説明

1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物及び1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法

【課題】1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(2)で表される化合物を亜硝酸化合物と反応させることによる、一般式(1)で表される化合物の製造方法。


[式中、X1はハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル等を表し、X2は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル等、C1〜C6ハロアルキルを表し、Yはハロゲン原子を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬あるいは電子材料等の製造中間体として有用な1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法、並びにその製造中間体として有用な1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、置換イソキサゾリン化合物は、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4−(5−置換−5−置換フェニル−4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)ベンズアミド等が有害生物防除剤、特に殺虫・殺ダニ剤又は哺乳動物及び鳥類の内部もしくは外部寄生虫防除剤として用いられることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物に関しては、置換イソキサゾリン化合物の製造中間体として用いられることが知られており(例えば、特許文献3〜特許文献6参照)、1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物を製造する方法としては、置換臭化ベンゼン、置換芳香族アルデヒド又は置換安息香酸エステルを用いる方法が知られている(例えば、特許文献3及び特許文献5〜8参照)。
1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物に関しては、1−(4−アミノ−3,5−ジブロモフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンがビスアミド殺虫剤化合物の合成中間体として知られている(例えば、特許文献9参照)。非特許文献においては、1−(4−アミノ−3−ヨードフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン及び1−(4−アミノ−3,5−ジヨードフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、1−(4−アミノフェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物を亜硝酸化合物と反応させる例は、例えば、1−(4−アミノフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンをSandmeyer反応により、アミノ基をハロゲン原子に変換する例が知られている(例えば、非特許文献2参照。)。しかしながら、本発明に関わるアミノ基を水素原子に変換する例又は1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物を用いて1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物を製造する方法は具体的には何ら開示されてない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/085216号
【特許文献2】国際公開第2007/026965号
【特許文献3】国際公開第2007/074789号
【特許文献4】国際公開第2009/001942号
【特許文献5】国際公開第2009/126668号
【特許文献6】国際公開第2010/125130号
【特許文献7】特開2008−133242号公報
【特許文献8】国際公開第2009/116577号
【特許文献9】国際公開第2009/049845号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tetrahedron, 2004年、60巻、11191頁
【非特許文献2】The Journal of Organic Chemistry、1970年、35巻、1711頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
農園芸分野及び畜産・衛生分野等における有害な節足動物を対象とした害虫防除剤(農園芸用殺虫・殺ダニ剤、家畜や愛玩動物としての哺乳動物及び鳥類の内部もしくは外部寄生虫防除剤、家庭用及び業務用の衛生害虫や不快害虫駆除剤)として、幅広い種類の害虫種に卓効を示し、既存の殺虫剤・殺ダニ剤に対して抵抗性を獲得した害虫に対しても十分な防除効果を発揮する置換イソキサゾリン化合物は、極めて低薬量で防除効果を発揮することから低残留性で環境に対する負荷も軽く、且つ、哺乳動物、魚類及び益虫等の非標的生物に対して悪影響を及ぼすことの少ない優れた有害生物防除剤である。このような置換イソキサゾリン化合物を工業的に安定に生産し実用に供するためには、より効率的な製造方法の開拓、及びそれに用いられる有用な製造中間体の開発が常に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意研究を重ねた結果、特定の置換イソキサゾリン化合物の製造中間体として用いることができる、下記一般式(2)で表される1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物及び一般式(1)で表される1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記〔1〕〜〔9〕に関するものである。
【0009】
〔1〕
一般式(2):
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、X1は、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表す。]で表される1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物に、亜硝酸化合物を反応させることによる、一般式(1):
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、X1、X2、Yは前記と同様の意味を表す。]で表される1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0014】
〔2〕
X1及びX2は、各々独立してハロゲン原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表し、
Yは、フッ素原子を表す上記〔1〕記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0015】
〔3〕
X1及びX2は、各々独立して塩素原子を表す上記〔2〕記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0016】
〔4〕
反応を、酸の存在下で行なう、上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか1項に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0017】
〔5〕
酸として、酢酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる上記〔4〕に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0018】
〔6〕
亜硝酸化合物として、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸C1〜C6アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる上記〔1〕乃至〔5〕のいずれか1項に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【0019】
〔7〕
一般式(2):
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、(1)X1が、フッ素原子、塩素原子、シアノ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表す場合、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表し、
(2)X1が、臭素原子、よう素原子又はニトロを表す場合、
X2は、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表す。]で表される1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。
【0022】
〔8〕
Yは、フッ素原子を表し、
(1)X1が、フッ素原子、塩素原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表す場合、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表し、
(2)X1が、臭素原子又はヨウ素原子を表す場合、
X2は、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表す上記〔7〕記載の1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。
【0023】
〔9〕
X1は、塩素原子を表し、
X2は、水素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す上記〔7〕記載の1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。
【発明の効果】
【0024】
本発明は多くの農業害虫、ハダニ類、哺乳動物又は鳥類の内部もしくは外部寄生虫に対して優れた殺虫・殺ダニ活性を有し、既存の殺虫・殺ダニ剤に対して抵抗性を獲得した害虫に対しても十分な防除効果を発揮する置換イソキサゾリン化合物の製造中間体である、1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の新しい製造法、及びその製造中間体として有用な、新規な1−(4−アミノ置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物を提供する。本発明の方法においては、触媒若しくは遷移金属に由来する有害な廃棄物は実質的に生成しない。更に、高価な試剤を必要とせず、原料や生成物の分解が少なく、工業的な利用価値の高い方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において示した各置換基の具体例を以下に示す。ここで、n-はノルマル、i-はイソ、s-はセカンダリー及びt-はターシャリーを各々意味し、Phはフェニルを意味する。
【0026】
本発明化合物におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。尚、本明細書中「ハロ」の表記もこれらのハロゲン原子を表す。
【0027】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、ヘプチル基、5-メチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、2-メチルオクチル基、デシル基、2-メチルノニル基、ウンデシル基、2-メチルデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0028】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-トリフルオロメチルエチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0029】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0030】
本明細書におけるCa〜Cbハロシクロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、ハロゲン原子による置換は環構造部分であっても、側鎖部分であっても、或いはそれらの両方であってもよく、さらに、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジクロロシクロプロピル基、2,2-ジブロモシクロプロピル基、2,2-ジフルオロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジクロロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジブロモ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジクロロ-3,3-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、2-トリフルオロメチルシクロヘキシル基、3-トリフルオロメチルシクロヘキシル基、4-トリフルオロメチルシクロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0031】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0032】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0033】
次に、一般式(2)で表される化合物を亜硝酸化合物と反応させることによる、一般式(1)で表される化合物の製造方法について、詳細に説明する。
【0034】
【化4】

