説明

(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法

【課題】本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及びこの分解物である(メタ)アクリル酸の残存量を低減し、臭気の少ない(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得ることができる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50℃以上で且つ上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度未満の条件下にてアルカリ性水性媒体で処理した後、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50〜120℃の水性媒体で洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子中の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及びその分解物を低減して臭気の少ない(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得ることができる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、化粧品の滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、合成樹脂フィルムのアンチブロッキング剤として用いられている。
【0003】
この(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、通常、水性懸濁重合によって製造されているが、得られる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子中には、通常1重量%以上の残存モノマーが残存している。
【0004】
この残存モノマーは、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子が化粧品や食品包装材料の用途に用いられた場合には、化粧品や食品に臭気が移行するといった問題点を有している。
【0005】
そこで、特許文献1には、樹脂粒子径が0.1〜100μmである(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分とした樹脂粒子を、50℃以上であって該樹脂粒子の熱分解開始温度より10℃低い温度以下の条件下で、アルカリ性水性媒体中で処理することを特徴とする、前記樹脂粒子中に残存する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を低減する方法が提案されている。
【0006】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体を低減する方法では、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子中の残存モノマーを低減することができるものの、アルカリ性水性媒体中での処理によって(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが分解して(メタ)アクリル酸が生じ、この(メタ)アクリル酸に起因した臭気が依然として残るという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−322836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及びこの分解物である(メタ)アクリル酸の残存量を低減し、臭気の少ない(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得ることができる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50℃以上で且つ上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度未満の条件下にてアルカリ性水性媒体で処理した後、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50〜120℃の水性媒体で洗浄することを特徴とする。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0010】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、汎用の重合方法を用いて重合されたものを用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び重合開始剤を分散安定剤の存在下にて水性媒体中に分散させて攪拌しながら懸濁重合させて(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を製造する方法の他に、乳化重合、シード重合、塊重合、溶液重合などの汎用の重合方法を用いて(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。なお、水性媒体としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールやそれらの混合物などが挙げられ、水が好ましい。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0012】
又、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーにこの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共重合可能なモノマーを含有させてもよい。このようなモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、αーメチルスチレン、酢酸ビニル、アクリルニトリルなどのビニル基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0013】
更に、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーに、ビニル基を複数個有する架橋性モノマーが含有されてもよい。このような架橋性モノマーとしては、例えば、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリストール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコールなどの(メタ)アクリル酸系モノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。架橋性モノマーは単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0014】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤が挙げられる。
【0015】
