説明

2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体およびその製造中間体

【課題】2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体が選択的にかつ高い収率で得られる製造方法の提供。
【解決手段】式(2)


[式中、Xは脱離基を表し、R1、R2およびR3は、各々独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す]で示される化合物を、酸触媒の存在下、アセタール化剤の助けによって、2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式1の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体の製造法に関する。
【0002】
【化1】

ここで、Xは脱離基を表し、R1、R2およびR3は、各々独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。該方法は、酸触媒の存在下で、適切なアセタール化剤を使用して、式2の化合物から出発する。
【0003】
【化2】

ここで、Xは上記で定義した通りである。
【0004】
本発明はまた、式1の新規化合物、ならびにそれから得られ得る式3の塩および酸にも関する。
【0005】
【化3】

ここで、X、R1およびR2は上記した意味を有し、Yは、アルカリ(土類)金属または置換されたもしくは置換されていないアンモニウム基を表し、あるいは水素を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、驚いたことに、2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体が、式(2)の対応する化合物から、選択的にかつ高い収率で得られ得ることを見出した。それは、相対的にあまり安定でないこれらの生成物を温和な条件下で製造することを可能にする。これは、ますます興味深い。なぜならば、これは、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤の製造において、対応する塩、対応するt−ブチルエステル、および2−ヒドロキシメチル置換された化合物を中間体として介する簡単な方法を提供するからである。所望により、転化は、(選択された反応条件に依存して)中間の塩またはエステルを介して進行し、式(2)に従う化合物中の環は開かれる。
【0007】
本発明に従う方法の追加の利点は、式(2)の出発化合物および式(3)の生成物が共に結晶性化合物であることが分かったことである。これは、(化学的および立体化学的に)高い純度を有する生成物を得ることにおいて有利である。これは、意図される医薬用途を鑑みて特に重要である。意図される用途に関して、特に(4R,6S)−2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体が重要である。それは、対応する6−置換−2,4,6−トリデオキシ−D−エリスロヘキソースから製造され得る。したがって、本発明は、式(2)の出発化合物(特にX=Cl)およびそのような化合物の粒子にも関する。特に上記粒子の90重量%より多くは、1:1.5〜1:6、好ましくは1:2〜1:4.4の長さ/直径比および0.05〜2mm、特に0.1〜1mmの粒子長さを有する。本発明は、そのような粒子にも関する。式(2)の化合物は、73〜74℃のはっきりした融点を有する透明な結晶性粒子を付与する。式(1)の(4R,6S)−2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体から誘導される式(3)の生成物は、本発明によれば、95%より多い、特に99.5%より多いエナンチオマー過剰(e.e.)および90%より多い、特に99.5%より多いジアステレオマー過剰(d.e.)を伴って製造され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う方法で適用され得る適切な脱離基の例は、ハロゲン、特にCl、BrまたはI;トシレート基;メシレート基;アシルオキシ基、特にアセトキシおよびベンゾイルオキシ基;アリールオキシ置換された、特にベンジルオキシ置換された、またはニトロ置換されたベンゼンスルホニル基である。実際的な理由のために、好ましくはClが脱離基として選択される。
【0009】
基R1、R2およびR3は、各々別個に、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、好ましくはメチルまたはエチルである。実際には、R1=R2=R3=メチルが最も好ましい。
【0010】
本発明に従う方法で適用され得る適切なアセタール化剤の例は、ジアルコキシプロパン化合物(アルコキシ基は各々、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する)、例えば2,2−ジメトキシプロパンまたは2,2−ジエトキシプロパン;アルコキシプロペン(アルコキシ基は好ましくは1〜3個の炭素原子を有する)、例えば2−メトキシプロペンまたは2−エトキシプロペンである。最も好ましくは、2,2−ジメトキシプロパンである。これは、所望により、アセトンおよびメタノールから、好ましくは水を除去しながら、インシチューに(in situ)形成され得る。
【0011】
酸触媒としては、アセタール化反応のために公知の酸触媒、好ましくは非求核性強酸、例えばスルホン酸、特にp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸または樟脳スルホン酸;非求核性アニオンを有する無機酸、例えば硫酸、リン酸;酸性イオン交換剤、例えばDOWEX;または固体酸、例えばいわゆるヘテロポリ酸が使用され得る。
【0012】
アセタール化は、別個の溶媒を使用することなく行われ得る。所望ならば、有機溶媒中でその反応を行うこともできる。適する有機溶媒の例は、ケトン、特にアセトン、炭化水素、特に芳香族炭化水素、例えばトルエン、塩素化炭化水素、例えば塩化メチレンである。
【0013】
アセタール化反応が行われる温度は、好ましくは−20℃〜60℃、特に0℃〜30℃である。アセタール化反応は、好ましくは、不活性雰囲気下で行われる。
【0014】
アセタール化剤と式(2)の出発化合物とのモル比は好ましくは、1:1〜20:1、特に3:1〜5:1である。有機溶媒を使用すると、そのモル比は特に1:1〜2:1である。
【0015】
酸触媒と式(2)の出発化合物とのモル比は好ましくは、1:1〜0.001:1、特に0.01:1〜0.05:1である。
【0016】
得られる2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体は次いで、塩基および水の存在下で加水分解されて式(3)の対応する塩を形成し得る。
【0017】
【化4】

