説明

2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボン酸エステル及びその用途

【課題】優れた有害生物防除効力を有する化合物を提供する。
【解決手段】式(1)〔式中、Rは水素原子、フッ素原子、C1〜C4アルキル基、C2〜C4アルケニル基、C2〜C4アルキニル基、C1〜C4アルキルオキシ基、C1〜C4アルキルオキシメチル基またはC1〜C4アルキルチオメチル基を表す。〕で示されるシクロプロパンカルボン酸エステル;式(1)で示されるシクロプロパンカルボン酸エステルを有効成分として含有する有害生物防除剤;および、式(1)で示されるシクロプロパンカルボン酸エステルの有効量を有害生物又は有害生物の生息場所に施用する有害生物の防除方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボン酸エステル及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害生物を防除するために種々の化合物が合成されている。例えば、特許文献1には、ある種のシクロプロパンカルボン酸エステルが記載されている。しかしながら、該シクロプロパンカルボン酸エステルは使用場面によっては有害生物防除効力が十分でない場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開昭57−165343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた有害生物防除効力を有する新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、後記式(1)で示されるエステル化合物が優れた有害生物防除効力を有することを見出し、本発明に到った。
即ち、式(1)
式(1)

〔式中、
Rは水素原子、フッ素原子、C1〜C4アルキル基、C2〜C4アルケニル基、C2〜C4アルキニル基、C1〜C4アルキルオキシ基、C1〜C4アルキルオキシメチル基またはC1〜C4アルキルチオメチル基を表す。〕
で示されるシクロプロパンカルボン酸エステル(以下、本発明化合物と記す。);本発明化合物を有効成分として含有することを特徴とする有害生物防除剤;本発明化合物の有効量を有害生物又は有害生物の生息場所に施用することを特徴とする有害生物防除方法;および、本発明化合物の製造中間体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明化合物は優れた有害生物防除効力を有することから、有害生物防除剤の有効成分として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明化合物にはシクロプロパン環上に1位および3位に2個の不斉炭素原子が存在するが、本発明化合物においては1位の立体配置はS配置であり、3位の立体配置はS配置であり、当該シクロプロパン環における1位の置換基と3位の置換基との相対配置はシス;即ち、(1S)シス−シクロプロパンカルボン酸エステルである。
【0008】
Rで示される置換基において、
C1〜C4アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、
C2〜C4アルケニル基としては、例えばビニル基、2−プロペニル基等が挙げられ、
C2〜C4アルケニル基としては、例えばエチニル基、2−プロピニル基等が挙げられ、
C1〜C4アルキルオキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、
C1〜C4アルキルオキシメチル基としては、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル着等が挙げられ、
C1〜C4アルキルチオメチル基としては、例えばメチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基等が挙げられる。
【0009】
本発明化合物は、式(2)

で示されるアルコールと、式(3)

で示されるカルボン酸とを反応させることにより製造することができる。
【0010】
式(2)で示されるアルコールと、式(3)で示されるカルボン酸との反応について記す。
該反応は通常、酸触媒または縮合剤の存在下に、更に溶媒の存在下に行われる。
反応に用いられる溶媒としては、反応において不活性な溶媒を用いることができ、具体的には例えばトルエン、ヘキサン等の炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
反応に用いられる酸触媒としては、例えば硫酸等の無機酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。酸触媒が用いられる場合、酸触媒の量は式(3)で示されるカルボン酸1モルに対して、通常0.01〜20モルの範囲であり、反応の状況に応じて適宜変化させることができる。
反応に用いられる縮合剤としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド等が挙げられる。縮合剤が用いられる場合、縮合剤の量は式(3)で示されるカルボン酸1モルに対して、通常1モルであるが、反応の状況に応じて適宜変化させることができる。
式(2)で示されるアルコールの量は式(3)で示されるカルボン酸1モルに対して、通常1モルであるが、反応の状況に応じて適宜変化させることができる。
反応時間は通常、瞬時〜72時間の範囲であり、反応温度は通常−20℃〜100℃の範囲である。
反応の終了後は、反応混合物を水に注加し有機溶媒抽出した後に、濃縮する等の通常の後処理操作を行うことによって、本発明化合物と式(1’)

