説明

2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法

【課題】多数枚プリントしてもキャリアの帯電付与能力の低下を抑制し、トナーの帯電量の低下と帯電量の変動を少なくし、かつ高濃度で、かぶりの無い高品質のプリント物が継続して得られ、機内へのトナー飛散も少なく画像形成装置のメンテナンス性に優れる2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法の提供。
【解決手段】トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む2成分現像剤において、該樹脂被覆層が脂肪酸金属塩を含有し、該樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに分けたとき、芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が表面側に含まれる脂肪酸金属塩量より多いことを特徴とする2成分現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2成分現像剤はトナーとキャリアを機械的に撹拌することで所望の帯電量を付与することができる点で電子写真の画像形成に好ましく用いられる。キャリアに求められる機能としては適正な摩擦帯電付与性、流動性、現像性、長期使用に耐える高耐久性などがあり、これらの機能を向上させるせるために強磁性金属またはその酸化物からなる芯材の表面に樹脂を被覆して得られる樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアが広く用いられている。
【0003】
しかし2成分現像剤を用いて多数枚プリントすると、樹脂被覆層は摩耗し、摩耗によりキャリアの電気抵抗は低下し、電気抵抗の低下により帯電付与性が低下、またキャリア表面へのトナー汚染・外添剤汚染による帯電サイトが減少したり、キャリアの流動性が低下したりして、トナーの帯電量が低下するという問題が発生していた。
【0004】
上記問題を解決するため、流動性を向上させる目的で、アクリル樹脂のコート層表面に脂肪酸金属塩を含有させた樹脂被覆層を有するキャリアを用いる2成分現像剤が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、多数枚プリント後は、キャリアの流動性を向上させていた脂肪酸金属塩を有する層が減耗して無くなり、キャリアの流動性が低下し、継続して摩擦帯電付与性を確保できないという問題が有った。
【0006】
又、芯材粒子の表面に、ドメイン−マトリックス構造を有し、脂肪酸金属塩を含有した樹脂組成物で被覆されたキャリアで、該ドメインが平均粒径5μm以下の脂肪酸金属塩粒子で、マトリックスが樹脂であるキャリアを用いる2成分現像剤が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかしながら、脂肪酸金属塩が表面に局所的に存在するため、キャリア表面がトナーや外添剤が付着して汚染されると、帯電付与性が急激に低下するという問題があった。
【0008】
又、芯材粒子の表面に、脂肪酸金属塩で表面を被覆してある樹脂粒子又は導電性粒子を含有する樹脂被覆層を設けたキャリアを用いる2成分現像剤が検討されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
しかしながら、これも脂肪酸金属塩が表面に局所的に存在するため、キャリア表面がトナーや外添剤の付着による汚染、脂肪酸金属塩で表面を被覆してある樹脂粒子又は導電性粒子が表面から離脱することにより、帯電付与性が急激に低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2630761号公報
【特許文献2】特許3141298号公報
【特許文献3】特許4069716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、多数枚プリントしてもキャリアの帯電付与能力の低下を抑制し、トナーの帯電量の低下と帯電量の変動を少なくし、かつ高濃度で、かぶりの無い高品質のプリント物が継続して得られ、機内へのトナー飛散も少なく画像形成装置のメンテナンス性に優れる2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
【0013】
1.トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む2成分現像剤において、
該樹脂被覆層が脂肪酸金属塩を含有し、
該樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに分けたとき、芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が表面側に含まれる脂肪酸金属塩量より多いことを特徴とする2成分現像剤。
【0014】
2.前記芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が、表面側に含まれる脂肪酸金属塩量より2.0質量倍以上多いことを特徴とする前記1に記載の2成分現像剤。
【0015】
3.前記樹脂被覆層が、少なくともアクリル系樹脂を有することを特徴とする前記1又は2に記載の2成分現像剤。
【0016】
4.前記アクリル系樹脂が、脂環式メタクリル酸エステルモノマーを重合して得られたものであることを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の2成分現像剤。
【0017】