【0035】
当製造方法は、一般式(2)[式中X1、X2及びYは各々前記と同様の意味を表す。]で表される化合物を酸の存在下、亜硝酸化合物と反応させて一般式(3)[式中X1、X2及びYは各々前記と同様の意味を表し、X-は塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン又は硫酸水素イオンを表す。]で表されるジアゾニウム塩を調製した後、還元剤と反応させて一般式(1)[式中X1、X2及びYは各々前記と同様の意味を表す。]を製造する方法である。
【0036】
一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の調製で用いる酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸又は硫酸が挙げられ、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸又は硫酸が挙げられ、さらに好ましくは、塩酸又は硫酸が挙げられる。この酸は単独で、又は任意の混合割合の混合物として用いることができる。
【0037】
酸の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよいが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.5〜50当量、より好ましくは1.5〜20当量の範囲を例示できる。
【0038】
用いる亜硝酸化合物としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、硝酸銀等の亜硝酸塩、亜硝酸C〜Cアルキルが挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムが挙げられる。
【0039】
亜硝酸化合物の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよいが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜20当量、好ましくは1.0〜10当量、より好ましくは1.5〜3.0当量の範囲を例示できる。
【0040】
一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の調製に用いる溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができる。亜硝酸化合物の溶解性、反応性の観点から、好ましい溶媒としては水、アルコール類、アルコール類と水の混合溶媒、非プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒と水の混合溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類と水の混合溶媒、芳香族炭化水素類、芳香族炭化水素類と水の混合溶媒が挙げられる。更に好ましい溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エタノールと水の混合溶媒、1−プロパノールと水の混合溶媒、2−プロパノールと水の混合溶媒、アセトニトリルと水の混合溶媒、ジクロロメタンと水の混合溶媒、1,2−ジクロロエタンと水の混合溶媒、トルエン、トルエンと水の混合溶媒が挙げられる。
【0041】
溶媒量としては、反応系の攪拌が十分にできる量であれば良いが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1モルに対して通常0.05〜10L(リットル)、好ましくは0.5〜2Lの範囲であれば良い。
【0042】
一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の調製における反応温度は、−20〜80℃で任意の温度を設定することができるが、好ましくは−10〜60℃と設定でき、特に−5〜50℃と設定することが好ましい。
【0043】
一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の調製における反応時間は、反応基質の濃度、反応温度によって変化するが、通常0.1〜48時間の範囲で任意に設定することができるが、好ましくは0.1〜24時間と設定でき、さらに好ましくは0.5〜10時間と設定することができる。
【0044】
一般式(3)で表されるジアゾニウム塩の調製後の反応混合物は、反応混合物のまま、濃縮して、分液して、又は析出させて塩で取り出して、といった処理を行うことができるが、好ましくは、反応混合物のまま、又は分液して次の工程に用いる。
【0045】
次に、一般式(3)で表されるジアゾニウム塩を、還元剤と反応させて一般式(1)を製造する方法である。
【0046】
用いる還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸塩、ヘキサメチルリン酸トリアミド、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル等のギ酸エステル類、フェノール、亜スズ酸ナトリウム、水素化トリブチルスズ、トリエチルシラン、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられるが、好ましくは次亜リン酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチルが挙げられる。
【0047】
還元剤の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよく、必要ならば溶媒を兼ねて用いることができ、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.5〜50当量、より好ましくは1.5〜20当量の範囲を例示できる。
【0048】
また必要ならば、触媒を用いることができる。用いる触媒としては、例えば、無水硫酸銅(II)、硫酸銅(II)五水和物、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、無水塩化銅(II)、塩化銅(II)二水和物、無水硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)七水和物等が挙げられる。
【0049】
触媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して0.001〜1当量添加することができる。
【0050】
還元剤との反応により一般式(1)を製造する方法は、必要に応じて溶媒の存在下で行なっても良い。当製造方法に用いる溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及び酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができるが、好ましくは水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンの単独、又は任意の混合割合の混合溶媒で用いるのが良く、さらに好ましくは水、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、トルエン、ヘプタンの単独、又は任意の混合割合の混合溶媒で行なうのが好ましい。
【0051】
溶媒量としては、反応系の攪拌が十分にできる量であれば良いが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1モルに対して通常0.05〜10L(リットル)、好ましくは0.5〜2Lの範囲であれば良い。
【0052】
当製造方法の反応温度は、−20℃〜反応混合物の還流温度範囲で任意の温度を設定することができるが、好ましくは0〜100℃と設定でき、さらに好ましくは20〜70℃と設定することができる。
反応時間は、反応基質の濃度、反応温度によって変化するが、通常0.1〜48時間の範囲で任意に設定することができるが、好ましくは0.1〜24時間と設定でき、さらに好ましくは0.5〜10時間と設定することができる。
【0053】
当製造方法において、反応終了後の反応混合物は、直接濃縮、又は有機溶媒に溶解し、水洗後濃縮、又は氷水に投入、有機溶媒抽出後濃縮といった通常の後処理を行い、目的の本発明化合物を得ることができる。また、精製の必要が生じたときには、蒸留、逆抽出、再結晶、カラムクロマトグラフ、薄層クロマトグラフ、液体クロマトグラフ分取等の任意の精製方法によって分離、精製することができる。
また、一般式(2)で表される化合物を溶媒、還元剤及び酸の存在下、亜硝酸化合物と反応させて、1工程で一般式(1)を製造する方法もある。
【0054】
【化5】

