1型糖尿病の患者のインシュリン生成促進のための移植物製造方法
【課題】 本発明の課題は、患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病の患者に移植されるインシュリン生成細胞を提供することにある。
【解決手段】 患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する。
【解決手段】 患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非侵襲的な体内撮像及び1型糖尿病の処置方法に関する。
(政府支持の宣言)
ここで開示される発明は一部国立衛生研究所認可番号DK−58508及びDK−075487号の記載に基づくものであるため、米国政府は本発明に所定の権限を有する。
【背景技術】
【0002】
健常及び疾病における細胞過程の基本的な理解は体内の様々な組織の細胞を研究することにより得られる。
しかしながら、体内の実験により得られるものはより生理学的な設定における全器官、即ち生命組織の細胞の能力を説明するために十分なものではない。体内システムから生理学的状況を観察するために、体内条件下において研究をする必要がある。近年撮像技術を使用して原位置の細胞機能を調査するためのアプローチが増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、陽電子放出型断層撮影法(PET)や、生物発光画像法(BLI)等の非侵襲的な撮像技術は、細胞レベルの解像度1を有していない。一方、共焦点及び2光子レーザ走査顕微鏡(LSM)により、細胞に近い解像度を得られるが、作動距離及び画像深度2が著しく制限される。LSMの応用による目的の細胞へのアクセスは多くの場合侵襲的であり、通常繰り返し検査を行うことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は(a)実験用動物の眼に目的の細胞を移植する工程において、移植される目的の細胞中の治療部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される移植工程と、(b)目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程と、(c)実験用動物の眼に非侵襲的な蛍光撮像を行う工程とを含み、蛍光撮像は移植される目的の細胞中の治療部位の蛍光標識された細胞要素の活動、位置、及び量における試験化合物に誘発された1つ以上の変化を検知することに使用されることと、試験的化合物により目的の細胞に治療の効果が得られたことを変化により確認することとを特徴とする薬品開発方法に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植することを特徴とする1型糖尿病の患者を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】眼の前房内への膵島の移植を示す図。
【図1B】眼の前房内へ移植される膵島の、非侵襲的体内撮像の構成を示す図。
【図1C】眼の前房の虹彩に移植される島のデジタル画像。
【図1D】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1E】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1F】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1G】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1H】移植後の表示された時点における膵島及び眼の前房内のグルカゴン免疫反応細胞に対するインシュリンの比率を示すグラフ。
【図1I】眼に島を注入した(n=8、黒)、腎臓被膜(n=2、赤)下におけるストレプトゾトシン処理されたハツカネズミの腹腔内ブドウ糖負荷試験における血漿グルコースレベルを示すグラフ。
【図2A】島移植物及び血管新生の非侵襲的撮像において、移植後4ヶ月した個別のRIP−GFP島移植物を51マイクロメートルの深度にて光学的に撮像した、β細胞GFPを示す蛍光透視図(緑)。
【図2B】島移植物及び血管新生の非侵襲的撮像において、移植後4ヶ月した個別のRIP−GFP島移植物を51マイクロメートルの深度にて光学的に撮像した、静脈内に注入されたTexas Redを示す蛍光透視図(赤)。
【図2C】100マイクロメートル厚に対応する撮像を示す二次元投影図。
【図2D】100マイクロメートル厚に対応する撮像を示す二次元投影図。
【図2E】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2F】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2G】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2H】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2I】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2J】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2K】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2L】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2M】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2N】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2O】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2P】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2Q】図2E乃至2Pに示す結果から得られるものを数量化し、分析した島移植物の各時点における数を括弧内に示したグラフ。
【図2R】図2E乃至2Pに示す結果から得られるものを数量化し、分析した島移植物の各時点における数を括弧内に示したグラフ。
【図3A】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3B】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3C】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3D】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3E】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3F】開始時点を矢印にて示した所定のグリベンクラミド刺激に反応するFluo−4対Fura−Redの全フレームにおける比率の変化を示すグラフ。
【図3G】縮尺50マイクロメートルにて図3Aに示す島全体にわたる個別の細胞における比率の変化を示すグラフ。
【図3H】縮尺50マイクロメートルにてグリベンクラミドによる刺激前の島全体のFluo−4(緑)及びFura−Red(赤)の蛍光透視像を示す拡大投射図。
【図3I】縮尺50マイクロメートルにてグリベンクラミドによる刺激後の島全体のFluo−4(緑)及びFura−Red(赤)の蛍光透視像を示す拡大投射図。
【図3J】縮尺50マイクロメートルにて図3Hに示す島のFluo−4対Fura−Redを示すレシオメトリック図。
【図3K】縮尺50マイクロメートルにて図3Iに示す島のFluo−4対Fura−Redを示すレシオメトリック図。
【図4A】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す投影図。
【図4B】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の内分泌細胞からの反射像を示す図。
【図4C】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の検知不能な移植物のアネキシン(annexin )V−APC標識を示す図。
【図4D】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の、β細胞死を誘発して24時間後の図4A乃至4Cの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図4E】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す図。
【図4F】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の反射像を示す図。
【図4G】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の強力なアネキシンV−APC蛍光を示す図。
【図4H】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の図4E乃至4Gの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図4I】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の誘発後アネキシンV−APCにより強力に標識された島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す高拡大図。
【図4J】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の誘発後アネキシンV−APCにより強力に標識された島移植物のアネキシンV−APC蛍光を示す高拡大図。
【図4K】縮尺100マイクロメートルにて図4I及び4Jのオーバレイ図。
【図4L】縮尺100マイクロメートルにて図4Kの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図5A】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後のβ細胞のGFP蛍光を示す図。
【図5B】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後の血管のTexas Red蛍光を示す図。
【図5C】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後のGFP蛍光及びTexas Red蛍光のオーバレイ図。
【図5D】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後のβ細胞のGFP蛍光を示す図。
【図5E】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後の血管のTexas Red蛍光を示す図。
【図5F】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後のGFP蛍光及びTexas Red蛍光のオーバレイ図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様において、本発明は(a)実験用動物の眼に目的の細胞を移植する工程において、移植される目的の細胞中の治療部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される移植工程と、(b)目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程と、(c)実験用動物の眼に非侵襲的な蛍光撮像を行う工程とを含み、蛍光撮像は移植される目的の細胞中の治療部位の蛍光標識された細胞要素の活動、位置、及び量における試験化合物に誘発された1つ以上の変化を検知することに使用されることと、試験的化合物により目的の細胞に治療の効果が得られたことを変化により確認することとを特徴とする薬品開発方法に関する。
【0008】
ここで開示されるように、移植される目的の細胞は、複数の組織又は組織の複数の部分等の、個別の細胞、同じ種類の複数の細胞、異なる細胞型の複数の細胞である。細胞は任意の要求される種類のものであり、内分泌細胞(膵臓ベータ細胞を含むが、これに限定されるものではない)、及び任意の組織の種類に由来する細胞を含むが、これらに限定されるものではない。組織の種類は脂肪、筋肉、脳、肝臓、腎臓、心臓、及び肺を含むが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明の方法により、任意の細胞や組織の生理学及び病態生理学を考慮した非侵襲的な体内薬品開発研究の新規な基盤が得られる。一実施例において、眼の前房は体内条件下における細胞レベルにて複雑なシグナル伝達ネットワークの統合を初めて明瞭に示す多目的自然体窓として使用される。1つ以上の細胞要素の活動を評価するために体内モデルとして眼の前房を使用することにより、例えば、形態学、血管新生、神経支配、細胞死、細胞増殖、細胞発生(幹細胞発生、腫瘍細胞発生等を含むが、これらに限定されるものではない)、遺伝子発現、及び細胞シグナリングの連続した監視ができるようになる。この基盤は例えばホルモン系及びニューロン系の他、内分泌細胞や血管細胞の自己分泌シグナル又はパラクリンシグナルからの調整入力の効果を明瞭にすることに使用可能である。更に、上記は細胞又は組織機能及び健康状態又は非健康状態下における生存の非侵襲的な体内研究のための新規なアプローチとして機能する。従って、モデルシステムは例えば体内における薬品搬送及び薬品の候補の試験(癌、糖尿病を処置する薬品の候補を含むが、これらに限定されるものではない)における使用に好適である。
【0010】
実験用哺乳動物は細胞を眼の前房に移植可能な任意の好適な実験用哺乳動物であり、ハツカネズミ、サル、ウサギ、イヌ、ラット、及びブタを含むが、これらに限定されるものではない。
【0011】
眼の前房は眼の前方部分からなり、硝子体液の前の構造体の他、角膜、虹彩、毛様体、及び水晶体を含む。眼の前房への目的の細胞の移植は、目的の細胞が観察可能であり、細胞からの蛍光信号が非侵襲的に視認できる限り、眼の前房の1つ以上の任意の区画に細胞を位置させることができる。非制限的一例において、目的の細胞は角膜を通じて注入することにより移植され、これにより目的の移植細胞を虹彩に移植することができ、角膜を通じた観察及び撮像が可能となる。
【0012】
移植される目的の細胞の部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される。標識は直接的(即ち、共有結合性相互作用)であっても間接的(即ち、非共有結合性相互作用)であってもよく、細胞は移植に先立って標識されても、移植後に標識されてもよい。移植前の標識は、部位の蛍光タンパク質標識された細胞要素を示す発現構造体を備えた細胞のトランスフェクション等の遺伝子組み換え技術を含む公知の手段によって行われるが、これに限定されるものではない。緑色蛍光タンパク質、及び全てのその変異体を含む任意の蛍光タンパク質が使用可能であるが、これらに限定されるものではない。移植後標識も、部位の蛍光染色、及び標識された抗体との接触を含む当業者に公知の手段によって行われるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
眼の前房の蛍光撮像は当業者に周知の任意の技術によって得られ、レーザ走査顕微鏡を含むが、これに限定されるものではない。一実施例において、方法は部位の標識された細胞要素からの蛍光を好適な波長のレーザ刺激により刺激して、移植された細胞における細胞要素の蛍光画像を非侵襲的に得る刺激工程を含む。
【0014】
部位の細胞要素の活動は本発明の方法により評価可能である。上記活動は部位の細胞要素からの蛍光信号の検知に基づき評価可能な部位の細胞要素の任意の特性である。蛍光信号の検知は、発現、分布、位置確認、量、動力学的又は動的変化、変形、及び振動を含むが、これらに限定されるものではない。更なる実施例において、方法は時間にわたる部位の細胞要素の活動を評価する工程を含む。本実施例において、方法は多数の時点において蛍光撮像を実施する工程を含み、部位の細胞要素の活動における変化を評価可能である。ここで開示される全ての実施例のうち一実施例において、評価が個別の細胞内においてなされる。
【0015】
非制限的実施例において、部位の細胞要素は信号変換経路の要素からなり、方法は時間にわたり部位の1つ以上の細胞要素の活動を評価することにより信号変換経路の活動を評価する工程を含む。更なる非制限的実施例において、試験細胞は膵臓ベータ細胞からなる。
【0016】
方法は目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程、及び1つ以上の試験化合物に反応する目的の細胞中の部位の蛍光標識された細胞要素の活動を評価する工程を含む。移植される細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる上記工程は移植に先立って行われても移植後に行われてもよく、好適には移植後に行われる。
【0017】
後述する例において、分離した膵臓のランゲルハンス島は眼の前房内に移植される。ランゲルハンス島はアルファ細胞、ベータ細胞、及びデルタ細胞を含む複数の異なる細胞タイプからなる。上記細胞群は膵臓内分泌部を示し、グルコース恒常性のために主として重要である。上昇した血液グルコースレベルに反応するベータ細胞からのインシュリンの解放が十分なものではない場合に糖尿病となる。グルコースに誘発されるベータ細胞からのインシュリンの分泌の調整は、自己分泌因子、パラクリン因子、ホルモン因子、及びニューロン因子によって調整される複雑な工程である。従って、血管が新生され神経を支配されるランゲルハンス島に関する研究が健康状態及び罹患した状態におけるホルモン分泌を生じさせる機構を理解するために必要である。しかしながら、膵臓外分泌腺及び齧歯動物の膵臓の組織を通じたランゲルハンス島の散在した分布により、特に単細胞解像度におけるランゲルハンス島の非侵襲的な長期にわたる体内研究は現在不可能である。