5.トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む2成分現像剤の製造方法において、
該樹脂被覆層が脂肪酸金属塩を含有し、
該脂肪酸金属塩の量が表面側より芯材粒子側の方が多くなるよう段階的又は連続的に変えて樹脂被覆層を形成する工程を有することを特徴とする2成分現像剤の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法は、多多数枚プリントしてもキャリアの帯電付与能力の低下を抑制し、トナーの帯電量の低下と帯電量の変動を少なくし、かつ高濃度で、かぶりの無い高品質のプリント物が継続して得られ、機内へのトナー飛散も少なく画像形成装置のメンテナンス性に優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】キャリア粒子の断面を拡大した模式図である。
【図2】帯電量の測定装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、多数枚プリントしても、トナーの帯電量の低下と帯電量の変動が少なく、画像濃度が一定で、かぶりが無い高品質のプリント物が継続して得られ、機内へのトナー飛散も少なく画像形成装置のメンテナンス性に優れた効果を有する2成分現像剤及び2成分現像剤の製造方法について検討を行った。
【0021】
種々検討の結果、芯材粒子を被覆する樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側に分けたとき、芯材粒子側の樹脂被覆層が表面側の樹脂被覆層より脂肪酸金属塩の量が多くなるよう濃度勾配を持たせたキャリアとトナーにより調製された2成分現像剤を用いると、本発明の目的が達成できることを見出した。
【0022】
本発明で用いるキャリアでは、多数枚プリントを行うにつれ、表面側の樹脂被覆層が減耗され、脂肪酸金属塩の量が多い芯材粒子側の樹脂被覆層が表れる。
【0023】
樹脂被覆層の表面に脂肪酸金属塩が多く存在すると、キャリア同士の滑り性が良くなり、キャリアの流動性が向上する。キャリアの流動性が向上すると現像器中でキャリアとトナーが良好に撹拌され、トナーに対する帯電付与性が向上する。また負帯電性のトナーに対しキャリアの樹脂被覆層に正電荷性の高い金属塩を含む脂肪酸金属塩を用いることで、更なる帯電付与性の向上が可能となる。
【0024】
樹脂被覆層の厚さが薄くなることによる電気抵抗の低下からくる帯電付与能力の低下を、樹脂被覆層の膜厚の低下に伴う脂肪酸金属塩の含有量の増加による帯電付与能力の向上でカバーすることができ、2成分現像剤の使用初期から寿命まで一定の帯電量が確保でき、良好なプリント画像が得られるようになったと推察している。
【0025】
先ず、本発明に係る2成分現像剤について説明する。
【0026】
《2成分現像剤》
本発明の2成分現像剤は、トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含むものである。
【0027】
本発明の2成分現像剤は、キャリアとトナーを、混合装置を用い混合することで得ることができる。
【0028】
混合装置としては、例えばヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)、ナウターミキサ(パウダーテック社製)、V型混合機を挙げることができる。
【0029】
キャリアとトナーとの配合比は、キャリア100質量部に対してトナー3〜15質量部が好ましく、4〜10質量部がより好ましい。
【0030】
次に、本発明で用いられる部材について説明する。
【0031】
《キャリア》
本発明で用いられるキャリアは、芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたものである。
【0032】
〈芯材粒子〉
芯材粒子としては、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子またはそれらを樹脂中に分散させたものを挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
【0033】
芯材粒子としては、その体積平均粒径が10〜100μm、好ましくは20〜80μmのものが好ましい。この範囲の粒径の芯材粒子は高解像度のプリント物が得るのに適している。
【0034】
更に芯材粒子自体が有する磁化特性としては、飽和磁化で2.5×10−5〜15.0×10−5Wb・m/kgのものが好ましい。
【0035】
なお、芯材粒子の体積平均粒径は、湿式分散器を備えてなるレーザ回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により測定される体積基準の平均粒径である。飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電気株式会社製)により測定される値である。
【0036】
〈樹脂被覆層〉
樹脂被覆層は少なくとも被覆層用樹脂と脂肪酸金属塩を含有する。樹脂被覆層は、樹脂被覆層を表面側と芯材粒子側と分けたときに、芯材粒子側の樹脂被覆層中に含有する脂肪酸金属塩が表面側の樹脂被覆層中に含有する脂肪酸金属塩より多く含有する。
【0037】
被覆層用樹脂中の脂肪酸金属塩の含有量は、被覆層用樹脂100質量部に対して0.5〜10.0質量部が好ましく、2.0〜7.0質量部がより好ましい。
【0038】
樹脂被覆層の膜厚は、キャリアの耐久性と電気抵抗値調整の両立の観点より0.2〜4.0μmが好ましく、0.5〜3.0μmがより好ましい。
【0039】
(被覆層用樹脂)
被覆層用樹脂は、芯材粒子に良好に被着し、均一な樹脂膜を作りやすい樹脂が好ましい。
【0040】
