説明

1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置

【課題】 船舶に据え付ける部品点数を減らして据え付け作業性を向上させ得る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 機関3の駆動軸7にカップリング8によって結合される入力軸9と、左右プロペラ軸5,6の各々とカップリング10,11によって結合される左右一対の出力軸12,13と、入力軸9の動力を出力軸12,13の各々にクラッチ機構14〜17を介して伝えるギアトレーン20〜30であって、該クラッチ機構の切り換えによって前記出力軸を正回転又は逆回転させるギアトレーン20〜30と、入力軸9、出力軸12,13、ギアトレーン20〜30、及び、クラッチ機構14〜17を包括して収容するギアケース4と、を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関(エンジン)の駆動軸の左右に一対のプロペラ軸を備える1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置としては、機関の動力を左右のプロペラ軸に伝達する方式として、ベベルギアを用いて左右に分配するもの(例えば、特許文献1)や、円筒(平)ギアを用いて左右に分配するもの(例えば、特許文献2)が知られている。
【特許文献1】米国特許公開第2006/89062号明細書
【特許文献2】実開昭57−70999号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の動力伝達装置では、いずれも、機関の直後に左右への動力分配用のギア機構を備え、さらにその動力伝達下流位置にそれぞれのプロペラ軸を正逆回転させるための回転方向切り換え機構を備えている。そのため、部品点数が増え、それぞれの機構を個別に船舶に据え付けていかねばならないので作業性が悪く、コスト高となるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題を解消し得る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の手段として、本発明に係る1機2軸式船舶のためのプロペラ動力伝達装置は、ギアケースと、前記ギアケース内に設けた軸受け部に支持されるとともに、前記機関の駆動軸にカップリングによって結合される入力軸と、前記ギアケース内に設けた軸受け部に支持されるとともに、前記左右プロペラ軸の各々とカップリングによって結合される左右一対の出力軸と、前記ギアケース内に収容され、前記入力軸の動力を前記一対の出力軸の各々にクラッチ機構を介して伝達するギアトレーンと、を有し、前記クラッチ機構は、出力軸が、正転又は逆転するように前記ギアトレーンを切り換える正逆転クラッチ機構を含むことを特徴とする。
【0006】
前記第1の手段において、第2の手段として、前記ギアトレーンを複数の円筒歯車と2つ以下の円錐ギアのみによって構成し、前記円錐ギアによって、前記機関の駆動軸の軸線に対して左右プロペラ軸の軸線を傾斜させても良い。
【0007】
また、前記第1の手段において、第3の手段として、前記ギアトレーンが、前記入力軸上に固定された駆動ベベルギアと、前記入力軸と直交する方向に沿って延びる中間軸上に回転自在に支持され、且つ、前記駆動ベベルギアと噛み合う一対の従動ベベルギアと、前記一対の従動ベベルギアの何れか一方を選択的に前記中間軸に連結して該中間軸を正回転又は逆回転させる前記正逆転クラッチ機構と、前記出力軸の各々と、該出力軸と交差する前記中間軸の両端とを駆動的に連結するベベルギア組と、を備えても良い。
【0008】
前記第3の手段において、第4の手段として、前記クラッチ機構は、前記中間軸に設けられ、前記出力軸の各々への動力を伝達又は遮断する一対の動力伝達クラッチを更に含む。
【0009】
前記第4の手段において、第5の手段として、前記一対の動力伝達クラッチの各々の従動側に、前記中間軸を制動可能なブレーキを備えていても良い。
【0010】
前記第4の手段において、第6の手段として、前記中間軸は、第1中間軸、第2中間軸、及び、第3中間軸を有し、前記第1中間軸が、前記駆動ベベルギアと噛み合う一対の従動ベベルギアが回転自在に支持され且つ従動ベベルギアの何れか一方を選択的に該第1中間軸に連結して該第1中間軸を正回転又は逆回転させる前記正逆転クラッチ機構を備え、前記第2中間軸及び第3中間軸が、前記出力軸の各々と駆動的に連結するベベルギア組を備え、前記第1中間軸と、前記第2中間軸及び第3中間軸との間が前記動力伝達クラッチを内在するギアトレーンを介して連結され、前記クラッチ機構は、前記第2中間軸と第3中間軸との突き合わせ部に、前記一対の動力伝達クラッチの何れか一方が動力遮断状態にあるときにのみ作動し得る回転方向反転クラッチ機構を更に含むこととしても良い。
【0011】
前記第1の手段において、第7の手段として、前記ギアトレーンが2以上の変速ギア列を含み、各変速ギア列は駆動変速ギアと従動変速ギアとを有し、前記クラッチ機構は、前記変速ギア列の各々の駆動変速ギアから従動変速ギアへ、動力を伝達又は遮断する変速用クラッチ機構を更に含むこととしても良い。
【0012】
前記第7の手段において、第8の手段として、前記各駆動変速ギアは前記入力軸上に設けられ、前記各従動変速ギアは前記入力軸と平行に支持された回転軸上に設けられていても良い。
【0013】
