説明

2成分現像剤を用いた画像形成方法

【課題】本発明は、異なるトナーを補給しても、現像剤の良好な帯電立ち上がり性や良好な帯電量レベルが維持され、高温高湿、低温低湿を含むすべての環境においてカブリ、トナー飛散、紙汚れなどが発生しない画像形成方法を提供するものである。
【解決手段】像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像を静電荷像現像用トナー及びキャリアを含む2成分現像剤で現像してトナー画像を形成する工程と、補給トナーを逐次補給する工程を有する画像形成方法であって、
該2成分現像剤中のトナー濃度を6wt%とした時の2成分現像剤の流動性が、100秒/50g以上であり、現像カートリッジに充填されたトナー及び/又は補給トナーの外添剤として、BET比表面積が100m2/g以上である正帯電金属酸化物粒子と、BET比表面積が110m2/g以下であり、BET比表面積が異なる2種の負帯電金属酸化物粒子を含むことを特徴とする画像形成方法によって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電写真法等の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年印刷速度の高速化、プリンタ全体を小さくする必要性から現像剤の少量化が求められており、一定の現像剤の一定時間当たりのトナーの通過量が増加し、補給されたトナーの帯電が立ち上がるのに要する時間が従来と比較し短くなっている。この課題を解決するために、トナー濃度が8wt%の時の流動性が50秒/50g以下であるような流動性の良い
現像剤が提案されている(特許文献1)。しかし、補給トナーとの関係までは検討されておらず、現像剤の流動性がトナー濃度の増減などで変動した場合に、十分に対応することができなかった。
【0003】
一方、初期現像剤と補給トナーの粒径や、初期現像剤のトナー被覆率を規定することで、転写効率・クリーニング性を改良する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、印刷機は連続して用いられ、何度もトナーが補給されるため、初期トナーだけの特性では、印刷品質を維持することは難しかった。
このように、初期現像剤及び補給トナーの種類を問わず、問題なく画像を印刷できるようなトナーを開発することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−98718号公報
【特許文献2】特開2008−70765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像を静電荷像現像用トナー及びキャリアを含む2成分現像剤で現像してトナー画像を形成する工程と、補給トナーを逐次補給する工程を有する画像形成方法であって、特定の外添剤を有するトナーと、特定の流動性を持つ現像剤を用いることにより、異なるトナーを補給しても、現像剤の良好な帯電立ち上がり性や良好な帯電量レベルが維持され、高温高湿、低温低湿を含むすべての環境においてカブリ、トナー飛散、紙汚れなどが発生しない画像形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために検討を重ね、特定の外添剤を有するトナーとキャリアを有する現像剤を用いた画像形成方法を用いることにより上記課題を解決できることを見出した。本発明は、この知見に基づくものであり、本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
1.像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像を静電荷像現像用トナー及びキャリアを含む2成分現像剤で現像してトナー画像を形成する工程と、補給トナーを逐次補給する工程を有する画像形成方法であって、
該2成分現像剤中のトナー濃度を6wt%とした時の2成分現像剤の流動性が、100秒/50g以上であり、現像カートリッジに充填されたトナー及び/又は補給トナーの外添剤として、BET比表面積が100m2/g以上である正帯電金属酸化物粒子と、BET比表面積が110m2/g以下であり、BET比表面積が異なる2種の負帯電金属酸化物粒子を含むことを特徴と
する画像形成方法。
2.正帯電金属酸化物粒子が、現像カートリッジに充填されたトナー及び/又は補給トナ
ー100質量部に対し、0.2質量部以上、0.5質量部以下含まれること特徴とする前記1に記載の画像形成方法。
3.2種の負帯電金属酸化物粒子のBET比表面積が各々25m2/g以上であることを特徴とする前記1又は2に記載の画像形成方法。
4.負帯電金属酸化物粒子及び/又は正帯電金属粒子が表面処理により疎水性を付与され
ていることを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
5.正帯電金属酸化物粒子がシリカ粒子であり、2種の負帯電金属酸化物粒子が酸化チタ
ン粒子及びシリカ粒子であることを特徴とする前記1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
6.負帯電金属酸化物粒子として、BET比表面積が110m2/g以下であり、BET比表面積が異なる3種の粒子を含む前記1乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。
7.現像カートリッジに充填されたトナー及び補給トナーの体積中位径が4μm以上、8μm以下であることを特徴とする前記1乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。
8.現像カートリッジに充填されたトナー及び補給トナーの平均円形度が0.91以上、0.99以下であることを特徴とする前記1乃至7のいずれかに記載の画像形成方法。
9.キャリアのBET比表面積が0.1m2/g以上、1m2/g以下であることを特徴とする前記1乃至8のいずれかに記載の画像形成方法。
10.キャリアの流動性が20秒/50g以上、50秒/50g以下であることを特徴とする前記1乃至9のいずれかに記載の画像形成方法。
【0008】
本発明の画像形成方法は、像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像を静電荷像現像用トナー及びキャリアを含む2成分現像剤で、現像してトナー画像を形成する工程と、補給トナーを逐次補給する工程を有する。該2成分現像剤は、画像形成装置の現像カートリッジ(以下、現像槽と表すことがある)に充填されている。
2成分現像方式の現像カートリッジの中では、キャリア表面に担持されたトナーが、現像電界によってキャリア表面を離れ、感光体に向かって移動し、次いで補給トナーがキャリア表面に担持されるという、トナーの入れ替わりが繰り返される。長期間に渡って、飛散や紙汚れを起こさず、高画質で安定した画像を得るためには、現像剤中のトナーの帯電量を適正に保つ必要がある。一方でマシンの小型化・高速化に伴い、現像剤の少量化が求められており、キャリアにトナーが担持され、帯電し、現像されるまでの時間が短くなることにより、トナーを適正値にスムーズに帯電させることが難しくなっており、この問題に対応するための技術開発が求められている。
【0009】
トナーの入れ替わりには、現像剤の流動性が大きく関わっている。流動性が良すぎる場合、キャリアと十分に摩擦帯電できなくなるトナーが増え、これらが機内飛散や紙汚れの原因になる場合がある。この流動性はトナーの粒径や円形度などの形状、添加する外添剤の種類や量によって変化するが、トナー濃度やトナーの帯電特性によっても様々に変わる。例えば、現像剤のトナー濃度が一定の場合、飛散や紙汚れを起こさず、高画質で安定した画像を得るためにはトナーに一定以上の帯電量が必要であるが、一方でこの帯電量は現像剤の流動性にも影響を与えてしまう。
トナーの形状は、製造方法により様々に変化し、高画質化の流れから小径化の傾向にあるが、円形度はクリーニング性や転写性の観点から各マシンに最適な様々な大きさがあり、どのような円形度のトナーが補給されても、良好な帯電立ち上がり性や帯電量レベルが維持され、高温高湿、低温低湿を含むすべての環境においてカブリ、トナー飛散、紙汚れなどが発生しない、様々なトナーと相性の良いトナーを開発することは重要である。
本発明では、円形度が2成分現像剤を構成するトナーと異なるトナーを補給によって現像剤に加えても、特定の外添剤を有するトナーの流動性を一定の範囲に制御することにより、キャリアがトナーに汚染されることなく、キャリアに担持されたトナーがスムーズに入
れ替わり、高画質で安定した画像を得ることが出来ることを見出したものである。
【0010】
2成分現像方式の現像カートリッジ(現像槽)の中には、トナーとキャリアが混合され、存在する。トナーは画像形成において消費され、補給用のトナーが補給されるが、この補給用トナーが、カートリッジ内の現像剤とトナーの帯電や帯電の差により発生する斥力、現像剤の流動性により、うまく現像剤になじまない場合がある。うまく現像剤になじまないトナーが存在すると、印刷時の濃度低下、紙汚れ、機内飛散などが発生し、補給トナーを用いた連続した印刷ができなくなる場合がある。
本発明の2成分現像剤のトナー濃度が6wt%の時の流動性は、100秒/50g以上である
ことが必須である。好ましくは105秒/50g以上であり、さらに好ましくは110秒/
50g以上である。