被覆層用樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル系及びポリビニリデン系の樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体やスチレン−アクリル酸共重合体等の共重合体樹脂;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えば、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリカーボネート樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
これらの中では、乾式コート法で、芯材粒子に良好に被着し、機械的衝撃や熱を加えることで固着して樹脂膜を作りやすいアクリル系の樹脂が好ましく用いられる。
【0042】
アクリル系の樹脂の中では、耐摩耗性や電気抵抗を確保できる脂環式メタクリル酸エステルモノマーを重合して得られたものが好ましい。
【0043】
脂環式メタクリル酸エステルモノマーとしては、炭素原子数3〜7個のシクロアルキル環を有するものが用いられ、例えばメタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチルが挙げられる。特に帯電量の環境安定性の観点より、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましい。
【0044】
被覆層用樹脂のガラス転移点は、60〜180℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また、被覆層用樹脂の重量平均分子量は、2万〜50万が好ましく、3万〜30万がより好ましい。
【0045】
(脂肪酸金属塩)
脂肪酸金属塩としては、樹脂被覆層中に配合しやすい小径(例えば、体積平均粒径0.1〜2.0μm)のものが好ましい。また樹脂被覆層中に存在するときは0.1〜1.0μm程度の粒径になっていることが好ましい。
【0046】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、例えばカプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸及びその混合物などがあり、又、金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、銅、銀、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、カドミウム、バリウム、アルミニウム、鉛、ニッケルなどの金属塩などが挙げられる。この中では、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウムが好ましい。特にステアリン酸リチウムが好ましい。
【0047】
(樹脂被覆層中の脂肪酸金属塩量)
本発明に用いるキャリアの樹脂被覆層中に有する脂肪酸金属塩量は、樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに分けたとき、芯材粒子側の脂肪酸金属塩量が表面側の脂肪酸金属塩量より多いものである。樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに分けるとは、樹脂被覆層の各箇所において二等分するということである。
【0048】
芯材粒子側の脂肪酸金属塩量は、表面側の脂肪酸金属塩量より2.0倍以上多いことが好ましく、2倍以上8.00倍以下であることがより好ましい。
【0049】
図1は、キャリア粒子の断面を拡大した模式図である。
【0050】
図1において、1はキャリア粒子の断面、2は芯材粒子、3は芯材粒子の表面、4は樹脂被覆層、5は樹脂被覆層の層厚、6は表面側の樹脂被覆層、7芯材粒子側の樹脂被覆層、8は樹脂被覆層の表面、9は脂肪酸金属塩の金属元素を示す。
【0051】
樹脂被覆層中に有する脂肪酸金属塩量は以下のようにして測定することができる。
【0052】
クロスセクションポリッシャー法(CP法)にてキャリア粒子の断面サンプルを作成、走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率30万倍画像の撮影を行う。画像において、図1に示すように樹脂被覆層厚5を各箇所二分し、芯材粒子に近い方を「芯材粒子側7」、他方を「表面側6」とする。次に同じ視野にてエネルギー分散型X線分析装置(EDS)で脂肪酸金属塩として用いられている金属元素の元素マッピングを行う。その際適宜ピーク分離を行い、脂肪酸金属塩の金属元素9と他元素を色分けする。ルーゼックスなどの画像処理装置を用い、得られたマッピング画像と前記SEM画像を重ね、芯材粒子側7・表面側6それぞれにおける脂肪酸金属塩の金属元素9の占める面積を算出する。これを芯材粒子側7または表面側6の総面積で除することで、芯材粒子側7・表面側6それぞれにおける単位面積当たりの脂肪酸金属塩の金属元素量を算出できる。前記測定を3視野において同様に行い、芯材粒子側・表面側それぞれにおいて3視野の平均値を求め、これを「芯材粒子側の脂肪酸金属塩の金属元素量」「表面側の脂肪酸金属塩の金属元素量」とする。
【0053】
《キャリアの作製》
キャリアは、芯材粒子の表面に少なくとも被覆層用樹脂と脂肪酸金属塩を有する樹脂被覆層を形成することで作製することができる。
【0054】
芯材粒子の表面に樹脂被覆層を作製する方法としては、湿式コート法、乾式コート法が挙げられ、何れの方法でも作製することができる。以下に各方法について説明する。
【0055】
(湿式コート法)
(1)流動層式スプレーコート法
流動層式スプレーコート法は、被覆層用樹脂を溶剤に溶解した溶液中に脂肪酸金属塩を分散して作製した塗布液を、流動性スプレーコート装置を用いて芯材粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して樹脂被覆層を作製する方法