〔式中、Rは前記と同じ意味を表す。〕
との混合物を得ることができる。該混合物をクロマトグラフィー等の分離操作に付すことにより、本発明化合物を単離することができる。必要であれば、単離された本発明化合物を蒸留等の精製操作に付して精製することもできる。
【0011】
また式(3)で示されるカルボン酸と、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等の低級アルコールとを、酸触媒または縮合剤の存在下に上記の反応と同様にして、式(3a)

〔式中、Xはメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等の炭素数1〜5の低級アルコキシ基を表す。〕
で示されるカルボン酸エステルを得ることができる。
式(3a)で示されるカルボン酸エステルを、クロマトグラフィー等の分離操作に付すことにより、下記式(3b)で示されるカルボン酸エステルを得ることができる。
式(3b)で示されるカルボン酸エステルは、水存在下に酸触媒または塩基と反応させることにより、下記式(3c)で示されるカルボン酸を得ることができる。

【0012】
式(3)で示されるカルボン酸に代えて、式(3c)で示されるカルボン酸を用いて上記で示した反応と同様に行うことにより、本発明化合物を製造することもできる。
【0013】
式(3)で示されるカルボン酸は、式(7)

で示される化合物と過ヨウ素酸塩とを、マンガンまたはルテニウムの酸化物の存在下に反応させることにより製造することができる。
【0014】
該反応は通常、溶媒の存在下に行われる。
反応に用いられる溶媒としては、例えば水、あるいは水および水と混和し得る有機溶媒とからなる混合溶媒が挙げられる。水と混和し得る該有機溶媒としては、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
反応に用いられる過ヨウ素酸塩としては、例えばメタ過ヨウ素酸ナトリウム、メタ過ヨウ素酸カリウム等が挙げられる。
反応に用いられるマンガンの酸化物としては、例えば過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、ルテニウムの酸化物としては、例えば酸化ルテニウム(IV)無水物、酸化ルテニウム(IV)水和物等が挙げられる。マンガンの酸化物およびルテニウムの酸化物は、系中にて調製したものをそのまま用いてもよい。
用いられるマンガンの酸化物またはルテニウムの酸化物の量は式(7)で示される化合物1モルに対して、通常0.1〜1モルの範囲であり、過ヨウ素酸塩の量は式(7)で示される化合物1モルに対して、通常2〜30モルの範囲である。
反応の反応時間は通常12〜96時間の範囲であり、反応温度は通常0〜50℃の範囲である。
反応の終了後は、反応混合物を水に注加し有機溶媒抽出した後に濃縮する等の通常の後処理操作を行うことによって、式(3)で示されるカルボン酸を単離することができる。
【0015】
式(3)で示されるカルボン酸の酸ハロゲン化物、式(3)で示されるカルボン酸のの酸無水物または式(3)で示されるカルボン酸の低級アルキルエステルは、各々式(3)で示されるカルボン酸を原料として、公知の方法により製造することができる。
【0016】
式(2)で示されるアルコール化合物は市販品もしくは、特開2000−63329号公報等に記載されている化合物であるか、これらの文献に記載の方法に準じて製造することができる。
【0017】
式(7)で示される化合物は例えば、下記のスキームに記載される方法により製造することができる。

