説明

1−フェニルピラゾールの製造方法

本発明は、式I(式中、各R1は、独立して、塩素、フッ素、アルキル、ハロアルキル、アルコキシおよびハロアルコキシから選択され;nは、1、2または3であり;各R2は、独立して、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルチオおよびアルコキシカルボニルから選択され;mは、0、1または2であり;Aは、アルキル、アリールまたはアリール-C1-C4-アルキルであり、この場合、Aは、場合により、1、2、3または4個の置換基を有していてもよい)で表される1-フェニルピラゾールの製造方法であって、式(II)で表されるハロゲン化フェニルを式(III)で表されるピラゾール誘導体(式中、Xは、塩素、ヨウ素または臭素であり;R1、n、R2、mおよびAは、それぞれ、上記で定義した通りである)と、塩基、並びに、リガンドとパラジウム化合物、鉄化合物および銅化合物から選択される金属化合物とを含む触媒系の存在下において反応させることを含む、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1-フェニルピラゾールの製造方法に関する。詳しくは、本発明は、ハロゲン化フェニルとピラゾール化合物とのC-Nカップリングによる1-フェニルピラゾールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1-フェニルピラゾールは、特に、薬剤ファーマコフォアおよび農薬ファーマコフォアとして、またこうした活性成分の前駆体として非常に関心が持たれている。ピラクロストロビンは、殺虫剤N-フェニルピラゾール誘導体の良く知られている代表例である。
【0003】
このクラスの複素環を調製するための最も重要な方法としては、1,3-ジケトンとフェニルヒドラジンまたはその誘導体との二重縮合が挙げられる。この方法は、1,3-ジケトンの利用が容易であるという理由だけでなく、ジケトン出発物質の1個のカルボニルをアセタール基、ヘミアセタール基、クロロビニル基、二ハロゲン化物などと置換することができるという理由から広範囲である。
【0004】
その多機能性にもかかわらず、この公知の方法は、多様な官能基と互換性のない反応条件を必要とする場合がある。また、特定の置換パターンを有する1-フェニルピラゾール化合物は、既存の方法では実施困難であるか、実施できたとしても困難が伴う。
【0005】
したがって、より大きな官能性分子とのカップリングによる1-フェニルピラゾールの調製方法が今もなお要望されている。
【0006】
窒素求核試薬と炭素求電子試薬との遷移金属触媒クロスカップリングは、有機合成化学では有効な手段として知られている。一般的な求電子試薬としては、ハロゲン化アリールおよびハロゲン化ビニル、トリフレート並びにスルホネート類が挙げられる。使用されている求核試薬には、第一級アミンおよび第二級アミン類、アンモニア、アニリン類、アミド類およびカーバメート類が含まれる。また、ピラゾール類などの芳香族窒素複素環のC-Nカップリングも既に研究されている。
【0007】
C. Tironi, R. FrutteroおよびA. GarroneのFarmaco 1990, 45 (4), p. 473-478には、炭酸カリウム、酸化銅(I)およびピリジンの存在下で、3-アセチルアミノピラゾールをブロモニトロベンゼン類と反応させ、3-アセチルアミノ-1-(ニトロフェニル)-ピラゾールを得ることが開示されている。
【0008】
K. H. ParkらのKor. Chem. Soc. 16(9), p. 799-801 (1995)には、ジメチルホルムアミド中の炭酸カリウムの存在下で、5-ヒドロキシ-3-トリフルオロメチルピラゾールを3,4-ジクロロニトロベンゼンと反応させることが開示されている。主反応生成物として、1-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-5-ヒドロキシ-3-トリフルオロメチル-ピラゾールが得られている。
【0009】
WO 99/62885には、3,5-二置換ピラゾールを、塩基の存在下において、脱離基(例えばハロゲン)により4位で置換されているニトロベンゼンと反応させる合成方法が言及されている。
【0010】
これらの先行技術文献には、ハロゲン脱離基がニトロ基により活性化される、アリール求電子試薬の使用が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 99/62885
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】C. Tironi, R. FrutteroおよびA. Garrone, Farmaco 1990, 45 (4), p. 473-478
【非特許文献2】K. H. Parkら, Kor. Chem. Soc. 16(9), p. 799-801 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、フェニル環がニトロ基とは異なる置換基で置換される、ハロゲン化フェニルからの1-フェニルピラゾールの製造方法を提供することであった。さらに、本方法は低コストで実施可能であり、また選択的変換に基づくものであるべきであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、以下に詳細に記載した方法により達成される。
【0015】
本発明は、一般式(I):
【化1】

【0016】
(式中、
各R1は、独立して、塩素、フッ素、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
nは、1、2または3であり;
各R2は、独立して、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、C1-C4-アルキルチオおよびC1-C4-アルコキシカルボニルから選択され;
mは、0、1または2であり;
Aは、C1-C12-アルキル、アリールまたはアリール-C1-C4-アルキルであり、ここで、Aは、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、基Ra、基Rb、基Rcおよび基Rd
【化2】

【0017】
(式中、
R4は、H、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール-C1-C4-アルコキシであり、ここで、最後の3つの基の中のアリール基は、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよく、
R5は、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキルまたはアリール-C1-C4-アルキルであり、ここで、最後の基の中のアリール基は、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよい)
から選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよい)
で表される1-フェニルピラゾールの製造方法であって、以下の工程、すなわち、
(i) 式(II)で表されるハロゲン化フェニルを式(III)で表されるピラゾール誘導体:
【化3】

