説明

(メタ)アクリル系樹脂組成物及び光学部品

【課題】耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた光学部品を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたセグメントAと、以下の一般式(1)で表わされるアダマンタン構造を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたセグメントBとを含むブロック共重合体。


(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Rは水素原子またはメチル基を示す。Yは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基及び炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた光学部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック光学部品用の樹脂として(メタ)アクリル系樹脂などが利用されている。特にポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)は可視領域の光に対して透明であるが、耐熱性が不十分(Tg:105℃)であることから、耐熱性が要求される用途や場所においては形状が変化したり、特性を損なってしましい、実質的には70℃程度までの環境でしか使用できない。そこで、耐熱性や機械特性が求められる部品にはエポキシ系樹脂がよく用いられているが、エポキシ系樹脂は可視領域の透明性は高いものの紫外から近紫外領域では十分な透明性が得られない。
【0003】
一方、(メタ)アクリル系樹脂の側鎖にアダマンタン構造を導入すると、Tgが高くなり、同時に低吸湿性で低複屈折の樹脂が得られることが知られている。しかし、側鎖にアダマンタン構造を導入すると、機械特性が低下し材料として脆くなるという問題がある。そこで、耐熱性及び機械特性の優れた(メタ)アクリル系樹脂の側鎖にアダマンタン構造を導入した樹脂について種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、メタクリル酸メチルと側鎖にアダマンタン構造を導入したメタクリル酸メチルを重合して得られる樹脂が提案されているが、メタクリル酸メチルを共重合するためTgが低下するという問題がある。
【0005】
特許文献2には、側鎖にアダマンタン構造を導入したメタクリル酸メチルを重合して得られる重量平均分子量100万以上の樹脂が提案されているが、機械強度の向上は十分でなく、重量平均分子量100万以上であるため成形性が低下するという問題がある。機械強度を向上させるために架橋性モノマーを併用することも提案されているが、重量平均分子量100万以上の樹脂を架橋することで更に成形性が低下し、押出成形、射出成形などの一般的な成形加工が困難となるという問題がある。
【0006】
従って、耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物が従来より求められている。
【0007】
また、アダマンタンは、ユニークな特性を有しながらも高価格であることから、アダマンタンの使用量を少なくすることが求められている。
【0008】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、後述するように、リビングラジカル重合法などの重合法によって得ることができる(メタ)アクリル系樹脂組成物である。特許文献3及び特許文献4には、リビングラジカル重合法の重合開始剤として用いることができる有機テルル化合物が開示されている。また、特許文献5には、有機テルル化合物を重合開始剤として用いた水系での重合方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−281363号公報
【特許文献2】特開2006−213851号公報
【特許文献3】国際公開2004/14848号パンフレット
【特許文献4】国際公開2004/14962号パンフレット
【特許文献5】特開2006−225524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物及び光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたガラス転移温度が30℃以下であるセグメントAと、以下の一般式(1)で表わされるアダマンタン構造を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたガラス転移温度が105℃以上であるセグメントBと、を含むブロック共重合体からなり、セグメントAとセグメントBの重量比(A:B)が、1〜50:99〜50であることを特徴している。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Rは水素原子またはメチル基を示す。Yは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基及び炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)
【0014】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、好ましくは、有機テルル化合物系重合開始剤を用いたリビングラジカル重合法で重合することにより得られ、有機テルル化合物系重合開始剤が、
(a)一般式(2)で表される有機テルル化合物、
(b)一般式(2)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)一般式(2)で表される有機テルル化合物と一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)一般式(2)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物
のいずれかであることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。)
【0019】
また、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が50,000〜2,000,000の範囲であることが好ましい。
【0020】
また、ブロック共重合体中の分子量10,000未満の低分子量成分含有量が1重量%以下であることが好ましい。
【0021】
また、ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が、1.05〜2.00の範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、例えば、光学部品用として用いることができ、さらに好ましくは、光学レンズ用として用いることができる。
【0023】
本発明の光学部品は、上記本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴としている。
【0024】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」の言葉は、メタクリル及びアクリルを意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリル系樹脂とすることができる。従って、導光板、プリズム、液晶パネル、MD・CD・DVD用光学部品、光学レンズ、プロジェクターレンズ、ヘッドランプレンズ等の光学部品用材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上述のように、セグメントAとセグメントBとを含むブロック共重合体からなることを特徴としている。