【0018】
・式(4)で示される化合物 → 式(5)で示される化合物
該反応は、式(4)で示される化合物を塩素化剤(例えばオキザリルクロライド等)と反応させた後、更にアンモニアと反応させることにより行われる。
反応は通常、溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。
反応に用いられる塩素化剤の量は式(4)で示される化合物1モルに対して、1モルが理論量であるが、通常1モル〜大過剰量、好ましくは1モル〜3モルの範囲で適宜選択することができる。
式(4)で示される化合物と塩素化剤とを反応させる際は、必要に応じて塩基の存在下に行うことができる。用いることのできる塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。式(4)で示される化合物と塩素化剤とを反応させる際の反応時間は通常1〜24時間の範囲であり、反応温度は通常0℃〜50℃の範囲である。
次いで、アンモニアと反応させる場合は、上記工程の反応混合物または濃縮物に対して、通常アンモニアガスまたはアンモニア水を注入することにより行われる。
反応に用いられるアンモニアの量は、式(4)で示される化合物1モルに対して、1モルが理論量であるが、通常1モル〜大過剰量、好ましくは1モル〜3モルの範囲で適宜選択することができる。アンモニアとの反応の際の反応時間は通常1〜24時間の範囲であり、反応時間は通常0℃〜50℃の範囲である。
反応の終了後は、反応混合物を水に注加し有機溶媒抽出した後に濃縮する等の通常の後処理操作を行うことによって、式(5)で示される化合物を単離することができる。
【0019】
・式(5)で示される化合物 → 式(6)で示される化合物
該反応は、式(5)で示される化合物を無水酢酸と反応させることにより行われる。
反応に用いられる無水酢酸の量は、式(5)で示される化合物1モルに対して、5モル〜大過剰量の範囲である。
反応の反応時間は通常1〜24時間の範囲であり、反応時間は通常25℃〜無水酢酸の還流温度の範囲である。
反応の終了後は、反応混合物を水に注加し有機溶媒抽出した後に濃縮する等の通常の後処理操作を行うことによって、式(6)で示される化合物を単離することができる。単離された式(6)で示される化合物はクロマトグラフィー等により精製することができる。
【0020】
・式(6)で示される化合物 → 式(7)で示される化合物
該反応は、式(6)で示される化合物を塩基存在下、ヨウ化メチルと反応させることにより行われる。
反応は通常、溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。
反応に用いられる塩基としてはn‐ブチルリチウム、sec‐ブチルリチウムなどの、有機リチウム試薬が挙げられる。反応に用いられる塩基の量は、式(6)で示される化合物1モルに対して、1モル〜2モルの範囲である。また反応に用いられるヨウカメチルの量は式(6)で示される化合物1モルに対して、1モル〜3モルの範囲である。
反応の反応時間は通常1〜24時間の範囲であり、反応時間は通常−78℃〜0℃範囲である。
反応の終了後は、反応混合物を水に注加し有機溶媒抽出した後に濃縮する等の通常の後処理操作を行うことによって、式(7)で示される化合物を単離することができる。単離された式(7)で示される化合物はクロマトグラフィー等により精製することができる。
【0021】
式(4)で示される化合物は、例えば特開2001−278851号公報に記載される方法に準じた製造方法により取得することができる。
【0022】
本発明化合物が効力を有する有害生物としては、例えば有害昆虫や有害ダニ等の有害節足動物が挙げられ、具体的には以下のものが挙げられる。
鱗翅目害虫:ニカメイガ、コブノメイガ、ノシメコクガ等のメイガ類、ハスモンヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ等のヨトウ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、コカクモンハマキ等のハマキガ類、シンクイガ類、ハモグリガ類、ドクガ類、ウワバ類、カブラヤガ、タマナヤガ等のアグロティス属害虫(Agrotis spp.)、ヘリコベルパ属害虫(Helicoverpa spp.)、ヘリオティス属害虫(Heliothis spp.)、コナガ、イチモンジセセリ、イガ、コイガ等
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ハモグリバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類、ヌカカ類等
網翅目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等
膜翅目害虫:アリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、カブラハバチ等のハバチ類等
隠翅目害虫:イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミ等
シラミ目害虫:ヒトジラミ、ケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ等
等翅目害虫:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等
半翅目害虫:ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類、コナジラミ類、カイガラムシ類、トコジラミ等のトコジラミ類、グンバイムシ類、キジラミ類等
鞘翅目害虫:ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、コクゾウムシ、イネミズゾウムシ、ワタミゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、ウリハムシ等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ属 (Epilachna spp.)、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ等
総翅目害虫:ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ等
直翅目害虫:ケラ、バッタ等
ダニ類:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サナアシニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類、フタトゲチマダニ等のマダニ類、トリサシダニ、ワクモ等のワクモ類。
【0023】
本発明の有害生物防除剤は本発明化合物そのものでもよいが、通常は下記のような製剤として使用する。その製剤としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、加熱蒸散剤(殺虫線香、電気殺虫マット、吸液芯型加熱蒸散殺虫剤等)、ピエゾ式殺虫製剤、加熱燻煙剤(自己燃焼型燻煙剤、化学反応型燻煙剤、多孔セラミック板燻煙剤等)、非加熱蒸散剤(樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等)、煙霧剤(フォッキング等)、直接接触剤(シート状接触剤、テープ状接触剤、ネット状接触剤等)、ULV剤及び毒餌が挙げられる。