前記第1の手段において、第9の手段として、前記正逆転クラッチ機構が油圧クラッチによって構成され、これらの油圧クラッチへの作動油の供給を制御する電磁弁と、機関の出力制御装置とを、連係させてリモートコントロールする一本の操縦レバーを有することとしても良い。
【0014】
前記第9の手段において、第10の手段として、前記変速用クラッチ機構が油圧クラッチによって構成され、この油圧クラッチへの作動油の供給を制御する電磁弁の作動・非作動を切り替えるスイッチを更に有することとしても良い。
【0015】
前記第7の手段において、第11の手段として、前記ギアトレーンは、入力軸の動力を、左右の出力軸に分岐させて伝えるための分岐ギア列を含み、前記変速用クラッチ機構は、前記ギアトレーンの前記分岐ギア列より入力軸側に組み込まれ、前記正逆転クラッチ機構は、前記ギアトレーンの前記分岐ギア列より出力軸側に組み込まれていることとしても良い。
【0016】
前記第11の手段において、第12の手段として、前記正逆転クラッチ機構及び前記変速用クラッチ機構の各々が油圧クラッチによって構成され、これらの油圧クラッチを支持する軸は、作動油供給油源が接続されるポートを有するオイルシールケースを一端に備えるとともに作動油を油圧クラッチに供給する内部油路が形成され、前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸が、同一軸線上に配置されるとともに各々のオイルシールケースが対向配置され、前記前記変速用クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている軸は、該軸の軸線が前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸の軸線方向に対して直角方向に沿う方向に向けられ、且つ、一端に設けられたオイルシールケースが前記前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸のオイルシールケースの近傍に配置されていることとしても良い。
【0017】
前記第1の手段において、第13の手段として、前記正逆転クラッチ機構は、左右一対の前記出力軸を、個別に正逆回転させるクラッチ機構としても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プロペラ軸の回転方向を反転させるクラッチを、左右のプロペラ軸に動力を分配する機構に組み込んだので、部品点数を減らし、据付作業性を向上させ、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第1実施形態について、以下に図1〜7を参照して説明する。なお、全図及び全実施形態を通し、類似構成部分に同数字を付した。
【0020】
図1は1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置1を搭載した船舶2を模式的に示す平面図であり、図2はその側面図である。機関3の前方に設置されたギアケース4の左右から一対のプロペラ軸5、6が突き出しており、さらに、プロペラ軸5、6の先は船外に突き出している。図1,2に一点鎖線で示すように、機関3の後方にギアケース4を配置する場合もある。
【0021】
図3は、図1,図2のIII−III断面図であり、図4は、図3のIV−IV線に沿う断面を展開して模式的に示す断面図であり、図5は、図3のV−V線に沿う断面を展開して断面図である。
【0022】
プロペラ動力伝達装置1は、機関3の駆動軸7に弾性継手でなるカップリング8によって結合される入力軸9と、左右プロペラ軸5、6の各々とカップリング10、11によって結合される左右一対の出力軸12、13と、入力軸9の動力を出力軸12、13の各々にクラッチ機構14、15、16、17を介して伝え、且つ、正逆転クラッチ機構14、16;15、17の切り換えによって出力軸12、13を正転又は逆転させるギアトレーン20〜30と、入力軸9、出力軸12、13、ギアトレーン20〜30、及び、正逆転クラッチ機構14、16;15、17を包括して収容するギアケース4と、を備えている。
【0023】
入力軸9は、ギアケース4内に取り付けられた軸受け部45によって回転自在に支持されている。また、出力軸12、13も、ギアケース4内に取り付けられた軸受け部46、47によって回転自在に支持されている。
【0024】
正逆転クラッチ機構14、16;15、17は、油圧クラッチを採用することができる。ギア21,22,27,28には、それぞれ、支持軸に固定されるとともに、アウタードラムが設けられ、各アウタードラムに摩擦板が植設されている。一方、ギア23,24,29,30は、それぞれ支持軸に回転自在に支持されるとともに、インナードラムが設けられ、各インナードラムに前記アウタードラムの摩擦係合し得るプレッシャープレートが植設されている。これらの摩擦板とプレッシャープレートとを備える正逆転クラッチ機構14、16;15、17は、ピストン室40〜43への作動油の注入により、摩擦係合する。
【0025】
上記構成のギアトレーンにおいて、正転クラッチ14,15を接続し、逆転クラッチ16,17を遮断すれば、入力軸9の動力は、ギア20、ギア21、クラッチ14、ギア23を通じて正転出力が出力軸12に伝えられる一方、ギア20、ギア22、クラッチ15、ギア24、ギア26を通じて正転出力が出力軸13に伝えられる。正転クラッチ14,15を遮断し、逆転クラッチ16,17を接続すれば、入力軸9の動力は、ギア20,ギア21,ギア27,クラッチ16,ギア29,ギア25を通じて、逆転出力が出力軸12に伝えられる一方、ギア20、ギア22,ギア28、クラッチ17、ギア30、ギア26を通じて、逆転出力が出力軸13に伝えられる。
