説明

1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法

【課題】ラセミ体及び光学活性体の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を簡便な方法で経済的に、高純度、高収率に得る。
【解決手段】式(1)のハロゲノ−1,2−プロパンジオール(Xはハロゲン原子を表す)を酸触媒下にアセタール化し得られる4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランにカルボン酸またはアルコールのアルカリ(土類)金属塩を作用させてエステル化またはエーテル化後、該エステル基を加水分解、該エーテル基を加水素分解して、式(2)の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物(R、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、またはフェニル基を表し、またR、Rは隣接する炭素原子と共に3〜6員環を形成してもよい。)を得る。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬、農薬等の合成中間体として有用な1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物は医薬、農薬等の合成中間体として用いられており、その製法については次のような方法が知られている。すなわち、(イ)グリセリンとアセトニド試薬を反応させる方法(非特許文献1参照)、(ロ)マンニトールから合成する方法(非特許文献2参照)、(ハ)アスコルビン酸から合成する方法(非特許文献3参照)、(ニ)セリンから合成する方法(特許文献1参照)、(ホ)酵素を用いた光学分割法(非特許文献4参照)などが挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの合成法は工業的に次のような問題点がある。すなわち、(イ)のグリセリンとアセトニド試薬を反応させる方法は、1位と2位、および1位と3位の水酸基でアセタール化した混合物として生成し、両者を分離するのは非常に困難である。(ロ)のマンニトールから合成する方法は、1,2−ジオールを開裂する際、四酢酸鉛もしくは過ヨウ素酸ナトリウムを化学量論量用いるため、コスト的に問題があり、また光学活性体を得ようとする場合、天然にはD−マンニトールしか存在しないためS体しか合成できない。(ハ)のL−アスコルビン酸、D−イソアスコルビン酸から合成する方法は、マンニトールの場合と同じように四酢酸鉛もしくは過ヨウ素酸ナトリウムを化学量論量用いるため、コスト的に問題がある。(ニ)のセリンから合成する方法は、光学活性体を得ようとする場合、マンニトールの場合と同じように天然には片方の異性体(L体)しか存在しないためR体しか合成できず、またカルボン酸を還元の際、水素化アルミウムリチウムなどの、大量合成では取り扱いにくい試薬を使用しなければならない。(ホ)の酵素を用いた生化学的光学分割法は、片方の異性体の光学純度は高いが、もう一方は光学純度が低く、また、場合によってはラセミ体アルコールから得られた光学活性アルコールと光学活性エステルを分離精製するためにカラムクロマトグラフィーを行わなければならず、大量合成に不向きである。また、上記のいずれの方法も反応行程が長く実用的でないため、より効率的な1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の合成法が求められている。
【特許文献1】特公平6−62492号公報
【非特許文献1】Synth. Commun., 22, 2653 (1992)
【非特許文献2】Biochem. Prep., 2, 31 (1952)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 102, 6304 (1980)
【非特許文献4】J. Chem. Soc., Perkin Trans. I 23, 3459 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは上記の問題点を解決するために種々検討した結果、3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを原料にして、目的とする上記化合物を得る新たな方法を見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、すなわち下記式
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤でアセタール化し、下記式
【化2】

(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を意味し、またRとRが隣接する炭素原子と共に炭素数3〜6のシクロアルキル基を形成してもよい。Xは前掲と同じものを意味する。)
で表される4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランを得、これに下記式
ROH (3)
(式中、Rはアシル基、アラルキル基またはアリル基を意味する。)
で表されるカルボン酸またはアルコールのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を作用させて、下記式
【化3】

(式中、R、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される化合物を得、ついで式(4)中、Rがアシル基の場合には、塩基の存在下、加水分解し、Rがアルキル基の場合には、還元触媒の存在下、水素添加することを特徴とする下記式
【化4】

(式中、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法に関する。
なお本発明においては原料に光学活性な3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを使用することにより光学活性な1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の反応行程は下記のごとく図示される。
【化5】