ここで、Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、または置換されたもしくは置換されていないアンモニウム基を表し、好ましくはNa、Caまたはテトラアルキルアンモニウム化合物である。所望により、加水分解の後、式(3)においてY=Hである酢酸に転化される。
【0018】
式(3)の化合物の加水分解は好ましくは、式(3)の化合物に対して少なくとも1塩基当量、特に1〜1.5塩基当量を用いて行われる。原則として、より大過剰量が使用され得るが、実際、これは通常、何らの利点も付与しない。
【0019】
反応は好ましくは、−20℃〜60℃、特に0℃〜30℃の温度で行われる。
【0020】
加水分解は例えば、水、有機溶媒、例えばアルコール、特にメタノールまたはエタノール、芳香族炭化水素、例えばトルエン、またはケトン、特にアセトンまたはメチルイソブチルケトン(MIBK)、あるいは有機溶媒と水との混合物の中で行われ得、所望により、相転移触媒(PTC)によってまたは共溶媒の添加によって触媒される。
【0021】
加水分解は、酵素的に行うこともでき、所望のジアステレオマーが所望により選択的に加水分解される。
【0022】
本発明に従う方法で好適に使用され得る酵素の例は、リパーゼまたはエステラーゼ活性を有する酵素、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属、特にシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・フラギ(Pseudomonas fragi);ブルコルデリア(Burkholderia)属、特にブルコルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia);クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、特にクロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterium viscosum);バチルス(Bacillus)属、特にバチルス・サーモカテヌラタス(Bacillus thermocatenulatus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis);アルカリゲネス(Alcaligenes)属、特にアルカリゲネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis);アスペルギルス(Aspergillus)属、特にアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger);カンジダ(Candida)属、特にカンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea);ゲオトリカム(Geotrichum)属、特にゲオトリカム・カンジダム(Geotrichum candidum);フミコラ(Humicola)属、特にフミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa);ペニシリウム(Penicillium)属、特にペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)、ペニシリウム・ロクエフォルチ(Penicillium roquefortii)、ペニシリウム・カマンベルチ(Penicillium camembertii);リゾムコール(Rhizomucor)属、特にリゾムコール・ジャバニカス(Rhizomucor javanicus)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei);ムコール(Mucor)属、特にムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus);リゾプス(Rhizopus)属、特にリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arhizus)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾプス・ジャバニカス(Rhizopus javanicus)由来の酵素;ブタ膵臓リパーゼ、小麦胚リパーゼ、ウシ膵臓リパーゼ、子ブタ肝臓エステラーゼである。好ましくは、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、ブルコルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、ブタ膵臓、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、またはカンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)由来の酵素、あるいはサブチリシンが使用される。エナンチオマー選択性酵素が使用されると、加水分解中にさらに一層のエンンチオマー富化が実現される。そのような酵素は、一般に公知の技術を使用して得られ得る。多くの酵素が化学工業的規模で製造され、市販されている。
【0023】
得られる塩(酸)は新規である。本発明はしたがって、式(3)のこれらの生成物にも関する。
【0024】
【化5】

ここで、Xはハロゲン、特にCl、BrもしくはI、トシレートもしくはメシレート基、3〜10個の炭素原子を有するアシルオキシ基、またはニトロ置換されたベンゼンスルホニル基を表し、YはH、アルカリ(土類)金属、または置換されたもしくは置換されていないアンモニウム基を表す。
【0025】
式(3)の得られる塩は次いで、自体公知の方法で、対応するt−ブチルエステル(式(1a)においてR3=t−ブチル)に転化され得る。
【0026】
【化6】