【0026】
機関3の駆動軸7に対して左右プロペラ軸5、6の軸線を傾斜させるため、図4に示すように、ギア21、22,28,27を支持している軸21a、22a、27a、28aを駆動軸7及び入力軸と平行に配置することによって、図5に示すように、ギア23・ギア25、および、ギア24・26を円錐ギアとし、その他のギアには全て円筒歯車を用いてギアトレーンを構成することができる。円錐ギア(円錐歯車)は、インボリュート歯形を有する特殊形状歯車であって、円筒歯車と噛み合わせることができる傘歯車の一種である。変更態様として、図6に示すように、入力軸9上に円錐ギア20aを1個設け、これと噛合う中間ギア50を設けてギアケース4全体を傾斜させても良い。この場合、図6に示すように、円錐ギア20a以外の歯車には全て円筒歯車を用いてギアトレーンを構成することができる。これによって、高コストでノイズの出る傘歯車を極力少なくすることができる。
【0027】
図7は、クラッチ14〜17を制御するための油圧回路図である。油溜60からフィルター61を介して油圧ポンプ62によって吸い上げられた油は、油路63から前後進切換弁64、65を介して、油路66〜69を通じて、クラッチ14〜17のピストン室40〜42に作動油として送られる。
【0028】
油路63は途中で油路70に分岐し、油路70を圧送される油は、緩嵌入弁と呼ばれる調節弁71を介し、オイルクーラー72を通り、リリーフ弁73によって調圧され、油路74を通って、潤滑油としてクラッチ14〜17に供給される。調節弁71は、クラッチ14〜17が急に接続されることによるショックを和らげるためのもので、前後進切換弁64、65を操作してクラッチ14〜17に作動油を供給し始めると、最初は設定圧の低いリリーフ弁として作用することにより作動油を油路70から逃がし、絞り71aを通じて調節弁70の背室に供給される油量が増えるにつれて油路70を徐々に絞り、所定時間経過後に閉じるようにしている。従って、この調節弁70の作用により、クラッチ14〜17は、徐々に摩擦係合力を高めるため、クラッチの噛み合いショックが緩和される。
【0029】
図示例で、前後進切換弁64,65はモノレバー77によって操作されるようになっている。モノレバー77は、出力軸12、13を共に正回転又は逆回転するように前後進切換弁64,65を切り換え操作するだけでなく、旋回半径を小さくするために、例えば、出力軸12を正転させ、出力軸13を逆転させるように、前後進切換弁64,65を操作することもできる。
【0030】
次に、本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第2実施形態について、図8〜10を参照して説明する。図8は、プロペラ動力伝達装置を搭載した船舶を模式的に示す平面図、図9はその側面図である。図10は、図4の場合と同様にして、プロペラ動力伝達装置を機関とともに模式的に示す展開断面図である。
【0031】
第2実施形態のプロペラ動力伝達装置1aは、機関3の駆動軸7に弾性継手で構成されたカップリング8によって結合される入力軸9aと、左右プロペラ軸5、6の各々とカップリング10、11によって結合される左右一対の出力軸12a、13aと、入力軸9aと直交する方向に沿って延びる中間軸80と、入力軸9a上に固定された駆動ベベルギア81と、中間軸80上に回転自在に支持され且つ駆動ベベルギア81と噛み合う一対に従動ベベルギア82、83と、従動ベベルギア82,83の何れか一方を選択的に中間軸80に連結して中間軸80を正回転又は逆回転させる正逆転クラッチ機構84と、出力軸12a、13aと交差する中間軸80の両端と出力軸12a、13aの各々とを駆動的に連結するベベルギア組85、86と、を備えている。
【0032】
さらに、中間軸80は、出力軸12a、13aの各々への動力を伝達又は遮断する一対の動力伝達クラッチ87,88を備えることができる。
【0033】
一対の動力伝達クラッチ87,88の各々の従動側に、中間軸80を制動可能なブレーキ87a、88aを備えている。ブレーキ87a、88aは、クラッチ87,88の従動側の摩擦板が植設されたインナードラムをギアケース4aに固定することによって構成することができる。
【0034】
上記構成によれば、前進又は後進する場合には、正逆転クラッチ機構84を正回転側又は逆回転側に接続し、動力伝達クラッチ87及び88を接続することにより、前進又は後進する。小旋回半径で旋回したい場合は、動力伝達クラッチ87又は88の一方のブレーキ87a、88aを作動させることにより、ブレーキのかかったプロペラが推進抵抗となり、小旋回半径の旋回を可能にする。
【0035】
次に、本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第3実施形態について、図11を参照して説明する。第2実施形態のプロペラ動力伝達装置は、出力軸12aを正回転させて出力軸13aを逆回転させることができない構成であるが、第3実施形態は、それを可能にしている。
【0036】
第3実施形態のプロペラ動力伝達装置1bは、ギアケース4b内で回転自在に支持された中間軸は、第1中間軸80a、第2中間軸80b、及び、第3中間軸80cを有している。第1中間軸80aは、駆動ベベルギア81と噛み合う一対の従動ベベルギア82a、83aを回転自在に支持し且つ従動ベベルギア82a,83aの何れか一方を選択的に第1中間軸80aに連結して第1中間軸80aを正回転又は逆回転させる正逆転クラッチ機構84aを備える。第2中間軸80b及び第3中間軸80cは、出力軸12a、13aの各々と駆動的に連結するベベルギア組85,86を備える。第1中間軸80aと、第2中間軸80b及び第3中間軸80cとの間は、動力伝達クラッチ87A、88Aを内在するギアトレーン90〜93を介して連結されている。第2中間軸80bと第3中間軸80cとの突き合わせ部に、一対の動力伝達クラッチ87A、88Aの何れか一方が動力遮断状態にあるときにのみ作動し得る回転方向反転クラッチ機構95が設けられている。