【0018】
(式中、
Xは、塩素、ヨウ素または臭素であり;
R1、n、R2、mおよびAは、それぞれ、上記で定義した通りである)
と、塩基、並びに、リガンドとパラジウム化合物、鉄化合物または銅化合物から選択される金属化合物とを含む触媒系の存在下で反応させる工程
を含んでなる前記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の明細書においては、総称的に用いられる用語を以下の通り定義する:
接頭辞Cx-Cyは、特定の場合において、可能性のある炭素原子の数を示す。
【0020】
用語「ハロゲン」は、各場合において、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素、特にフッ素、塩素または臭素を示す。
【0021】
用語「C1-C4-アルキル」は、1〜4個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、ブチル、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソブチル)または1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)を示す。
【0022】
用語「C1-C12-アルキル」は、1〜12個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。具体例は、C1-C4-アルキルに関して明示した基に加えて、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、2-プロピルヘプチル、3-ブチルオクチルおよびそれらの位置異性体である。
【0023】
用語「シクロアルキル」は、3〜6個(C3-C6-シクロアルキル)、3〜8個(C3-C8-シクロアルキル)または3〜10個(C3-C10-シクロアルキル)の炭素環員を有する単環式飽和炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルを示す。
【0024】
本明細書中で使用され、またC1-C4-ハロアルコキシのハロアルキル単位で使用される場合の用語「C1-C4-ハロアルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であって、これらの基の一部または全部の水素原子がハロゲン原子で置換されているものを意味する。これらの例は、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロパ-1-イル、1,1,1-トリフルオロプロパ-2-イル、3,3,3-トリクロロプロパ-1-イル、ヘプタフルオロイソプロピル、1-クロロブチル、2-クロロブチル、3-クロロブチル、4-クロロブチル、1-フルオロブチル、2-フルオロブチル、3-フルオロブチル、4-フルオロブチルなどである。
【0025】
用語「C1-C4-アルコキシ」は、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合している、1〜4個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の飽和アルキル基を示す。C1-C4-アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、1-メチルプロポキシ(sec-ブトキシ)、2-メチルプロポキシ(イソブトキシ)および1,1-ジメチルエトキシ(tert-ブトキシ)である。
【0026】
用語「C1-C4-ハロアルコキシ」は、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合している、1〜4個の炭素原子を含む直鎖状または分岐鎖状の飽和ハロアルキル基を意味する。これらの例は、クロロメトキシ、ブロモメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロフルオロメトキシ、ジクロロフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、1-クロロエトキシ、1-ブロモエトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、3,3,3-トリフルオロプロパ-1-オキシ、1,1,1-トリフルオロプロパ-2-オキシ、3,3,3-トリクロロプロパ-1-オキシ、1-クロロブトキシ、2-クロロブトキシ、3-クロロブトキシ、4-クロロブトキシ、1-フルオロブトキシ、2-フルオロブトキシ、3-フルオロブトキシ、4-フルオロブトキシなどである。
【0027】
用語「C1-C4-アルコキシカルボニル」は、カルボニル基を介して分子の残りの部分に結合している、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を示す。これらの例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニルおよびtert-ブトキシカルボニルである。
【0028】
用語「アリール」は、6〜14個の炭素原子を有する炭素環式芳香族基を示す。これらの例には、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、アントラセニルおよびフェナントレニルが含まれる。アリールは好ましくはフェニルまたはナフチルであり、特にフェニルである。
【0029】
用語「ヘタリール」は、O、NおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を有する芳香族基を示す。これらの例は、O、SおよびNから選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を有する5または6員のヘタリール基、例えば、ピロリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジルおよびトリアジニルである。
【0030】
用語「アリール-C1-C4-アルキル」は、C1-C4-アルキル基を介して分子の残りの部分に結合しているアリール基を示す。これらの例は、ベンジル、2-フェニルエチル(フェネチル)などである。
【0031】
用語「アリール-C1-C4-アルコキシ」は、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合している、上記で定義した通りのアリール-C1-C4-アルキル基を示す。これらの例は、ベンジルオキシ、フルオレニルメトキシなどである。
【0032】
用語「C1-C4-アルキルチオ」(C1-C4-アルキルスルファニル:C1-C4-アルキル-S-)」は、硫黄原子を介して分子の残りの部分に結合している、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状の飽和アルキル基を示す。C1-C4-アルキルチオに関する例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、1-メチルエチルチオ、ブチルチオ、1-メチルプロピルチオ、2-メチルプロピルチオおよび1,1-ジメチルエチルチオが挙げられる。
【0033】
本発明による方法の好ましい実施形態に関する下記の記述、とりわけ、様々な反応物および生成物の可変部分、並びに本方法の反応条件の可変部分の好ましい意味に関する下記の記述は、単独の場合、より特定的には、任意の考えられる相互の組み合わせの場合のいずれの場合にも適用される。
【0034】
式(I)、(Ia)、(II)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、nは好ましくは0、1または2であり、特に好ましくは0または1である。nが1である場合、R1は、好ましくは、ピラゾール部分の結合点に対して、または化合物II中の基Xの1位に対してパラ位またはメタ位である。
【0035】
式(I)、(Ia)、(II)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、R1は、好ましくは、塩素、フッ素、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキル、C1-C2-アルコキシまたはC1-C2-ハロアルコキシである。R1は、さらに好ましくは、塩素、フッ素、C1-C2-アルキルまたはC1-C2-ハロアルキルであり、より一層好ましくは、塩素、メチルまたはハロメチルである。特に、R1は、4-Cl、3-Cl、4-メチル、3-メチル、2-メチル、4-メトキシ、3-メトキシ、3-クロロメチル、4-クロロメチル、4-トリフルオロメチル、3-トリフルオロメチル、3-クロロメトキシ、4-クロロメトキシ、4-トリフルオロメトキシ、3-トリフルオロメトキシ、3,4-Cl2、2,4-Cl2、3,4-ジメチル、2,4-ジメチル、3,4-ジメトキシまたは2,4-ジメトキシである。位置の記述は、式(II)で表される化合物に由来するフェニル基がピラゾール環に結合されている1位に、またはハロゲン化フェニルII中の基Xの1位に関するものである。
【0036】
式(I)、(Ia)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、mは、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0037】
式(I)、(Ia)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、R2は、好ましくは、ハロゲン、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキル、C1-C2-アルコキシ、C1-C2-ハロアルコキシまたはC1-C2-アルコキシカルボニルである。R2は、さらに好ましくは、塩素、フッ素、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキルまたはC1-C2-アルコキシカルボニルであり、さらに好ましくは、塩素、フッ素、メチル、ハロメチルまたはメトキシカルボニルである。
【0038】
式(I)および(III)の化合物においては、Aは、好ましくは、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルコキシ、C1-C2-ハロアルコキシ、基Ra、基Rb、基Rcおよび基Rdから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよいC1-C8-アルキルであるか、あるいは、場合により、ニトロ、ハロゲン、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキル、C1-C2-アルコキシ、C1-C2-ハロアルコキシ、基Ra、基Rb、基Rcおよび基Rdから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよいアリール-C1-C2-アルキルである。Aは、さらに好ましくは、ニトロ、ハロゲン、基Ra、基Rb、基Rcおよび基Rdから選択される1または2個の置換基を有するベンジルであり、よりさらに好ましくは、オルト位にニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rdを有するベンジルである。
【0039】
式(I)、(III)、(V)および(VI)の化合物においては、R4は、好ましくは、H、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキル、C1-C2-アルコキシ、C1-C2-ハロアルコキシ、アリール、アリール-C1-C2-アルコキシであって、ここで、最後に記載の2つ基のアリール基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよい。R4は、さらに好ましくは、C1-C2-アルコキシ、C1-C2-ハロアルコキシまたはベンジルオキシであって、ここで、最後に記載した基のフェニル基は、場合により、ハロゲン、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキルおよびC1-C2-アルコキシから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよい。R4は、よりさらに好ましくは、メトキシ、ハロメトキシまたはベンジルオキシである。
【0040】
式(I)、(III)および(VI)の化合物においては、R5は、好ましくは、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキルまたはアリール-C1-C2-アルキルであって、ここで、最後に記載した基のアリール基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよい。R5は、さらに好ましくは、C1-C2-アルキルまたはC1-C2-ハロアルキルであり、よりさらに好ましくは、メチルまたはハロメチルである。
【0041】
式(II)の化合物においては、Xは、好ましくは、ヨウ素または臭素であり、さらに好ましくは臭素である。
【0042】
式(Ia)、(IIIa)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、pは、好ましくは、0、1または2であり、特に好ましくは、0または1である。pが1である場合、R3は、好ましくは、メチレン架橋の結合点に対してパラ位またはメタ位である。
【0043】
式(Ia)、(IIIa)、(IV)、(V)および(VI)の化合物においては、R3は、好ましくは、ハロゲン、C1-C2-アルキル、C1-C2-ハロアルキル、C1-C2-アルコキシまたはC1-C2-ハロアルコキシである。R3は、さらに好ましくは、塩素、フッ素、C1-C2-アルキルまたはC1-C2-ハロアルキルであり、よりさらに好ましくは、塩素、フッ素、メチルまたはハロメチルである。
【0044】
式IIで表される化合物の例は、式IIa:
【化4】

【0045】
(式中、Xは、上記の一般的な意味または好ましい意味を有する)
で表される化合物である。
【0046】
式IIIで表される化合物の例は、式IIIa:
【化5】

【0047】
(式中、
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
pは、0、1、2または3であり;
Yは、ニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rdであり;
R2、m、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ、上記で定義した通りである)
で表される化合物である。
【0048】
以下に記載の本発明に係る変換は、こうした反応で慣用の反応槽中で実施され、この場合、反応は、連続法、半連続法またはバッチ法で設定することができる。一般的には、特定の反応は大気圧下で実施される。しかし、反応を減圧下または高圧下で実施することも可能である。
【0049】
置換1-フェニルピラゾールIを調製する本発明による方法の工程(i)における変換は、C-N結合が形成されるクロスカップリング反応である。この反応は、好適な反応条件下で、出発化合物、すなわち、ハロゲン化フェニルIIとピラゾール誘導体IIIを、さらには塩基および触媒系を、好ましくは溶媒中で接触させることにより行われる。
【0050】
一般的に、工程(i)は温度調節下で実施される。この反応は、典型的には、撹拌装置および加熱装置を備えた密閉型または開放型反応槽中で行われる。
【0051】
反応物質は、基本的には、任意の所望する順序で互いに接触させるができる。例えば、ハロゲン化フェニルII(適切な場合には、溶媒に溶解させたもの、または分散形態のもの)を最初に投入し、ピラゾール誘導体IIIと混合させるか、逆に、ピラゾール誘導体III(適切な場合には、溶媒に溶解させたもの、または分散形態のもの)を最初に投入し、ハロゲン化フェニルIIと混合させることができる。あるいは、2種の反応物質を同時に反応槽に加えることもできる。触媒系および塩基は、互いに独立して、反応物質の1つを添加する前または後に加えることが可能であり、反応物質の1つと一緒に、溶媒中またはバルク中で加えることもできる。これらの同時添加の代わりに、触媒系の2種の成分、リガンドおよび金属化合物を、反応槽に別々に加えることができる。これらは共に、互いに独立して、反応物質の1つを添加する前または後に加えることが可能であり、反応物質の1つと一緒に加えることもできる。
【0052】
しかし、最初に、ハロゲン化フェニルII、ピラゾール誘導体III、塩基および金属化合物、並びに1種または複数のリガンドを一緒に反応槽に投入することが適切であることが判明した。溶媒は、大気を窒素またはアルゴンに交換した後に加える。
【0053】
好適な溶媒は、それぞれの場合において、特定の反応物質および反応条件の選択に依存する。しかし、一般的には、化合物(II)と化合物(III)の反応に関して非プロトン性有機溶媒を使用することが有利であることが判明した。本発明で有用な非プロトン性有機溶媒としては、例えば、脂肪族C3-C6-エーテル類、例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルおよびtert-ブチルエチルエーテル、脂肪族炭化水素類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタン、さらに石油エーテル、脂環式炭化水素類、例えば、シクロペンタンおよびシクロヘキサン、脂環式C3-C6-エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサン、芳香族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレン、短鎖ケトン類、例えば、アセトン、エチルメチルケトンおよびイソブチルメチルケトン、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、あるいはこれらの溶媒を一緒にした混合物が挙げられる。
【0054】
触媒系が銅化合物(特に銅(I)化合物)を含んでいる場合、工程(i)の変換用の溶媒は、好ましくは、脂肪族C3-C6-エーテル、脂環式C3-C6-エーテル、芳香族炭化水素およびそれらの混合物から選択され、さらに好ましくは、DME、ジグリム、THF、1,4-ジオキサン、トルエンおよびそれらの混合物から選択される。この場合に、トルエン、1,4-ジオキサンおよびDMEが工程(i)の変換において特に好ましい溶媒である。
【0055】
触媒系が鉄化合物(特に鉄(III)化合物)を含んでいる場合、工程(i)の変換用の溶媒は、好ましくは、脂肪族C3-C6-エーテル、脂環式C3-C6-エーテル、芳香族炭化水素、アミド、DMSOおよびそれらの混合物から選択され、さらに好ましくは、1,4-ジオキサン、THF、トルエン、NMP、DMF、DMSOおよびそれらの混合物から選択される。この場合に、DMF、DMSO、1,4-ジオキサンおよびそれらの混合物が工程(i)の変換において特に好ましい溶媒である。
【0056】
触媒系がパラジウム化合物を含んでいる場合、工程(i)の変換用の溶媒は、好ましくは、脂肪族C3-C6-エーテル、脂環式C3-C6-エーテル、芳香族炭化水素、アミド、DMSOおよびそれらの混合物から選択され、さらに好ましくは、ジエチルエーテル、THF、トルエン、NMP、DMF、DMSOおよびそれらの混合物から選択される。この場合に、トルエンが工程(i)の変換における特に好ましい溶媒である。
【0057】
本発明による方法の工程(i)で用いられる溶媒の総量は、典型的には、1molのピラゾール誘導体IIIに対し、200〜5000gの範囲、好ましくは300〜4000gの範囲である。
【0058】
溶媒は、本質的に無水の溶媒、すなわち、含水量が1000ppm未満、特に100ppm以下の溶媒を使用するのが好ましい。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、工程(i)において、式IIで表されるハロゲン化フェニルを、いずれの場合にも1molの式IIIで表されるピラゾール誘導体に対して0.1〜1.5mol、さらに好ましくは0.5〜1.2mol、よりさらに好ましくは0.7〜0.9mol、特に0.75〜0.85molの量で使用する。
【0060】
式(III)で表されるピラゾール誘導体は、慣用の方法により調製することができる。可変部分Aが場合により置換されていてもよいベンジル基である場合、誘導体は、例えば、WO 96/01256およびWO 99/06373に記載されているようにして、例えば、対応する3-ヒドロキシピラゾール(これは一時的なN-保護基(例えばアセチル)を有していてもよい)を、塩基の存在下で、対応する臭化ベンジルによりエーテル化することによって得ることができる。同様に、好適な3-ヒドロキシピラゾールは、例えば、ヒドラジンを、例えばEP 0680954 A2に記載されているようにして、対応するプロピオル酸エステルと反応させるか、例えばG. A. Erler, W. Holzer, Molbank 2006, M464に記載されているようにして、対応する(E)-メチル-3-メトキシアクリレートと反応させることによって調製することができる。式(II)で表されるハロゲン化フェニルは市販品が入手可能であるか、当技術分野で公知の標準方法によって生成することができる。
【0061】
本発明による方法の工程(i)における変換については、好ましくは、式(IIIa):
【化6】