【0027】
本発明に従う方法では、式(3)の化合物は例えば、エステル化されて対応するt−ブチルエステルを形成し得る。これは、下記方法を使用して行われ、該方法は一般に文献に記載されている。
【0028】
イソブテンおよび強酸、例えばパラトルエンスルホン酸(pTS)、硫酸または強酸性イオン交換剤との反応(米国特許第3325466号);
塩基、例えばトリエチルアミン(Et3N)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)の影響下での酸塩化物およびt−ブタノールとの反応。酸塩化物は、例えばSOCl2、POCl3、(COCl)2の助けによって製造され、そして例えばジメチルホルムアミド(DMF)によって触媒され得る(J. Org. Chem. 35, 2429 (1970));
酸塩化物およびLi−t−ブタノレートによる反応(Org. Synth. 51, 96 (1971));
強酸の影響下でのt−ブチルアセテートによるエステル交換(Z. Chem. 12(7), 264 (1972));
好ましくはDMF、ジメチルアセタミド(DMAA)、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で相転移触媒(PTC)を使用する、塩とt−ブチルブロミドとの反応(Tetr. Let. 34(46), 7409 (1993));
酸とt−ブタノール、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびDMAPとの反応(Synth. Comm. 9, 542 (1979));
酸とt−ブチルトリクロロアセトアミデートとの反応(Tetr. Let. 39, 1557 (1998));
酸とカルボキシルジイミダゾール(CDI)およびt−ブタノールとの反応;
DMAPまたはN−メチルモルホリン(NMM)の影響下での酸と塩化ピバロイルおよびt−ブタノールとの反応(Bull. Chem. Soc. Japan, 52(7), 1989 (1979));
塩とジ−t−ブチルジカーボネート、DMAPおよびt−ブタノールとの反応(Synthesis, 1063 (1994));
酸と塩化シアヌルおよびピリジンまたはトリエチルアミンとの反応(Org Process R&D, 3, 172 (1999);Heterocycles, 31 11, 2055 (1990))。
【0029】
2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸の得られるt−ブチルエステルは次いで、例えば米国特許第5594153号または欧州特許出願公開A−1024139号に記載されているように、塩中のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物および/またはカルボン酸の存在下で、R3=t−ブチルおよびX=アシルオキシ、例えばアセトキシ基を有する式(1a)の化合物への転化を介して2−(6−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸に転化され得る。アシルオキシ基は次いで、加溶媒分解によって、他の一般に公知の方法で、ヒドロキシル基に転化され得る。加溶媒分解は、塩基(メタノール中のNa2CO3、K2CO3またはナトリウムメタノレート)を使用して、所望により、生成したメチルアセテートの同時蒸留により、行われ得る。
【0030】
2−(6−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸のt−ブチルエステルは、種々のスタチン、例えば、Drugs of the future, (1999), 24(5), 511-513, M. Watanabeら;Bioorg. & Med. Chem. (1997), 5(2), 437-444に記載されているZD−4522の製造における望ましい中間生成物である。本発明はしたがって、これらの中間生成物へのおよび最終生成物、特にスタチンへの新規な興味深い方法を提供する。
【0031】
式(2)の出発化合物は、例えば、国際特許出願公開A−96/31615号に記載されているように得られ得る。
【実施例】
【0032】
本発明を、以下の実施例を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
実施例I
(4R,6S)−4−ヒドロキシ−6−クロロメチル−テトラヒドロピラン−2−オン(化合物II:式(2)によってカバーされる)の製造
室温で、2.1mlの臭素を、40mlの塩化メチレンおよび10mlの水中の6.7g(40ナノモル)の6−クロロ−2,4,6−トリデオキシ−D−エリスロヘキソース(化合物I;国際特許出願公開A−96/31615号に記載されている方法に従って製造された)および6.7gの重炭酸ナトリウムの混合物に45分で添加した。CO2ガスが逃散し、一方、pHは5のままであった。1時間撹拌した後、気液クロマトグラフィー(GLC)によれば、出発物質は完全に転化された。臭素過剰量は、固体のNa223によって中和された。相分離の後、水相を100mlの酢酸エチルで2回抽出した。有機相を一緒にして、Na2SO4上で乾燥させ、そして濾過した。ロータリー蒸発の後、5.5gの黄色油状物が得られた(化合物Iに対して、X=Clを有する式(2)の化合物の82%収率)。
1HNMR(200MHz、CDCl3):δ1.8〜2.1(m,2H);2.6〜2.7(m,2H);3.5〜3.8(m,2H(CH2Cl));4.4(m,1H);4.9(m,1H)
【0034】
実施例II
(4R,6S)−4−ヒドロキシ−6−クロロメチル−テトラヒドロピラン−2−オン(化合物II:式(2)によってカバーされる)の製造
390mlの水中の75g(450ミリモル)の化合物Iの溶液に、15〜25℃で3時間、114g(715ミリモル)の臭素を添加した。反応混合物のpHを、炭酸ナトリウム(総量88g)を同時に添加することにより、5〜6に維持した。臭素の過剰量を、重亜硫酸ナトリウムで中和した。生成物を、酢酸エチルを使用して水相から抽出した(向流抽出)。
生成物を酢酸エチル/ヘプタン(125g/62g)から結晶化した。0℃に冷却した後、結晶を濾過し、50mlのヘプタン/酢酸エチル(w:w=9:1)で洗浄し、乾燥して、49.2g(化合物Iに対して67%)の化合物IIを無色針状晶として得た(融点73〜74℃)
【0035】
実施例III