【0037】
第3実施形態において、前進又は後進する場合は、正逆転クラッチ機構84aを正回転側又は逆回転側の何れか一方に接続し、動力伝達クラッチ87A及び88Aを接続すれば良い。小旋回半径で旋回するには、正逆転クラッチ機構84aを正回転側又は逆回転側の何れか一方に接続した状態で、例えば、動力伝達クラッチ87Aのみを接続し、動力伝達クラッチ88Aを遮断して、回転方向反転クラッチ95を接続すれば、回転方向反転クラッチ95のベベルギア95a、95b、95c、第3中間軸80cに固定されたクラッチドラム95dを介して、第2中間軸80bの回転と反対方向の回転が第3中間軸80cに伝えられ、小旋回半径の旋回が可能となる。
【0038】
上記第1〜第3実施形態においては、クラッチとして油圧式湿クラッチのみ例示したが、コーンクラッチ、ドッグクラッチ等のその他のクラッチを採用することもできる。
【0039】
次に本発明に係るプロペラ動力伝達装置の第4実施形態について、図12〜17を参照して説明する。
【0040】
図12は、プロペラ動力伝達装置を搭載した船舶の全体形状を模式的に示す側面図である。上記第1〜第3実施形態と同じく、第4実施形態のプロペラ動力伝達装置も、機関3の駆動軸に対してプロペラ軸5,6が鋭角のV字状をなす、いわゆるVドライブである。
【0041】
図13は、プロペラ動力伝達装置の縦断側面図である。図14は、図13のXIV−XIV線に沿う一部断面図である。図15は、プロペラ動力伝達装置を動力伝達経路に沿って展開した断面図である。
【0042】
図13、15に示すように、入力軸9bは、ギアケース4c内に配置された軸受け部100、101によって支持されている。入力軸9bは、機関3の駆動軸(図示せず)とスプライン結合される端部がギアケース4cから突出している。
【0043】
入力軸9bには、歯数の異なる一対の小径の駆動変速ギア102と大径の駆動変速ギア103とが回転自在に支持されている。ギア102は低速用であり、ギア103は高速用である。
【0044】
入力軸9bとギア102、103との間に、入力軸9bからギア102,103への動力を伝達又は遮断する変速用クラッチ機構104が備えられている。この変速用クラッチ機構104は、公知の湿式多板の油圧クラッチであり、大減速用油圧クラッチ104aと小減速用油圧クラッチ104bとを備える。
【0045】
これらのクラッチ104a、104bは、ギア102、103の各々に形成されたインナードラム102a、103aに軸方向へは摺動自在でかつ相対回転不能に係合された複数枚の摩擦板と、入力軸9bに固定された断面H型のアウタードラム105に軸方向へは摺動自在でかつ相対回転不能に係合され且つ前記摩擦板と重なり合う複数枚の相手板と、入力軸9bの軸方向に移動可能に支持され且つ相手板と摩擦板とを離反する方向に付勢するコイルバネ106、106に抗して相手板を摩擦板に押圧する一対のピストン107、108と、を有し、入力軸9b内に形成された内部油路109、110から送られる作動油によって一対のピストン107,108の何れか一方を作動させ、油圧クラッチ104a、104bの何れか一方の摩擦板と相手板とを係合させる。すなわち、一方のピストン107を作動させれば入力軸9bと一方の駆動変速ギア102とが駆動連結され、他方のピストン108を作動させれば、入力軸9bと他方の駆動変速ギア103とが駆動連結される。
【0046】
小径の駆動変速ギア102及び大径の駆動変速ギア103の各々と噛み合う変速従動ギア111、112が、入力軸9bと並列配置され且つ軸受け113、114によって回転自在に支持された軸115に、一体的に形成されている。
【0047】
入力軸9bの一端は、作動油供給管116が接続されるポート(図示せず)を有するオイルシールケース117によってシールされている。オイルシールケース117内において、入力軸9bの一端には、複数の環状溝が並設され、これらの環状溝の幾つかと、入力軸9b内を延びる内部油路109、110の一端とが連通し、内部油路109、110の他端は油圧クラッチ104a、104bのピストン107、108のピストン室に開通している。内部油路109、110と連通している前記環状溝に、オイルシールケース117の前記ポートが開通している。なお、図示都合上、オイルシールケース117に一本の作動油供給管116だけが接続されているが、実際には、作動油及び潤滑油を供給するために入力軸9b内の形成される内部油路の本数に応じてオイルシールケース117のポートが形成され、各ポートに作動油供給管及び潤滑油供給管(図示せず)が接続されている。
【0048】
上記のように駆動変速ギア102と従動変速ギア111とによって大減速側変速ギア列が構成され、駆動変速ギア103と従動変速ギア112とによって小減速側変速ギア列が構成されている。
【0049】
従動変速ギア111、112が形成されている軸115の一端にベベルギア118が固定されている。このベベルギア118は、左右一対のベベルギア119、120と噛み合っている。ベベルギア118、119、120は、入力軸9bの動力を左右の出力軸12b、13bに分岐させて伝えるための分岐ギア列を構成する。ベベルギア119、120を支持している軸121、122は、入力軸9bの軸線方向に直交する方向に沿って配置されている。