又、分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩などのカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどの両性界面活性剤などが挙げられる。なお、分散安定剤は単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0016】
次に、得られた(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理する。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理する要領としては、上述の重合方法で得られた(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を一旦、分離した後、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を分散安定剤が含有された水性媒体中に分散させると共に水性媒体中に水溶性アルカリ化合物を加えてアルカリ性水性媒体とし、このアルカリ性水性媒体中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を好ましくは0.2〜5時間程度処理する方法、上述の重合方法で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を重合し、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子が分散されている重合液中に水溶性アルカリ化合物を加えてアルカリ性水性媒体とし、このアルカリ性水性媒体中で(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を好ましくは0.2〜5時間程度処理する方法などが挙げられる。なお、水性媒体としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールやそれらの混合物などが挙げられる。水溶性アルカリ化合物の添加量は、水性媒体100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0017】
水溶性アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、ピロリン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウムなどのアルカリ性化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムブチルメトキシドなどのアルカリ金属のアルコキシドなどが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0018】
又、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理する際の水性媒体の温度は、低いと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子中の残存モノマーを低減させるのに長時間を要し、高いと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が分解し、かえって(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが増加するので、50℃以上で且つ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度未満に限定され、50℃以上で且つ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度より10℃低い温度以下が好ましい。
【0019】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度とは、ガスクロマトグラフ法にてインジェクション部を予め所定温度に加温しておき、試料を注入したとき、熱分解反応が進行してモノマーが検出されるときの温度をいう。
【0020】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子1gに溶剤25ミリリットル及び内部標準液1ミリリットルを加えて12時間以上放置し、液相部を測定試料とする。この測定試料に基づいて例えば下記測定条件にて熱分解開始温度を測定することができる。
(測定条件)
使用装置:島津製作所製 ガスクロマトグラフィ GC−14A
カラム充填剤 :液相 PEG−20M
担体 Chromosorb W
検出器 :FID
キャリアーガス:窒素
カラム温度 105℃
【0021】
このようにして(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理した後、水性媒体中に必要に応じて塩酸などの酸を添加して分散安定剤を分解した後、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を汎用の要領で水性媒体から分離し、洗浄、脱水して(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得ることができる。
【0022】
このようにして(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子中に残存している(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを低減することができるが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理しているために、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが分解して(メタ)アクリル酸を生じ、この(メタ)アクリル酸が臭いの原因となっている。
【0023】
そこで、本発明では、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をアルカリ性水性媒体で処理した後に50〜120℃の水性媒体で洗浄することによって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸の含有量を低減化して臭いを抑えている。
【0024】
