説明

1つの非カルベン配位子と1もしくは2つのカルベン配位子を有する遷移金属錯体並びにOLEDにおけるその使用

本発明は、カルベン配位子と複素環式の非カルベン配位子のいずれも含むヘテロレプティックなカルベン錯体、該ヘテロレプティックなカルベン錯体の製造方法、該ヘテロレプティックなカルベン錯体を有機発光ダイオードにおいて用いる使用、少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を含む有機発光ダイオード、少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を含む発光層、少なくとも1つの本発明による発光層を含む有機発光ダイオード並びに少なくとも1つの本発明による有機発光ダイオードを含む装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルベン配位子と複素環式の非カルベン配位子のいずれも含むヘテロレプティックなカルベン錯体、該ヘテロレプティックなカルベン錯体の製造方法、該ヘテロレプティックなカルベン錯体を有機発光ダイオードにおいて用いる使用、少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を含む有機発光ダイオード、少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を含む発光層、少なくとも1つの本発明による発光層を含む有機発光ダイオード並びに少なくとも1つの本発明による有機発光ダイオードを含む装置に関する。
【0002】
発光ダイオード(OLED)においては、電流によって励起された場合に光を放出する材料の特性が用いられる。OLEDは、特に陰極線管及び液晶ディスプレイの代替として、平面ディスプレイの製造のために関心が持たれている。そのコンパクトな構造及び本来より低い電流消費に基づいて、OLEDを含む装置は、特に可搬用途、例えば携帯機器、ラップトップなどで使用するために適している。
【0003】
OLEDの作動様式の基本原理並びにOLEDの好適な構造(層)は、例えばWO2005/113704号とそこに引用される文献に挙げられている。
【0004】
先行技術においては、既に、電流による励起に際して光を発する多数の材料が提案されている。
【0005】
WO2005/019373号においては、少なくとも1つのカルベン配位子を含む中性の遷移金属錯体をOLEDにおいて用いる使用がはじめて開示されている。これらの遷移金属錯体は、WO2005/019373号によれば、OLEDの各層において使用することができ、その際、配位子骨格もしくは中心金属は、所望される遷移金属錯体の特性に適合させるために変更することができる。該遷移金属錯体は、例えば、OLEDの電子のための阻止層、励起子のための阻止層、正孔のための阻止層もしくは発光層において使用することが可能であり、その際、該遷移金属錯体は、OLED中の発光体分子として使用することが好ましい。
【0006】
WO2005/113704号は、カルベン配位子を有する発光性化合物に関する。WO2005/113704号によれば、種々のカルベン配位子を有する多数の遷移金属錯体が挙げられており、その際、該遷移金属錯体は、好ましくは燐光発光性材料として、特に好ましくはドープ物質として使用される。
【0007】
OLEDで使用するために、特に発光性物質として適している化合物が既に知れられているにもかかわらず、産業上で使用可能なより効率的な化合物を提供することは望ましい。本願の範囲においては、電子ルミネッセンスとは、電子蛍光と電子燐光のいずれも表している。
【0008】
従って、本願の課題は、OLEDで使用するのに適した新規のカルベン錯体を提供することである。特に、公知の遷移金属錯体に対して改善された特性、例えば改善された効率及び/又は改善された寿命を示す遷移金属錯体を提供することが望ましい。
【0009】
前記課題は、カルベン配位子と複素環式の非カルベン配位子の両者を含有する、一般式(I)
1[carben]n[het]m (I)
[式中、記号は、以下の意味を有する:
1は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOs、殊に好ましくはIrからなる群から選択される金属原子であって、その相応する金属原子について可能な各酸化段階におけるものを意味する;
nは、カルベン配位子の数を意味し、その際、nは、合計(n+m)=2の場合に、1を意味し、合計(n+m)≧3の場合に、少なくとも2を意味し、その際、nが少なくとも2を意味する場合には、それらのカルベン配位子は同一もしくは異なってよい;
mは、複素環式の非カルベン配位子の数を意味し、その際、m≧1であり、m>1の場合には、それらの複素環式の非カルベン配位子は、同一もしくは異なってよい;
その際、n及びmは、使用される金属原子の酸化段階及び配位数と、配位子carben及びhetの電荷に依存している;
carbenは、一般式(II)
【化1】

のカルベン配位子を意味する;
一般式IIのカルベン配位子中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基を意味するか、又は
1及びY2は、一緒になって、ドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に、少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である架橋を形成する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有し、そのうち1〜5個の原子がヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子が炭素原子である架橋を形成するので、基
【化2】

は、5員ないし7員の環を形成し、前記環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有してよく、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよく、かつ前記の5員ないし7員の環は、場合により、1もしくは複数の他の環と縮合されていてよい;
更に、Y1及びR1は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味する;
3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化3】

(式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する)を意味するか、又は
更に、n個のカルベン配位子の各々におけるY3及びY2は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829y、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
yは、2〜10であり、かつ
25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;及び
hetは、一般式(III)
【化4】

の複素環式の非カルベン配位子を意味する;
式IIIの配位子het中の記号は、以下の意味を有する:
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を表すか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]のヘテロレプティックなカルベン錯体を提供することによって解決される。
【0010】
従って、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、該錯体が、一般式IIの少なくとも1つのカルベン配位子と、一般式IIIの少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子とを有することを特徴としている。使用される金属原子M1の酸化段階及び配位数と同様に、配位子の電荷に依存して、一般式IIの少なくとも1つのカルベン配位子及び一般式IIIの少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子の他に、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体中に、一般式IIの更なるカルベン配位子が存在してよく、その際、一般式IIの個々のカルベン配位子の置換型は、同一もしくは異なってよい。M1が配位数4を有する金属(例えばPt(II)もしくはPd(II)、Ir(I)、Rh(I))である場合において、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、1つの一般式IIのカルベン配位子と、1つの一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子とを有する。M1が配位数6を有する金属(例えばIr(III)、Co(II)、Co(III)、Rh(III)、Os(II)、Pt(IV))である場合において、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、同一もしくは異なってよい2つの一般式IIのカルベン配位子と、1つの一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子を有する。金属原子M1が8以上の配位数を有する場合には、一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、一般式IIの2つのカルベン配位子と一般式IIIの1つの複素環式の非カルベン配位子の他に、1もしくは複数の一般式IIの他のカルベン配位子及び/又は1もしくは複数の一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子を有してよい。好ましい一実施態様においては、本発明は、一般式Iで示され、配位数6を有する金属M1と、一般式IIの2つのカルベン配位子と、一般式IIIの1つの複素環式の非カルベン配位子とを有するヘテロレプティックなカルベン錯体に関する。
【0011】
一般式IIの少なくとも1つのカルベン配位子と少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子を含有する本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体、特に一般式IIの複数のカルベン配位子を有する本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体が、有機発光ダイオード(OLED)で使用される場合に、驚くべき程高い量子収率を示す点で優れていることが判明した。本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体の特定の配位子組み合わせを用いることで、更に、純粋なカルベン錯体に対して発光におけるレッドシフトを達成することができる。従って、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、OLEDにおいて、高い量子収率でもって、狙い通りの色調節のために使用することができる。
【0012】
使用される金属M1の配位数と、使用されるカルベン配位子及び非カルベン配位子の数とに依存して、相応の金属錯体の種々の異性体は、同じ金属M1で、かつ同じ使用されるカルベン配位子及び非カルベン配位子の性質で存在しうる。例えば、配位数6を有する金属M1との錯体(従って八面体の錯体)、例えばIr(III)錯体の場合に、一般組成M(AB)2(CD)[式中、AB及びCDは二座配位子である]の錯体であるときには、"fac−mer−異性体(facial/meridional−異性体)"が可能である。その際、本願の範囲内では、"fac−mer−異性体"とは、以下に表す異性体を意味するべきである:
【化5】

【0013】
配位数4を有する金属M1との正方平面型錯体、例えばPt(II)錯体の場合に、一般組成M(AB)(CD)[式中、AB及びCDは二座配位子である]であるときには、"異性体"が可能である。その際、本願の範囲内では、"異性体"とは、以下に表す異性体を意味するべきである:
【化6】