また、上限は特に限定されず、下記測定方法において、現像剤が全て流動しない値も含まれる。本発明の流動性は、JIS-Z-2504に規定の方法で測定され、トナー濃度が6wt%で
ある2成分現像剤50gが、測定漏斗より排出されるのに要した時間で表す。
本発明の特定の流動性である2成分現像剤を用いることで、現像剤のトナー間斥力が減少し、トナー円形度が異なる等の性質の異なるトナーを補給しても適切に帯電させることが出来る。2成分現像剤の流動性が小さすぎると、現像剤中のトナーの帯電が高く、現像剤及び補給用のトナーの斥力が強すぎ、うまくキャリアとトナーがなじまず、紙汚れや飛散などが発生する場合がある。
【0011】
本発明の2成分現像剤のトナー及び補給トナーは、トナー母粒子と、該トナー母粒子表面に付着又は固着した外添剤とで構成され、2成分現像剤のトナー及び/又は補給トナー
の外添剤は、BET比表面積が100m2/g以上の正帯電金属酸化物粒子と、BET比表面積が110m2/g以下の2種の負帯電金属酸化物粒子を含むことが必須である。
2成分現像剤では、トナーとキャリアが擦れ合うことで帯電し、帯電したトナーが感光体等へと現像される。そのため、トナーとキャリアは逆極性を持ち、過剰に離れにくい状態になりやすく、キャリアの汚染やキャリア表面のトナーの入れ替わりが滞ることで、トナー全体が均一に帯電しない場合がある。本発明では、キャリアが正帯電、トナー及び補給トナーが負帯電の場合、正帯電の金属酸化物を外添することで、該正帯電金属酸化物がトナーとキャリアのクッションのような役割を果たし、帯電したトナーが適度にキャリアから離れやすくなる効果が得られ、現像剤を構成するトナーと異なる円形度を持つことにより帯電、流動性が異なるトナーを現像剤に補給しても、スムーズにトナーが入れ替わることが出来ると推測される。
【0012】
本発明に用いられる正帯電金属酸化物粒子のBET比表面積がD1(m2/g)とすると、B
ET比表面積D1(m2/g)は100m2/g以上が必須であり、110m2/g以上であることが好ましい。また、135m2/g以下が好ましく、130m2/g以下であることが特に好ましい。BET比表面積が大きすぎると、金属酸化物粒子が凝集しやすく、均一に外添されない場合があり、小さすぎるとトナーから離脱し、キャリアを汚染してしまう場合がある。
【0013】
BET比表面積がD1(m2/g)の金属酸化物粒子は特に限定されないが、 酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子等が挙げられ、特にシリカが本発明の効果を得るために好ましい。
また、BET比表面積がD1(m2/g)の金属酸化物粒子は表面処理を行っていてもよく、疎水化処理を行うことが保存・環境安定性のため好ましい。疎水化処理に使用される疎水化剤としては、ヘキサメチルジシラザンなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどの通常の表面処理剤として使用されるものが挙げられる。さらに、フッ素系シランカップリング剤やフッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイルなども使用することができる。これらの疎水化剤は、有機溶剤などの溶剤に溶解させ
た状態で使用することが好ましい。
【0014】
BET比表面積D1(m2/g)の金属酸化物粒子の平均一次径は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。平均一次径が大きすぎると、母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染する傾向があり、小さすぎると転写効率が下がる傾向がある。
本発明の平均一次径はSEM写真の画像解析を行うことで測定される。具体的には、日立製作所製・走査電子顕微鏡S4500を用いて、30000倍に拡大した粒子の写真を適当枚数撮影した後、無作為にその粒子を100個選定し、三谷商事株式会社製画像解析ソフトウェアWinROOFにてこれらの円相当径を測定し、その平均値を平均一次粒径とした。
【0015】
BET比表面積がD1(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以下であることがさらに好ましい。また、0.2質量部以上が好ましく、0.25質量部以上がさらに好ましい。
添加量が多すぎると、帯電が低くなり、紙カブリが高くなる場合があり、少なすぎると、トナーとキャリアが離れにくい状態になり、キャリアの汚染やキャリア表面のトナーの入れ替わりが滞ることで、トナー全体が均一に帯電せず、紙汚れが発生する場合がある。
【0016】
本発明のBET比表面積が異なる2種の負帯電金属酸化物粒子のBET比表面積を、それぞれD2、D3(m2/g)とする。D2、D3は各々110m2/g以下であることが必須である。また、D2、D3は各々25m2/g以上であることが好ましい。さらに、D1、D2、D3はそれぞれ異なる値であることが好ましい。
【0017】
BET比表面積がD2(m2/g)の負帯電金属酸化物粒子は特に限定されず、BET比表面積の関係を満たしていれば特に限定されないが、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子等が挙げられ、特に酸化チタン粒子が本発明の効果を得るために好ましい。
【0018】
本発明のBET比表面積がD2(m2/g)の負帯電金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、特に限定されないが、有機化合物や無機化合物、またはその両者により表面処理がなされているものが、本発明の効果を得るには好ましい。
表面処理に用いる無機化合物及び表面処理の方法は特に限定されないが、アルミ、ケイ素、亜鉛などの無機化合物を、湿式法及び乾式法等、従来の方法で表面処理することができ、またアルキルシランや脂肪酸金属塩などの有機化合物を湿式法及び乾式法等、従来の方法で表面処理することができる。また、疎水処理を行ってもよい。
【0019】
BET比表面積D2(m2/g)の金属酸化物粒子は負帯電である。負帯電の金属酸化物粒子がトナー上で流動することで、トナーの負帯電性をより得る傾向がある。
BET比表面積D2(m2/g)は、110m2/g以下であることが必須であるが、105m2/g以
下であることがさらに好ましい。また、25m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることが好ましく、80m2/g以上であることがさらに好ましく、85m2/g以上であることが特に好ましい。D2(m2/g)が小さすぎると母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染する場合があり、大きすぎると、転写効率が低下し、クリーニング不良が発生する場合がある。
【0020】
本発明のBET比表面積D2(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、1.5質量部以下外添されていることが好ましく、1.2質量部以下であることがさらに好ましい。また、0.3質量部以上が好ましく、0.6質量部以上が特に好ま
しい。
BET比表面積D2(m2/g)の金属酸化物粒子が多すぎると、有機感光体ドラム上へのフィルミングが発生する場合がある。これは、BET比表面積がD2(m2/g)の金属酸化物粒子が有機感光体ドラムのクリーニング部でかき取られ、系外へ除去される際に有機感光体ドラム表面に強く付着したり、その平均粒径の大きさの故に有機感光体ドラム表面に無数の傷を作ったりすることが起因となって発生すると推測される。一方、少なすぎると本発明の効果が得られにくい場合がある。
【0021】
BET比表面積D2(m2/g)の金属酸化物粒子の平均一次径は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。平均一次径が大きすぎると、母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染する傾向があり、小さすぎると転写効率が下がる傾向がある。
【0022】
BET比表面積がD2(m2/g)の金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、その電気抵抗値は、1×10+10Ω・cm以下であることが好ましく、1×10+9Ω・cm以下であることがさらに好ましい。また、1×10+3Ω・cm以上であることが好まし
く、1×10+6Ω・cm以上であることがさらに好ましい。
電気抵抗が大きすぎると、トナーの帯電量が過剰に高帯電化・低帯電化することによるかぶり、ベタ画像の局部的な画像濃度変動などの不具合のほかに、耐刷により各種部材に付着した外添剤等がプリントシステム系の帯電制御に不具合を発生させてプリント画像に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、有機感光体ドラムのクリーニング部で系外に除去できなかった微量の外添剤が、有機感光体ドラムを帯電させる接触式帯電ローラーに付着した場合には、有機感光体ドラムへの帯電付与を妨げドラム表面上の帯電不良を引き起こして画像欠陥となる場合がある。一方、電気抵抗が小さすぎると、現像槽内部のトナー粒子の帯電をリークさせて低帯電化させてしまうため、かぶりなどの画像欠陥を発生させる場合がある。
