説明

2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体及びその塩の製造方法

本発明は、特定化学式で表される2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体またはその塩、特に2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸またはその塩の量産に効率的な製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体及びその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体、特に2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸またはその塩は、虚血性神経損傷(ischemia)、低酸素症(hypoxia)、低血糖症(hypoglycemia)、脳の外傷(traumatic brain injury)、脊椎の外傷(traumatic spinal cord injury)、てんかん(epilepsy)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)などの中枢神経系(CNS)損傷に非常に有用であると知られている(特許文献1)。
【0003】
このような2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸の合成方法としては、アミノサリチル酸と2‐(4‐ニトロフェニル)エチルブロマイドまたは3‐(4‐ニトロフェニル)プロピルブロマイドとをトリエチルアミンとジメチルホルムアミドとの混合溶媒下で反応させ、置換反応メカニズムで2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸化合物を製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0004】
しかし、上述した方法で製造される場合、アミノサリチル酸中のアミン基が塩基として作用して目的とする置換反応は起こらず、出発物質である2‐(4‐ニトロフェニル)エチルブロマイドまたは3‐(4‐ニトロフェニル)プロピルブロマイドから一定の基が臭化水素として除去される反応が起こり、不純物である4‐ニトロスチレン(4‐nitrostyrene)あるいは1‐アリル‐4‐ニトロベンゼン(1‐allyl‐4‐nitrobenzene)が生成される問題点がある。また、このように生成された不純物は一般的な再結晶法では除去し難いという問題点がある。
【0005】
その他の方法も知られているが、今まで知られた方法は全て量産に不向きであるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許登録第6,964,982号
【特許文献2】韓国特許公開第2003−0058934号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体またはその塩の量産に効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は下記化学式1で表されるフェニルアルキルメタンスルホネート化合物と下記化学式2で表されるアルキル5‐アミノサリチレートとを反応させ、下記化学式3で表されるアルキル2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノベンゾエートを製造する段階を含むことを特徴とする、下記化学式4で表される2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体またはその塩を製造する方法を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
化学式1〜4において、nは1〜4の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5は相互独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、炭素数1〜4のアルキル、アリール、炭素数1〜4のアルコキシまたはアミンであり、Aは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Bは水素またはアセチルである。
【0014】
望ましくは、本発明による方法は、化学式1で表されるフェニルアルキルメタンスルホネート化合物と化学式2で表されるアルキル5‐アミノサリチレート化合物との反応温度が60〜90℃であることを特徴とし、より望ましくは、前記化学式1の化合物と化学式2の化合物との反応温度は70〜80℃である。
【0015】
反応温度が上記の範囲より高い場合は、目的とする反応だけでなく他の副反応も引き起こして化合物の純度が低下し、収率が低くなる恐れがある。一方、上記の温度範囲より低い場合は、反応速度が落ちて製造に非常に長時間がかかるという短所がある。
【0016】
また、本発明による方法は、化学式3で表されるアルキル2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノベンゾエートを硫酸水溶液を含む溶媒下で加水分解して2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸硫酸化物(sulfate)を形成する段階を含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明による方法は、2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸硫酸化物をpH3〜3.5に調節して2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸の脱溶媒物、特に2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸の脱溶媒物を製造する段階を含むことを特徴とする。形成された前記2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸硫酸化物、特に2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸硫酸化物は、アミノ基とカルボキシル基を含んでおり、上記のpH範囲から外れる場合は、副産物であるアンモニウムまたはカルボキシレートを形成するため、目的とする化合物の純度が低下する恐れがある。
【0018】
前記化学式4の2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体は、2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸を出発物質として使用して製造でき、化学式3のアルキル2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノベンゾエートを追加反応なく単に精製して製造することもできる。
【0019】
前記化学式4で表される2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体、特に化学式4のうちAとBが両方とも水素である2‐ヒドロキシ‐5‐(置換された)フェニルアルキルアミノ安息香酸の塩を製造する方法としては、前記化合物を、低級アルコール、アセトン、アセトニトリルなどのような有機性溶媒下で、アルカリ金属を提供できる水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機試薬(inorganic reagent)を使用して目的とする塩形態の化合物を製造することができる。アミン塩は、アルコール溶媒下で化学式4の化合物を溶解した後、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどを加えて製造できるが、これに限定されることはない。金属塩は、直接結晶化法で得られるが、凍結乾燥法によっても化学式4の塩を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸またはその塩、特に2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸またはその塩の量産に好適な効率的な製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施例などを挙げてより具体的に説明する。しかし、本発明の実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明の具体的理解を助けるために例示的に提供されるものである。
【実施例】
【0022】
〔2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸の製造〕
下記反応式1に従って2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸を製造した。
【0023】
【化5】