(2)浸漬式コート法
浸漬式コート法は、被覆層用樹脂を溶剤に溶解した溶液中に脂肪酸金属塩を分散して作製した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して被膜を作製する方法 (3)重合法
重合法は、反応性化合物を溶剤に溶解した溶液中に脂肪酸金属塩を分散して作製した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行って被膜を作製する方法
(乾式コート法)
乾式コート法は、機械的衝撃や熱を加えて被覆層用樹脂と脂肪酸金属塩を芯材粒子の表面にコートする方法であり、下記の工程により、樹脂被覆層を形成する方法
1:芯材粒子と、被覆層用樹脂粒子と脂肪酸金属塩を混合分散したコート材を、機械的に撹拌し、芯材粒子表面にコート材を付着させる。
2:その後、機械的衝撃や熱を加えて芯材粒子表面に付着したコート材中の被覆層用樹脂粒子を溶融或いは軟化させて固着し、樹脂被覆層を形成する。
3:必要に応じ1〜2の工程を繰り返し、所望の厚さのコート層を形成する。
【0056】
機械的衝撃や熱を加えてコートする方法の装置としては、例えば「ターボミル」(ターボ工業社製)、ピンミル、「クリプトロン」(川崎重工社製)等のローターとライナーを有する摩砕機又は撹拌羽根付高速撹拌混合機を挙げることができ、これらの中では撹拌羽根付高速撹拌混合機が良好にコート層を形成でき好ましい。
【0057】
加熱する場合には、加熱温度は60〜125℃が好ましい。前記範囲の温度で加熱すると樹脂被覆したキャリア同士の凝集が発生せず、芯材粒子表面に被覆層用樹脂を固着させることができる。
【0058】
本発明では、湿式コート法、乾式コート法、湿式コート法と乾式コート法を組み合わせたコート法によりコート層を形成できるが、これらの中では均一なコート層を形成しやすい乾式コート法が好ましい。
【0059】
尚、乾式コート法で用いられる樹脂粒子の個数平均一次粒径は、0.01〜10μmであるものが好ましく、また、樹脂粒子の形状は球形であるものが好ましい。この様な樹脂粒子は、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー乳化重合等によって調製することができる。ここで、樹脂粒子の体積平均一次粒径は、粒度分布測定装置「マイクロトラックUPA−150(日機装社製)」を用いて動的光散乱法で測定して求めた値である。
【0060】
(脂肪酸金属塩の量が表面側より芯材粒子側の方が多くなるよう段階的又は連続的に変えて樹脂被覆層を形成する方法)
脂肪酸金属塩の量を段階的又は連続的に変えて芯材粒子側と表面側の樹脂被覆層を形成す方法としては、下記の例を挙げることができる。
【0061】
段階的に脂肪酸金属塩の量を変える方法としては、芯材粒子側に脂肪酸金属塩を多く含有する層を形成し、その後、表面側に脂肪酸金属塩を含まない或いは芯材粒子側より少量含有する層を形成する方法を挙げることができる。
【0062】
連続的に脂肪酸金属塩を変更する方法としては、例えば、脂肪酸金属塩添加樹脂と脂肪酸金属塩未添加樹脂を準備し、芯材粒子を投入した後、初期段階では脂肪酸金属塩添加樹脂の投入量を多くし、脂肪酸金属塩未添加樹脂の投入量を少なくし、その後徐々に、脂肪酸金属塩添加樹脂の投入量を少なくすることで、芯材粒子側の脂肪酸金属塩量が多く、表面側の脂肪酸金属塩量が少ない樹脂被覆層を形成する方法を挙げることができる。
【0063】
《トナー》
トナーとしては、トナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたものが用いられる。
【0064】
尚、トナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたトナーは、2成分現像剤の流動性が向上し好ましい。
【0065】
〈トナーの作製〉
トナーは、トナー母体粒子に外添剤を付着させて作製することができる。
【0066】
〈トナー母体粒子の作製〉
トナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する。このようなトナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、懸濁重合法、ミニエマルション重合凝集法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル分子伸長法その他の公知の方法などを挙げることができる。
【0067】
(結着樹脂)
トナー母体粒子を構成する結着樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。又、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
(着色剤)
トナー母体粒子を構成する着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。
【0069】
着色剤の添加量はトナー母体粒子全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
【0070】
(離型剤)
トナー母体粒子を構成するトナー粒子中には、必要に応じて離型剤が含有されていてもよい。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0071】
トナー母体粒子における離型剤の添加量は、トナー母体粒子全体に対して1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
【0072】