【0023】
本発明のBET比表面積が異なる2種の負帯電金属酸化物粒子の1つであるBET比表
面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナーの転写効率及びクリーニング性向上を目的として用いる。
本発明のBET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子は特に限定されないが、 酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子等が挙げられ、特にシリカ粒子が本発明の効果を得るために好ましい。また、BET比表面積がD3(m2/g)の金属酸化物粒子は表面処理を行っていてもよく、疎水化処理を行うことが保存・環境安定性のため好ましい。疎水化処理に使用される疎水化剤としては、ヘキサメチルジシラザンなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどの通常の表面処理剤として使用されるものが挙げられる。さらに、フッ素系シランカップリング剤やフッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイルなども使用することができる。これらの疎水化剤は、有機溶剤などの溶剤に溶解させた状態で使用することが好ましい。
【0024】
BET比表面積がD3(m2/g)の金属酸化物粒子は、BET比表面積の関係を満たしていれば特に限定されないが、25m2/g以上であることが好ましく、35m2/g以上であることがさらに好ましく、38m2/g以上であることがさらに好ましい。また、110m2/g以下であることが必須であり、80m2/g以下であることがさらに好ましく、552/g以下であ
ることがさらに好ましく、50m2/g以下であることが特に好ましい。BET比表面積D3(m2/g)が小さすぎると母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染したり、トナーの流動性が確保できず供給不良が発生したりする場合があり、大きすぎると、トナーの帯電が過
剰に高くなる場合がある。
【0025】
本発明のBET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子の平均一次径は特に限定されないが、20nm以上であることが好ましく、25nm以上であることがさらに好ましい。また、55nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。平均一次径が大きすぎると、母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染する傾向があり、小さすぎるとトナーの帯電が過剰になる傾向がある。
【0026】
本発明のBET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子は負帯電である。負帯電の金属酸化物粒子がトナー上で流動することで、トナーの負帯電性をより得て、帯電を維持できる傾向がある。
【0027】
本発明のBET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、1.5質量部以下外添されていることが好ましく、1.2質量部以下であることがさらに好ましい。また、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上が特に好ましい。BET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子が多すぎると、帯電が過剰に高くなり、濃度低下や紙汚れを招く場合があり、少なすぎると、トナーの流動性が低下する場合がある。
【0028】
本発明のBET比表面積がD2(m2/g)、D3(m2/g)である2種の負帯電金属酸化物粒
子は、各BET比表面積の値が異なり、さらにD3<D2であることが、2成分現像剤が適切な流動性を維持し、印刷時の紙汚れやトナー等の飛散を防止する傾向があるため好ましい。
【0029】
本発明において、BET比表面積が110m2/g以下の負帯電金属酸化物粒子として、BET比表面積が異なる3種の粒子を含んでいてもよい。
前述のBET比表面積をD2、D3(m2/g)の負帯電金属酸化物粒子に加え、3種目の負帯電金属酸化物粒子のBET比表面積をD4(m2/g)とすると、これらは、式(1)の関係を満たすことが好ましい。
25m2/g≦D4<D3<D2≦110m2/g (1)
これら負帯電金属酸化物粒子を含むことで、トナーの転写効率及びクリーニング性をさらに向上させることができる場合がある。
【0030】
本発明のBET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子は特に限定されないが、 酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子等が挙げられ、特にシリカ粒子が本発明の効果を得るために好ましい。
また、BET比表面積がD4(m2/g)の金属酸化物粒子は表面処理を行っていてもよく、疎水化処理を行うことが保存・環境安定性のため好ましい。疎水化処理に使用される疎水化剤としては、ヘキサメチルジシラザンなどのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニスなどの通常の表面処理剤として使用されるものが挙げられる。さらに、フッ素系シランカップリング剤やフッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイルなども使用することができる。これらの疎水化剤は、有機溶剤などの溶剤に溶解させた状態で使用することが好ましい。
【0031】
本発明のBET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子は、式(1)の関係を満たしていれば特に限定されないが、25m2/g以上であることが好ましく、30m2/g以上であることがさらに好ましい。また、110m2/g以下であることが好ましく、80m2/g以下であることがさらに好ましく、45m2/g以下であることがさらに好ましく、40m2/g以下であることが特に好ましい。BET比表面積D4(m2/g)が小さすぎると母粒子から過剰に遊離
し、キャリアを汚染したり、トナーの流動性が確保できず供給不良が発生したりする場合があり、大きすぎると、転写効率が低下し、クリーニング不良が発生する場合がある。
【0032】
本発明のBET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子の平均一次径は特に限定されないが、70nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがさらに好ましい。また、200nm以下であることが好ましく、160nm以下であることがさらに好ましい。平均一次径が大きすぎると、母粒子から過剰に遊離し、キャリアを汚染する傾向があり、小さすぎると転写効率が低下する傾向がある。
【0033】
本発明のBET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子は負帯電であることが好ましい。負帯電の金属酸化物粒子がトナー上で流動することで、トナーの負帯電性をより得て、帯電を維持できる傾向がある。
【0034】
本発明のBET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、3質量部以下外添されていることが好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが特に好ましい。また、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましい。BET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子が多すぎると、帯電が過剰に高くなり、濃度低下や紙汚れを招く場合があり、少なすぎると、転写効率が悪くなり、クリーニング性が低下する場合がある。
【0035】
本発明に用いられるBET比表面積D1、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子は、トナー母粒子100質量部に対して、合わせて5質量部以下が外添されていることが好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。また、1質量部以上が好ましく、1.4質量部以上がさらに好ましい。外添量が多すぎると、母粒子表面に付着しきれない遊離金属酸化物粒子が増大し、トナーの帯電立ち上がり不良や帯電量分布の肥大化からかぶり、紙汚れなどの画像欠陥が発生する場合がある。また少なすぎると、十分なトナー流動性が確保できず、ベタ均一性不良などの画像欠陥が発生する場合がある。
トナー母粒子100質量部に対するBET比表面積D3(m2/g)の金属酸化物粒子の外添量(M3)と、BET比表面積D4(m2/g)の金属酸化物粒子の外添量(M4)は、その質量比M3/M4が2以上であることが好ましく2.5以上であることが好ましい。M
3/M4が小さすぎると、転写効率が低下し、クリーニング不良が発生する傾向がある。
【0036】