【0050】
軸121、122上には、ギア123、124が結合されている。これらのギア123、124と噛み合うギア125、126が軸127、128にスプライン結合されている。軸127、128は、入力軸9bの軸線方向に直交する方向に沿って延び、双方が同一軸線上に並んで互いの端部が対向するように配置されている。
【0051】
軸127、128の対向端部に、オイルシールケース129、130が配置されている。入力軸9bのオイルシールケース117は、軸127、128のオイルシールケース129、130の近傍に位置するように配置されている。このようにオイルシールケース117、129、130をケーシング4cの近くに集めて配置することにより、作動油供給管116、131、132や潤滑油供給管(図示せず)のギアケース4c内での引き回しを簡素化できる。
【0052】
また、軸127、128には、それぞれ、正逆転クラッチ機構133、134が設けられている。正逆転クラッチ機構133、134は、変速用クラッチ機構104と同様の油圧クラッチであり、各々、正転クラッチ133a、134a及び逆転クラッチ133b、134bを備えている。
【0053】
正転クラッチ133aは、軸127上に回転自在に支持されたベベルギア135に、軸127からの動力を伝達又は遮断する。逆転クラッチ133bは、軸127上に回転自在に支持され且つベベルギア135と対向配置されたベベルギア136に、軸127からの動力を伝達又は遮断する。
【0054】
一方、正転クラッチ134aは、軸128上に回転自在に支持されたベベルギア137に、軸128からの動力を伝達又は遮断する。逆転クラッチ134bは、軸128上に回転自在に支持され且つベベルギア137と対向配置されたベベルギア138に、軸128からの動力を伝達又は遮断する。
【0055】
対向配置されたベベルギア135、136は、共通のベベルギア139と噛み合っている。共通のベベルギア139は、一方のベベルギア135から動力伝達を受けるときは正回転を出力軸12bに伝達し、他方のベベルギア136から動力伝達を受けるときは逆回転を出力軸12bに伝達する。
【0056】
上記と同様に、対向配置されたベベルギア137、138は、共通のベベルギア140と噛み合っている。共通のベベルギア140は、一方のベベルギア137から動力伝達を受けるときは正回転を出力軸13bに伝達し、他方のベベルギア138から動力伝達を受けるときは逆回転を出力軸13bに伝達する。
【0057】
ベベルギア139は、回転自在に支持された回転軸141の一端に結合されている。回転軸141の他端に形成されているギア142が、出力軸12bと一体のギア143に噛み合っている。出力軸12bは、内部にプロペラ軸5を挿通する挿通孔を備え、ギアケース4b内に設けられた軸受け部144、145に回転自在に支持されている。プロペラ軸5は、出力軸12bの前記挿通孔に通され、カップリング146によって出力軸12bに結合されている。
【0058】
上記と同様に、ベベルギア140は、回転自在に支持された回転軸147の一端に結合されている。回転軸147の他端に形成されているギア148が、出力軸13bと一体のギア149に噛み合っている。出力軸13bは、内部にプロペラ軸6を挿通する挿通孔を備え、ギアケース4b内に設けられた軸受け部150、151に回転自在に支持されている。プロペラ軸6は、出力軸13bの前記挿通孔に通され、カップリング152によって出力軸12bに結合されている。
【0059】
図16は、上記構成の第4実施形態のプロペラ動力伝達装置の油圧回路図を示す。変速用クラッチ機構104、及び、左右一対の正逆転クラッチ機構133、134の各油圧クラッチ104a、104b、133a、133b、134a、134bに対する作動油供給油源が次のように構成されている。即ち、機関3によって駆動するポンプ155のポンプ作用によって、ギアケース内の油溜156から作動油が供給される。それぞれの作動油の供給油路157、158、159、160、161、162には電磁弁として電磁式比例制御弁163、164、165、166、167、168が介在されている。ポンプ155から電磁式比例制御弁163〜168に供給される油圧は、圧力制御弁169によってクラッチ嵌入圧力に設定されている。電磁式比例制御弁はソレノイドに対する印加電流値に応じて圧力をゼロから前記嵌入圧力まで漸次的に変化させることができ後述するクラッチ入り信号が入力された後、作動させるべき油圧クラッチを所定時間内で緩やかに係合させることができる。なお、電磁弁として単なる開閉弁を用いると共に圧力制御弁169をディレイ・リリーフ・バルブ式に構成したものであってもよい。圧力制御弁169は、リリーフ弁であり、圧力制御弁169を通過した油は、潤滑油路170を通じて各クラッチ104a、104b、133a、133b、134a、134bに潤滑油として供給される。潤滑油路170もまた、圧力制御弁171によって所定圧力に設定されている。なお、図16中、符号172はオイルフィルター、符号173はオイルクーラーをそれぞれ示している。ポンプ155を除き、前記油圧回路に組み込まれている各種弁部品は一つのバルブユニットVに集約されギアケース4cの壁面開口4Xを塞ぐように取り付けられ得る。前記作動油供給管116、131、132や前記潤滑油供給管は、前記バルブユニットV内に形成された前記供給油路157、158、159、160、161、162、前記潤滑油路170に接続される。