【0027】
本発明において、セグメントAの主成分である(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に制限なく使用することができる。
【0028】
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ボロニル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。尚、上記の「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。
【0029】
好ましい(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸n−ステアリルが挙げられる。主鎖構造がアクリレート構造の場合、250℃以上の環境下でも熱分解が起こらず、耐熱性の観点で好ましい。
【0030】
本発明において、上記モノマーはセグメントAのガラス転移温度が30℃以下となるよう、1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
セグメントAのガラス転移温度は30℃以下、より好ましくは20℃以下にすることが好ましい。セグメントAはブロック共重合体が熱処理により自己組織化することで、衝撃吸収成分(ソフトセグメント)として作用するため、ガラス転移温度が30℃より高くなると室温下での柔軟性が低下するため好ましくない。
【0032】
本発明において、セグメントBの主成分としては、一般式(1)で表わされるアダマンタン構造を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが用いられる。
【0033】
一般式(1)で表わされるアダマンタン構造を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーしては、特に制限なく使用することができる。
【0034】
例えば、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルエチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルプロピル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルブチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、5,7−ジメチル−3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、アダマンチルトリ(メタ)アクリレート、アダマンチルテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。より好ましくは1−アダマンチルアクリレート、2−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチルメチルアクリレート、1−アダマンチルエチルアクリレート、1−アダマンチルプロピルアクリレート、1−アダマンチルブチルアクリレート、1−アダマンチルペンチルアクリレート、1−アダマンチルヘキシルアクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート、5,7−ジメチル−3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレートなどを使用することが好ましい。主鎖構造がアクリレート構造の場合、250℃以上の環境下でも熱分解が起こらず、耐熱性の観点で好ましい。
【0035】
本発明において、上記モノマーは、セグメントBのガラス転移温度が105℃以上となるように樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、必要に応じセグメントAの構成成分として例示される(メタ)アクリル酸エステルモノマーを併用してもよい。
【0037】
本発明において、セグメントA及びセグメントBにおける「主成分」は、各セグメントにおいて70モル%以上含まれる成分を意味する。
【0038】
セグメントBのガラス転移温度は105℃以上、より好ましくは120℃以上に設定することが好ましい。セグメントBはブロック共重合体が熱処理により自己組織化することで、耐熱性成分(ハードセグメント)として作用するため、ガラス転移温度が105℃未満となると熱変形温度が低下するため好ましくない。
【0039】
セグメントA及びBのガラス転移温度は、経験則により導かれた以下の計算式(1)(Foxの式)を用いることにより計算することができる。
【0040】
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+Wc/Tgc+ ・・・・ (1)
【0041】
(式中Tgは設定ガラス転移温度(K)を、Tgxは各構成モノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度(K)を、Wxは各構成モノマーの重量比を示し、総和は1となる。)
【0042】
また本発明においてブロック共重合体の物性改良を目的に、下記に例示するビニルモノマーを必要により併用してもよい。
【0043】
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルや(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル等の炭素数1〜12の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコ−ル誘導体;(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加体;ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル等の水酸基含有エーテルモノマー;
ヒドロキシメチルビニルケトン、ヒドロキシエチルビニルケトン、ヒドロキシプロピルビニルケトン等の水酸基含有ケトンモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニルモノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有ビニルモノマー;トリエチレングリコールジメタクリレート等のビニル基含有ビニルモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニルモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートの如き燐酸基含有ビニルモノマー等の反応性官能基含有ビニルモノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン(p−メチルスチレン)、2−メチルスチレン(o−メチルスチレン)、3−メチルスチレン(m−メチルスチレン)、4−メトキシスチレン(p−メトキシスチレン)、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン(o−クロロスチレン)、4−クロロスチレン(p−クロロスチレン)、2,4−ジクロロスチレン等のスチレン系モノマー;
