説明

2元冷凍サイクル装置及びその制御方法

【課題】2元冷凍サイクル装置において、運転中の諸動作のハンチング現象をなくして安定運転を維持することで、所期の冷却能力を発揮させる。
【解決手段】低温側冷媒回路14で低温側圧縮機34から吐出した高温のCO冷媒ガスを冷媒流路14bを介して高圧受液器42に送り、高圧受液器42内のCO凝縮液と熱交換させ、カスケードコンデンサ16での凝縮温度付近に冷却する。冷却されたCO冷媒ガスをカスケードコンデンサ16に送ってNH冷媒液と大部分潜熱熱交換させ、凝縮させる。高温側冷媒回路12の圧縮機吸入側NH冷媒ガスの過熱度の目標値と、カスケードコンデンサ16でのCO凝縮温度とNH蒸発温度との差(アプローチ)の目標値を設定し、これらのうち電動式膨張弁28の所要操作量が小さいほうを選択して電動式膨張弁28をPID制御により操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とをカスケードコンデンサを介して組み合わせ、低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置において、運転時のハンチング現象をなくして安定運転を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
2元冷凍サイクルは、低温を得るため、凝縮温度が常温以下になるが大気圧における飽和温度が−60℃程度になる低温側冷媒を別の高温側冷媒回路を用いて凝縮させるサイクルである。NH冷媒を用いた1元冷凍サイクルは、冷却温度が−30℃以下ではCOPが小さく、かつNH冷媒が毒性や臭気性があるという欠点がある。これを改善するため、COを低温側冷媒とし、NHを高温側冷媒としたNH/CO2元冷凍サイクル装置が用いられている。この2元冷凍サイクル装置は、−50℃前後の低温冷却を可能とすると共に、低温側冷媒回路にCO冷媒を使用することで、圧縮機の−50℃前後でのCOPを改善し、かつ無害のCO冷媒を用いることで、冷却負荷に対する安全性を確保できる利点をもつ。
【0003】
特許文献1には、NH/CO2元冷凍サイクル装置を冷凍ショーケースやベルトフリーザ(密閉空間内で食品等の被冷却物をコンベアベルト上で搬送しながら冷風を吹き付けて冷凍する装置)等の冷却負荷に適用した例が開示されている。
【0004】
従来のNH/CO2元冷凍サイクル装置は、低温側冷媒回路の圧縮機吐出側で50℃前後に加熱された高温の冷媒ガスがカスケードコンデンサに流入するため、高温側冷媒回路の圧縮機吸入側で過熱度コントロールがうまくいかず、ハンチング現象が生じる。該過熱度を20℃まで上昇させた結果を図10に示す。図10に示すように、アプローチ(カスケードコンデンサでのCO冷媒の凝縮温度とNH冷媒の蒸発温度との差)は平均5℃で運転できたが、ハンチング現象を解消できず、このハンチング現象の影響でアプローチが2〜6℃の範囲で変動する傾向が見られた。図10に示す運転状態を説明する。
【0005】
カスケードコンデンサに50℃前後の高温のCO冷媒が流入すると、NHSH(高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度)が急激に上昇するため、これに応じて高温側冷媒回路の膨張弁が開方向に動作し、MV出力(該膨張弁の出力)が上昇する。MV出力の上昇により、カスケードコンデンサでのCO冷媒とNH冷媒との熱交換が促進され、CO冷媒の凝縮温度が低下する。これによって、COPc(カスケードコンデンサでのCO冷媒の凝縮圧力(飽和圧力))が急激に低下し、アプローチ(カスケードコンデンサでのCO冷媒の凝縮温度とNH冷媒の蒸発温度との差)が小さくなる。
【0006】
アプローチが3℃程度まで接近した段階で、CO冷媒とNH冷媒との熱交換量が低下し、そのため、急激にNHSHが低下する。NHSHの低下に応じて前記膨張弁が閉方向に急激に動作し、MV出力が急激に下降する。このサイクルが7〜8分間隔で繰り返されるハンチング現象が起こる。
【0007】
このハンチング現象が起こると、冷凍装置の正味定格出力を発揮できず、冷凍能力が低下する。また、NHSHを上げると、ハンチング現象を無くすことができるが、冷凍サイクルの冷却能力が低下し、COPが低下する。
【0008】
特許文献2には、2元冷凍サイクル装置において、低温側冷媒回路の圧縮機出口冷媒をカスケードコンデンサで凝縮させる前に、冷却能力調整手段を有する冷却器で冷却するようにし、これによって、運転の安定性を図った2元冷凍サイクル装置が開示されている。
以下、この2元冷凍サイクル装置を図11で説明する。
【0009】
図11において、この2元冷凍サイクル装置100は、高温側冷媒回路102と低温側冷媒回路104とがカスケードコンデンサ106で接続され、カスケードコンデンサ106で高温側冷媒と低温側冷媒とを熱交換させ、低温側冷媒を凝縮させ、高温側冷媒を蒸発させる。高温側冷媒回路102には、高温側圧縮機108、高温側凝縮器110及び高温側膨張弁111が介設され、低温側冷媒回路104には、低温側圧縮機112、低温側膨張弁114及び低温側蒸発器116が介設されている。本装置100では、高温側圧縮機112の出口冷媒をカスケードコンデンサ106で凝縮させる前に、冷却器118で冷却するようにしている。冷却器118の冷却能力調整手段として、電磁弁122と電磁弁122を開閉する開閉操作器124とから構成される冷却調整部120を有する。
