説明

2次元電気泳動用カセット及び2次元電気泳動用カセットの製造方法

【課題】ゲルに気泡が残存することを防ぐとともに、ゲル前駆液を効率よく充填する。
【解決手段】第1基板(基板)2aを貫通しキャビティ部Cと第1バッファー槽(バッファー槽)3とを連通させる第1開口部(開口部)11と、第1基板2aを貫通しキャビティ部Cと第2バッファー槽(バッファー槽)4とを連通させる第2開口部(開口部)12と、第2基板(基板)2bを貫通しカセット本体10の外部からキャビティ部Cへゲル前駆液Gaを充填可能な充填孔20と、が形成されている。第1開口部11を封止可能であるとともに第1基板2aに着脱可能な第1封止材(封止材)31と、第2開口部12を封止可能であるとともに第1基板2aに着脱可能な第2封止材(封止材)32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元電気泳動用カセット及び2次元電気泳動用カセットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクトが終了した後、プロテオーム研究が盛んに行われている。この「プロテオーム」とは、特定の細胞、器官、臓器の中で翻訳生産されているタンパク質の総体を意味し、該プロテオームの研究としてはタンパク質のプロファイリングなどが挙げられる。
【0003】
タンパク質をプロファイリングする手法の1つとして、タンパク質の2次元電気泳動が知られている。この2次元電気泳動は、タンパク質を電荷に依存して分離する等電点電気泳動と、分子量に依存して分離するスラブゲル電気泳動(特に、SDS−PAGE)との計2つの電気泳動ステップから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2には、上記2次元電気泳動を行うサンプル分離装置の一例が開示されている。このサンプル分離装置は、等電点電気泳動によって分離が行なわれる第1チップと、スラブゲル電気泳動を行う第2チップとを備えている。
【0005】
第1チップは、支持板と該支持板に支持された第1ゲル(1次元目のゲル)とから構成されている。この第1チップにおいては、第1ゲルにサンプル(試料)が導入され、第1ゲルを膨潤させる工程を経た後、第1ゲルに電圧が印加されることでサンプルを第1方向に分離させている(1次元目分離)。そして、第1チップは、分離されたサンプルを染色する工程、第2チップの環境に平衡化する工程が施された後、第2チップに移送される。
第2チップは、基板内に第2ゲル(2次元目のゲル)が収納されることで構成されており、該第2ゲルに第1チップの第1ゲルが接続される。この状態で第2ゲルに対して電圧を印加することでサンプルが上記第1方向とは異なる第2方向に分離される(2次元目分離)。
【0006】
この特許文献2には、チップ内に泳動用の電極用バッファー溶液を収容するバッファー槽を設けたバッファー槽一体型の電気泳動カセットが記載されている。このような電気泳動カセットは、従来の2枚の板からなるプレキャストゲルプレートの構造とは異なり、電気泳動カセット自体にバッファー槽が設けられたものであるため、電気泳動カセットと別にバッファー槽を用意する必要が無く、利便性が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−30605号公報
【特許文献2】特開2007−64848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなバッファー槽一体型の電気泳動カセットには、ゲルと電気泳動バッファーとが接触可能となるように、ゲルが収容される空間とバッファー槽とを連通させる開口部が形成されている。このため、電気泳動カセットにゲル前駆溶液を充填すると、ゲル前駆溶液に開口部からの空気が入り込みやすく、形成されたゲルには、開口部付近に気泡が残存することがある。そして、この気泡が電気泳動に影響を与える欠陥となることがある。
【0009】
また、バッファー槽一体型の電気泳動カセットにゲル前駆溶液を充填する工程では、この開口部から電気泳動カセット内にゲル前駆溶液を充填するため、電気泳動カセット1個毎にゲル前駆溶液を充填する必要があり、量産性や作業性に課題がある。
また、電気泳動カセットにゲル前駆溶液を充填する工程の後に、この開口部を封止するため、開口部へ封止材をはめ込むなどの作業が必要となり、量産性や作業性に課題がある。
更に、この封止材をはめ込む作業によって、ゲル前駆溶液に気泡ができて形成されたゲルに気泡が残存することがある。
【0010】