【0018】
眼の前房への移植の後に、分離した小島が容易に移植可能であることを後述する。糖尿病のハツカネズミは眼の前房にランゲルハンス島を移植することにより正常血糖となり、上記ハツカネズミは調整ハツカネズミと比較してブドウ糖負荷試験に対して同じ反応を示した。小島の形態を長期にわたって監視可能であり、血管再開通術を実施できた。更に、同じ小島のベータ細胞中の細胞質の遊離Ca2+濃度の、全身的に誘発された変化を繰り返し計測した。最終的に、ベータ細胞毒の全身注射後に小島の化学的に誘発された細胞死を非侵襲的に監視できた。
【0019】
上記基盤により、血管新生され神経を支配された組織の多数の形態学的パラメータ及び機能的パラメータを非侵襲的に測定することができる。例は膵臓ランゲルハンス島に焦点を当てたが、上記基盤は全ての種類の組織の調査に使用可能である。血管及び神経を得て、器官型血管新生10,12及び神経支配4,5,13を確立すべく、眼の前房に移植される異なる種類の組織が開示された。これにより、侵襲的に組織に組織にアクセスすることなく自然の環境に匹敵する設定において組織を研究することができる。更に、眼の特性により、目的の細胞及びこれらの調節入力は困難を伴うことなく全身的のみならず局所的に調整可能である。物質は眼に局所的に塗布されるか、前房に注入される。付加的に、前房の潅流により、房水の交換、及び蛍光指示薬を有する移植物の設置が繰り返し可能となる。
【0020】
眼の前房を移植部位として使用する場合に、視認を最適化し前房を免疫特権部位とすべく示される特別な局所的特性が考慮される。前房における観察を分析する場合に、前房及び血漿中の房水の組成の差異を記憶に留めておく。しかしながら、研究において、局所的環境による通常の移植機能に対する顕著な効果は見られなかった。上記に対する1つの考えられる説明として、誘発された新血管形成により房水及び血漿の組成が調整されることが挙げられる。従って、眼の前房により、単細胞解像度にて体内システムにおける複雑な生物学的相互作用の研究が可能となることが実証された。本態様は更に拡張可能であり、新規に開発した蛍光タンパク質、バイオセンサ、及び遺伝子導入動物により、生理学的条件及び病態生理学的条件の両者の下における開発、機能、及び生存に対して重要な多数のパラメータを調査することが補助される。
【0021】
別の態様において、本発明は患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する工程を含む1型糖尿病の患者を処置する方法に関する。
【0022】
本態様において示すように、「インシュリン生成細胞」は患者の眼に移植後インシュリンを生成可能な任意の細胞の種類である。上記インシュリン生成細胞は、膵臓β細胞、幹細胞、及びインシュリンを解放するように操作された組み換え細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
ここで開示されるように、「膵臓ベータ細胞」は膵島ベータ細胞を含む細胞の任意の母集団である。上記膵島β細胞の母集団は、膵臓細胞、分離された膵臓ランゲルハンス島(「膵島」)細胞、及び分離された膵島β細胞を含む。膵臓の分離方法は公知であり、膵島の分離方法は例えば2003年出版のCejvan等による糖尿病52:1176乃至1181頁、1999年出版のZambre等による生化学薬理学57:1159乃至1164頁、及び1998年出版のFagan等による外科手術124:254乃至259頁、並びにこれらの引用文献に開示されている。主眼に移植されると、上記島におけるベータ細胞はインシュリンの生成及び解放を開始する。
【0024】
ここで開示されるように、発明者は膵臓ベータ細胞等の細胞を眼の前房内に移植することにより、細胞内のリアルタイムな事象を監視する新規な方法を発見した。上記研究の実施において、発明者は膵臓β細胞を眼に移植することにより失明や眼の過剰な刺激等の深刻な合併症が誘発されないことを発見した。従って、眼に一部免疫特権を付与された区画が設けられる場合に、インシュリン生成細胞を1型糖尿病患者の眼に移植することにより、要求されるインシュリンが生成され、使用される免疫抑制剤の投与を低減し、免疫抑制剤による潜在する深刻な副作用を低減するものといえる。更に、眼への移植は移植中の酸素欠乏症の期間を短縮し、移植される細胞の生存数を増加させるものといえる。
【0025】
眼への移植は好適に眼の前房への移植を含む。眼の前房は眼の前方部分からなり、硝子体液の前の構造体の他、角膜、虹彩、毛様体、及び水晶体を含む。インシュリン生成細胞を眼の前房内へ移植する工程は、上記眼の前房1つ以上の任意の区画内に細胞を位置させる工程を含む。非制限的一例において、試験細胞は角膜を通じて注入することにより移植され、これにより移植細胞を虹彩に移植することができ、角膜を通じた観察及び撮像が可能となる。眼の前房内、即ち虹彩に移植される膵島ベータ細胞等のインシュリン生成細胞は血管が新生され、細胞構造体を保持し、刺激に反応するようになる。更に、これらは非侵襲的にレーザ走査顕微鏡法(LSM)により監視され、島の血管新生の他、ベータ細胞機能、及びインシュリン解放の体内撮像が可能となる。上記実施例において、インシュリン生成細胞やこれらの構造体は蛍光標識され、蛍光撮像が細胞活動を監視することに使用される。
【0026】
眼の前房の蛍光撮像は当業者に周知の任意の技術によって得られ、レーザ走査顕微鏡を含むが、これに限定されるものではない。一実施例において、方法は部位の標識された細胞要素からの蛍光を好適な波長のレーザ刺激により刺激して、移植された細胞における細胞要素の蛍光画像を非侵襲的に得る刺激工程を含む。
(例1)
インシュリン解放の減少による体内のグルコース恒常性の異常は糖尿病の顕著な特徴である(1)。生理的条件下において、膵臓β細胞からのインシュリン解放は、細胞の代謝活性、自己分泌又はパラクリンシグナル伝達、並びにホルモン及び神経伝達物質からの連続した入力の複雑な協調作用によって調整される。β細胞はその他の内分泌細胞タイプの細胞と共に膵臓内分泌部、即ち血管が密に新生されたランゲルハンス島内に位置され(3)、多量に神経を支配される(4)。従って、健康状態及び罹患した状態におけるインシュリン解放を制御するβ細胞シグナル伝達及び機構の複雑さを十分に理解するために、体内の島の血管新生及び神経支配の研究が必要である。ここで、ハツカネズミの目の前房内に移植される膵島の体内蛍光撮像のための新規な非侵襲的技術基盤を開示する。眼の前房、即ち虹彩に移植される島は血管が新生され、細胞の構造体を保持し、刺激に反応するようになる。非侵襲的なレーザ走査顕微鏡法(LSM)により、島の血管新生の他、β細胞の機能及び細胞死の体内撮像が可能となる。従って、通常及び糖尿病の両条件下において長期にわたって実施される、β細胞のシグナル伝達の繰り返しの非侵襲的な体内調査の基礎が得られる。(方法及び材料)
ハツカネズミモデル。C57BL6、及びTie2−GFPのハツカネズミ(STOCK Tg(TIE2GFP)287Sato/J)がジャクソンラボラトリーズ(メイン州Bar Harborに所在)から購入した。RIP−GFPハツカネズミはKarolinska Institutetにおけるコア施設にて生産され、通常の耐糖能及びGFPのβ細胞限定発現(方法を参照のこと)を特徴とする。全ての実験はKarolinska Institutet及びマイアミ大学におけるローカル動物倫理委員会によって承認された。
(膵島の眼の前房への移植。)
膵島は上述したように分離され、培養される(25)。30乃至300の島が培地から無菌PBSに移され、1ミリリットルのHamilton注射器(ネバダ州Renoに所在するHamilton社)に連結された27Gの眼のカニューレ内に0.4mmのポリエチレンチューブ(英国ケント州に所在するPortex Limited)を通じて吸引される。ハツカネズミはイソフルレン(スウェーデンSolnaに所在するScandinavia AB社のイソフルレン)を使用して麻酔され、Temgesic(登録商標)(ニュージャージー州Schering−Plough社)が術後の痛みを低減すべく皮下注射される。立体顕微鏡下において、27G針を使用して眼の底部における強膜近傍の角膜を穿刺する。虹彩を損傷し、出血させないように細心の注意を要する。次に眼のカニューレが徐々に挿入され、島は前房内に徐々に注入され、虹彩に位置される。注入後、カニューレが注意深く取り払われ、動物は覚醒するに先立って横たえられる。ハツカネズミは迅速に意識を回復するが、移植された眼からは圧迫感や刺激の兆候は見られない。(眼の前房へ移植される島の生体内撮像。)
上述した移植されたハツカネズミは40%の酸素と2%までのイソフルレン(イソフルレン)との混合体により麻酔され、加熱パッドに載置される。ハツカネズミの頭部は定位の頭部保持部(日本国東京Narishige社のSG−4N)を使用して保持され移植された島を含む眼が上方に配向されるように位置される。眼瞼は注意深く引き戻され、眼はUST−2中実自在継ぎ手(Narishige社)に取り付けられた一対のピンセットを使用して強膜角膜連結部に徐々に保持される。ピンセットの先端は2つの先端の間にループを形成する一片のポリエチレンチューブにより覆われる。上記構造体により、損傷を付与したり眼の血液循環を中断させることなく可撓性を備えつつ頭部及び眼を安定して固定することができる。TCS−SP2−AOBSの2光子励起25の共焦点スキャナ及びレーザを備えたLeica社DMLFSA正立顕微鏡が、濾過された生理的食塩水を浸漬液として使用する長距離浸水レンズ(Leica社、HXC APO、10x0.3W、20x0.5W、40x0.8W)と共に撮像に使用される。
【0027】
血管を視認すべく、Texas Red(10ミリグラム/ミリリットルのうち100マイクロリットル、オレゴン州Eugeneに所在するMolecular Probes社)が尾静脈注射により注入される。GFP及びTexas Redは890ナノメートルにて励起され、発光は集束され、ダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して分離され、2つの非走査(nondescanned)検知器となる。TPLSMを使用して撮像された画像は上述したようにウェーブレットフィルタを使用してノイズ除去される(27)。細胞死を視認すべく、100マイクロリットルのアネキシンV−APC(Molecular Probes社)が尾静脈注射により注入される。GFPは488ナノメートル(35%AOTF)にて励起され、発光は495乃至530ナノメートルの範囲にて集束される。反射光は照明によって546ナノメートル(35%AOTF)にて撮像され、539乃至547ナノメートルの範囲にて集束される。APCは633ナノメートル(75%AOTF)にて励起され、発光の集束は644乃至680ナノメートルの範囲にて行われる。最初の研究により、RIPGFP島移植物のアネキシンV−APCによる弱い標識は、適用後40分まで徐々に増加することにより行われる。島移植物はアネキシンV−APC適用後4乃至6時間撮像される。CLSMを使用して撮像した画像は中度のフィルタを使用してノイズ除去される。全ての示される蛍光透視像は最適に視認すべく明度及びコントラストを調整される。
(RIP−GFPハツカネズミの生産)
RIP−GFPハツカネズミはRIP1.EGFP 発現カセット(rat insulin-1 promoter -410/+1bp-EGFPSV40polyA)をB6CBAF1/Crl ドナーからの単細胞段階の胚に注入することにより生産される。得られたFO生産はPCR分析によるRIP1.EGFP ゲノムの組み込みのために切れ目を入れられる。RIP1.EGFP 導入遺伝子は7匹の初代遺伝子導入動物(17.5%)に見られ、これらはF1動物を生産すべくC57 BI/6NCrl の同系交配のハツカネズミと
交配される。初代の系列は1)免疫染色によって決定されるβ細胞中のGFPの表示、及び2)動物及び細胞の生理学に対して表示される。RIP1.EGFP の初代系列ナンバー29は調整された動物、及びGFPのβ細胞抑制発現と比較して通常の耐糖能を有し、ホモ接合体交配のために選択される。
(免疫組織化学。)
ハツカネズミは、眼球内の島移植(n=12)に続いて3日後、7日後、14日後、及び28日後に頸椎脱臼に続く濃縮二酸化炭素暴露により死亡する。移植物を有する眼が取り払われ、4%のパラホルムアルデヒドに1時間後置される。スクロース置き換え(PBS中10%、20%、及び30%)による冷却保護の後、眼の縦の区分が低温保持装置にて切断される(14マイクロメートル)。区分はPBSにて洗浄され(3X10分)、5%のウシ血清アルブミン及び0.1%のトリトンを含むPBSにて保温される(1時間)。その後、区分は抗インスリン(ニューヨーク、Accurate Chemical & Scientific Corp.、1:500)及び抗グルカゴン(ミズーリ州セントルイスに所在するSigma社、1:5000)を含むPBSにて一晩中保温される。免疫染色はAlexa488やAlexa568(Molecular Probes社、1:500)共役二次抗体を使用して視認される。
【0028】
細胞の核はDAPI(Molecular Probes社)を使用して染色される。スライドはVectaMount法による載置されカバースリップにより覆われる。島を含む眼の連続断面図が、インシュリン及びグルカゴンの存在を確認するためにAxiophot蛍光顕微鏡(独国OberKochenに所在するZeiss社)及び2チャンネルレーザ走査共焦点顕微鏡(ニューヨーク、Melvilleに所在するOlympus
America Inc.のOlympus Fluoview)を使用して試験される。。全ての免疫染色画像はデジタル的に得られ、再コンパイルされる(フォトショップ5.0、カリフォルニア州サンジョゼに所在するアドビ社)。区分は10倍及び40倍に拡大され視認される。Zeiss Axiovisionソフトウェアを使用してデジタル化された蛍光顕微鏡による画像を分析する。計測されたパラメータ(即ち、インシュリン免疫反応細胞と、グルカゴン免疫反応細胞との比率)が眼毎の少なくとも2つの別体の島からの少なくとも3つの隣接する区分に由来する平均値として計算される。3つの眼からの計算結果の平均値が求められる。明瞭に標識された核(DAPI染色)を有する細胞のみが分析に含まれる。データは平均値の標準誤差SEMのプラス−マイナスとして示される。
(島移植物の血管新生の定量化。)
血管密度は移植物領域当たりの血管密度の数として決定される。血管密度は1本の血管や血管の枝として規定される。β細胞GFP蛍光透視像が移植物領域を形成することに使用される。2つの光学的区分が各島移植物から定量化される。光学的区分はzスタックの一連の画像から選択される。第1の区分は信号の損失なく移植物のもっとも深いレベルにて選択される。第2の区分は移植物の表面及び最も深い区分の間における中間部にて選択される。定量化のための画像は10倍又は20倍のレンズ、及び2.0倍以上のズームの倍率を使用して撮像される。データは平均値の標準誤差SEMのプラス−マイナスとして示される。血管新生の定量化はLeica共焦点ソフトウェア(バージョン2.61)を使用してなされる。([Ca2+]の変化の体内記録。)
体内β細胞の機能を評価するために、眼の前房に移植される島はCa2+標識であるFluo−4及びFura−Redの混合物を装填される。上記2つの染料を同時に作用させることにより、視認可能な波長(29)における励起スペクトルによる[Ca2+]iのラシオメトリックな計測が可能となる。装填すべく、500マイクロメートルの各AMエステルのFluo−4及びFura−Redを含む、(単位:ミリモル)140NaCl、5KCl、2NaHCO3、1NaH2PO4、1.2MgCl2、2.5CaCl2、10HEPES、3グルコース(pH7.4のKOH)からなる細胞外溶液が前房を潅流する。潅流のために、ハツカネズミはヒプノルム(英国Leedsに所在するVetaPharma社のフェンタニル0.315ミリグラム/ミリリットル、及びフルアニソン10ミリグラム/ミリリットル)を1、ドルミカム(スイス国Baselに所在するRoche社、5mg/ml)を1、滅菌水を2とした10ミリリットル/キログラムの混合物により麻酔される。麻酔期間を延長すべく30乃至40分毎に混合物(4ミリリットル/キログラム)の注射が行われる。
【0029】
ハツカネズミは上述したように顕微鏡の機構に載置され、体温が過熱パッドの制御ユニットに連結された直腸プローブを通じて調整される。マイクロピペットが水平方向のプログラム可能な張引具(独国Augsburgに所在するZeitz−Instrumente社のDMZ自在張引具)にホウケイ酸ガラスの毛細血管から張引され、60乃至100マイクロメートルの外径の先端部に分割される。隣接するマイクロピペットの先端部は回転グラインダ(米国カリフォルニア州Novatoに所在するSutter Instruments Co.の型番BV10)を使用して約30°に傾斜される。マイクロピペットは2つのマイクロ操作ユニット(独国ハンブルクに所在するEppendorf社)を使用して眼の対向する側に浅い角度をなすように角膜を穿刺することにより前房内に案内される。虹彩や島移植物に損傷を付与しないように留意する。マイクロピペットはポリエチレンチューブを通じて細胞外溶液により充填されたタンクに取り付けられる。タンクの高さは約15mmHg(約2kPa)の一定の前房内圧が得られるように調整される。第2のマイクロピペットは1ミリリットル注射器に連結される。流入の比率及び容積は注射器ポンプ(Univector社)により調整される。
【0030】
島細胞は毎分3マイクロリットルにて40分間Fluo−4及びFura−RedのAMエステルを含む細胞外溶液が前房を潅流することによりCa2+の標識を装填される。続いて染料を含む溶液は毎分5、6マイクロリットルにて10分間細胞外溶液を潅流させて洗い流される。上述したように488ナノメートルにてFluo−4及びFura−red(25%AOTF)を励起し、Fluo−4を495乃至535ナノメートルの間に、Fura−Redを600乃至700ナノメートルの間に集光して撮像が行われる。インシュリン解放の全身にわたる刺激は、グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)の尾静脈注射により得られる。撮像の完了後、ハツカネズミは0.1ミリリットル/キログラムのTemgesic(ニュージャージー州Schering−Plough社)を皮下注射され、術後の痛みを低減する。