【0024】
製剤化の方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)本発明化合物を、固体担体、液体担体、ガス状担体、餌等と混合し、必要に応じて界面活性剤その他の製剤用補助剤を添加・加工する方法。
(2)本発明化合物を、有効成分を含有していない基材に含浸する方法。
(3)本発明化合物及び基材を混合した後に成形加工する方法。
これらの製剤には、製剤形態にもよるが、通常、本発明化合物を重量比で0.001〜98%含有する。
【0025】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、塩安、尿素等)等の微粉末及び粒状物、常温で固体の物質(2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、ナフタリン、p−ジクロロベンゼン、樟脳、アダマンタン等)、並びに羊毛、絹、綿、麻、パルプ、合成樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;エチレン−テトラシクロドデセン共重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン;アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレエート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリルサルフォン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン等の多孔質樹脂)、ガラス、金属、セラミック等の1種または2種以上からなるフェルト、繊維、布、編物、シート、紙、糸、発泡体、多孔質体及びマルチフィラメントが挙げられる。
【0026】
液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0027】
ガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガスが挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0029】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸等、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、及びBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
【0030】
殺虫線香の基材としては、例えば木粉、粕粉等の植物性粉末とタブ粉、スターチ、グルティン等の結合剤との混合物が挙げられる。
殺虫電気マットの基材としては、例えばコットンリンターを板状に固めたもの、及びコットンリンターとパルプとの混合物のフィリブルを板状に固めたものが挙げられる。
自己燃焼型の基材としては、例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、グウニジン塩、塩素酸カリウム、ニトロセルロース、エチルセルロース、木粉等の燃焼発熱剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重クロム酸塩、クロム酸塩等の熱分解刺激剤、硝酸カリウム等の酸素供給剤、メラミン、小麦デンプン等の支燃剤、珪藻土等の増量剤及び合成糊料等の結合剤が挙げられる。
【0031】
化学反応型燻煙剤の基材としては、例えば、アルカリ金属の硫化物、多硫化物、水硫化物、酸化カルシウム等の発熱剤、炭素質物質、炭化鉄、活性白土等の触媒剤、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ポリスチレン、ポリウレタン等の有機発泡剤、及び、天然繊維片、合成繊維片等の充填剤が挙げられる。
【0032】
樹脂蒸散剤等の基材に用いられる樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;エチレン−テトラシクロドデセン共重合体;プロピレン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエン共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンブタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリルサルフォン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタンが挙げられ、これらの基材は、単独で用いても2種以上の混合物として用いても良く、これらの基材には必要によりフタル酸エステル類(フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸エステル類、ステアリン酸等の可塑剤が添加されていてもよい。樹脂蒸散剤は、本エステル化合物Aおよび本エステル化合物Bを上記基材中に混練した後、射出成型、押出成型、プレス成型等により成型することにより得ることができる。得られた樹脂製剤は、必要により更に成型、裁断等の工程を経て、板状、フィルム状、テープ状、網状、ひも状等の形状に加工することもできる。これらの樹脂製剤は、例えば動物用首輪、動物用イヤータッグ、シート製剤、誘引ひも、園芸用支柱として加工される。
【0033】
毒餌の基材としては、例えば、穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアイアレチン酸等の酸化防止剤、デヒドロ酢酸等の保存料、トウガラシ粉末等の子どもやペットによる誤食防止剤、及びチーズ香料、タマネギ香料、ピーナッツオイル等の害虫誘引性香料があげられる。
【0034】
本発明の有害生物の防除方法は、本発明化合物の有効量を、通常本発明の有害生物防除剤の形態にて、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することにより行われる。
本発明の有害生物防除剤の施用方法としては、例えば以下の方法が挙げられ、本発明の有害生物防除剤の形態、使用場所等に応じて適宜選択できる。
(1)本発明の有害生物防除剤をそのまま有害生物又は有害生物の生息場所に処理する方法。
(2)本発明の有害生物防除剤を水等の溶媒で希釈した後に、有害生物又は有害生物の生息場所に散布処理する方法。
この場合には、通常、乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル製剤等に製剤化された本発明の有害生物防除剤を本発明化合物の濃度が0.1〜10000ppmとなるように希釈する。
(3)本発明の有害生物防除剤を有害生物の生息場所で加熱し、有効成分を揮散させる方法。