本発明は上記のような課題を鑑みなされたもので、ゲルに気泡が残存することを防ぐことができるとともに、ゲル前駆液を効率よく充填することができる2次元電気泳動用カセット及び2次元電気泳動用カセットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る2次元電気泳動用カセットは、基板を組み合わせて構成されたカセット本体のキャビティ部にゲルが収容され、前記カセット本体に隣接してバッファー槽が形成された2次元電気泳動用カセットであって、 前記基板を貫通し前記キャビティ部と前記バッファー槽とを連通させる開口部と、前記基板を貫通し前記カセット本体の外部から前記キャビティ部へゲル前駆液を充填可能な充填孔と、が形成され、前記開口部を封止可能であるとともに前記基板に着脱可能な封止材を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明では、基板を貫通しキャビティ部とバッファー槽とを連通させる開口部と、基板を貫通しカセット本体の外部からキャビティ部へゲル前駆液を充填可能な充填孔と、が形成され、開口部を封止可能であるとともに基板に着脱可能な封止材を備えることにより、キャビティ部へゲル前駆液を充填する時に、開口部を封止して充填孔からゲル前駆液を充填することができるため、充填されたゲル前駆液に開口部から空気が入る込むことがなく、形成されたゲルに気泡が残存することを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットでは、前記開口部は、内周面が前記バッファー槽側から前記キャビティ部側に向かって広がるテーパ面に形成されていてもよい。
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットでは、前記開口部は、前記基板の面方向に直交する断面視におけるテーパ面どうしの交差角度が90°以上であることが好ましい。
このように、開口部は、内周面がバッファー槽側からキャビティ部側に向かって広がるテーパ面に形成されていることにより、キャビティ部にゲル前駆液が充填されたときに、開口部に空気が溜まりにくいため、形成されたゲルに気泡が残存することを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットでは、前記封止材は、粘着シール材または感圧式圧着シール材であることが好ましい。
このように、封止材は、粘着シール材または感圧式圧着シール材であることにより、開口部を確実に封止することができる。
【0015】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットでは、前記封止材は、前記開口部に嵌合可能であるとともに、該開口部に嵌合したときに前記キャビティ部側の端面が前記基板の内周面と面一としてもよい。
このように、封止材は、開口部に嵌合可能であるとともに、開口部に嵌合したときにキャビティ部側の端面が基板の内周面と面一とすることにより、開口部に空気が溜まることがなく、形成されたゲルに気泡が残存することを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットでは、前記封止材は、シリコンゴムまたはウレタンゴムから形成されていることが好ましい。
このように、封止材は、シリコンゴムまたはウレタンゴムから形成されていることにより、開口部を確実に封止することができる。
【0017】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットの製造方法は、基板を組み合わせて構成されたカセット本体のキャビティ部にゲル前駆液を充填するゲル前駆液充填工程と、前記ゲル前駆液をゲル化させるゲル化工程と、を備える2次元電気泳動用カセットの製造方法であって、2次元電気泳動用カセットは前記カセット本体に隣接してバッファー槽が形成されて、前記基板を貫通し前記キャビティ部と前記バッファー槽とを連通させる開口部と、前記基板を貫通し前記カセット本体の外部から前記キャビティ部へ前記ゲル前駆液を充填可能な充填孔と、がさらに形成され、前記ゲル前駆液充填工程では、前記充填孔が上方となるように基板を配置させるとともに、前記開口部を封止し、前記充填孔から前記キャビティ部にゲル前駆液を充填させることを特徴とする。
【0018】
本発明では、ゲル前駆液充填工程において、開口部を封止して充填孔からキャビティ部にゲル前駆液を充填するため、充填されたゲル前駆液に開口部から空気が入り込むことがなく、形成されたゲルに気泡が残存することを防ぐことができる。
また、開口部からキャビティ部にゲル前駆液を充填し、ゲル前駆液を充填した後に開口部に封止材を取り付ける従来の方法と比べて、封止材を取り付けるときに、ゲル前駆液内に空気が入り込むことがないとともに、封止材を取り付ける作業を予め行うことができるため効率よく2次元電気泳動用カセットを製造することができる。
【0019】
また、本発明に係る2次元電気泳動用カセットの製造方法では、前記カセット本体を複数並べて設置し、前記複数のカセット本体のキャビティ部に同時にゲル前駆液充填工程を行ってもよい。
このように、複数のカセット本体のキャビティ部に同時にゲル前駆液充填工程を行うことにより、効率よく多数の2次元電気泳動用カセットを製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、形成されたゲルに気泡が残存することを防ぐことができ、効率よく2次元電気泳動用カセットを製造することができるとともに、2次元電気泳動用カセットの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態による2次元電気泳動用カセットの一例を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】2次元電気泳動用カセットを充填孔側から見た図である。