【0031】
(結果)
膵島は体内監視においてアクセスが困難である。その理由として、これらは深部に位置され、膵臓外分泌組織に分散され、膵臓容積の1,2%を構成することが挙げられる。従って、今日のβ細胞の機能の研究の殆どは体内の分離した島又は細胞に対して行われる。分離した島(6)、特に膵臓の薄切り(7)により、多数の細胞環境におけるβ細胞の機能の研究が可能となる。しかしながら、上記準備は形成された端点までの制約を受け、部分的に血管及び神経の連結部からの入力を欠く。通常の健康状態下におけるインシュリン解放の調整に関する複雑なシグナル伝達網、及びなぜこれらが2型糖尿病において適切に機能しないかを理解するためにβ細胞の機能の体内監視が迅速に要求されている。これは1型糖尿病の治療として挙げられる臨床における島の移植の状況にも当てはまる(8)。今日まで実験及び臨床の島移植後におけるβ細胞のシグナル伝達の監視は可能ではなかったため、移植物機能の特性及び新規な関与の評価の両者が深刻に妨害されてきた(9)。LSMは分離した島及び準備された細胞を使用したβ細胞の多数のシグナル伝達経路の撮像に好適に使用される。しかしながら、生体内においてLSMをβ細胞の生理学の研究に使用することは記録にない。
【0032】
島移植後、島は新しい血管(11)の他、神経連結部(12)を補充し、拍動性のインシュリン解放を通じてグルコース恒常性を保持することができる(12、13)。角膜は移植される組織の非侵襲的な撮像を可能とする自然体窓として機能するため、眼の前房内に膵島を移植するものとする。眼の前房は免疫特権を付与されるため(14、17)、膵臓を含む様々な組織を研究することに移植部位として頻繁に使用される。ハツカネズミの島は角膜を通じた注入を通じて眼の前房内に移植される(図1A)。移植後、虹彩に移植される島は容易に監視され、角膜を通じて撮像される(図1B及び1C)。移植される島は、複数の島のみ又は島の群として移植される。移植される島の免疫組織化学の染色により、移植後においてインシュリンを含むβ細胞及びグルカゴンを含むβ細胞の比率が変わらないことと、この比率が膵臓における島の比率(図1D乃至1H)と同様であることが示され、これは初期の研究(14、16、17)に従うものである。
【0033】
ストレプトゾトシンにより糖尿病に罹患したハツカネズミにおいて、前房内への島の移植により高血糖症が逆転される。上記ハツカネズミは更にグルコース抗原投与(図1I)に対する生理学的反応を示し、眼の前房内に移植される島は機能的であることを明示する。β細胞を識別できるように、rat insulin 1 促進剤(RIP−GFP)の制御下において改良された緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子組み換えのハツカネズミから分離される島は眼の前房内に移植される。
【0034】
2光子LSM(TPLSM)を使用することにより、GFPによりβ細胞が、100マイクロリットルのTexas Red70キロダルトン(約70キログラム/モル)(Texas Red10ミリグラム/ミリリットル)の注射により血管が同時に撮像され、移植された島により虹彩から血管が新生されることがわかった。非侵襲的なTPLSMにより、図2A及び2Bに示すように移植される島において異なる深度にて光学的区分を撮像可能であり、これにより、図2C及び2Dに示すように島移植物内のβ細胞及び血管形態の両者の3D(三次元)による復元が可能である。
【0035】
島移植物及び血管新生の運動を監視すべく、移植後3日目、7日目、14日目、及び28日目における同じRIP−GFP島が繰り返し撮像される。3日目において、移植される島は虹彩に取り付けられ、島近傍において虹彩の血管の構造体の再構成が監視される。しかしながら、図2E乃至2Gに示すように、成長して島の周辺の領域に至る血管は殆どない。7日目において、3日目と比較して島移植物はより肉薄であるがより幅広となり、島が虹彩に更に固定され拡散されたことが示される。
【0036】
図2H乃至2Jに示すように島において血管の数は更に増加し、毛細血管のループが虹彩中央部領域の穿刺を開始する。7日目において虹彩構造体に生じた付加的な変化は微々たるものであるが、血管は成長を続け、図2K乃至2Mに示すように、14日目において、これらは虹彩移植物にわたって微小血管網を形成する。14日目及び28日目の間に血管網は密度がより高くなり、図2N乃至2Pに示すように、28日目において、血管網は非常に曲がりくねり、一様な寸法を有する毛細血管となる。
【0037】
図2Qに示すように、移植される島の血管密度は血管再生にわたって連続して上昇する。図2Rに示すように、島移植血管の径は、28日目において8.11プラスマイナス0.53マイクロメートルであり(n=5)、これは膵臓の島内(18)及びその他の移植部位(19)の血管と同様である。図5に示すように、移植後2ヶ月目及び4ヶ月目における島移植物の撮像により、β細胞群及び移植物血管の形態は28日目のものと同様であることが示される。即ち、非侵襲的なTPLSMにより、眼の前房に移植される島内のβ細胞及び血管の長期にわたって体内撮像が可能となる。
【0038】
体内における細胞レベルのシグナル伝達の評価により、パラクリン、ホルモン信号、及びニューロン信号からの規制作用及び修飾作用を含む生理学及び病態生理学の両者の状況下における島細胞の調査が可能となる。体内にて細胞機能を監視すべく、眼の前房における島内の単細胞レベルにおける細胞質の遊離カルシウム濃度([Ca2+]i)の変化が研究される。[Ca2+]iの変化は島細胞におけるキーとなる細胞内シグナルであり、β細胞機能2を報告する。マイクロピペットにより眼の前房を潅流することにより、島にCa2+を示すFluo−4及びFura−Redが装填される。上記2つの染料を使用することにより、撮像において、LSMによる[Ca2+]iの変化のレシオメトリックな測定と、島の運動の補正が同時に可能となる。図3H及び3Iに示すようにFluo−4及びFura−Redにより、島の外側層は一様に標識される。
【0039】
細胞を刺激すべく、スルホニル尿素化合物グリベンクラミドが経皮的に注入される。これにより、血液のグルコースレベルが下降する。即ち、上記注入により効果が得られたことを示す(データは図示しない)。図3Fにおいて、Fluo−4対Fura−Redの蛍光の比率における顕著な上昇によって示されるように、島細胞の[Ca2+]iの上昇は、ハツカネズミへのグリベンクラミドの尾静脈注射の後30乃至40秒内に開始し、記録中にわたって高い状態が保持される。図3Gに示すように、島の別の領域において[Ca2+]iが同時に上昇することは、刺激後に島内のβ細胞が同期して反応することを反映する20。上記は眼の前房内に移植される島を使用して体内における島細胞機能の撮像が可能であることを示す。
【0040】
β細胞死は1型糖尿病の特徴であり(21)、2型糖尿病の病状に関係する(22)。今日まで体内において連続してβ細胞を監視する方法は開示されていない。アネキシンVが実験条件及び臨床条件の両者の下において細胞死を報告することに使用され(23)、全身にわたる投与後のβ細胞自然死のマーカとして確認されてきた(24)。β細胞死の非侵襲的な撮像の可能性を調査すべく、RIP−GFP島を眼の前房内に移植し、移植及び血管再生が完了した後に、アネキシンV共役アロフィコシアニン(APC)を経皮的に注入した後の細胞死が監視される。
【0041】
共焦点LSMを使用して、GFP−及びアネキシンV−APCの蛍光が反射光と同時に撮像され、後者により内分泌細胞の詳細な構造体のデータが得られる(25)。通常の血液グルコースレベルを有するハツカネズミにおいて撮像される移植されるRIP−GFP島により、図4A及び4Bに通常の形態が示され、図4C及び4DにアネキシンV−APCの標識がないことが示される。アネキシンV−APCは10のRIP−GFP移植物のうち1つの少数の細胞を標識するのみであり(データは図示しない)、このことは眼の前房に移植される島における細胞死の発生が少ないことを示す。アロキサン(75ミリグラム/キログラム)を経皮的に注入することにより、RIP−GFP島を移植されたハツカネズミにおいてβ細胞死が誘発され、ブドウ糖輸送担体2によりβ細胞は特徴的な糖尿病誘発化合物を取り込む(26)。この処置により、ハツカネズミは24時間後に25.0プラスマイナス1.3ミリモル/リットル(n=6)の血液グルコース濃度の高血糖状態となる。この時点において、図4E及び4Fに示すように、GFP蛍光の損失、及び島移植物の反映における構造体の変化が監視され、即ちβ細胞の損失が示される。図4G及び4Hに示すように、細胞死の誘発の24時間後にアネキシンV−APC(n=4)を投与することにより、島移植物を強力に標識することができる。
高拡大図により、殆どのアネキシンV−APC標識はGFP蛍光を含まない移植領域にて視認されることがわかる。図4I及び4Lに示すように、いくつかのアネキシンV−APC蛍光はGFP蛍光β細胞の表面にて視認され、このことは自然死の細胞を標識することを示す。即ち、眼の前房に移植される島の体内状況下においてβ細胞死は非侵襲的に、且つ長期にわたって撮像可能である。
(まとめ)
体内において生理学及び病態生理学の両者における島の細胞の非侵襲的な研究のための新規な基盤が開示された。島細胞の調査のために眼の前房を体内モデルとして使用することにより、形態、血管新生、神経支配、細胞死、及び細胞シグナル伝達の連続した監視が可能となる。体内における島の細胞のシグナル伝達を研究するためのこの基盤により、ホルモン系及びニューロン系の他、内分泌細胞や血管細胞の自己分泌シグナル又はパラクリンシグナルからの調整入力の効果を明瞭にすることが補助される。更に、上記は健康状態又は糖尿病状態下におけるβ細胞の機能及び生存の非侵襲的な体内研究のための新規なアプローチとして機能する。上記基盤は膵臓β細胞の信号伝達の研究に限定されるものではなく、体内の多数の様々な細胞タイプ及び器官組織の調査に拡張可能であることに注目すべきである。従って、眼の前房は体内条件下における細胞レベルにて複雑なシグナル伝達ネットワークの統合を初めて明瞭に示す多目的自然体窓として使用される。
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この例において、単細胞解像度における体内の非侵襲的な長期にわたる細胞生物学研究のための段階的な手順が開示される。ここで、自然体窓として機能する角膜が効果的である。この目的において、部位の組織は眼の前房内に移植され、細胞の生物学的パラメータは角膜を通じてLSMにより測定される。眼の前房は様々な組織の研究のために移植部位として頻繁に使用されてきた3−7。本来眼の前房は免疫特権を付与された部位としての特徴により、移植部位として選択されたが8、殆どの研究において前房は容易にアクセス可能であり、角膜により移植される組織の巨視的観察が可能となるため、同系の移植設定に使用された。付加的に、前房の基部を形成する虹彩は体内において最も高密度な血管及び自律神経を有する器官の1つである。従って、移植物の迅速な神経支配9及び血管新生10が可能である。今日まで前房を移植部位として使用する研究は主に移植物生理学を研究するために巨視的観察5を使用してきた。上記は低解像度にて観察可能なパラメータに対する長期的な研究を制約してきた。移植物を取り払った後に、体内電気生理学7の他、組織学3、及び様々なその他の体内技術により、形態学及び細胞の機能の評価が可能となるが、これは研究の終点を設定し、長期にわたる監視を妨害する。
(材料)
(動物)
・NMRIハツカネズミ(米国Charles River Laboratories社)又は(スウェーデンScanbur社)
・Tie2−GPFハツカネズミ[STOCK Tg(TIE2GFP)287Sato/J](米国、Jackson Laboratory)
・インシュリンプロモータ(RIP−GFP)下の膵臓ベータ細胞において発現した蛍光標識を備えた遺伝子組み換え型ハツカネズミ11
(試薬)
・無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
・イソフルレン(米国Abort社又はBaxter社、イソフルレン)
・40%の酸素及び60%の窒素(スウェーデン、AGA社)
・ブプレノルフィン(米国Shering−Plugh社Temgesic)
・Viscotears(登録商標)(スイスNovartis社)
・アロキサン(米国Sigma社)
・Texas Red70キロダルトン(約70キログラム/モル)デキストラン(米国Invitrogen社)
・アネキシンV−APC(米国Invitrogen社)
・Hypnorm(登録商標)(英国VetaPharm社)
・ドルミカム(登録商標)(スイスRoche社)
・注射用滅菌水(独国Braun社)
・Fluo−4AM特別パッケージ(米国Invitrogen社)
・Fluo−Red AM特別パッケージ(米国Invitrogen社)
・プルロニック(登録商標)F−127(米国Invitrogen社)
・グリベンクラミド(米国Sigma社)
・細胞外溶液
(試薬設定)
細胞外溶液(単位:ミリモル):140NaCl、5KCl、2NaHCO3、1NaH2PO4、1.2MgCl2、2.5CaCl2、10HEPES、3グルコース(pH7.4、NaOH使用)。
(備品)
・27GX3/4インチ(約1.905cm)針(米国BD社)
・鈍い27Gカニューレ、27G針からの特注
・0.5ミリリットルのネジ付き吸引具Hamilton気密注射器ナンバー1750(米国Hamilton社)
・内径(i.d.)0.4ミリメートル、外径(o.d.)0.8ミリメートルのポリエチレンチューブ。(英国Smiths Medical社)
・内径i.d.0.2mm且つ外径o.d.0.8mmのポリエチレンチューブ
・内径i.d.0.9mm且つ外径o.d.1.2mmのポリエチレンチューブ
・内径i.d.0.76mm且つ壁厚0.86mmのタイゴン(登録商標)チューブ(スイスIsmatec社)
・1、5、及び10ミリリットルのプラスチック製注射器(米国BD社)
・50ミリリットルの試薬チューブ(独国Eppendorf社)
・400麻酔ユニット(マルタ共和国Univentor社)
・Exmire Microsyringe MS−GLLX00 10ミリリットル(米国Hamilton社)
・立体顕微鏡MZ FLIII(独国Leica社)
・頭部保持アダプタ(日本国Narishige社SG−4N)
・UST−2中実自在継ぎ手(日本国Narishige社)
・Dumontナンバー5鉗子(米国Fine Science Tools)
・特注加熱パッド
・TCS−PS2−AOBS共焦点スキャナを備えたDMLFSA正立顕微鏡(独国Leica社)
・チタンTi:サファイアレーザTsunami(米国Spectra−Physics社)・2.5x及び5xの対物レンズ(独国Leica社)
・長距離浸水レンズ(Leica社HXC APO 10x0.3W、20x0.5W、40x0.8W)
・極微操作装置5171(2)(独国Eppendorf社)
・(2)自在毛細血管保持具(独国Eppendorf社)
・毛細血管把持ヘッド1(2)(独国Eppendorf社)
・フィラメントを備えない薄壁ホウケイ酸ガラス毛細血管TW120−4(米国WPI社)
・DMZ自在張引具(独国Zeitz Instrumente社)
・802注射器ポンプ(マルタ共和国Univentor社)
・Leica共焦点ソフトウェア(バージョン2.61)(独国Leica社)
・Volocity(登録商標)(英国Improvision社)
・Matlab(米国The MathWorks社)
・ウェーブレットフィルタアルゴリズム14(スウェーデン、ストックホルム)
(備品セットアップ)
(共焦点及び2光子セットアップ)
LSMのために、アルゴンを備えたLeica社TCS−SP2−AOBS共焦点レーザ走査、及びLeica社DMLFSA顕微鏡に連結されたHeNeレーザが使用される。2光子励起はTkSapphireレーザ(米国Spectra−Physics社Tsunami)を使用して82MHzまで、且つ100fsまでの励起が実施される。
(頭部保持アダプタ)
外科手術及び撮像をすべくハツカネズミの頭部を固定するために、日本国Narishige社製造による頭部保持アダプタSG−4N−Sが使用される。使用される麻酔薬の種類に応じて、頭部保持部はガスマスク(GM−4−S)又はノーズピースを備える。頭部保持部は顕微鏡の特注ステージに適合する金属板に固定される。金属板は加熱パッドにより覆われる。体温は加熱パッドの温度を調整する直腸プローブを通じて調整される。
(眼球固定器)
眼瞼を収縮させ、眼を付加的に固定すべく特注の支持装置が使用される。ナンバー5Dumont鉗子を小型の金属バーに固定子、UST−2中実自在継ぎ手に金属バーを挟持する。目の高さと同じ位置に合わせた頭部保持部と同じ位置にて自在継ぎ手を金属板に固定するため、鉗子の先端部を眼に至らしめることができる。ポリウレタンチューブの一部により鉗子の先端部を覆い、先端部間にループを形成する。鉗子の前方部分にネジを固定するため、鉗子の先端部間の距離を調整することができる。
(前房潅流)
流出部:内径0.9mm且つ外径1.2mmからなる35cmまでのポリエチレンチューブの一端を毛細血管保持部に連結し、ピストンを備えない10ミリリットルの注射器(即ち、開放されたタンク)にチューブの他端を連結する。
流入部:内径0.76mm且つ壁厚0.86mmからなる35cmまでのタイゴン(登録商標)チューブの一端を毛細血管保持部に連結し、1ミリリットルの注射器にチューブの他端を連結する。
(撮像工程)
共焦点LSM及びTPLSMによりキャプチャされた画像のノイズを取り払うべくウェーブレットフィルタ15が使用される。分析及び画像表示のために例えばVolocity及びLeica共焦点ソフトウェア等の処理ソフトウェアを使用する。
(非制限的例における処理)
(膵島の眼の前房への移植)
1.上述したようにハツカネズミの膵島を分離する16,17。
【0042】
研究パラメータに応じて任意により膵島を培養する。