本発明の2成分現像剤に用いられるキャリアの流動性は、20秒/50g以上であることが好ましく、25秒/50g以上であることがさらに好ましい。また、50秒/50g以下
であることが好ましく、45秒/50g以下であることがさらに好ましい。
キャリアの流動性がこの範囲であることによって、現像剤の流動性が特定の範囲となり本発明の効果を得やすくなる場合がある。
【0037】
本発明のキャリアのBET比表面積は、0.08m2/g以上であることが好ましく、0.1m2/g以上であることがさらに好ましい。また、1m2/g以下であることが好ましく、0.9m2/g以下であることがさらに好ましい。キャリアの比表面積が小さすぎるとベタの均一性
が悪くなる場合があり、大きすぎるとカートリッジ(現像槽)からキャリアが飛散してしまう場合がある。また、キャリアの体積中位径は20μm以上、200μm以下であることが好ましい。
【0038】
本発明のトナーは、トナー母粒子の表面に、前述のBET比表面積D1、D2、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子含むことが好ましいが、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、外添剤として知られている他の粒子と併用させてトナー母粒子の表面に付着又は固着させてもよい。
【0039】
他の粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の有機酸塩粒子;メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子等の有機樹脂粒子等が挙げられる。
【0040】
本発明の前述のBET比表面積D1、D2、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子と「他の粒子」との配合割合は特に限定はなく、BET比表面積D1、D2、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子と「他の粒子」からなる全外添剤の使用量は特に限定はないが、トナー母粒子100質量部に対して、全外添剤の使用量は1質量部以上が好ましく、1.2質量部以上がより好ましく、1.3質量部以上が特に好ましい。また、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。使用量が少なすぎると、流動性が悪くなったり、帯電量のコントロールができなくなったりする場合があり、一方、多すぎると、付着し切れなかった外添剤遊離物がカートリッジ内の部材を汚染し、画像欠陥の原因となる場合がある。
【0041】
本発明にて用いられる外添剤について、トナー母粒子の表面に付着又は固着させる順番は特に限定はないが、本発明の作用機構の観点から、「他の粒子」は、前述のBET比表面積D1、D2、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子と同時もしくは後に添加される方が好ましい。
【0042】
本発明において、トナー母粒子の表面に、前述のBET比表面積D1、D2、D3、D4(m2/g)の金属酸化物粒子と及び/又は「他の粒子」を付着又は固着させる方法は特に
限定はなく、一般にトナーの製造に用いられる混合機を使用することができる。具体的には、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、レディゲミキサー、Q−ミキサー等の混合機により均一に攪拌、混合することによりなされる。
【0043】
本発明のトナーの体積中位径は、4μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、8μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがさらに好ましい。体積中位径が大きすぎると、単位重量当たりの帯電量が小さくなる方向になり、かぶりやトナー飛散が発生する可能性が高くなる場合があり、一方小さすぎると、単位重量当たりの帯電量が過剰となりやすく、極度な画像濃度低下などの不具合を発生しやすくなる場合がある。体積中位径は、実施例に記載の方法で測定される。
【0044】
本発明の画像形成方法を用いることで、平均円形度の異なるトナーを用いても、画像欠陥等の発生を防止すること画可能となる。本発明で用いられるトナー母粒子の平均円形度は、0.91以上であることが好ましく、0.92以上であることがより好ましい。また、0.99以下であることが好ましく、0.985以下であることがより好ましい。
円形度が大きすぎると、クリーニング部でのすり抜けが発生しやすく画像不良となる場合がある。一方小さすぎると、外添剤が耐刷による攪拌により母粒子表面で転がった際に、母粒子のくぼみに落ち込み、本発明の効果が最後まで維持できない場合がある。本発明のトナー母粒子の円形度は、実施例に記載の方法で測定される。
【0045】
本発明で用いられるトナーの製造方法は特に限定されず、粉砕法、湿式法、機械的衝撃力や熱処理等によってトナーを球形化する方法など従来用いられている方法を用いることができる。
湿式法としては、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法、エステル伸張法などの方法が挙げられる。
【0046】
粉砕法で得られるトナーの製造方法としては、結着樹脂、着色剤と、必要に応じてその
他成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
次に、上記配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。練り機は1軸または2軸押出機が用いられ、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が挙げられる。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、トナー母粒子を得る。さらに、従来用いられている機械的衝撃力や熱処理等方法を用いてトナーを球形化してもよい。
【0047】
本発明において、懸濁重合トナーの製造方法としては、結着樹脂の単量体中に着色剤、重合開始剤、そして必要に応じてワックス、極性樹脂、荷電制御剤や架橋剤などの添加剤を加え、均一に溶解又は分散させた単量体組成物を調製する。この単量体組成物を、分散安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。好ましくは単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行い、重合を行う。これらを洗浄・ろ過により収集し、乾燥することによりトナー母粒子を得ることができる。また、必要により外添等を行い、トナーを得ることができる。
【0048】
乳化重合凝集法の製造方法としては、乳化重合により得られた結着樹脂単量体の重合体一次粒子、着色剤分散系、ワックス分散液等を作製しておき、これらを水系媒体中に分散させ加熱等を行うことにより凝集工程、さらに熟成工程を経る。これらを洗浄・ろ過により収集し、乾燥することによりトナー母粒子を得ることができる。また、必要により外添等を行い、トナーを得ることができる。
【0049】
本発明に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含み、必要に応じ、帯電制御剤、ワックス、その他の添加剤等を含む。
【0050】
本発明において、トナーに含有される結着樹脂としては、従来トナーの結着樹脂として用いられている樹脂類を適宜用いることができる。例えば、単量体としては、酸性基を有する重合性単量体(以下、単に酸性単量体と称すことがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、単に塩基性単量体と称することがある)、酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)のいずれの重合性単量体も使用することができる。
【0051】
乳化重合凝集法を用いてトナーを製造する場合、乳化重合工程では、通常、乳化剤の存在下、水系媒体中で重合性単量体を重合するが、この際、反応系に重合性単量体を供給するにあたって、各単量体は別々に加えても、予め複数種類の単量体を混合しておいて同時に添加しても良い。また、単量体はそのまま添加しても良いし、予め水や乳化剤などと混合、調整した乳化液として添加することもできる。
【0052】
酸性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等
のカルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性単量体、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性単量体等が挙げられる。また、塩基性単量体としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら酸性単量体及び塩基性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。中でも、酸性単量体を用いるのが好ましく、より好ましくはアクリル酸及び/又はメタクリル酸であるのがよい。
【0053】