(4R-シス)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸メチルエステル(化合物III)の製造
実施例Iで得られた化合物IIの5.5gを20mlの市販のジメトキシプロパンおよび100mgのp−トルエンスルホン酸1水和物に室温で添加した。室温で1時間撹拌した後、GLC分析により、完全な転化が生じかつ透明な溶液が生じたことが示された。500mgのNaHCO3を添加した後、室温で30分間撹拌を行った。濾過およびロータリー蒸発の後、7.1gの化合物IIIが淡黄色油状物として得られた(化合物IIに対して91%)。
1HNMR(200MHz、CDCl3):δ1.25(dt,1H);1.40(s,3H);1.47(s,3H);1.79(dt,1H);2.42(dd,1H);2.58(dd,1H);3.40(dd,1H);3.52(dd,1H);3.70(s,3H);4.1(m,1H);4.35(m,1H)
【0036】
実施例IV
(4R-シス)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸メチルエステル(化合物III)の製造
100mlのトルエン中の49.2g(300ミリモル)の化合物IIの溶液に、47g(450ミリモル)のジメトキシプロパンおよび850mgのp−トルエンスルホン酸1水和物(4.5ミリモル)を添加した。室温で1時間撹拌した後、GLC分析により、化合物IIの完全な転化が示された。トルエン相を水中の0.2N NaOH溶液50mlで洗浄した。蒸発後、67gの化合物IIIが、淡黄色油状物として得られた(化合物IIに対して94%)。
【0037】
実施例V
(4R-シス)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸、ナトリウム塩(化合物IV)
55g(233ミリモル)の化合物IIIを200mlの水に添加した。室温で、水中の50%NaOH溶液20gをpH=12で2時間で滴下した。加水分解をGLCを使用してモニターした。20g後、pHは一定のままであった。濃塩酸を使用してpHを10に下げた。水相を100mlの酢酸エチルで洗浄し、ロータリー蒸発を使用して蒸発させた。生成した油状物を、無水エタノールおよびトルエンを用いてストリッピングすることにより乾燥した。固体を200mlのアセトン中に撹拌し、濾過し、冷アセトンで洗浄した。減圧乾燥後の収量は、45.6g=化合物IIIに対して80%のNa塩であった。
1HNMR(200MHz、CDCl3/CD3OD):δ1.21(dt,1H);1.36(s,3H);1.49(s,3H);1.79(dt,1H);2.25(dd,1H);2.45(dd,1H);3.46(m,2H);4.11(m,1H);4.36(m,1H)
【0038】
実施例VI
(4R-シス)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸、ナトリウム塩(化合物IV)
49.2gの化合物Iから出発して、トルエン中の化合物IIIの溶液を実施例IVに記載したように製造した。5gのメタノールおよび25mlの水を添加した。室温で、水中のNaOHの50%水溶液25gを1時間で滴下した。室温で4時間撹拌した後、GLC分析によって完全な加水分解が示された。
塩基の過剰量が、水中の33%HCl溶液を使用してpH8.5〜9.5に中和された。470mlのトルエンを使用して共沸蒸留によって水相が分離され、そして乾燥されて、65gの化合物IVが、KF<0.1%を有するトルエン中の16重量%懸濁物として得られた。その懸濁物は、化合物Vの合成に使用され得る。
【0039】
実施例VII
(4R-シス)−6−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸、t−ブチルエステル(化合物V)
45.5gのIV、ナトリウム塩(186ミリモル)を、1400mlの乾燥t−ブタノール中の159gのジ−t−ブチルジカーボネートの溶液に添加した。6.8gのジメチルアミノピリジンを添加した後、40℃で16時間撹拌を行った。反応混合物を1500mlの酢酸エチルおよび1000mlの飽和塩化アンモニウムに注入した。水相を1500mlの酢酸エチルで再抽出した。有機相を一緒にして600mlの飽和NaCl溶液で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、次いで減圧蒸発させると、51.9gの黄色油状物が得られた(化合物IVに対して、100%)。
1HNMR(200MHz、CDCl3):δ1.15〜1.33(m,1H);1.40(s,3H);1.45(s,3H);1.47(s,9H);1.77(dt,1H);2.33(dd,1H);2.46(dd,1H);3.40(dd,1H);3.49(dd,1H);4.08(m,1H);4.28(m,1H)
【0040】
実施例VIII
(4R-シス)−6−[(アセトキシ)メチル]−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸、t−ブチルエステル(化合物VI)
実施例VIIにしたがって得られた化合物Vの33gから出発して、29gの化合物VIが、米国特許第5457227号に従って(40gのテトラ−n−ブチルアンモニウムアセテートを使用し、200mlのDMF中)、100℃で16時間で、75mlのヘプタンからの結晶化後に固体として得られた。
1HNMR(200MHz、CDCl3):δ1.1〜1.3(dt,1H);1.39(s,3H);1.45(s,9H);1.47(s,3H);1.57(dt,1H);2.08(s,3H);2.08(s,3H);2.32(dd,1H);2.46(dd,1H);4.0〜4.2(m,3H);4.3(m,1H)
【0041】
実施例IX
(4R-シス)−6−[ヒドロキシメチル]−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル酢酸、t−ブチルエステル(化合物VII)
実施例VIIIに従う化合物VIの29gから出発して、25.0gの化合物VIIが、米国特許第5457227号に従って(300mlのメタノール中の6.9gの炭酸カリウムが使用される)、e.e.=100%、d.e.=99.9%を有する淡黄色油状物として得られた。
1HNMR(200MHz、CDCl3):スペクトルは、文献(Synthesis 1014, 1995)と一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