【0062】
(式中、
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され、
pは、0、1、2または3であり、
Yは、ハロゲン、ニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rdであり、
R2、m、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ、本明細書でこれより前に定義した通りである)
に対応する式(III)で表されるそれらのピラゾール誘導体を用いる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程(i)において、Yが臭素、ニトロまたは基Rcを表し、可変部分R2、R3、mおよびpが好ましいものとして本明細書に記載されている意味を有する、それらの3-ベンジルオキシピラゾールIIIaを用いる。
【0064】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、工程(i)において、Yがニトロまたは基Rc、特にニトロを表し、可変部分mおよびpが両方とも0である、それらの3-ベンジルオキシピラゾールIIIaを用いる。
【0065】
工程(i)の反応のメカニズムは、類似の遷移金属触媒クロスカップリング反応に関して提示されているメカニズムに相当すると考えられる。このため、触媒サイクルの第1の工程は、触媒系の金属化合物を化合物(II)で表されるフェニル-ハロゲン結合へ酸化的付加して金属イオン中間体を形成させ、次の工程でそれに化合物(III)由来の求核基が転移される。後続の工程は還元的脱離であり、それによりカップリングされた生成物(I)が生じ、また、活性金属化合物種が再生成される。あるいは、少なくとも銅化合物を含む触媒系が使用される場合、その反応メカニズムには同様の触媒サイクルが含まれ得るが、しかし、その場合、銅の酸化状態は変化しない。触媒サイクルの第1工程におけるさらなる可能性として、最初に、触媒系の銅化合物を、ハロゲン化フェニルIIを使用する代わりに化合物(III)由来の求核基と相互作用させることができる。
【0066】
本発明による方法の工程(i)における化合物IIと化合物IIIとの反応に好適な触媒系は、好ましくは、次のもの:
a) パラジウムが0または2の酸化状態を有するパラジウム触媒、
b) 鉄が2または3の酸化状態を有する鉄触媒、および、
c) 銅が0、1または2の酸化状態を有する銅触媒
から選択される。
【0067】
本発明の方法の触媒系は、金属化合物と1種または複数のリガンドとを含む、予成形した金属錯体の形態で使用することができる。あるいは、本触媒系は、金属化合物(本明細書ではプレ触媒ともいう)を1種または複数の好適なリガンドと結合させ、反応混合物中で触媒的に活性のある金属錯体を形成させることにより、反応混合物においてin situで形成される。
【0068】
好適なプレ触媒は、パラジウム、鉄または銅の中性金属錯体類、オキシド類および塩類から選択される。この目的で有用なパラジウム(II)塩は、例えば、ビス[ジベンジリデンアセトン]パラジウム(0)、トリ[ジベンジリデンアセトン]ジパラジウム(0)、塩化パラジウム(II)、塩化ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)および酢酸パラジウム(II)であり、これらのうち、ビス[ジベンジリデンアセトン]パラジウム(0)、トリ[ジベンジリデンアセトン]ジパラジウム(0)が好ましい。有用な鉄(III)プレ触媒は、塩化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトネートおよび酸化鉄(III)である。有用な銅(I)プレ触媒は、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)および酸化銅(I)である。
【0069】
本発明による方法の工程(i)における変換に適する触媒系リガンドは、例えば、下記に示す式VIIおよびVIII:
【化7】

【0070】
(式中、R6〜R12は、それぞれ独立して、C1-C8-アルキル、C5-C8-シクロアルキル、アダマンチル、アリール-C1-C2-アルキル、または、場合によりC1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、フッ素もしくは塩素で置換されていてもよいフェロセニルもしくはアリールであり、Tは、フェロセンジイルまたは直鎖状C2-C5-アルカンジイル(これは場合によりC1-C8-アルキルもしくはC3-C6-シクロアルキルで置換されていてもよく、また、場合により、非置換であるか置換されている1または2個の単環式環または二環式環の一部であってもよい)である)
で表される単座または二座ホスフィンである。
【0071】
より詳しくは、式VIIIで表される化合物中のTは、C2-C4-アルキレン、C0-C1-アルキレンフェロセニル、1,1'-ビフェニル-2,2'-ジイルまたは1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイルであり、ここで、最後の4つの基は、場合により、C1-C8-アルキルまたはC1-C4-アルコキシで置換されていてもよく、またここで、C2-C4-アルキレンは、さらに、C3-C7-シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択される1個または複数の置換基を有していてもよい。この点に関し、C2-C4-アルキレンの1〜4個の炭素原子は、C3-C7-シクロアルキル環の一部であってもよい。この場合のアリールはナフチルであるか、場合により置換されていてもよいフェニルである。アリールは、好ましくはフェニルまたはトリルであり、さらに好ましくはフェニルである。C0-C1-アルキレンフェロセニルは、特にフェロセンジイル(この場合、2個のリン原子のそれぞれの原子はフェロセンの異なるシクロペンタジエン部分に結合されている)であるか、またはメチレンフェロセニル(この場合、リン原子の1つの原子はシクロペンタジエンにメチレン基を介して結合されており、第2のリン原子は同一のシクロペンタジエンに結合されていて、かつメチレン基は、場合により、C1-C4-アルキルから選択される1または2個のさらなる置換基を有していてもよい)である。
【0072】
この場合の好ましい式VIIの単座錯体リガンドは、R6、R7およびR8がそれぞれ場合により置換されていてもよいフェニルであるもの、例えばトリフェニルホスフィン(TPP)、また、R6、R7およびR8がそれぞれC1-C6-アルキル、C5-C8-シクロアルキル、アダマンチルまたは場合により置換されていてもよいビフェニルであるもの、例えばジ-1-アダマンチル-n-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン(TtBP)、メチルジ-tert-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルおよび2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリ-i-プロピル-1,1'-ビフェニル(X-Phos)である。さらに、亜リン酸塩類、例えば亜リン酸トリ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)の使用も可能である(A. Zapfら, Chem. Eur. J. 2000, 6, 1830を参照)。
【0073】
また、この場合の好ましい式VIIIの二座錯体リガンドは、式IX:
【化8】

