説明

(3aR,4S,6R,6aS)−6−アミノ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−オール・ジベンゾイル−L−タータレートの調製のためのプロセスおよび前記プロセスの産物

本発明は、式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩の調製のためのプロセス、および前記プロセスの産物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(III)
【0002】
【化1】

【0003】
の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩の調製のためのプロセス、前記プロセスの産物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
Ranganathan, S.およびGeorge, K. S. Tetrahedron, 1997, 53, 3347は、化合物(I)
【0005】
【化2】

【0006】
の合成を記載する。
Jung, M.ら Helv. Chim. Acta, 1983, 66, 1915、ならびにRanganathan, S.およびGeorge, K. S. Tetrahedron, 1997, 53, 3347は、ラセミ化合物(II)
【0007】
【化3】

【0008】
の合成を開示する。
WO99/05142、Shireman, B. T.およびMiller, M. J. Tetrahedron Lett., 2000, 41, 9537、ならびにRajappan, V. P.ら Synth. Commun. 2001, 31, 2849において、化合物(III)
【0009】
【化4】

【0010】
の遊離アミンまたは塩酸塩のいずれかの合成が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO99/05142
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ranganathan, S.およびGeorge, K. S. Tetrahedron, 1997, 53, 3347
【非特許文献2】Jung, M.ら Helv. Chim. Acta, 1983, 66, 1915
【非特許文献3】Shireman, B. T.およびMiller, M. J. Tetrahedron Lett., 2000, 41, 9537
【非特許文献4】Rajappan, V. P.ら Synth. Commun. 2001, 31, 2849
【発明の概要】
【0013】
本発明は、式(III)
【0014】
【化5】

【0015】
の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式(II)
【0016】
【化6】

【0017】
の化合物を、鏡像異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸またはその一水和物と混合して、ジアステレオ異性塩を形成し、そして
(b)前記塩を結晶化させる
工程を含む、前記プロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にしたがったプロセスは、式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩の大規模産生に特に有用である。
式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩の調製のためのプロセスは、当該技術分野に知られるように調製可能な式(II)の化合物から出発してもよい。次いで、鏡像異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸またはその一水和物を用い、対応する式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩を得て、ジアステレオ異性的に純粋な塩を結晶化させることによって、式(II)の化合物を分割し、所望の(3aS,4R,6S,6aR)鏡像異性体を作製する。
【0019】
あるいは、式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩の調製のためのプロセスは、当該技術分野に知られるように調製可能な式(I)の化合物から出発してもよい。当該技術分野に知られるように、化合物(I)を化合物(II)に変換する。続いて、鏡像異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸またはその一水和物を用い、対応する式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋な塩を得て、ジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩を結晶化させることによって、式(II)の化合物を分割し、所望の(3aS,4R,6S,6aR)鏡像異性体を作製する。
【0020】
以下のスキームは、ジベンゾイル−L−酒石酸および式(III)の化合物間のジアステレオ異性的に純粋な1:1塩の調製のためのプロセスを例示する:
【0021】
【化7】