具体的には、上述のようにしてアルカリ性水性媒体で処理して得られた(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を水性媒体中に分散させて水性媒体が50〜120℃となるように必要に応じて加圧下にて加熱、維持しながら攪拌し、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含有されている(メタ)アクリル酸を水性媒体中に溶出させることによって(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸を除去し、(メタ)アクリル酸を低減化する。なお、水性媒体としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコールなどが挙げられ、水が好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を分散させる水性媒体の量は、少ないと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸を水性媒体中に円滑に溶出、除去することができないことがあり、多いと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の処理効率が低下することがあるので、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を構成している(メタ)アクリル酸エステル系樹脂100重量部に対して200〜400重量部が好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を処理する水の温度は、低いと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸を水性媒体中に溶出させるのに長時間を要する一方、高いと、樹脂が熱分解したり、高圧に耐える処理槽が必要となり設備費が高くなるので、50〜120℃に限定され、70〜105℃がより好ましい。
【0027】
又、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を水で処理する時間は、短いと、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸を水性媒体中に充分に溶出させて除去することができないことがある一方、長くても、(メタ)アクリル酸の除去効果に殆ど差異はないので、1〜8時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
【0028】
そして、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を洗浄する水性媒体中には必要に応じて上述した分散安定剤を含有させてもよく、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。分散安定剤を水性媒体中に含有させることによって水性媒体中に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を安定的に分散させて(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に含まれている(メタ)アクリル酸をより確実に水性媒体中に溶出させて低減することができる。
【0029】
又、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を洗浄する水性媒体のpHは、5〜9が好ましく、6〜8がより好ましい。水性媒体のpHが低いと、(メタ)アクリル酸の溶出、除去の効果が充分に得られないことがある。水性媒体のpHは低すぎても高すぎても(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子への酸又はアルカリの残留が懸念されるため好ましくない。
【0030】
上述のようにして50〜120℃の水性媒体で洗浄された(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を汎用の要領で水性媒体から分離し、洗浄、脱水して(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得ることができる。
【0031】
このようにして得られた(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、残存モノマー量が少ないと共にアルカリ性水性媒体による処理によって生じる(メタ)アクリル酸量も少なく、残存モノマーや(メタ)アクリル酸に起因した臭気が少ない。
【0032】
従って、本発明によって得られた(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、化粧品や食品包装材料などのような臭気を嫌う用途にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法は、所定条件下にてアルカリ性水性媒体で処理された(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50〜120℃の水性媒体で洗浄しているので、得られる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は残存モノマー及びアルカリ性水性媒体による処理中に生じた(メタ)アクリル酸の量が少なく、残存モノマーや(メタ)アクリル酸に起因した臭気が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(樹脂粒子の平均粒子径)
樹脂粒子の平均粒子径を電気抵抗法によって測定した。具体的には、アパチャー(細孔)の両側に電極が配設されたアパチャー・チューブを、測定対象となる樹脂粒子が電解液中に懸濁されてなる懸濁液中に浸漬した状態とした。
【0035】
アパチャー・チューブの電極間に上記懸濁液を介して電流を流し、電極間の電気抵抗を測定する。懸濁液中の樹脂粒子が吸引されてアパチャーを通過する時に樹脂粒子の体積に相当する電解液が置換されて、電極間の電気抵抗に変化が生じる。この電気抵抗の変化量は粒子の大きさに比例することから、上記電気抵抗の変化量を電圧パルスに変換して増幅、検出することによって粒子体積を算出することができ、この算出された粒子体積に相当する真球の直径を樹脂粒子の粒径とした。
【0036】
そして、樹脂粒子の平均粒子径は、上記の如くして測定された各樹脂粒子の粒径の相加平均をとることにより算出した。
【0037】
具体的には、ガラス製の試験管に樹脂粒子0.1gと0.1重量%非イオン系界面活性剤溶液10ミリリットルを投入してタッチミキサー(ヤマト科学社製 商品名「タッチミキサー TOUCH MIXER MT-31 」)を用いて2秒間に亘って攪拌、混合した後、試験管内の溶液を、超音洗浄機(ヴェルヴォクリーア製 商品名「ULTRASONIC CLEANER VS-150 」)を用いて10秒間に亘って予備分散させた。
【0038】
そして、この予備分散させた試験管内の溶液を、測定装置(ベックマンコールター株式会社 商品名「コールターマルチサイザーII」)に付属の測定用電解液(ベックマンコールター社製 商品名「ISOTON2」)を満たしたビーカー中に緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、測定装置の画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。
【0039】
次に、測定装置にアパチャーサイズ、Current 、Gain及びPolarityを、ベックマンコールター株式会社発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER (1987)に従って入力し、manualモードで測定を行った。なお、測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。
【0040】
(残留モノマー量)
