説明

1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法

【課題】2段階製法におけるコスト高の問題を解決し、合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、分子量が均一なウレタンプレポリマーが得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法の提供。
【解決手段】1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する液体成分(B)と、充填剤を含有する粉体成分(C)とを、この順で添加し、混合する混合工程を具備し、
前記混合工程において、前記ポリイソシアネート化合物(A)と前記活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも前記粉体成分(C)の存在下においても進行し、
前記混合工程によりウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1液湿気硬化型ポリウレタン組成物(例えば、1液ウレタン接着剤、シーリング材等)の製造方法として、ウレタンプレポリマー合成させる工程と、該工程により得られたウレタンプレポリマーと粉体成分(例えば、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムなどの各種添加剤)とを混合する工程とを具備する、製造方法(以下、「2段階製法」ともいう。)が知られている。
【0003】
しかしながら、2段階製法は、ウレタンプレポリマーの合成タンクが必要となるため加工費等によるコストが高くなる問題があり、また、合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いると、得られるウレタンプレポリマーが高粘調となり、接着剤に不向きとなる問題があった。
【0004】
一方、特許文献1では、「2以上の活性水素基を有する化合物と、フィラー成分と、溶剤とを混合し、この混合物から水分を除去した後、ポリイソシアネート化合物を添加混合することを特徴とする湿気硬化組成物の製造方法。」が提案されており、具体的には、「ポリオキシアルキレンポリオール(分子量6000、平均官能基数f=3)100gに、炭酸カルシウム100部、トルエン50部を添加して均一に混合し、100℃で5時間還流して、水分を除去した。次に、窒素雰囲気下、80℃で、MDI20gを添加し、NCO含有量1.69重量%のプレポリマーを得る」方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−271635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、得られるプレポリマーの分子量分布が広く(例えば、Mw/Mnが1.80以上となり)、分子量が均一なプレポリマーが得られにくいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、2段階製法におけるコスト高の問題を解決し、また、合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、更に、分子量が均一なウレタンプレポリマーが得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する液体成分と、充填剤を含有する粉体成分とを混合する特定の1段の混合工程を具備する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法が、2段階製法におけるコスト高の問題を解決し、また、合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、更に、分子量が均一なウレタンプレポリマーが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
これは、上記混合工程において、ポリイソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも粉体成分の存在下においても進行することにより、意外にも、プレポリマー化に伴う増粘によって粉体成分が潰れ、分散性が良好となり、また、金属触媒を添加しても、粉体成分の存在によりウレタンプレポリマーの急激な生成に伴う粘度上昇が抑えられ、更に、ポリイソシアネート化合物中に活性水素化合物が添加されるため、安定したプレポリマー反応が起こり分子量が均一化するという種々の知見に基くものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記(1)および(2)に記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する製造方法を提供する。
(1)1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する製造方法であって、
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する液体成分(B)と、充填剤を含有する粉体成分(C)とを、この順で添加し、混合する混合工程を具備し、
上記混合工程において、上記ポリイソシアネート化合物(A)と上記活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも上記粉体成分(C)の存在下においても進行し、
上記混合工程によりウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
(2)上記混合工程において、上記粉体成分(C)の添加と同時または上記粉体成分(C)を添加した後に、更に、上記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を混合させる、上記(1)に記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
以下に示すように、本発明によれば、2段階製法におけるコスト高の問題を解決し、また、合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、更に、分子量が均一なウレタンプレポリマーが得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法を提供することができる。また、この製造方法により、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の生産能力が飛躍的に向上するため、本発明は非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という。)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する液体成分(B)と、充填剤を含有する粉体成分(C)とを、この順で添加し、混合する混合工程を具備し、
上記混合工程において、上記ポリイソシアネート化合物(A)と上記活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも上記粉体成分(C)の存在下においても進行し、上記混合工程によりウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る、製造方法である。
以下に、ポリイソシアネート化合物(A)、液体成分(B)および粉体成分(C)ならびにこれらを混合する混合工程について詳述する。
【0013】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
上記ポリイソシアネート化合物(A)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0014】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、TDI、MDIであるのが、ポリイソシアネート化合物を含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の硬度、破断強度等の硬化物物性、接着性の観点から好ましい。
【0015】
<液体成分(B)>
上記液体成分(B)は、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する成分であれば特に限定されないが、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物であるのが好ましい。
また、上記液体成分(B)は、活性水素化合物以外に、例えば、ポリアミン、可塑剤等を含有するものであってもよい。