【0074】
に対応するものであり、式中、R9〜R12は、それぞれ上記で定義した通りであり、好ましくは、それぞれ独立して、場合によりメチル、メトキシ、フッ素および塩素から選択される1〜3個の置換基を有していてもよいフェニルである。R13およびR14は、それぞれ独立して、水素、C1-C8-アルキルまたはC3-C6-シクロアルキルであるか、R13およびR14は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によりC1-C6-アルキルで置換されていてもよい3〜8員環を形成している。R13およびR14は、好ましくは、それぞれ独立して、メチル、エチル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルから選択される。
【0075】
式(IX)で表される好ましい化合物の例は、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-エチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2,2-ジエチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-プロピルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-エチル-2-プロピルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2,2-ジプロピルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-ブチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-エチル-2-ブチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-プロピル-2-ブチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2,2-ジブチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-シクロプロピルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-シクロブチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-シクロペンチルプロパン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-メチル-2-シクロヘキシルプロパンであり、さらに好ましくは1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2,2-ジメチルプロパンおよび1,3-ビス(ジフェニルホスフィニル)-2-エチル-2-ブチルプロパンである。
【0076】
本発明による方法の工程(i)における変換の好ましい触媒系リガンドは、式X:
【化9】

【0077】
(式中、
VおよびWは、独立して、窒素(これは場合により水素原子に結合されていてもよい)、酸素および硫黄から選択され、この場合、窒素はアミン、イミンまたは窒素含有複素環の一部として包含されており、またこの場合、酸素はオキソ置換基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基または酸素含有複素環の一部として包含されており、さらにこの場合、硫黄はチオケトン基、チオール基(-SH)、アルキルチオ基または硫黄含有複素環の一部として包含されており;
T'は、存在しないか、またはメタンジイル(-CH2-)もしくはメテンジイル(methendiyl)(=CH-)架橋であり;
R15およびR16は、互いに独立して、存在しないか、または水素、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニルもしくはアリールから選択され、ここで、最後に記載の3つの基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;あるいは、
Vおよび/またはWが窒素である場合、それらに結合しているそれぞれの基R15および/またはR16は、ヒドロキシまたはC1-C4-アルコキシであってもよく;
R17およびR18は、独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ、C2-C6-アルケニルまたはアリールから選択され、ここで、最後に記載の4つの基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;あるいは、
T'、R15、R16、R17およびR18から選択される部分の1組または複数の組は、それらが結合している原子と一緒になって、3、4、5、6または7員の飽和、不飽和または芳香族炭素環を形成しているか、環員としてO、SおよびNから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する3、4、5、6または7員の飽和、不飽和または芳香族複素環を形成しており、ここで、前記炭素環または複素環は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;
【化10】

【0078】
は、単結合または二重結合である)
で表される二座リガンドである。
【0079】
式Xで表される好ましいリガンドは、1,2-ジオール類、例えばエタン-1,2-ジオール、1,2-ジアミン類、例えば1,2-ジアミノエタン、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、例えばトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン、例えば式XIのトランス-N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノシクロヘキサン(下記参照)、1,2-アミノアルコール類、例えばN-メチル-2-アミノエタノール、1,2-および1,3-ジケトン類、例えばアセチルアセトン、ヒドロキシルイミン類、例えば下記の式XIIおよびXIIIの化合物、通常5、6、7または8環員を有する環状カルボン酸類(ここで、前記環は、炭素原子以外に環員としてS、OおよびNから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含有しており、またここで、環ヘテロ原子はカルボキシル基を有する環炭素原子に隣接している)、例えばL-プロリンおよびチオフェン-2-カルボン酸、多環複素環式芳香族化合物類、例えば1,10-フェナントロリン、複素環式芳香族化合物類(この場合、2つの単環式芳香族複素環は単結合を介して結合されている)、例えば2,2'-ビピリジン、並びにジイミン類、例えばN,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)エタンジイミンから選択され、ここで、2,2'-ビピリジンおよび1,10-フェナントロリンは非置換であっても置換されていてもよく、1,10-フェナントロリンの場合、好ましくは4位および/または7位で、C1-C4-アルキル、C3-C7-シクロアルキル、フェニル、フェノキシおよびフェニルチオ(ここで、最後に記載の3つの基の中のフェニル環は、ハロゲン、C1-C4-ハロアルキルおよびC1-C4-アルコキシから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよい)から選択される1、2、3または4個の置換基で置換されていてもよい。
【化11】

【0080】
さらに、本発明による方法の工程(i)における変換に適する触媒系は、NHCリガンドとして知られている、少なくとも1種のN複素環式カルベンを含むものでもある。これらは、より詳細には、例えば、G. A. Grasaら, Organometallics 2002, 21, 2866に記載されている、反応性錯体リガンドである。NHCリガンドは、イミダゾリウム塩(例えば1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-H2-イミダゾリウムクロリド)と塩基からin situで得ることが可能であり、金属化合物(例えばパラジウム(0)化合物、特にトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)もしくはビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)タイプのもの)、またはパラジウム、銅および鉄の塩、例えば、酢酸パラジウム(II)、トリフル酸銅(II)および塩化鉄(II)などの存在下で好適な触媒に変換することができる。しかし、予め、金属化合物のNHC錯塩、例えば(1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン)(3-クロロピリジル)-パラジウム(II)ジクロリドを調製し、それらを単離し、次いで、本発明に係るクロスカップリングにおける予成形触媒としてそれらを使用することもできる(S. P. Nolan, Org. Lett. 2005, 7, 1829およびM. G. Organ, Chem. Eur. J. 2006, 12, 4749を参照)。
【0081】
本発明に係る反応に関し、使用するNHCリガンドは、好ましくは、立体障害のあるイミダゾール-2-イリデン化合物、特に、イミダゾール環の1位および3位に大型のR19およびR20置換基を有する式XIVで表される化合物である。好ましくは、この場合のR19およびR20は、それぞれ独立して、アリールまたはヘタリールであって、これらはそれぞれ非置換であるか、1、2、3または4個の置換基を有しており、ここで、前記置換基は、好ましくは、C1-C8-アルキルおよびC3-C7-シクロアルキルから選択される。特に好ましいR19およびR20置換基は、2位および6位に、好ましくは分岐鎖状C1-C6-アルキル基を有するフェニル基である。
【化12】