【0055】
当製造方法は酸の存在下に行なわれる。用いる酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸が挙げられる。この酸は単独で、又は任意の混合割合の混合物として用いることができる。
【0056】
酸の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよく、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜100当量、好ましくは1.5〜50当量、より好ましくは1.5〜30当量の範囲を例示できる。
【0057】
用いる還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム等の次亜リン酸塩、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル等のギ酸エステル類が挙げられるが、好ましくは次亜リン酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチルが挙げられる。
【0058】
還元剤の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよく、必要ならば溶媒を兼ねて用いることができ、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜200当量、好ましくは1.5〜100当量、より好ましくは1.5〜30当量の範囲を例示できる。
【0059】
また必要ならば、触媒を用いることができる。用いる触媒としては、例えば、無水硫酸銅(II)、硫酸銅(II)五水和物、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(I)、無水塩化銅(II)、塩化銅(II)二水和物、無水硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)七水和物等が挙げられる。
【0060】
触媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して0.001〜1当量添加することができる。
【0061】
用いる亜硝酸化合物としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、硝酸銀等の亜硝酸塩、亜硝酸C〜Cアルキルが挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムが挙げられる。
【0062】
亜硝酸化合物の使用量は、反応が十分に進行する量であれば何れでもよいが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1当量に対して1.0〜20当量、好ましくは1.0〜10当量、より好ましくは1.5〜3.0当量の範囲を例示できる。
【0063】
当製造方法は、必要に応じて溶媒の存在下で行なっても良い。当製造方法に用いる溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及び酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができる。亜硝酸化合物の溶解性、反応性及び反応操作性の観点から、好ましくは水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンを単独、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いるのが良く、さらに好ましくは水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールを単独、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いるのが好ましい。
【0064】
溶媒量としては、反応系の攪拌が十分にできる量であれば良いが、一般式(2)で表される化合物(原料化合物)1モルに対して通常0.05〜10L(リットル)、好ましくは0.5〜2Lの範囲であれば良い。
【0065】
当製造方法の反応温度は、−20℃〜反応混合物の還流温度範囲で任意の温度を設定することができるが、好ましくは−10〜100℃と設定でき、特に−5〜80℃と設定することが好ましい。
【0066】
反応時間は、反応基質の濃度、反応温度によって変化するが、通常0.1〜48時間の範囲で任意に設定することができるが、好ましくは0.1〜24時間と設定でき、特に0.5〜10時間と設定することが好ましい。
【0067】
当製造方法において、反応終了後の反応混合物は、直接濃縮、又は有機溶媒に溶解し、水洗後濃縮、又は氷水に投入、有機溶媒抽出後濃縮といった通常の後処理を行い、目的の本発明化合物を得ることができる。また、精製の必要が生じたときには、蒸留、逆抽出、再結晶、カラムクロマトグラフ、薄層クロマトグラフ、液体クロマトグラフ分取等の任意の精製方法によって分離、精製することができる。
【0068】
続いて、一般式(2)で表される化合物について説明する。一般式(2−1)で表される化合物は、例えば以下の方法により製造することができる。
製造法A
【0069】
【化6】

