説明

2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンの調製方法

2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノン(BTG−1675A)の調製方法について開示し、この方法は、i)酸化剤の存在下、N−ヒドロキシモルフォリンを、シクロヘキセノンと反応して、式IVのイソキサゾリジンを得るステップと、ii)式IVのイソキサゾリジンを、2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンに変換するステップと、を有する。有利には、ステップi)の酸化剤は、金属酸化物、並びにアゾジカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、ステップii)の変換は、塩基性触媒により行われた後、好ましくはトルエンである芳香族炭化水素中で粉砕が行われる。本願に開示の方法により、数百グラムの量のBTG−1675Aを工業スケールで得ることが可能になる。本発明は、さらに、BTG−1675Aの調製方法に使用される、ヒドロキシルアミン、特にN−ヒドロキシモルフォリンの新規の調製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ヒドロキシモルフォリンから出発した2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンの調製方法に関する。また、本発明は、ヒドロキシルアミン、特にN−ヒドロキシモルフォリンの新規の調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
下記式Iの2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンは、BTG−1675Aとしても公知であって、鬱病や不安症、特に、ベンゾジアゼピンの除去により発生し、又はニコチン、アルコール及びコカインなどの物質の投与を急に停止したことにより発生する不安反応の処置用の医薬として、特許文献1に近年記載された物質である。
【0003】
【化5】

【0004】
特許文献1によると、BTG−1675Aは、下記式IIのニトロンと、下記式IIIのシクロヘキセノンとの間の反応を提供する方法により得られる。
【0005】
【化6】

【0006】
【化7】

【0007】
特に、特許文献1において、BTG−1675Aは、下記のステップを提供する方法により得られる。
【0008】
a)触媒酸化の反応を介して式IIの化合物を製造するように、モルフォリンを酸化するステップと;
b)シクロヘキセノンを添加するステップと;
c)蒸留及びクロマトグラフィーを介して、BTG−1675Aを単離及び精製するステップ。
【0009】
特許文献1の例1に述べるように、ステップa)の反応は、酸化剤として過剰量の過酸化水素を、触媒としてタングステン酸ナトリウムを用いることにより、約1時間半の間、0℃の反応温度で行われる。同様の反応容器において、その後、ステップb)のシクロヘキセノン(式III)を添加し、このシクロヘキセノンは、ステップa)の後にin situで形成した式IIのニトロンと、周囲温度から100℃の温度範囲でさらに48時間反応する。次に、この反応混合物を、2時間、約55℃に加熱し、その後、65℃でさらに2時間反応する。特許文献1に記載のように、式IVの中間体(付加環化化合物)が形成され、これから、プロトン化又は塩基性の触媒反応のいずれかにより、in situで本発明の化合物が得られる。
【0010】
【化8】