【0014】
記号A及びB並びにC及びDは、それぞれ配位子の結合位置であり、その際、二座配位子だけが存在する。二座配位子は、上述の一般組成によれば、群A及び群Bもしくは群C及び群Dを有する。
【0015】
当業者には、基本的に、シス/トランス異性体あるいはfac/mer異性体が何を意味するかは知られている。組成MA33の錯体の場合に、同じ種類の3つの群は、八面体表面に頂点を有する(facial異性体)か、又は経線を有する、すなわち3つの配位子結合位置の2つが互いにトランス位にある(meridional異性体)。八座の金属錯体におけるシス/トランス異性体あるいはfac/mer異性体の定義に関しては、例えばJ.Huheey,E.Keiter,R.Keiter,Anorganische Chemie:Prinzipien von Struktur und Reaktivitaet、Ralf Steudel訳の第二改訂拡張版,Berlin;New York:de Gruyter,1995,第575,576頁を参照のこと。
【0016】
正方平面錯体の場合には、シス異性体は、組成MA22の錯体である場合には、両方の群Aも両方の群Bも、隣接した四面体の頂点を占有し、一方で、トランス異性体である場合には、両方の群Aも両方の群Bも、それぞれ互いに対角に向かい合った四面体の頂点を占有していることを意味する。正方平面金属錯体におけるシス/トランス異性体の定義に関しては、例えばJ.Huheey,E.Keiter,R.Keiter,Anorganische Chemie:Prinzipien von Struktur und Reaktivitaet、Ralf Steudel訳の第二改訂拡張版,Berlin;New York:de Gruyter,1995,第557〜559頁を参照のこと。
【0017】
一般に、式Iの金属錯体の種々の異性体は、当業者に公知の方法に従って、例えばクロマトグラフィー、昇華もしくは結晶化によって分離することができる。
【0018】
従って、本発明は、式Iのカルベン錯体のそれぞれの個々の異性体にも、種々の異性体のそれぞれの任意の混合比における混合物にも関する。
【0019】
特に好ましくは、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、Ir、Os、Rh及びPtからなる群から選択される金属原子M1を有し、その際、Os(II)、Rh(III)、Ir(III)及びPt(II)が殊に好ましい。殊に、Ir(III)が特に好ましい。
【0020】
一般式IIのカルベン配位子の数nは、本発明による式Iで示され、式中、遷移金属原子M1が配位数6を有し、Ir(III)が特に好ましいものであるヘテロレプティックなカルベン錯体においては、2であり、かつ一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子の数mは、この錯体においては、1である。
【0021】
一般式IIのカルベン配位子の数nは、遷移金属錯体であって、その遷移金属原子M1が配位数4を有し、Pt(II)が特に好ましいものであるものにおいては、1であり、かつ一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子の数mは、この錯体においては、同様に1である。
【0022】
基Y1及びY2に関しては、本発明の範囲においては以下のことが該当する:
基Y1及びY2の置換基は、一緒になって、全体で2ないし4つの、好ましくは2ないし3つの原子を有する架橋を形成でき、そのうち1もしくは2つの原子は、ヘテロ原子、好ましくはNであってよく、かつ残りの原子は炭素原子であるので、NCDo1は、一緒になって前記の架橋と5員ないし7員の、好ましくは5員ないし6員の環を形成し、前記環は場合により2つもしくは6員もしくは7員の場合には、3つの二重結合を有してよく、場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合によりヘテロ原子、好ましくはNを有してよく、その際、5員もしくは6員の芳香族環であって、アルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換もしくは非置換の環が好ましく、又は好ましくは5員もしくは6員の芳香族環は、更なる環であって場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有する環、好ましくは6員の芳香族環と縮合されている。
【0023】
基Y1は、基R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x
その際、1つ以上の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、xは2〜10であり、かつR18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する。
【0024】
1及びY2が一緒になって架橋を形成し、その際、5員ないし7員の環が形成される場合に、基R1に結合する架橋は、直接的に5員ないし7員の環と結合されてよく、又は前記の環の置換基に結合されてよく、その際、5員ないし7員の環との直接的な結合が好ましい。特に好ましくは、5員ないし7員の環のN原子(一般式IIにおいて)に直接的に隣接する原子は、係る結合が存在する場合(例えば後に挙げる架橋された構造を参照)に、架橋を介してR1と結合される。Y1及びY2が一緒に架橋することによって形成される5員ないし7員の環が他の5員ないし7員の環と縮合されている場合に、結合する架橋は、縮合環の1つの原子と結合されていてよい(例えば以下に挙げる架橋された構造を参照)。
【0025】
以下に、好ましい架橋された構造を、一般式IIのカルベン配位子について例示している。示された配位子系に示される基は、例えば置換基を有してよく、又は示した芳香族基中の1もしくは複数のCH基は、ヘテロ原子によって交換されていてよい。同様に、カルベン配位子は、複数の同一もしくは異なる架橋を有することが可能である。表される架橋は、他の本発明により使用される配位子形中にも、例えば以下に挙げる式aa〜aeの配位子形にも存在してよい。
【0026】
架橋された構造を有するカルベン配位子のための例:
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
基R18、R21、R22、R30及びR31は、既に前記に定義したものである。
【0030】
本願の範囲においては、概念アリール残基又はアリール基、ヘテロアリール残基又はヘテロアリール基、アルキル残基又はアルキル基、アルケニル残基又はアルケニル基及びアルキニル残基又はアルキニル残基は、以下の意味を有する:
アリール残基(又はアリール基)とは、6〜30個の炭素原子、有利には6〜18個の炭素原子の基本骨格を有する基であって、1つの芳香環又は複数の縮合された芳香環から構成されている基を表す。好適な基本骨格は、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル又はフェナントレニルである。前記の基本骨格は、非置換であってよい(すなわち、置換可能な全ての炭素原子は水素原子を有する)、又は基本骨格の1つ、複数又は全ての置換可能な位置は置換されていてよい。好適な置換基は、例えば、アルキル基、有利には1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、特に有利にはメチル基、エチル基もしくはi−プロピル基、アリール基、有利にはC6−アリール基(前記基は、更に置換されていてよく又は非置換であってもよい)、ヘテロアリール基、有利には、少なくとも1つの窒素原子を有するヘテロアリール基、特に有利にはピリジル基、アルケニル基、有利には1つの二重結合を有するアルケニル基、特に有利には、1つの二重結合及び1〜8個の炭素原子を有するアルケニル基又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基である。ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な基は以下に挙げられるものである。殊に有利には、アリール基は、メチル、F、Cl、CN、アリールオキシ及びアルコキシ、スルホニル、ヘテロアリールからなる群から選択される置換基を有する。有利には、アリール残基又はアリール基は、C6〜C18−アリール基、特に有利にはC6−アリール基であり、該アリール基は、場合により上述の置換基の少なくとも1つで置換されている。特に有利には、C6〜C18−アリール基、好ましくはC6−アリール基は、上述の置換基の1又は2つを有し、その際、C6−アリール基の場合に、1つの置換基は、アリール基の他の結合位置に対してオルト位、メタ位又はパラ位に配置されており、かつ2つの置換基の場合に、それぞれアリール基の他の結合位置に対してメタ位又はオルト位に配置されているか又は1つの基がオルト位で1つの基がメタ位で配置されていてよく、又は1つの基がオルトもしくはメタ位に配置され、かつ他の基がパラ位に配置されている。
【0031】
ヘテロアリール残基又はヘテロアリール基とは、アリール基の基本骨格において少なくとも1つの炭素が1つのヘテロ原子によって交換されている点で前記のアリール基と異なる基を表す。有利なヘテロ原子は、N、O及びSである。殊に有利には、アリール基の基本骨格の1又は2つの炭素原子は、ヘテロ原子によって交換されている。特に、ピリジン及び5員の複素芳香族化合物、例えばピロール、フラン、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、オキサゾール、チアゾールなどの系から選択される基本骨格が好ましい。該基本骨格は、その基本骨格の1つ、複数又は全ての置換可能な位置で置換されていてよい。好適な置換基は、既にアリール基に関して挙げたのと同じ置換基である。
【0032】
アルキル残基又はアルキル基とは、1〜20個の炭素原子、有利には1〜10個の炭素原子、特に有利には1〜8個の炭素原子を有する基を表すべきである。前記のアルキル基は、分枝鎖状又は非分枝鎖状であってよく、かつ場合により1又は複数のヘテロ原子、有利にはSi、N、O又はS、特に好ましくはN、OもしくはSによって中断されていてよい。更に、前記のアルキル基は、アリール基に関して挙げた置換基1又は複数で置換されていてよい。同様に、該アルキル基は、1つ又は複数の(ヘテロ)アリール基を有することも可能である。この場合に、前記の(ヘテロ)アリール基の全てが適している。特に、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル及びt−ブチルからなる群から選択されるアルキル基が好ましく、殊にメチル及びイソプロピルが好ましい。
【0033】
アルケニル残基又はアルケニル基とは、少なくとも2個の炭素原子を有する上述のアルキル基に相当するが、アルキル基の少なくとも1つのC−C単結合が1つのC−C二重結合によって交換されていることが異なる基を表すべきである。有利には、アルケニル基は、1又は2つの二重結合を有する。
【0034】
アルケニル残基又はアルケニル基とは、少なくとも2個の炭素原子を有する上述のアルキル基に相当するが、アルキル基の少なくとも1つのC−C単結合が1つのC−C二重結合によって交換されていることが異なる基を表すべきである。有利には、アルキニル基は、1又は2つの三重結合を有する。
【0035】
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン及びアルケニレンといった概念は、本発明の範囲においては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基に関して挙げた意味を有するが、そのアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルキニレン基及びアルケニレン基が式IIの配位子の原子に対して2つの結合箇所を有するという点で異なるものである。
【0036】
少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子であり、かつ他の原子が有利には窒素原子又は炭素原子であるY1及びY2から形成される架橋であって、飽和又は有利には不飽和であってよく、かつ少なくとも2つの架橋の原子が置換又は非置換であってよい架橋とは、以下の基を表すべきである:
− 2つの炭素原子を有するか1つの炭素原子と1つの窒素原子を有する架橋であって、炭素原子もしくは炭素原子と窒素原子とが二重結合によって互いに結合されているので、以下の式の1つを有し、有利には2つの炭素原子を有する架橋:
【化10】