樹脂粒子1gに二硫化炭素25ミリリットル及び内部標準1ミリリットルを加えて24時間放置した後、1.8マイクロリットルを採取してガスクロマトグラフに下記条件にて注入した。なお、内部標準は、二硫化炭素75ミリリットルにトルエン0.1ミリリットルを加えたものとした。
【0041】
又、二硫化炭素25ミリリットル及び内部標準1ミリリットルからなる混合溶液に測定対象となるモノマー0.01gを溶解させた液1.8マイクロリットルを採取しガスクロマトグラフに注入して検量線(1%に相当する)を作成しておき、この検量線に基づいて残存モノマーを算出した。
使用装置:島津製作所製 ガスクロマトグラフィ GC−14A
カラム充填剤 :液相 PEG−20M
担体 Chromosorb W
検出器 :FID
キャリアーガス:窒素
カラム温度 :105℃
注入口温度 :110℃
【0042】
(実施例1)
脱イオン水400重量部に複分解ピロリン酸マグネシウム6重量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部を溶解させた。次に、上記脱イオン水に、メタクリル酸メチル90重量部、ジメタクリル酸ジエチレングリコール10重量部及び過酸化ベンゾイル0.3重量部を添加して攪拌装置(特殊機化製 卓上型TKホモミキサー)を用いて回転数6000rpmにて攪拌し分散させて懸濁液を作製した。
【0043】
次に、上記懸濁液を60℃にて6時間に亘って攪拌しながら懸濁重合を行って平均粒子径が9.6μmのポリメタクリル酸メチル粒子を得た。なお、ポリメタクリル酸メチル粒子中に残存するメタクリル酸メチル量は2500ppmであった。ポリメタクリル酸メチル粒子を構成しているポリメタクリル酸メチルの熱分解開始温度は120℃であった。
【0044】
次に、重合後の懸濁液にこの懸濁液100重量部に対して2重量部の割合にて水酸化ナトリウムを加えた上で、懸濁液を100℃にて3時間に亘って攪拌した後に冷却した。しかる後、懸濁液に塩酸を添加して複分解ピロリン酸マグネシウムを分解した後、懸濁液を濾過してポリメタクリル酸メチル粒子を分離し洗浄してポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0045】
攪拌機及び温度計を備えた反応器に、ポリメタクリル酸メチル粒子100重量部、脱イオン水300重量部、分散安定剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、pH調整剤としてリン酸2水素カリウム0.4重量部及びリン酸水素2ナトリウム1.2重量部を供給して100℃にて5時間に亘って攪拌して懸濁させた。なお、懸濁液のpHは6.8であった。
【0046】
次に、懸濁液を冷却後、懸濁液からポリメタクリル酸メチル粒子を濾過し分離した後、ポリメタクリル酸メチル粒子を洗浄、脱水して乾燥させた。得られたポリメタクリル酸メチル粒子中に含有されるメタクリル酸メチルを測定したところ、メタクリル酸メチルは検出されなかった。なお、測定装置の検出限界は20ppmであった。
【0047】
又、ポリメタクリル酸メチル粒子の臭いを10人に嗅がせたところ、全ての者は臭いがしないと判断した。
【0048】
(実施例2)
脱イオン水400重量部に複分解ピロリン酸マグネシウム6重量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部を溶解させた。次に、上記脱イオン水に、メタクリル酸エチル95重量部、ジビニルベンゼン5重量部及び過酸化ベンゾイル0.3重量部を添加して攪拌装置(特殊機化製 卓上型TKホモミキサー)を用いて回転数3000rpmにて攪拌し分散させて懸濁液を作製した。
【0049】
次に、上記懸濁液を60℃にて6時間に亘って攪拌しながら懸濁重合を行って平均粒子径が23.4μmのポリメタクリル酸エチル粒子を得た。なお、ポリメタクリル酸エチル粒子中に残存するメタクリル酸エチル量は3600ppmであった。ポリメタクリル酸エチル粒子を構成しているポリメタクリル酸エチルの熱分解開始温度は120℃であった。
【0050】
重合後の懸濁液に水酸化ナトリウムを添加して実施例1と同様の要領で処理した後、実施例1と同様の要領で懸濁液からポリメタクリル酸エチル粒子を分離、洗浄した。
【0051】
攪拌機及び温度計を備えた反応器に、ポリメタクリル酸エチル粒子100重量部、脱イオン水300重量部、分散安定剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.1重量部、pH調整剤としてリン酸2水素カリウム0.4重量部及びリン酸水素2ナトリウム1.2重量部を供給して100℃にて3時間に亘って攪拌して懸濁させた。なお、懸濁液のpHは6.8であった。
【0052】
次に、懸濁液を冷却後、懸濁液からポリメタクリル酸エチル粒子を濾過し分離した後、ポリメタクリル酸エチル粒子を洗浄、脱水して乾燥させた。得られたポリメタクリル酸エチル粒子中に含有されるメタクリル酸エチルを測定したところ、メタクリル酸エチルは検出されなかった。又、ポリメタクリル酸エチル粒子の臭いを10人に嗅がせたところ、全ての者は臭いがしないと判断した。
【0053】
(比較例1)
ポリメタクリル酸メチル粒子を100℃の脱イオン水で洗浄しなかったこと以外は実施例1と同様の要領でポリメタクリル酸メチル粒子を得た。得られたポリメタクリル酸メチル粒子中に含有されるメタクリル酸メチルを測定したところ、メタクリル酸メチルは検出されなかった。又、ポリメタクリル酸メチル粒子の臭いを10人に嗅がせたところ、8人が臭いを有すると判断した。
【0054】
(比較例2)
ポリメタクリル酸メチル粒子を脱イオン水で洗浄する際の温度を100℃の代わりに40℃としたこと以外は実施例1と同様にしてポリメタクリル酸メチル粒子を得た。
【0055】
得られたポリメタクリル酸メチル粒子中に含有されるメタクリル酸メチルを測定したところ、メタクリル酸メチルは検出されなかった。又、ポリメタクリル酸メチル粒子の臭いを10人に嗅がせたところ、5人が臭いを有すると判断した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50℃以上で且つ上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の熱分解開始温度未満の条件下にてアルカリ性水性媒体で処理した後、上記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50〜120℃の水性媒体で洗浄することを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を50〜120℃の水性媒体で1〜8時間に亘って洗浄することを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子をpH5〜9の水性媒体で洗浄することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−222406(P2010−222406A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68634(P2009−68634)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】