1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等の芳香族不飽和モノマー、2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のヘテロ環含有不飽和モノマー;
N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等のジエン類;
酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル;(メタ)アクリロニトリル;メチルビニルケトン;塩化ビニル;塩化ビニリデン
【0044】
本発明で用いられるブロック共重合体は、例えば、リビングラジカル重合法により得られる。リビングラジカル重合は、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ分子構造の精密制御を可能にする重合法で、新しい高分子材料の合成に大きな威力を発揮している。この重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP)、その他の種類がある。なかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御の観点から、上記特許文献3及び特許文献4に記載された有機テルル化合物を用いる方法(TERP)を用いることが好ましい。
【0045】
具体的には、
(a)一般式(2)で表される有機テルル化合物、
(b)一般式(2)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)一般式(2)で表される有機テルル化合物と式一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)一般式(2)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物
のいずれかである有機テルル化合物系重合開始剤を用いて重合する。
【0046】
本発明で使用する有機テルル化合物は、例えば、上記一般式(2)で表される。
【0047】
上記一般式(2)におけるRで示される基は、具体的には次の通りである。
【0048】
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が良い。より好ましくは、メチル基、エチル基又はn−ブチル基が良い。
【0049】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。
【0050】
上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R=炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0051】
好ましい置換アリール基としては、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
【0052】
また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
【0053】
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0054】
上記一般式(2)におけるR及びRで示される各基は、具体的には次の通りである。
【0055】
炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Rで示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0056】
上記一般式(2)におけるRで示される各基は、具体的には次の通りである。
【0057】
アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基としては上記Rで示した基と同様のものを挙げることができる。
【0058】
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
【0059】
アミド基としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、ベンズアミド、2−フルアミド等のカルボン酸アミド、チオアセトアミド、ヘキサンジチオアミド、チオベンズアミド、メタンチオスルホンアミド等のチオアミド、セレノアセトアミド、ヘキサンジセレノアミド、セレノベンズアミド、メタンセレノスルホンアミド等のセレノアミド、N−メチルアセトアミド、ベンズアニリド、シクロヘキサンカルボキサニリド、2,4'−ジクロロアセトアニリド等のN−置換アミド等を挙げることができる。
【0060】
オキシカルボニル基としては、−COOR(R=H、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基)で示される基を挙げることができる。
【0061】
具体的には、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0062】
好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0063】
好ましいRで示される各基としては、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基又はシアノ基が良い。
【0064】
好ましいアリール基としては、フェニル基が良い。
【0065】
好ましい置換アリール基としては、ハロゲン原子置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基が良い。
【0066】
また、これらの置換基は、ハロゲン原子の場合は、1〜5個置換しているのが良い。
【0067】
アルコキシ基やトリフルオロメチル基の場合は、1個又は2個置換しているのが良く、1個置換の場合は、パラ位若しくはオルト位が好ましく、2個置換の場合は、メタ位が好ましい。
【0068】
好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0069】
好ましい一般式(2)で示される有機テルル化合物としては、Rが炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示し、R及びRが、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基で示される化合物が良い。
【0070】
特に好ましくは、Rが、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を示し、R及びRが、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0071】
一般式(2)で示される有機テルル化合物は、具体的には次の通りである。
【0072】
(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネートなど、上記特許文献3及び4等に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0073】
一般式(2)で示される有機テルル化合物の製造方法は特に限定されず、上記特許文献3及び4等に記載された公知の方法等により製造することができる。例えば、一般式(2)の化合物は、一般式(4)の化合物、一般式(5)の化合物及び金属テルルを反応させることにより製造することができる。