[式中、
23、R24、R11及びR11'は、互いに無関係に水素、アルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アリール又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味するか、又は
23及びR24は、一緒になって、全体で3〜5個、有利には4個の原子を有する架橋を形成し、そのうち場合により1又は2つの原子が、ヘテロ原子、有利にはNであってよく、かつ残りの原子は炭素原子なので、この基は、5員ないし7員、有利には6員の環を形成し、該環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの他の二重結合を、又は6員又は7員の環の場合には、2つの他の二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基又はアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、又は縮合されていてよい]。その場合に、6員の芳香族環であることが好ましい。該環は、アルキル基又はアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されているか又は非置換であってよい。更に、前記の芳香族環、有利には前記の6員の芳香族環に、1又は複数の他の芳香族環が縮合されていてよい。この場合に、それぞれ考えられる縮合が可能である。これらの縮合された基は、更に置換されていてよく、有利にはアリール基の一般的な定義で挙げた基で置換されていてよい。
【0037】
− 2つの炭素原子を有する架橋であって、炭素原子が1つの単結合によって互いに結合されているので、以下の式を有する架橋:
【化11】

[式中、
4、R5、R6及びR7は、互いに無関係に、水素、アルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アリールもしくはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味し、有利には水素、アルキル又はアリールを意味する]。
【0038】
ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基もしくは置換基は、本発明の範囲では以下の基を表す:
ドナー作用を有する基とは、+I効果及び/又は+M効果を有する基を表し、かつアクセプター作用を有する基とは、−I効果及び/又は−M効果を有する基を表す。ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する好適な基は、ハロゲン基、有利にはF、Cl、Br、特に好ましくはF、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボニル基、エステル基、オキシカルボニル基もカルボニルオキシ基も、アミン基、アミド基、CH2F−基、CHF2基、CF3基、CN基、チオ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ホウ酸基、ホウ酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン基、スルホキシド基、スルホニル基、スルフィド基、ヘテロアリール基、ニトロ基、OCN、ボラン基、シリル基、スタネート基、イミノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ホスフィンオキシド基、ヒドロキシ基もしくはSCN基である。殊には、F、Cl、CN、アリールオキシ、アルコキシ、スルホニル及びヘテロアリールが好ましい。
【0039】
一般式IIのカルベン配位子中の基
【化12】

は、好ましくは
【化13】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
Z′′は、互いに無関係に、CR10もしくはNを意味する;基Z′′の0〜3個、特に好ましくは0〜2個、殊に好ましくは0もしくは1個がNであり、その他の基Z′′がCR10を意味することが好ましい;
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11′は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基、好ましくは水素、アルキル、ヘテロアリールもしくはアリールを意味する;
10は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルを意味するか、又はそれぞれ2個の基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい縮合環を形成するか、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、基a中のR4もしくはR5と、基b中のR8と、基c中の基R10の1つと、基d中のR11は、R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味し、好ましい好適な架橋に関する例は、前述されている]からなる群から選択される。
【0040】
構造a、b、c、d及びe中の基Y3は、本発明によれば、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基[その際、好ましいアルキル基、アルキニル基及びアルケニル基は、上述されているものであり、特に好ましくはアルキル基であり、殊に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはt−ブチルであり、より特に好ましくはメチルもしくはイソプロピルである];又は
【化14】

[式中、Do2'、q'、s'、R3'、R1'、R2'、X'及びp'は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有し、それらは既に前記に定義したとおりである]を意味し、好ましくは、構造a、b、c、d及びe中のY3は、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、その際、好ましいアルキル基、アルキニル基及びアルケニル基は、上述されているものであり、特に好ましくは、アルキル基であり、殊に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはt−ブチルであり、より特に好ましくはメチルもしくはイソプロピルである。
【0041】
式IIのカルベン配位子の基
【化15】

は、好ましくは構造
【化16】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
Zは、互いに無関係に、CR12もしくはNを意味し、その際、記号Zの0〜3個、好ましくは0〜2個、特に好ましくは0もしくは1個がNを意味してよく、かつZは、1つの記号ZがNを意味する場合には、該基と基
【化17】

との結合位置に対して、o位、m位もしくはp位で、好ましくはo位もしくはp位で配置されていてよい;
基Z中のR12は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アルケニル基を意味するか、もしくはそれぞれ2個の基R12は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい縮合環を形成するか、又はR12は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味し、好ましくはHもしくはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化18】

の基は、芳香族の本体を介してもしくは基R12の1つによって、Y1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]を有する。
【0042】
本発明の好ましい一実施態様においては、基
【化19】

は、以下の意味:
【化20】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
Z′は、互いに無関係に、CR12'もしくはNを意味し、その際、記号Z′の0〜5個、好ましくは0〜4個、特に好ましくは0〜3個、殊に好ましくは0〜2個、より殊に好ましくは0もしくは1個がNを意味してよく、かつZ′は、1つの記号Z′がNを意味する場合には、該基と基
【化21】

との結合位置に対して、o位、m位もしくはp位で、好ましくはo位もしくはp位で配置されていてよい;
基Z′中のR12'は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アルケニル基を意味するか、もしくはそれぞれ2個の基R12'は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはNを有してよい縮合環を形成するか、又はR12'は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味し、好ましくはHもしくはドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化22】

の基は、芳香族の本体を介してもしくは基R12'の1つを介して、Y1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]を有する。
【0043】
更に、一般式IIのn個のカルベン配位子の各々におけるY3及びY2は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829y
その際、1つ以上の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって置き換えられていてよく、その際、yは2〜10であり、かつR25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する。
【0044】
殊に好ましい一実施態様においては、本発明は、式Iで示され、その少なくとも1つのカルベン配位子が、
【化23】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
3は、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基もしくは以下の構造
【化24】

の基を意味する;
Zは、同一もしくは異なって、CR12もしくはNを意味する;
Z′は、同一もしくは異なって、CR12'もしくはNを意味する;
Z′′は、同一もしくは異なって、CR10もしくはNを意味する;
12、R12'は、同一もしくは異なって、それぞれ互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R12もしくはR12'は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR12もしくはR12'は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11'は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
基Z′′中のR10は、互いに無関係に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルを意味するか、又はそれぞれ2個の基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有する縮合環を形成するか、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化25】

の基は、基aaにおいては、芳香族の本体もしくは基R12の1つを介して、R4もしくはR5又はR4及びR5が架橋されている炭素原子と、基abにおいては、R8又はR8が結合されている炭素原子と、基acにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、又は基adにおいては、R11又はR11が結合されている炭素原子と、架橋を介して結合されていてよく、かつ/又は
構造
【化26】

の基は、基aaにおいては、芳香族の本体もしくは基R12'の1つを介して、R6もしくはR7又はR6及びR7が架橋されている炭素原子と、基abにおいては、R9又はR9が結合されている炭素原子と、基acにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、又は基aeにおいては、R11'又はR11'が結合されている炭素原子と、架橋を介して結合されていてよい;
その際、それぞれの架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
その際、構造
【化27】

の基が、架橋を介して、R4及びR5が結合されている炭素原子と(基aa)、R8が結合されている炭素原子と(基ab)、R10が結合されている炭素原子の1つと(基ac)又はR11が結合されている炭素原子と(基ad)と結合されている場合には、それぞれの基R4もしくはR5、R8、基R10の1つもしくはR11は、該架橋に対する結合によって交換されている;かつ
構造
【化28】

の基が、架橋を介して、R6及びR7が結合されている炭素原子と(基aa)、R9が結合されている炭素原子と(基ab)、R10が結合されている炭素原子の1つと(基ac)又はR11'が結合されている炭素原子と(基ad)と結合されている場合には、それぞれの基R6もしくはR7、R9、基R10の1つもしくはR11'は、該架橋に対する結合によって交換されている]からなる群から選択されるヘテロレプティックなカルベン錯体に関する。
【0045】
特に好ましくは、構造aa、ab、ac、ad及びaeにおけるY3は、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、その際、好ましいアルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基は、上述したものである。
【0046】
式IIのカルベン配位子は、従って、本発明の好ましい一実施態様においては、"非対称"カルベン配位子であり、その際、Y3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、好ましくはアルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基であり、その際、好ましいアルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基は、上述したものである。
【0047】
本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体に更なるカルベン配位子が存在する場合に(式Iのカルベン錯体中のnが2以上である場合)、該配位子は、第一のカルベン配位子と同一であってよく、又は第一のカルベン配位子とは異なっていてよい。好ましくは、nが2以上の場合には、カルベン配位子は同一である。カルベン配位子が異なっている場合に、例えば1つのカルベン配位子は、"非対称"であってよく、すなわちY3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基、好ましくはアルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味し、かつ他のカルベン配位子は、"対称"であってよく、すなわちY3は、
【化29】