【0082】
NHCリガンドを含む本発明の前記触媒系、特にパラジウム化合物がベースとなっているものは、少なくとも1つのコリガンドを有していてもよい。こうしたコリガンドは、例えば、環中に少なくとも1個の窒素原子を有するヘタリールから選択され、特に非置換のピリジルであるか、ハロゲン、C1-C6-アルキルおよびC1-C8-アルコキシから選択される1、2または3個の置換基を有するピリジルから選択される。こうしたコリガンドの特定の例は3-クロロピリジルである。
【0083】
触媒系がパラジウム化合物を含む場合、工程(i)における変換に関する触媒系の1種または複数のリガンドは、好ましくは、式VIIで表される単座ホスフィン、式VIIIで表される二座ホスフィンおよび式XIVで表されるNHCリガンドから選択され、特に好ましくは、好ましいものとして本明細書に記載されているものから選択される。この場合に、より一層好ましいリガンドは、メチルジ-tert-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィンおよびX-Phosである。
【0084】
触媒系が鉄化合物を含む場合、工程(i)の変換に関する触媒系の1種または複数のリガンドは、典型的には、二座リガンド(好ましくは式Xで表されるリガンドである)から選択され、特に、好ましいものとして本明細書に記載されているものから選択される。またこの場合に、好ましいのは、1,2-ジアミン、1,3-ジケトン、および通常5、6、7または8環員を有する環状カルボン酸(ここで、前記環は、炭素原子以外に環員としてS、OおよびNから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含有しており、またここで、環ヘテロ原子は、カルボキシル基を有する環炭素原子に隣接している)から選択されるリガンドでもあり、特に式Xで表されるこれらのリガンドのもの、例えば、詳細にはN,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、アセチルアセトンおよびL-プロリンである。
【0085】
触媒系が銅化合物を含む場合、工程(i)の変換に関する触媒系の1種または複数のリガンドは、典型的には二座リガンド(好ましくは式Xで表されるリガンドのもの)から選択され、特に、好ましいものとして本明細書に記載されているものから選択される。この場合に、好ましいものは、1,2-ジアミン、ヒドロキシルイミン、および通常5、6、7または8環員を有する環状カルボン酸(ここで、前記環は、炭素原子以外に環員としてS、OおよびNから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含有しており、またここで、環ヘテロ原子は、カルボキシル基を有する環炭素原子に隣接している)から選択されるリガンドでもあり、特に式Xで表されるこれらのリガンドのものある。より好ましいのは、式Xの1,2-ジアミンである。この点に関して好適なリガンドの例は、L-プロリン、チオフェン-2-カルボン酸、並びに式XI、XIIおよびXIIIで表される化合物であり、特に式XIで表される化合物である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の方法の触媒系は、銅化合物と、式Xで表されるリガンドから選択される1種または複数の(特に1種の)リガンド、特に銅化合物との組み合わせで好ましく使用されるものとして本明細書に記載されているリガンドとを含む。
【0087】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、1種または複数のリガンド(特に1種のリガンド)と金属化合物(特に銅化合物)をプレ触媒として反応槽に別々に投入し、その後、本発明の方法で用いられる触媒系が形成される。金属化合物とリガンドのモル比は、好ましくは1:2〜1:20の範囲、さらに好ましくは1:5〜1:15の範囲、特に1:8〜1:11の範囲である。例えば、1当量の金属化合物に対し、錯体リガンドを8〜10モル当量で使用するのが特に有利となり得る。
【0088】
本触媒系の金属化合物は、本発明による方法において、好ましくは、使用するピラゾール誘導体IIIの量に対して0.1〜15.0mol%、好ましくは1.0〜10.0mol%、特に3.0〜7.0mol%の量で使用する。
【0089】
工程(i)の反応温度は、様々な要因、例えば、使用する反応物質の反応性および選択する触媒系のタイプにより決定されるが、それぞれの場合において、例えば簡単な予試験により当業者によって決定することができる。一般的に、本発明による方法の工程(i)における変換は、0〜250℃の範囲、好ましくは20〜200℃の範囲、より好ましくは50〜150℃の範囲、特に70〜120℃の範囲の温度で実施される。使用する溶媒、反応温度および反応槽が通気口を有するかどうかに応じて、一般に、反応中、圧力は1〜6bar、好ましくは1〜4barに設定される。
【0090】
本発明の方法の工程(i)における変換に関して使用される塩基の選択は、様々な要因、例えば、使用する反応物質の反応性および選択する触媒系のタイプに依存するが、それぞれの場合において、例えば簡単な予試験により当業者によって決定することができる。塩基は、一般的に、同様の反応に有用であることが通常知られている塩基、例えばトリアルカリ金属ホスフェート類、例えばリン酸三ナトリウムおよびリン酸三カリウム、アルカリ金属アルカノレート類、例えばカリウムイソプロピレートおよびナトリウムtert-ブチレートから選択され、またさらにアルカリ金属炭酸塩類、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸ルビジウムから選択される。この場合に、好ましい塩基は、リン酸三カリウム、ナトリウムtert-ブチレート、炭酸ルビジウムおよび炭酸カリウムである。
【0091】
本発明による方法において、塩基は、好ましくは、いずれの場合にも、式(III)で表されるピラゾール誘導体1molに対して0.1〜5mol、より好ましくは0.1〜3mol、よりさらに好ましくは0.2〜2mol、特に0.3〜1.7molの量で使用する。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程(i)において、いずれの場合にも、式(III)で表されるピラゾール誘導体1molに対して、式IIで表されるハロゲン化フェニルは0.7〜0.9molの量で使用し、塩基は0.2〜2molの量で使用し、また、錯体リガンドは1molの金属化合物に対して8〜11molの量で使用する。
【0093】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、工程(i)において、いずれの場合にも、式(III)で表されるピラゾール誘導体1molに対して、式IIで表されるハロゲン化フェニルは0.75〜0.85molの量で使用し、塩基は0.3〜1.7molの量で使用し、また、錯体リガンドは1molの金属化合物に対して8〜10molの量で使用する。
【0094】
さらに、本発明は、式(IV):
【化13】

【0095】
(式中、
R1、n、R2、m、R3およびpは、それぞれ、本明細書でこれより前に定義した通りである)
で表される化合物の製造方法であって、
(i) 上記の方法に従って、式(II)で表されるハロゲン化フェニルを3-ベンジルオキシピラゾールIIIa(式中、Yはニトロである)と反応させることにより式(Ia):
【化14】

【0096】
で表される1-フェニルピラゾールを提供するステップと、さらに、
(ii) 式Iaで表される1-フェニルピラゾールをN-フェニルヒドロキシルアミンIVに変換するステップ
とを含む、前記方法を提供する。
【0097】
式IVで表される1-フェニルピラゾールへの変換は水素化により行うことができる。これは、芳香族ニトロ化合物の水素化に関する公知の方法に従って、例えば電気化学的還元により、亜鉛末またはアマルガムなどの金属による還元により、好ましくは、例えば、WO 96/22967およびWO 99/12911に記載の触媒水素化により実施可能である。
【0098】
触媒水素化法を本発明に係る方法の工程(ii)における変換に使用する場合、その反応は、好ましくは、市販の触媒、例えば、担体上の白金もしくはパラジウム、またはラネーニッケルもしくはラネーコバルトの存在下で実施する。白金またはパラジウム触媒を使用しようとする場合、出発物質の化合物Iaは高反応性の基、例えばベンジルエーテル基および場合によりハロゲンを含有していることから、硫黄またはセレンをドープして十分な選択性を得るようにしなければならないことがある。
【0099】
工程(ii)における変換は、好ましくは、白金またはパラジウム触媒を使用し、触媒水素化により行なう。前記触媒は、一般に、炭素、グラファイト、硫酸バリウムまたは炭化ケイ素などの担体材料上の白金またはパラジウムを含む。触媒の白金またはパラジウム含有量は重要でなく、広い範囲で変動し得る。担体材料炭素に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の含有量が都合がよい。化合物Iaに関して、使用する白金またはパラジウムの量は、一般に、0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0100】
白金またはパラジウム触媒を使用するこうした触媒水素化は、通常、塩基の存在下で行なわれる。前記塩基は好ましくはアミンであり、具体的には、芳香族アミン、例えばピリジン、複素環式アミン、例えばピペリジンまたはN-アルキルモルホリン、あるいは第一級、第二級または第三級脂肪族アミン、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミンおよびn‐プロピルアミンである。好ましくは、水素化は、第一級C1-C4アルキルアミン、例えば、n‐プロピルアミン、イソプロピルアミン、n‐ブチルアミンまたはt‐ブチルアミンなどの存在下で行なうが、特に好ましいのはn‐プロピルアミンである。
【0101】
前述のアミン類、特にN-アルキルモルホリンもまた水素添加反応の溶媒として作用し得る。しかし、不活性非プロトン性溶媒とアミン(特に、好ましいものとして上で記載したものから選択されるアミン)との混合物中で水素化を実施することが好ましい。好適な不活性非プロトン性溶媒は、具体的には脂肪族または脂環式エーテル類、例えばTHF、または脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエンまたはクロロベンゼンなどである。好ましい不活性非プロトン性溶媒は芳香族炭化水素類、特にトルエンである。
【0102】
工程(ii)におけるこのような触媒水素化に関して、アミンは、通常、溶媒に対し1〜20重量%、好ましくは5〜17重量%の濃度で使用する。より高濃度も可能性はあるが、通常、収率および選択性で改善がほとんど認められず、したがって非経済的である。水和しようとする化合物Iaに関して、アミンは、典型的には、1〜15のモル比、好ましくは2〜12のモル比で使用する。
【0103】
触媒水素化において選択される温度範囲は、-20℃〜+30℃、好ましくは-5〜+10℃である。最低温度は、使用する溶媒の凝固点によってのみ決まる。最高温度は、水素化しようとする化合物Iaおよび反応パラメーターに依存性する。過度の水素化を避けるため、大気圧〜10barゲージ圧の圧力をその温度で設定する。その温度で、水素化は通常、十分に迅速に行なわれる。一般的に、水素気体は、大気圧またはわずかに大気圧を上回る圧力で水素化リアクターへ導入される。
【0104】
この新規の方法を実施するにあたって、出発物質は溶解形態で存在する必要はない。反応は、通常、懸濁液においてより一層の最適結果が得られる。
【0105】
反応終了後、添加したアミンの大部分は、それを蒸留することにより、かつ/または水で抽出することにより除去される。蒸留は、好ましくは、窒素下で、または減圧下で行なわれる。高反応性のヒドロキシルアミンIVの場合には、酸素の完全除去が必要となる場合がある。
【0106】
一般に酸素高反応性ヒドロキシルアミンの取り扱いは、場合によっては困難であるので、抽出または蒸留によって脂肪族アミンを除去した直後、さらにヒドロキシルアミンIVを処理するのが有利である。蒸留によるアミンの除去では、アミンの沸点が溶媒よりも低い場合に有利である。この方法で、溶媒に溶解されたヒドロキシルアミンの溶液が得られ、これはさらに、例えば本発明の方法の工程(iii)で直ちに処理することができる。
【0107】
本発明は、さらに、式(V):
【化15】

【0108】
(式中、R1、n、R2、m、R3、pおよびR4は、それぞれ、本明細書でこれより前に定義した通りである)
で表される化合物の製造方法であって、
(i) 上記の方法に従って、式(II)で表されるハロゲン化フェニルを3-ベンジルオキシピラゾールIIIa(式中、Yはニトロである)と反応させることにより、式(Ia)で表される1-フェニルピラゾールを提供するステップと、続いて、
(ii) 式Iaで表される1-フェニルピラゾールを式IVで表されるN-ヒドロキシルアミンに変換するステップと、さらに、
(iii) 式IVで表される化合物を式Vで表される化合物に変換するステップ
を含む、前記方法を提供する。
【0109】
式Vで表される化合物への変換には、式IVで表される化合物のN-アシル化が含まれる。工程(iii)における化合物IVのN-アシル化は、芳香族ヒドロキシルアミンをアシル化する公知の方法、例えば、WO 96/01256およびWO 99/12911に記載の方法に従って実施することができる。
【0110】
工程(ii)中で生成された式IVで表されるヒドロキシルアミンは、好ましくは、蒸留または抽出によりアミンを除去した後に得られる粗生成物として、それ以上の精製を行うことなく工程(iii)へ直接投入される。
【0111】
一般に、工程(iii)におけるN-アシル化は、式IVで表されるヒドロキシルアミンを式(XV):
【化16】