[式中、Xは脱離基を表し、R1、R2およびR3は、各々独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体の製造法において、酸触媒の存在下で、アセタール化剤を使用して、式2
【化2】

[式中、Xは上記で定義した通りである。]の化合物から出発するところの方法。
【請求項2】
XがClを表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1=R2=R3=CH3である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
得られた2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体が次いで、塩基および水の存在下で加水分解されて式(3)
【化3】

[式中、X、R1およびR2は上記で定義した通りであり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または置換されたもしくは置換されていないアンモニウム基を表す。]の対応する塩を形成する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
YがNa、Caまたはテトラアルキルアンモニウム化合物を表す、請求項4記載の方法。
【請求項6】
得られた塩が次いで、Y=Hを有する式(3)に従う酢酸へ転化されることをさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
式(3)の(4R,6S)−2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体が、共に99%より高いエナンチオマー過剰およびジアステレオマー過剰を有して製造される、請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
得られた塩または酸が次いで、R3=t−ブチルであるところの式(1a)
【化4】

の対応するエステルに転化されることをさらに含む、請求項4〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
3がt−ブチルを表すところの式(1a)の得られたエステルが次いで2−(6−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸のt−ブチルエステルに転化されることをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
得られたt−ブチルエステルが次いでスタチンに転化されることをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Xが上記で定義した通りである、式(2)に従う化合物。
【請求項12】
長さ/直系比が1:1.5〜1:6、好ましくは1:2〜1:4であり、かつ粒子長さが0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mmである、請求項11記載の化合物の粒子。
【請求項13】
式1または3[ここで、Xは脱離基を表し;R1、R2およびR3は、各々独立して、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し;およびYは、アルカリ(土類)金属または置換されたもしくは置換されていないアンモニウム基を表す]の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体。
【請求項14】
1、R2およびあるならばR3がCH3であり、YがNa、Caまたはテトラアルキルアンモニウム化合物である、請求項13記載の2−(6−置換−1,3−ジオキサン−4−イル)酢酸誘導体。
【請求項15】
XがClを表す、請求項11〜14のいずれか1項記載の化合物。

【公開番号】特開2012−111757(P2012−111757A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267056(P2011−267056)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2002−512170(P2002−512170)の分割
【原出願日】平成13年7月12日(2001.7.12)
【出願人】(508090804)アストラゼネカ ユーケー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】