【0060】
電磁式比例制御弁163〜168は、図17に示すジョイスティック形の操縦レバー174によって、リモートコントロールされ得る。操縦レバー174は、機関3の出力制御装置としての燃料噴射量やスロットル開度を制御する電磁アクチュエータ(図示せず)をもリモートコントロールすることができる。図示例の操縦レバー174は、次のように作動する。
【0061】
操縦レバー174が中心位置にあるとき、全ての電磁式比例制御弁163〜168を非作動状態にして全てのクラッチが切れたニュートラル状態となる。
【0062】
操縦レバー174を前後方向へ傾動させると、クラッチ入り信号が発せられ図外のコントローラはその信号を受けて、電磁式比例制御弁164を作動させて変速クラッチ機構104の油圧クラッチ104bを駆動連結すると共に、その方向に応じて、電磁式比例制御弁165〜168の中の所要の制御弁を作動させて正逆転クラッチ機構133,134を駆動連結するとともに、前後方向への傾動移動量に応じて燃料噴射量やスロットル開度を制御する電磁アクチュエータ(図示せず)を作動させ、プロペラ軸5、6を正回転又は逆回転させた状態でエンジン回転数をアイドルから最高回転まで変化させて、それによって船舶は、前後の所要方向に所要速度で航行する。
【0063】
船舶が前進又は後進している時に、舵取りハンドルを用いずに船舶の航行方向を修正する場合、操縦レバー174を左右何れかに傾倒させていくと、切換ショックを緩和するために傾倒の途中で正逆転クラッチ機構133,134の旋回内側のクラッチを一旦切ってから、左右傾倒端に至ると再び、いままで係合していた側とは反対側のクラッチを入れるように電磁式比例制御弁165〜168を制御することにより、比較的急旋回を可能にする。なお、操縦レバー174の左右の傾動量に応じて、正逆転クラッチ機構133,134への作動油供給油路159〜162に介在させた電磁式比例制御弁165〜168のポートが開くので、傾動角度によってクラッチの係合圧力を調整して旋回半径を調整することができる。
【0064】
操縦レバー174は、更にその握り部頂部に親指で操作可能な、変速用クラッチ機構104のクラッチ切換えを行うための変速ボタンスイッチ175を備えている。変速ボタンスイッチ175は、変速用クラッチ機構104の油圧クラッチ104bへの作動油供給油路158に介在させた電磁式比例制御弁164の作動を停止させ、油圧クラッチ104aへの作動油供給油路157に介在させた電磁式比例制御弁163を作動するよう制御する。それによって、小減速側変速ギア列103−112から大減速側変速ギア列102−111へ常に動力を伝達するようになっている。例えば、ウェイクボードを楽しむためにバラスト水を船内に注水して故意に波を大きくして航行する時等に、大減速下で機関3に負担を掛けない航行が利用される。変速ボタンスイッチ175は、図示例では操縦レバー174上に配置されているが、操縦レバー174の近傍の操作盤上に配置されていても良い。
【0065】
操縦レバー174は、図に示すような、牽制プレート176によって、低速領域Lでの前後進時にのみ左右に操縦レバーを傾動させて旋回できるようにし、高速前進領域F又は高速後進領域Rでは旋回できないように可動範囲を規定することができる。
【0066】
なお、船舶の機能上、急旋回は不要で緩旋回だけ得られれば良いという船舶であれば、操縦レバー174を左右傾倒端まで傾動させたときに、左右の正逆転クラッチ機構133、134の一方の正逆転クラッチ機構を切るだけにとどめることによって旋回内側のプロペラ軸の駆動を停止させ、他方の正逆転クラッチ機構のみで動力を伝達して旋回外側のプロペラ軸のみ回転させるように制御しても良い。
【0067】
次に、本発明に係るプロペラ動力伝達装置の第5実施形態について、図18〜図20を参照しつつ説明する。図18は、プロペラ動力伝達装置の縦断側面図である。図19は、図18のXIX-XIX線に沿う一部断面図である。図20は、プロペラ動力伝達装置を動力伝達経路に沿って展開した断面図である。
【0068】
第5実施形態は、上記第4実施形態の変更態様であり、主たる相違点は図20と図15を見比べれば直ぐに分かるように、ギアケース4c内の正逆転クラッチ機構233、234のクラッチ配列が相違している。
【0069】
第5実施形態では、ベベルギア118の噛み合う左右のベベルギア119、120を回転自在に支持する軸221、222に、ギア223、224が相対回転不能に支持され、この軸221、222上で正逆回転クラッチ機構233、234の正転用油圧クラッチ233a、234aを介して動力の伝達を受けるギア235、237が、軸221、222上に回転自在に支持されている。
【0070】
さらに、ギア223、224と噛み合っているギア225、226が、軸221、222と平行に配置され且つケーシング4c内に回転自在に支持された軸227、228に、相対回転不能に支持されている。この軸227、228上で正逆回転クラッチ機構233、234の逆転用油圧クラッチ233b、234bを介して動力の伝達を受けるギア236、238が、軸227、228上に回転自在に支持されている。
【0071】
ギア235、236は、常時、共通のギア239と噛み合っている。また、ギア237、238も、常時、共通のギア240と噛み合っている。ギア239、240は、回転自在に支持された軸241、247に、それぞれ、相対回転不能に支持されている。軸241、247の各々の一端に固定されたベベルギア270、271から、ベベルギア272、273、ギア242、248、ギア243,249を介して、出力軸12b、13bに動力が伝達される。出力軸12b、13bには、プロペラ軸5、6がカップリング246、252によって結合されている。