結着樹脂を構成する全重合性単量体100質量部中に占める酸性単量体および塩基性単量体の合計量は、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下であることが望ましい。
【0054】
その他の重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等が挙げられ、重合性単量体は、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
更に、結着樹脂を架橋樹脂とする場合、上述の重合性単量体と共にラジカル重合性を有する多官能性単量体が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えばグリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。中でもラジカル重合性の二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレートが特に好ましい。これら多官能性重合性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。
【0056】
結着樹脂を乳化重合で重合する場合、乳化剤として公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としてはカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる一種又は二種以上の界面活性剤を併用して用いることができる。
【0057】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレ
ンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0058】
本発明の乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。また、これらの乳化剤に、例えば、部分或いは完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の一種或いは二種以上を保護コロイドとして併用することができる。
【0059】
乳化重合により得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下であることが望ましい。粒径が前記範囲よりも小さいときは、凝集工程において凝集速度の制御が困難となる場合があり、前記範囲よりも大きいときは、凝集して得られるトナー粒子の粒径が大きくなり易く、目的とする粒径のトナーを得ることが困難となる場合がある。
【0060】
本発明において、必要に応じて公知の重合開始剤を用いることができ、重合開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用する事ができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4‘−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロペーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合性開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系、過酸化ベンゾイル、2,2‘−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤はモノマー添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせても良い。
【0061】
本発明において、必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができ、具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等があげられる。連鎖移動剤は単独または2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5重量%用いられる。
【0062】
また、本発明では、必要に応じて公知の懸濁安定剤を使用することができる。懸濁安定剤の具体的な例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、一種或いは二種以上を組み合わせて用いてもよく、重合性単量体100質量部に対して1質量部以上、10質量部以下の量で用いてもよい。
重合開始剤および懸濁安定剤は、何れも、重合性単量体添加前、添加と同時、添加後のいずれの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
その他、反応系には、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0063】
本発明の製造方法及び装置によって得られるトナーには、離型性付与のため、ワックスを含有させることが好ましい。ワックスとしては、離型性を有するものであればいかなるものも使用可能である。
【0064】
具体的には、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基
を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;エイコサノール等の長鎖脂肪族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと長鎖脂肪酸により得られる多価アルコールのカルボン酸エステル、又は部分エステル;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;低分子量ポリエステル等が挙げられる。
【0065】
これらのワックスの中で、定着性を改善するためには、ワックスの融点は30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が特に好ましい。融点が低すぎると定着後にワックスが表面に露出し、べたつきを生じる場合があり、一方、融点が高すぎると低温での定着性が劣る場合がある。
上記ワックスは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。また、トナーを定着する定着温度により、ワックス化合物の融点を適宜選択することができる。
【0066】
本発明において、ワックスの量は、トナー100質量部中に1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。トナー中のワックス含有量が前記範囲未満の場合は、高温オフセット性等の性能が十分でない場合があり、前記範囲を超過する場合は、耐ブロッキング性が十分でなかったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
【0067】
本発明の着色剤としては公知の着色剤を任意に用いることができる。着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、重合体一次粒子100質量部に対して3質量部以上、20質量部以下となるように用いることが好ましい。
【0068】
乳化重合凝集法における着色剤の配合は、通常、凝集工程で行われる。重合体一次粒子の分散液と着色剤粒子の分散液とを混合して混合分散液とした後、これを凝集させて粒子凝集体とする。着色剤は、乳化剤の存在下で水中に分散した状態で用いるのが好ましく、着色剤粒子の体積平均粒径が0.01以上、より好ましくは0.05μm以上であり、3μm以下、より好ましくは1μmである。
【0069】
本発明において帯電制御剤を用いる場合には、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができ、例えば、正帯電性帯電制御剤として4級アンモニウム塩、塩基性・電子供与性の金属物質が挙げられ、負帯電性帯電制御剤として金属キレート類、有機酸の金属塩、含金属染料、ニグロシン染料、アミド基含有化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物及びそれらの金属塩、ウレタン結合含有化合物、酸性もしくは電子吸引性の有機物質が挙げられる。
【0070】
また、本発明の製造方法で得られる静電荷像現像用トナーをカラートナー又はフルカラートナーにおける黒色トナー以外のトナーとして使用する場合には、無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がない帯電制御剤を用いることが好ましく、例えば、正帯電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩化合物が、負帯電性帯電制御剤としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベ
ンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物、4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物が好ましい。
【0071】
