説明

2次元バーコードを備えたバスケットタグ

【課題】製造設備において用いられる部品やバスケットを特定するためのタグを提供する。
【解決手段】ステンレスプレートからなり、複数の貫通孔を有している。これらの孔は二次元(2−D)バーコードを形成するパターン状に配置されている。2−Dバーコードは、暗視野又は明視野の識別システムを用いて、プレートの正面側又は背面側から読み取ることが可能である。タグには、さらに、文字、数字、又は記号などの人間が識別できる表示を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品又はバスケットを識別するためのタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製造設備において、バスケットは、保管を目的として、あるいは、塗装、化学処理、熱処理、洗浄/脱脂等の一括処理を行うことを目的として、部品を保持するために使用される。
【0003】
どのような製造処理であっても、バスケットの追跡調査が可能であることが望ましく、そのために部品をバスケットに保持している。バスケットと、バスケット内の部品を追跡することによって、製造歩留まりを計算することができ、様々なチェックや品質の保証を行うことが可能になる。これは簡単なことのように見えて、バスケットや部品を追跡することは、時には困難で、時間のかかる作業である。これは、バスケットや部品が、耐熱性、耐食性、耐磨耗性、塗装への耐性、耐薬品性、及び/又は光衝撃への耐性に関して、常に同じ状態にはないためである。
【0004】
例えば、プリントされたタグをバスケットや部品に取り付けておくことは公知の技術であるが、タグへのプリントは、炉内で繰り返し高温(華氏1400度以上)にさらされると、コントラストを失い、変形する。その結果、市販の認識システムでは確実に読み取ることができなくなる。どのようなタイプのプリントを備えたタグであっても、製造過程において、熱、腐食剤、研磨材、光衝撃等の様々な物質や状況下に繰り返しさらされることで劣化する可能性があるのである。
【0005】
したがって、上記のような物質や状況に対して耐性のあるタグが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
本発明に係るタグは、人間又は機械によるバスケット又は部品の識別を可能とするものである。タグをバスケットに取り付けることで、識別可能な容器としてもよいし、タグを直接又は間接に部品又は部品の集合に取り付けることも可能である。タグは必要な表示機能を備えており、容器又は部品を識別し、追跡できるようにする。本発明においては、タグは、人間が、あるいは識別システムのような市販の機械が読み取ることができるものとしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に示されているように、本発明に係る識別可能容器10は、バスケット12とタグ14を備えている。バスケット12は、第一の側面16、第二の側面18、第三の側面20、第四の側面22、上面24及び底面26を備えており、これらによって部品42を取り囲むようにしている。タグ14は、機械で読み取り可能な表示30と、人間が読み取り可能な表示32を備えた金属プレート28である。
【0008】
タグ14は、耐熱性及び耐薬品性の金属からなることが好ましい。さらには、タグ14は、ステンレスプレートからなることが好ましい。タグ14は、フロント面34、裏面36を備え、フロント面34から裏面36にわたる厚みを有している。機械で読み取り可能な表示30は、貫通孔38からなるパターンであり、2次元(2−D)バーコード40を形成するものである。人間が読み取り可能な表示32は、数字、文字、及び/又は記号等の人間が容易に認識できる形状をした一又は複数の切取部又は貫通孔である。
【0009】
図1では、部品42はバスケット12内に配置されている。部品42の例としては、ギアやピストンその他の、保管や処理される部品があげられる。バスケット12は矩形として図示されているが、特定の形状に限定されるものではない。また、バスケット12の上面24の上あるいは周囲に戴置される蓋体(不図示)を用いることも可能である。最後に、バスケット12はオープンなケージ状の構造を有するものとして図示されているが、クローズドな構造とすることも可能である。また、バスケット12は車輪付きの車やカートの一部であってもよく、フォークポケットのような、バスケット12の上昇や移動を容易にする公知の構造を用いることもできる。
【0010】
図示されている好ましい態様によれば、タグ14は、バスケット12の第一の側面16の左上コーナーに配置されている。しかしながら、例えば第二の側面18の中央部など、その他の場所でもよい。図示されているように、タグ14は、溶接やファスナーなどの公知の手段で、第一の側面16に、直接、あるいはブラケット(不図示)を介して、取り付けられる。特に、タグ14は、バスケット12に溶接によって永久的に取り付けられているのが好ましい。図示されてはいないが、タグ14は、ヒンジを介して、バスケット12に回転可能に取り付けることができるのも当然のことである。また、より好ましいとはいえないが、タグ14をバスケット12と一体成形することも可能である。
【0011】
前述したとおり、タグ14は、機械で読み取り可能な表示30及び人間が読み取り可能な表示32を形成する貫通孔及び/又は切取部を有するステンレスプレート28である。機械で読み取り可能な表示30及び人間が読み取り可能な表示32の両方をタグ14に設けることで、識別可能容器10又は部品42を、人間によって、あるいは識別システムのような市販の機械の助けを借りて、容易に特定することができる。
【0012】
通常の実施においては、タグ14をバスケット12に取り付けることが好ましいが、図2のように、バスケット12とは別に、独立した構成で使用することも可能である。このような独立した構成においては、タグ14は、各部品42又は一組の部品に、直接又は間接に取り付けることができる。
【0013】
さらに、図2に示されているように、機械で読み取り可能な表示30はプレート28の左側に配置され、人間が読み取り可能な表示32はプレート28の右側に配置される。しかしながら、各表示30、32の順番や位置は重要ではない。例えば、機械で読み取り可能な表示30の上方に、人間が読み取り可能な表示32を設けてもよい。当然のことながら、各タグ14は、それぞれ独自の、機械で読み取り可能な二次元のバーコードと人間が読み取り可能な表示を有しており、各バスケット12を特定できるようにしている。
【0014】