[式中、Do2'、q'、s'、R3'、R2'、R1'、X'及びp'は、前記定義のとおりである]を意味する。また、式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体が、複数の異なる対称的なカルベン配位子もしくは複数の異なる非対称のカルベン配位子を有することも可能である。
【0048】
本発明によれば、本願の一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、一般式IIの少なくとも1つのカルベン配位子の他に、一般式III
【化30】

[式中、一般式IIIの配位子hetにおける記号は、以下の意味を有する:
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはN、好ましくはCR34を意味する;
Wは、C、N、P、好ましくはCもしくはNを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味し、好ましくは互いに無関係に、CR35、N、NR36、SもしくはOを意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]の少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子(het)を含む。
【0049】
殊には、一般式IIIで示され、N原子の他に、0、1もしくは2個の他のヘテロ原子、好ましくはN、O及びSから選択されるヘテロ原子を有する配位子が好ましい。
【0050】
より殊に好ましくは、一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子は、以下の構造baないしbu:
【化31】

【0051】
【化32】

[式中、
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味し、好ましくは0〜3個、特に好ましくは0〜2個、殊に好ましくは0、1もしくは2個の基DはNを意味し、その際、他の基Dは、CR34を意味し、より殊に好ましくは、構造baないしbu中のDは、CR34を意味する;
34、R35、R36は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R34、R35もしくはR36は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35もしくはR36は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味し、好ましくはH、アルキル基もしくはアリール基又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する]を有する。
【0052】
金属原子M1は、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体において、特に好ましくは、Ir、Os、Rh及びPtからなる群から選択され、その際、Os(II)、Rh(III)、Ir(III)及びPt(II)が好ましい。Ir(III)が特に好ましい。
【0053】
更なる好ましい一実施態様においては、金属原子M1は、Fe(II)、Fe(III)、Ru(II)、Cr(III)、Mo(VI)、W(0)、Re(II)、Mn(II)、Ir(III)、Co(II)、Co(III)、Rh(III)、Os(II)、Pt(IV)であり、nは2であり、かつmは1である。殊には、ヘテロレプティックなカルベン錯体であって、その際M1がIr(III)であり、nが2であり、かつmが1であるものが好ましい。前記の本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、同じ配位子を有するが、nが1であり、かつmが2であるヘテロレプティックなカルベン錯体に対して、実質的に改善された効率の点で優れている。
【0054】
従って、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、殊に好ましい一実施態様においては、式(Ii)
【化33】

[式中、一般式(Ii)のカルベン錯体中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基を意味するか、又は
1及びY2は、一緒になって、ドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に、少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である架橋を形成する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有し、そのうち1〜5個の原子がヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子が炭素原子である架橋を形成するので、基
【化34】

は、5員ないし7員の環を形成し、前記環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有してよく、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよく、かつ前記の5員ないし7員の環は、場合により、1もしくは複数の他の環と縮合されていてよい;
更に、Y1及びR1は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味する;
3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化35】

(式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する)を意味するか、又は
更に、n個のカルベン配位子の各々におけるY3及びY2は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829y、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
yは、2〜10であり、かつ
25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を表すか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、一般式Iiの化合物中のカルベン配位子における残基、基及び係数R1、R2、R3、Do1、Do2、Y1、Y2、Y3、X、p、q及びrは、同一もしくは異なってよい;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]を有する。
【0055】
一般式IIに挙げられる残基、基及び係数の好ましい実施態様及び定義は、これらの残基、基及び係数について既に前述した意味に相当する。
【0056】
本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、基本的に当業者に公知の方法と同様にして製造することができ、その際、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、一般式IIの少なくとも1つのカルベン配位子と、一般式IIIの少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子とを有することを顧慮すべきである。カルベン錯体の製造に適した方法は、例えば総説であるW.A.Hermann他著のAdvances in Organometallic Chemistry,2001 Vol.48,1〜69、W.A.Hermann他著のAngew.Chem.1997,109,2256〜2282及びG.Bertrand他著のChem.Rev.2000,100,39〜91並びにそこに引用された文献に挙げられており、並びにWO2005/113704号、WO2005/019373号及び整理番号EP06101109.4を有する未公表の欧州出願に挙げられている。
【0057】
一実施態様においては、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体は、該カルベン配位子に相当する配位子前駆体と、複素環式の非カルベン配位子前駆体と、所望の金属を含む好適な金属錯体から製造される。
【0058】
好適なカルベン配位子の配位子前駆体は、当業者に公知である。好ましくは、前記前駆体は、一般式IV
【化36】

[式中、
-は、モノアニオン性の対イオン、好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-もしくはSbF6-を意味し、かつ
Gは、Do2がCであるかqが0である場合にHを意味し、かつGは、Do2がN、S、OもしくはPである場合にH又はヘテロ原子の自由電子対を意味し、かつ
一般式IVの配位子前駆体中の他の残基、記号及び係数は、上述の意味を有する]のカルベン配位子のカチオン性前駆体である。
【0059】
一般式IVの配位子前駆体は、当業者に公知の方法に従って製造することができる。好適な方法は、例えばWO2005/019373号及びそこに引用される文献、例えばOrganic Letters,1999,1,953−956;Angewandte Chemie,2000,112,1672−1674に挙げられている。他の好適な方法は、例えばT.Weskamp他著のJ.Organometal.Chem.2000,600,12−22;G.Xu他著のOrg.Lett.2005,7,4605−4608;V.Lavallo他著のAngew.Chem.Int.Ed.2005,44,5705−5709に挙げられている。好適な幾つかの配位子前駆体は市販されている。
【0060】
好適な複素環式の非カルベン配位子前駆体は、当業者に同様に公知である。好ましくは、前記前駆体は、一般式V
【化37】

[式中、
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]の配位子前駆体である。
【0061】
上述の残基、記号及び係数の好ましい実施態様は、上述のとおりである。
【0062】
一般式Vの配位子前駆体は、当業者に公知の方法に従って製造することができるか、あるいは市販されている。好適な製造方法は、例えばB.M Choudary他著のJ.Am.Chem.Soc.2005,127,9948;H.Zhang他著のJ.Org.Chem.2005,70,5164;S.V.Ley他著のAngew.Chem.Int.Ed.2003,42,5400;J.Hassan他著のChem.Rev.2002,102,1359;Metal−catalyzed Cross−coupling Reactions,A.de Meijere,F. Diederich,Wiley−VCH,2004に開示されている。
【0063】
好ましい一実施態様においては、本発明は、本発明による一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体の製造方法において、以下の工程:
一般式(IV)
【化38】