【0022】
本発明の1つの態様は、式(III)の化合物のジベンゾイル−L−タータレートの調製のためのプロセスである。本発明のさらなる態様は、ジベンゾイル−L−酒石酸および式(III)の化合物間の1:1塩である。前記塩はまた、(3aR,4S,6R,6aS)−6−アミノ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−オール(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート、(3aR,4S,6R,6aS)−6−アミノ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−オール(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)スクシネートまたは(3aR,4S,6R,6aS)−6−アミノ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−オール・ジベンゾイル−L−タータレートとも命名可能である。
【0023】
分割工程で使用するのに適した鏡像異性的に純粋な酸は、(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパン酸または(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)コハク酸とも命名される、ジベンゾイル−L−酒石酸である。
【0024】
式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋な塩を生じる分割工程に有用な溶媒は、脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノールおよびt−ブタノールなど);ニトリル(アセトニトリルなど);テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチレングリコール、セロソルブ(エトキシエタノール)、メトキシエタノール、イソプロポキシエタノールのようなモノエーテルなどの極性エーテル;脂肪族エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルまたは酢酸イソプロピルなど);極性非プロトン性溶媒(N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチル−ホルムアミドなど);およびその混合物から選択可能である。また、分割工程は、水中または水を含む溶液および上に列挙する有機溶媒の任意の1つの中で実行可能である。
【0025】
本発明の1つの態様において、工程(a)における溶媒は、脂肪族アルコール;ニトリル;エーテル;脂肪族エステル;極性非プロトン性溶媒;水およびその混合物から選択される。
【0026】
本発明のさらなる態様において、工程(a)における溶媒は、水および脂肪族アルコール、あるいは水および極性エーテル溶媒またはニトリルの混合物である。
本発明のさらなる態様において、工程(a)における溶媒は、水およびメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、セロソルブ(エトキシエタノール)、メトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、テトラヒドロフランまたはアセトニトリルの混合物である。
【0027】
本発明のさらなる態様において、工程(a)における溶媒は、水およびエタノールの混合物である。
式(III)の化合物のジアステレオ異性的に純粋な塩を生じる分割工程は、まず、0℃から、溶媒の沸点までの温度で行われて、構成要素または形成されたジアステレオ異性塩を完全に溶解する。構成要素が溶解したら、溶液温度を−50℃〜+50℃の温度に調節して、化合物(III)の結晶塩を得る。その後、この塩を、上で使用したものと類似のまたは異なる溶媒から再結晶化させて、光学純度および化学純度を改善してもよい。
【0028】
本発明のさらなる態様は、{1S−[1α,2α,3β(1S,2R),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールの調製における、式(III)の化合物のジベンゾイル−L−タータレートの使用である。
【0029】
用語「ジアステレオ異性的に純粋な塩」は、鏡像異性的に純粋な陽イオン(本発明ではアミンIII)および鏡像異性的に純粋な陰イオン(本発明ではジベンゾイル−L−酒石酸モノ陰イオンIII)の間の塩と定義される。
【実施例】
【0030】
実施例1. (3aS,4R,6S,6aR)−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロ−ペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−アミニウム(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート(化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート)の調製
化合物(III)の単離を介した方法:
化合物(I)(415g、1.36モル)を1.8Lのメタノール中に溶解し、そして生じた溶液を、Pd/Cのスラリー(62%w/wの水を含有する25gのペースト)と一緒に、水(50mL)中で、反応装置に移した。温度を50℃に設定し、そして反応装置に窒素を流した。水素圧を適用した(3バール)。HPLCによって反応を監視した。3時間後、反応は完了した。メタノール懸濁物をろ過し、そして減圧下で濃縮して、ベージュ−白色固体として230g(98%収率)の化合物(II)を得て、これを直接、以下の工程で用いた。この物質のGC純度は>97%であり、そして滴定によるアッセイは、95%w/wであった。
【0031】
化合物(II)(227g、1.31モル)を、26℃で、1641gのエタノール/水混合物(体積で70/30)中に溶解した。ジベンゾイル−L−酒石酸一水和物(493g、1.31モル)を添加し、添加中に内部温度が32℃に達するのを許した。結晶化を室温で18時間放置した。得た結晶をろ過し、そして2x300mLのエタノール/水混合物(体積で70/30)で洗浄した。真空下で約5時間、44℃で乾燥させた後、白色結晶固体として、272g(39%収率または理論収量の78%)の化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレートを得た。遊離アミンに対してガスクロマトグラフィーによって決定した際、光学純度は99% de(ジアステレオ異性的過剰)であった。
【0032】
実施例2. (3aS,4R,6S,6aR)−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロ−ペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−アミニウム(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート(化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート)の調製
化合物(II)の単離を介した方法:
化合物(II)(3.21g、92%純度、17.0mmol)を、22℃で、エタノール/水の混合物(21.6g、水中70%v/vのエタノール)中に溶解した。ジベンゾイル−L−酒石酸(6.23g、17.4mmol)を透明な溶液に添加した。最初は透明な溶液が形成されたが、約10分後、結晶化が始まった。生じたスラリーを2時間放置した後、ろ過によって結晶を単離し、そしてエタノール/水混合物(水中70%v/vのエタノール、2x5mL)で洗浄した。真空下、40℃で結晶を乾燥させ、3.31g(37%収率)の純粋な化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレートを生じた。遊離アミンに対してガスクロマトグラフィーによって決定した際、光学純度は97.6% deであった。
【0033】
実施例3. (3aS,4R,6S,6aR)−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロ−ペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−アミニウム(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート(化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート)の調製
化合物(II)の単離を介した方法:
化合物(II)(3.22g、92%純度、17.1mmol)を、22℃で、エタノール/水の混合物(21.6g、水中70%v/vのエタノール)中に溶解した。ジベンゾイル−L−酒石酸(6.50g、18.1mmol)を透明な溶液に添加した。生じたスラリーを70℃に加熱して、沈殿物を溶解させた。次いで、溶液を3時間の間、室温まで冷却させた後、得た結晶をろ過によって単離した。エタノール/水混合物(水中70%v/vのエタノール、3x5mL)で結晶を洗浄した。真空下、40℃で結晶を乾燥させ、3.19g(35%収率)の純粋な化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレートを得た。遊離アミンに対してガスクロマトグラフィーによって決定した際、光学純度は98.4% deであった。
【0034】
実施例4. (3aS,4R,6S,6aR)−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロ−ペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−アミニウム(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート(化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート)の調製
非単離化合物(II)を介した方法:
化合物(I)(500g; 1.64モル)およびPd/C(25g、60%水ペースト)を、周囲温度で、5L被覆スチール反応装置に添加した。反応装置を窒素(3バール)でパージした。エタノールおよび水の混合物(1750g、体積で70/30)を添加し、そして反応装置を攪拌しながら、再び窒素(3バール)でパージした。水素ガス(3バール)を適用し、そしてジャケット温度を50℃に増加させた。50℃で2時間置いた後、出発物質は検出不能であり、そして反応混合物をろ過して、Pd触媒を除去した。固体触媒をエタノール/水混合物(300g、体積で70/30)で洗浄し、そして洗浄液を残りの溶液と合わせた。ジベンゾイル−L−酒石酸(588g、1.64mol.)を被覆ガラス容器に添加した。化合物(II)の上記溶液を、24℃で、そしてゆっくり攪拌しながら添加した。生じた混合物を22℃で約16時間放置し、そして次いで、得た結晶をろ過した。ろ過ケークをエタノール/水混合物(2x375mL、体積で70/30)で2回洗浄した。次いで、真空オーブン中、50℃で、結晶を一定の重量まで乾燥させた。これによって、白色固体として、324g(37%収率、理論最大値の74%)の化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレートを得た。遊離アミンに対してガスクロマトグラフィーによって決定した際、光学純度は99.6% deであった。
【0035】
【化8】