(式中、X、R、RおよびRは前掲と同じ。)
各工程について以下に詳述する。
【0007】
(A)工程
上記式(1)の3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤と反応させると式(2)の4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランが得られる。
3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールとしては、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールまたは3−ブロモ−1,2−プロパンジオールが用いられる。
アセタール化剤としては、アセトン、ジエチルケトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン系試薬、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド系試薬、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジメトキシペンタンなどのケトンのジアルコキシアセタール系試薬、2−メトキシプロペン等のケトンのエノールエーテル系試薬等が挙げられる。
【0008】
例えば、式(2)においてR=R=Hの化合物を合成するにはホルムアルデヒドを、R=R=フェニルの化合物を合成するにはベンゾフェノンを、R、Rが隣接する炭素と共に6員環を形成する化合物を合成するにはシクロヘキサノンを、またR=フェニル、R=Hの化合物を合成するにはベンズアルデヒドを用いればよい。また式(5)でR=R=メチルである1,3−ジオキソラン−4−メタノールを合成するには、アセタール化剤としてアセトン、2,2−ジメトキシペンタン、2−メトキシプロペンを使用することが、特に好ましい。
酸触媒としてはp−トルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、カンファースルホン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、もしくは三フッ化ほう素等のルイス酸が挙げられるが、好ましくはパラトルエンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホネート、カンファースルホン酸等の有機酸、もしくは三フッ化ほう素等のルイス酸である。酸触媒の量は、3−ハロゲノー1,2−プロパンジオールに対して0.05〜0.1当量である。
溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、アセトン等が挙げられる。
反応温度は0℃から溶媒の還流温度までである。
【0009】
(B)工程
(B−1) A工程で得られた式(2)の4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランを、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と反応させると式(4)の4−アシルオキシメチル−1,3−ジオキソラン(式(3)におけるR=アシル基)が得られる。
使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水媒体、ならびにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0010】
使用するカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属の塩としては炭素数1〜4のアルキル基を有する脂肪族カルボン酸塩、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基、もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換された芳香族カルボン酸塩が使用される。好ましいカルボン酸塩は、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酢酸塩または安息香酸塩である。アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属カルボン酸塩の使用量は4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソラン1モルに対して1〜3モル、好ましくは1〜2モルである。過剰に使用しても収率に影響はないが経済的に不利である。
反応温度は0℃から溶媒の還流温度までで、温度が低すぎると反応速度が有意に低下し実用的でない。
【0011】
(B−2) A工程で得られた式(2)の4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランをアルコールのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩を反応させると式(4)の4−アルコオキシメチル−1,3−ジオキソラン(R=アラルキルまたはアリル基)が得られる。
使用するアルコールとしては、アラルキル基やアリル基を有するアルコールが挙げられるが、特にベンジルアルコール、アリルアルコールが望ましい。使用するアルコールの量は4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランに対して1〜4当量である。
アルコールをアルカリもしくはアルカリ土類金属塩にする際の塩基としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物の等が挙げられるが、好ましい塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物である。
【0012】
使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水媒体、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。また原料アルコールを大過剰に用い溶媒と兼用してもよい。
(B−1)、(B−2)の反応はいずれも無触媒でも進行するが、ヨウ化セシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物、臭化セシウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等の臭化物、テトラブチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム相関移動触媒、18−クラウン−6等のクラウンエーテルを添加すると反応が加速され、特に式(2)のハロゲン原子が塩素の場合には有効である。反応促進剤としてはアルカリ金属の臭化物、ヨウ化物が好ましいが、特に好ましくは、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムである。添加量は4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランに対して0.05〜1.1当量であり、あまり少なすぎると反応速度が低下し、実用的ではない。
【0013】
(C)工程
上記(B−1)工程で得られた式(4)の4−アシルオキシメチル−1,3−ジオキソランを溶媒中、塩基で加水分解すると目的とする式(5)の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物が得られる。
使用する溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、水媒体、ならびにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
また、使用する塩基としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。塩基の量は、4−アシルオキシメチル−1,3−ジオキソランに対して1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。反応温度は0℃から溶媒の還流温度までである。
【0014】
上記(B−2)工程で得られた式(4)の4−アルコキシメチル−1,3−ジオキソランを水素雰囲気下、溶媒中で接触還元すると1,3−ジオキソラン−4−メタノールが得られる。
使用する溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒、水媒体、ならびにこれらの混合溶媒が挙げられる。
使用する触媒としてはこの種の接触還元反応に使用される触媒ならば特に限定されないが、パラジウム、白金等の金属系触媒が好ましく、収率および経済性の点でパラジウムが特に好ましい。さらにパラジウムの含量が5〜10重量%程度のパラジウム−炭素が優れている。触媒の使用量は4−アルコキシメチル−1,3−ジオキソランに対して0.5〜50重量%の範囲が適当である。反応は通常室温、常圧で行う。
【0015】
このようにして得られた1,3−ジオキソラン−4−メタノールは通常の精製法、例えば減圧蒸留によって高純度、高収率で得られる。
原料として用いる3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールとして、光学活性な3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを用いる場合は光学活性な1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を製造することができる。高光学純度(98%ee以上)の3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールとしては例えば本出願人による特公平4−73998号公報および特公平4−73999号公報に記載の方法により得ることができる。本発明の方法によれば、R体の3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを使用すればS体の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物が得られる。R体の合成の場合も同様である。光学純度の高い3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを用いると反応中顕著なラセミ化反応は起こらず、高光学純度の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を製造することができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1〜5、7と実施例6はハロゲン原子の種類を変えた場合の例である(実施例1〜5、7:塩素、実施例6:臭素)。実施例1、3、5、6と2、4はカルボン酸塩の種類を変えた場合の例である(実施例1、3、5、6:安息香酸ナトリウム、実施例2、4:酢酸ナトリウム)。実施例3、4、5、7は原料の3ーハロゲノ−1,2−プロパンジオールに光学活性体を使用した場合の例である。実施例1と実施例5は反応促進剤の有無に関する例である。実施例7はアルコールの金属塩を用いた場合の例である。
【0017】
実施例1
3−クロロ−1,2−プロパンジオール(104.49g、0.945mol)、アセトン(1500ml(の混合物にp−トルエンスルホン酸(1.79g)を加え、25℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下でアセトンを留去し、この粗生成物を蒸留することにより4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン128.01g(収率89%、沸点45℃(5mmHg))を得た。