【0112】
(式中、R4は本明細書でこれより前に定義した通りであり、L1は、典型的にはヒドロキシル、ハロゲン化物(特に塩化物または臭化物)、-OR21基または-O-CO-R22基(ここで、R21置換基およびR22置換基の定義はこれ以降に説明する)である脱離基である)
で表される試薬と反応させることにより行なわれる。
【0113】
L1がヒドロキシル基である試薬XVを使用する場合(R4-COOH)、反応は、カップリング剤の存在下で実施することができる。好適なカップリング剤(活性化剤)は当業者に公知であり、例えば、カルボジイミド類、例えばDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)およびDCI(ジイソプロピルカルボジイミド)、ベンゾトリアゾール誘導体類、例えばHBTU((O-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)およびHCTU(1H-ベンゾトリアゾリウム-1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロテトラフルオロボレート)、並びにホスホニウム活性化剤、例えばBOP((ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、Py-BOP((ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)およびPy-BrOP(ブロモトリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)から選択される。一般的に、活性化剤は過剰量で用いられる。ベンゾトリアゾールおよびホスホニウムのカップリング剤は、一般に塩基性媒体中で用いられる。
【0114】
また、好適なアシル化剤XVは、ヒドロキシルアミンIVと反応し、ヒドロキシルアミドVを得ることができる化合物R4-COOHの誘導体、例えば、エステルR4-C(O)-OR21 (L1=OR21)、酸ハロゲン化物R4-C(O)X(式中、Xはハロゲン原子である)(L1=ハロゲン)、または酸無水物R4-C(O)-O-(O)C-R22 (L1=-O-C(O)-R22)である。
【0115】
酸無水物R4-C(O)-O-(O)C-R22は、対称無水物R4-C(O)-O-(O)C-R4または非対象無水物のいずれかであり、式中の-O-(O)C-R22は、反応で使用されるヒドロキシルアミンIVにより容易に置換され得る基である。化合物R4-COOHが一緒になって好適な混合無水物を形成することができる好適な酸誘導体は、例えば、クロロギ酸のエステル、例としてはイソプロピルクロロホルメートおよびイソブチルクロロホルメート、またはクロロ酢酸のエステルである。
【0116】
好適なエステルR4-COOR21は、好ましくはアルカノールR21-OH(式中、R21はC1-C4-アルキルである)、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ブタン-2-オール、イソブタノールおよびtert-ブタノールから誘導されるが、好ましいのは、メチルエステルおよびエチルエステル(R21=メチルまたはエチル)である。また好適なエステルは、C2-C6-ポリオール、例えば、グリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトールおよびソルビトールから誘導することができるが、好ましいのは、グリセリルエステルである。ポリオールエステルを使用する場合、混合エステル(すなわち、異なるR21基とのエステル)を使用することが可能である。
【0117】
あるいは、エステルR4-COOR21は、化合物R4-COOHと、活性化エステル形成性アルコール、例えば、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミドまたはOPfp(ペンタフルオロフェノール)との反応により形式的に得られる、いわゆる活性化エステルである。
【0118】
あるいは、工程(iii)におけるN-アシル化で使用される試薬XVは、他の慣用の脱離基L1(例えばピロリルまたはイミダゾリル)を有していてもよい。
【0119】
式XVで表される上記試薬による本発明に係るN-アシル化は、公知の方法と同様にして実施することができる。
【0120】
式IVで表される化合物のN-アシル化に関し、好ましいのは、式(XV)のハロゲン化カルボニル、特に脱離基L1が塩素または臭素、とりわけ塩素であるものを使用することである。この目的のために、1molの化合物IVに対して、好ましくは0.5〜2mol、特に0.8〜1.7molの塩化カルボニルXVを使用する。
【0121】
アシル化は、前の工程(ii)の水素化で用いた不活性有機溶媒の存在下で、例えば非プロトン性溶媒、例としては脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素など、具体的にはトルエン、キシレン、ヘプタンまたはシクロヘキサン中で、あるいは脂肪族エーテルまたは環状エーテル、好ましくはDME、THFまたはジオキサン中で行うのが有利である。さらに、反応混合物に、極性非プロトン性溶媒、例えば脂肪族ケトン、好ましくはアセトン、アミド、好ましくはDMF、またはスルホキシド、好ましくはDMSO、尿素、例えばテトラメチル尿素もしくは1,3-ジメチルテトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、またはハロゲン化脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素、例えばジクロロメタンもしくはクロロベンゼンを加えることもできる。
【0122】
概して、この反応は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム、アミン、例えば、トリエチルアミン、ピリジンまたはN,N-ジエチルアニリン、あるいはアルカリ金属アルコレート、例えばナトリウムメチレートもしくはエチレートもしくはカリウムtert-ブチレートの存在下で行なう。しかし、塩基は絶対に必須ではなく、省略することが可能で、必要な場合には、他の酸捕捉剤(例えば塩基性イオン交換樹脂)または水と置き換えることができる。
【0123】
またこの反応は、水相(これは、塩基、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩を含有していてもよいし、含有していなくてもよい)と、第2の相(これは少なくとも1種の本質的に水非混和性である有機溶媒系のもの)からなる二相性系で実施することもできる。反応媒体中に存在していてもよい好適な相間移動触媒は、例えば、ハロゲン化アンモニウムおよびテトラフルオロボレートおよびハロゲン化ホスホニウムである。
【0124】
アシル化の反応温度は、一般には、-30℃〜使用する溶媒の還流温度であり、好ましくは-20〜50℃である。
【0125】
工程(iii)のN-アシル化反応を介して得られた反応混合物の後処理と式(V)の化合物の単離は、慣用の方法で、例えば、沈殿した反応生成物Vの濾別、水性抽出処理、例えば減圧下での溶媒の除去、またはこれらの方法の組み合わせにより行なわれる。さらなる精製は、例えば、結晶化、蒸留またはクロマトグラフィーにより実施可能である。
【0126】
さらに、本発明は式(VI):
【化17】

【0127】
(式中、R1、n、R2、m、R3、p、R4およびR5は、それぞれ、本明細書でこれより前に定義した通りである)
で表される化合物の製造方法であって、
(i) 上記に記載の方法に従って、式(II)で表されるハロゲン化フェニルを3-ベンジルオキシピラゾールIIIa(式中、Yはニトロである)と反応させることにより、式(Ia)で表される1-フェニルピラゾールを提供するステップと、続いて、
(ii) 式Iaで表される1-フェニルピラゾールを式IVで表されるN-ヒドロキシルアミンに変換するステップと、
(iii) 式IVで表される化合物を式Vで表される化合物に変換するステップと、さらに、
(iv) 式Vで表される化合物を式VIで表される化合物に変換するステップ
とを含む、前記方法を提供する。
【0128】
式VIで表される化合物への変換には、対応する化合物Vに対するO-アルキル化が含まれる。工程(iv)におけるN-ヒドロキシルアミドVのO-アルキル化は、O-アルキル化剤芳香族N-ヒドロキシルアミドに関する公知の方法(例えば、WO 96/01256およびWO 99/12911に記載されている方法)に従って実施することができる。
【0129】
工程(iv)におけるO-アルキル化は、一般には、化合物Vを式(XVI):
【化18】

【0130】
(式中、R5は本明細書でこれより前に定義した通りであり、L2は脱離基(これは典型的にはハロゲン化物、特に塩化物または臭化物、硫酸塩、スルホン酸塩、好ましくはメタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩、o-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩(ブロシル酸塩(brosylate))またはトリフルオロメタンスルホン酸塩(トリフル酸塩)、またはジアゾ基である)である)
で表される試薬と反応させることにより行なわれる。
【0131】
好ましい試薬XVIはハロゲン化物であり、R5がメチルの場合、硫酸ジメチルである。
【0132】
本発明に係る方法の工程(iv)におけるアルキル化は、通常、好ましくは塩基の存在下で、不活性溶媒または希釈剤中で実施される。
【0133】
好適な溶媒または希釈剤の例は、上記の工程(iii)のN-アシル化に関して記述したものである。
【0134】
好適な塩基は、無機塩基、例えば炭酸塩類、例えば、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、重炭酸塩類、例えば、炭酸水素カリウムまたは重炭酸ナトリウム、水酸化物類、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、アルカリ金属水素化物類、例えば水素化ナトリウムまたは水素化カリウム、有機塩基、例えばアミン類、例えば、トリエチルアミン、ピリジンまたはN,N-ジエチル-アニリン、およびアルカリ金属アルコラート類、例えば、ナトリウムメチレートまたはエチレートまたはカリウムtert-ブチレートである。
【0135】
好ましくは、試薬XVI(例えば硫酸ジメチル)およびN-アシル化ヒドロキシルアミンVを最初に取り、塩基(例えば水酸化カリウム)をその中に定量し供給する。
【0136】
塩基または試薬XVIの量は、好ましくは、化合物Vの量に対して半分のモル量〜2倍のモル量である。特に好ましくは、塩基および試薬XVIはわずかに過剰量で用いられる。
【0137】
一般的に、アルキル化の反応温度は、-78℃〜反応混合物の沸点、好ましくは-30〜100℃、特に好ましくは10〜90℃である。
【0138】
工程(iii)におけるN-アシル化の場合と同様に、O-アルキル化も二相系で行なうことができる。上記の相間移動触媒が使用可能である。
【0139】
工程(iv)のO-アルキル化反応を介して得られる反応混合物の後処理および式VIで表される化合物の単離は、慣用の方法で、例えば、工程(iii)から得たN-アシル化生成物Vに関して前述した方法により行うことができる。
【0140】
工程(i)を含む本発明の方法は、複雑性のレベルは低く、良好な収率と選択性で、1-ハロゲン化フェニルIを調製することができる。1-ハロゲン化フェニルIは、それぞれ、工程(ii)、(iii)および(iv)を含む本発明の方法に従ってそれから得ることができるN-ヒドロキシルアミンIV、N-ヒドロキシルアミドVおよびN-アルコキシアミドVIの調製に適する出発化合物である。
【0141】
さらなる態様では、本発明は、式(IIIa):
【化19】