[式中、記号、残基及び係数は、上述の意味を有する]の少なくとも1つの配位子前駆体、及び一般式V
【化39】

[式中、記号、残基及び係数は、上述の意味を有する]の少なくとも1つの配位子前駆体と、少なくとも1つの金属M1'を含む金属錯体と反応させる工程
(その際、前記のM1'は、以下の意味を有する:
1'は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOsからなる群から選択される金属原子であって、相応の金属原子についてそれぞれ可能な酸化段階におけるものを意味する)
を含む製造方法に関する。
【0064】
本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体の製造は、基本的に、一般式IVのカルベン配位子前駆体及び一般式Vの配位子前駆体と、少なくとも1つの金属M1を含む金属錯体との同時の反応("ワンポット反応")によって可能であり、又は好ましくは連続的な反応によって可能である。その連続的な反応は、金属錯体と一般式IVの少なくとも1つのカルベン配位子前駆体とを第一段階で反応させることによって実施でき、その際、まず中間体として、一般式IIで示されるかもしくはシクロメタル化されていない形としての少なくとも1つのカルベン配位子と、一般式IIIの少なくとも1つの他の二座の複素環式の非カルベン配位子のための少なくとも1つの更なる配位能(その際、該更なる配位能は、金属M1上の遊離配位箇所によるか別の配位子の排除によって存在する)を有するカルベン錯体が形成され、又は金属錯体と一般式Vの少なくとも1つの配位子前駆体とを第一段階で反応させることによって実施でき、その際、まず中間体として、一般式IIIで示されるかもしくはシクロメタル化されていない形としての少なくとも1つの複素環式の非カルベン配位子と、式IIの少なくとも1つの二座のカルベン配位子のための少なくとも1つの更なる配位能(その際、該更なる配位能は、金属M1上の遊離配位箇所によるか別の配位子の排除によって存在する)を有する錯体が形成される。第一段階に続く第二段階において、第一段階で得られたそれぞれの錯体と一般式Vの少なくとも1つの配位子前駆体(第一段階で、一般式IVの少なくとも1つのカルベン配位子前駆体を使用した場合)もしくは一般式IVの少なくとも1つのカルベン配位子前駆体(第一段階で、一般式Vの少なくとも1つの配位子前駆体を使用した場合)との反応を実施する。
【0065】
本発明による式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体における金属M1が配位数6を有するIr(III)である特に好ましい場合において、連続的な反応に際して、例えば以下の特に好ましい経路がもたらされ、その際、一般式IIのカルベン錯体が得られる:
経路ia:
(iaa)少なくとも1つの金属M1を含み、その少なくとも1つの金属M1がIrである金属錯体と、Irとの比率において少なくとも二倍の化学量論量のカルベン配位子前駆体IVとを反応させ、その際、一般式IIのカルベン配位子と、他の二座の配位子のための更なる配位箇所を有するジカルベン錯体が形成される。
【0066】
(iab)引き続き、得られたジカルベン錯体と、Irとの比率において少なくとも化学量論量の一般式Vの配位子前駆体とを反応させ、その際、一般式IiのヘテロレプティックなIr−カルベン錯体が得られる。
【0067】
経路ib:
(iba)少なくとも1つの金属M1を含み、その少なくとも1つの金属M1がIrである金属錯体と、Irとの比率において少なくとも化学量論量の一般式Vの配位子前駆体とを反応させ、その際、一般式IIIの複素環式の非カルベン配位子と、2つの他の二座の配位子のための2つの更なる配位箇所を有する錯体が形成される。
【0068】
(ibb)引き続き、得られた錯体と、Irとの比率において少なくとも二倍の化学量論量の一般式IVのカルベン配位子前駆体とを反応させ、その際、一般式IiのヘテロレプティックなIr−カルベン錯体が得られる。
【0069】
段階(iaa)及び(iba)で形成された中間体において、それぞれのカルベン配位子もしくは非カルベン配位子は、シクロメタル化された形もしくはシクロメタル化されていない形のいずれかで存在してよい。
【0070】
本発明の特に好ましい一実施態様において、一般式Iiのカルベン錯体への反応は、経路iaに従って行われる。
【0071】
段階(iaa)もしくは(iba)において前記のように得られた錯体は、場合により単離することができ、又は"その場で"、すなわち後処理することなく、1種以上の他の配位子前駆体と反応させることができる。
【0072】
少なくとも1つの金属M1を有する金属錯体は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOs、殊に好ましくはIrのそれぞれの相応の金属原子について可能な酸化段階のもの、好ましくはIr(I)もしくはIr(III)からなる群から選択される少なくとも1つの金属を有する金属錯体である。好適な金属錯体は、当業者に公知である。好適な金属錯体のための例は、Pt(cod)Cl2、Pt(cod)Me2、Pt(acac)2、Pt(PPh32Cl2、PtCl2、[Rh(cod)Cl]2、Rh(acac)CO(PPh3)、Rh(acac)(CO)2、Rh(cod)2BF4、RhCl(PPh33、RhCl3×nH2O、Rh(acac)3、[Os(CO)322、[Os3(CO)12]、OsH4(PPH33、Cp2Os、Cp*2Os、H2OsCl6×6H2O、OsCl3×H2O並びに[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O、(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3であり、その際、codは、シクロオクタジエンを意味し、coeは、シクロオクテンを意味し、acacは、アセチルアセトネートを意味し、thtは、テトラヒドロチオフェンを意味する。金属錯体は、当業者に公知の方法によって製造でき、もしくは市販されている。
【0073】
一般式Iのイリジウム(III)錯体(式I中のM1がIrである)の製造に際して、それは本願によれば特に好ましいが、上述のイリジウム(I)錯体もしくはイリジウム(III)錯体が使用され、特に[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O、(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3が使用され、その際、codは、シクロオクタジエンを意味し、coeは、シクロオクテンを意味し、acacは、アセチルアセトネートを意味し、thtは、テトラヒドロチオフェンを意味する。
【0074】
前記反応に引き続き、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、当業者に公知の方法に従って後処理し、場合により精製される。通常は、その後処理及び精製は、抽出、カラムクロマトグラフィー及び/又は再結晶化によって当業者に公知の方法に従って行われる。
【0075】
本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、発光体物質として極めて適している。それというのも該錯体は、電磁スペクトルの可視領域に発光(エレクトロルミネッセンス)を示すからである。本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を発光体物質として用いることによって、電磁スペクトルの赤色、緑色並びに青色領域に、非常に良好な効率でエレクトロルミネセンスを示す化合物を提供することが可能である。その際、量子収率は高く、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体のデバイス中での安定性は高い。
【0076】
更に、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、使用される配位子と使用される中心金属に依存して、OLEDにおける電子阻止物質、励起子阻止物質もしくは正孔阻止物質又は正孔伝導体、電子伝導体、正孔注入層又はマトリクス材料として適している。
【0077】
有機発光ダイオード(OLED)は、基本的に、複数の層:
1.アノード(1)
2.正孔輸送層(2)
3.発光層(3)
4.電子輸送層(4)
5.カソード(5)
から構成されている。
【0078】
しかしながら、OLEDは、上記の層の全てを有さなくてもよく、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)及び(5)(カソード)を有するOLEDも同様に適しており、その際、層(2)(正孔輸送層)及び層(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって担われる。層(1)、(2)、(3)及び(5)もしくは層(1)、(3)、(4)及び(5)を有するOLEDは、同様に適している。
【0079】
本願によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、OLEDの種々の層中に使用することができる。従って、本発明の更なる対象は、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、有機発光ダイオード(OLED)において用いる使用並びに少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を含有するOLEDである。本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、好ましくは、発光層において、特に好ましくは発光体分子として使用される。従って、本発明の更なる対象は、少なくとも1つのヘテロレプティックなカルベン錯体を、好ましくは発光体分子として含有する発光層である。好ましいヘテロレプティックなカルベン錯体は、上述のとおりである。
【0080】
本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、そのままで、更なる添加剤なくして、OLEDの発光層もしくは別の層中に、好ましくは発光層中に存在してよい。しかしながら、同様に、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体の他に、更なる化合物が、本発明による少なくとも1つのヘテロレプティックなカルベン錯体を含有する層中に、好ましくは発光層中に存在することが可能であり、かつ好ましい。例えば、発光体分子として使用されるヘテロレプティックなカルベン錯体の発光色を変更するために、発光層中に蛍光色素が存在してよい。更に、好ましい一実施態様においては、希釈材料を使用することができる。この希釈材料は、ポリマーであってよく、例えばポリ(N−ビニルカルバゾール)又はポリシランであってよい。しかしながら、希釈材料は、同様に、小分子であってよく、例えば4,4′−N,N′−ジカルバゾールビフェニル(CDP=CBP)又は第三級の芳香族アミンであってよい。
【0081】
前記のOLED層の各々は、更に2又はそれ以上の層から構成されていてよい。例えば、正孔輸送層は、電極から正孔が注入される層と、正孔が正孔注入層から発光層へと輸送される層とから構成されていてよい。電子輸送層は、同様に、複層からなっていてよく、例えば電子が電極を通じて注入される層と、電子注入層から電子が得られ、そして発光層中に輸送される層とから成ってよい。これらの前記の層は、エネルギー準位、耐熱性及び電荷担体移動度並びに前記の層と有機層又は金属電極とのエネルギー差のような要素に応じてそれぞれ選択される。当業者は、OLEDの構造を、本発明により、好ましくは発光物質として使用されるヘテロレプティックなカルベン錯体に最適に適合されるように選択することができる。
【0082】
特に効率的なOLEDを得るためには、正孔輸送層のHOMO(最高占有分子軌道)をアノードの仕事関数に合わせることが望ましく、かつ電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)をカソードの仕事関数に合わせることが望ましい。
【0083】
本願の更なる対象は、本発明による少なくとも1つの発光層を有するOLEDである。OLED中の更なる層は、通常はかかる層で使用され、かつ当業者に公知の任意の材料から構成されていてよい。
【0084】
アノード(1)は、正の電荷担体を提供する電極である。該電極は、例えば、金属、種々の金属の混合物、金属合金、金属酸化物又は種々の金属酸化物の混合物を含有する材料から構成されてよい。選択的に、アノードは導電性ポリマーであってよい。好適な金属は、元素の周期系の第11族、第4族、第5族及び第6族の金属並びに第8族ないし第10族の遷移金属を含む。アノードが光透過性であることが望ましい場合に、一般に元素の周期系の第12族、第13族及び第14族の混合金属酸化物、例えばインジウム−スズ酸化物(ITO)が使用される。同様に、アノード(1)は、有機材料、例えばポリアニリンを含有することができ、これらは例えばNature,Vol.357,第477頁〜第479頁(1992年6月11日)に記載されている。少なくともアノード又はカソードのいずれかは、形成された光を出力結合できるために、少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0085】
本発明によるOLEDの層(2)のために適した正孔輸送材料は、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologie,第4版、第18巻、第837〜第860頁、1996に開示されている。正孔輸送性の分子もポリマーも、正孔輸送材料として使用することができる。通常使用される正孔輸送性分子は、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N′−ビス(4−メチルフェニル)−N,N′−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1′−(3,3′−ジメチル)ビフェニル]−4,4′−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N′,N′−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル)(4−メチル−フェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPR又はDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン(TTB)、4,4′,4′′−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)及びポルフィリン化合物並びにフタロシアニン、例えば銅フタロシアニンからなる群から選択される。通常使用される正孔輸送性ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、好ましくはPSS(ポリスチレンスルホネート)でドープされたPEDOT及びポリアニリンからなる群から選択される。同様に、正孔輸送性ポリマーは、ポリマー、例えばポリスチレン及びポリカーボネート中に正孔輸送性分子をドープすることによって得ることができる。好適な正孔輸送性分子は、既に前記に挙げた分子である。
【0086】
本発明によるOLEDの層(4)に適した電子輸送性材料は、オキシノイド化合物とキレート化された金属、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、フェナントロリンを基礎とする化合物、例えば2,9−ジメチル,4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA=BCP)又は4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)及びアゾール化合物、例えば2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)及び3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を含む。この場合に、層(4)は、電子輸送の軽減のためにも、OLEDの層の境界面での励起子の消光を回避するために緩衝層又は阻止層として使用することができる。有利には、層(4)は、電子の移動度を改善し、そして励起子の消光を低減させる。
【0087】
前記に、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料として挙げた材料によって、幾つかの複数の機能を満たすことができる。例えば、電子伝導性材料の幾つかは、該材料が低いところにあるHOMOを有する場合には、同時に正孔ブロッキング性材料である。
【0088】
電荷輸送層は、使用される材料の輸送特性を改善させるために、一方で、層厚を大規模に構成するために(ピン正孔/短絡の回避)、そして他方で、デバイスの駆動電圧を低減させるために、電子ドーピングされていてもよい。例えば、正孔輸送材料を電子受容体でドープしてよく、例えばフタロシアニンもしくはアリールアミン、例えばTPD又はTDTAをテトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)でドープしてよい。電子輸送材料を、例えばアルカリ金属でドープしてよく、例えばAlq3をリチウムでドープしてよい。電子ドーピングは、当業者に公知であり、例えばW.Gao、A.Kahn著のJ.Appl.Phys.,第94巻、第1号、2003年7月1日(p−ドープされた有機層);A.G.Werner、F.Li、K.Harada、M.Pfeiffer、T.Fritz、K.Leo著のAppl.Phys.Lett.,第82巻、第25号、2003年6月23日及びPfeiffer他著のOrganic Electronics 2003,4,89−103に開示されている。
【0089】