【0011】
斯かる方法が実現の点で非常に簡便であるにもかかわらず、約14%程度の収率で数グラムのBTG−1675Aを製造し得るのみであるという欠点が示されており、これを工業スケールで適用することには不適当である。さらに、14%という斯かる収率は、かなりの量の廃棄物を産生する複雑なクロマトグラフィーを用いた精製方法に起因するものである。
【0012】
収率を増加させるため、反応条件を変更したり、モルフォリンをニトロン、つまり式IIの化合物に変換する最近の方法を適用するなどする、多くの試みがなされている。斯かる全ての試みは、無意味なものであった。その理由は、反応混合物の分析から、興味ある化合物が実質的に乏しく産生されたことにより、モルフォリンが不完全に酸化されていたり、式IVの化合物の変換率が小さかったり、蒸留において反応粗材料の拡散分解(spread decomposition)が起こることが明らかとなった(非特許文献1〜3)。
【0013】
数百グラムの量のBTG−1675Aを得ることができ、且つ従って、工業スケールでの斯かる製造に適した方法の要求が未だ現存する。
【特許文献1】国際公開第2004/111021号パンフレット(国際特許出願番号PCT/GB2004/002324)
【非特許文献1】Forcato,M.、Nugent,W.A.及びLicini,G.著、Tetrahedron Lett.、2003年、44巻、p.49
【非特許文献2】Murray,R.W.及びIyanar,K.J.著、J.Org.Chem.、1996年、61巻、p.8099
【非特許文献3】Goti,A.及びNannelli,L.著、Tetrahedron Lett.、1996年、37巻、p.6025
【非特許文献4】O’Neil,I.A.及びCleator,E.T.著、Tetrahedron Lett.、2001年、42巻、p.8247
【非特許文献5】Rogers,M.A.T.著、J.Chem.Soc.、1955年、p.769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、工業スケールでの製造に便利な方法を介して多量のBTG−1675Aを得ることである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、医薬として使用するように、高い収率と純度とを有する化合物BTG−1675Aを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
斯かる目的は、請求項1に記載の方法により達成される。
【0017】
本発明による方法は:
i)酸化剤存在下で、下記式VのN−ヒドロキシモルフォリンを下記式IIIのシクロヘキセノンと反応し、下記式IVのイソキサゾリジンを得るステップと;
【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
ii)式IVのイソキサゾリジンを、化合物BTG−1675Aに変換するステップと;
を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明によると、ステップi)は、広範なブランドの酸化剤の存在下で行い、この酸化剤は、好ましくは、酸化水銀、二酸化鉛、活性化した二酸化マンガン及び酸化銀などの金属酸化物である。
【0023】
特に、酸化水銀により、本発明によるN−ヒドロキシモルフォリンの効果的な酸化が可能となる。しかしながら、酸化中の金属水銀への変換は、金属水銀の高い毒性故、広範なスケールの方法においてわずかに利点を有するとみなされる。活性化された二酸化マンガンは、毒性の点では問題は少ないが、反応によって産生される二酸化マンガンの困難な管理を必要とし、且つ装置から濾過を介した消去が困難である。
【0024】
代替的な解決法を探索する試みにおいて、本発明の発明者らが驚くべきことに見出したように、アゾジカルボン酸のエステル及びアミド誘導体は、シクロヘキセノンの存在下、N−ヒドロキシモルフォリンの酸化を、酸化水銀又は活性化した二酸化マンガンにより取得可能なものと比較して、欠点なく、一定の収率に到達することを可能とする。このエステル誘導体のうち、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、ポリマー材料上に支持されたジエチルアゾジカルボキシレート、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート、ジベンジルアゾジカルボキシレートが挙げられる。アゾジカルボン酸のアミド誘導体のうち、アゾジカルボキサミド、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン及び環誘導体である1−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−2,5−ジオンが挙げられる。
【0025】
本発明のさらに別の態様において、本発明は、請求項24に記載のように、酸化剤として、アゾジカルボン酸のエステル及びアミド誘導体を使用することに関する。特に、アゾジカルボン酸のエステル及びアミド誘導体は、ヒドロキシルアミンの酸化に使用され得る。本発明の記述において、用語「ヒドロキシルアミン」は、脂環式又は環式鎖を有する2級アミンを意図するものであって、N−ヒドロキシ置換されたものである。さらに特に、斯かる誘導体は、請求項26によるN−ヒドロキシモルフォリンの酸化に使用される。
【0026】