(荷電制御剤)
また、トナー母体粒子中には、必要に応じて荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
【0073】
〈外添剤〉
外添処理はトナーの流動性やクリーニング性の向上の目的でトナー母体粒子に付着させて用いられる。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子、滑剤が挙げられる。
【0074】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、たとえば、数平均一次粒径が10〜250nmのシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましいものとして挙げられる。また、必要に応じてこれらの無機微粒子を疎水化処理したものも使用可能である。
【0075】
シリカ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0076】
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0077】
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0078】
また、有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。好ましくは、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を挙げることができる。
【0079】
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能であり、たとえば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
【0080】
これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー全質量に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。また、外添剤や滑剤の添加方法としては、タービュラーミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサ、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0081】
外添剤をトナー母体粒子へ付着させる方法は、機械式混合機、例えばヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)を用いて外添剤とトナー母体粒子を混合する方法が好ましい。
【0082】
トナーの粒径は、体積基準におけるメディアン径(D50)で3.0〜8.0μmのものが好ましい。
【0083】
尚、トナーの体積基準におけるメディアン径(D50)は、「コールターカウンターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用い、アパチャ径100μmで、2.0〜60μmのトナーの体積を測定して算出した値である。
【0084】
次に、2成分現像剤を用いてプリント物を作製する画像形成方法と画像形成装置について説明する。
【0085】
《画像形成方法》
本発明の2成分現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの静電潜像担持体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
【0086】
《画像形成装置》
本発明の2成分現像剤は、像担持体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、均一な帯電電位が付与された像担持体上に静電潜像を形成する露光工程、静電潜像をトナーにより現像してトナー像に顕像化する現像工程、トナー像を転写材上に転写する転写工程、転写材上のトナー像を定着する定着工程を少なくとも有する、一般的な電子写真方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。
【0088】
《キャリアの作製》
キャリアは、以下のようにして作製した。
【0089】
〈芯材粒子の準備〉
体積平均径が60μm、飽和磁化が10.7×10−5Wb・m/kgのMn−Mgフェライト粒子を準備した。
【0090】
〈被覆層用樹脂の作製〉
(被覆層用樹脂1の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、メタクリル酸シクロヘキシル(以下、CHMAとも云う)100質量部とトルエン100質量部、メチルエチルケトン100質量部を投入し、混合した混合液に重合開始剤2,2′−アゾビスイソブチルニトリル(以下、AIBNとも云う)を2.0質量部加え、70℃で8時間撹拌して重合し、「被覆層用樹脂1」を作製した。
【0091】
得られた被覆層用樹脂1の体積平均一次粒径は0.1μm、重量平均分子量(Mw)は200,000であった。
【0092】
尚、体積平均一次粒径と重量平均分子量(Mw)は公知の測定装置を用いて測定した値である。
【0093】
(被覆層用樹脂2の作製)
被覆層用樹脂1の作製において用いたメタクリル酸シクロヘキシルを、CHMA/メチルメタクリレート(50:50)の比率(共重合比)のモノマーに変更した以外は同様にして「被覆層用樹脂2」を作製した。得られた被覆層用樹脂2の体積平均一次粒径は0.1μm、重量平均分子量(Mw)は56,000であった。
【0094】
〈キャリア1の作製〉