【0010】
低温側冷媒として、冷却負荷を−60℃程度に冷却可能なR23又はR508が使用され、高温側冷媒としてR22が使用される。冷却器118及び高温側凝縮器110には、夫々冷却水供給ライン126,128及び戻りライン130,132が導設され、前記電磁弁122は冷却水供給ライン128に設けられている。
冷却水は、例えば工場に敷設される工業用水系や冷却塔又は冷凍機で冷却された冷水ライン等から供給される。
【0011】
かかる構成において、開閉操作器124を操作し、冷凍負荷がある程度以上大きいときは電磁弁122を開き、冬場等で冷凍負荷が小さいときは電磁弁122を閉鎖する。これによって、冷却器118への冷却水が供給又は供給停止され、その冷却能力が最大又は零に切換え調整される。
冷却負荷が大きいときに電磁弁122を開き、冷却器118に10℃の冷却水を供給したときの冷媒温度等を回路中に示している。図中、括弧内は、冷却負荷が小さいときに電磁弁122を閉鎖したときの系内の温度や圧力状態を示す。
【0012】
このように、冷却負荷が大きいときは、冷却器118に通水し、低温側圧縮機112から吐出された高温冷媒を予冷した後カスケードコンデンサ106に供給することにより、カスケードコンデンサ106での熱交換量を減少させる。これによって、高温側圧縮機108で処理熱量を減少させ、高温側圧縮機108の小型化と高温側冷媒回路102の全体的な冷却作用の効率化を図っている。
また、冷却負荷が小さいときは、電磁弁122を閉め、冷却器118への通水を遮断することにより、カスケードコンデンサ106での熱交換量を適正量に維持している。これによって、高温側冷媒回路102及び低温側冷媒回路104の冷媒流量を適正量に維持し、両回路での負圧運転を防止すると共に、低温側蒸発器116の冷媒液の滞留を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−209111号公報
【特許文献2】特開2000−320915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のように、従来の2元冷凍サイクル装置では、低温側圧縮機から吐出された高温冷媒がカスケードコンデンサに流入することにより、NHSHやMV出力、及びCOPc等にハンチング現象が起こり、安定運転ができないので、所期の冷却能力を発揮できない問題があった。
【0015】
特許文献2に開示された2元冷凍サイクル装置では、冷却器118に工場に敷設される工業用水系や冷却塔又は冷凍機で冷却された冷水を通水し、これらの10℃前後の冷水でカスケードコンデンサ106に供給される前の高温冷媒を予冷しているので、冷却効果が十分ではない。即ち、カスケードコンデンサに供給される低温側冷媒の温度は凝縮温度と大きな差を有する。そのため、カスケードコンデンサでの高温側冷媒と低温側冷媒との熱交換は、顕熱熱交換と潜熱熱交換とを併用したものとなり、ハンチング現象を起す余地が残る。
【0016】
また、アプローチが接近することでNHSHが急激に低下するので、前記ハンチング現象を無くすためには、アプローチ温度も考慮する必要がある。
【0017】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、2元冷凍サイクル装置において、前記ハンチング現象をなくして安定運転を維持することで、所期の冷却能力を発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するため、本発明の2元冷凍サイクル装置の制御方法は、
高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置の制御方法において、
前記低温側冷媒回路で前記カスケードコンデンサの上流側で生じた高温の低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器に供給し、該受液器内の冷媒液と熱交換させて冷却する第1工程と、
該第1工程で冷却された低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサに供給し、高温側冷媒と熱交換させて凝縮させる第2工程、とからなり、
該第2工程で高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及びカスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するものである。
【0019】
本発明方法では、低温側冷媒回路でカスケードコンデンサの上流側で生じる高温の低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサの下流側に設けられ該カスケードコンデンサと略同一圧力下にある受液器に供給し、該受液器内の冷媒液と熱交換させることにより、低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサでの凝縮温度近傍まで冷却する。