【0074】
【化4】

【0075】
(式中、R、R及びRは、上記と同じ。Xは、ハロゲン原子を示す。)
【0076】
Xで示される基としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン原子を挙げることができる。好ましくは、塩素、臭素が良い。
【0077】
【化5】

【0078】
(Rは、上記と同じ。Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は銅原子を示す。Mがアルカリ金属の時、mは1、Mがアルカリ土類金属の時、mは2、Mが銅原子の時、mは1または2を示す。)
【0079】
Mで示されるものとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、銅を挙げることができる。好ましくは、リチウムが良い。
【0080】
なお、Mがマグネシウムの時、一般式(5)の化合物はMg(Rでも、或いはRMgX(Xは、ハロゲン原子)で表される化合物(グリニャール試薬)でもよい。Xは、好ましくは、塩素、臭素が良い。
【0081】
本発明で使用する有機ジテルル化合物の他の例は、上記一般式(3)で表される。
【0082】
一般式(3)におけるRで示される基は、一般式(2)に示した通りである。
【0083】
好ましい一般式(3)で示される化合物としては、Rが炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基が良い。
【0084】
一般式(3)で示される化合物は、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが良い。
【0085】
また本発明では重合速度の促進を目的に、アゾ系重合開始剤を使用してもよい。アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。
【0086】
例えば、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1′−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0087】
これらのアゾ開始剤は反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。例えば低温重合(40℃以下)の場合は、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、中温重合(40〜80℃)の場合は、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート(MAIB)、1,1′−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2′−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、高温重合(80℃以上)の場合は、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いるのがよい。
【0088】
一般式(2)の化合物の使用量としては、得られるブロック共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、得られるブロック共重合体1000gに対し、一般式(2)の化合物を0.5〜20mmol、好ましくは1〜10mmolとするのが良い。
【0089】
一般式(2)の化合物と一般式(3)の化合物を併用する場合、その使用量としては、通常、一般式(2)の化合物1molに対して、一般式(3)の化合物0.01〜100mol、好ましくは0.05〜10mol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0090】
一般式(2)の化合物とアゾ系重合開始剤の使用割合は、通常、一般式(2)の化合物1molに対して、アゾ系重合開始剤0.01〜100mol、好ましくは0.1〜10molmol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0091】
一般式(2)の化合物、式(3)の化合物及びアゾ系重合開始剤を併用する場合、その使用量としては、通常、式(1)の化合物と式(2)の化合物の合計1molに対して、アゾ系重合開始剤0.01〜100mol、好ましくは0.1〜10mol、特に好ましくは0.1〜5molとするのが良い。
【0092】
反応は、無溶剤でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される有機溶媒或いは水性溶媒を使用して行うことができる。使用できる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2−ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパオール、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。また、水性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、例えば、得られるブロック共重合体1000gに対して、溶媒を0.01〜50L、好ましくは、0.05〜10Lが、特に好ましくは、0.1〜5Lが良い。
【0093】
次に、上記混合物を攪拌する。反応温度、反応時間は、得られるブロック共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0〜150℃で、1分〜100時間撹拌する。好ましくは、20〜100℃で、0.1〜30時間撹拌するのが良い。特に好ましくは、20〜80℃で、0.1〜15時間撹拌するのが良い。このように低い重合温度及び短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができる。この時、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧或いは減圧しても構わない。
【0094】
一般式(2)及び一般式(3)で表される有機テルル化合物を開始剤として用いる場合、−TeRの形態でテルル原子がポリマー末端に残存する場合がある(Rは、上記と同じ)。
【0095】
テルル原子が末端に残存したポリマーは着色しており、金属性の元素であるため、得られたブロック共重合体を配合した光学部品の透明性の向上や異物混入防止の観点から、この残存テルル原子を含めた金属含量は、樹脂全体に対して1000ppm以下であり、特に500ppm以下であることが好ましい。
【0096】
分子末端に残存するテルル原子は重合反応終了後、トリブチルスタナンやチオール化合物などの用いるラジカル還元方法や、さらに活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブス及び高分子吸着剤なで吸着する方法、イオン交換樹脂などで金属を吸着させる方法や、また、過酸化水素水や過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気や酸素を系中に吹き込むことでポリマー末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液−液抽出法や固−液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、また、これらの方法を組み合わせることもできる。
【0097】