【0072】
第5実施形態においても、オイルシールケース217、229,230は、近傍に配置され、作動油供給管及び潤滑油供給管の配管が容易になっている。なお、第5実施形態では、作動油及び潤滑油を供給するためのギアポンプ255が軸227に連結されている。ギアケース4cの内部で、常時駆動される軸であればどの軸にギアポンプ255を連結しても構わない。
【0073】
次に、第6実施形態について、以下に図21,22を参照して説明する。第6実施形態は、上記第1実施形態のプロペラ動力伝達装置に変速用クラッチ機構を組み込んだ例である。
【0074】
変速用クラッチ機構300は、入力軸9上に設けられ、低速用油圧クラッチ300a及び高速用油圧クラッチ300bを備えている。低速用油圧クラッチ300aは、入力軸9から入力軸上に回転自在に支持された小径の駆動変速ギア301へ動力を、伝達又は遮断する。高速用油圧クラッチ300bは、入力軸9から入力軸上に回転自在に支持された大径の駆動変速ギア302へ動力を、伝達又は遮断する。
【0075】
駆動変速ギア301,302の各々が噛み合う従動変速ギア303,304は、ケーシング4内に回転自在に支持された軸305に、相対回転不能に支持されている。
【0076】
軸305に相対回転不能に支持されたギア20Aが、ギア21及びギア22と噛み合っている。ギア20Aから出力軸12,13迄の動力伝達経路は、上記第1実施形態のギア20から出力軸12,13迄の動力伝達経路と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置を搭載した船舶を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1及び図2のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿って展開した状態を模式的に示す断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図5に示すプロペラ動力伝達装置の変更態様を示す断面図である。
【図7】図3のプロペラ動力伝達装置の油圧回路図である。
【図8】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第2実施形態を搭載した船舶を模式的に示す平面図である。
【図9】図8の側面図である。
【図10】第2実施形態を機関とともに模式的に示す展開断面図である。
【図11】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第3実施形態を模式的に示す展開断面図である。
【図12】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第4実施形態を搭載した船舶の全体形状を模式的に示す側面図である。
【図13】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第4実施形態の縦断側面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に沿う一部断面図である。
【図15】図13のプロペラ動力伝達装置を動力伝達経路に沿って展開した断面図である。
【図16】第4実施形態のプロペラ動力伝達装置の油圧回路図である。
【図17】第4実施形態のプロペラ動力伝達装置を操作するための操縦レバーを示す斜視図である。
【図18】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第5実施形態の縦断側面図である。
【図19】図18のXIX-XIX線に沿う一部断面図である。
【図20】図18のプロペラ動力伝達装置を動力伝達経路に沿って展開した断面図である。
【図21】本発明に係る1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置の第6実施形態の縦断正面図である。
【図22】図21のXXII-XXII線に沿う展開断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 1機2軸式船舶のプロペラ動力伝達装置
2 船舶
3 機関
4、4a、4b、4c ギアケース
5、6 プロペラ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関の駆動軸の左右に一対のプロペラ軸を備える1機2軸式船舶のためのプロペラ動力伝達装置であって、
ギアケースと、
前記ギアケース内に設けた軸受け部に支持されるとともに、前記機関の駆動軸にカップリングによって結合される入力軸と、
前記ギアケース内に設けた軸受け部に支持されるとともに、前記左右プロペラ軸の各々とカップリングによって結合される左右一対の出力軸と、
前記ギアケース内に収容され、前記入力軸の動力を前記一対の出力軸の各々にクラッチ機構を介して伝達するギアトレーンと、を有し、
前記クラッチ機構は、出力軸が、正転又は逆転するように前記ギアトレーンを切り換える正逆転クラッチ機構を含むことを特徴とする、前記プロペラ動力伝達装置。
【請求項2】
前記ギアトレーンを複数の円筒歯車と2つ以下の円錐ギアのみによって構成し、前記円錐ギアによって、前記機関の駆動軸の軸線に対して左右プロペラ軸の軸線を傾斜させてあることを特徴とする請求項1に記載のプロペラ動力伝達機構。
【請求項3】
前記ギアトレーンは、
前記入力軸上に固定された駆動ベベルギアと、