本発明において、乳化重合凝集法を用いてトナー中に帯電制御剤を含有させる場合は、乳化重合時に重合性単量体等とともに帯電制御剤を添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等とともに凝集工程で添加するか、重合体一次粒子及び着色剤等を凝集させてほぼ目的とする粒径となった後に添加する等の方法によって配合することができる。これらのうち、帯電制御剤を界面活性剤を用いて水中で分散させ、体積平均粒径0.01μm以上、3μm以下の分散液として凝集工程に添加することが好ましい。
【0072】
乳化重合凝集法において、凝集は通常、攪拌装置を備えた槽内で行われるが、加熱する方法、電解質を加える方法と、これらを組み合わせる方法とがある。重合体一次粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、或いは電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
本発明において、電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機塩、無機塩のいずれでも良いが、具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgCl2、CaCl2、MgSO4、CaSO4、ZnSO4、Al2(SO43、Fe2(SO43、CH3COONa、C65SO3Na等が挙げられる。これらの
うち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
【0073】
本発明において、電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上が更に好ましい。また、25質量部以下が好ましく、更には15質量部以下、特に10質量部以下が好ましい。添加量が前記範囲よりも少ない場合は、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残る、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達しないなどの問題を生じる場合があり、前記範囲よりも多い場合は、急速な凝集となりやすく粒径の制御が困難となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれるなどの問題を生じる場合がある。
電解質を用いないで加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、重合体一次粒子のガラス転移温度をTgとすると、(Tg−20)℃以上が好ましく、(Tg−10)℃以上が更に好ましい。また、Tg以下が好ましく、(Tg−5)℃以下が好ましい。
【0074】
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナーの粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で通常、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0075】
上述の凝集処理後の粒子凝集体表面に、必要に応じて樹脂粒子を付着または固着した粒子を形成することも出来る。粒子凝集体表面に性状を制御した樹脂粒子を付着または固着することにより、得られるトナーの帯電性や耐熱性を向上できる場合があり、さらには、本発明の効果を一層顕著とすることができる。
【0076】
樹脂粒子として重合体一次粒子のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する樹脂粒子を用いた場合、定着性を損なうことなく、耐ブロッキング性の一層の向上が実現できるので好ましい。該樹脂粒子の体積平均粒径は、0.02μm以上が好ましく、0.05μm以上が更に好ましい。また、3μm以下、さらに1.5μm以下が好ましい。樹脂粒子としては、前述の重合体一次粒子に用いられる重合性単量体と同様なモノマーを乳化重合して得られたもの等を用いることができる。
樹脂粒子は、通常、界面活性剤により水または水を主体とする液中に分散した分散液として用いるが、帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後に樹脂粒子を加えることが好ましい。
【0077】
凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程において凝集粒子内の融着を行うことが好ましい。熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子のTg以上、より好ましくはTgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくはTgより80℃高い温度以下、より好ましくはTgより50℃高い温度以下である。また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナーの形状により異なるが、重合体一次粒子のガラス転移温度以上に到達した後、通常0.1〜10時間、好ましくは1〜6時間保持することが望ましい。
【0078】
なお、凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pH値を上げることが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から一種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。界面活性剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pH値を上げることにより、凝集工程で凝集した粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0079】
熟成工程での加熱処理により、凝集体における重合体一次粒子同士の融着一体化がなされ、凝集体としてのトナー粒子形状も球形に近いものとなる。熟成工程前の粒子凝集体は、重合体一次粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は互いに融着しており、トナー粒子の形状も球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
【0080】
得られた粒子は、公知の方法にて固液分離し、粒子を回収し、必要に応じて洗浄、乾燥することで目的とするトナー母粒子を得ることができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0082】
<重合体一次粒子の平均粒径の測定方法>
日機装株式会社製、型式:Microtrac Nanotrac 150(以下、「ナノトラック」と略記する)を用いて、ナノトラックの取り扱い説明書に従い、同社解析ソフトMicrotrac Particle Analyzer Ver10.1.2.-019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換
水を分散媒に用い、下記の条件で又は下記の条件を入力し、取り扱い説明書に記載された方法で測定した。
【0083】
・溶媒屈折率:1.333
・測定時間 :100秒
・測定回数 :1回
・粒子屈折率:1.59
・透過性 :透過
・形状 :真球形
・密度 :1.04
【0084】
<重量平均分子量Mw,ピーク分子量Mpの測定方法>
以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。
装置:東ソー社製GPC装置 HLC−8020
カラム:ポリマーラボラトリー 社製 PL−gel Mixed−B 10μ
リファレンスカラム:東ソー社製 TSKgel GMH
溶媒:THF
試料濃度:0.1重量%
検量線:標準ポリスチレン
【0085】
<体積中位径(Dv50)の測定方法>
ベックマンコールター社製マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略記する)を用い、分散媒には同社製アイソトンIIを用い、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定した。測定粒子径範囲は2.00から64.00μmまでとし、この範囲を対数目盛で等間隔となるように256分割に離散化し、それらの体積基準での統計値をもとに算出したものを体積中位径(Dv50)とした。
【0086】
<円形度の測定方法>
本発明における「平均円形度」は、トナー母粒子を分散媒(アイソトンII、ベックマンコールター社製)に、5720〜7140個/μLの範囲になるように分散させ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社(旧東亜医用電子社)製、FPIA3000)を用いて、以下の装置条件にて測定を行い、その値を「平均円形度」と定義する。本発明においては、同様の測定を3回行い、3個の「平均円形度」の相加平均値を、「平均円形度」として採用する。
・モード :HPF
・HPF分析量 :0.35μL
・HPF検出個数:2000〜2500個
【0087】
以下は、上記装置で測定され、上記装置内で自動的に計算されて表示されるものであるが、「円形度」は下記式で定義される。
[円形度]=[粒子投影面積と同じ面積の円の周長]/[粒子投影像の周長]