2.内径0.4mmを有する約10cmのポリエチレンチューブを備えた27G針を0.5ミリリットルのHamilton注射器に連結し、チューブの他端に鈍い27Gカニューレを挿入する。
3.30乃至40の小島を培地から殺菌PBSを備えた皿に移し、小島を皿の中央部にできるだけ密集させて位置させる。
4.小島を鈍い27Gカニューレ及び連結されたポリエチレンチューブ内に吸引する。小島は前房内に容易に注入できるように、好適に最小限の容積(例えば、20マイクロリットル以下)にて吸引される。
【0043】
小島をあまりに大きな容積にて吸引すると、眼を不要に高い眼圧に晒すことにより注入工程において困難を伴い、最終的にカニューレを取り払った後に小島が前房から逆流し、流出してしまう。
5.選択肢(A)又は(B)に従って眼の前房に膵島を移植する。
(A)頭部保持部を使用した膵島の移植
i.1つの脱脂綿を50ミリリットルの試薬チューブ内に位置させ、約1ミリリットルのイソフルレンを脱脂綿に滴下する。試薬チューブ内にて数秒間ハツカネズミを保持することにより、ハツカネズミを気絶させる。
ii.立体顕微鏡下の頭部保持部にハツカネズミを位置させ、移植のために選択される眼のある頭部を上方に配向させて固定する。
iii.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0044】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。
麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
iv.ブプレノルフィン(0.05ミリグラム/キログラム)を皮下注射し、手術後の痛みを低減する。
v.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置する。
【0045】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。
vi.容易に取り扱えるように、27G針を1ミリリットル注射器に連結する。虹彩への損傷及び出血を避けるように留意して、27G針を使用して強膜近傍の角膜を穿刺する。vii.針により形成された孔を通じて眼の前房内に鈍いカニューレをそっと挿入する。小島を前房内に徐々に注入する。
【0046】
注入後、カニューレを注意深く退出させる。
viii.覚醒するに先立って付加的な10乃至15分間ハツカネズミを頭部保持部に残しておく。
【0047】
頭部保持部からハツカネズミを取り払い、イソフルレンから離間させ、覚醒時にわたってハツカネズミを監視する。
ix.乾燥を防止すべく眼にViscotearsを滴下する。
体内撮像まで小休止する。時間は研究パラメータにより決定される。
(B)頭部保持部を使用しない膵島の移植
i.5ミリリートルノプラスチック製注射器からピストンを取り払い、底部から1cmまでの注射器の部分を切断することにより小型のガスマスクを形成する。麻酔ポンプのチューブを針接続部に連結させる。
ii.脱脂綿及び約1ミリリットルのイソフルレンを備えた50ミリリットルの試薬チューブにハツカネズミを数秒間保持することにより、ハツカネズミを気絶させる。
iii.移植するために選択された眼を有するハツカネズミを立体顕微鏡下の加熱パッドに上方に配向されるように載置する。ハツカネズミの鼻を準備したガスマスク内に位置させる。
iv.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0048】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
v.ブプレノルフィン(0.05ミリグラム/キログラム)を皮下注射し、手術後の痛みを低減する。
vi.眼の周囲の皮膚を収縮させ、眼の強膜角膜連結部を視認できるように露出させ、ハツカネズミの呼吸や血液循環を妨害することなく頭部の位置をそっと固定する。
vii.上記(A)をviからixまで続ける。
(眼の前房に移植される小島の撮像)
6.工程1乃至5により小島を移植する。研究の目的に応じてドナーとなるハツカネズミ及び受容するハツカネズミを選択する。
7.イソフルレンに短期間暴露することにより受容するハツカネズミを気絶させる。
8.ハツカネズミを頭部保持部に位置させ、移植される小島を含む眼を有する頭部を上方に配向されるように固定する。
9.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0049】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
10.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置する。
【0050】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。
11.共焦点及び2光子LSMを具備した正立顕微鏡下にハツカネズミと共に頭部保持部を載置する。
12.概観を得るべく低倍率の対物レンズ(2.5及び5倍)を使用する。高解像度を得るべくLSMは濾過した生理食塩水やViscotearsをレンズ及び角膜の間の浸液として使用する長い作業距離を有する浸水対物レンズ(10、20、及び40倍)を使用する。
【0051】
視認するために最小限必要なレーザ出力及び走査時間、例えば75ミリワット及び800ヘルツ以上を使用して、画像の損傷、破れを防止する。
13.部位の生物学的パラメータを撮像する。
(A)移植物形態の撮像
i.細胞特有の形態を視認すべく、ベータ細胞に蛍光タンパク質を発現する遺伝子組み換えのハツカネズミの島(例、RIP−GFP)が移植に使用される。GFP蛍光を488ナノメートルのレーザにて励起し、495乃至530ナノメートルの範囲の発光を検知する。島形態も反射像の検知により撮像可能である。レーザ(例、633ナノメートル)を選択し、AOBS制御を設定し、反射像検知を最適化する。プラスマイナス4ナノメートルのレーザ波長の範囲に発光を集束する。
(B)虹彩及び移植される島の血管新生の撮像
内皮細胞又は血管ルーメンをのいずれかを撮像することにより血管新生を視認化する。i.内皮細胞を撮像すべく、Tie2−GPFハツカネズミを移植用に使用する。
ii.GFP蛍光を488ナノメートルのレーザにて励起し、495乃至530ナノメートルの範囲の発光を検知する。
iii.血管ルーメンの撮像のために、蛍光標識された10ミリグラム/ミリリットルのデキストラン(70キロダルトン)(約70キログラム/モル)を0.1ミリリットル尾静脈注射する。
iv.蛍光標識されたデキストランの注射後、選択されたデキストランに好適な設定を使用して移植される島を撮像する。
【0052】
RIP−GFPハツカネズミのベータ細胞及び血管移植島を同時に撮像すべくTexas−Red共役デキストラン(70キロダルトン)(約70キログラム/モル)を注射する。Texas Red及びGFPは2光子レーザにより890ナノメートルにて励起され、発光はダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して非走査(nondescanned)検知器に集束される。
(C)ベータ細胞死の撮像
i.アロキサン(75ミリグラム/キログラム(体重))の経皮的注入により移植された島においてベータ細胞死を誘発する。
【0053】
アロキサンがベータ細胞死を誘発するまで24時間待機する。
ii.ハツカネズミが高血糖状態になったことを確認すべくアロキサンを投与して24時間後に血液グルコースレベルを測定する。
iii.アネキシンV−APCを0.1ミリリットル尾静脈注射する。
【0054】
アネキシンV−APCが自然死した細胞及び死亡させた細胞を標識するまで4乃至6時間待機する。
iv.APC蛍光に好適な設定を使用してアネキシンV−APC投与後4乃至6時間移植された島におけるベータ細胞死を撮像する。APCを633ナノメートルにて励起し、発光を645乃至680ナノメートルの範囲にて集束する。
(D)眼の前房の潅流によりCa2+標識を移植物に装填した後の細胞質の遊離Ca2+濃度の撮像
前房潅流は参照文献18から変形される。
i.ピペットを30乃至40マイクロメートルの先端径にて破断する。先端部を35°斜角をなして最終的な径を70乃至90マイクロメートルとする。流出側のピペットは流入側のピペット(70マイクロメートルまで)より僅かに大きい(90マイクロメートルまで)。
ii.注射器、チューブ、及び毛細血管保持具を細胞外溶液にて満たし、ピペットを毛細血管保持具の毛細血管グリップの頭部に載置する。
iii.ヒプノルム/滅菌水/ドルミカムの混合物(1:2:1)を100マイクロリットル/10グラム(体重)にて腹腔内注射によりハツカネズミを麻酔する。麻酔は1、2分に行う。30分後及び60分後にヒプノルム/滅菌水の混合物(1:3)を50マイクロリットル/10グラム(体重)にて注射し麻酔時間を延長する。必要に応じて90分後に最初のヒプノルム/滅菌水/ドルミカムの混合物(1:2:1)を50マイクロリットル/10グラム(体重)にて注射することにより麻酔時間を更に延長する。
【0055】
島細胞の機能の研究のために麻酔を選択する場合に、いくつかの化合物は血液のグルコースレベル及びインシュリン分泌に影響を付与すると報告されているため留意する必要がある19、20。イソフルレンは島細胞に対する直接的な機構によりグルコースの刺激によるインシュリン解放を防止するため、機能の研究には不適である21。ヒプノルムやドルミカムの混合物は細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化の計測を妨害しないようである。iv.ハツカネズミを頭部保持部に載置し、移植される小島を含む眼を有する頭部を上方に配向されるように固定する。
v.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置し、保持部及びハツカネズミを正立顕微鏡下に載置する。
【0056】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。vi.眼の上方21cmまでの高さに流出開放タンクを保持し、連続して15mmHg(約2kPa)の眼圧に確実に保持する。極微操作装置に流出側の毛細血管保持具を載置する。
vii.2.5倍の対物レンズを使用し、眼全体を監視すべく流出ピペットを極微操作装置と共に前房内に挿入する。
【0057】
浅い角度にて角膜を通じて迅速にピペットを移動させることによって前房を貫通する。角膜を不要にひっかいたり、虹彩に損傷を付与しないように留意する。
viii.Fluo−4及びFura−Redの混合物(1:1、各500マイクロメートル)を130マイクロリットルまで流入毛細血管内に吸引し毛細血管保持具を極微操作装置に固定する。染料を含まない洗浄のために十分な細胞外溶液が注射器内に含まれることを確認する。
【0058】
流入の1ミリリットルの注射器を注射器ポンプに位置させる。
ix.流入ピペットを流出ピペットに対向する前房内に挿入する。
工程vii.と同様に角膜を穿刺する。
x.最初に房水を潅流液に迅速に(10マイクロリットルまでを30秒以内)交換する。潅流の機能性を監視する。
xi.毎分3マイクロリットルの速度にて40分間、眼の前房を連続して潅流する。
xii.装填後、前房を高い速度にて(毎分10マイクロリットルまで)潅流することにより前房内の染料を洗い流す。
【0059】
潅流工程において、潅流及び眼を制御する。流出の詰まりにより眼が腫れないように注意する。
xiii.染料の洗浄後、潅流を停止する。ピペットは取り払わない。
xiv.細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化を撮像すべく、より拡大率の高い浸水対物レンズ(10、20、或いは40倍)に交換し、Viscotearsを浸液として使用する。
xv.Fluo−4及びFura−Redを同時に撮像することにより、細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化のラシオメトリック計測が可能となる。Fluo−4及びFura−Redは488ナノメートルにて励起され、発光はFluo−4が495乃至535ナノメートル、Fura−Redが600乃至700ナノメートルに集束する。
【0060】
視認するために最小限必要なレーザ出力及び走査時間、例えば75ミリワット及び800ヘルツ以上を使用して、画像の損傷、破れを防止する。
xvi.部位の細胞内のFluo−4及びFura−Red蛍光を一連の時点においてデータの取得を開始する。
xvii.刺激を受けない蛍光レベルを基準線とし、グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を尾静脈注射することによる刺激により全身にわたってインシュリンを解放する。島移植物内のベータ細胞における細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化は注入後数秒間のうちに監視する必要がある。
xviii.撮像後にピペットを眼から注意深く取り払う。
xix.術後の痛みを低減すべくハツカネズミにブプレノルフィン(0.05ミリリットル/キログラム)を皮下注射する。
xx.ハツカネズミを覚醒するまで温暖な環境(30℃まで)に載置する。ヒプノルム又はドルミカム麻酔の後、数時間要する。
(時間的調節)
島の分離:4時間まで
前房への島の移植(工程2乃至5):25分まで(ハツカネズミの場合)
移植物形態の撮像(工程13A):1時間まで(ハツカネズミの場合)移植物の血管新生の撮像(工程13B、i及びii、又はiii及びiv):1時間まで(ハツカネズミの場合)
ベータ細胞死の撮像(工程13C、i及びii):24時間まで、(工程13Ciii及びiv):5時間まで
眼の前房を潅流することにより移植物にCa2+標識を装填した後の細胞質の遊離Ca2+濃度の撮像(工程13Di):1.5時間まで(4乃至6のピペットの場合)、(工程13Dii乃至xx):2時間まで(ハツカネズミの場合)
(予期される結果)
ここで開示される基盤により、部位の組織にアクセスすべく侵襲的な外科手術を行うことなく体内における複数の生物学的パラメータの長期にわたる評価が可能となる。眼の前房への膵臓ランゲルハンス島の移植後に、上記手順により反射像や蛍光によって容易に島移植物の形態が検知可能である。撮像反射像による膵島移植物の形態学的特徴付け及びGFPが実施され、ここでインシュリンプロモータ(緑色のベータ細胞)下においてGFPを発現するハツカネズミの島はTie2プロモータ(緑色の内皮細胞)下においてGFPを発現するハツカネズミに移植される。GFPは35%のレーザ出力にて488ナノメートルにて励起され、発光は495乃至530ナノメートルの範囲にて測定される。反射は35%のレーザ出力にて633ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は632乃至639ナノメートルの範囲にて測定される。
【0061】
更に、血管新生及び細胞死は蛍光染料の全身にわたる注入により、長期にわたって追跡可能である。血管は70キロダルトン(約70キログラム/モル)のTexas Red標識されたデキストランを経皮的に注入することにより視認可能である。GFP及びTexas Redは2光子レーザにより最小限必要なレーザ出力にて890ナノメートルにて励起され、発光はダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して非走査(nondescanned)検知器に集束される。細胞死を撮像すべく、ベータ細胞死がアロキサンの経皮的注入により誘発される。細胞自然死及び細胞死はアネキシンV−APCを経皮的に注入することにより視認可能である。反射は543ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は35%のレーザ出力にて539乃至547ナノメートルの範囲にて測定される。GFPは488ナノメートルにて励起される、発光は35%のレーザ出力にて495乃至530ナノメートルの範囲にて測定される。APCは633ナノメートルにて励起され、発光の集束は645乃至680ナノメートルの範囲にて75%のレーザ出力にて行われる。
【0062】
付加的に、島細胞は前房を潅流することによりCa2+標識を繰り返し装填され、全身にわたる細胞質の遊離Ca2+の濃度の誘発された変化を測定する。カルシウム標識を装填すべく、前房をFluo−4及びFura−Redが潅流する。Fluo−4及びFura−Redは25%のレーザ出力にて488ナノメートルにて励起され、発光はFluo−4が495乃至535ナノメートルの範囲、Fura−Redが600乃至700ナノメートルの範囲にて測定される。反射は543ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は15%のレーザ出力にて539乃至547ナノメートルの範囲にて測定される。
【0063】
様々な遺伝子組み換え型ハツカネズミ及び標識の使用に上記手順を拡張することにより、多数の付加的な生物学的パラメータの監視が可能となる。従って、上記基盤により、生理学的状況の他病態生理学的状況下における複雑なシステムの細胞生物学の調査が補助される。
(例2の参照文献)
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(トラブルシューティング)
【0064】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は非侵襲的な体内撮像及び1型糖尿病の処置方法に関する。
(政府支持の宣言)
ここで開示される発明は一部国立衛生研究所認可番号DK−58508及びDK−075487号の記載に基づくものであるため、米国政府は本発明に所定の権限を有する。
【背景技術】
【0002】
健常及び疾病における細胞過程の基本的な理解は体内の様々な組織の細胞を研究することにより得られる。