反応終了後、常法により使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的のブロック共重合体を取り出したり、目的ブロック共重合体不溶溶媒を使用して再沈澱処理により目的物を単離することができる。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行う事ができる。
【0098】
また本発明において開始剤として用いる有機テルル化合物は水に対して安定であるため、本発明のブロック共重合体は、上記特許文献5等に記載された水系での重合方法により合成できる。
【0099】
即ち、エマルション重合法は界面活性剤を使用し、主にミセル中で重合する。必要に応じてポリビニルアルコール類等の水溶性高分子などの分散剤を用いても良い。これらの界面活性剤は1種類、又は2種類以上で組み合わせて使用することができる。かかる界面活性剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.3〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、界面活性剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0100】
懸濁重合法は分散剤を使用し、主にミセルを介さないで重合する。必要に応じてこれらの分散剤と共に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マンガン等の分散助剤を併用してもよい。かかる水分散安定剤の使用量は、全モノマー100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。又、水の使用量は、全モノマー100重量部に対して、50〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは70〜1500重量部である。重合温度は特に限定されないが、0〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、反応温度または用いるモノマー組成物の組成、水分散安定剤や重合開始剤の種類等に応じ、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。好ましくは24時間以内である。
【0101】
ミニエマルション重合法は界面活性剤及び共界面活性剤を使用し、ホモジナイザーや超音波装置を用いてモノマーを強制分散した後、主にミセルを介さないで重合する。かかる界面活性剤や共界面活性剤の使用量は、全モノマーに対して、0.3〜50重量部、特に好ましくは0.5〜50重量部である。超音波照射時間は、0.1〜10分、特に好ましくは0.2〜5分である。
【0102】
本発明のブロック共重合体は各セグメントを順次重合反応させことにより得られる。該ブロック共重合体は、モノマーの種類に関係なく、重合反応させるセグメントの順番によるポリマーを得ることができる。セグメントAとセグメントBを重合反応させブロック共重合体を得る場合、重合反応させる順番によりA−Bのものも、B−Aのものも得ることができ、その結果、A−B−AやB−A−BやA−B−A−B−AやB−A−B−A−Bといったトリブロック共重合体や、ペンタブロック共重合体等も得ることが可能である。
【0103】
上記で、各セグメントを重合反応後、そのまま次のセグメントの重合反応を開始しても良いし、一度重合反応を終了後、精製してから次のセグメントの重合反応を開始しても良い。ブロック共重合体の単離は通常の方法により行うことができる。
【0104】
本発明のブロック共重合体は、セグメントAとセグメントBとの重量比(A):(B)が1〜50:99〜50であり、より好ましくは5〜45:95〜55、特に好ましくは10〜40:90〜60とするのがよい。
【0105】
セグメントAが1重量部より少ないとブロック共重合体の自己組織化が起こりにくく、衝撃吸収成分(ソフトセグメント)として作用しないため好ましくなく、50重量部より多いとブロック共重合体の耐熱性が低下するため好ましくない。
【0106】
またブロック共重合体の物性改良を目的にセグメントA及びセグメントBとは異なるセグメントを導入し、例えばA−B−Cといったトリブロック共重合体としてもよい。
【0107】
またランダム共重合体、例えば、セグメントAとセグメントBをランダム共重合して得られる樹脂組成物は、前記の自己組織化が構造上起こらないため、耐熱性低下及び衝撃吸収性(柔軟性)低下がおこり、好ましくない。
【0108】
本発明で得られるブロック共重合体の分子量は、反応時間、一般式(2)の化合物の量及び一般式(3)の化合物の量により調整可能であるが、重量平均分子量50,000〜2,000,000とするのがよく、より好ましくは重量平均分子量100,000〜1,000,000のとするのがよい。重量平均分子量が50,000未満では得られるブロック共重合体の強度が十分でなく、重量平均分子量が2,000,000を超えると重合時のハンドリング性低下や、成形性が低下するため好ましくない。
【0109】
該ブロック共重合体中の分子量10,000未満の低分子量成分含有量が1重量%以下であることがよい。低分子量成分の含有量が1重量%より多いと機械特性の低下や、成形時に気泡が発生しやすく好ましくない。
【0110】
該ブロック共重合体の分子量分布(PD=Mw/Mn)は、1.05〜2.00の間で制御される。更に、分子量分布1.05〜1.80、更には1.05〜1.50のより狭い分子量分布を持ったブロック共重合体を得ることができる。分子量分布が2.00より大きいと樹脂組成物中の機械特性を落とす低分子量成分ならびに、成形時の流動特性を落とす高分子量成分の比率が増加するため好ましくない。
【0111】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を添加することもできる。添加剤としては、例えば染料、顔料、色素、蛍光増白剤、湿潤剤、表面張力調製剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、水溶性消光剤、酸化防止剤、香料、金属不活性剤、造核剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、シランカップリング剤等が挙げられ、これらは、樹脂組成物から得られる光学部品材料の用途や使用目的に応じて、適宜選択して配合される。
【実施例】
【0112】
<ポリマー組成物の合成>
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。また、実施例および比較例において、各種物性測定は以下の機器により測定を行った。
【0113】
H−NMR:ブルカー・バイオスピン AVANCE 500(500MHz)
ブルカー・バイオスピン AVANCE 300(300MHz)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC):
東ソー CCPCRE−8020(カラム:東ソー TSK−GEL GMHXL+TSK−GEL Multipore HXL−M、ポリスチレンスタンダード:東ソーTSK Standard)
【0114】
・合成例1(エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート)