上述したとおり、機械で読み取り可能な表示30は貫通孔38のパターンからなる。貫通孔38はプレート28を貫通しており、タグ14のフロント面34から裏面36(図3、4)に至るものである。貫通孔は円形であることが好ましいが、矩形などの非円形形状も同じ機能を維持しつつ可能であることはもちろんである。貫通孔38は、タグ14の厚みを完全に貫通するものであり、正面(又は裏面)に入射した光を通過させ、裏面(又は正面)から出射させることを可能にしている。
【0015】
タグ14は、厚みのある(heavy gauge)ステンレスプレートから形成するのが好ましく、タグ14に必要な硬さや強固さを与えることができる厚さを選択することで、タグ14を耐久性のある、厳しい使用環境に耐えられるものとする。
【0016】
貫通孔38のパターンは、識別システムなどの市販の機械で読み取り可能な二次元(2−D)バーコード40を形成する。図においては、二次元(2−D)バーコードは一つしか示されていないが、タグ14を複数の異なる二次元(2−D)バーコードを備えるようにすることもできる。なお、二次元(2−D)バーコードは公知の技術であると考えられるため、そのコンセプトや、他の情報表示方法と比較してどのような利点があるかについては、これ以上記述しない。
【0017】
本発明に係るタグ14を用いた例として、図3には暗視野照明(dark-field lighting)の例を示し、図4には明視野照明(bright-field lighting)の例を示す。
【0018】
図3には、識別センサ44、タグ14及び光源48が示されている。識別センサ44及び光源48は、タグ14の両側面に対向するように配置され、識別センサ44がタグ14の正面側(背面側)に配置されるときには、光源48はタグ14の背面側(正面側)に配置されるようにしている。
【0019】
図3に示されているように、光源48から発せられた光46の一部は、タグ14の貫通孔38を通過し、貫通孔38をプレート28より明るく見せる。光46のその他の部分46bはタグ14で反射する。識別センサ44は、貫通孔を通過した光46a、すなわち貫通孔38とプレート28のコントラストを検出する。識別センサ44によって検出された光46aのパターン(2−Dバーコード)は、コンピュータ(不図示)によって、タグ14を特定するために用いられるデータに変換され、製造設備において、追跡調査やその他の目的に使用される。
【0020】
図4には、識別センサ44、タグ14及び光源48が示されている。識別センサ44及び光源48は、タグ14の同じ側面に配置される。具体的には、光源48及び識別センサ44を、タグ14のフロント面34に一定の角度を設けて配置している。
【0021】
図4に示されているように、光源48からタグ14に向けて発せられた光46の一部46aはタグ14の貫通孔38を通過し、一方、光46のその他の部分46bはタグ14で跳ね返り、識別センサ44によって受光される。このようにして、識別センサ44によって受光された光信号46bのうち、貫通孔に対応する部分は、暗いスポットのように見える。識別センサ44は、光46b、及び暗いスポットのパターンを検出する。識別センサ44によって検出された暗いスポットのパターン(2−Dバーコード)は、コンピュータ(不図示)によって、タグ14を特定するためのデータに変換される。
【0022】
上述したとおり、本発明は、従来のマーキングシステムに伴う多くの問題を解決するものである。なお、本発明の本質を説明するものとして、ここに記載し、図示した物質や構成は当業者によって変更される可能性があるが、添付の請求項に記載された本発明の原理や範囲内に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るタグ及びバスケットを備える容器の斜視図
【図2】タグの正面図
【図3】本発明に係るタグの暗視野照明による使用を示した図
【図4】本発明に係るタグの明視野照明による使用を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械で読み取り可能な表示を有するプレートを備える二次元バーコードタグであって、この機械で読み取り可能な表示は、前記プレートを貫通する複数の貫通孔であって、プレートの正面側及び背面側の両方から読み取ることができる二次元バーコードを形成するようなパターン状に配置されている貫通孔であることを特徴とする二次元バーコードタグ。
【請求項2】
請求項1に記載の二次元バーコードタグであって、前記プレートは、さらに、人間が読み取り可能な表示を備え、この人間が読み取り可能な表示は、プレートの正面側及び背面側の少なくとも一方から読み取ることができる文字、数字、記号の少なくとも一つを形成するようなパターン状の一又は複数の開口部であることを特徴とする二次元バーコードタグ。
【請求項3】
請求項1に記載の二次元バーコードタグであって、前記タグは耐熱性及び耐食性の物質で形成されていることを特徴とする二次元バーコードタグ。
【請求項4】
請求項1に記載の二次元バーコードタグであって、前記プレートはステンレス製であることを特徴とする二次元バーコードタグ。
【請求項5】
ステンレスプレートからなる耐熱性の二次元バーコードタグであって、前記プレートを貫通し、プレートの正面側及び背面側の両方から読み取ることができる二次元バーコードを形成するようなパターン状に配置されている複数の貫通孔である、機械で読み取り可能な表示、及びプレートの正面側及び背面側の両方から読み取ることができる文字、数字、記号の少なくとも一つを形成するようなパターン状に配置されている一又は複数の開口部である、人間が読み取り可能な表示を備えることを特徴とする二次元バーコードタグ。
【請求項6】
バスケット、及び複数の貫通孔を有するプレートからなる識別可能な容器であって、前記貫通孔は二次元バーコードを形成するようなパターン状に配置されていることを特徴とする識別可能な容器。
【請求項7】
請求項6に記載の識別可能な容器であって、前記プレートは、さらに、プレートの正面側及び背面側の両方から読み取ることができる文字、数字、記号の少なくとも一つを形成するようなパターン状に配置されている一又は複数の開口部である人間が読み取り可能な表示を備えることを特徴とする識別可能な容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−71340(P2008−71340A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−219302(P2007−219302)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】