しかしながら、体内の実験により得られるものはより生理学的な設定における全器官、即ち生命組織の細胞の能力を説明するために十分なものではない。体内システムから生理学的状況を観察するために、体内条件下において研究をする必要がある。近年撮像技術を使用して原位置の細胞機能を調査するためのアプローチが増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、陽電子放出型断層撮影法(PET)や、生物発光画像法(BLI)等の非侵襲的な撮像技術は、細胞レベルの解像度1を有していない。一方、共焦点及び2光子レーザ走査顕微鏡(LSM)により、細胞に近い解像度を得られるが、作動距離及び画像深度2が著しく制限される。LSMの応用による目的の細胞へのアクセスは多くの場合侵襲的であり、通常繰り返し検査を行うことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は(a)実験用動物の眼に目的の細胞を移植する工程において、移植される目的の細胞中の治療部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される移植工程と、(b)目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程と、(c)実験用動物の眼に非侵襲的な蛍光撮像を行う工程とを含み、蛍光撮像は移植される目的の細胞中の治療部位の蛍光標識された細胞要素の活動、位置、及び量における試験化合物に誘発された1つ以上の変化を検知することに使用されることと、試験的化合物により目的の細胞に治療の効果が得られたことを変化により確認することとを特徴とする薬品開発方法に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植することを特徴とする1型糖尿病の患者を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】眼の前房内への膵島の移植を示す図。
【図1B】眼の前房内へ移植される膵島の、非侵襲的体内撮像の構成を示す図。
【図1C】眼の前房の虹彩に移植される島のデジタル画像。
【図1D】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1E】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1F】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1G】移植後異なる時点におけるインシュリン免疫反応β細胞(赤)及びグルカゴン免疫反応β細胞(緑)を示す島移植物を含む眼の区分を示す図。
【図1H】移植後の表示された時点における膵島及び眼の前房内のグルカゴン免疫反応細胞に対するインシュリンの比率を示すグラフ。
【図1I】眼に島を注入した(n=8、黒)、腎臓被膜(n=2、赤)下におけるストレプトゾトシン処理されたハツカネズミの腹腔内ブドウ糖負荷試験における血漿グルコースレベルを示すグラフ。
【図2A】島移植物及び血管新生の非侵襲的撮像において、移植後4ヶ月した個別のRIP−GFP島移植物を51マイクロメートルの深度にて光学的に撮像した、β細胞GFPを示す蛍光透視図(緑)。
【図2B】島移植物及び血管新生の非侵襲的撮像において、移植後4ヶ月した個別のRIP−GFP島移植物を51マイクロメートルの深度にて光学的に撮像した、静脈内に注入されたTexas Redを示す蛍光透視図(赤)。
【図2C】100マイクロメートル厚に対応する撮像を示す二次元投影図。
【図2D】100マイクロメートル厚に対応する撮像を示す二次元投影図。
【図2E】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2F】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2G】縮尺100マイクロメートルにて移植して3日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2H】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2I】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2J】縮尺100マイクロメートルにて移植して7日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2K】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2L】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2M】縮尺100マイクロメートルにて移植して14日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2N】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞のGFP蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2O】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物の血管内のTexas Redの蛍光透視像を示す投影図(110マイクロメートル厚)。
【図2P】縮尺100マイクロメートルにて移植して28日後における個別のRIP−GFP島移植物のオーバレイ図(110マイクロメートル厚)。
【図2Q】図2E乃至2Pに示す結果から得られるものを数量化し、分析した島移植物の各時点における数を括弧内に示したグラフ。
【図2R】図2E乃至2Pに示す結果から得られるものを数量化し、分析した島移植物の各時点における数を括弧内に示したグラフ。
【図3A】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3B】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3C】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3D】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3E】縮尺50マイクロメートルにてβ細胞機能の体内撮像において3分間グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を全身に適用した後の図示の時点におけるFluo−4及びFura−Redを示す蛍光透視図。
【図3F】開始時点を矢印にて示した所定のグリベンクラミド刺激に反応するFluo−4対Fura−Redの全フレームにおける比率の変化を示すグラフ。
【図3G】縮尺50マイクロメートルにて図3Aに示す島全体にわたる個別の細胞における比率の変化を示すグラフ。
【図3H】縮尺50マイクロメートルにてグリベンクラミドによる刺激前の島全体のFluo−4(緑)及びFura−Red(赤)の蛍光透視像を示す拡大投射図。
【図3I】縮尺50マイクロメートルにてグリベンクラミドによる刺激後の島全体のFluo−4(緑)及びFura−Red(赤)の蛍光透視像を示す拡大投射図。
【図3J】縮尺50マイクロメートルにて図3Hに示す島のFluo−4対Fura−Redを示すレシオメトリック図。
【図3K】縮尺50マイクロメートルにて図3Iに示す島のFluo−4対Fura−Redを示すレシオメトリック図。
【図4A】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す投影図。
【図4B】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の内分泌細胞からの反射像を示す図。
【図4C】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の検知不能な移植物のアネキシン(annexin )V−APC標識を示す図。
【図4D】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の、β細胞死を誘発して24時間後の図4A乃至4Cの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図4E】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す図。
【図4F】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の反射像を示す図。
【図4G】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の強力なアネキシンV−APC蛍光を示す図。
【図4H】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の非侵襲的体内撮像における健康状態下の眼の前房内の個別のRIP−GFP島移植物の図4E乃至4Gの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図4I】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の誘発後アネキシンV−APCにより強力に標識された島移植物のβ細胞GFP蛍光を示す高拡大図。
【図4J】縮尺100マイクロメートルにてβ細胞死の誘発後アネキシンV−APCにより強力に標識された島移植物のアネキシンV−APC蛍光を示す高拡大図。
【図4K】縮尺100マイクロメートルにて図4I及び4Jのオーバレイ図。
【図4L】縮尺100マイクロメートルにて図4Kの青の反射像を示すオーバレイ図。
【図5A】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後のβ細胞のGFP蛍光を示す図。
【図5B】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後の血管のTexas Red蛍光を示す図。
【図5C】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから2ヶ月後のGFP蛍光及びTexas Red蛍光のオーバレイ図。
【図5D】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後のβ細胞のGFP蛍光を示す図。
【図5E】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後の血管のTexas Red蛍光を示す図。
【図5F】縮尺100マイクロメートルにて島移植及び血管新生の非侵襲的な撮像における図2に示すRIP−GFP島移植物と同じ移植物(110マイクロメートルの厚み)の移植してから4ヶ月後のGFP蛍光及びTexas Red蛍光のオーバレイ図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様において、本発明は(a)実験用動物の眼に目的の細胞を移植する工程において、移植される目的の細胞中の治療部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される移植工程と、(b)目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程と、(c)実験用動物の眼に非侵襲的な蛍光撮像を行う工程とを含み、蛍光撮像は移植される目的の細胞中の治療部位の蛍光標識された細胞要素の活動、位置、及び量における試験化合物に誘発された1つ以上の変化を検知することに使用されることと、試験的化合物により目的の細胞に治療の効果が得られたことを変化により確認することとを特徴とする薬品開発方法に関する。
【0008】
ここで開示されるように、移植される目的の細胞は、複数の組織又は組織の複数の部分等の、個別の細胞、同じ種類の複数の細胞、異なる細胞型の複数の細胞である。細胞は任意の要求される種類のものであり、内分泌細胞(膵臓ベータ細胞を含むが、これに限定されるものではない)、及び任意の組織の種類に由来する細胞を含むが、これらに限定されるものではない。組織の種類は脂肪、筋肉、脳、肝臓、腎臓、心臓、及び肺を含むが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明の方法により、任意の細胞や組織の生理学及び病態生理学を考慮した非侵襲的な体内薬品開発研究の新規な基盤が得られる。一実施例において、眼の前房は体内条件下における細胞レベルにて複雑なシグナル伝達ネットワークの統合を初めて明瞭に示す多目的自然体窓として使用される。1つ以上の細胞要素の活動を評価するために体内モデルとして眼の前房を使用することにより、例えば、形態学、血管新生、神経支配、細胞死、細胞増殖、細胞発生(幹細胞発生、腫瘍細胞発生等を含むが、これらに限定されるものではない)、遺伝子発現、及び細胞シグナリングの連続した監視ができるようになる。この基盤は例えばホルモン系及びニューロン系の他、内分泌細胞や血管細胞の自己分泌シグナル又はパラクリンシグナルからの調整入力の効果を明瞭にすることに使用可能である。更に、上記は細胞又は組織機能及び健康状態又は非健康状態下における生存の非侵襲的な体内研究のための新規なアプローチとして機能する。従って、モデルシステムは例えば体内における薬品搬送及び薬品の候補の試験(癌、糖尿病を処置する薬品の候補を含むが、これらに限定されるものではない)における使用に好適である。
【0010】
実験用哺乳動物は細胞を眼の前房に移植可能な任意の好適な実験用哺乳動物であり、ハツカネズミ、サル、ウサギ、イヌ、ラット、及びブタを含むが、これらに限定されるものではない。
【0011】
眼の前房は眼の前方部分からなり、硝子体液の前の構造体の他、角膜、虹彩、毛様体、及び水晶体を含む。眼の前房への目的の細胞の移植は、目的の細胞が観察可能であり、細胞からの蛍光信号が非侵襲的に視認できる限り、眼の前房の1つ以上の任意の区画に細胞を位置させることができる。非制限的一例において、目的の細胞は角膜を通じて注入することにより移植され、これにより目的の移植細胞を虹彩に移植することができ、角膜を通じた観察及び撮像が可能となる。
【0012】
移植される目的の細胞の部位の1つ以上の細胞要素は蛍光標識される。標識は直接的(即ち、共有結合性相互作用)であっても間接的(即ち、非共有結合性相互作用)であってもよく、細胞は移植に先立って標識されても、移植後に標識されてもよい。移植前の標識は、部位の蛍光タンパク質標識された細胞要素を示す発現構造体を備えた細胞のトランスフェクション等の遺伝子組み換え技術を含む公知の手段によって行われるが、これに限定されるものではない。緑色蛍光タンパク質、及び全てのその変異体を含む任意の蛍光タンパク質が使用可能であるが、これらに限定されるものではない。移植後標識も、部位の蛍光染色、及び標識された抗体との接触を含む当業者に公知の手段によって行われるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
眼の前房の蛍光撮像は当業者に周知の任意の技術によって得られ、レーザ走査顕微鏡を含むが、これに限定されるものではない。一実施例において、方法は部位の標識された細胞要素からの蛍光を好適な波長のレーザ刺激により刺激して、移植された細胞における細胞要素の蛍光画像を非侵襲的に得る刺激工程を含む。
【0014】
部位の細胞要素の活動は本発明の方法により評価可能である。上記活動は部位の細胞要素からの蛍光信号の検知に基づき評価可能な部位の細胞要素の任意の特性である。蛍光信号の検知は、発現、分布、位置確認、量、動力学的又は動的変化、変形、及び振動を含むが、これらに限定されるものではない。更なる実施例において、方法は時間にわたる部位の細胞要素の活動を評価する工程を含む。本実施例において、方法は多数の時点において蛍光撮像を実施する工程を含み、部位の細胞要素の活動における変化を評価可能である。ここで開示される全ての実施例のうち一実施例において、評価が個別の細胞内においてなされる。
【0015】
非制限的実施例において、部位の細胞要素は信号変換経路の要素からなり、方法は時間にわたり部位の1つ以上の細胞要素の活動を評価することにより信号変換経路の活動を評価する工程を含む。更なる非制限的実施例において、試験細胞は膵臓ベータ細胞からなる。
【0016】
方法は目的の細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる工程、及び1つ以上の試験化合物に反応する目的の細胞中の部位の蛍光標識された細胞要素の活動を評価する工程を含む。移植される細胞を1つ以上の試験化合物に接触させる上記工程は移植に先立って行われても移植後に行われてもよく、好適には移植後に行われる。
【0017】
後述する例において、分離した膵臓のランゲルハンス島は眼の前房内に移植される。ランゲルハンス島はアルファ細胞、ベータ細胞、及びデルタ細胞を含む複数の異なる細胞タイプからなる。上記細胞群は膵臓内分泌部を示し、グルコース恒常性のために主として重要である。上昇した血液グルコースレベルに反応するベータ細胞からのインシュリンの解放が十分なものではない場合に糖尿病となる。グルコースに誘発されるベータ細胞からのインシュリンの分泌の調整は、自己分泌因子、パラクリン因子、ホルモン因子、及びニューロン因子によって調整される複雑な工程である。従って、血管が新生され神経を支配されるランゲルハンス島に関する研究が健康状態及び罹患した状態におけるホルモン分泌を生じさせる機構を理解するために必要である。しかしながら、膵臓外分泌腺及び齧歯動物の膵臓の組織を通じたランゲルハンス島の散在した分布により、特に単細胞解像度におけるランゲルハンス島の非侵襲的な長期にわたる体内研究は現在不可能である。
【0018】
眼の前房への移植の後に、分離した小島が容易に移植可能であることを後述する。糖尿病のハツカネズミは眼の前房にランゲルハンス島を移植することにより正常血糖となり、上記ハツカネズミは調整ハツカネズミと比較してブドウ糖負荷試験に対して同じ反応を示した。小島の形態を長期にわたって監視可能であり、血管再開通術を実施できた。更に、同じ小島のベータ細胞中の細胞質の遊離Ca2+濃度の、全身的に誘発された変化を繰り返し計測した。最終的に、ベータ細胞毒の全身注射後に小島の化学的に誘発された細胞死を非侵襲的に監視できた。
【0019】