そのため、カスケードコンデンサに供給される低温側冷媒の温度は、カスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と大きな差がなく、そのため、カスケードコンデンサでの低温側冷媒と高温側冷媒との熱交換は大部分潜熱熱交換となる。従って、カスケードコンデンサでの低温側冷媒の温度変動が抑えられ、ハンチング現象が起きにくくなる。
【0020】
受液器での低温側冷媒ガスと低温側冷媒液との熱交換方法は、例えば、低温側冷媒ガスを低温側冷媒液中にバブリングする直接接触熱交換や、低温側冷媒ガスと低温側冷媒液とを熱交換管を介して熱交換する間接接触熱交換でもよい。
【0021】
また、NHSHの目標値とアプローチの目標値を設定し、これらの目標値のうち高温側冷媒回路の膨張弁の操作量の小さいほうを選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するので、ハンチング現象を発生させる要因をすべて除去できる。なお、前記許容値とはハンチング現象を発生させない操作速度の上限値を指す。また、本明細書中では、低温側冷媒回路が圧縮機を装備していない2次冷媒回路を構成している場合でも、2元冷凍サイクル装置の範疇に含めることとする。
【0022】
本発明方法において、低温側冷媒回路に設けられた圧縮機が容量制御式の回転圧縮機(例えば、往復動式圧縮機やスクリュー圧縮機等)であり、該回転圧縮機により低温側冷媒の循環量を制御することにより、低温側冷媒を三重点以上の温度に保持し低温側冷媒の固化を防止するようにするとよい。
これによって、容量制御式の回転圧縮機を使用する場合に、該回転圧縮機の回転制御を利用することで、特別な機器を必要とせず低温側冷媒回路を循環する低温側冷媒の固化を防止できる。
【0023】
あるいは別な手段として、低温側冷媒回路において、カスケードコンデンサ又は受液器内に貯留された低温側冷媒の凝縮温度に近い状態の低温側冷媒を圧縮機吸入側冷媒流路に供給することにより、低温側冷媒を三重点を超える温度に保持し、低温側冷媒の固化を防止するようにしてもよい。これによっても、特別な熱源を必要とすることなく、低温側冷媒の固化を防止できる。なお、この手段を前記手段と併用してもよい。
【0024】
本発明方法において、低温側冷媒回路の圧縮機の吐出側冷媒流路から分離した潤滑剤を該圧縮機の低圧域又は該圧縮機の吸入側冷媒流路に介設されたサクションストレーナの下流側冷媒流路に戻すようにするとよい。低温側冷媒回路では低温のため、潤滑剤の粘性が増大している。この潤滑剤をサクションストレーナの上流側冷媒流路に戻すと、潤滑剤がサクションストレーナに貼り付いて、低温側冷媒の圧力損失を増大するか、あるいは冷媒流路を閉塞するおそれがある。潤滑剤をサクションストレーナの下流側冷媒流路に戻すことにより、前記問題点を解消できる。
【0025】
本発明方法において、高温側冷媒がNHであって、低温側冷媒がCOであり、カスケードコンデンサでのアプローチの目標値を4〜7℃とするとよい。このように、アプローチ範囲を維持することで、カスケードコンデンサの低温側冷媒と高温側冷媒との熱交換量を高く維持できる。そのため、NHSHの低下を招かないので、ハンチング現象を抑えることができる。
【0026】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の2元冷凍サイクル装置は、
高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置において、
前記低温側冷媒回路で前記カスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器及び該受液器にカスケードコンデンサ上流側の高温の低温側冷媒を供給する冷媒流路と、
該受液器内で該低温側冷媒と受液器内の凝縮冷媒液とを熱交換させる熱交換部及び該熱交換部で冷却された低温側冷媒を該カスケードコンデンサに供給する冷媒流路と、
前記高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及び該カスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するコントローラと、を備えたものである。
【0027】
本発明装置では、カスケードコンデンサ上流側の高温の低温側冷媒ガスを受液器に供給し、カスケードコンデンサと略同一圧力下にある受液器内の冷媒液と熱交換させることにより、低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサでの凝縮温度に近い温度まで冷却する。これによって、カスケードコンデンサでの低温側冷媒と高温側冷媒との熱交換を大部分潜熱熱交換とすることで、低温側冷媒の温度変動を少なくし、ハンチング現象を抑えることができる。
また、NHSH及びアプローチの目標値を設定し、コントローラでこれら目標値に達するまでの高温側膨張弁の操作量が小さいほうの目標値に合わせるように高温側膨張弁を操作すると共に、許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するようにしているので、ハンチング現象を防止できる。
【0028】