【0024】
(段階I:縮合(Condensation)
50Lのガラス反応器に7.00kgのメチル5‐アミノサリチレート(41.9mol)、11.23kgの化合物A(2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルメタンスルホネート、41.9mol)、5.11kgのトリエチルアミン(50.6mol)、及び26Lのトルエンを窒素保護下で入れて混合した。混合物を撹拌して約70〜80℃で約28〜32時間反応させた。反応が始まって20時間後から4時間毎に反応器からサンプルを採り、HPLCで反応の終結可否を判断した。化合物Aの濃度が0.5%以下であれば、反応が終結したと評価した。その後、反応混合物を45℃に冷却して20Lのロータリーエバポレーター(rotary evaporator)に移し、約0.09MPaの真空、60〜75℃の条件でトルエンが除去されるまで濃縮して黒いオイル状の産物(22.31kg)を得た。それをエタノールに溶解し、50%の硫酸を用いて酸性化させた。混合物は、十分に沈殿させるため、10℃以下に冷却した。濾過後、50%のエタノールで洗浄して13.99kgの化合物B(メチル2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]ベンゾエート)硫酸化物(sulfate)を得た(乾燥基準で74.8%、HPLC純度90.73%)。収率は58.4%であった。
【0025】
(段階II:加水分解(Hydrolyzation)
窒素保護下で、得られた硫酸化物11.6kg(乾燥基準で9.04kg、21.1mol)を98%の硫酸13.2kg (sulfuric acid、132mol)、36Lの精製水及び8.2kgの酢酸(136.7mol)の混合物内で95〜100℃で27時間加水分解した。HPLCでサンプルを分析し、化合物Bの濃度が1%以下であれば、反応が終結したと判断した。その後、反応混合物を10〜20℃に冷却して濾過した。ケーキを6Lの精製水で3回洗浄して10.98kgの化合物C(2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸)の硫酸化物を得た(乾燥基準で69.4%、HPLC純度97.67%)。収率は94.2%であった。
【0026】
(段階III:精製(Purification))
段階IIで得た10.94kgの化合物Cの硫酸化物、30Lの無水エタノール及び7.5Lの精製水を撹拌して50〜65℃に加熱した後、透明な溶液が得られるまで50%の硫酸溶液を滴下した。溶液を濾過し、徐々に10℃以下に冷却した。濾過後、8.77kgの化合物Cの硫酸化物が得られた(乾燥基準で79.0%)。
得られた硫酸化物に15Lの50%エタノールを混合し、25%アンモニア水溶液を用いてpHを3.0〜3.5に調節した。混合物を濾過した後、ケーキを熱い精製水、エタノール、熱い精製水の順で十分洗浄して9.96kgの精製された産物を得た(乾燥基準で58.5%)。その後、得られた産物を55〜65℃の温度で少なくとも0.085Mpaの真空でLOD(Loss on Drying)が0.1%以下になるまで約24時間乾燥した。最終的に5.48kgの2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸(HPLC純度99.6%)が得られ、収率は84.7%であった。
【0027】
(結果物の分析)
製造された2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸のH‐NMRスペクトル分析結果を下記表1に、IR吸収スペクトル分析結果を下記表2にそれぞれ示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるフェニルアルキルメタンスルホネートと下記化学式2で表されるアルキル5‐アミノサリチレートとを反応させ、下記化学式3で表されるアルキル2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノベンゾエートを製造する段階を含むことを特徴とする、下記化学式4で表される2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸誘導体またはその塩を製造する方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(化学式1〜4において、nは1〜4の整数であり、R1、R2、R3、R4及びR5は相互独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜4のハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、炭素数1〜4のアルキル、アリール、炭素数1〜4のアルコキシまたはアミンであり、Aは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Bは水素またはアセチルである。)
【請求項2】
前記化学式1で表されるフェニルアルキルメタンスルホネートと化学式2で表されるアルキル5‐アミノサリチレートとの反応温度が60〜90℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、化学式3で表されるアルキル2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノベンゾエートを硫酸水溶液を含む溶媒下で加水分解して2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸硫酸化物(sulfate)を形成する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、形成された2‐ヒドロキシ‐5‐フェニルアルキルアミノ安息香酸硫酸化物をpH3〜3.5に調節して精製する段階を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
下記反応式1で表される2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸の製造方法。
【化5】

【請求項6】
前記2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルメタンスルホネートとメチル5‐アミノサリチレートとの反応温度が70〜80℃であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、メチル2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]ベンゾエートを硫酸水溶液を含む溶媒に溶解させた後、加水分解して2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸硫酸化物を形成する段階を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、形成された2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ]安息香酸硫酸化物をpH3〜3.5に調節して精製する段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503053(P2011−503053A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533001(P2010−533001)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006432
【国際公開番号】WO2009/064084
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(505274379)ニューロテック ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】