【図4】(a)本発明の第2実施形態による2次元電気泳動用カセットを説明する図、(b)は第1開口部および第2開口部のテーパ面(内周面)を説明する図である。
【図5】本発明の2次元電気泳動用カセットの製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の第3実施形態による2次元電気泳動用カセットを説明する図である。
【図7】本発明の第4実施形態による2次元電気泳動用カセットを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による2次元電気泳動用カセットについて、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1乃至図3に示す本実施形態による2次元電気泳動用カセット1Aは、例えば、タンパク質などのサンプルを解析する2次元電気泳動に使用されるもので、内部に2次元電気泳動用のゲルGが充填されている。
【0023】
図1乃至図3に示すように、2次元電気泳動用カセット1Aは、合成樹脂からなる第1基板2a及び第2基板2bを組み合わせて構成されたカセット本体10を備えている。第1基板2aと第2基板2bとは接着あるいは溶着によって一体化されている。
図2に示すように、第1基板2aと第2基板2bとの間には、略直方体形状のキャビティ部Cが生じており、このキャビティ部Cには、電気泳動に使用されるゲルGが形成されている。
本実施形態では、ゲルG中をサンプルが泳動される泳動方向は図1及び図2において矢印Aの方向とする。
【0024】
図1および図2に示すように、第1基板2aには、第1バッファー槽3および第2バッファー槽4が設けられていて、第1バッファー槽3は第2バッファー槽4よりもサンプルの泳動方向(矢印A)における後方側に配されている。
第1バッファー槽3および第2バッファー槽4は、電気泳動に使用される泳動バッファー(ランニングバッファー)が注入可能な容器形状に構成されている。また、第1バッファー槽3と第2バッファー槽4とのそれぞれには、図示しない直流電源装置の一対の電極が接続可能となっている。そして、ゲルGに直流電圧を印加することで、ゲルGにおいてサンプルを電気泳動することができる。
【0025】
第1基板2aには、キャビティ部Cと第1バッファー槽3とを連通させる第1開口部11が形成されている。第1開口部11は第1基板2aを貫通するスリット状に形成されている。
第1基板2aに第1開口部11が形成されていることにより、第1バッファー槽3に供給されるランニングバッファーを介してゲルGに通電させることができるとともに、1次元目ゲルとの接続を行うことができる。
【0026】
また、第1基板2aには、キャビティ部Cと第2バッファー槽4とを連通させるに第2開口部12が形成されている。第2開口部12は第1基板2aを貫通するスリット状に形成されている。
第1基板2aに第2開口部12が形成されていることにより、第2バッファー槽4に供給されるランニングバッファーを介してゲルGに通電させることができる。
【0027】
第1開口部11および第2開口部12は、その内周面11a,12aが第1基板2aの面方向に直交している。
また、第1開口部11および第2開口部12は、2次元電気泳動用カセット1Aの製造時から使用前まで、第1封止材31および第2封止材32によってそれぞれ封止されている。このことにより、2次元電気泳動用カセット1Aの製造時には、ゲルGの前駆物質であるゲル前駆液Gaが第1開口部11および第2開口部12から流出することが防止されるとともに、2次元電気泳動用カセット1Aの製造後から2次元電気泳動用カセット1Aの使用するまで期間には、ゲルGの乾燥が抑制されている。
なお、2次元電気泳動用カセット1A使用時には、第1開口部11および第2開口部12は、封止材31,32が外されて開口した状態となっている。
ここで、第1開口部11を封止する封止材を第1封止材31とし、第2開口部12を封止する封止材を第2封止材32として以下説明する。
【0028】
第1封止材31は、第1基板2aに着脱可能な、例えば、粘着シール材、感圧式圧着シール材などで、第1開口部11を第1バッファー槽3側から覆うことが可能な大きさに形成されている。
また、第2封止材32も、第1基板2aに着脱可能な、例えば、粘着シール材、感圧式圧着シール材などで、第2開口部12を第2バッファー槽4側から覆うことが可能な大きさに形成されている。
【0029】
第2基板2bには、サンプルの泳動方向(矢印A)における後方側端部に、キャビティ部Cと第2基板2bの外部とを連通する複数の充填孔20が形成されている。
充填孔20は、2次元電気泳動用カセット1Aの製造時に、ゲル前駆液Gaをキャビティ部Cに充填する充填用ノズル(不図示)が挿通されるために形成されている。
なお、本実施形態では、第2基板2bに複数の充填孔20が形成されているが、1つの充填孔20としてもよい。
【0030】
次に、上述した2次元電気泳動用カセット1Aの製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、所定の形状に成形された第1基板2aと第2基板2bとを組み合わせて、キャビティ部Cを構成する。