そして、HPF検出個数である2000〜2500個を測定し、この個々の粒子の円形度の算術平均(相加平均)が「平均円形度」として装置に表示される。
【0088】
<金属酸化物粒子の平均一次粒径測定方法>
本発明において、金属酸化物粒子の「平均一次粒径」はSEM写真の画像解析を行うことで測定した。具体的には、日立製作所製・走査電子顕微鏡S4500を用いて、30000倍に拡大した粒子の写真を適当枚数撮影した後、無作為にその粒子を100個選定し、三谷商事株式会社製画像解析ソフトウェアWinROOFにてこれらの円相当径を測定し、その平均値を「平均一次粒径」とした。
【0089】
<電気抵抗値の測定方法>
電気抵抗値の測定としては、任意の圧力下で粉体の抵抗率を測定できれば特に機器等を限定するものではないが、本発明では、三菱化学株式会社製、粉体抵抗測定システム−PD51型を使用し、サンプル充填量2.0g、加重4kNで測定した。
【0090】
<現像剤の流動性>
本発明における現像剤の流動性は、以下の方法で測定した。
シリコーンコート剤で表面を覆ったフェライトコアキャリア(BET比表面積:0.36m2/g、流動性:42.8秒/50g )をトナー濃度が6wt%になるように東京筒井理化学器械株式会社台東製、ミクロ形透視式混合器W-1-12971を用いて混合し、現像剤を作製した。そ
の後、東京蔵持科学機械製作所製 JIS規格Z2504を用いて流動性(FR)の測定を行った。測定器はΦ2.63であり、現像剤50gが測定器から排出される時間を測定し、FR値(秒/50g)とした。結果を表2に示す。
【0091】
<キャリアの流動性>
東京蔵持科学機械製作所製 JIS規格Z2504を用いてキャリアの流動性の測定を行った。測定器はΦ2.63であり、キャリア50gが測定器から排出される時間を測定し、キャリアの流動性(秒/50g)とした。
【0092】
[補給用トナーa、bの作製]
<トナー母粒子A、Bの作製>
下に示す配合比により得られた母粒子A、Bに外添を行い、トナーa、bを得た。
・ ポリエステル系樹脂 100部
・ 帯電制御剤(オリエント化学工業社製 BONTRON E-108) 2部
・ ポリプロピレンワックス(三洋化成工業社製 550P) 4部
・ 着色剤(大日精化 PB15:3) 8部
【0093】
上記の原材料を高速ミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、ハンマーミルで粗粉砕し、機械式粉砕機で微粉砕した後、分級して体積中位径7.0μm、トナー母粒子Pを得た。トナー母粒子P100質量部に対し、外添剤としてHMDS表面処理を行った粒径0.1μm疎水性シリカ0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した。その後
、サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社)を用いて、熱風温度300℃、分散濃度39g/mで加熱処理し、20℃の冷却風を使用して加熱後の処理を行い、体積中位径7.3μm、円形度0.93のトナー母粒子Aを得た。同様に熱風温度を36
0℃に調節することで、体積中位径7.3μm、円形度0.95のトナー母粒子Bを得た

【0094】
母粒子A100部に対して、外添材として、HMDS表面処理を行った平均一次粒径0.1μm
の疎水性シリカ粒子2部とHMDS処理を行った平均一次粒径0.03μmの疎水性シリカ粒子2
部、イソブチルトリメトキシシラン表面処理を行った平均一次粒径0.02μmの酸化チタン
粒子0.6部を添加してヘンシェルミキサーで混合し、トナーaを作成した。また、同様にして母粒子Bを用いてトナーbを作製した。
【0095】
[初期現像剤を構成するトナー1〜7の作製]
<トナー母粒子Cの作製><ワックス・長鎖重合性単量体分散液の調製>
パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−9)27部、ステアリルアクリレート(東京化成社製)2.8部、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水68.3部を90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII fモデル)を用い10分間攪拌した。次い
でこの分散液を90℃に加熱し、ホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し体積平均粒径(MV)が250nmになるまで分散してワックス・長鎖重合性単量体分散液1(エマルション固形分濃度=30.2%)を作製した。
【0096】
<シリコーンワックス分散液の調製>
アルキル変性シリコーンワックス)27部、20%DBS水溶液1.9部、脱塩水71.1部をステンレス容器に入れ90℃に加熱してホモミキサー(特殊機化工業社製 マークII
fモデル)で10分間攪拌した。次いでこの分散液を99℃に加熱し、ホモジナイザー(
ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて45MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで測定しながら体積平均粒径(MV)が240nmになるまで分散してシリコーンワックス分散液(エマルション固形分濃度=27.4%)を作製した。
【0097】
<重合体一次粒子分散液1の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス・長鎖重合性単量体分散液A1 35.6重量部、脱塩水259部を仕込み攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を滴下開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始30分後から4.5時間かけて添加し、更に重合開始5時間後から下記の追加開始剤水溶液を2時間かけて添加し、更に攪拌を続けたまま内温90℃のまま1時間保持した。
【0098】
<モノマー類>
スチレン 76.8部
アクリル酸ブチル 23.2部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.7部
【0099】
<乳化剤水溶液>
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 67.1部
<開始剤水溶液>
8%過酸化水素水溶液 15.5部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 15.5部
[追加開始剤水溶液]
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 14.2部
【0100】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液1を得た。これをナノトラックを用いて測定した体積平均粒径(MV)は280nmであり、固形分濃度は21.1重量%であった。
【0101】
<重合体一次粒子分散液2の調製>
攪拌装置(3枚翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にシリコーンワックス分散液A2 23.6重量部、20%DBS水溶液1.5重量部、脱塩水324部を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温し、攪拌しながら8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した。
その5分後、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始(8%過酸化水素水溶液3.2部、8%L(+)−アスコルビン酸水溶液3.2部を一括添加した時から5分後)から5時間かけて、下記の開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、更に攪拌しながら内温90℃のまま1時間保持した。
【0102】
<モノマー類>
スチレン 92.5部
アクリル酸ブチル 7.5部
アクリル酸 1.5部
トリクロロブロモメタン 0.6部
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.5部
脱塩水 66.2部
<開始剤水溶液>
8%過酸化水素水溶液 18.9部
8%L(+)−アスコルビン酸水溶液 18.9部
【0103】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液2を得た。これをナノトラックを用いて測定した体積平均粒径(MV)は290nmであり、固形分濃度は19.0重量%であった。
【0104】
<着色剤分散液の調製>
攪拌機(プロペラ翼)を備えた容器に、着色剤(大日精化 PB15:3)5部、20%DBS水溶液1部、非イオン界面活性剤(花王社製、エマルゲン120)4部、電気伝導度が2μS/cmのイオン交換水75部を加えて予備分散してプレミックス液を得た。このプレミックス液を湿式ビーズミルに供給し、ワンパス分散を行った。なお、ステータの内径はφ75mm、セパレータの径がφ60mm、セパレータとディスク間の間隔は15mmとし、分散用のメディアとして直径が100μmのジルコニアビーズ(真密度6.0g/cm3)を用いた。