【0142】
(式中、Yは、ニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rd
【化20】

【0143】
であり、
各R2は、独立して、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、C1-C4-アルキルチオおよびC1-C4-アルコキシカルボニルから選択され;
mは、0、1または2であり;
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され、
pは、0、1、2または3である)
で表される3-ベンジルオキシピラゾールに関する。
【0144】
好ましいのは、可変部分のY、R2、m、R3およびpが前述の好ましい意味を有する、化合物IIIaである。
【0145】
本発明を以下の実施例(これに限定されるものではない)によりさらに説明する。
【実施例】
【0146】
I. 式(IIIa)で表される3-ベンジルオキシピラゾールの調製
I.1 3-ヒドロキシ-1H-ピラゾール
ヒドラジン水和物(H2O中80%、6.7mL、110mmol)を、メタノール10mL中の(E)-メチルメトキシアクリレート(11.6g、100mmol)の溶液にゆっくりと加えた。添加完了時に、この溶液を90分間加熱還流した。次いで、全揮発性物質を減圧下で除去したところ、わずかに黄色の固体(8.2g、97.5mmol、98%収率)として生成物を得た。これは、さらに変換を行うのに十分な純度であった。
【0147】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz):δ (ppm) = 10.40 (bs, 1 H); 7.35 (d, J = 3.0 Hz, 1 H); 5.44 (d, J = 3.0 Hz, 1 H)。
【0148】
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz):δ (ppm) = 161.0; 130.1; 89.3。
【0149】
融点:137℃。
【0150】
I.2 1-アセチル-3-ヒドロキシ-1H-ピラゾール
ピリジン(40mL)中の3-ヒドロキシ-1H-ピラゾール(8.2g、97.5mmol)の溶液を95℃に加熱した。無水酢酸(9.4mL、102mmol)およびピリジン(20mL)からなる混合物を15分かけて加えた。次いで、95℃で撹拌を60分間継続した。次いで、全揮発性物質を減圧下で除去し、残留物にジエチルエーテル200mLを加えた。スラリーを室温で一晩撹拌し、次いで、固体を濾別し、ジエチルエーテルですすいだ。オフホワイトの固体(10.3g、81.7mmol、84%収率)として生成物が得られた。
【0151】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz):δ (ppm) = 10.95 (s, 1 H); 8.13 (d, J = 3.0 Hz, 1 H); 6.00 (d, J = 3.0 Hz, 1 H), 2.48 (s, 3 H)。
【0152】
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz):δ (ppm) = 167.9; 163.9; 129.8; 99.8; 21.3。
【0153】
融点:191℃。
【0154】
I.3 3-(2-ニトロベンジルオキシ)-1H-ピラゾール
1-アセチル-3-ヒドロキシ-ピラゾール(3.4g、27.0mmol)、2-ニトロベンジルブロミド(5.9g、27.3mmol)およびK2CO3(4.0g、28.9mmol)を2-ブタノン75mL中に含む懸濁液を90分間加熱還流した。室温に冷却した後、沈殿した塩を濾別し、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)ですすいだ。次いで、濾液を減圧(50mbar)下で濃縮し、テトラヒドロフラン(THF)およびメタノール(MeOH)(3:2、50mL)の混合物に再溶解させた。2mLの10%NaOH溶液を加え、その溶液を周囲温度で60分間撹拌した。次いで、全揮発性物質を減圧下で除去した(50mL)。残留物を20mLのH2Oおよび30mLの酢酸エチル(EtOAc)で希釈した。水相はEtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を水および飽和食塩水(ともに30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。全揮発性物質の蒸発後に粗生成物が得られ、ジクロロメタン(15mL)から再結晶化させ、黄色がかった結晶(5.0g、22.8mmol、84%)として生成物を得た。
【0155】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz):δ (ppm) = 11.93 (s, 1 H); 8.10 (d, J = 8.0 Hz, 1 H); 7.77-7.80 (m, 2 H); 7.58-7.62 (m, 1 H); 7.54 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.74 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.59 (s, 2 H)。
【0156】
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz):δ (ppm) = 162.3; 147.3; 133.8; 133.1; 130.1; 129.0; 128.8; 124.5; 89.4; 66.6。
【0157】
融点:87℃。
【0158】
I.4 3-(2-ブロモベンジルオキシ)-1H-ピラゾール
1-アセチル-3-ヒドロキシ-ピラゾール(1.0g、7.9mmol)、2-ブロモベンジルブロミド(2.0g、7.9mmol)およびK2CO3(1.2g、8.4mmol)を2-ブタノン20mL中に含む懸濁液を90分間加熱還流した。室温に冷却後、沈殿した塩を濾別し、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)ですすいだ。次いで、濾液を減圧(50mbar)下で濃縮し、テトラヒドロフラン(THF)およびメタノール(MeOH)(3:2、25mL)の混合物中に再溶解させた。1mLの10%NaOH溶液を加え、その溶液を周囲温度で60分間撹拌した。次いで、全揮発性物質を減圧下で除去した(50mL)。残留物を10mLのH2Oおよび20mLの酢酸エチル(EtOAc)で希釈した。水相をEtOAc(2×10mL)で抽出した。合わせた有機層を水および飽和食塩水(ともに20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。全揮発性物質の蒸発後に粗生成物が得られ、それはそれ以上の精製を行うことなく次の工程で使用した(1.9g、7.5mmol、95%)。
【0159】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ (ppm) = 7.56 (d, J = 8.0 Hz, 2 H); 7.36 (d, J = 1.5 Hz, 1 H); 7.30 (t, J = 7.5 Hz, 1 H); 7.17 (dt, J = 1.5 Hz, J = 8.0 Hz, 1 H); 5.80 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.30 (s, 2 H)。
【0160】
13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ (ppm) = 163.4; 136.5; 132.6; 130.3; 129.2; 129.1; 127.5; 122.5; 90.8; 70.4。
【0161】
I.5 メチルN-{2-[3'-(1H-ピラゾール)-イルオキシメチル]-フェニル}-N-メトキシカーバメート
1-アセチル-3-ヒドロキシ-ピラゾール(0.6g、5.1mmol)、メチルN-(2-ブロモメチルフェニル)-N-メトキシカーバメート(〜70%純度、2.0g、5.1mmol)およびK2CO3(0.9g、6.6mmol)を2-ブタノン20mLに含む懸濁液を90分間加熱還流した。次いで、混合物を室温に冷却し、濾過した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜80:20)に供し、黄褐色の液体(0.9g、3.3mmol、65%収率)として生成物を得た。アセチル化化合物(0.73g、2.3mmol)をメタノール7mL中に溶解させた。60μLのトリエチルアミンを加え、溶液を室温で60分間撹拌した。次いで、全揮発性物質を減圧下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜80:20)に供し、オフホワイトの固体(0.53g、1.9mmol、83%収率)として生成物を得た。
【0162】
II. 式(I)で表される1-フェニルピラゾールの調製
II.1 1-(4-クロロフェニル)-3-(2-ニトロベンジルオキシ)ピラゾール
II.1a 4-クロロフェニルブロミドによる変換
2.0mLのトルエン中に3-(2-ニトロベンジルオキシ)-1H-ピラゾール(0.20g、0.91mmol)、4-クロロブロモベンゼン(0.14g、0.73mmol)、CuI(9mg、0.05mmol)、K2CO3(0.19g、1.4mmol)およびN,N'-ジメチルシクロヘキサンジアミン(72μL、0.46mmol)を含んでなる懸濁液を20時間100℃に加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、直ちにカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜80:20)に供した。生成物が黄色の固体(180mg、0.55mmol、75%)として得られた。
【0163】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz):δ (ppm) = 8.39 (d, J = 3.0 Hz, 1 H); 8.13 (dd, J = 1.0 Hz, J = 8.0 Hz, 1 H); 7.84 (dd, J = 1.5 Hz, J = 8.0 Hz, 1 H); 7.80 (dt, J = 1.5 Hz, J = 7.0 Hz, 1 H); 7.75 (td, J = 2.5 Hz, J = 9.0 Hz, 2 H); 7.63 (dt, J = 2.0 Hz, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.50 (dd, J = 2.5 Hz, J = 9.0 Hz, 2 H); 6.15 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.65 (s, 2 H)。
【0164】
13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz):δ (ppm) = 163.4; 147.5; 138.3; 133.9; 132.3; 129.7; 129.4; 129.3; 129.2; 129.1; 124.7; 118.6; 94.5; 66.9。
【0165】
融点:140℃。
【0166】
II.1b 4-クロロヨードベンゼンによる変換
4-クロロ-ヨードベンゼンを使用する以外は、II.1aに記載した方法と同様の方法に従い、54%の収率を得た。これには、2%の好ましくない位置異性体が含まれていた。
【0167】
II.2 1-(4-クロロフェニル)-3-(2-ブロモベンジルオキシ-)-1H-ピラゾール
3-(2-ブロモベンジルオキシ)-1H-ピラゾール(0.20g、0.91mmol)、4-クロロヨードベンゼン(0.17g、0.73mmol)、CuI(9mg、0.05mmol)、K2CO3(0.05mg、0.38mmol)およびN,N'-ジメチルシクロヘキサンジアミン(72μL、0.46mmol)をトルエン2mL中に含んでなる懸濁液を20時間100℃に加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、直ちにカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜80:20)に供した。生成物が無色の固体(140mg、0.14mmol、53%収率)として得られた。
【0168】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ (ppm) = 7.71 (d, J = 3.0 Hz, 1 H); 7.58-7.61 (m, 2 H); 7.56 (d, J = 9.0 Hz, 2 H); 7.37 (d, J = 9.0 Hz, 2 H); 7.34 (t, J = 8.0 Hz, 1 H); 7.19 (dt, J = 1.5 Hz, J = 7.5 Hz, 1 H); 5.97 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.39 (s, 2 H)。
【0169】
13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ (ppm) = 164.2; 136.4; 13.7; 130.7; 129.5; 129.4; 129.3; 127.8; 127.5; 122.9; 119.0; 94.5; 70.3。
【0170】
融点:45℃。
【0171】
II.3 メチルN-{2-[3'-(1-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾール)-イルオキシメチル]-フェニル}-N-メトキシカーバメート
メチルN-{2-[3'-(1H-ピラゾール)-イルオキシメチル]-フェニル}-N-メトキシカーバメート(0.25g、0.91mmol)、4-クロロブロモベンゼン(0.14g、0.73mmol)、CuI(9mg、0.05mmol)、K2CO3(0.05mg、0.38mmol)、およびN,N'-ジメチルシクロヘキサンジアミン(72μL、0.46mmol)をトルエン2mL中に含んでなる懸濁液を20時間100℃に加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、直ちにカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜80:20)に供した。生成物がオフホワイトの油状物(91mg、0.23mmol、32%収率)として得られた。
【0172】
1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz):δ (ppm) = 7.61-7.62 (m, 1 H); 7.60 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 7.44 (d, J = 9.0 Hz, 2 H); 7.30-7.36 (m, 2 H); 7.26 (d, J = 9.0 Hz, 2 H); 7.20 (t, J = 7.5 Hz, 1 H); 5.87 (d, J = 2.5 Hz, 1 H); 5.36 (s, 2 H); 3.73 (s, 3 H); 3.72 (s, 3 H)。13C NMR (DMSO-d6, 125 MHz):δ (ppm) = 164.2; 155.8; 138.6; 137.5; 134.8; 130.4; 129.2; 128.9; 128.8; 128.5; 127.8; 127.1; 118.8; 94.5; 66.9; 62.0; 53.4。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
各R1は、独立して、塩素、フッ素、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
nは、1、2または3であり;
各R2は、独立して、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、C1-C4-アルキルチオおよびC1-C4-アルコキシカルボニルから選択され;
mは、0、1または2であり;
Aは、C1-C12-アルキル、アリールまたはアリール-C1-C4-アルキルであり、ここで、Aは、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、基Ra、基Rb、基Rcおよび基Rd
【化2】