本発明装置において、高温側冷媒回路の圧縮機吸入側冷媒流路に高温側冷媒温度を検出する第1温度センサと高温側冷媒圧力を検出する第1圧力センサを設けると共に、カスケードコンデンサ又は受液器に低温側冷媒の気相圧力を検出する第2圧力センサを設け、コントローラで第1圧力センサで検出した高温側冷媒圧力から高温側冷媒の蒸発温度を換算し、第1温度センサで検出した高温側冷媒温度と該蒸発温度との差からNHSHを算出すると共に、第2圧力センサで検出した低温側冷媒の気相圧力から低温側冷媒の凝縮温度を換算し、該凝縮温度と高温側冷媒の前記蒸発温度との温度差(アプローチ)を求めるようにするとよい。
【0029】
このように、第1温度センサ及び第1及び第2圧力センサを設けるだけの簡単かつ低コストな構成で、前記コントローラによるハンチング現象をなくす制御を可能にしている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の2元冷凍サイクル装置の制御方法によれば、高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置の制御方法において、前記低温側冷媒回路でカスケードコンデンサの上流側で生じた高温の低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器に供給し、該受液器内の冷媒液と熱交換させて冷却する第1工程と、該第1工程で冷却された低温側冷媒を該カスケードコンデンサに供給し、高温側冷媒と熱交換させて凝縮させる第2工程、とからなり、第2工程で高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及び該カスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するようにしたので、NHSHやMV出力及びCOPc等のハンチング現象をなくし、2元冷凍サイクル装置の安定運転を可能にし、所期の冷却能力を維持することができる。
【0031】
また、本発明の2元冷凍サイクル装置によれば、高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置において、低温側冷媒回路でカスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器及び該受液器にカスケードコンデンサ上流側の高温の低温側冷媒を供給する冷媒流路と、該受液器内で該低温側冷媒と受液器内の凝縮冷媒液とを熱交換させる熱交換部及び該熱交換部で冷却された低温側冷媒を該カスケードコンデンサに供給する冷媒流路と、高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及び該カスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するコントローラと、を備えたことにより、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
本発明は、前記ベルトフリーザのように、冷却負荷が変動する2元冷凍サイクル装置に用いられて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の2元冷凍サイクル装置に係る第1実施形態のブロック線図である。
【図2】前記2元冷凍サイクル装置の温度バランスを示す線図である。
【図3】前記2元冷凍サイクル装置の運転手順を示すフローチャートである。
【図4】前記2元冷凍サイクル装置の運転例を示す線図である。
【図5】前記2元冷凍サイクル装置の別な運転例を示す線図である。
【図6】前記2元冷凍サイクル装置のさらに別な運転例を示す線図である。
【図7】前記2元冷凍サイクル装置のさらに別な運転例を示す線図である。
【図8】前記第1実施形態の変形例を示すブロック線図である。
【図9】本発明の2元冷凍サイクル装置に係る第2実施形態のブロック線図である。
【図10】従来の2元冷凍サイクル装置の運転結果を示す線図である。
【図11】従来の2元冷凍サイクル装置のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0034】
(実施形態1)
本発明を冷却負荷として前記ベルトフリーザ等に極低温冷風を供給するNH/CO2元冷凍サイクル装置に適用した第1実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1において、この冷凍サイクル装置10は、高温側冷媒回路12と低温側冷媒回路14とがカスケードコンデンサ16で接続されている。カスケードコンデンサ16は、乾式の蒸発器として構成されている。即ち、カスケードコンデンサ16の内部に高温側冷媒回路12と接続された熱交換管17が配設され、胴側にCO冷媒ガスが充満する。NH冷媒と管外のCO冷媒ガスとが熱交換し、CO冷媒が凝縮すると共に、カスケードコンデンサ16の出口でNH冷媒が乾きガスとなって高温側圧縮機18に吸引される。
【0035】
高温側圧縮機18の下流側には油分離器20が設けられ、油分離器20で分離された潤滑剤は高温側圧縮機18に戻される。油分離器20の下流側には順に蒸発式凝縮器(エバコン)22及び高圧受液器24が設けられ、高圧受液器24の下流側には、運転の開始時又は停止時に高温側冷媒回路12の開閉を行なう電磁弁26と、電動式膨張弁28とが設けられている。また、高温側圧縮機18の吸入側冷媒流路12aに、冷媒ガス温度Tを検出する温度センサ30と冷媒ガス圧力Pを検出する圧力センサ32が設けられている。蒸発式凝縮器22の代わりに、水冷式又は空冷式の凝縮器を用いてもよい。