【0070】
すなわち、一般式(2−2)[式中、Yは前記と同様の意味を表す。]で表される化合物を、必要ならば該反応に対して不活性な溶媒を用い、必要ならば触媒の存在下、さらに必要ならば酸化剤の存在下、塩素化剤を用いて塩素化することにより、一般式(2−1)[式中、X2は水素原子又は塩素原子を表し、Yは前記と同様の意味を表す。]で表される化合物を得ることができる。
【0071】
一般式(2−2)で表される化合物のあるものは公知化合物であり、一部は市販品として入手できる。また、それ以外のものも文献記載の公知の合成方法に準じて容易に合成することができる。
【0072】
用いるハロゲン化剤としては、例えば塩素ガス、塩化スルフリル、塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸t-ブチル、N-クロロコハク酸イミド、N-クロログルタル酸イミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌール酸、塩化水素等の塩素化剤が挙げられ、一般式(2−2)で表される化合物1当量に対して0.3〜5.0当量用いることができる。
【0073】
触媒を用いる場合、用いる触媒としては、例えば塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、塩化亜鉛等のルイス酸を、一般式(2−2)で表される化合物1当量に対して0.0001〜1.0当量用いることができる。
【0074】
溶媒を用いる場合、用いられる溶媒としては反応の進行を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、2−プロパノール、酢酸、塩酸、硫酸及び水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
酸化剤を用いる場合、過酸化水素水、t-ブチルヒドロペルオキシド等を、一般式(2−2)で表される化合物1当量に対して0.3〜2.5当量用いることができる。
【0076】
反応温度は−10〜150℃までの任意の温度を設定することができ、反応時間は、反応基質の濃度、反応温度によって変化するが、通常1〜48時間の範囲で任意に設定できる。
【0077】
一般的には、例えば一般式(2−2)で表される化合物1当量に対して0.3〜2.5当量のN-クロロコハク酸イミド、塩化スルフリル、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン又はトリクロロイソシアヌール酸等の塩素化剤を用い、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又は酢酸を溶媒として用い、0〜100℃の温度範囲で、1〜24時間反応を行なうのが好ましい。
【0078】
製造法Aにおいて、反応終了後の反応混合物は、直接濃縮、又は有機溶媒に溶解し、水洗後濃縮、又は氷水に投入、有機溶媒抽出後濃縮といった通常の後処理を行い、一般式(2−1)で表される化合物を得ることができる。また、精製の必要が生じたときには、再結晶、逆抽出、カラムグロマトグラフ、薄層クロマトグラフ、液体クロマトグラフ分取等の任意の精製方法によって分離、精製することができる。
【0079】
本発明に包含される一般式(1)で表される化合物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水と反応させることにより、一般式(1A)[式中、X1、X2及びYは前記と同様の意味を表し、Rは、水素原子又はC1〜C4アルキルを表す。]で表されるアセタール化合物にすることができる。
【0080】
【化7】