金属テルル〔Aldrich社製、商品名:Tellurium(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF50mlに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム〔Aldrich社製、1.6Mヘキサン溶液〕34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物8.98g(収率59.5%)を得た。
【0115】
H−NMRよりエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピネートであることを確認した。
【0116】
H−NMR(500MHz,CDCl)0.93(t,J=7.5Hz,3H),1.25(t,J=7.2Hz,3H),1.37(m,2H),1.74(s,6H),1.76(m,2H),2.90(t,J=7.5Hz,2H,CHTe),4.14(q,J=7.2Hz,2H)
【0117】
・合成例2(アクリル酸1−アダマンチル)
1−アダマンタノール〔Aldrich社製〕50g(328mmol)をジクロロメタン300mLで希釈した溶液に、トリエチルアミン〔和光純薬社製〕45.5mL(328mmol)を加え撹拌した。アルゴン雰囲気下、氷浴で5℃以下に保ちながら塩化アクリロイル26.5mL(328mmol)〔和光純薬社製〕をゆっくりと滴下し、室温で一晩撹拌した。生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ過により取り除き、ジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩生成物水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ジクロロメタンをエバポレーターで留去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で単離し、目的物が含まれるフラクションを−20℃に冷却し、析出した結晶化を吸引ろ過、乾燥することにより白色結晶29.8g(収率44%)を得た。
【0118】
H−NMRよりアクリル酸1−アダマンチルであることを確認した。
【0119】
H−NMR(300MHz,CDCl)1.67(br,6H),2.15(br,9H),5.61(dd,J=1.6,10.3Hz,1H),5.91(dd,J=10.3,17.3Hz,1H),6.17(J=1.6,10.3Hz,1H)
【0120】
・実施例1(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマーの合成)
セグメントAの合成:アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート4.46μL(19.5μmol)、アクリル酸n−ブチル〔東京化成社製試薬を減圧蒸留により精製して使用〕0.5g(3.9mmol)、アニソール〔同上〕1.0g及び2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔同上〕1.2mg(3.9μmol)を50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は79%であった。またGPC分析より、Mn=22,000、PD=1.18であった。
【0121】
セグメントBの合成:次に上記で得られたセグメントAの反応溶液に、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル3.23g(15.7mmol)及びアニソール〔同上〕3.7gを添加し、50℃で4時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、アクリル酸1−アダマンチルの重合率は92%、アクリル酸n−ブチルの重合率は93%であった。
【0122】
反応終了後、上記ブロックポリマー溶液を撹拌しているメタノール500mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマー3.4g(収率81%)を得た。
【0123】
GPC分析より、Mn=190,000、PD=1.24であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。
【0124】
・実施例2(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマーの合成)
セグメントAの合成:アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート5.0μL(21.8μmol)、アクリル酸n−ブチル〔同上〕0.7g(5.5mmol)、アニソール〔同上〕1.4g及び2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔同上〕1.35mg(4.4μmol)を50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析により、重合率は89%であった。またGPC分析より、Mn=33,000、PD=1.14であった。
【0125】
セグメントBの合成:次に上記で得られたセグメントAの反応溶液に、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル3.39g(16.4mmol)及びアニソール〔同上〕4.1gを添加し、50℃で4時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、アクリル酸1−アダマンチルの重合率は90%、アクリル酸n−ブチルの重合率は96%であった。
【0126】
反応終了後、上記ブロックポリマー溶液を撹拌しているメタノール500mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマー3.3g(収率83%)を得た。
【0127】
GPC分析より、Mn=130,000、PD=1.21であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。
【0128】
・実施例3(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマーの合成)
セグメントAの合成:アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート3.75μL(16.4μmol)、アクリル酸n−ブチル〔同上〕0.7g(5.5mmol)、アニソール〔同上〕1.4g及び2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔同上〕1.01mg(3.3μmol)を50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は86%であった。またGPC分析より、Mn=38,000、PD=1.19であった。
【0129】
セグメントBの合成:次に上記で得られたセグメントAの反応溶液に、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル2.26g(11.0mmol)及びアニソール〔同上〕3.0gを添加し、50℃で4時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、アクリル酸1−アダマンチルの重合率は85%、アクリル酸n−ブチルの重合率は95%であった。
【0130】
反応終了後、上記ブロックポリマー溶液を撹拌しているメタノール100mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマー3.3g(収率79%)を得た。