【0036】
低温側冷媒回路14では、低温側圧縮機34の上流側にサクションストレーナ36が設けられ、ここで冷媒中の夾雑物が除去される。低温側圧縮機30の下流側に1次油分離器38及び2次油分離器40が設けられている。
低温側冷媒回路14ではCO冷媒がかなりの低温であるため、CO冷媒に混入している潤滑剤の粘性が増大している。この潤滑剤をサクションストレーナ36の上流側冷媒流路に戻すと、潤滑剤がサクションストレーナ36に付着して、低温側冷媒回路14の圧力損失を増大するか、あるいは低温側冷媒回路14を閉塞するおそれがある。そのため、1次油分離器38及び2次油分離器40で分離された潤滑剤は、低温側圧縮機34の低圧域又はサクションストレーナ36と低温側圧縮機34間の冷媒流路に戻される。
【0037】
低温側圧縮機34は容量制御式の回転圧縮機が用いられている。低温側圧縮機34が、例えば往復式圧縮機であれば、潤滑剤をクランク室等の低圧チャンバーに戻し、スクリュー圧縮機であれば、圧縮機ケーシングの低圧域又は中間圧域に戻すようにする。
【0038】
カスケードコンデンサ16の下流側に高圧受液器42が設けられ、高圧受液器42の下流側に給液電動弁52と低圧受液器54が設けられている。2次油分離器40の下流側で、圧縮機吐出側冷媒流路14bは高圧受液器42の内部に貫入され、高圧受液器42の内部でヘッダ44に接続されている。ヘッダ44には複数の散布口44aが分散配置されている。
低温側圧縮機34から吐出された高温のCO冷媒ガスは、冷媒流路14bからヘッダ44に供給され、ヘッダ44の散布口44aから高圧受液器42に貯留されたCO凝縮液にバブリングされる。LはCO凝縮液の液面を示す。凝縮液面Lより上方に位置して、高圧受液器42内の冷媒ガス圧力Pを検出する圧力センサ50が設けられている。
【0039】
高圧受液器42の内部でヘッダ44から散布されたCO冷媒ガスは、高圧受液器42内に貯留されたCO凝縮液と熱交換して冷却される。冷却されたCO2冷媒ガスは、高圧受液器42の上部に接続された冷媒流路14cを通ってカスケードコンデンサ16に供給される。カスケードコンデンサ16内で、CO冷媒ガスは熱交換管17を流れるNH冷媒液と熱交換し凝縮する。
【0040】
高圧受液器42はカスケードコンデンサ16の下方位置に設けられ、カスケードコンデンサ16の下部に凝縮液落下管46が垂下している。高圧受液器42の底面には液ポット48が設けられ、凝縮液落下管46は高圧受液器42の内部に貫入し、その先端は液ポット48まで延設されている。従って、カスケードコンデンサ16で凝縮したCO冷媒液は凝縮液落下管46を介して自重で高圧受液器42に落下する。
【0041】
液ポット48に落下したCO凝縮液は、給液電動弁52で流量調整されかつ減圧されて冷媒流路14dを通り、低圧受液器54に到達して貯留される。低圧受液器54とユニットクーラ56とは循環流路58で接続されている。循環流路58には液ポンプ60が介設されており、液ポンプ60でCO冷媒液がユニットクーラ56に供給され、ここで冷却負荷としてベルトフリーザ等に供給される極低温空気を製造する。CO冷媒液は冷却負荷から蒸発潜熱を得て一部が気化し、この気液混合物は低圧受液器54の気相部に戻される。
【0042】
低圧受液器54内の上層部に貯留されたCO冷媒ガスは、圧縮機吸入側冷媒流路14aを通って低温側圧縮機34に吸入される。圧縮機吸入側冷媒流路14aには吸入圧力調整弁62が設けられ、ここでCO冷媒ガスの圧縮機吸入圧が調整される。また、圧縮機吸入側冷媒流路14aには圧縮機吸入圧Pを検出する圧力センサ63が設けられている。圧縮機吸入側冷媒流路14aとカスケードコンデンサ16の胴部とを接続するホットガスライン64が設けられ、ホットガスライン64には、ホットガス電動弁66と、運転開始時又は停止時にホットガスライン64を開閉するホットガス電磁弁68が介設されている。
【0043】
かかる構成の本実施形態において、低温側圧縮機34から圧縮機吐出側冷媒流路14bに吐出されたCO冷媒ガスは、50℃前後の高温を有し、1次油分離器38及び2次油分離器40で潤滑剤が分離された後、高圧受液器42に供給される。該CO冷媒ガスは、ヘッダ44の散布口44aから散布され、高圧受液器42内に貯留されたCO凝縮液と熱交換し、CO冷媒の凝縮温度付近まで冷却される。冷却されたCO冷媒ガスは、冷媒流路14cを経てカスケードコンデンサ16に供給され、そこでNH冷媒液と熱交換される。
【0044】
図2に、高温側NH冷媒と低温側CO冷媒の温度バランスの一例を示す。図中、NHTcが蒸発式凝縮器22でのNH冷媒の凝縮温度、COTcがカスケードコンデンサ16でのCO冷媒の凝縮温度、NHTeがカスケードコンデンサ16でのNH冷媒の蒸発温度、COTeがユニットクーラ56でのCO冷媒の蒸発温度である。COTcとNHTeとの差がアプローチである。
【0045】
高圧受液器42はカスケードコンデンサ16と凝縮液落下管46を介して連通しているので、同一圧力下にあり、カスケードコンデンサ16の上流側でCO冷媒ガスは凝縮温度付近まで冷却されているので、カスケードコンデンサ16では、CO冷媒ガスとNH冷媒液とは大部分潜熱熱交換となる。即ち、CO冷媒ガスは顕熱熱交換により3〜4℃の温度降下をした後、潜熱熱交換される。そのため、ここでのCO冷媒の温度降下はわずかである。