【0036】
実施例5. (3aS,4R,6S,6aR)−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチルテトラヒドロ−3aH−シクロ−ペンタ[d][1,3]ジオキソール−4−アミニウム(2R,3R)−2,3−ビス(ベンゾイルオキシ)−3−カルボキシプロパノエート(化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート)の調製
非単離化合物(II)を介した方法:
化合物(II)(50.0g、0.164mol)、水(58g)およびエタノール(104g)の溶液を、5%Pd/C(1.3g)で、水素大気(8バール)下、50℃で18時間処理した。反応混合物を30℃に冷却し、ろ過し、そして水(10.5g)およびエタノール(19.5g)の混合物でフィルターを洗浄した。ジベンゾイル−L−酒石酸一水和物(61.6g、0.164mol)を添加した。混合物を28℃で2時間攪拌し、18℃に冷却し、そしてさらに2時間攪拌した。ろ過し、水(26.3g)およびエタノール(48.8g)の混合物で洗浄し、そして乾燥させて、白色固体として、化合物(III)ジベンゾイル−L−タータレート(31.7g、36%収率)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)
【化1】

の化合物のジアステレオ異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸塩を調製するためのプロセスであって、
(a)式(II)
【化2】

の化合物を、鏡像異性的に純粋なジベンゾイル−L−酒石酸またはその一水和物と混合して、ジアステレオ異性塩を形成し、そして
(b)前記塩を結晶化させる
工程を含む、前記プロセス。
【請求項2】
工程(a)における溶媒が、脂肪族アルコール;ニトリル;極性エーテル;脂肪族エステル;極性非プロトン性溶媒;水およびその混合物から選択される、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
工程(a)における溶媒が、水および脂肪族アルコールの混合物である、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
工程(a)における溶媒が、水およびメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、またはt−ブタノールの混合物である、請求項3記載のプロセス。
【請求項5】
工程(a)における溶媒が、水およびエタノールの混合物である、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
式(III)の化合物のモノ−ベンゾイル−L−タータレート。
【化3】

【請求項7】
{1S−[1α,2α,3β(1S,2R),5β]}−3−(7−{[2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}−5−(プロピルチオ)−3H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン−1,2−ジオールの調製における、式(III)
【化4】

の化合物のジベンゾイル−L−タータレートの使用。

【公表番号】特表2011−503177(P2011−503177A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533996(P2010−533996)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051305
【国際公開番号】WO2009/064249
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)