好ましくは、本発明による方法の酸化剤は、アゾジカルボキサミドである。斯かる物質は、ポリマーにおける消泡剤、及びパンにおける添加剤として、工業上公知である。アゾカルボキサミドのコストは、特に、酸化水銀及び活性化二酸化マンガンと比較して、低く、これらは、市場でより貴重であることに加えて、一般的に過度に使用されている。有利なことに、本発明の方法のステップi)で使用されるアゾジカルボキサミドは、イドラゾジカルボキサミドに変換され、これは、反応混合物中で事実上不溶性の固体であって、濾過により簡単に除去され得る。さらに有利なことに、いわゆるイドラゾジカルボキサミドは、例えば、過酸化水素や電気化学的な酸化反応を介して、アゾジカルボキサミドに再度変換され得る。従って、本発明の方法は、酸化剤がアゾジカルボキサミドである場合、イドラゾジカルボキサミドをアゾジカルボキサミドに変換することにより、酸化剤をリサイクルするステップを提供し得る。
【0027】
ステップi)の酸化剤の存在下でのN−ヒドロキシモルフォリン及びシクロヘキセノンとの間の反応は、好ましくは1時間未満で、40〜100℃の温度、より好ましくは約70℃の温度において、起こる。ステップi)の反応は、酸化剤とは別に、式IVの産物の少なくとも50%よりも大きい収率を可能とし、酸化剤が酸化水銀、活性化された酸化マンガン及びアゾジカルボキサミドからなる群から選択される場合、この収率は、好ましくは約75%となる。
【0028】
N−ヒドロキシモルフォリンは、異なる経路を介して入手可能な公知の化合物である(非特許文献4及び5)。驚くべくことに見出したように、公知のものに対する代替的な合成経路により、N−ヒドロキシモルフォリンを得ることが可能であって、このようにして、本発明の目的に適した収率と純度のレベルがより簡便な方法で達成される。従って、他の態様において、本発明は、請求項16に記載のように、触媒量の特に求電子的なケトンの存在下、過剰な酸化剤と二級アミンとを反応するステップを有する、ヒドロキシルアミンを得る方法に関する。用語「特に求電子的なケトン」は、電子を受容し得る、ヘキサフルオロアセトン三水和物などのケトン性有機化合物を意図する;好ましくは、ヘキサフルオロアセトン三水和物である。好ましくは、本発明によると、斯かる方法により、N−ヒドロキシモルフォリンを得ることが可能となる。産物であるN−ヒドロキシモルフォリンは、請求項18のように、モルフォリンから出発して、95%の収率及び85%の純度で得られる。
【0029】
有利なことに、N−ヒドロキシモルフォリンは、触媒量のトルエンスルホン酸と形成する塩を沈殿することにより、さらに精製され得る。N−ヒドロキシモルフォリンは、アセトン中で炭酸ナトリウムを用いた分解により得られる。この方法による収率は、当初のモルフォリンに対して、約60%である。
【0030】
請求項19によるN−ヒドロキシモルフォリンを得るために、酸化剤は、好ましくは、過酸化水素又は過酸化水素−尿素複合体である。さらに好ましくは、斯かる酸化剤は、過剰量の過酸化水素である。
【0031】
好ましくは、モルフォリンのN−ヒドロキシモルフォリンへの酸化反応は、20〜80℃の温度、より好ましくは約50℃の温度で起こる。
【0032】
本発明による得られるN−ヒドロキシモルフォリンは、原料又は精製したもののいずれも、本発明によるBTG−1675Aを得る出発試薬として好ましく用いられる。酸化剤の存在下、シクロヘキセノンを用いた反応による斯かる方法によると、N−ヒドロキシモルフォリンは、式IVのイソキサゾリジンとなり、これは、次なるステップii)においてBTG−1675Aに変換される。斯かる変換反応は、熱的に、又は塩基触媒的に有利に進められる。
【0033】
塩基触媒の場合、例えばメタノール中のトリエチルアミン、又はメタノール中の化学量論的量のNaOHなどの穏和な塩基触媒を用いるとき、BTG−1675Aは、緩徐に形成され、従って、式IVの化合物とBTG−1675Aとが2:3の比率で存在する平衡状態で混合物が製造される。有利なことに、この平衡状態をBTG−1675Aにシフトするために、過剰量のメトキシドナトリウムを用いることも可能である。
【0034】
本発明において、塩基触媒、好ましくは熱メタノール中のトリエチルアミンにより進められる反応から、有利なことに、芳香族炭化水素中での粉砕を介して、収率45%でBTG−1675Aが取得可能であって、式IVのイソキサゾリジンは、よりかなり安定である。粉砕の母液を蒸発して、純粋なBTG−1675Aが有利なことに取得可能である。斯かる方法において、本発明によると、変換されていない回収材料を考慮することにより、約90%の収率で、イソキサゾリジンのBTG−1675Aへの変換が可能である。好ましくは、上記の粉砕用の芳香族炭化水素は、トルエン又はベンゼンであって、より好ましくはトルエンである。
【0035】
式IVのイソキサゾリジンの化合物BTG−1675Aへの変換、及び続く芳香族炭化水素中での粉砕は、本発明の方法において、工業スケールでBTG−1675Aを得るのに有利且つ有用な解決法である。
【実施例】
【0036】
次に、例示的で非限定的な目的で、N−ヒドロキシモルフォリン及びBTG−1675Aの調製方法の例を示す。
【0037】
(例1)
N−ヒドロキシモルフォリンの調製
アセトン(350mL)中にモルフォリン(174mL、2モル)及びヘキサフルオロアセトン三水和物(3mL、21ミリモル)を含有し、三口の丸底フラスコ(還流冷却器上に載置)中に機械攪拌下で保持された溶液に、H(30%の溶液200mL、3.6モル)を滴下で添加した。この添加の後、温度を漸次上昇させ、約50mLを添加した後、溶液の還流を激しく開始する;この添加は、一定の還流を保持するように、調節される。添加が終わった場合、溶液を1時間攪拌下に置き、その後、ロタベーパー(rotavapor)により減圧下で蒸留する一方、浴の温度を50℃に保持した。蒸留に係る赤みがかった黄色の残渣を、酢酸エチル(500mL)に懸濁し、この混合物を、塩化ナトリウムで飽和した;その後、この溶液の有機相(上層)を分離し、水相を、エチル二酢酸(250mL)で二回抽出した。採取した有機抽出物を、無水炭酸ナトリウム(20g)上で乾燥し、ロタベーパーにより減圧下で蒸留する一方、浴の温度を50℃に保持した。その後、原料であるN−ヒドロキシモルフォリンを得た(190g、収率92%、純度85%、残りは、主として、未反応のモルフォリンで構成される。)。その後、この原料であるN−ヒドロキシモルフォリンを、BTG−1675Aの調製に用いた。