【0131】
GPC分析より、Mn=119,000、PD=1.23であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。
【0132】
・実施例4(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマーの合成)
セグメントBの合成:アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート4.7μL(20.6μmol)、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル2.13g(10.3mmol)、アニソール〔同上〕3.45g及び2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔同上〕1.27mg(4.1μmol)を50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は95%であった。またGPC分析より、Mn=112,000、PD=1.29であった。
【0133】
セグメントAの合成:次に上記で得られたセグメントBの反応溶液に、アクリル酸n−ブチル〔同上〕1.32g(10.3mmol)及びアニソール〔同上〕1.32gを添加し、50℃で3.3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、アクリル酸1−アダマンチルの重合率は99%、アクリル酸n−ブチルの重合率は89%であった。
【0134】
反応終了後、上記ブロックポリマー溶液を撹拌しているメタノール100mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマー2.57g(収率74%)を得た。
【0135】
GPC分析より、Mn=129,000、PD=1.44であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。
【0136】
・比較例1(ポリアクリル酸1−アダマンチルの合成)
15mLメスフラスコに、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル 3.1g(15mmol)及び2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)〔和光純薬社製試薬をメタノール中で再結晶により精製〕2.46mg(0.015mmol)を入れ、トルエン〔和光純薬社製試薬を減圧蒸留により精製して使用〕を加えて15mLの溶液とした。パイレックス(登録商標)管に溶液を移し、凍結−脱気−融解のサイクルを5回繰り返して溶存酸素を除いた後、熔封してアンプルとした。60℃で16時間反応させた後、ドライアイス/メタノール(−78℃)で冷却し重合を停止させ、撹拌しているメタノール500mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸1−アダマンチル2.4g(収率78%)を得た。
【0137】
GPC分析より、Mn=132,000、PD=2.9であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は2.1重量%であった。
【0138】
・比較例2(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルランダムコポリマーの合成)
15mLメスフラスコに、アクリル酸n−ブチル〔同上〕0.38g(3mmol)、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル 2.48g(12mmol)及び2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)〔同上〕2.46mg(15μmol)を入れ、トルエンを加えて15mLの溶液とした。パイレックス(登録商標)管に溶液を移し、凍結−脱気−融解のサイクルを5回繰り返して溶存酸素を除いた後、熔封してアンプルとした。60℃で16時間反応させた後、ドライアイス/メタノール(−78℃)で冷却し重合を停止させ、撹拌しているメタノール500mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルランダムコポリマー2.32g(収率81%)を得た。
【0139】
GPC分析より、Mn=95,000、PD=2.9であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は2.0重量%であった。
【0140】
・比較例3(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルランダムコポリマーの合成)
15mLメスフラスコに、アクリル酸n−ブチル〔同上〕0.64g(5mmol)、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル 2.07g(10mmol)及び2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)〔同上〕2.46mg(15μmol)を入れ、トルエンを加えて15mLの溶液とした。パイレックス(登録商標)管に溶液を移し、凍結−脱気−融解のサイクルを5回繰り返して溶存酸素を除いた後、熔封してアンプルとした。60℃で16時間反応させた後、ドライアイス/メタノール(−78℃)で冷却し重合を停止させ、撹拌しているメタノール500mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色ゴム状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルランダムコポリマー1.95g(収率72%)を得た。
【0141】
GPC分析より、Mn=98,000、PD=2.9であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。結果を表1に示した。
【0142】
・比較例4(ポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマーの合成)
セグメントBの合成:アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート6.0μL(26.2μmol)、合成例2で得たアクリル酸1−アダマンチル1.35g(6.5mmol)、アニソール〔同上〕3.85g及び2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)〔同上〕1.61mg(5.3μmol)を50℃で2時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、重合率は94%であった。またGPC分析より、Mn=37,000、PD=1.27であった。
【0143】
セグメントAの合成:次に上記で得られたセグメントBの反応溶液に、アクリル酸n−ブチル〔同上〕2.51g(19.5mmol)及びアニソール〔同上〕2.51gを添加し、50℃で3時間反応させた。H−NMR(300MHz)分析より、アクリル酸1−アダマンチルの重合率は96%、アクリル酸n−ブチルの重合率は66%であった。
【0144】