この場合、本発明化合物の施用量、施用濃度はいずれも本発明の有害生物防除剤の形態、施用時期、施用場所、施用方法、有害生物の種類、被害状況等に応じて適宜定めることができる。
【0035】
本発明化合物を防疫用として用いる場合は、その施用量は空間に適用するときは、本発明化合物の量として通常0.0001〜1000mg/m3であり、平面に適用するときは0.0001〜1000mg/m2である。殺虫線香、電気殺虫マット等はその製剤形態に応じて加熱により有効成分を揮散させて施用する。樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等は例えば施用する空間にそのまま放置する、および、該製剤に送風下に設置することにより使用できる。
本発明の有害生物防除組成物を防疫用として施用する空間としては、例えばクローゼット、押入れ、和ダンス、食器棚、トイレ、浴場、物置、居間、食堂、倉庫、車内等が挙げられ、さらに野外の開放空間で施用することもできる。
【0036】
本発明の有害生物防除組成物をウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ラット、マウス等の小動物の外部寄生虫防除に用いる場合は、獣医学的に公知の方法で動物に使用することができる。具体的な使用方法としては、全身抑制(systemic control)を目的にする場合には、例えば錠剤、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)により投与され、非全身的抑制(non-systemic control)を目的とする場合には、例えば油剤若しくは水性液剤を噴霧する、ポアオン(pour-on)処理若しくはスポットオン(spot-on)処理する、シャンプー製剤で動物を洗う又は樹脂蒸散剤を首輪や耳札にして動物に付ける等の方法により用いられる。動物体に投与する場合の本発明化合物の量は、通常動物の体重1kgに対して、0.01〜1000mgの範囲である。
【0037】
本発明化合物は他の殺虫剤、殺線虫剤、土壌害虫防除剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤、忌避剤、共力剤、肥料、土壌改良材と混用または併用して用いることもできる。
【0038】
かかる殺虫剤、殺ダニ剤の有効成分としては、例えば、フェニトロチオン、フェンチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、アセフェート、メチダチオン、ジスルホトン、DDVP、スルプロホス、シアノホス、ジオキサベンゾホス、ジメトエート、フェントエート、マラチオン、トリクロルホン、アジンホスメチル、モノクロトホス、エチオン等の有機リン系化合物;
BPMC、ベンフラカルブ、プロポキスル、カルボスルファン、カルバリル、メソミル、エチオフェンカルブ、アルジカルブ、オキサミル、フェノチオカルブ等のカーバメート系化合物;
エトフェンプロックス、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、シペルメトリン、ペルメトリン、シハロトリン、デルタメトリン、シクロプロトリン、フルバリネート、ビフェントリン、2−メチル−2−(4−ブロモジフルオロメトキシフェニル)プロピル(3−フェノキシベンジル)エ−テル、トラロメトリン、シラフルオフェン、d−フェノトリン、シフェノトリン、d−レスメトリン、アクリナトリン、シフルトリン、テフルトリン、トランスフルトリン、テトラメトリン、アレスリン、d−フラメトリン、プラレトリン、イミプロトリン、エンペントリン、5−(2−プロピニル)フルフリル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、メトフルトリン、プロフルトリン、ジメフルトリン等のピレスロイド化合物;
ニトロイミダゾリジン誘導体、クロチアニジン、ジノテフラン等のニトログアニジン誘導体、アセタミプリド等のN−シアノアミジン誘導体、エンドスルファン、γ−BHC、1,1−ビス(クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール等の塩素化炭化水素化合物、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、フルフェノクスロン等のベンゾイルフェニルウレア系化合物、フェニルピラゾール系化合物、メトキサジアゾン、ブロモプロピレート、テトラジホン、キノメチオネート、ピリダベン、フェンピロキシメート、ジアフェンチウロン、テブフェンピラド、ポリナクチンコンプレックス〔テトラナクチン、ジナクチン、トリナクチン〕、ピリミジフェン、ミルベメクチン、アバメクチン、イバーメクチン、及びアザジラクチンが挙げられる。
【0039】
忌避剤の有効成分としては、例えば3,4−カランジオール、N,N−ジエチル−m−トルアミド、1−メチルプロピル 2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、p−メンタン−3,8−ジオール、及びヒソップ油などの植物精油等が挙げられる。
【0040】
共力剤の有効成分としては、例えばビス−(2,3,3,3−テトラクロロプロピル)エーテル(S−421)、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(MGK−264)、及びα−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(ピペロニルブトキシド)が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、製造例、製剤例及び試験例等により本発明さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0042】
まず、本発明化合物の製造例を示す。
製造例1
窒素雰囲気下、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール480mg、(1S)−(トランス/シス=1/1)−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボン酸250mg、4−ジメチルアミノピリジン5mg及びクロロホルム10mlの混合物中に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド=ハイドロクロライド470mgを加え、室温で18時間攪拌した。該反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮した。残渣の無水テトラヒドロフラン5mL溶液に、室温でトリエチルアミン0.18mL、無水酢酸0.12mL及び4−ジメチルアミノピリジン5mgを加え、室温で18時間攪拌し、残存していた4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールをアセチル化した。該反応混合物に飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して、下記式