カソード(5)は、電子又は負の電荷担体の供給に用いられる電極である。カソードは、アノードより低い仕事関数を有するあらゆる金属又は非金属であってよい。カソードに適した材料は、元素の周期系の第1族のアルカリ金属、例えばLi、Cs、第2族のアルカリ土類金属、第12族の金属からなり、希土類金属及びランタノイド及びアクチノイドを含む群から選択される。更に、アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム及びマグネシウムのような金属並びにそれらの組合せ物を使用することができる。更に、リチウムを含有する有機金属化合物又はLiFを、有機層とカソードとの間に適用して、駆動電圧を低減させることができる。
【0090】
本発明によるOLEDは、付加的に、当業者に公知の更なる層を有してよい。例えば、層(2)と発光層(3)との間に、正電荷の輸送を軽減させ、かつ/又は層の互いのバンドギャップを整合させる層を適用することができる。選択的に、前記の更なる層は保護層としても用いることができる。同様に、発光層(3)と層(4)との間に、負電荷の輸送を軽減させ、かつ/又は層間の互いのバンドギャップを整合させるために付加的な層が存在してよい。選択的に、前記の層は保護層としても用いることができる。
【0091】
有利な一実施態様においては、本発明によるOLEDは、層(1)〜(5)の他に、以下に挙げられる更なる層:
− アノード(1)と正孔輸送層(2)との間の正孔注入層;
− 正孔輸送層(2)と発光層(3)との間の電子及び/又は励起子についての阻止層;
− 発光層(3)と電子輸送層(4)との間の正孔及び/又は励起子についての阻止層;
− 電子輸送層(4)とカソード(5)との間の電子注入層
の少なくとも1つを有する。
【0092】
既に上述のように、しかしながら、OLEDは、上記の層(1)ないし(5)の全てを有さなくてもよく、例えば層(1)(アノード)、(3)(発光層)及び(5)(カソード)を有するOLEDも同様に適しており、その際、層(2)(正孔輸送層)及び層(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって担われる。層(1)、(2)、(3)及び(5)もしくは層(1)、(3)、(4)及び(5)を有するOLEDは、同様に適している。
【0093】
これらの層を(例えば電気化学的調査に基づいて)好適な材料を選択せねばならないことは当業者に公知である。個々の層に適した材料並びに好適なOLED構造は、当業者に公知であり、かつ例えばWO2005/113704号に開示されている。
【0094】
更に、本発明によるOLEDの前記の層の各々は、2つ又はそれ以上の層から構成されていてよい。更に、層(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の幾つか又は全ては、電荷担体輸送の効率を高めるために表面処理されていてよい。前記の層の各々についての材料の選択は、有利には、高い効率を有するOLEDが得られるようになされる。
【0095】
本発明によるOLEDの製造は、当業者に公知の方法に従って行うことができる。一般に、該OLEDは、個々の層を好適な基体上に連続的に蒸着させることによって製造される。好適な基体は、例えばガラス又はポリマー被膜である。蒸着のためには、通常の技術、例えば熱的蒸発、化学蒸着などを使用することができる。代替法では、好適な溶剤中の溶液又は分散液から有機層を被覆することができ、その際、当業者に公知の被覆技術が使用される。少なくとも1つの本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体の他に、ポリマー性材料を、OLEDの層の1つに、好ましくは発光層中に有している組成物は、一般に溶液加工法によって層として塗布される。
【0096】
一般に、種々の層は、以下の厚さを有する:アノード(2)500〜5000Å、有利には1000〜2000Å;正孔輸送層(3)50〜1000Å、有利には200〜800Å;発光層(4)10〜1000Å、有利には100〜800Å;電子輸送層(5)50〜1000Å、有利には200〜800Å;カソード(7)200〜10000Å、有利には300〜5000Å。本発明によるOLED中の正孔と電子の再結合領域の位置及び従ってOLEDの発光スペクトルは、各層の相対厚によって影響されうる。つまり、電子輸送層の厚さは、有利には、電子/正孔再結合領域が発光層中にあるように選択されることが望ましい。OLED中の個々の層の層厚の比率は、使用される材料に依存する。場合により使用される付加的な層の層厚は、当業者に公知である。
【0097】
本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を本発明によるOLEDの少なくとも一層で、好ましくは本発明によるOLEDの発光層中で発光体分子として使用することによって、高い効率を有するOLEDを得ることができる。本発明によるOLEDの効率は、更に、他の層の最適化によって改善することができる。例えば、高効率のカソード、例えばCa、Ba又はLiFを使用することができる。駆動電圧の低減又は量子効率の向上を引き起こす成形された基体及び新規の正孔輸送材料は、同様に本発明によるOLED中で使用することができる。更に、種々の層のエネルギー準位を調整するために、かつエレクトロルミネセンスを軽減するために、OLED中に付加的な層が存在してよい。
【0098】
本発明によるOLEDは、エレクトロルミネセンスが有用な全ての装置で使用することができる。好適な装置は、有利には、定置式ディスプレイ及び可搬式ディスプレイから選択される。定置式ディスプレイは、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、プリンタのディスプレイ、調理機器のディスプレイ並びに宣伝用ボード、照明及び標識板である。可搬式ディスプレイは、例えば携帯機器、ラップトップ、デジタルカメラ、車両のディスプレイ並びにバス及び電車の目的地表示板である。
【0099】
更に、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、逆構造を有するOLEDにおいて使用することができる。好ましくは、本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、この逆OLED中でも発光層中で使用される。逆OLEDの構造及びそこで通常使用される材料は当業者に公知である。
【0100】
前記の本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、OLED中で使用する他に、光の入射に際して電磁スペクトルの可視領域で発光する(フォトルミネッセンス)着色剤として使用することができる。
【0101】
従って、本願の更なる対象は、前記の本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、ポリマー材料の大量着色(Massenfaerbung)のために用いる使用である。
【0102】
好適なポリマー材料は、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、メラミン樹脂、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリブタジエン、ポリクロロブタジエン、ポリイソプレンもしくは挙げられたモノマーのコポリマーである。
【0103】
更に、前記の本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体は、以下の用途に使用することができる:
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、建て染め染料としてもしくは建て染め染料において、天然物質、例えば紙、木材、わら、皮革、毛皮又は天然繊維材料、例えば木綿、ウール、絹、ジュート、サイザル、麻糸、亜麻もしくは獣毛(例えば馬巣織り)及びその化成製品、例えばビスコース繊維、硝酸処理絹もしくは銅レーヨン(Reyon)の染色のために用いる使用。
【0104】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、着色剤として、例えば染料、塗料及び別の塗工剤、紙用染料、印刷用染料、インキ及び標識及び筆記目的のための別の染料の着色のために用いる使用。
【0105】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、顔料用染料として、例えば染料、塗料及び別の塗工剤、紙用染料、印刷用染料、インキ及び標識及び筆記目的のための別の染料の着色のために用いる使用。
【0106】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、電子写真における顔料として、例えば乾式複写機(ゼロックス法)及びレーザプリンタのために用いる使用。
【0107】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、安全標識目的のために用いる使用。その際、高い化学的及び光化学的な安定性と、場合により該物質のルミネッセンスも重要である。それは、特に認識不可能な色印象が達成されるべき小切手、チェックカード、紙幣、クーポン、文書、証明書類などのために好ましい。
【0108】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、規定の色合い、特に好ましくは鮮烈な色度が達成されるべき他の染料への添加剤として用いる使用。
【0109】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、対象物の標識であって該対象物のルミネッセンスを介した機械的認識のための標識のために用いる使用。好ましくは、対象物の選別のための機械的認識であり、例えばまたプラスチックのリサイクルのためにも好ましい。
【0110】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、機械読取り可能な標識のためのルミネッセンス染料として用いる使用。好ましくは、英数字加刷もしくはバーコードである。
【0111】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、光の周波数変換のために、例えば短波長光から長波長の可視光にするために用いる使用。
【0112】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、様々な表示目的、注意目的及び標識目的のための表示エレメントにおいて、例えばパッシブ表示エレメント、道標及び交通標識、例えば交通信号灯において用いる使用。
【0113】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、インクジェットプリンタ、好ましくは発光インクとして均質溶液中で用いる使用。
【0114】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、超伝導有機材料用の出発材料として用いる使用。
【0115】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、固体発光標識のために用いる使用。
【0116】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、装飾目的のために用いる使用。
【0117】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、トレーサー目的のために、例えば生化学、医学、工学及び自然科学において用いる使用。この場合に、該染料は、基質と共有結合されていてよいか、又は副原子価を介して、例えば水素結合もしくは疎水性相互作用(吸着)を介して結合されていてよい。
【0118】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、高感度検出法における発光色素として用いる使用(C.Aubert,J.Fuenfschilling,l.Zschocke−Graenacher及びH.Langhals,Z.Analyt.Chem.320(1985)361を参照)。
【0119】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、シンチレータにおける発光色素として用いる使用。
【0120】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、光学的な集光システムにおける色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0121】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、発光−ソーラーコレクタにおける色素もしくは発光色素として用いる使用(Langhals,Nachr.Chem.Tech.Lab.28(1980)716を参照)。
【0122】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、発光表示ディスプレイにおける色素もしくは発光色素として用いる使用(W.Greubel及びG.Baur,Elektronik 26(1977)6を参照)。
【0123】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、プラスチックの製造のための光誘導型重合のための冷光源における色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0124】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、材料検査のために、例えば半導体回路の製造における材料検査のための色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0125】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、集積型半導体素子の微細構造の検査のための色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0126】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、光導体における色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0127】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、写真法における色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0128】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、電子、イオンもしくはUV線による励起が起こる表示システム、照明システムもしくは画像変換システムおいて、例えば発光ディスプレイ、ブラウン管もしくは蛍光灯において色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0129】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、集積型半導体回路の一部として、そのままでもしくは他の半導体と組み合わせて、例えばエピタキシーの形で使用される色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0130】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、化学発光システムにおいて、例えば化学発光型発光棒、発光型イムノアッセイもしくは別の発光型検出法において色素もしくは発光色素として用いる使用。
【0131】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、標識色としての色素もしくは発光色素として、好ましくは自体及び図面もしくは別の描画作品の光学的強調のために、特定の光学的な色印象が達成されるべきラベル及び他の対象物の標識のために用いる使用。
【0132】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、固体レーザにおける色素もしくは発光色素として、好ましくはレーザ光線の生成のための発光色素として用いる使用。
【0133】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、非線形レンズのための活性物質として、例えばレーザ光の周波数の二倍化及び三倍化のために用いる使用。
【0134】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、レオロジー向上剤として用いる使用。
【0135】
− 本発明によるヘテロレプティックなカルベン錯体を、電磁線を電気的エネルギーに変換するための光起電型装置における色素として用いる使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルベン配位子と複素環式の非カルベン配位子の両者を含有する、一般式(I)
1[carben]n[het]m (I)
[式中、記号は、以下の意味を有する:
1は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOsからなる群から選択される金属原子であって、その相応する金属原子について可能な各酸化段階におけるものを意味する;
nは、カルベン配位子の数を意味し、その際、nは、合計(n+m)=2の場合に、1を意味し、合計(n+m)≧3の場合に、少なくとも2を意味し、その際、nが少なくとも2を意味する場合には、それらのカルベン配位子は同一もしくは異なってよい;
mは、複素環式の非カルベン配位子の数を意味し、その際、m≧1であり、m>1の場合には、それらの複素環式の非カルベン配位子は、同一もしくは異なってよい;
その際、n及びmは、使用される金属原子の酸化段階及び配位数と、配位子carben及びhetの電荷に依存している;
carbenは、一般式(II)
【化1】