反応終了後、上記ブロックポリマー溶液を撹拌しているメタノール100mL中に注ぎ、沈殿したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより白色粉末状のポリアクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸1−アダマンチルジブロックコポリマー2.47g(収率64%)を得た。
【0145】
GPC分析より、Mn=112,000、PD=1.29であった。また分子量10,000未満の低分子量成分含有量は0重量%であった。
【0146】
<物性評価>
〔透明性評価〕
実施例1〜4、比較例1〜4及びポリメタクリル酸メチル〔和光純薬社製〕(比較例5)の100μm厚キャストフィルムを作製した。得られたキャストフィルムの全光線透過率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製、JACSO V−500)を用い、測定波長380nmで測定した。結果を表1に示した。
【0147】
〔耐熱性評価〕
実施例1〜4、比較例1〜4及び比較例5のガラス転移温度及び熱分解温度の測定を行った。ガラス転移温度及び熱分解温度は次のように測定し、結果を表1に示した。
【0148】
・ガラス転移温度(Tg)
示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC6200)を用いて、ポリマー組成物のガラス転移温度を測定した。窒素気流下25℃から10℃/分で昇温することにより得られたガラス転移温度を測定した。
【0149】
・熱分解温度
熱重量測定計(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて、ポリマー組成物の熱分解温度を測定した。窒素気流下25℃から10℃/分で昇温させることにより得られた質量変化曲線にて質量が5%減少した時の温度を熱分解温度とした。
【0150】
〔機械特性評価〕
実施例1、実施例3、実施例4、比較例1、比較例3及び比較例4を150℃で1時間圧縮成形し、1BA型のダンベル試験片を作成した。得られたダンベル試験片をJIS K7161に準じ弾性率を測定した。結果を表1に示した。比較例1は、成形時に割れたため、弾性率を測定するダンベル試験片を成形することができなかった。比較例4は、柔らかいため、弾性率を測定するダンベル試験片を成形することができなかった。
【0151】
【表1】

【0152】
上記の物性評価から以下のことが分かる。
【0153】
ブロック共重合体である実施例1〜実施例4は、ランダム共重合体である比較例2及び比較例3、並びにソフトセグメント比が高いブロック共重合体である比較例4より透過率が優れている。更にホモポリマーである比較例1より透過率が優れている。
【0154】
ブロック共重合体である実施例1〜4は、自己組織化によりハードセグメント由来のTgが比較例5(PMMA)以上の温度で観測され耐熱性に優れている。ハードセグメント(セグメントB)から順に合成を行った実施例4では、ハードセグメントにソフトセグメント由来のモノマーが入っていないため、ホモポリマーと同等の高いTgが観測された。一方、ランダム共重合体である比較例2及び比較例3のTgは、自己組織化がおこらないため低く、更に比較例5(PMMA)以下であり十分な耐熱性がない。また、比較例5(PMMA)は、主鎖がメタクリレート構造であることから解重合による熱分解が低温で起こり、熱分解温度が実施例1〜4及び比較例1〜4と比較し約100℃低い。
【0155】
ハードセグメントのホモポリマーである比較例1は、脆くダンベル試験片を作成することができなかったが、ブロック共重合体である実施例1、実施例3及び実施例4はソフトセグメントにより脆さが改善しダンベル試験片を作成できた。
【0156】
以上のように、本発明においては、耐熱性、透明性及び機械特性に優れた(メタ)アクリレート樹脂組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたガラス転移温度が30℃以下であるセグメントAと、
以下の一般式(1)で表わされるアダマンタン構造を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として重合されたガラス転移温度が105℃以上であるセグメントBと、
を含むブロック共重合体からなり、セグメントAとセグメントBの重量比(A:B)が、1〜50:99〜50であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数3〜20のシクロアルキル基から選ばれる基を示す。Rは水素原子またはメチル基を示す。Yは、フェニル基、炭素数1〜20のアルキレン基及び炭素数3〜20のシクロアルキレン基から選ばれる基を示す。nは0または1である。)
【請求項2】
有機テルル化合物系重合開始剤を用いたリビングラジカル重合法で重合することにより得られ、有機テルル化合物系重合開始剤が、
(a)一般式(2)で表される有機テルル化合物、
(b)一般式(2)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)一般式(2)で表される有機テルル化合物と一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)一般式(2)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び一般式(3)で表される有機ジテルル化合物の混合物
のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。)
【請求項3】
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が50,000〜2,000,000の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体中の分子量10,000未満の低分子量成分含有量が1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項5】
ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が、1.05〜2.00の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項6】
光学部品用であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項7】
光学レンズ用であることを特徴とする請求項6に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする光学部品。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造する方法であって、
有機テルル化合物系重合開始剤を用いたリビングラジカル重合法で、
セグメントA及びセグメントBのうちの一方のセグメントを構成するモノマーを重合して、一方のセグメントを重合する工程と、
一方のセグメントを重合した後、セグメントA及びセグメントBのうちの他方のセグメントを構成するモノマーを重合して、他方のセグメントを重合する工程とを備えることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。


【公開番号】特開2012−233041(P2012−233041A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101240(P2011−101240)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】