【0046】
カスケードコンデンサ16で、NH冷媒液はCO冷媒ガスと熱交換されて気化し、圧縮機吸入側冷媒流路12aを経て高温側圧縮機18に吸入される。以下、高温側冷媒回路12の運転手順を図3により説明する。
図3において、MVは電動式膨張弁28の開度を示す。NHSHは次の算式(1)で求められる。算式(1)中、NH冷媒の圧縮機吸入温度Tは、温度センサ30で検出される。カスケードコンデンサ16でのNHの蒸発温度Teは、圧力センサ32で検出されたNH冷媒の蒸発圧力Pからコントローラ70で換算され、コントローラ70で算式(1)を演算して、NHSHが求められる。
【0047】
アプローチ温度は、次の算式(2)で求められる。カスケードコンデンサ16内のCO凝縮温度(飽和温度)は、カスケードコンデンサ16と連通した高圧受液器42のCO凝縮圧力Pをセンサ50で検出し、この検出値から換算して求める。
NHSH=(NH冷媒の圧縮機吸入温度T)−(NH冷媒の蒸発温度Te)
…………(1)
アプローチ温度=(カスケードコンデンサ16でのCO凝縮温度Tc)−(NH冷媒の蒸発温度Te) …………(2)
【0048】
図3において、運転が開始されると、高温側冷媒回路12にNH冷媒が供給される(ステップ1)。この状態でMV=0%とする(ステップ2)。次に、コントローラ70で電動式膨張弁28の開方向への操作量を演算する。電動式膨張弁28の動作はコントローラ70でPID制御される。NHSHの目標値はSV=6℃に設定され、アプローチ温度の目標値はSV=5℃に設定されている。そして、夫々の目標値に達するための電動式膨張弁28の操作量を演算する。また、同時に電動式膨張弁28の最大動作速度がMV=0.3%/秒に制限されている(ステップ3)。
【0049】
次に、演算された目標値到達までのNHSH及びアプローチ温度の操作量を比較し、操作量が小さいほうを選択する(ステップ4)。そして、選択された操作量となるように、コントローラ70でMV=0〜100%の範囲で電動式膨張弁28をPID制御により操作する(ステップ5)。
図3では電動式膨張弁28が動作方向正(開方向)に動作する場合であるが、電動式膨張弁28が操舵方向負(閉方向)に動作する場合であっても同様の制御を行なう。
【0050】
本実施形態では、圧力センサ63で低温側圧縮機34の吸入側冷媒流路14aのCO冷媒ガス圧力を検出し、この検出値からCO冷媒が3重点に接近しているかどうかを判定する。CO冷媒が3重点に接近すると、低温側圧縮機34の回転数をコントローラ70で調整することにより、CO冷媒が3重点から離れるようにする。これによって、低温側冷媒回路14中でCO冷媒が固化するのを防止する。
【0051】
また、低温側冷媒回路14でのCO冷媒の固化を防止する別な手段として、コントローラ70によってホットガス電動弁66を開放し、カスケードコンデンサ16中の−14℃前後のCO冷媒ガスをホットガスライン64を通して圧縮機吸入側冷媒流路14aに供給するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、高圧受液器42に微差圧発信器72が設けられ、これで高圧受液器42内の冷媒液の液面レベルLを検出している。高圧受液器42のCO冷媒液が不足し、冷媒ガスが低圧受液器54に供給されると、この冷媒ガスにより低圧受液器54内の冷媒液が激しく攪拌され、低圧受液器54内での気液分離効果が損なわれる。低圧受液器54での気液分離効果が損なわれることにより、低温側圧縮機34に液戻りが生じるおそれがある。液戻りにより低温側圧縮機34では潤滑不良となり、これに起因して運転不能となる場合がある。
【0053】
これを防止するため、給液配管14dが高圧受液器42内の冷媒ガスを吸い込まない液面レベルLを設定し、微差圧発信器72で液面レベルLを監視し、液面レベルLが低下しないように、給液電動弁52の開度をPID制御する。さらに何らかの現象により高圧受液器42の液面レベルLが低下した場合には、図示省略の液位低下警報器で警報を発するようにすると共に、給液電動弁52を全閉とし、給液配管14dに冷媒ガスが流入しないようにする。
【実施例】
【0054】
前記第1実施形態の運転結果を図4に示す。図4に示すように、COPc及びMV出力にハンチングが起こらず、NHSH及びアプローチが目標値付近に維持されていることがわかる。従って、安定運転を維持することができ、所期の冷却能力を発揮することができる。
【0055】
また、本実施形態では、乾式のカスケードコンデンサ16を用いたので、カスケードコンデンサの構成が簡素化でき、据付場所への分割搬入及び再組立が不要になり、その分コスト削減できる。
【0056】
次に、第1実施形態の冷凍サイクル装置10において、アプローチ温度を3.0℃に変更して運転を行なった結果を図5に示す。図5中、NH吸入温度は高温側圧縮機18の吸入側のNH冷媒ガス温度、COPc(P)はカスケードコンデンサ16内のCO冷媒の凝縮圧力、NHTs(T)は高温側圧縮機18の吸入冷媒温度、NHPdは高温側圧縮機18の冷媒吐出圧力、COロードはCO冷媒の負荷、NHロードはNH冷媒の負荷である。
図5に示すように、MV出力の変動幅が図10と比べて狭まり、それによりアプローチ及びCOPcも比較的安定したが、完全にハンチングを抑制することはできなかった。