【0038】
得た原料であるN−ヒドロキシモルフォリンのサンプル(1g、10ミリモル)を下記の方法により精製した:
このサンプルを、アセトン(10mL)に溶解した;このようにして得、且つ加熱した溶液において、p−トルエンスルホン酸を溶解した(1.9g、10ミリモル);4℃としたこの溶液から、白色の結晶性固体として、N−ヒドロキシモルフォリニウムのp−トルエンスルホン酸(1.9g、65%)を分離した:融点152〜154℃。H−NMR(DMDO−d)2.27(3H,s),1.54(2H,m),3.54−3.69(4H,m),3.97(2H,m),7.14(2H,d,J=8Hz),7.51(2H,d,J=8Hz)。13C−NMR(CDCl):20.9,55.5,62.6,125.6,128.5,138.6,144.6。得た塩を、アセトン(20mL)の無水炭酸ナトリウム(1g、10ミリモル)の懸濁液に添加し、この混合物を、12時間、磁気的に攪拌した;その後、この固体を、濾過及び濾過物の蒸発により除去し、無色の油状物として、精製したN−ヒドロキシモルフォリン(0.65g、100%)を得た。H−NMR(CDC1)2.54(2H,t,J=11Hz),3.04(2H,d,J=11Hz),3.49,(2H,t,J=11Hz),3.80(2H,d,J=11Hz),7.9(IH,bs)。13C−NMR(CDCl):58.9,66.6。
【0039】
(例2)
2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノン(BTG−1675A)の調製
ステップi)N−ヒドロキシモルフォリンとシクロヘキセノンとの反応及び式IVのイソキサゾリジンの製造
酢酸エチル(500mL)中に、例1で得た原料であるN−ヒドロキシモルフォリン(190g)、2−シクロヘキセノン(120mL、1.25モル)及びアソジカルボキサミド(235g、2モル)を含有し、還流冷却器上に載置された丸底フラスコ中に機械攪拌下で保持された混合物を、反応が発熱性となるまで注意深く加熱し、この混合物を同時に還流させた;同時の加熱の終期において、その混合物を、加熱して4時間還流した。この時間において、鮮やかな黄色の固形物であるアゾジカルボキサミドは、白色の固体となった。丸底フラスコ内の暖かい内容物を、その後、多孔性の隔膜を設けたガラスカラムに移入し、上記の溶液を、圧力をかけて濾過した;カラム中の固形物を、熱酢酸エチル(400mL)で洗浄した。収集した濾物を、減圧下で蒸留して、半固形の残渣を得、これに、メタノール(200mL)を添加した;その混合物を、最初に加熱して、上記の半固形物を粉砕し且つ油状の画分を溶解し、その後、−20℃に冷却した;無色の結晶性固形物として、式IVのイソキサゾリジン(130g、シクロヘキセノンに対して54%)を収集した。融点101〜102℃。13C−NMR(CDCl)17.8,28.1,39.2,50.4,53.2,64.6,65.6,66.1,76.0,210.9。
【0040】
ステップii)式IVのイソキサゾリジンの化合物BTG−1675Aへの変換
ステップi)で上記の通り得た式IVのイソキサゾリジン(500g、2.5モル)と、トリエチルアミン(100mL)と、メタノール(1L)とからなる混合物を加熱して、24時間還流し、減圧下で蒸留した。この残渣を、トルエン(1.3L)に懸濁し、溶媒の一部を、蒸留物が澄明となるまで、ロタベーパー(浴温度:70℃)において減圧下で蒸留した;トルエンを添加して、混合物の容量を、約800mLとし、この混合物を、水及び氷の浴中で冷却した。減圧下、濾過により沈殿物を収集し、冷トルエンで一回洗浄して、無色の結晶物として、式IVのイソキサゾリジン及びBTG−1675Aの混合物を得た(490g、98%)。この質量物を、70℃に前もって加熱したトルエン(1L)に懸濁し、この混合物を激しく攪拌しながら保持する一方、室温に再平衡化した;減圧下で濾過により収集した固形物を、上記に述べたように、熱トルエン中での粉砕と、その後の冷却及び濾過とのサイクルに付した;このようにして、氷白色(ice−white colour)の結晶性固形物として、純粋なBTG−1675Aを得た(230g、46%、上記のイソキサゾリジン及びBTG−1675Aの混合物の収集した混合物の量を基礎として90%、純度98%以上);融点127〜128℃。H−NMR(CDCl)1.96(2H,m),2.41(4H,m),2.83(1H,dt,J=3.5及び11.5Hz),3.06(1H,t,J=11.5Hz),3.20(1H,d,J=11Hz),3.54−3.90(4H,m),5.45(1H,bs),7.12(1H,t,4.3Hz)。13C−NMR(CDCl):23.2,26.5,38.9,58.9,64.5,67.2,71.9,136.2,148.8,199.1。粉砕に由来する収集した濾過物を蒸留して、残渣を得、これから、冷エチルエーテル中で粉砕して、イソキサゾリジンとBTG−1675Aとが5:1の比率でなる混合物(245g、49%)を得た。
【0041】
上記の例に示すように、本発明による方法により、数百グラムの量及び高い収率で、2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンを得ることが可能であって、本発明は、工業スケールでBTG−1675Aを製造するのに適する。
【0042】
さらに、本発明による方法により得たBTG−1675Aは、医薬として有利に精製且つ使用することが可能である。
【0043】
本発明について、2つの調製例を参照して述べたが、異なる酸化剤を使用するなどの改変は、添付の特許請求の範囲の保護の範囲を超えることなく、可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I
【化1】