上記で準備した「芯材粒子」100質量部、「被覆層用樹脂1」2質量部、「ステアリン酸リチウム」0.1質量部(被覆層用樹脂1に対して5質量%)を、撹拌羽根付き高速撹拌混合機に投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力の作用で芯材粒子の表面に「芯材粒子側から1層目」を形成した。
【0095】
次に上記撹拌羽根付き高速撹拌混合機に「被覆層用樹脂1」2質量部、「ステアリン酸リチウム」0.04質量部(被覆層用樹脂1に対して2質量%)を投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して「芯材粒子側から2層目」を形成し、「キャリア1」を作製した。被覆層の膜厚は2.0μmであった。
【0096】
〈キャリア2、3、7、9,10の作製〉
キャリア1の作製で用いた芯材粒子側から1層目と芯材粒子側から2層目の被覆層を形成するときに用いる「被覆層用樹脂1」と「ステアリン酸リチウム」の量を、表1のように変更して、「キャリア2、3、7,9,10」を作製した。
【0097】
〈キャリア4の作製〉
キャリア1の作製で用いたステアリン酸リチウムを、「ステアリン酸カルシウム」に変更した以外は同様にして、「キャリア4」を作製した。
【0098】
〈キャリア5の作製〉
キャリア1の作製で用いたステアリン酸リチウムを、「ステアリン酸亜鉛」に変更した以外は同様にして、「キャリア5」を作製した。
【0099】
〈キャリア6の作製〉
キャリア1の作製で用いたステアリン酸リチウムを、「ステアリン酸亜ナトリウム」に変更した以外は同様にして、「キャリア6」を作製した。
【0100】
〈キャリア8の作製〉
キャリア1の作製で用いたステアリン酸リチウムを、添加しなかった以外は同様にして、「キャリア8」を作製した。
【0101】
〈キャリア11の作製〉
キャリア1の作製で用いた被覆層用樹脂1を、「被覆層用樹脂2」に変更した以外は同様にして、「キャリア11」を作製した。
【0102】
表1に、キャリアの作製で用いた被覆層用樹脂、脂肪酸金属塩の種類、芯材粒子側の被覆層中と表面側の被覆層中に含有する脂肪酸金属塩の質量比を示す。
【0103】
【表1】

【0104】
〈キャリア12の作製〉
先ず、「被覆層用樹脂1」20質量部をトルエン500質量部に溶解した溶液中に「ステアリン酸リチウム」1.0質量部を分散させた「スプレー溶液1」と、「被覆層用樹脂1」20質量部をトルエン500質量部に溶解した溶液中に「ステアリン酸リチウム」0.5質量部を分散させた「スプレー溶液2」とを作製した。
【0105】
複合型流動層コーティング装置「MP01−SFP(パウレック社製)」を用い、上記で準備した「芯材粒子」1000質量部を流動させながら、スクリーンメッシュ0.5mm、回転インペラ1000rpm、排風量1.3m/min、塗布速度9g/min、温度65℃の条件のもと、「スプレーノズル1」から「スプレー溶液1」を噴霧し、芯材粒子表面に樹脂被覆層の形成を開始した。その後、「スプレーノズル1」からの噴霧量を徐々に少なくし、「スプレーノズル2」から「スプレー溶液2」の噴霧を開始し、最終的には「スプレーノズル2」のみから「スプレー溶液2」を噴霧し、樹脂被覆層を形成し、芯材粒子側から表面側に向け、次第にステアリン酸リチウムの量が少なくなる樹脂被覆層を形成し、「キャリア12」を作製した。
【0106】
得られたキャリア12の樹脂被覆層における表面側と芯材粒子側のステアリン酸リチウムの質量比は、2.2であった。
【0107】
《トナーの作製》
トナーは、以下のようにして作製した。
【0108】
(コア用樹脂粒子の作製)
樹脂粒子1Hの作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム7.08質量部をイオン交換水3,010質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。そして、この界面活性剤溶液を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、反応容器内の温度を80℃に昇温させた。
【0109】
次いで、界面活性剤溶液に、重合開始剤である過硫酸カリウム(KPS)9.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を投入し、反応容器内の温度を75℃にした。その後、
スチレン 69.4質量部
n−ブチルアクリレート 28.3質量部
メタクリル酸 2.3質量部
が混合されてなる混合液〔a1〕を1時間かけて適下し、更に、75℃で2時間撹拌して重合することにより樹脂粒子1Hが分散されてなる樹脂粒子分散液〔1H〕を作製した。
【0110】
樹脂粒子1HMの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
スチレン 97.1質量部
n−ブチルアクリレート 39.7質量部
メタクリル酸 3.22質量部
n−オクチル−3−メルカプタトプロピオン酸エステル 5.6質量部
を投入し、更に、
ペンタエリスリトールテトラベヘネート 98.0質量部
を添加し、90℃に加熱して上記の化合物が混合されてなる混合液〔a2〕を調製した。
【0111】
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を作製し、これを98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に上記の樹脂粒子分散液〔1H〕を固形分換算で28質量部添加した後、混合液〔a2〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調整した。
【0112】
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子1H表面に樹脂が被覆された複合構造を有する樹脂粒子1HMが分散されてなる樹脂粒子分散液〔1HM〕を作製した。