のカルベン配位子を意味する;
一般式IIのカルベン配位子中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基を意味するか、又は
1及びY2は、一緒になって、ドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に、少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である架橋を形成する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有し、そのうち1〜5個の原子がヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子が炭素原子である架橋を形成するので、基
【化2】

は、5員ないし7員の環を形成し、前記環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有してよく、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよく、かつ前記の5員ないし7員の環は、場合により、1もしくは複数の他の環と縮合されていてよい;
更に、Y1及びR1は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味する;
3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化3】

(式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する)を意味するか、又は
更に、n個のカルベン配位子の各々におけるY3及びY2は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829y、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
yは、2〜10であり、かつ
25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;及び
hetは、一般式(III)
【化4】

の複素環式の非カルベン配位子を意味する;
式IIIの配位子het中の記号は、以下の意味を有する:
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を表すか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]のヘテロレプティックなカルベン錯体。
【請求項2】
請求項1に記載のカルベン錯体であって、基
【化5】

が、
【化6】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
Z′′は、互いに無関係に、CR10もしくはNを意味する;
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11′は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する置換基を意味する;
10は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルを意味するか、又はそれぞれ2個の基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、基a中のR4もしくはR5と、基b中のR8と、基c中の基R10の1つと、基d中のR11は、R1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]からなる群から選択されることを特徴とするカルベン錯体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカルベン錯体であって、基
【化7】

が構造
【化8】

[式中、記号は以下の意味を有する:
Zは、互いに無関係に、CR12もしくはNを意味し、その際、0〜3個の記号Zは、Nを意味してよい;
基ZにおけるR12は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基、アルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R12は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有する縮合環を形成するか、又はR12は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化9】

の基は、芳香族の本体を介してもしくは基R12の1つによって、Y1と架橋を介して結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]を意味することを特徴とするカルベン錯体。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のカルベン錯体であって、少なくとも1つのカルベン配位子が、
【化10】

[式中、記号は、以下の意味を有する:
3は、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基もしくは以下の構造
【化11】

の基を意味する;
Zは、同一もしくは異なって、CR12もしくはNを意味する;
Z′は、同一もしくは異なって、CR12'もしくはNを意味する;
Z′′は、同一もしくは異なって、CR10もしくはNを意味する;
12、R12'は、同一もしくは異なって、それぞれ互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R12もしくはR12'は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR12もしくはR12'は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
4、R5、R6、R7、R8、R9、R11及びR11'は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニル又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
基Z′′中のR10は、互いに無関係に、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキニルもしくはアルケニルを意味するか、又はそれぞれ2個の基R10は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有する縮合環を形成するか、又はR10は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
更に、構造
【化12】

の基は、基aaにおいては、芳香族の本体もしくは基R12の1つを介して、R4もしくはR5又はR4及びR5が架橋されている炭素原子と、基abにおいては、R8又はR8が結合されている炭素原子と、基acにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、又は基adにおいては、R11又はR11が結合されている炭素原子と、架橋を介して結合されていてよく、かつ/又は
構造
【化13】