本発明においては、上記液体成分は、必要に応じて予め脱水したものを用いるのが好ましい。
【0016】
上記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有するポリオール化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0017】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレンオキサイドなどから選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸やオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
【0019】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの低分子ポリオール:等が挙げられる。
【0020】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリプロピレングリコールであるのが、液体成分を含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の硬度と破断伸びのバランスおよびコストのバランスに優れる理由から好ましい。
また、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオールが好ましく、1000〜5000であるポリオールがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、得られるウレタンプレポリマーの物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び)および粘度が良好となる。
【0021】
上記ポリアミンとしては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)のような脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタンのような芳香族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン;3−ブトキシイソプロピルアミンのような主鎖にエーテル結合を有するモノアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC、三菱ガス化学社製)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミンのような脂環式ポリアミン;ノルボルナンジアミン(NBDA、三井化学社製)のようなノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400;等が挙げられる。
【0022】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリエーテル骨格のジアミン(ジェファーミン)、ヘキサメチレンジアミンであるのが好ましい。
【0023】
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、ジイソノニルフタレート(DINP)を用いるのが、コストや相溶性に優れる理由から好ましい。
【0024】
<粉体成分(C)>
上記粉体成分(C)は、充填剤を含有する成分であれば特に限定されず、該充填剤のみ含有するものであってもよく、該充填剤以外に、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有するものであってもよい。
本発明においては、上記粉体成分は、必要に応じて予め脱水したものを用いるのが好ましい。
【0025】
上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムであるのが、粉体成分を含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の粘度やチクソ性を調整しやすくなる理由から好ましく、具体的には、カーボンブラックを用いた場合には物性(例えば、硬度、伸び等)に優れ、重質炭酸カルシウムを用いた場合には深部硬化性に優れる。
【0026】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0027】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
【0028】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0029】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0030】
[混合工程]
本発明の製造方法における混合工程は、上記ポリイソシアネート化合物(A)と、上記液体成分(B)と、上記粉体成分(C)とを混合する工程である。
ここで、混合する方法は、従来公知の混合方法であれば特に限定されず、具体的には、ロール、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、万能攪拌機等を用いて混合する方法が好適に例示される。また、これらの混合方法を併用するものであってもよい。
【0031】
本発明においては、上記混合工程は、上記ポリイソシアネート化合物(A)と、上記液体成分(B)と、上記粉体成分(C)とを、この順で添加し、混合させる工程である。
この順で添加することにより、例えば、プラネタリーミキサー等を用いて上記混合工程を連続して施す場合においても、製造した1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を回収した後にミキサー内に残る残存物と、その次の製造のために添加する液体成分中のポリオール化合物との反応を抑止することができる。
【0032】
また、本発明においては、上記混合工程は、上記ポリイソシアネート化合物(A)と上記液体成分(B)中の活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも上記粉体成分(C)の存在下においても進行するものである。これは、言い換えれば、上記混合工程が、ウレタンプレポリマーの生成反応が終了した後に上記粉体成分を添加することがないことを意味し、上記ポリイソシアネート化合物(A)および上記液体成分(B)を添加した後に上記粉体成分(C)を添加する際に、上記粉体成分(C)はウレタンプレポリマーの生成反応が終了する前に添加することを意味する。
このようにウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも上記粉体成分(C)の存在下においても進行することにより、意外にも、プレポリマー化に伴う増粘によって粉体成分が潰れ、分散性が良好となり、得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーの形状保持性も良好となる。
【0033】
本発明においては、上記混合工程は、上記ポリイソシアネート化合物(A)の融点以上の温度で行われる。また、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で行われることが好ましい。
また、本発明においては、上記混合工程は、劣化、安全性の観点から80℃以下の温度で混合が行われることが好ましい。
【0034】
本発明においては、上記混合工程において、上記粉体成分(C)の添加と同時または上記粉体成分(C)を添加した後に、上記ポリイソシアネート化合物(A)と上記活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成を促進する金属触媒を含有させるのが好ましい。
後述する比較例1等の従来の2段階製法においては、ウレタンプレポリマーの合成時に金属触媒を添加した場合は、生成するウレタンプレポリマーの粘度が金属触媒を用いない場合と比較して約2倍程度上昇するため、粉体成分と混合して得られるウレタン接着剤のビード保持性、成形保持性が劣ることとなる。そのため、2段階製法においては、ウレタンプレポリマーの合成時において触媒は用いることはできず、ウレタンプレポリマーの合成に10〜50時間程度の長時間を要していた。
これに対し、本発明においては、上記粉体成分(C)の添加と同時または上記粉体成分(C)を添加した後に、金属触媒を混合させることにより、得られる1液湿気硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーの粘度を良好に維持しつつ、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の調整時間も格段に短縮することができる。これは、粉体成分の存在下に金属触媒が添加されることにより、ウレタンプレポリマーの急激な生成反応が起きないため、粘度を良好に維持できるためと考えられる。