【0057】
次に、アプローチを4.0℃にして行なった運転結果を図6に示す。図中、COTdは低温側圧縮機34の吐出側CO冷媒温度、COLR圧は吸入圧力調整弁62上流側の低圧受液器54内圧力である。図6に示すように、アプローチ4℃、NHSH5〜6℃で完全に安定し、ハンチングが見られなかった。
【0058】
図7は、アプローチ温度を4℃に設定すると共に、負荷を変動させ、33〜66%を繰り返す運転を行なった結果を示す。図7に示すように、この負荷変動運転に対しても、常にアプローチが4℃に保たれ、安定した運転を行なうことがわかった。
アプローチが3℃の場合、アプローチが狭まることによりカスケードコンデンサ16の能力が極端に落ち、その動きが短時間で起こるため、NH冷媒液の供給が過多となり、NHSHが急激に低下するものと推測される。また、その動きが急なため、温度センサ30の反応速度が追いつかず、電動式膨張弁28の動作も遅れて、ハンチングが続くものと推測される。
【0059】
一方、アプローチ温度APが7℃を超えた場合には、低COP運転となる。従って、アプローチ温度APを4〜7℃にするのが好ましい。
【0060】
なお、本実施形態において、乾式カスケードコンデンサ16の代わりに、図8に示す満液式としてもよい。図8において、NH冷媒液を貯留するNH冷媒液タンク74が設けられ、NH3冷媒液タンク74と、カスケードコンデンサ16内に配設される熱交換管17とは循環管路76で接続されている。NH冷媒液タンク74内には、循環管路76に接続されNH冷媒液を散布するヘッダ78が設けられている。NH冷媒液タンク74の下方で、循環管路76に電磁弁80とフロート弁82が設けられている。このフロート弁82でNH冷媒液タンク74内の液面レベルを検出し、該液面レベルが一定となるように電磁弁80を開閉している。
なお、フロート弁82に代わりに、微差圧発信器72を設け、該微差圧発信器72で液面レベルを検出するようにしてもよい。
【0061】
この満液式のカスケードコンデンサを用いた場合でも、乾式カスケードコンデンサ16を用いた場合と同一のアプローチ範囲で同様の結果が得られた。
また、本実施形態では、低圧受液器54及び該低圧受液器54とユニットクーラ56間に循環流路58を設け、該循環流路58にCO冷媒を循環させるようにした液循環式を採用しているが、乾式を採用してもよい。即ち、低圧受液器54や循環流路58を設けず、高圧受液器42から冷媒流路14dを通ってユニットクーラ56にCO冷媒を直接供給し、ユニットクーラ56の出口でCO冷媒を乾きガスとして低温側圧縮機34に送るようにしてもよい。
【0062】
ベルトフリーザは、被冷却食品が多種類に亘り、運転時間がまちまちなので、冷却負荷の変動が激しい。負荷変動の大きい冷凍装置に本実施形態の装置を適用すれば、ハンチングをなくして安定運転を可能にする。
【0063】
(実施形態2)
次に、本発明の2元冷凍サイクル装置の第2実施形態を図9に基づいて説明する。本実施形態の2元冷凍サイクル装置90は、NH冷媒が循環する高温側冷媒回路12及びカスケードコンデンサ16の構成は前記第1実施形態と同一構成を有する。図9において、CO冷媒が循環する低温側冷媒回路92には圧縮機が設けられておらず、液ポンプ96でCO冷媒を循環する2次冷媒回路を構成している。低温側冷媒回路14には受液器94とユニットクーラ98とが介設されている。受液器84は第1実施形態の高圧受液器42と同一構成を有し、ユニットクーラ98は第1実施形態のユニットクーラ56と同一構成を有する。ユニットクーラ98に流入するCO冷媒は流量調整弁99で流量調整される。
【0064】
かかる構成において、冷却運転開始指令に従い、高温側圧縮機18及び液ポンプ96を運転しながら、CO冷媒をユニットクーラ98に強制循環させ、冷却負荷の冷却を行なう。この際に、CO冷媒は冷却負荷より熱を受け取って温度上昇し蒸発するため、低温側冷媒回路14の内圧が上昇する。
ユニットクーラ98で冷却負荷と熱交換後のCO冷媒ガスは、流路92aを通って受液器94に入り、そこでCO凝縮液と熱交換する。熱交換後、カスケードコンデンサ16での凝縮温度付近まで冷却されたCO冷媒ガスは、流路92bを通ってカスケードコンデンサ16に入る。カスケードコンデンサ16で、CO冷媒はNH冷媒液と大部分潜熱熱交換を行なう。
【0065】
本実施形態でも第1実施形態と同様の運転を行なうことで、ハンチングをなくし、安定運転を可能にでき、所期の冷却能力を発揮できる。本実施形態は、負荷変動が大きい冷蔵庫等に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、2元冷凍サイクル装置で運転中の諸動作のハンチング現象をなくして安定運転を維持でき、所期の冷却能力を維持することができる。
【符号の説明】
【0067】
10,90 2元冷凍サイクル装置
12 高温側冷媒回路
14,92 低温側冷媒回路
16 カスケードコンデンサ
17 熱交換管
18 高温側圧縮機
24,42 高圧受液器
28 電動式膨張弁
30 温度センサ
32、50、63 圧力センサ
34 低温側圧縮機
36 サクションストレーナ
38 1次油分離器
40 2次油分離器
46 凝縮液落下管
48 液ポット
52 給液電動弁
54 低圧受液器
56,98 ユニットクーラ
