説明

(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法

本発明は、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを25〜99重量%含んでいる反応混合物を蒸留することによる(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールは、医薬、特にデュロキセチン[Duloxetin(登録商標)](EliLilly&Co社(米国)の医薬活性化合物)を製造するための重要な中間体である。
【0003】
(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製は、これまでに開示されている。一般的な調製方法では(これは特許文献1に詳細に記載されている)、AlClの存在下でチオフェンと3−クロロプロピオニルクロリドを反応させ、そのあと光学異性選択的にそのケト基をヒドロキシル基に還元し、これを直接アミノ化して(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを生成させることが行われる。得られた(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールは、このあと、再結晶、好ましくはメチルt−ブチルエーテルからの再結晶により精製される。
【0004】
(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製は、特許文献2にも開示されている。このケースでも、得られた(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールは、メチルt−ブチルエーテルからの結晶化により精製される。
【0005】
(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製は、特許文献3にも開示されている。このケースでも、得られた(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールは、メチルt−ブチルエーテルからの結晶化により精製される。
【0006】
上記した(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法は、収率が大きく損なわれていることを特徴としている。
【特許文献1】独国特許出願公開第10348479号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/031168号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/005307号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高い化学純度と光学異性純度で且つ高い収率でこの価値ある生成物を与える、また正当化できるコストでもって工業規模で実施することも可能であるべき、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法を、利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、この課題が、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを25〜99重量%含んでいる反応混合物を蒸留することによる(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法によって達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「反応混合物」という用語は、以下のとおりの意味を有しているものとする。つまり、反応混合物は、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製反応に由来する未精製混合物、すなわち、例えばメチルアミンと(1S)−3−クロロ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールとからなる反応混合物であり得る。しかしながら、「反応混合物」は、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製経路に応じて、他の共反応物質からなる混合物でもあり得る。また、用語「反応混合物」には、精製されたまたはある程度精製された反応生成物(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールも包含される。一種以上の溶媒中の(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの溶液も、「(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを含んでいる反応混合物」であると理解するものとする。
【0010】
上記で既に述べてあるように、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの一つの調製経路が独国特許出願公開第10348479号明細書に詳細に開示されている。この文献は、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製との関連で、参照により明示的に本明細書に組み込む。
【0011】
しかしながら、本発明による方法はまた、他の方法、例えば国際公開第2004/031168号パンフレットや国際公開第2004/005307号パンフレットに記載されている方法で調製された(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールに対して用いても非常にうまくいく。これらの文献も、同様に、参照により明示的に本明細書に組み込む。(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの他の調製経路を思い付くこともあり得る。例えば光学異性選択的にケト基をヒドロキシル官能基に酵素的手段によって還元する経路あるいは独国特許出願公開第10348479号明細書に記載されているその反応順序を逆転する、すなわち直接3−クロロ−1−(2−チエニル)−1−プロパノンをアミノ化し、その後それを還元して(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを生成させる経路などである。本発明による方法は、これらの調製方法すべてに対して、また同時に本明細書で具体的に言及されていない他の(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの調製方法に対しても、適したものである。
【0012】
反応混合物は、通常、この価値ある生成物(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを25〜99重量%好ましくは40〜98重量%の量で、特に好ましくは50重量%超の量で含んでいるものである。
【0013】
反応混合物中にこの(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールが25重量%未満の量で存在している場合は、通常、蒸留の前に、例えば溶媒を除去することによりあるいは(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを抽出によって濃縮することにより濃縮操作を行うことが望ましい。
【0014】
蒸留は、例えば化学技術便覧(例えばUllmannのやWinnacker−Kuechlerの)に記載されているような、当業者には知られている種々の方式で行うことができる。
【0015】
本発明による方法の特に好ましい方式は、いわゆる短行程蒸留または分子蒸留である。ここで、蒸留は、蒸発空間と凝縮空間との間のできるだけ短く且つ直線的な行程を用いて行われる。
【0016】
この専門業界で販売に供されている、商業的に入手可能な分子蒸留装置も非常に適している。本発明による方法は、一つの操作で、(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを、思いもかけない高い化学収率で、また同時に高い純度で、単離することを可能にするものである。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
(1S)−3−メチルアミノ−1−チエニル−1−プロパノールをおよそ90%含んでいる黄色っぽい原料500gを、分子蒸留装置で0.05ミリバール、蒸発温度120℃で蒸留した。純白の留出物420g(収率93%)を、含有量が>99%の無色の固体として得た。
【0018】
(実施例2)
(1S)−3−メチルアミノ−1−チエニル−1−プロパノールをおよそ50%含んでいる暗褐色の原料500gを、分子蒸留装置で0.05ミリバール、蒸発温度150℃で蒸留した。純白の留出物221g(収率88%)を、含有量が>99%の無色の固体として得た。
【0019】
(実施例3)
(1S)−3−メチルアミノ−1−チエニル−1−プロパノールをおよそ98%含んでいる黄色っぽい原料500gを、分子蒸留装置で0.05ミリバール、蒸発温度100℃で蒸留した。純白の留出物455g(収率93%)を、含有量が>99%の無色の固体として得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールを25〜99重量%含んでいる反応混合物を蒸留することによる(1S)−3−メチルアミノ−1−(2−チエニル)−1−プロパノールの精製方法。
【請求項2】
蒸留が0.0001〜1ミリバールの圧力範囲で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸留が分子蒸留として行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蒸留が50〜250℃の温度で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−526703(P2008−526703A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548766(P2007−548766)
【出願日】平成17年12月31日(2005.12.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014161
【国際公開番号】WO2006/072465
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】