で示される4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(1)と記す)148mgを得た。
無色結晶:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.30(s,3H)、1.45(s,3H)、1.56(s,3H)、1.96(s,1H)、3.41(s,3H)、4.60(s,2H)、5.25(s,2H)
【0043】
製造例2
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、4−(2−プロピニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される4−(2−プロピニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(2)と記す)を得た。
黄色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.27(s,3H)、1.49(s,3H)、1.50(s,3H)、1.62(s,1H)、2.07(t,1H,J=2.8Hz)、3.65(s,2H)、5.26(d,1H,J=12.1Hz)、5.31(d,1H,J=12.1Hz)
【0044】
製造例3
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(3)と記す)を得る。
【0045】
製造例4
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−3−シアノ−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(4)と記す)を得る。
【0046】
製造例5
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(5)と記す)を得る。
【0047】
製造例6
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、4−メチルチオメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される4−メチルチオメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1S)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(6)と記す)を得る。
【0048】
製造例7
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、4−(2−プロペニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される4−(2−プロペニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=(1R)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(7)と記す)を得る。
【0049】
製造例8
製造例1において、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコールの代わりに、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルアルコールを用いて、同様に操作を行って、下記式

で示される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル=(1R)−シス−2−シアノ−2,3,3−トリメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(8)と記す)と記す)を得る。
【0050】
次に、本化合物の製造中間体の製造例を参考製造例に示す。
参考製造例1