上記基盤により、血管新生され神経を支配された組織の多数の形態学的パラメータ及び機能的パラメータを非侵襲的に測定することができる。例は膵臓ランゲルハンス島に焦点を当てたが、上記基盤は全ての種類の組織の調査に使用可能である。血管及び神経を得て、器官型血管新生10,12及び神経支配4,5,13を確立すべく、眼の前房に移植される異なる種類の組織が開示された。これにより、侵襲的に組織に組織にアクセスすることなく自然の環境に匹敵する設定において組織を研究することができる。更に、眼の特性により、目的の細胞及びこれらの調節入力は困難を伴うことなく全身的のみならず局所的に調整可能である。物質は眼に局所的に塗布されるか、前房に注入される。付加的に、前房の潅流により、房水の交換、及び蛍光指示薬を有する移植物の設置が繰り返し可能となる。
【0020】
眼の前房を移植部位として使用する場合に、視認を最適化し前房を免疫特権部位とすべく示される特別な局所的特性が考慮される。前房における観察を分析する場合に、前房及び血漿中の房水の組成の差異を記憶に留めておく。しかしながら、研究において、局所的環境による通常の移植機能に対する顕著な効果は見られなかった。上記に対する1つの考えられる説明として、誘発された新血管形成により房水及び血漿の組成が調整されることが挙げられる。従って、眼の前房により、単細胞解像度にて体内システムにおける複雑な生物学的相互作用の研究が可能となることが実証された。本態様は更に拡張可能であり、新規に開発した蛍光タンパク質、バイオセンサ、及び遺伝子導入動物により、生理学的条件及び病態生理学的条件の両者の下における開発、機能、及び生存に対して重要な多数のパラメータを調査することが補助される。
【0021】
別の態様において、本発明は患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する工程を含む1型糖尿病の患者を処置する方法に関する。
【0022】
本態様において示すように、「インシュリン生成細胞」は患者の眼に移植後インシュリンを生成可能な任意の細胞の種類である。上記インシュリン生成細胞は、膵臓β細胞、幹細胞、及びインシュリンを解放するように操作された組み換え細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
ここで開示されるように、「膵臓ベータ細胞」は膵島ベータ細胞を含む細胞の任意の母集団である。上記膵島β細胞の母集団は、膵臓細胞、分離された膵臓ランゲルハンス島(「膵島」)細胞、及び分離された膵島β細胞を含む。膵臓の分離方法は公知であり、膵島の分離方法は例えば2003年出版のCejvan等による糖尿病52:1176乃至1181頁、1999年出版のZambre等による生化学薬理学57:1159乃至1164頁、及び1998年出版のFagan等による外科手術124:254乃至259頁、並びにこれらの引用文献に開示されている。主眼に移植されると、上記島におけるベータ細胞はインシュリンの生成及び解放を開始する。
【0024】
ここで開示されるように、発明者は膵臓ベータ細胞等の細胞を眼の前房内に移植することにより、細胞内のリアルタイムな事象を監視する新規な方法を発見した。上記研究の実施において、発明者は膵臓β細胞を眼に移植することにより失明や眼の過剰な刺激等の深刻な合併症が誘発されないことを発見した。従って、眼に一部免疫特権を付与された区画が設けられる場合に、インシュリン生成細胞を1型糖尿病患者の眼に移植することにより、要求されるインシュリンが生成され、使用される免疫抑制剤の投与を低減し、免疫抑制剤による潜在する深刻な副作用を低減するものといえる。更に、眼への移植は移植中の酸素欠乏症の期間を短縮し、移植される細胞の生存数を増加させるものといえる。
【0025】
眼への移植は好適に眼の前房への移植を含む。眼の前房は眼の前方部分からなり、硝子体液の前の構造体の他、角膜、虹彩、毛様体、及び水晶体を含む。インシュリン生成細胞を眼の前房内へ移植する工程は、上記眼の前房1つ以上の任意の区画内に細胞を位置させる工程を含む。非制限的一例において、試験細胞は角膜を通じて注入することにより移植され、これにより移植細胞を虹彩に移植することができ、角膜を通じた観察及び撮像が可能となる。眼の前房内、即ち虹彩に移植される膵島ベータ細胞等のインシュリン生成細胞は血管が新生され、細胞構造体を保持し、刺激に反応するようになる。更に、これらは非侵襲的にレーザ走査顕微鏡法(LSM)により監視され、島の血管新生の他、ベータ細胞機能、及びインシュリン解放の体内撮像が可能となる。上記実施例において、インシュリン生成細胞やこれらの構造体は蛍光標識され、蛍光撮像が細胞活動を監視することに使用される。
【0026】
眼の前房の蛍光撮像は当業者に周知の任意の技術によって得られ、レーザ走査顕微鏡を含むが、これに限定されるものではない。一実施例において、方法は部位の標識された細胞要素からの蛍光を好適な波長のレーザ刺激により刺激して、移植された細胞における細胞要素の蛍光画像を非侵襲的に得る刺激工程を含む。
(例1)
インシュリン解放の減少による体内のグルコース恒常性の異常は糖尿病の顕著な特徴である(1)。生理的条件下において、膵臓β細胞からのインシュリン解放は、細胞の代謝活性、自己分泌又はパラクリンシグナル伝達、並びにホルモン及び神経伝達物質からの連続した入力の複雑な協調作用によって調整される。β細胞はその他の内分泌細胞タイプの細胞と共に膵臓内分泌部、即ち血管が密に新生されたランゲルハンス島内に位置され(3)、多量に神経を支配される(4)。従って、健康状態及び罹患した状態におけるインシュリン解放を制御するβ細胞シグナル伝達及び機構の複雑さを十分に理解するために、体内の島の血管新生及び神経支配の研究が必要である。ここで、ハツカネズミの目の前房内に移植される膵島の体内蛍光撮像のための新規な非侵襲的技術基盤を開示する。眼の前房、即ち虹彩に移植される島は血管が新生され、細胞の構造体を保持し、刺激に反応するようになる。非侵襲的なレーザ走査顕微鏡法(LSM)により、島の血管新生の他、β細胞の機能及び細胞死の体内撮像が可能となる。従って、通常及び糖尿病の両条件下において長期にわたって実施される、β細胞のシグナル伝達の繰り返しの非侵襲的な体内調査の基礎が得られる。(方法及び材料)
ハツカネズミモデル。C57BL6、及びTie2−GFPのハツカネズミ(STOCK Tg(TIE2GFP)287Sato/J)がジャクソンラボラトリーズ(メイン州Bar Harborに所在)から購入した。RIP−GFPハツカネズミはKarolinska Institutetにおけるコア施設にて生産され、通常の耐糖能及びGFPのβ細胞限定発現(方法を参照のこと)を特徴とする。全ての実験はKarolinska Institutet及びマイアミ大学におけるローカル動物倫理委員会によって承認された。
(膵島の眼の前房への移植。)
膵島は上述したように分離され、培養される(25)。30乃至300の島が培地から無菌PBSに移され、1ミリリットルのHamilton注射器(ネバダ州Renoに所在するHamilton社)に連結された27Gの眼のカニューレ内に0.4mmのポリエチレンチューブ(英国ケント州に所在するPortex Limited)を通じて吸引される。ハツカネズミはイソフルレン(スウェーデンSolnaに所在するScandinavia AB社のイソフルレン)を使用して麻酔され、Temgesic(登録商標)(ニュージャージー州Schering−Plough社)が術後の痛みを低減すべく皮下注射される。立体顕微鏡下において、27G針を使用して眼の底部における強膜近傍の角膜を穿刺する。虹彩を損傷し、出血させないように細心の注意を要する。次に眼のカニューレが徐々に挿入され、島は前房内に徐々に注入され、虹彩に位置される。注入後、カニューレが注意深く取り払われ、動物は覚醒するに先立って横たえられる。ハツカネズミは迅速に意識を回復するが、移植された眼からは圧迫感や刺激の兆候は見られない。(眼の前房へ移植される島の生体内撮像。)
上述した移植されたハツカネズミは40%の酸素と2%までのイソフルレン(イソフルレン)との混合体により麻酔され、加熱パッドに載置される。ハツカネズミの頭部は定位の頭部保持部(日本国東京Narishige社のSG−4N)を使用して保持され移植された島を含む眼が上方に配向されるように位置される。眼瞼は注意深く引き戻され、眼はUST−2中実自在継ぎ手(Narishige社)に取り付けられた一対のピンセットを使用して強膜角膜連結部に徐々に保持される。ピンセットの先端は2つの先端の間にループを形成する一片のポリエチレンチューブにより覆われる。上記構造体により、損傷を付与したり眼の血液循環を中断させることなく可撓性を備えつつ頭部及び眼を安定して固定することができる。TCS−SP2−AOBSの2光子励起25の共焦点スキャナ及びレーザを備えたLeica社DMLFSA正立顕微鏡が、濾過された生理的食塩水を浸漬液として使用する長距離浸水レンズ(Leica社、HXC APO、10x0.3W、20x0.5W、40x0.8W)と共に撮像に使用される。
【0027】
血管を視認すべく、Texas Red(10ミリグラム/ミリリットルのうち100マイクロリットル、オレゴン州Eugeneに所在するMolecular Probes社)が尾静脈注射により注入される。GFP及びTexas Redは890ナノメートルにて励起され、発光は集束され、ダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して分離され、2つの非走査(nondescanned)検知器となる。TPLSMを使用して撮像された画像は上述したようにウェーブレットフィルタを使用してノイズ除去される(27)。細胞死を視認すべく、100マイクロリットルのアネキシンV−APC(Molecular Probes社)が尾静脈注射により注入される。GFPは488ナノメートル(35%AOTF)にて励起され、発光は495乃至530ナノメートルの範囲にて集束される。反射光は照明によって546ナノメートル(35%AOTF)にて撮像され、539乃至547ナノメートルの範囲にて集束される。APCは633ナノメートル(75%AOTF)にて励起され、発光の集束は644乃至680ナノメートルの範囲にて行われる。最初の研究により、RIPGFP島移植物のアネキシンV−APCによる弱い標識は、適用後40分まで徐々に増加することにより行われる。島移植物はアネキシンV−APC適用後4乃至6時間撮像される。CLSMを使用して撮像した画像は中度のフィルタを使用してノイズ除去される。全ての示される蛍光透視像は最適に視認すべく明度及びコントラストを調整される。
(RIP−GFPハツカネズミの生産)
RIP−GFPハツカネズミはRIP1.EGFP 発現カセット(rat insulin-1 promoter -410/+1bp-EGFPSV40polyA)をB6CBAF1/Crl ドナーからの単細胞段階の胚に注入することにより生産される。得られたFO生産はPCR分析によるRIP1.EGFP ゲノムの組み込みのために切れ目を入れられる。RIP1.EGFP 導入遺伝子は7匹の初代遺伝子導入動物(17.5%)に見られ、これらはF1動物を生産すべくC57 BI/6NCrl の同系交配のハツカネズミと
交配される。初代の系列は1)免疫染色によって決定されるβ細胞中のGFPの表示、及び2)動物及び細胞の生理学に対して表示される。RIP1.EGFP の初代系列ナンバー29は調整された動物、及びGFPのβ細胞抑制発現と比較して通常の耐糖能を有し、ホモ接合体交配のために選択される。
(免疫組織化学。)
ハツカネズミは、眼球内の島移植(n=12)に続いて3日後、7日後、14日後、及び28日後に頸椎脱臼に続く濃縮二酸化炭素暴露により死亡する。移植物を有する眼が取り払われ、4%のパラホルムアルデヒドに1時間後置される。スクロース置き換え(PBS中10%、20%、及び30%)による冷却保護の後、眼の縦の区分が低温保持装置にて切断される(14マイクロメートル)。区分はPBSにて洗浄され(3X10分)、5%のウシ血清アルブミン及び0.1%のトリトンを含むPBSにて保温される(1時間)。その後、区分は抗インスリン(ニューヨーク、Accurate Chemical & Scientific Corp.、1:500)及び抗グルカゴン(ミズーリ州セントルイスに所在するSigma社、1:5000)を含むPBSにて一晩中保温される。免疫染色はAlexa488やAlexa568(Molecular Probes社、1:500)共役二次抗体を使用して視認される。
【0028】
細胞の核はDAPI(Molecular Probes社)を使用して染色される。スライドはVectaMount法による載置されカバースリップにより覆われる。島を含む眼の連続断面図が、インシュリン及びグルカゴンの存在を確認するためにAxiophot蛍光顕微鏡(独国OberKochenに所在するZeiss社)及び2チャンネルレーザ走査共焦点顕微鏡(ニューヨーク、Melvilleに所在するOlympus
America Inc.のOlympus Fluoview)を使用して試験される。。全ての免疫染色画像はデジタル的に得られ、再コンパイルされる(フォトショップ5.0、カリフォルニア州サンジョゼに所在するアドビ社)。区分は10倍及び40倍に拡大され視認される。Zeiss Axiovisionソフトウェアを使用してデジタル化された蛍光顕微鏡による画像を分析する。計測されたパラメータ(即ち、インシュリン免疫反応細胞と、グルカゴン免疫反応細胞との比率)が眼毎の少なくとも2つの別体の島からの少なくとも3つの隣接する区分に由来する平均値として計算される。3つの眼からの計算結果の平均値が求められる。明瞭に標識された核(DAPI染色)を有する細胞のみが分析に含まれる。データは平均値の標準誤差SEMのプラス−マイナスとして示される。
(島移植物の血管新生の定量化。)
血管密度は移植物領域当たりの血管密度の数として決定される。血管密度は1本の血管や血管の枝として規定される。β細胞GFP蛍光透視像が移植物領域を形成することに使用される。2つの光学的区分が各島移植物から定量化される。光学的区分はzスタックの一連の画像から選択される。第1の区分は信号の損失なく移植物のもっとも深いレベルにて選択される。第2の区分は移植物の表面及び最も深い区分の間における中間部にて選択される。定量化のための画像は10倍又は20倍のレンズ、及び2.0倍以上のズームの倍率を使用して撮像される。データは平均値の標準誤差SEMのプラス−マイナスとして示される。血管新生の定量化はLeica共焦点ソフトウェア(バージョン2.61)を使用してなされる。([Ca2+]の変化の体内記録。)
体内β細胞の機能を評価するために、眼の前房に移植される島はCa2+標識であるFluo−4及びFura−Redの混合物を装填される。上記2つの染料を同時に作用させることにより、視認可能な波長(29)における励起スペクトルによる[Ca2+]iのラシオメトリックな計測が可能となる。装填すべく、500マイクロメートルの各AMエステルのFluo−4及びFura−Redを含む、(単位:ミリモル)140NaCl、5KCl、2NaHCO3、1NaH2PO4、1.2MgCl2、2.5CaCl2、10HEPES、3グルコース(pH7.4のKOH)からなる細胞外溶液が前房を潅流する。潅流のために、ハツカネズミはヒプノルム(英国Leedsに所在するVetaPharma社のフェンタニル0.315ミリグラム/ミリリットル、及びフルアニソン10ミリグラム/ミリリットル)を1、ドルミカム(スイス国Baselに所在するRoche社、5mg/ml)を1、滅菌水を2とした10ミリリットル/キログラムの混合物により麻酔される。麻酔期間を延長すべく30乃至40分毎に混合物(4ミリリットル/キログラム)の注射が行われる。
【0029】
ハツカネズミは上述したように顕微鏡の機構に載置され、体温が過熱パッドの制御ユニットに連結された直腸プローブを通じて調整される。マイクロピペットが水平方向のプログラム可能な張引具(独国Augsburgに所在するZeitz−Instrumente社のDMZ自在張引具)にホウケイ酸ガラスの毛細血管から張引され、60乃至100マイクロメートルの外径の先端部に分割される。隣接するマイクロピペットの先端部は回転グラインダ(米国カリフォルニア州Novatoに所在するSutter Instruments Co.の型番BV10)を使用して約30°に傾斜される。マイクロピペットは2つのマイクロ操作ユニット(独国ハンブルクに所在するEppendorf社)を使用して眼の対向する側に浅い角度をなすように角膜を穿刺することにより前房内に案内される。虹彩や島移植物に損傷を付与しないように留意する。マイクロピペットはポリエチレンチューブを通じて細胞外溶液により充填されたタンクに取り付けられる。タンクの高さは約15mmHg(約2kPa)の一定の前房内圧が得られるように調整される。第2のマイクロピペットは1ミリリットル注射器に連結される。流入の比率及び容積は注射器ポンプ(Univector社)により調整される。
【0030】
島細胞は毎分3マイクロリットルにて40分間Fluo−4及びFura−RedのAMエステルを含む細胞外溶液が前房を潅流することによりCa2+の標識を装填される。続いて染料を含む溶液は毎分5、6マイクロリットルにて10分間細胞外溶液を潅流させて洗い流される。上述したように488ナノメートルにてFluo−4及びFura−red(25%AOTF)を励起し、Fluo−4を495乃至535ナノメートルの間に、Fura−Redを600乃至700ナノメートルの間に集光して撮像が行われる。インシュリン解放の全身にわたる刺激は、グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)の尾静脈注射により得られる。撮像の完了後、ハツカネズミは0.1ミリリットル/キログラムのTemgesic(ニュージャージー州Schering−Plough社)を皮下注射され、術後の痛みを低減する。
【0031】
(結果)