の基は、基aaにおいては、芳香族の本体もしくは基R12'の1つを介して、R6もしくはR7又はR6及びR7が架橋されている炭素原子と、基abにおいては、R9又はR9が結合されている炭素原子と、基acにおいては、基R10の1つ又はR10が結合されている炭素原子の1つと、又は基adにおいては、R11'又はR11'が結合されている炭素原子と、架橋を介して結合されていてよい;
その際、それぞれの架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
その際、構造
【化14】

の基が、架橋を介して、R4及びR5が結合されている炭素原子と(基aa)、R8が結合されている炭素原子と(基ab)、R10が結合されている炭素原子の1つと(基ac)又はR11が結合されている炭素原子と(基ad)と結合されている場合には、それぞれの基R4もしくはR5、R8、基R10の1つもしくはR11は、該架橋に対する結合によって交換されている;かつ
構造
【化15】

の基が、架橋を介して、R6及びR7が結合されている炭素原子と(基aa)、R9が結合されている炭素原子と(基ab)、R10が結合されている炭素原子の1つと(基ac)又はR11'が結合されている炭素原子と(基ad)と結合されている場合には、それぞれの基R6もしくはR7、R9、基R10の1つもしくはR11'は、該架橋に対する結合によって交換されている]からなる群から選択されることを特徴とするカルベン錯体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のカルベン錯体であって、複素環式の非カルベン配位子hetが、
【化16】

【化17】

[式中、
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
34、R35、R36は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又はそれぞれ2個の基R34、R35もしくはR36は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35もしくはR36は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する]からなる群から選択されることを特徴とするカルベン錯体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のカルベン錯体であって、M1が、Fe(II)、Fe(III)、Ru(II)、Cr(III)、Mo(VI)、W(0)、Re(II)、Mn(II)、Ir(III)、Co(II)、Co(III)、Rh(III)、Os(II)、Pt(IV)であり、nが2であり、かつmが1であることを特徴とするカルベン錯体。
【請求項7】
請求項6に記載のカルベン錯体であって、M1が、Ir(III)であり、nが2であり、かつmが1であることを特徴とするカルベン錯体。
【請求項8】
請求項7に記載のカルベン錯体であって、該カルベン錯体が、一般式(Ii)
【化18】

[式中、一般式(Ii)のカルベン錯体中の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基を意味するか、又は
1及びY2は、一緒になって、ドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に、少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である架橋を形成する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有し、そのうち1〜5個の原子がヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子が炭素原子である架橋を形成するので、基
【化19】

は、5員ないし7員の環を形成し、前記環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有してよく、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよく、かつ前記の5員ないし7員の環は、場合により、1もしくは複数の他の環と縮合されていてよい;
更に、Y1及びR1は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味する;
3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化20】

(式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する)を意味するか、又は
更に、n個のカルベン配位子の各々におけるY3及びY2は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−CO及び(CR2829y、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2829)は、NR25、PR26、BR27、O、S、SO、SO2、SiR3233、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
yは、2〜10であり、かつ
25、R26、R27、R28、R29、R32、R33は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を表すか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する;
その際、一般式Iiの化合物中のカルベン配位子における残基、基及び係数R1、R2、R3、Do1、Do2、Y1、Y2、Y3、X、p、q及びrは、同一もしくは異なってよい;
その際、点線は、基Dの1つと基Eの1つとの間の随意の架橋を意味する;その際、該架橋は、以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−CO及び(CR4344v、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR4344)は、NR38、PR39、BR40、O、S、SO、SO2、SiR4142、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
vは、2〜10であり、かつ
38、R39、R40、R41、R42、R43、R44は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する]を有することを特徴とするカルベン錯体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の一般式Iのヘテロレプティックなカルベン錯体の製造方法において、該製造は、以下の工程:
一般式(IV)
【化21】

[式中、
-は、モノアニオン性の対イオン、好ましくはハロゲン化物イオン、擬ハロゲン化物イオン、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-もしくはSbF6-を意味し、かつ
Gは、Do2がCであるかqが0である場合にHを意味し、かつGは、Do2がN、S、OもしくはPである場合にH又はヘテロ原子の自由電子対を意味し、かつ
一般式IVの配位子前駆体中の他の記号は、以下の意味を有する:
Do1は、C、P、N、O、S及びSi、好ましくはP、N、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
Do2は、C、N、P、O及びSからなる群から選択されるドナー原子を意味する;
rは、Do1がCもしくはSiである場合に、2であり、Do1がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo1がOもしくはSである場合に、0である;
sは、Do2がCである場合に、2であり、Do2がNもしくはPである場合に、1であり、かつDo2がOもしくはSである場合に、0である;
Xは、シリレン、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−CO及び(CR1617wからなる群から選択されるスペーサーであり、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR1617)は、NR13、PR14、BR15、O、S、SO、SO2、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよい;
wは、2〜10である;
13、R14、R15、R16、R17は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
pは、0もしくは1である;
qは、0もしくは1である;
1、Y2は、それぞれ互いに無関係に、水素又はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基及びアルケニル基からなる群から選択される炭素含有基を意味するか、又は
1及びY2は、一緒になって、ドナー原子Do1と窒素原子Nとの間に、少なくとも2つの原子を有し、そのうち少なくとも1つが炭素原子である架橋を形成する;
1、R2は、互いに無関係に、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味するか、又は
1及びR2は、一緒になって、全体で3〜5個の原子を有し、そのうち1〜5個の原子がヘテロ原子であってよく、かつ残りの原子が炭素原子である架橋を形成するので、基
【化22】

は、5員ないし7員の環を形成し、前記環は、場合により、既に存在する二重結合の他に、1つの更なる二重結合を有してよく、又は6員もしくは7員の環の場合には、2つの更なる二重結合を有してよく、かつ場合によりアルキル基もしくはアリール基及び/又はドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基で置換されていてよく、かつ場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよく、かつ前記の5員ないし7員の環は、場合により、1もしくは複数の他の環と縮合されていてよい;
更に、Y1及びR1は、架橋を介して互いに結合されていてよく、その際、該架橋は以下の意味を有してよい:
アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキニレン、アルケニレン、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−CO及び(CR2122x、その際、1もしくは複数の隣接していない基(CR2122)は、NR18、PR19、BR20、O、S、SO、SO2、SiR3031、CO、CO−O、O−COによって交換されていてよく、その際、
xは、2〜10であり、かつ
18、R19、R20、R21、R22、R30、R31は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルを意味する;
3は、水素、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を意味する;
3は、水素、アルキル基、アルキニル基もしくはアルケニル基又は
【化23】

(式中、Do2'、q′、s′、R3'、R1'、R2'、X′及びp′は、無関係に、Do2、q、s、R3、R1、R2、X及びpと同じ意味を有する)を意味する]の少なくとも1つの配位子前駆体及び一般式V
【化24】

[式中、
Dは、互いに無関係に、CR34もしくはNを意味する;
Wは、C、N、Pを意味する;
Eは、互いに無関係に、CR35、N、NR36、S、O、PもしくはPR37を意味する;
Iは、1もしくは2である;
34、R35、R36、R37は、互いに無関係に、H、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキニル基もしくはアルケニル基を表すか、又はそれぞれ2個の基R34、R35、R36もしくはR37は、一緒になって、場合により少なくとも1つのヘテロ原子を有してよい縮合環を形成するか、又はR34、R35、R36もしくはR37は、ドナー作用もしくはアクセプター作用を有する基を意味する]の少なくとも1つの配位子前駆体と、少なくとも1つの金属M1'[その際、前記のM1'は、以下の意味を有する:
1'は、Ir、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu及びAu、好ましくはIr、Os、Ru、Rh、Pd、Co及びPt、特に好ましくはIr、Pt、Rh及びOsからなる群から選択される金属原子であって、相応の金属原子についてそれぞれ可能な酸化段階におけるものを意味する]を有する金属錯体とを反応させる工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、金属M1として、Ir、好ましくはIr(I)もしくはIr(III)を使用することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のヘテロレプティックなカルベン錯体又は請求項9もしくは10に記載の方法に従って製造されるヘテロレプティックなカルベン錯体を、有機発光ダイオードにおいて用いる使用。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の又は請求項9もしくは10に記載の方法に従って製造される少なくとも1つのヘテロレプティックなカルベン錯体を含有する有機発光ダイオード。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の又は請求項9もしくは10に記載の方法に従って製造される少なくとも1つのヘテロレプティックなカルベン錯体を含有する発光層。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1つの発光層を有する有機発光ダイオード。
【請求項15】
請求項12又は14に記載の少なくとも1つの有機発光ダイオードを含む、定置式ディスプレイ、例えばコンピュータ、テレビのディスプレイ、プリンターのディスプレイ、調理機器のディスプレイ並びに宣伝用ボード、照明、標識板及び可動式ディスプレイ、例えば携帯機器、ラップトップ、車両のディスプレイ並びにバス及び電車の行き先表示板からなる群から選択される装置。

【公表番号】特表2009−532549(P2009−532549A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503579(P2009−503579)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053262
【国際公開番号】WO2007/115981
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】