(式中、
R4は、H、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシ、C1-C4-ハロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール-C1-C4-アルコキシであり、ここで、最後に記載の3つの基の中のアリール基は、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよく、
R5は、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキルまたはアリール-C1-C4-アルキルであり、ここで、最後に記載の基の中のアリール基は、場合により、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよい)
から選択される1、2、3または4個の置換基を有していてもよい)
で表される1-フェニルピラゾールの製造方法であって、以下の工程、すなわち、
(i) 式(II)で表されるハロゲン化フェニルを式(III)で表されるピラゾール誘導体:
【化3】

(式中、
Xは、塩素、ヨウ素または臭素であり;
R1、n、R2、mおよびAは、それぞれ、上記で定義した通りである)
と、塩基、並びに、リガンドとパラジウム化合物、鉄化合物または銅化合物から選択される金属化合物とを含む触媒系の存在下で反応させる工程
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
リガンドが式X:
【化4】

(式中、
VおよびWは、独立して、窒素(これは場合により水素原子に結合されていてもよい)、酸素および硫黄から選択され、この場合、窒素はアミン、イミンまたは窒素含有複素環の一部として包含されており、またこの場合、酸素はオキソ置換基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基または酸素含有複素環の一部として包含されており、さらにこの場合、硫黄はチオケトン基、チオール基、アルキルチオ基または硫黄含有複素環の一部として包含されており;
T'は、存在しないか、またはメタンジイルもしくはメテンジイル架橋であり;
R15およびR16は、互いに独立して、存在しないか、または水素、C1-C6-アルキル、C2-C6-アルケニルもしくはアリールから選択され、ここで、最後に記載の3つの基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;あるいは、
Vおよび/またはWが窒素である場合、それらに結合しているそれぞれの基R15および/またはR16は、ヒドロキシまたはC1-C4-アルコキシであってもよく;
R17およびR18は、独立して、水素、ヒドロキシ、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ、C2-C6-アルケニルまたはアリールから選択され、ここで、最後に記載の4つの基は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;あるいは、
T'、R15、R16、R17およびR18から選択される部分の1組または複数の組は、それらが結合している原子と一緒になって、3、4、5、6または7員の飽和、不飽和または芳香族炭素環を形成しているか、環員としてO、SおよびNから選択される1、2または3個のヘテロ原子を含有する3、4、5、6または7員の飽和、不飽和または芳香族複素環を形成しており、ここで、前記炭素環または複素環は、場合により、ハロゲン、C1-C4-アルキルおよびC1-C4-ハロアルキルから選択される1、2または3個の置換基を有していてもよく;
【化5】

は、単結合または二重結合である)
で表される二座リガンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リガンドがN,N'-ジメチル-シクロヘキサン-1,2-ジアミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属化合物が銅(I)化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
金属化合物とリガンドのモル比が1:2〜1:20の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属化合物とリガンドのモル比が1:5〜1:15の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩基がアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属リン酸塩から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)の反応が非プロトン性有機溶媒中で行なわれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
非プロトン性有機溶媒がトルエン、1,2-ジメトキシエタンおよび1,4-ジオキサンから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(II)で表されるハロゲン化フェニルが式(IIa):
【化6】

(式中、Xは請求項1で定義した通りである)
で表される化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式(III)で表されるピラゾール誘導体が式(IIIa):
【化7】

(式中、
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
pは、0、1、2または3であり;
Yは、ハロゲン、ニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rdであり;
R2、m、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ、請求項1で定義した通りである)
で表される化合物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
Yがニトロであり、さらに以下の工程、すなわち、
(ii) 式Ia:
【化8】

で表される1-フェニルピラゾールを、式IV:
【化9】

(式中、
R1、n、R2およびmは、それぞれ、請求項1で定義した通りであり;
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
pは、0、1、2または3である)
で表される化合物へ変換する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに以下の工程、すなわち、
(iii) 式IVで表される化合物を式V:
【化10】

(式中、
R1、n、R2、mおよびR4は、それぞれ、請求項1で定義した通りであり;
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
pは、0、1、2または3である)
で表される化合物に変換する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに以下の工程、すなわち、
(iv) 式Vで表される化合物を式VI:
【化11】

(式中、
R1、n、R2、m、R4およびR5は、それぞれ、請求項1で定義した通りであり;
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され;
pは、0、1、2または3である)
で表される化合物に変換する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(IIIa):
【化12】

(式中、
各R3は、独立して、ハロゲン、シアノ、C1-C4-アルキル、C1-C4-ハロアルキル、C1-C4-アルコキシおよびC1-C4-ハロアルコキシから選択され、
pは、0、1、2または3であり、
Yは、ニトロ、基Ra、基Rb、基Rcまたは基Rdであり、
R2、m、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ、請求項1で定義した通りである)
で表される化合物。

【公表番号】特表2013−503834(P2013−503834A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527336(P2012−527336)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062950
【国際公開番号】WO2011/026937
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】