このとき、第1封止材31で第1開口部11を覆って封止し、第2封止材32で第2開口部12を覆って封止する。
【0031】
続いて、キャビティ部Cに所定濃度のゲル前駆液Gaを充填する(ゲル前駆液充填工程充填工程)。
ゲル前駆液充填工程では、図2に示すように、カセット本体10を、サンプルの泳動方向(矢印A)における前方側が重力方向(下側)に向かう位置関係にし、充填孔20が上側となるように設置する。
【0032】
そして、充填用ノズル(不図示)からキャビティ部Cにゲル前駆液Gaを充填する。
ここで、キャビティ部Cに充填されるゲルGは、主にアクリルアミドゲルが用いられる。そして、アクリルアミドゲル作製溶液(ゲル前駆液Ga)は、公知の電気泳動法解説書に記載のものを用いることができ、特に制限されないが、アクリルアミド系モノマー、N,N−メチレンビスアクリルアミド等の架橋剤、pH緩衝剤、また必要によりSDSなどの変性剤からなるモノマー溶液に重合開始剤を添加した後に充填される。
【0033】
この際、ゲル前駆液Gaは、濃度が均一のものが充填され続けてもよく、また、濃度変化をもたせながら充填されても良い。濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを作成したい場合は、別に用意された高濃度アクリルアミド溶液と低濃度アクリルアミド溶液とを、経時的に混合比率を変えながら充填する公知の方法を用いることが出来る。この際、2種の溶液のいずれかにグリセリンなどの高比重物質を添加し、溶液同士に比重差を付けても良い。
【0034】
続いて、キャビティ部C内に充填されたゲル前駆液Gaをゲル化させる(ゲル化工程)。
キャビティ部Cにゲル前駆液Gaを充填した後に、充填孔20をフィルム等で封止し、重合が進行するまでキャビティ部Cにゲル前駆液Gaが充填されたカセット本体10を十分な時間静置させる。
そして、ゲル前駆液Gaがゲル化することによって、2次元電気泳動用カセット1Aが製造される。
【0035】
次に、上述した2次元電気泳動用カセット1Aの効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による2次元電気泳動用カセット1Aによれば、第1開口部11を封止可能な第1封止材31および第2開口部12を封止可能な第2封止材32を備え、ゲル前駆液Gaを充填するための充填孔20が形成されていることにより、キャビティ部C内にゲル前駆液Gaを充填する工程において、第1開口部11および第2開口部12を封止して充填孔20からゲル前駆液Gaを充填することができる。
このため、充填されたゲル前駆液Gaに第1開口部11および第2開口部12から空気が入る込むことがなく、形成されたゲルGに気泡が残存することを防ぐことができ、ゲルGの品質を安定させることができるとともに、2次元電気泳動用カセット1Aを効率よく製造することができる効果を奏する。
【0036】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図4(a)に示すように、第2実施形態による2次元電気泳動用カセット1Bは、第1開口部13の内周面13aおよび第2開口部14の内周面14aが、第1基板2aの第1バッファー槽3および第2バッファー槽4側からキャビティ部C側に向かって外方へ広がるテーパ面に形成されている。
【0037】
第2実施形態による2次元電気泳動用カセット1Bよれば、第1開口部13の内周面13aおよび第2開口部14の内周面14aがテーパ面に形成されているため、キャビティ部C内にゲル前駆液Ga充填したときに、第1開口部13および第2開口部14に空気が溜まりにくいため、形成されたゲルGに気泡が残存することを防止することができる。
特に、図4(b)に示すように、第1基板2aの面方向に直交する断面視におけるテーパ面(内周面13a,14a)どうしの交差角度θが90°以上であると、形成されたゲルGに気泡の残存は認められず一層好ましい。
【0038】
また、第2実施形態による2次元電気泳動用カセット1Bの製造方法では、図5のようにカセット本体10を複数並べて設置し、複数のカセット本体10の充填孔20からキャビティ部Cへゲル前駆液Gaを同時に充填している。
このように、複数のカセット本体10に、同時にゲル前駆液Gaを充填することによって、2次元電気泳動用カセット1Bを効率的に製造することができる。
【0039】
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施形態による2次元電気泳動用カセット1Cは、第1封止材33が第1開口部11に嵌合され、第2封止材34が第2開口部12に嵌合されている。
第1封止材33は、第1開口部11に相当する凸部33aを備えている。この凸部33aは、その高さが第1基板2aの厚さと略等しく、先端面33bが第1基板2aのキャビティ部C側の面と略面一となっている。
第2封止材34も、第1封止材33と同様に、第2開口部12に相当する凸部34aを備えている。この凸部34aは、その高さが第1基板2aの厚さと略等しく、先端面34bが第1基板2aのキャビティ部C側の面と略面一となっている。