膵島は体内監視においてアクセスが困難である。その理由として、これらは深部に位置され、膵臓外分泌組織に分散され、膵臓容積の1,2%を構成することが挙げられる。従って、今日のβ細胞の機能の研究の殆どは体内の分離した島又は細胞に対して行われる。分離した島(6)、特に膵臓の薄切り(7)により、多数の細胞環境におけるβ細胞の機能の研究が可能となる。しかしながら、上記準備は形成された端点までの制約を受け、部分的に血管及び神経の連結部からの入力を欠く。通常の健康状態下におけるインシュリン解放の調整に関する複雑なシグナル伝達網、及びなぜこれらが2型糖尿病において適切に機能しないかを理解するためにβ細胞の機能の体内監視が迅速に要求されている。これは1型糖尿病の治療として挙げられる臨床における島の移植の状況にも当てはまる(8)。今日まで実験及び臨床の島移植後におけるβ細胞のシグナル伝達の監視は可能ではなかったため、移植物機能の特性及び新規な関与の評価の両者が深刻に妨害されてきた(9)。LSMは分離した島及び準備された細胞を使用したβ細胞の多数のシグナル伝達経路の撮像に好適に使用される。しかしながら、生体内においてLSMをβ細胞の生理学の研究に使用することは記録にない。
【0032】
島移植後、島は新しい血管(11)の他、神経連結部(12)を補充し、拍動性のインシュリン解放を通じてグルコース恒常性を保持することができる(12、13)。角膜は移植される組織の非侵襲的な撮像を可能とする自然体窓として機能するため、眼の前房内に膵島を移植するものとする。眼の前房は免疫特権を付与されるため(14、17)、膵臓を含む様々な組織を研究することに移植部位として頻繁に使用される。ハツカネズミの島は角膜を通じた注入を通じて眼の前房内に移植される(図1A)。移植後、虹彩に移植される島は容易に監視され、角膜を通じて撮像される(図1B及び1C)。移植される島は、複数の島のみ又は島の群として移植される。移植される島の免疫組織化学の染色により、移植後においてインシュリンを含むβ細胞及びグルカゴンを含むβ細胞の比率が変わらないことと、この比率が膵臓における島の比率(図1D乃至1H)と同様であることが示され、これは初期の研究(14、16、17)に従うものである。
【0033】
ストレプトゾトシンにより糖尿病に罹患したハツカネズミにおいて、前房内への島の移植により高血糖症が逆転される。上記ハツカネズミは更にグルコース抗原投与(図1I)に対する生理学的反応を示し、眼の前房内に移植される島は機能的であることを明示する。β細胞を識別できるように、rat insulin 1 促進剤(RIP−GFP)の制御下において改良された緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する遺伝子組み換えのハツカネズミから分離される島は眼の前房内に移植される。
【0034】
2光子LSM(TPLSM)を使用することにより、GFPによりβ細胞が、100マイクロリットルのTexas Red70キロダルトン(約70キログラム/モル)(Texas Red10ミリグラム/ミリリットル)の注射により血管が同時に撮像され、移植された島により虹彩から血管が新生されることがわかった。非侵襲的なTPLSMにより、図2A及び2Bに示すように移植される島において異なる深度にて光学的区分を撮像可能であり、これにより、図2C及び2Dに示すように島移植物内のβ細胞及び血管形態の両者の3D(三次元)による復元が可能である。
【0035】
島移植物及び血管新生の運動を監視すべく、移植後3日目、7日目、14日目、及び28日目における同じRIP−GFP島が繰り返し撮像される。3日目において、移植される島は虹彩に取り付けられ、島近傍において虹彩の血管の構造体の再構成が監視される。しかしながら、図2E乃至2Gに示すように、成長して島の周辺の領域に至る血管は殆どない。7日目において、3日目と比較して島移植物はより肉薄であるがより幅広となり、島が虹彩に更に固定され拡散されたことが示される。
【0036】
図2H乃至2Jに示すように島において血管の数は更に増加し、毛細血管のループが虹彩中央部領域の穿刺を開始する。7日目において虹彩構造体に生じた付加的な変化は微々たるものであるが、血管は成長を続け、図2K乃至2Mに示すように、14日目において、これらは虹彩移植物にわたって微小血管網を形成する。14日目及び28日目の間に血管網は密度がより高くなり、図2N乃至2Pに示すように、28日目において、血管網は非常に曲がりくねり、一様な寸法を有する毛細血管となる。
【0037】
図2Qに示すように、移植される島の血管密度は血管再生にわたって連続して上昇する。図2Rに示すように、島移植血管の径は、28日目において8.11プラスマイナス0.53マイクロメートルであり(n=5)、これは膵臓の島内(18)及びその他の移植部位(19)の血管と同様である。図5に示すように、移植後2ヶ月目及び4ヶ月目における島移植物の撮像により、β細胞群及び移植物血管の形態は28日目のものと同様であることが示される。即ち、非侵襲的なTPLSMにより、眼の前房に移植される島内のβ細胞及び血管の長期にわたって体内撮像が可能となる。
【0038】
体内における細胞レベルのシグナル伝達の評価により、パラクリン、ホルモン信号、及びニューロン信号からの規制作用及び修飾作用を含む生理学及び病態生理学の両者の状況下における島細胞の調査が可能となる。体内にて細胞機能を監視すべく、眼の前房における島内の単細胞レベルにおける細胞質の遊離カルシウム濃度([Ca2+]i)の変化が研究される。[Ca2+]iの変化は島細胞におけるキーとなる細胞内シグナルであり、β細胞機能2を報告する。マイクロピペットにより眼の前房を潅流することにより、島にCa2+を示すFluo−4及びFura−Redが装填される。上記2つの染料を使用することにより、撮像において、LSMによる[Ca2+]iの変化のレシオメトリックな測定と、島の運動の補正が同時に可能となる。図3H及び3Iに示すようにFluo−4及びFura−Redにより、島の外側層は一様に標識される。
【0039】
細胞を刺激すべく、スルホニル尿素化合物グリベンクラミドが経皮的に注入される。これにより、血液のグルコースレベルが下降する。即ち、上記注入により効果が得られたことを示す(データは図示しない)。図3Fにおいて、Fluo−4対Fura−Redの蛍光の比率における顕著な上昇によって示されるように、島細胞の[Ca2+]iの上昇は、ハツカネズミへのグリベンクラミドの尾静脈注射の後30乃至40秒内に開始し、記録中にわたって高い状態が保持される。図3Gに示すように、島の別の領域において[Ca2+]iが同時に上昇することは、刺激後に島内のβ細胞が同期して反応することを反映する20。上記は眼の前房内に移植される島を使用して体内における島細胞機能の撮像が可能であることを示す。
【0040】
β細胞死は1型糖尿病の特徴であり(21)、2型糖尿病の病状に関係する(22)。今日まで体内において連続してβ細胞を監視する方法は開示されていない。アネキシンVが実験条件及び臨床条件の両者の下において細胞死を報告することに使用され(23)、全身にわたる投与後のβ細胞自然死のマーカとして確認されてきた(24)。β細胞死の非侵襲的な撮像の可能性を調査すべく、RIP−GFP島を眼の前房内に移植し、移植及び血管再生が完了した後に、アネキシンV共役アロフィコシアニン(APC)を経皮的に注入した後の細胞死が監視される。
【0041】
共焦点LSMを使用して、GFP−及びアネキシンV−APCの蛍光が反射光と同時に撮像され、後者により内分泌細胞の詳細な構造体のデータが得られる(25)。通常の血液グルコースレベルを有するハツカネズミにおいて撮像される移植されるRIP−GFP島により、図4A及び4Bに通常の形態が示され、図4C及び4DにアネキシンV−APCの標識がないことが示される。アネキシンV−APCは10のRIP−GFP移植物のうち1つの少数の細胞を標識するのみであり(データは図示しない)、このことは眼の前房に移植される島における細胞死の発生が少ないことを示す。アロキサン(75ミリグラム/キログラム)を経皮的に注入することにより、RIP−GFP島を移植されたハツカネズミにおいてβ細胞死が誘発され、ブドウ糖輸送担体2によりβ細胞は特徴的な糖尿病誘発化合物を取り込む(26)。この処置により、ハツカネズミは24時間後に25.0プラスマイナス1.3ミリモル/リットル(n=6)の血液グルコース濃度の高血糖状態となる。この時点において、図4E及び4Fに示すように、GFP蛍光の損失、及び島移植物の反映における構造体の変化が監視され、即ちβ細胞の損失が示される。図4G及び4Hに示すように、細胞死の誘発の24時間後にアネキシンV−APC(n=4)を投与することにより、島移植物を強力に標識することができる。
高拡大図により、殆どのアネキシンV−APC標識はGFP蛍光を含まない移植領域にて視認されることがわかる。図4I及び4Lに示すように、いくつかのアネキシンV−APC蛍光はGFP蛍光β細胞の表面にて視認され、このことは自然死の細胞を標識することを示す。即ち、眼の前房に移植される島の体内状況下においてβ細胞死は非侵襲的に、且つ長期にわたって撮像可能である。
(まとめ)
体内において生理学及び病態生理学の両者における島の細胞の非侵襲的な研究のための新規な基盤が開示された。島細胞の調査のために眼の前房を体内モデルとして使用することにより、形態、血管新生、神経支配、細胞死、及び細胞シグナル伝達の連続した監視が可能となる。体内における島の細胞のシグナル伝達を研究するためのこの基盤により、ホルモン系及びニューロン系の他、内分泌細胞や血管細胞の自己分泌シグナル又はパラクリンシグナルからの調整入力の効果を明瞭にすることが補助される。更に、上記は健康状態又は糖尿病状態下におけるβ細胞の機能及び生存の非侵襲的な体内研究のための新規なアプローチとして機能する。上記基盤は膵臓β細胞の信号伝達の研究に限定されるものではなく、体内の多数の様々な細胞タイプ及び器官組織の調査に拡張可能であることに注目すべきである。従って、眼の前房は体内条件下における細胞レベルにて複雑なシグナル伝達ネットワークの統合を初めて明瞭に示す多目的自然体窓として使用される。
(例1の参照文献)
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この例において、単細胞解像度における体内の非侵襲的な長期にわたる細胞生物学研究のための段階的な手順が開示される。ここで、自然体窓として機能する角膜が効果的である。この目的において、部位の組織は眼の前房内に移植され、細胞の生物学的パラメータは角膜を通じてLSMにより測定される。眼の前房は様々な組織の研究のために移植部位として頻繁に使用されてきた3−7。本来眼の前房は免疫特権を付与された部位としての特徴により、移植部位として選択されたが8、殆どの研究において前房は容易にアクセス可能であり、角膜により移植される組織の巨視的観察が可能となるため、同系の移植設定に使用された。付加的に、前房の基部を形成する虹彩は体内において最も高密度な血管及び自律神経を有する器官の1つである。従って、移植物の迅速な神経支配9及び血管新生10が可能である。今日まで前房を移植部位として使用する研究は主に移植物生理学を研究するために巨視的観察5を使用してきた。上記は低解像度にて観察可能なパラメータに対する長期的な研究を制約してきた。移植物を取り払った後に、体内電気生理学7の他、組織学3、及び様々なその他の体内技術により、形態学及び細胞の機能の評価が可能となるが、これは研究の終点を設定し、長期にわたる監視を妨害する。
(材料)
(動物)
・NMRIハツカネズミ(米国Charles River Laboratories社)又は(スウェーデンScanbur社)
・Tie2−GPFハツカネズミ[STOCK Tg(TIE2GFP)287Sato/J](米国、Jackson Laboratory)
・インシュリンプロモータ(RIP−GFP)下の膵臓ベータ細胞において発現した蛍光標識を備えた遺伝子組み換え型ハツカネズミ11
(試薬)
・無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
・イソフルレン(米国Abort社又はBaxter社、イソフルレン)
・40%の酸素及び60%の窒素(スウェーデン、AGA社)
・ブプレノルフィン(米国Shering−Plugh社Temgesic)
・Viscotears(登録商標)(スイスNovartis社)
・アロキサン(米国Sigma社)
・Texas Red70キロダルトン(約70キログラム/モル)デキストラン(米国Invitrogen社)
・アネキシンV−APC(米国Invitrogen社)
・Hypnorm(登録商標)(英国VetaPharm社)
・ドルミカム(登録商標)(スイスRoche社)
・注射用滅菌水(独国Braun社)
・Fluo−4AM特別パッケージ(米国Invitrogen社)
・Fluo−Red AM特別パッケージ(米国Invitrogen社)
・プルロニック(登録商標)F−127(米国Invitrogen社)
・グリベンクラミド(米国Sigma社)
・細胞外溶液
(試薬設定)
細胞外溶液(単位:ミリモル):140NaCl、5KCl、2NaHCO3、1NaH2PO4、1.2MgCl2、2.5CaCl2、10HEPES、3グルコース(pH7.4、NaOH使用)。
(備品)
・27GX3/4インチ(約1.905cm)針(米国BD社)
・鈍い27Gカニューレ、27G針からの特注
・0.5ミリリットルのネジ付き吸引具Hamilton気密注射器ナンバー1750(米国Hamilton社)
・内径(i.d.)0.4ミリメートル、外径(o.d.)0.8ミリメートルのポリエチレンチューブ。(英国Smiths Medical社)
・内径i.d.0.2mm且つ外径o.d.0.8mmのポリエチレンチューブ
・内径i.d.0.9mm且つ外径o.d.1.2mmのポリエチレンチューブ
・内径i.d.0.76mm且つ壁厚0.86mmのタイゴン(登録商標)チューブ(スイスIsmatec社)
・1、5、及び10ミリリットルのプラスチック製注射器(米国BD社)
・50ミリリットルの試薬チューブ(独国Eppendorf社)
・400麻酔ユニット(マルタ共和国Univentor社)
・Exmire Microsyringe MS−GLLX00 10ミリリットル(米国Hamilton社)
・立体顕微鏡MZ FLIII(独国Leica社)
・頭部保持アダプタ(日本国Narishige社SG−4N)
・UST−2中実自在継ぎ手(日本国Narishige社)
・Dumontナンバー5鉗子(米国Fine Science Tools)
・特注加熱パッド
・TCS−PS2−AOBS共焦点スキャナを備えたDMLFSA正立顕微鏡(独国Leica社)
・チタンTi:サファイアレーザTsunami(米国Spectra−Physics社)・2.5x及び5xの対物レンズ(独国Leica社)
・長距離浸水レンズ(Leica社HXC APO 10x0.3W、20x0.5W、40x0.8W)
・極微操作装置5171(2)(独国Eppendorf社)
・(2)自在毛細血管保持具(独国Eppendorf社)
・毛細血管把持ヘッド1(2)(独国Eppendorf社)
・フィラメントを備えない薄壁ホウケイ酸ガラス毛細血管TW120−4(米国WPI社)
・DMZ自在張引具(独国Zeitz Instrumente社)
・802注射器ポンプ(マルタ共和国Univentor社)
・Leica共焦点ソフトウェア(バージョン2.61)(独国Leica社)
・Volocity(登録商標)(英国Improvision社)
・Matlab(米国The MathWorks社)
・ウェーブレットフィルタアルゴリズム14(スウェーデン、ストックホルム)
(備品セットアップ)
(共焦点及び2光子セットアップ)
LSMのために、アルゴンを備えたLeica社TCS−SP2−AOBS共焦点レーザ走査、及びLeica社DMLFSA顕微鏡に連結されたHeNeレーザが使用される。2光子励起はTkSapphireレーザ(米国Spectra−Physics社Tsunami)を使用して82MHzまで、且つ100fsまでの励起が実施される。
(頭部保持アダプタ)
外科手術及び撮像をすべくハツカネズミの頭部を固定するために、日本国Narishige社製造による頭部保持アダプタSG−4N−Sが使用される。使用される麻酔薬の種類に応じて、頭部保持部はガスマスク(GM−4−S)又はノーズピースを備える。頭部保持部は顕微鏡の特注ステージに適合する金属板に固定される。金属板は加熱パッドにより覆われる。体温は加熱パッドの温度を調整する直腸プローブを通じて調整される。
(眼球固定器)
眼瞼を収縮させ、眼を付加的に固定すべく特注の支持装置が使用される。ナンバー5Dumont鉗子を小型の金属バーに固定子、UST−2中実自在継ぎ手に金属バーを挟持する。目の高さと同じ位置に合わせた頭部保持部と同じ位置にて自在継ぎ手を金属板に固定するため、鉗子の先端部を眼に至らしめることができる。ポリウレタンチューブの一部により鉗子の先端部を覆い、先端部間にループを形成する。鉗子の前方部分にネジを固定するため、鉗子の先端部間の距離を調整することができる。
(前房潅流)
流出部:内径0.9mm且つ外径1.2mmからなる35cmまでのポリエチレンチューブの一端を毛細血管保持部に連結し、ピストンを備えない10ミリリットルの注射器(即ち、開放されたタンク)にチューブの他端を連結する。
流入部:内径0.76mm且つ壁厚0.86mmからなる35cmまでのタイゴン(登録商標)チューブの一端を毛細血管保持部に連結し、1ミリリットルの注射器にチューブの他端を連結する。
(撮像工程)
共焦点LSM及びTPLSMによりキャプチャされた画像のノイズを取り払うべくウェーブレットフィルタ15が使用される。分析及び画像表示のために例えばVolocity及びLeica共焦点ソフトウェア等の処理ソフトウェアを使用する。
(非制限的例における処理)
(膵島の眼の前房への移植)
1.上述したようにハツカネズミの膵島を分離する16,17。
【0042】
研究パラメータに応じて任意により膵島を培養する。
2.内径0.4mmを有する約10cmのポリエチレンチューブを備えた27G針を0.5ミリリットルのHamilton注射器に連結し、チューブの他端に鈍い27Gカニューレを挿入する。
3.30乃至40の小島を培地から殺菌PBSを備えた皿に移し、小島を皿の中央部にできるだけ密集させて位置させる。
4.小島を鈍い27Gカニューレ及び連結されたポリエチレンチューブ内に吸引する。小島は前房内に容易に注入できるように、好適に最小限の容積(例えば、20マイクロリットル以下)にて吸引される。
【0043】
小島をあまりに大きな容積にて吸引すると、眼を不要に高い眼圧に晒すことにより注入工程において困難を伴い、最終的にカニューレを取り払った後に小島が前房から逆流し、流出してしまう。
5.選択肢(A)又は(B)に従って眼の前房に膵島を移植する。
(A)頭部保持部を使用した膵島の移植