【0113】
樹脂粒子1HMLの作製
前記の樹脂粒子分散液〔1HM〕に、過酸化カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した後、
スチレン 277質量部
n−ブチルアクリレート 113質量部
メタクリル酸 9.21質量部
n−オクチル−3−メルカプタトプロピオン酸エステル 10.4質量部
が混合されてなる混合液〔a3〕を1時間かけて適下し、この適下終了後、80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合を行い、その後、反応系を28℃に冷却して、樹脂粒子1HMの表面に樹脂が被覆された複合構造を有する樹脂粒子1HMLが分散されてなる樹脂粒子分散液〔1HML〕を調製した。得られた樹脂粒子を「コア用樹脂粒子」とする。
【0114】
(シェル形成用樹脂微粒子の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。この界面活性剤溶液を、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0115】
一方、下記化合物を添加、混合して「混合液a4」を調製しておく。即ち、
スチレン 544質量部
n−ブチルアクリレート 160質量部
メタクリル酸 96質量部
n−オクチルメルカプタン(NOM) 20質量部
からなるものである。
【0116】
前記界面活性剤溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる開始剤溶液を添加後、上記「混合液a4」を3時間かけて滴下した。そして、この系を80℃にし、1時間にわたる加熱、撹拌により重合を行い、「シェル形成用樹脂微粒子」の分散液を作製した。
【0117】
(カーボンブラック分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解させて作製した溶液を撹拌させておき、当該溶液中に、カーボンブラック「モーガルL」を420質量部、徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて分散処理を行い、「カーボンブラック分散液」を作製した。「カーボンブラック分散液」中のカーボンブラックの粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で110nmであった。
【0118】
(コア粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、
「コア用樹脂微粒子」分散液 450質量部(固形分換算)
イオン交換水 1100質量部
「カーボンブラック分散液」 100質量部(固形分換算)
を投入し、液温を30℃に調整した。その後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
【0119】
上記反応系を撹拌させておき、この状態で塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて上記反応系に添加した。添加後、3分間放置した後、昇温を開始して、この系を60分間かけて90℃まで昇温させて、90℃を保持した状態で樹脂粒子の会合を行って粒子を成長させた。粒子の成長は「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行うことで確認した。そして、体積基準メディアン径(D50)が5.5μmになった時、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させてなる水溶液を反応系に添加して粒子の成長を停止させ、「コア粒子」を形成した。
【0120】
(シェルの形成)
次に、上記「コア粒子」の分散液550質量部(固形分換算)を90℃にして、「シェル形成用樹脂微粒子」分散液50質量部(固形分換算)を添加した。1時間にわたり撹拌を継続して、「コア粒子」表面に「シェル形成用樹脂微粒子」を融着させた。その後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させてなる水溶液を添加した。この系を95℃にして20分間にわたり加熱撹拌を行って熟成処理を行い、シェルを形成させた後、30℃まで冷却した。
【0121】
生成したトナー母体粒子分散液をろ過し、35℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥して、コア表面にシェルを被覆してなる構造の「トナー母体粒子」を作製した。
【0122】
(トナー母体粒子へ外添剤の混合)
上記で作製したトナー母体粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒径12nm、疎水化度68)を1.0質量%、及び、疎水性酸化チタン(数平均一次粒径20nm、疎水化度64)を1.5質量%添加した。ヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製)を用いて混合を行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することにより「トナー」を作製した。
【0123】
《2成分現像剤1〜12の作製》
上記で作製した各「キャリア粒子」100質量部と、「トナー」6質量部をV型混合機で5分間混合し、「2成分現像剤1〜12」を調製した。
【0124】
表2に、2成分現像剤の作製に用いたキャリアとトナーを示す。
【0125】
【表2】

【0126】
《評価》