の2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンの調製方法であって:
i)酸化剤の存在下、式VのN−ヒドロキシモルフォリン
【化2】


を、式IIのシクロヘキセノン
【化3】


と反応して、式IVのイソキサゾリジン
【化4】


を得るステップと;
ii)式IVのイソキサゾリジンを、2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンに変換するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酸化剤は、金属酸化物、並びにアゾジカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤は、酸化水銀、二酸化鉛、活性化した二酸化マンガン、酸化銀、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート及びアゾジカルボキサミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、酸化水銀又は活性化した二酸化マンガンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、アゾジカルボキサミドであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ステップi)で得た反応産物であるヒドラゾジカルボキサミドの分離とこれのアゾジカルボキサミドへの変換とを介した、酸化剤であるアゾジカルボキサミドをリサイクルするステップをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップi)は、1時間未満の時間、及び40〜100℃の温度、好ましくは約70℃の温度で行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式IVのイソキサゾリジンの収率は、少なくとも50%よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
イソキサゾリジンの収率は、約75%であることを特徴とする請求項1、4、5及び8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップii)の変換は、熱的、又は塩基触媒的に行われることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変換は、メタノール中のトリエチルアミン及びメタノール中のNaOHから選択される塩基触媒を用いた塩基触媒により行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンは、芳香族炭化水素中の粉砕により、純粋に得られることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記芳香族炭化水素は、トルエン又はベンゼンであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記芳香族炭化水素は、トルエンであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記2−(4−ヒドロキシ−3−モルフォリニル)−2−シクロヘキセノンは、約45%の収率で得られることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒量の特に求電子的なケトンの存在下、二級アミンを、過剰量の酸化剤と反応するステップを有することを特徴とするヒドロキシルアミンの調製方法。
【請求項17】
前記二級アミンは、モルフォリンであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドロキシルアミンは、N−ヒドロキシモルフォリンであることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化剤は、過剰量の過酸化水素、又は過酸化水素−尿素複合体であることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化剤は、過剰量の過酸化水素であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記の特に求電子的なケトンは、ヘキサフルオロアセトン三水和物又はニニドリン(ninidrine)であることを特徴とする請求項16乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記の特に求電子的なケトンは、ヘキサフルオロアセトン三水和物であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップi)のN−ヒドロキシモルフォリンは、請求項18に記載の方法により得たN−ヒドロキシモルフォリンであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
酸化剤としてのアゾジカルボン酸のエステル又はアミドの使用。
【請求項25】
ヒドロキシルアミンの酸化用であることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記ヒドロキシルアミンは、N−ヒドロキシモルフォリンであることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記のアゾジカルボン酸のアミド誘導体は、アゾジカルボキサミドであることを特徴とする請求項24乃至26のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−526838(P2009−526838A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554914(P2008−554914)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000088
【国際公開番号】WO2007/094022
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508234110)アビオゲン ファルマ ソシエタ ペル アチオニ (4)
【Fターム(参考)】