i.1つの脱脂綿を50ミリリットルの試薬チューブ内に位置させ、約1ミリリットルのイソフルレンを脱脂綿に滴下する。試薬チューブ内にて数秒間ハツカネズミを保持することにより、ハツカネズミを気絶させる。
ii.立体顕微鏡下の頭部保持部にハツカネズミを位置させ、移植のために選択される眼のある頭部を上方に配向させて固定する。
iii.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0044】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。
麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
iv.ブプレノルフィン(0.05ミリグラム/キログラム)を皮下注射し、手術後の痛みを低減する。
v.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置する。
【0045】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。
vi.容易に取り扱えるように、27G針を1ミリリットル注射器に連結する。虹彩への損傷及び出血を避けるように留意して、27G針を使用して強膜近傍の角膜を穿刺する。vii.針により形成された孔を通じて眼の前房内に鈍いカニューレをそっと挿入する。小島を前房内に徐々に注入する。
【0046】
注入後、カニューレを注意深く退出させる。
viii.覚醒するに先立って付加的な10乃至15分間ハツカネズミを頭部保持部に残しておく。
【0047】
頭部保持部からハツカネズミを取り払い、イソフルレンから離間させ、覚醒時にわたってハツカネズミを監視する。
ix.乾燥を防止すべく眼にViscotearsを滴下する。
体内撮像まで小休止する。時間は研究パラメータにより決定される。
(B)頭部保持部を使用しない膵島の移植
i.5ミリリートルノプラスチック製注射器からピストンを取り払い、底部から1cmまでの注射器の部分を切断することにより小型のガスマスクを形成する。麻酔ポンプのチューブを針接続部に連結させる。
ii.脱脂綿及び約1ミリリットルのイソフルレンを備えた50ミリリットルの試薬チューブにハツカネズミを数秒間保持することにより、ハツカネズミを気絶させる。
iii.移植するために選択された眼を有するハツカネズミを立体顕微鏡下の加熱パッドに上方に配向されるように載置する。ハツカネズミの鼻を準備したガスマスク内に位置させる。
iv.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0048】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
v.ブプレノルフィン(0.05ミリグラム/キログラム)を皮下注射し、手術後の痛みを低減する。
vi.眼の周囲の皮膚を収縮させ、眼の強膜角膜連結部を視認できるように露出させ、ハツカネズミの呼吸や血液循環を妨害することなく頭部の位置をそっと固定する。
vii.上記(A)をviからixまで続ける。
(眼の前房に移植される小島の撮像)
6.工程1乃至5により小島を移植する。研究の目的に応じてドナーとなるハツカネズミ及び受容するハツカネズミを選択する。
7.イソフルレンに短期間暴露することにより受容するハツカネズミを気絶させる。
8.ハツカネズミを頭部保持部に位置させ、移植される小島を含む眼を有する頭部を上方に配向されるように固定する。
9.40%の酸素及び60%の窒素中にて2乃至2.5%のイソフルレンを使用してハツカネズミを麻酔する。
【0049】
イソフルレンレベルは注意深く調整され、確実に麻酔を好適な状態にする。麻酔の領域が吸引され、操作者を保護する。
10.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置する。
【0050】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。
11.共焦点及び2光子LSMを具備した正立顕微鏡下にハツカネズミと共に頭部保持部を載置する。
12.概観を得るべく低倍率の対物レンズ(2.5及び5倍)を使用する。高解像度を得るべくLSMは濾過した生理食塩水やViscotearsをレンズ及び角膜の間の浸液として使用する長い作業距離を有する浸水対物レンズ(10、20、及び40倍)を使用する。
【0051】
視認するために最小限必要なレーザ出力及び走査時間、例えば75ミリワット及び800ヘルツ以上を使用して、画像の損傷、破れを防止する。
13.部位の生物学的パラメータを撮像する。
(A)移植物形態の撮像
i.細胞特有の形態を視認すべく、ベータ細胞に蛍光タンパク質を発現する遺伝子組み換えのハツカネズミの島(例、RIP−GFP)が移植に使用される。GFP蛍光を488ナノメートルのレーザにて励起し、495乃至530ナノメートルの範囲の発光を検知する。島形態も反射像の検知により撮像可能である。レーザ(例、633ナノメートル)を選択し、AOBS制御を設定し、反射像検知を最適化する。プラスマイナス4ナノメートルのレーザ波長の範囲に発光を集束する。
(B)虹彩及び移植される島の血管新生の撮像
内皮細胞又は血管ルーメンをのいずれかを撮像することにより血管新生を視認化する。i.内皮細胞を撮像すべく、Tie2−GPFハツカネズミを移植用に使用する。
ii.GFP蛍光を488ナノメートルのレーザにて励起し、495乃至530ナノメートルの範囲の発光を検知する。
iii.血管ルーメンの撮像のために、蛍光標識された10ミリグラム/ミリリットルのデキストラン(70キロダルトン)(約70キログラム/モル)を0.1ミリリットル尾静脈注射する。
iv.蛍光標識されたデキストランの注射後、選択されたデキストランに好適な設定を使用して移植される島を撮像する。
【0052】
RIP−GFPハツカネズミのベータ細胞及び血管移植島を同時に撮像すべくTexas−Red共役デキストラン(70キロダルトン)(約70キログラム/モル)を注射する。Texas Red及びGFPは2光子レーザにより890ナノメートルにて励起され、発光はダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して非走査(nondescanned)検知器に集束される。
(C)ベータ細胞死の撮像
i.アロキサン(75ミリグラム/キログラム(体重))の経皮的注入により移植された島においてベータ細胞死を誘発する。
【0053】
アロキサンがベータ細胞死を誘発するまで24時間待機する。
ii.ハツカネズミが高血糖状態になったことを確認すべくアロキサンを投与して24時間後に血液グルコースレベルを測定する。
iii.アネキシンV−APCを0.1ミリリットル尾静脈注射する。
【0054】
アネキシンV−APCが自然死した細胞及び死亡させた細胞を標識するまで4乃至6時間待機する。
iv.APC蛍光に好適な設定を使用してアネキシンV−APC投与後4乃至6時間移植された島におけるベータ細胞死を撮像する。APCを633ナノメートルにて励起し、発光を645乃至680ナノメートルの範囲にて集束する。
(D)眼の前房の潅流によりCa2+標識を移植物に装填した後の細胞質の遊離Ca2+濃度の撮像
前房潅流は参照文献18から変形される。
i.ピペットを30乃至40マイクロメートルの先端径にて破断する。先端部を35°斜角をなして最終的な径を70乃至90マイクロメートルとする。流出側のピペットは流入側のピペット(70マイクロメートルまで)より僅かに大きい(90マイクロメートルまで)。
ii.注射器、チューブ、及び毛細血管保持具を細胞外溶液にて満たし、ピペットを毛細血管保持具の毛細血管グリップの頭部に載置する。
iii.ヒプノルム/滅菌水/ドルミカムの混合物(1:2:1)を100マイクロリットル/10グラム(体重)にて腹腔内注射によりハツカネズミを麻酔する。麻酔は1、2分に行う。30分後及び60分後にヒプノルム/滅菌水の混合物(1:3)を50マイクロリットル/10グラム(体重)にて注射し麻酔時間を延長する。必要に応じて90分後に最初のヒプノルム/滅菌水/ドルミカムの混合物(1:2:1)を50マイクロリットル/10グラム(体重)にて注射することにより麻酔時間を更に延長する。
【0055】
島細胞の機能の研究のために麻酔を選択する場合に、いくつかの化合物は血液のグルコースレベル及びインシュリン分泌に影響を付与すると報告されているため留意する必要がある19、20。イソフルレンは島細胞に対する直接的な機構によりグルコースの刺激によるインシュリン解放を防止するため、機能の研究には不適である21。ヒプノルムやドルミカムの混合物は細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化の計測を妨害しないようである。iv.ハツカネズミを頭部保持部に載置し、移植される小島を含む眼を有する頭部を上方に配向されるように固定する。
v.眼瞼を注意深く引き戻し、眼球固定器のポリエチレンチューブのループを強膜角膜連結部下にそっと載置し、保持部及びハツカネズミを正立顕微鏡下に載置する。
【0056】
固定鉗子を載置する場合に眼球内における血液循環を中断しないように留意する。vi.眼の上方21cmまでの高さに流出開放タンクを保持し、連続して15mmHg(約2kPa)の眼圧に確実に保持する。極微操作装置に流出側の毛細血管保持具を載置する。
vii.2.5倍の対物レンズを使用し、眼全体を監視すべく流出ピペットを極微操作装置と共に前房内に挿入する。
【0057】
浅い角度にて角膜を通じて迅速にピペットを移動させることによって前房を貫通する。角膜を不要にひっかいたり、虹彩に損傷を付与しないように留意する。
viii.Fluo−4及びFura−Redの混合物(1:1、各500マイクロメートル)を130マイクロリットルまで流入毛細血管内に吸引し毛細血管保持具を極微操作装置に固定する。染料を含まない洗浄のために十分な細胞外溶液が注射器内に含まれることを確認する。
【0058】
流入の1ミリリットルの注射器を注射器ポンプに位置させる。
ix.流入ピペットを流出ピペットに対向する前房内に挿入する。
工程vii.と同様に角膜を穿刺する。
x.最初に房水を潅流液に迅速に(10マイクロリットルまでを30秒以内)交換する。潅流の機能性を監視する。
xi.毎分3マイクロリットルの速度にて40分間、眼の前房を連続して潅流する。
xii.装填後、前房を高い速度にて(毎分10マイクロリットルまで)潅流することにより前房内の染料を洗い流す。
【0059】
潅流工程において、潅流及び眼を制御する。流出の詰まりにより眼が腫れないように注意する。
xiii.染料の洗浄後、潅流を停止する。ピペットは取り払わない。
xiv.細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化を撮像すべく、より拡大率の高い浸水対物レンズ(10、20、或いは40倍)に交換し、Viscotearsを浸液として使用する。
xv.Fluo−4及びFura−Redを同時に撮像することにより、細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化のラシオメトリック計測が可能となる。Fluo−4及びFura−Redは488ナノメートルにて励起され、発光はFluo−4が495乃至535ナノメートル、Fura−Redが600乃至700ナノメートルに集束する。
【0060】
視認するために最小限必要なレーザ出力及び走査時間、例えば75ミリワット及び800ヘルツ以上を使用して、画像の損傷、破れを防止する。
xvi.部位の細胞内のFluo−4及びFura−Red蛍光を一連の時点においてデータの取得を開始する。
xvii.刺激を受けない蛍光レベルを基準線とし、グリベンクラミド(1ミリグラム/キログラム)を尾静脈注射することによる刺激により全身にわたってインシュリンを解放する。島移植物内のベータ細胞における細胞質の遊離Ca2+の濃度の変化は注入後数秒間のうちに監視する必要がある。
xviii.撮像後にピペットを眼から注意深く取り払う。
xix.術後の痛みを低減すべくハツカネズミにブプレノルフィン(0.05ミリリットル/キログラム)を皮下注射する。
xx.ハツカネズミを覚醒するまで温暖な環境(30℃まで)に載置する。ヒプノルム又はドルミカム麻酔の後、数時間要する。
(時間的調節)
島の分離:4時間まで
前房への島の移植(工程2乃至5):25分まで(ハツカネズミの場合)
移植物形態の撮像(工程13A):1時間まで(ハツカネズミの場合)移植物の血管新生の撮像(工程13B、i及びii、又はiii及びiv):1時間まで(ハツカネズミの場合)
ベータ細胞死の撮像(工程13C、i及びii):24時間まで、(工程13Ciii及びiv):5時間まで
眼の前房を潅流することにより移植物にCa2+標識を装填した後の細胞質の遊離Ca2+濃度の撮像(工程13Di):1.5時間まで(4乃至6のピペットの場合)、(工程13Dii乃至xx):2時間まで(ハツカネズミの場合)
(予期される結果)
ここで開示される基盤により、部位の組織にアクセスすべく侵襲的な外科手術を行うことなく体内における複数の生物学的パラメータの長期にわたる評価が可能となる。眼の前房への膵臓ランゲルハンス島の移植後に、上記手順により反射像や蛍光によって容易に島移植物の形態が検知可能である。撮像反射像による膵島移植物の形態学的特徴付け及びGFPが実施され、ここでインシュリンプロモータ(緑色のベータ細胞)下においてGFPを発現するハツカネズミの島はTie2プロモータ(緑色の内皮細胞)下においてGFPを発現するハツカネズミに移植される。GFPは35%のレーザ出力にて488ナノメートルにて励起され、発光は495乃至530ナノメートルの範囲にて測定される。反射は35%のレーザ出力にて633ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は632乃至639ナノメートルの範囲にて測定される。
【0061】
更に、血管新生及び細胞死は蛍光染料の全身にわたる注入により、長期にわたって追跡可能である。血管は70キロダルトン(約70キログラム/モル)のTexas Red標識されたデキストランを経皮的に注入することにより視認可能である。GFP及びTexas Redは2光子レーザにより最小限必要なレーザ出力にて890ナノメートルにて励起され、発光はダイクロイックミラー(RSP560)及び発光フィルタ(BP525/50及びBP640/20)を使用して非走査(nondescanned)検知器に集束される。細胞死を撮像すべく、ベータ細胞死がアロキサンの経皮的注入により誘発される。細胞自然死及び細胞死はアネキシンV−APCを経皮的に注入することにより視認可能である。反射は543ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は35%のレーザ出力にて539乃至547ナノメートルの範囲にて測定される。GFPは488ナノメートルにて励起される、発光は35%のレーザ出力にて495乃至530ナノメートルの範囲にて測定される。APCは633ナノメートルにて励起され、発光の集束は645乃至680ナノメートルの範囲にて75%のレーザ出力にて行われる。
【0062】
付加的に、島細胞は前房を潅流することによりCa2+標識を繰り返し装填され、全身にわたる細胞質の遊離Ca2+の濃度の誘発された変化を測定する。カルシウム標識を装填すべく、前房をFluo−4及びFura−Redが潅流する。Fluo−4及びFura−Redは25%のレーザ出力にて488ナノメートルにて励起され、発光はFluo−4が495乃至535ナノメートルの範囲、Fura−Redが600乃至700ナノメートルの範囲にて測定される。反射は543ナノメートルにて励起されることにより反射像をなし、発光は15%のレーザ出力にて539乃至547ナノメートルの範囲にて測定される。
【0063】
様々な遺伝子組み換え型ハツカネズミ及び標識の使用に上記手順を拡張することにより、多数の付加的な生物学的パラメータの監視が可能となる。従って、上記基盤により、生理学的状況の他病態生理学的状況下における複雑なシステムの細胞生物学の調査が補助される。
(例2の参照文献)
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(トラブルシューティング)
【0064】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する工程を含むことを特徴とする1型糖尿病の患者を処置する方法。
【請求項1】
患者のインシュリン生成を促進すべく1型糖尿病患者の眼に効果が得られる量のインシュリン生成細胞を移植する工程を含むことを特徴とする1型糖尿病の患者を処置する方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図2R】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図2P】
【図2Q】
【図2R】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【公開番号】特開2011−256202(P2011−256202A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191839(P2011−191839)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2010−522257(P2010−522257)の分割
【原出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(510054935)バイオクライン アーベー (3)
【氏名又は名称原語表記】BIOCRINE AB
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2010−522257(P2010−522257)の分割
【原出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(510054935)バイオクライン アーベー (3)
【氏名又は名称原語表記】BIOCRINE AB
【Fターム(参考)】
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