(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸20.0gをTHF120mLに溶かし、これにトリエチルアミン12.7gを加えた。該混合物に0℃でオキザリルクロリド16.0gを滴下し、室温で12時間攪拌した。その後、反応溶液を0℃で28%アンモニア水40gに注ぎ、室温で2時間攪拌した。該反応溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水の順に洗浄した。該有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸アミド17.0gを得た。
無色結晶:1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.13(s,3H)、1.18(d,1H,J=5.3Hz)、1.26(s,3H)、1.72(6H)、2.08(dd,1H,J=7.7,5.3Hz)、4.90(d,1H,7.7Hz)、5.35(brs,1H)、5.46(brs,1H)
【0051】
参考製造例2

(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸アミド10.0gに無水酢酸16.0mLを加え、室温で30分攪拌した後、更に120℃で3.5時間攪拌した。反応混合物を氷水150mL及び酢酸エチル120mLの混合溶液に注ぎ、1時間攪拌した後、有機層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに抽出した。得られた有機層を合一し、水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。該有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボニトリル6.04gを得た。
薄黄色液体:1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.03(d,1H,J=5.1Hz)、1.12(s,3H)、1.35(s,3H)、1.73(s,6H)、1.87(dd,1H,J=7.6,5.2Hz)、4.81(d,1H,J=7.6Hz,5.1Hz)
【0052】
参考製造例3

(1R)−トランス−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボニトリル5.78gを無水テトラヒドロフラン60mLに加え、−70℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液19.5mlを滴下し、同温で30分攪拌した後、冷却バスをはずし、20℃で1時間攪拌した。再び冷却し内温−70℃でヨウ化メチル9.12gを30分かけて滴下した。該反応混合物−70℃で2時間、20℃で12時間攪拌した。反応液を冷却した5%塩酸水100mlに注ぎ、酢酸エチル100mlで2回抽出した。酢酸エチル層を合わせて、飽和重曹水、食塩水各50mlで順次洗浄後、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトにて精製し(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=5:1)、(3S)−トランス、シス−1,2,2−トリメチル−3−(2−メチルプロペニル)シクロプロパンカルボニトリル5.90gを得た。
単黄色液体:1H−NMR(CDCl3)(シス/トランス=2/3)δ(ppm):1.02(s,6/5H)、1.19(s,9/5H)、1.21(s,6/5H)、1.22(s,9/5H)、1.39(s,6/5H)、1.41(d,3/5H,J=7.2Hz)、1.44(s,9/5H)、1.70(s,9/5H)、1.72(s,6/5H)、1.77(s,6/5H)、1.78(s,9/5H)、1.81(d,2/5,J=6.8Hz)、4.78(d,2/5H,J=6.8Hz)5.04(d,3/5H,J=7.2Hz)
【0053】
参考製造例4