【0081】
本発明において一般式(1A)で表される化合物は、一般式(1)で表される化合物とそれぞれ任意の割合で含まれる混合物で存在し得る。
【0082】
本発明に包含される一般式(2)で表される化合物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水と反応させることにより、一般式(2A)[式中、X1、X2、Y及びRは前記と同様の意味を表す。]で表されるアセタール化合物にすることができる。
【0083】
【化8】

【0084】
本発明において一般式(2A)で表される化合物は、一般式(2)で表される化合物とそれぞれ任意の割合で含まれる混合物で存在し得る。
【0085】
本発明に包含される一般式(2−1)で表される化合物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水と反応させることにより、一般式(2−1A)[式中、X2は水素原子又は塩素原子を表し、Y及びRは前記と同様の意味を表す。]で表されるアセタール化合物にすることができる。
【0086】
【化9】

【0087】
本発明において一般式(2−1A)で表される化合物は、一般式(2−1)で表される化合物とそれぞれ任意の割合で含まれる混合物で存在し得る。
【0088】
本発明に包含される一般式(2−2)で表される化合物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水と反応させることにより、一般式(2−2A)[式中、Yは前記と同様の意味を表す。]で表されるアセタール化合物にすることができる。
【0089】
【化10】

【0090】
本発明において一般式(2−2A)で表される化合物は、一般式(2−2)で表される化合物とそれぞれ任意の割合で含まれる混合物で存在し得る。
【0091】
本発明に包含される一般式(3)で表される化合物は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール又は水と反応させることにより、一般式(3A)[式中X1、X2及びYは各々前記と同様の意味を表し、X-は塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン又は硫酸水素イオンを表す。]で表されるアセタール化合物にすることができる。
【0092】
【化11】

