包含されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の免疫原性標的を共発現させるための発現ベクターであって、該免疫原性標的は、NY-ESO-1、TRP-2、gp100、gp100M、MART抗原MART-1、MAGE抗原MAGE-1およびMAGE-3より成る群から選択されることを特徴とする発現ベクター。
【請求項2】
プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
ウイルスベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、およびアデノ関連ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする請求項2記載の発現ベクター。
【請求項4】
ウイルスベクターは、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリアポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項3記載の発現ベクター。
【請求項5】
ウイルスベクターは、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項4記載の発現ベクター。
【請求項6】
血管形成関連抗原をコードする核酸配列を少なくとも1個は追有していることを特徴とする請求項1記載の発現ベクター。
【請求項7】
ベクターがプラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする請求項6記載の発現ベクター。
【請求項8】
ウイルスベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、およびアデノ関連ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする請求項7記載の発現ベクター。
【請求項9】
ウイルスベクターは、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリアポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項8記載の発現ベクター。
【請求項10】
ウイルスベクターは、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項9記載の発現ベクター。
【請求項11】
共刺激成分をコードする核酸配列を少なくとも1つさらに含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項12】
プラスミドまたはウイルスベクターであることを特徴とする請求項11記載の発現ベクター。
【請求項13】
ウイルスベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびアデノ関連ウイルスより成る群から選択されることを特徴とする請求項12記載の発現ベクター。
【請求項14】
ウイルスベクターは、ワクシニア、NYVAC、アビポックス、カナリアポックス、ALVAC、ALVAC(2)、鶏痘およびTROVACより成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項13記載の発現ベクター。
【請求項15】
ウイルスベクターは、NYVAC、ALVACおよびALVAC(2)より成る群から選択されるポックスウイルスであることを特徴とする請求項14記載の発現ベクター。
【請求項16】
共刺激成分がヒトB7.1であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項記載の発現ベクター。
【請求項17】
薬剤学的に許容されるキャリヤー中に含まれる請求項1〜16のいずれか1項記載の発現ベクターを含有することを特徴とする組成物。
【請求項18】
癌の予防または治療法であって、請求項1〜16のいずれか1項記載の発現ベクターの宿主への投与を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
癌の予防または治療法であって、請求項17記載の組成物の宿主への投与を含むことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図2−4】
image rotate

【図2−5】
image rotate

【図2−6】
image rotate

【図2−7】
image rotate

【図2−8】
image rotate

【図2−9】
image rotate

【図2−10】
image rotate

【図2−11】
image rotate

【図2−12】
image rotate

【図2−13】
image rotate

【図2−14】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図3−6】
image rotate

【図3−7】
image rotate

【図3−8】
image rotate

【図3−9】
image rotate

【図3−10】
image rotate

【図3−11】
image rotate

【図3−12】
image rotate

【図3−13】
image rotate

【図3−14】
image rotate

【図3−15】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図5−4】
image rotate

【図5−5】
image rotate

【図5−6】
image rotate

【図5−7】
image rotate

【図5−8】
image rotate

【図5−9】
image rotate

【図5−10】
image rotate

【図5−11】
image rotate

【図5−12】
image rotate

【図5−13】
image rotate

【図5−14】
image rotate

【図5−15】
image rotate

【図5−16】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図6−4】
image rotate

【図6−5】
image rotate

【図6−6】
image rotate

【図6−7】
image rotate

【図6−8】
image rotate

【図6−9】
image rotate


【公開番号】特開2011−41578(P2011−41578A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257738(P2010−257738)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2006−525474(P2006−525474)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【出願人】(503044204)セリオン バイオロジクス (4)
【氏名又は名称原語表記】Therion Biologics
【Fターム(参考)】