【0035】
このような金属触媒としては、有機金属系触媒が挙げられ、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマス系触媒(例えば、日東化成社製の無機ビスマス(ネオスタンU−600、U−660)等)が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて、本発明の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
プラネタリーミキサーに、MDI(三井化学社製)をポリイソシアネート化合物として添加した後、ポリオール化合物であるG−5000(EXCENOL 5030、旭硝子社製)およびD−2000(EXCENOL 2020、旭硝子社製)ならびに可塑剤であるDINP(ジェイ・プラス社製)を液体成分として添加し、その後、カーボンブラック1(ニテロン ♯200B、新日化カーボン社製)およびカーボンブラック2(ニテロン ♯300B、新日化カーボン社製)ならびに重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)を粉体成分として添加し、更に、DOTL(ネオスタン U−810、日東化成社製)を金属触媒として添加して、60℃、1時間かくはんした。なお、添加量(配合量)は、下記表1に示すとおりである。
かくはん後、プラネタリーミキサー内の混合物を、密閉したニーダーに移し、その後、可塑剤としてDINP(ジェイ・プラス社製)、触媒としてDOTL(ネオスタン U−810、日東化成社製)を添加し、60℃、1時間かくはんして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調整した。なお、添加量(配合量)は、下記表1に示すとおりである。
【0038】
得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物について、以下に示す測定方法により、SOD粘度、JIS A硬度ならびに破断強度および破断伸びを測定した。また、以下に示す測定方法により、得られた1液硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーの分子量分布を測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0039】
<SOD粘度>
SOD粘度(Pa・s)は、JASO M338−89に準拠して、得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の粘度を圧力粘度計(ASTM D 1092)を用いて測定した。
SOD粘度が30〜70Pa・sであれば作業性が良好であると判断できる。
【0040】
<JIS A硬度>
得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物から厚さ2mmのダンベル状3号形試験片を切り出し、切り出したダンベル状3号形試験片について、3枚重ねて厚みをとり、JIS K6253-1993に準じて硬度計にてJIS A硬度を測定した。
【0041】
<破断強度、破断伸び>
上記と同様のダンベル状3号形試験片について、JIS K6251-1993に準じた引張試験(引張速度:200mm/分)を行い、破断強度(TB)[MPa]、破断伸び(EB)[%]を測定した。
【0042】
<分子量分布>
得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーの重量平均分子量(ポリスチレン換算)/数平均分子量(ポリスチレン換算)を、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した。測定は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基を過剰のメタノールで潰した後に、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いて行った。
【0043】
【表1】

【0044】
(比較例1)
プレポリマー合成タンクに、MDI(三井化学社製)をポリイソシアネート化合物として添加した後、ポリオール化合物であるG−5000(EXCENOL 5030、旭硝子社製)およびD−200(EXCENOL 2020、旭硝子社製)ならびに可塑剤であるDINP(ジェイ・プラス社製)を液体成分として添加し、80℃、48時間かくはんして、ウレタンプレポリマーを調整した。なお、添加量(配合量)は、下記表2に示すとおりである。
その後、プラネタリーミキサーに、調整したウレタンプレポリマーと、カーボンブラック1(ニテロン ♯200B、新日化カーボン社製)およびカーボンブラック2(ニテロン ♯300B、新日化カーボン社製)ならびに重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)とを添加し、60℃、1時間かくはんした。なお、添加量(配合量)は、下記表2に示すとおりである。
かくはん後、プラネタリーミキサー内の混合物を、密閉したニーダーに移し、その後、可塑剤としてDINP(ジェイ・プラス社製)、触媒としてDOTL(ネオスタン U−810、日東化成社製)を添加し、60℃、1時間かくはんして、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を調整した。なお、添加量(配合量)は、下記表2に示すとおりである。
【0045】
得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物について、上記に示す測定方法により、SOD粘度、JIS A硬度ならびに破断強度および破断伸びを測定した。また、上記に示す測定方法により、得られた1液硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーの分子量分布を測定した。これらの結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
上記表1および表2に示す結果より、実施例1で得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物は、従来の製法である比較例1で得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物と同等以上の物性を有していることが分かった。また、実施例1においては、プラネタリーミキサー内に金属触媒を添加することで合成時間が格段に短縮していることが分かり、金属触媒の添加に伴う粘度上昇も抑制されていることが分かる。更に、実施例1で得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーは、比較例1で得られた1液湿気硬化型ポリウレタン組成物中のウレタンプレポリマーに比べて分子量分布が狭いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を製造する製造方法であって、
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A)と、1分子中に2個以上の活性水素基を有する活性水素化合物を含有する液体成分(B)と、充填剤を含有する粉体成分(C)とを、この順で添加し、混合する混合工程を具備し、
前記混合工程において、前記ポリイソシアネート化合物(A)と前記活性水素化合物との反応によるウレタンプレポリマーの生成が、少なくとも前記粉体成分(C)の存在下においても進行し、
前記混合工程によりウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る、1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、前記粉体成分(C)の添加と同時または前記粉体成分(C)を添加した後に、更に、前記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を混合させる、請求項1に記載の1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−45898(P2007−45898A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230522(P2005−230522)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】