続いてこの4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(60.02g, 0.39mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(600ml)の混合物に臭化ナトリウム(43.01g、0.42mol)、安息香酸ナトリウム(60.24g、0.42mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去して、残渣に水を加えてトルエンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮して、4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン83.69g(収率90%)の粗生成物を得た。
この粗4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(48.06g, 0.203mol)と水(100ml)の混合物に炭酸ナトリウム(32.22g, 0.304mol)を加えて、100℃で8時間撹拌した。放冷後塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−メタノール22.03g(収率82%、沸点72℃(8mmHg))を得た。
【0018】
実施例2
実施例1で得られた4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(51.60g, 0.343mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(400ml)の混合物に臭化ナトリウム(37.04g, 0.36mol)、酢酸ナトリウム(29.53g, 0.36mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去した。残渣に水を加えてトルエンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより4−アセトキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン38.24g(収率64%、沸点81℃(12mmHg))を得た。
続いて4−アセトキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(34.18g, 0.196mol)とメタノール(200ml)の混合物に炭酸カリウム(40.63g, 0.294mol)を加え、25℃で8時間撹拌した。反応終了後、塩をろ過し、ろ液を減圧下濃縮し残渣に水を加えて塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール23.12g(収率89%、沸点72℃(8mmHg))を得た。
【0019】
実施例3
(R)−3−クロロ−1,2−プロパンジオール(50.13g, 0.454mol、光学純度98.7%ee)、アセトン(660mol)の混合物にパラトルエンスルホン酸(0.86g)を加え、25℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下でアセトンを留去し、この粗生成物を蒸留することにより(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン58.11g(収率85%、沸点63℃(25mmHg))を得た。
続いて(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(36.48g, 0.24mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(150ml)の混合物に臭化ナトリウム(24.70g, 0.24mol)、安息香酸ナトリウム(34.58g, 0.42mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去して、残渣に水を加えてトルエンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮して、(R)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの粗生成物49.34g(収率87%)を得た。
この粗(R)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(36.95g, 0.156mol)と水(80ml)の混合物に炭酸ナトリウム(24.80g, 0.234mol)を加えて、100℃で8時間撹拌した。放冷後塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール15.67g(収率76%、沸点72℃(8mmHg)、旋光度[α]D20+11.1゜(c=1, MeOH)、光学純度98.6%ee)を得た。
【0020】
実施例4
実施例3と同様にして得られた(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(84.76g, 0.563mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(800ml)の混合物に臭化ナトリウム(57.93g, 0.563mol)、酢酸ナトリウム(46.18g, 0.563mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去した。残渣に水を加えてトルエンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(R)−4−アセトキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン60.81g(収率62%、沸点78℃(10mmHg))を得た。
続いて、(R)−4−アセトキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(56.32g, 0.323mol)とメタノール(400ml)の混合物に炭酸カリウム(66.96g, 0.485mol)を加え、25℃で8時間撹拌した。反応終了後、塩をろ過し、ろ液を減圧下濃縮し残渣に水を加えて塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール38.27g(収率87%、沸点65℃(3mmHg)、旋光度[α]D20+10.87゜(c=1, MeOH)、光学純度97.5%ee)を得た。
【0021】
実施例5
実施例3と同様にして得られた(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(42.38g, 0.282mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(400ml)の混合物に安息香酸ナトリウム(40.64g,0.282mol)を加えて150℃で3日間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去して、残渣に水を加えてトルエンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮して、(R)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン58.63g(収率88%)の粗生成物を得た。
この粗(R)−4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(58.63g, 0.248mol)と水(130ml)の混合物に炭酸ナトリウム(39.43g, 0.372mol)を加えて、100℃で8時間撹拌した。放冷後塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール21.96g(収率67%、沸点65℃(3mmHg)、旋光度[α]D20+10.84゜(c=1, MeOH)、光学純度:97.3%ee)を得た。
【0022】
実施例6
3−ブロモ−1,2−プロパンジオール(76.35g, 0.493mol)、アセトン(720ml)の混合物にp−トルエンスルホン酸(0.938g)を加え、25℃で10時間撹拌した。反応終了後、減圧下でアセトンを留去し、この粗生成物を蒸留することにより4−ブロモメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン78.81g(収率82%、沸点67℃(15mmHg))を得た。
続いて4−ブロモメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(58.52g, 0.3mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(500ml)の混合物に安息香酸ナトリウム(50.44g, 0.35mol)を加えて150℃で15時間撹拌した。放冷後塩をろ過し、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下留去して、残渣に水を加えてトルエンで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮して、4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン64.5g(収率91%)の粗生成物を得た。
この粗4−ベンゾイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(24.63g, 0.104mol)と水(50ml)の混合物に炭酸ナトリウム(16.53g, 0.156mol)を加えて、100℃で8時間撹拌した。放冷後塩化メチレンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール10.86g(収率79%、沸点68℃(6mmHg))を得た。
【0023】
実施例7
60%水素化ナトリウム(5.88g, 0.155mol)、DMF(150ml)の懸濁液に氷冷下ベンジルアルコール(32.90g, 0.35mol)を滴下した。水素発生終了後、臭化ナトリウム(9.67g, 0.094mol)を加え、実施例3と同様にして得られた(R)−4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(11.747g, 0.078mol)のDMF(15ml)溶液を滴下し、反応温度を120℃に上げて15時間加熱撹拌した。反応終了後、氷浴で冷却し、6%塩酸水溶液で中和した。酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を水洗、飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥して減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−4−ベンジルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン9.627g(収率54%、沸点112℃(0.3mmHg))を得た。
得られた(S)−4−ベンジルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(9.267g, 41.69mmol)のエタノール(250ml)溶液に10%パラジウム−炭素(2.63g)を加え、混合物を水素雰囲気下、25℃で3時間撹拌した。反応終了後、混合物よりパラジウム−炭素をろ別し、溶媒を減圧濃縮した。この粗生成物を蒸留することにより(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール4.68g(収率85%、沸点65℃(3mmHg)、施光度[α]D20+10.84゜(c=1, MeOH)、光学純度97.5%ee)を得た。
本発明によれば1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を簡便な方法で、高価な試薬を用いずに経済的に製造することができる。またラセミ体及び光学活性体の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物を任意に、高純度、高収率で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを、酸触媒の存在下、アセタール化剤でアセタール化し、下記式
【化2】