2成分現像剤の評価装置として、市販の複写機「bizhub PRO 1050」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を準備し、上記で作製した2成分現像剤を順次装填し、50万枚のプリントを行った。
【0127】
尚、プリントは、常温常湿(20℃、50%RH)の環境で、印字率3%の文字画像をA4判の転写紙に50万枚行った。
【0128】
〈帯電量の評価〉
2成分現像剤の帯電量は、下記の図2に示す測定装置を用いて測定した。測定は、平行平板(アルミ)電極36、37の間に2成分現像剤46を50mg摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスが1.0kV、ACバイアスが4.0kV、2.0kHzの条件でトナーを現像させた際に現像領域に供給されたトナーの電荷量と質量を測定し、単位質量当たりの電荷量Q/m(μC/g)を求め、その値を帯電量とした。
【0129】
常温常湿環境(20℃、50%RH)(NN)での帯電量は、初期と50万枚プリント後の2成分現像剤を測定して求めた。
【0130】
トナーの帯電量は、−20〜−60μC/gが望ましく、また初期と50万枚プリント後で帯電量の絶対値が10μC以下を合格とする。
【0131】
図2は、帯電量の測定装置を示す概略構成図である。
【0132】
図2において36、37は平行平板電極、38は可変容量コンデンサ、39、40は電源、41はA/D変換、42はパソコン、43、44は抵抗、45はバッファ、46は2成分現像剤を示す。
【0133】
〈プリント画像の評価〉
(画像濃度の変動)
画像濃度の変動は、初期と印字率5%の文字画像を50万枚プリント後に、10cm角のベタ画像をプリントし、画像濃度を反射濃度計「RD−918(マクベス社製9」でランダムに10カ所測定し、その平均濃度で評価した。尚、画像濃度は1.40以上で、初期と50万枚プリント後の画像濃度差の絶対値が0.10以下を合格とする。
【0134】
(かぶり)
かぶりは、50万枚プリント後、白紙をプリントし、転写材の白紙濃度で評価した。転写材の白紙濃度はA4判の20カ所を測定し、その平均値を白紙濃度とする。濃度測定は反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて行った。尚、◎と○を合格とする。
【0135】
評価基準
◎:かぶり濃度が、0.003未満
○:かぶり濃度が、0.003以上、0.010未満で実用上問題ないレベル
×:かぶり濃度が、0.010以上で実用上問題となるレベル。
【0136】
(トナーの機内飛散)
トナーの機内飛散は、50万枚プリント後、トナーの複写機内への飛散状況を目視で観察し評価した。尚、トナーの機内飛散は◎と○を合格とする。
【0137】
評価基準
◎:複写機内がトナーにて汚れていない状態
○:わずかに複写機内へのトナー飛散が見られる状態
×:トナー飛散が非常に多く、複写機内のメンテナンスが必要な状態。
【0138】
表3に、評価結果を示す。
【0139】
【表3】

【0140】
表3に示す様に、本発明に該当する実施例の「2成分現像剤1〜6、10、11」は、多数枚プリントしても帯電量が安定で、帯電量の変動が少なく、画像濃度が一定でかぶりが無い高品質のプリント物を継続して得られ、トナーの機内飛散が無く、本発明の効果を奏していることが確認された。一方、比較例の「2成分現像剤7〜9」では上記評価項目の何れかに問題があり本発明の効果を奏していないことが確認された。
【符号の説明】
【0141】
1 キャリア粒子の断面
2 芯材粒子
3 芯材粒子の表面
4 樹脂被覆層
5 樹脂被覆層の層厚
6 表面側の樹脂被覆層
7 芯材粒子側の樹脂被覆層
8 樹脂被覆層の表面
9 脂肪酸金属塩の金属元素
36、37 平行平板電極
38 可変容量コンデンサ
39、40 電源
41 A/D変換
42 パソコン
43、44 抵抗
45 バッファ
46 2成分現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む2成分現像剤において、
該樹脂被覆層が脂肪酸金属塩を含有し、
該樹脂被覆層を芯材粒子側と表面側とに分けたとき、芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が表面側に含まれる脂肪酸金属塩量より多いことを特徴とする2成分現像剤。
【請求項2】
前記芯材粒子側に含まれる脂肪酸金属塩量が、表面側に含まれる脂肪酸金属塩量より2.0質量倍以上多いことを特徴とする請求項1に記載の2成分現像剤。
【請求項3】
前記樹脂被覆層が、少なくともアクリル系樹脂を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の2成分現像剤。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂が、脂環式メタクリル酸エステルモノマーを重合して得られたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の2成分現像剤。
【請求項5】
トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナーと芯材粒子の表面に樹脂被覆層を設けたキャリアとを含む2成分現像剤の製造方法において、
該樹脂被覆層が脂肪酸金属塩を含有し、
該脂肪酸金属塩の量が表面側より芯材粒子側の方が多くなるよう段階的又は連続的に変えて樹脂被覆層を形成する工程を有することを特徴とする2成分現像剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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