【0093】
本発明において一般式(3A)で表される化合物は、一般式(3)で表される化合物とそれぞれ任意の割合で含まれる混合物で存在し得る。
【0094】
本発明に包含される一般式(1)で表される化合物、一般式(1A)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、一般式(2A)で表される化合物、一般式(2−1)で表される化合物、一般式(2−1A)で表される化合物、一般式(2−2)で表される化合物、一般式(2−2A)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物及び一般式(3A)で表される化合物は、常法に従って酸付加塩にすることができる。用いる酸としては例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸等のハロゲン化水素酸の塩、硝酸、硫酸、燐酸、塩素酸、過塩素酸等の無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、酒石酸、蓚酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸等のカルボン酸又はグルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸を用いることができる。
【0095】
或いは、本発明に包含される一般式(1)で表される化合物、一般式(1A)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、一般式(2A)で表される化合物、一般式(2−1)で表される化合物、一般式(2−1A)で表される化合物、一般式(2−2)で表される化合物、一般式(2−2A)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物及び一般式(3A)で表される化合物は、常法に従って金属塩にすることができる。用いる塩基としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属、カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属又はアルミニウムを用いることができる。
【0096】
本発明により製造できる一般式(1)で表される化合物は、医農薬の中間体、例えば、特に、国際公開第2009/001942号パンフレットに記載の、農業害虫、ハダニ類、哺乳動物又は鳥類の内部もしくは外部寄生虫に対して優れた殺虫・殺ダニ活性を有し、既存の殺虫・殺ダニ剤に対して抵抗性を獲得した害虫に対しても十分な防除効果を発揮する置換イソキサゾリン化合物の製造中間体として有用である。
【実施例】
【0097】
以下に一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される本発明化合物の合成例を実施例として具体的に述べることで、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0098】
実施例のプロトン核磁気共鳴ケミカルシフト値は、基準物質としてMeSi(テトラメチルシラン)を用い、300MHzにて測定した。また測定に使用した溶媒を以下の合成例中に記載する。
【0099】
[合成例]
合成例1
1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン0.40g、メタノール2ml及び濃硫酸0.3mlの混合溶液を、75℃にて攪拌下、亜硝酸ナトリウム0.26gを20分間で添加し、同温度にてさらに1.5時間攪拌を継続した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷し、氷水3mlに注ぎ、酢酸エチルにて抽出(2ml×3)抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた残留物にヘプタン4mlを添加し、再度減圧下にて溶媒を留去し、目的物を含むヘプタン溶液1.0gを得た。このヘプタン溶液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた内部標準分析法により、目的物が0.26g含有することが判明した。
【0100】
また以下に示す分析条件に従って、HPLCを用いた内部標準分析条件を行った。
カラム:Inertsil Ph-3 250mm 4.0mmφ 5μm(Agilent社製)、
流速:1mL/min、
溶離液:アセトニトリル/水/酢酸=1/1/0.001(体積比)、
検出:UV 220nm、内部標準物質:フタル酸ジn−ヘキシル。
合成例2
1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン0.52g、濃硫酸2.0及び水0.5gの混合物を、50℃にて攪拌下溶解させた。5℃以下に冷却後、亜硝酸ナトリウム0.28gを5分間で添加し、同温度にて0.5時間攪拌した。その溶液を、15〜30℃の温度範囲の30〜32重量%次亜リン酸水溶液1.5ml及びヘキサン2.5mlの混合液に10分間で添加し、5時間攪拌した。反応終了後不溶物をろ過により除去後、有機層を分取した。残った水層をヘキサンにて抽出(20ml×3)し、得られた有機層をあわせて、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を減圧下で溶媒を留去し、目的物を含むヘキサン溶液0.62gを得た。このヘプタン溶液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた内部標準分析法により、目的物が0.39g含有することが判明した。
【0101】
また以下に示す分析条件に従って、HPLCを用いた内部標準分析を行った。
カラム:Inertsil Ph 250mm 4.6mmφ 5μm(ジーエルサイエンス社製)、
流速:1mL/min、
溶離液:アセトニトリル/水/酢酸=2/1/0.001(体積比)、
検出:UV 220nm、内部標準物質:フタル酸ジn−ヘキシル
[参考例]
参考例1
1−(4−アジドフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−(4−フルオロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン3.0gのN,N−ジメチルホルムアミド15ml溶液に、室温にて攪拌下、アジ化ナトリウム1.2gを添加し、60℃にて3.5時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷し、酢酸エチル50mlを添加した。得られた有機層を水洗(20ml×4)後、飽和食塩水次いで無水硫酸マグネシウムの順で脱水・乾燥、減圧下にて溶媒を留去し、目的物3.0gを褐色液体として得た。
【0102】
1H NMR (CDCl3): δ8.08 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.17 (d, J=8.0Hz, 2H).
参考例2
1−(4−アミノフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−(4−アジドフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン0.20gのメタノール1ml溶液に、ジフェニルスルフィド2mgと10重量%パラジウム−炭素20mgを添加した。反応容器内を水素ガスで置換し、水素ガスの常圧雰囲気下室温にて48時間攪拌した。反応終了後、反応混合物中の不溶物をセライトろ過にて濾別し、得られたろ液を減圧下にて溶媒を留去し、目的物0.15gを淡黄色固体として得た。
融点:82−84℃
1H NMR (CDCl3): δ7.92 (d, J=8.7Hz, 2H), 6.67 (d, J=8.7Hz, 2H), 4.42 (br, 2H).
参考例3
2−{4−(2,2,2−トリフルオロアセチル)フェニル}イソインドリン−1,3−ジオンの製造
1−(4−フルオロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン3.0gのN,N−ジメチルホルムアミド10ml溶液に、フタルイミドカリウム4.2gを添加し、130℃にて7時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷し、水50mlを加え、室温にて30分攪拌した。析出した固体をろ過により取り出し、得られた固体を減圧下にて乾燥し、目的物6.4gを淡黄色固体として得た。
【0103】
融点:192−193℃
1H NMR (CDCl3-DMSO-d6): δ8.22 (d, J=8.1Hz, 2H), 7.95-8.05 (m, 2H), 7.80-7.90 (m, 2H), 7.79 (d, J=8.1Hz, 2H)
参考例4
1−(4−アミノフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
2−{4−(2,2,2−トリフルオロアセチル)フェニル}イソインドリン−1,3−ジオン6.2gのトルエン30mlスラリー溶液に、40重量%メチルアミン水溶液3.6gを添加し、室温にて7時間攪拌した。反応終了後、2.4N塩酸20mlを添加し、分液により水層を分離した。得られた水層に炭酸ナトリウム3.1gを添加し、酢酸エチルにて抽出(40ml×1)した。得られた有機層を水洗(20ml×1)、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、目的物3.5gを茶色固体として得た。
【0104】
参考例5
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−(4−アミノフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン3.5gのアセトニトリル20ml溶液に、N−クロロコハク酸イミド5.4gを添加し、75℃にて3時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を室温まで放冷し、トルエン50mlを添加した。さらに亜硫酸ナトリウム0.7gの20ml水溶液を添加し、同温度で20分攪拌した。攪拌終了後、分液により水層を分離し、得られた有機層を水20ml、0.3N塩酸20ml、水20mlの順で洗浄した。さらに硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下にて溶媒を留去し、目的物4.5gを茶色固体として得た。
【0105】
融点:84−85℃
1H NMR (CDCl3): δ7.94 (s, 2H), 5.26 (br, 2H)。
【0106】
参考例6
1−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノンの製造
1−{4−(ジメチルアミノ)フェニル}−2,2,2−トリフルオロエタノン90mgの四塩化炭素1.5ml溶液に、塩化スルフリル0.32gを添加し、高圧水銀灯(ウシオ電機社製UM−102)の光を4時間照射した。照射終了後、反応混合物をサンプリングした。サンプリングした溶液を酢酸エチル0.1mlで希釈し、水0.1mlで洗浄後、さらにアセトニトリルで希釈した。得られたサンプリング溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、目的物の面積百分率は39.2%であった。
【0107】
ガスクロマトグラフィーの分析条件
カラム:DB−1(Agilent社製)、長さ30m、カラム内径0.25mm、膜厚0.25μm、
インジェクター温度;150℃、カラム温度;50℃1分間保持、50℃から170℃まで4℃/分で昇温後10℃/分で240℃まで昇温、
検出器温度;250℃、検出器;FID、キャリアーガス;ヘリウム、スプリット比1/30。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明に係る1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法及び1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物は、優れた有害生物防除活性、特に殺虫・殺ダニ活性を示し、且つ、哺乳動物、魚類及び益虫等の非標的生物に対する悪影響の少ない置換イソキサゾリン化合物の新規な製造中間体として、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化1】