前記入力軸と直交する方向に沿って延びる中間軸上に回転自在に支持され、且つ、前記駆動ベベルギアと噛み合う一対の従動ベベルギアと、
前記一対の従動ベベルギアの何れか一方を選択的に前記中間軸に連結して該中間軸を正回転又は逆回転させる前記正逆転クラッチ機構と、
前記出力軸の各々と、該出力軸と交差する前記中間軸の両端とを駆動的に連結するベベルギア組と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項4】
前記クラッチ機構は、前記中間軸に設けられ、前記出力軸の各々への動力を伝達又は遮断する一対の動力伝達クラッチを更に含むことを特徴とする請求項3に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項5】
前記一対の動力伝達クラッチの各々の従動側に、前記中間軸を制動可能なブレーキを備えていることを特徴とする請求項4に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項6】
前記中間軸は、第1中間軸、第2中間軸、及び、第3中間軸を有し、
前記第1中間軸が、前記駆動ベベルギアと噛み合う一対の従動ベベルギアが回転自在に支持され且つ従動ベベルギアの何れか一方を選択的に該第1中間軸に連結して該第1中間軸を正回転又は逆回転させる前記正逆転クラッチ機構を備え、
前記第2中間軸及び第3中間軸が、前記出力軸の各々と駆動的に連結するベベルギア組を備え、
前記第1中間軸と、前記第2中間軸及び第3中間軸との間が前記動力伝達クラッチを内在するギアトレーンを介して連結され、
前記クラッチ機構は、前記第2中間軸と第3中間軸との突き合わせ部に、前記一対の動力伝達クラッチの何れか一方が動力遮断状態にあるときにのみ作動し得る回転方向反転クラッチ機構を更に含むことを特徴とする請求項4に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項7】
前記ギアトレーンが2以上の変速ギア列を含み、各変速ギア列は駆動変速ギアと従動変速ギアとを有し、
前記クラッチ機構は、前記変速ギア列の各々の駆動変速ギアから従動変速ギアへ、動力を伝達又は遮断する変速用クラッチ機構を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項8】
前記各駆動変速ギアは前記入力軸上に設けられ、前記各従動変速ギアは前記入力軸と平行に支持された回転軸上に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項9】
前記正逆転クラッチ機構が油圧クラッチによって構成され、
これらの油圧クラッチへの作動油の供給を制御する電磁弁と、機関の出力制御装置とを、連係させてリモートコントロールする一本の操縦レバーを有することを特徴とする請求項1に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項10】
前記変速用クラッチ機構が油圧クラッチによって構成され、この油圧クラッチへの作動油の供給を制御する電磁弁の作動・非作動を切り替えるスイッチを更に有することを特徴とする請求項9に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項11】
前記ギアトレーンは、入力軸の動力を、左右の出力軸に分岐させて伝えるための分岐ギア列を含み、
前記変速用クラッチ機構は、前記ギアトレーンの前記分岐ギア列より入力軸側に組み込まれ、
前記正逆転クラッチ機構は、前記ギアトレーンの前記分岐ギア列より出力軸側に組み込まれていることを特徴とする請求項7に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項12】
前記正逆転クラッチ機構及び前記変速用クラッチ機構の各々が油圧クラッチによって構成され、これらの油圧クラッチを支持する軸は、作動油供給油源が接続されるポートを有するオイルシールケースを一端に備えるとともに作動油を油圧クラッチに供給する内部油路が形成され、
前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸が、同一軸線上に配置されるとともに各々のオイルシールケースが対向配置され、
前記前記変速用クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている軸は、該軸の軸線が前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸の軸線方向に対して直角方向に沿う方向に向けられ、且つ、一端に設けられたオイルシールケースが前記前記正逆転クラッチ機構の油圧クラッチが支持されている一対の軸のオイルシールケースの近傍に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のプロペラ動力伝達装置。
【請求項13】
前記正逆転クラッチ機構は、左右一対の前記出力軸を、個別に正逆回転させるクラッチ機構であることを特徴とする請求項1に記載のプロペラ動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−222203(P2008−222203A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182650(P2007−182650)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)