ロータの回転速度を一定として、供給口より前記プレミックススラリを無脈動定量ポンプにより供給速度50L/hrで連続的に供給し、排出口より連続的に排出することにより青色の着色剤分散体を得た。着色剤分散液中の着色剤の体積平均径(MV)は150n
mであった。
【0105】
<母粒子Dの製造>
重合体一次粒子分散液1 固形分として95部
重合体一次粒子分散液2 固形分として5部
着色剤粒子分散液 着色剤固形分として6部
20%DBS水溶液 固形分として0.1部
【0106】
上記の各成分を用いて、以下の手順により母粒子を製造した。
攪拌装置(ダブルヘリカル翼)、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子分散液1と20%DBS水溶液を仕込み、内温12℃で5分間均一に混合した。続いて内温12℃で攪拌を続けながら第一硫酸鉄の5%水溶液をFeSO・7H2Oとして0.52部を5分かけて添加してから着色剤粒子分散液を
5分かけて添加し、内温12℃で均一に混合し、更に同一の条件のまま0.5%硫酸アルミニウム水溶液を滴下した(樹脂固形分に対しての固形分が0.10部)。その後75分かけて内温53℃に昇温して、更に90分かけて56℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位径を測定したところ5.2μmであった。その後、重合体一次粒子分散液2を3分かけて添加してそのまま60分保持し、続いて20%DBS水溶液(固形分として6部)を10分かけて添加してから30分かけて90℃に昇温して75分保持した。
その後20分かけて30℃まで冷却して得られたスラリーを抜き出し、5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)のろ紙を用いてアスピレーターにより吸引ろ過をした。ろ紙上に残ったケーキを攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え、攪拌する事により均一に分散させ、その後30分間攪拌したままとした。
その後、再度5種C(東洋濾紙株式会社製 No5C)の濾紙を用いてアスピレーター
により吸引ろ過をし、再度ろ紙上に残った固形物を攪拌機(プロペラ翼)を備え電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水入った容器に移し攪拌する事により均一に分散させ30分間攪拌したままとした。この工程を5回繰り返したところ、ろ液の電気伝導度は2μS/cmとなった。
【0107】
ここで得られたケーキを、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥する事により、母粒子Dを得た。母粒子Dの体積中位径は6.5μm、円形度は0.96であった。
【0108】
[トナー母粒子Cを使用したトナー1の作製]
母粒子D100部に対し、添加材として外添剤1を1部、外添剤2を1.2部、外添剤
3を0.3部添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を作製した。なお、使用した外添剤については、表1に示したものを使用した。作製したトナー1の流動性を測定し、表2に示す。
【0109】
[トナー母粒子Cを使用したトナー2〜7の作製]
トナー母粒子C100部に、表2に示す外添剤処方を用いた以外は、トナー1作製方法と同様の方法により、トナー2〜トナー7を作製した。なお、使用した外添剤については、表1に示したものを使用した。作製したトナー2〜7の流動性を測定し、表2に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
<実施例1>
現像カートリッジのトナーボトルにトナー1を充填し、2成分現像方式の市販プリンタ(印刷速度45枚/分、非磁性2成分、有機感光体、転写は中間転写ベルトのフルカラープリンター)で5000枚画像の出力を行った。このとき現像剤に使用するキャリアは、シリコーンコート剤でコーティングされたフェライトコアのキャリアであり、BET比表面積:0.81m2/g、流動性:28.07秒/50g であるものを用いた。この現像剤を初期現像剤と呼
ぶ。その後、トナー1を充填したトナーボトルと、トナーaを充填したトナーボトルを交
換し、1000枚画像出力を行った。このときの紙汚れの発生の有無、トナーaの消費量、機
内飛散有無の結果を表3に示す。
【0113】
<実施例2〜実施例3、比較例1〜比較例3>
実施例1において初期現像剤を構成するトナーであるトナー1をトナー2〜トナー6に置き換える以外は実施例1と同様の操作を行い、表3に示す実施例2〜実施例3、比較例1〜比較例3の結果を得た。
【0114】
<画質評価方法>
(1)紙汚れ
画像形成装置から出力された紙面に汚れあるかどうかを目視で確認し、汚れが明らかにある場合は○、多少確認できる場合は△、汚れが出た場合は×とした。
(2)消費量比
実施例3において、トナーaを用いて1000枚を出力するのに必要なトナー消費量を
基準とし、実施例1、実施例2、比較例1〜比較例3において、トナーaを用いて100
0枚を出力するのに必要なトナー消費量との比を求めた。
(3)機内飛散
画像形成装置内部がどれだけ飛散したトナーで汚れているかを観察し、実施例3を基準に判断した。
○:実施例3と同等またはそれ以上汚れなし
△:実施例3より汚れているが、使用可能
×:汚れがひどく使用不可
(4)総合判定
紙汚れ、機内飛散が○であれば◎、紙汚れ○機内飛散△であれば○、紙汚れ△機内飛散×であれば△、紙汚れ、機内飛散が×であれば×とした。
【0115】
【表3】

【0116】
<実施例4>
実施例1においてトナーaをトナーbに置き換える以外は実施例1と同様の操作を行い、表4に示す結果を得た。
【0117】
<実施例5〜実施例6、比較例4〜比較例7>
実施例4において初期現像剤を構成するトナー1をトナー2〜トナー7に置き換える以外は実施例4と同様の操作を行い、表4に示す実施例5〜実施例6、比較例4〜比較例7の結果を得た。
【0118】
【表4】

【0119】
以上より、特定の外添剤を有するトナーを含む現像剤の流動性を一定の範囲に制御することにより、様々なトナーを補給しても、キャリアに担持されたトナーがスムーズに入れ替わり、高画質で安定した画像を得ることが出来る。これは多大な工業的利益を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に静電潜像を形成する工程と、静電潜像を静電荷像現像用トナー及びキャリアを含む2成分現像剤で現像してトナー画像を形成する工程と、補給トナーを逐次補給する工程を有する画像形成方法であって、
該2成分現像剤中のトナー濃度を6wt%とした時の2成分現像剤の流動性が、100秒/50g以上であり、現像カートリッジに充填されたトナー及び/又は補給トナーの外添剤として、BET比表面積が100m2/g以上である正帯電金属酸化物粒子と、BET比表面積が110m2/g以下であり、BET比表面積が異なる2種の負帯電金属酸化物粒子を含むことを特徴と
する画像形成方法。
【請求項2】
正帯電金属酸化物粒子が、現像カートリッジに充填されたトナー及び/又は補給トナー
100質量部に対し、0.2質量部以上、0.5質量部以下含まれること特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
2種の負帯電金属酸化物粒子のBET比表面積が各々25m2/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
負帯電金属酸化物粒子及び/又は正帯電金属粒子が表面処理により疎水性を付与されて
いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
正帯電金属酸化物粒子がシリカ粒子であり、2種の負帯電金属酸化物粒子が酸化チタン
粒子及びシリカ粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
負帯電金属酸化物粒子として、BET比表面積が110m2/g以下であり、BET比表面積が異なる3種の粒子を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
現像カートリッジに充填されたトナー及び補給トナーの体積中位径が4μm以上、8μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
現像カートリッジに充填されたトナー及び補給トナーの平均円形度が0.91以上、0.99以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
キャリアのBET比表面積が0.1m2/g以上、1m2/g以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
キャリアの流動性が20秒/50g以上、50秒/50g以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2011−253007(P2011−253007A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126037(P2010−126037)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】