[式中、X1は、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表す。]で表される1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物に、亜硝酸化合物を反応させることによる、式(1):
【化2】


[式中、X1、X2、Yは前記と同様の意味を表す。]で表される1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項2】
X1及びX2は、各々独立してハロゲン原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表し、
Yは、フッ素原子を表す請求項1記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項3】
X1及びX2は、各々独立して塩素原子を表す請求項2記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項4】
反応を、酸の存在下で行なう、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項5】
酸として、酢酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸及び硫酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項4に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項6】
亜硝酸化合物として、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸C1〜C6アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の1−(置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物の製造方法。
【請求項7】
式(2):
【化3】


[式中、(1)X1が、フッ素原子、塩素原子、シアノ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表す場合、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表し、
(2)X1が、臭素原子、よう素原子又はニトロを表す場合、
X2は、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
Yは、ハロゲン原子を表す。]で表される1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。
【請求項8】
Yは、フッ素原子を表し、
(1)X1が、フッ素原子、塩素原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表す場合、
X2は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表し、
(2)X1が、臭素原子又はヨウ素原子を表す場合、
X2は、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C6ハロアルコキシを表す請求項7記載の1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。
【請求項9】
X1は、塩素原子を表し、
X2は、水素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す請求項7記載の1−(4−アミノ−置換フェニル)−2−ハロ−2,2−ジフルオロエタノン化合物又はその塩。

【公開番号】特開2013−6820(P2013−6820A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245092(P2011−245092)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】