58 循環流路
60,96 液ポンプ
64 ホットガスライン
70 コントローラ
72 微差圧発信器
74 NH冷媒液タンク
76 循環管路
82 フロート弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置の制御方法において、
前記低温側冷媒回路で前記カスケードコンデンサの上流側で生じた高温の低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器に供給し、該受液器内の冷媒液と熱交換させて冷却する第1工程と、
該第1工程で冷却された低温側冷媒ガスをカスケードコンデンサに供給し、高温側冷媒と熱交換させて凝縮させる第2工程、とからなり、
該第2工程で高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及びカスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作することを特徴とする2元冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項2】
前記低温側冷媒回路に設けられた圧縮機が容量制御式の回転圧縮機であり、該回転圧縮機により低温側冷媒の循環量を制御することにより、低温側冷媒を三重点以上の温度に保持し低温側冷媒の固化を防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の2元冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項3】
前記低温側冷媒回路において、前記カスケードコンデンサ又は受液器内の低温側冷媒を圧縮機吸入側冷媒流路に供給することにより、低温側冷媒を三重点を超える温度に保持し、低温側冷媒の固化を防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の2元冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項4】
前記低温側冷媒回路において、圧縮機の吐出側冷媒流路から分離した潤滑剤を該圧縮機の低圧域又は該圧縮機の吸入側冷媒流路に介設されたサクションストレーナの下流側冷媒流路に戻すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の2元冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項5】
前記高温側冷媒がNHであって、前記低温側冷媒がCOであり、前記カスケードコンデンサでのCO冷媒の飽和温度とNH冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を4〜7℃としたことを特徴とする請求項1に記載の2元冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項6】
高温側冷媒回路と低温側冷媒回路とがカスケードコンデンサを介して接続されてなり、該低温側冷媒回路で冷却負荷を冷却するようにした2元冷凍サイクル装置において、
前記低温側冷媒回路で前記カスケードコンデンサの下流側に設けられた受液器及び該受液器にカスケードコンデンサ上流側の高温の低温側冷媒を供給する冷媒流路と、
該受液器内で該低温側冷媒と受液器内の凝縮冷媒液とを熱交換させる熱交換部及び該熱交換部で冷却された低温側冷媒を該カスケードコンデンサに供給する冷媒流路と、
前記高温側冷媒回路の圧縮機吸入側過熱度の目標値及び該カスケードコンデンサでの低温側冷媒の凝縮温度と高温側冷媒の蒸発温度との温度差の目標値を設定し、これら目標値に達するように高温側冷媒回路の膨張弁の開度を制御すると共に、該膨張弁の所要操作量のうち操作量が小さいほうの目標値を選択し、選択された目標値になるように許容値以下の操作速度で該膨張弁を操作するコントローラと、を備えたことを特徴とする2元冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記高温側冷媒回路の圧縮機吸入側冷媒流路に高温側冷媒温度を検出する第1温度センサと高温側冷媒圧力を検出する第1圧力センサを設けると共に、前記カスケードコンデンサ又は受液器に低温側冷媒の気相圧力を検出する第2圧力センサを設け、
前記コントローラで前記第1圧力センサで検出した高温側冷媒圧力から高温側冷媒の蒸発温度を換算し、前記第1温度センサで検出した高温側冷媒温度と該蒸発温度との差から高温側冷媒の過熱度を算出すると共に、前記第2圧力センサで検出した低温側冷媒の気相圧力から低温側冷媒の凝縮温度を換算し、該凝縮温度と高温側冷媒の前記蒸発温度との温度差を求めるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の2元冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−27287(P2011−27287A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171008(P2009−171008)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)