(3S)−トランス、シス−1,2,2−トリメチル−3−(2−メチルプロペニル)シクロプロパンカルボニトリル458mgをtert−ブタノール20mL及び水50mLの混合溶液に加え、これにメタ過ヨウ素酸ナトリウム4.5g及び過マンガン酸カリウム70mgを加え、室温で3日間攪拌した。該反応混合物を減圧条件下に濃縮し、tert−ブタノールを溜去した後、得られた水溶液を酢酸エチルで抽出した。該有機層に5%炭酸カリウム水溶液を加えて攪拌後分液した。得られた水層に5%塩酸を加えてpHを3に調製した後、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、(1S)−トランス、シス−3−シアノ−2,2,3−トリメチルシクロプロパンカルボン酸214mgを得た。
単黄色オイル:1H−NMR(CDCl3)(シス/トランス=1/1の混合物)δ(ppm):1.30(s,3/2H)、1.31(s,3/2H)、1.48(s,3/2H)、1.50(s,3/2H)、1.52(s,3/2H)、1.58(s,3/2H)、1.65(s,1/2H)、1.99(s,1/2H)
【0054】
次に製剤例を示す。なお、部は質量部を示す。
製剤例1
本発明化合物(1)〜(8)の各々20部をキシレン65部に溶解し、ソルポール3005X(東邦化学登録商標)15部を加え、よく攪拌混合して、乳剤を得る。
【0055】
製剤例2
本発明化合物(1)〜(8)の各々40部にソルポール3005X5部を加え、良く混合してカープレックス#80(合成含水酸化珪素、塩野義製薬登録商標)32部及び300メッシュ珪藻土23部を加え、ジュースミキサーで攪拌混合して、水和剤を得る。
【0056】
製剤例3
本発明化合物(1)〜(8)の各々1.5部、トクシールGUN(合成含水酸化珪素、株式会社トクヤマ製)1部、リアックス85A(リグニンスルホン酸ナトリウム、West vaco chemicals社製) 2部、ベントナイト富士(ベントナイト、ホウジュン社製) 30部及び勝光山Aクレー(カオリンクレー、勝光山鉱業所社製) 65.5部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合わせた後、押出し造粒機で造粒し、乾燥して、1.5%粒剤を得る。
【0057】
製剤例4
本発明化合物(1)〜(8)の各々10部、フェニルキシリルエタン 10部及びスミジュールL−75(トリレンジイソシアネート、住友バイエルウレタン社製)0.5部を混合した後、アラビアガムの10%水溶液20部中に加え、ホモミキサーで攪拌して、平均粒径20μmのエマルジョンを得る。ここにエチレングリコール2部を加え、さらに60℃の温浴中で24時間攪拌してマイクロカプセルスラリーを得る。一方、ザンサンガム0.2部及びビーガムR(アルミニウムマグネシウムシリケート、三洋化成製)1.0部をイオン交換水56.3部に分散させて増粘剤溶液を得る。上記マイクロカプセルスラリー42.5部及び増粘剤溶液57.5部を混合して、マイクロカプセル剤を得る。
【0058】
製剤例5
本発明化合物(1)〜(8)の各々10部とフェニルキシリルエタン10部とを混合した後、ポリエチレングリコールの10%水溶液20部中に加え、ホモミキサーで攪拌して、平均粒径3μmのエマルジョンを得る。一方、ザンサンガム0.2部及びビーガムR(アルミニウムマグネシウムシリケート、三洋化成製)1.0部をイオン交換水58.8部に分散させて増粘剤溶液を得る。上記エマルジョン溶液40部及び増粘剤溶液60部を混合してフロアブル剤を得る。
【0059】
製剤例6
本発明化合物(1)〜(8)の各々5部をカープレックス#80(合成含水酸化珪素微粉末、塩野義製薬登録商標)3部、PAP(モノイソプロピルホスフェートとジイソプロピルホスフェートとの混合物)0.3部及びタルク(300メッシュ)91.7部を加え、ジュースミキサーで攪拌混合し、粉剤を得る。
【0060】
製剤例7
本発明化合物(1)〜(8)の各々0.1部をジクロロメタン10部に溶解し、これを脱臭灯油89.9部に混合して、油剤を得る。
【0061】
製剤例8
本発明化合物(1)〜(8)の各々1部、ジクロロメタン5部及び脱臭灯油34部を混合溶解し、エアゾール容器に充填し、バルブ部分を取付けた後、該バルブ部分を通じて噴射剤(液化石油ガス)60部を加圧充填して、油性エアゾールを得る。
【0062】
製剤例9
本発明化合物(1)〜(8)の各々0.6部、キシレン5部、脱臭灯油3.4部及びアトモス300(乳化剤、アトラスケミカル社登録商標)1部を混合溶解したものと、水50部とをエアゾール容器に充填し、バルブ部分を通じて噴射剤(液化石油ガス)40部を加圧充填して、水性エアゾールを得る。
【0063】
製剤例10
本発明化合物(1)〜(8)の各々0.3gをアセトン20mlに溶解し、これと線香用基材(タブ粉:粕粉:木粉=4:3:3の割合で混合したもの)99.7gとを均一に攪拌混合した後、水100mlを加え、十分練り合わせたものを成型乾燥し、殺虫線香を得る。
【0064】
製剤例11
本発明化合物(1)〜(8)の各々0.8g及びピペロニルブトキシド0.4gにアセトンを加えて溶解し、全部で10mlとする。この溶液0.5mlを2.5cm×1.5cm、厚さ0.3cmの電気殺虫マット用基材(コットンリンターとパルプの混合物のフィリブルを板状に固めたもの)に均一に含浸させて、電気殺虫マット剤を得る。
【0065】
製剤例12
本発明化合物(1)〜(8)の各々3部を脱臭灯油97部に溶解して得られる液剤を塩化ビニル製容器に入れ、上部をヒーターで加熱できるようにした吸液芯(無機粉体をバインダーで固め、焼結したもの)を挿入することにより、吸液芯型加熱蒸散装置に用いるパーツを得る。
【0066】
製剤例13
本発明化合物(1)〜(8)の各々100mgを適量のアセトンに溶解し、4.0cm×4.0cm、厚さ1.2cmの多孔セラミック板に含浸させて、加熱燻煙剤を得る。
【0067】
製剤例14
本発明化合物(1)〜(8)の各々100μgを適量のアセトンに溶解し、2cm×2cm、厚さ0.3mmの濾紙に均一に塗布した後、アセトンを風乾して、常温揮散剤を得る。
【0068】
次に、本発明化合物が有害生物防除剤の有効成分として有効であることを試験例として示す。
尚、以下の試験例において、比較対象化合物として以下の化合物を用いた。
4−メトキシメチル-2,3,5,6−テトラフルオロベンジル=2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(特開昭57−165343号公報に記載の化合物。以下、比較化合物(A)と記す。)
【0069】
試験例1
供試化合物0.025部をジクロロメタン 10部に溶解し、これを脱臭灯油 89.975部に混合して、0.025%油剤を調製した。
チャバネゴキブリ10頭(雄雌各5頭)を、内壁にバターを塗った試験用コンテナー(直径8.75cm、高さ7.5cm、底面16メッシュ金網張り)内に放飼し、該コンテナーを試験用チャンバー(底面:46cm×46cm、高さ:70cm)の底部に設置した。該コンテナー上面より60cmの高さから本発明化合物(1)〜(6)の各々1.5mlをスプレーガンを用いて噴霧した(噴霧圧力0.4kg/cm2)。噴霧から30秒後に該コンテナーを該試験用チャンバーから取り出し、所定時間後にノックダウンした虫数をカウントし、ノックダウン率を求めた(2反復平均)。
結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明化合物は優れた有害生物防除効力を有することから、有害生物防除剤の有効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

〔式中、Rは水素原子、フッ素原子、C1〜C4アルキル基、C2〜C4アルケニル基、C2〜C4アルキニル基、C1〜C4アルキルオキシ基、C1〜C4アルキルオキシメチル基またはC1〜C4アルキルチオメチル基を表す。〕
で示されるシクロプロパンカルボン酸エステル。
【請求項2】
式(1)で示されるシクロプロパンカルボン酸エステルを有効成分として含有する有害生物防除剤。
【請求項3】
式(1)で示されるシクロプロパンカルボン酸エステルの有効量を有害生物又は有害生物の生息場所に施用する有害生物の防除方法。
【請求項4】
式(3)

で示されるシクロプロパンカルボン酸。

【公開番号】特開2010−24212(P2010−24212A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190651(P2008−190651)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】