(式中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基を意味し、またRとRが隣接する炭素原子と共に炭素数3〜6のシクロアルキル環を形成してもよい。Xは前掲と同じものを意味する。)
で表される4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランを得、これに下記式
ROH (3)
(式中、Rはアシル基を意味する。)
で表されるカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、アルカリ金属の臭化物またはアルカリ金属のヨウ化物の存在下作用させ、下記式
【化3】

(式中、R、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される化合物を得、ついで塩基の存在下、加水分解することを特徴とする下記式
【化4】

(式中、RおよびRは前掲と同じものを意味する。)
で表される1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項2】
アルカリ金属の臭化物またはアルカリ金属のヨウ化物が臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムである請求項1に記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項3】
アルカリ金属の臭化物が臭化ナトリウムである請求項1または2に記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項4】
式(1)および式(2)のハロゲン原子が塩素原子または臭素原子である請求項1〜3のいずれかに記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項5】
アセタール化剤が下記のケトン系試薬、アルデヒド系試薬、ケトンのジアルコキシアセタール系試薬、ケトンのエノールエーテル系試薬から選ばれる1種の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
ケトン系試薬:アセトン、ジエチルケトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン
アルデヒド系試薬:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド
ケトンのジアルコキシアセタール系試薬:2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジメトキシペンタン
ケトンのエノールエーテル系試薬:2−メトキシプロペン
【請求項6】
アセタール化剤がアセトン、2,2−ジメトキシプロパンおよび2−メトキシプロペンから選ばれる1種の化合物である請求項5に記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項7】
カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が酢酸または安息香酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩である請求項1〜6のいずれかに記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項8】
4−ハロゲノメチル−1,3−ジオキソランにカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を作用させる際、ジメチルホルムアミド中で反応させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。
【請求項9】
式(1)の3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールが光学活性体であり、製造される式(5)の1,3−ジオキソラン4−メタノール化合物が光学活性体である請求項1〜8のいずれかに記載の1,3−ジオキソラン−4−メタノール化合物の製造法。

【公開番号】特開2006−188536(P2006−188536A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105163(P2006−105163)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【分割の表示】特願平10−513485の分割
【原出願日】平成9年9月9日(1997.9.9)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)