第1封止材33および第2封止材34としては、樹脂成型物でカセットと密着する部分に粘着材等が用意されているものや、カセットに密着可能なシリコンゴムやウレタンゴム等の成型物が好ましい。
【0040】
第3実施形態による2次元電気泳動用カセット1Cによれば、第1封止材33および第2封止材34は、凸部33a,34aが形成されて、凸部33aが第1開口部11に、凸部34a第2開口部12に嵌合するとともに、先端面33b,34bが第1基板2aの内周面と略面一となっていることにより、第1開口部11および第2開口部12に空気が溜まることがなく、形成されたゲルGに気泡が残存することを防ぐことができる。
また、第1封止材33および第2封止材34は、樹脂成型物でカセットと密着する部分に粘着材等が用意されているものや、カセットに密着可能なシリコンゴムやウレタンゴム等の成型物であることにより、第1開口部11および第2開口部12を密閉することができ、第1開口部11および第2開口部12からの空気の流入を防ぐことができる。
【0041】
(第4実施形態)
図7に示すように、第4実施形態による2次元電気泳動用カセット1Dでは、第1基板53aは、キャビティCと第1バッファー槽3および第2バッファー槽4とを仕切る板部材53cが、図2に示す第1実施形態のキャビティCと第1バッファー槽3および第2バッファー槽4とを仕切る板部材2cよりも薄く形成されている。このため、第1開口部51および第2開口部52の深さが、図2に示す第1実施形態の第1開口部11および第2開口部12の深さよりも浅く形成されている。
また、第1基板52bの板部材52cは、第2基板53bよりも薄い厚さに形成されている。
第4実施形態による2次元電気泳動用カセット1Dでは、第1実施形態による2次元電気泳動用カセット1Aと比べて、第1開口部51および第2開口部52内に留まる空気が少ないとともに、第1開口部51および第2開口部52内の空気が排出されやすいため、形成されたゲルGに気泡が残存することをより防ぐことができる。
【0042】
以上、本発明による2次元電気泳動用カセットの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第2実施形態による2次元電気泳動用カセットの製造方法では、カセット本体10にゲル前駆液Gaを同時に充填しているが、1つずつカセット本体10へゲル前駆液Gaを充填してもよい。また、第1実施形態による2次元電気泳動用カセットの製造方法において、カセット本体10を複数並べて設置し、複数のカセット本体10へ同時にゲル前駆液Gaを充填してもよい。
また、上記の実施形態では、第1基板2aおよび第2基板2bは合成樹脂製としているが、ガラス製としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1A〜1D 2次元電気泳動カセット
2a,53a 第1基板(基板)
2b,53b 第2基板(基板)
3 第1バッファー槽
4 第2バッファー槽
10 カセット本体
11,13,51 第1開口部
12,14,52 第2開口部
11a,12a,13a,14a 内周面
20 充填孔
31,33 第1封止材(封止材)
32,34 第2封止材(封止材)
C キャビティ部
G ゲル
Ga ゲル前駆液
θ 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を組み合わせて構成されたカセット本体のキャビティ部にゲルが収容され、前記カセット本体に隣接してバッファー槽が形成された2次元電気泳動用カセットであって、
前記基板を貫通し前記キャビティ部と前記バッファー槽とを連通させる開口部と、
前記基板を貫通し前記カセット本体の外部から前記キャビティ部へゲル前駆液を充填可能な充填孔と、が形成され、
前記開口部を封止可能であるとともに前記基板に着脱可能な封止材を備えることを特徴とする2次元電気泳動用カセット。
【請求項2】
前記開口部は、内周面が前記バッファー槽側から前記キャビティ部側に向かって広がるテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の2次元電気泳動用カセット。
【請求項3】
前記開口部は、前記基板の面方向に直交する断面視におけるテーパ面どうしの交差角度が90°以上であることを特徴とする請求項2に記載の2次元電気泳動用カセット。
【請求項4】
前記封止材は、粘着シール材または感圧式圧着シール材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の2次元電気泳動用カセット。
【請求項5】
前記封止材は、前記開口部に嵌合可能であるとともに、該開口部に嵌合したときに前記キャビティ部側の端面が前記基板の内周面と面一であることを特徴とする請求項1に記載の2次元電気泳動用カセット。
【請求項6】
前記封止材は、シリコンゴムまたはウレタンゴムから形成されていることを特徴とする請求項5に記載の2次元電気泳動用カセット。
【請求項7】
基板を組み合わせて構成されたカセット本体のキャビティ部にゲル前駆液を充填するゲル前駆液充填工程と、
前記ゲル前駆液をゲル化させるゲル化工程と、を備える2次元電気泳動用カセットの製造方法であって、
2次元電気泳動用カセットは前記カセット本体に隣接してバッファー槽が形成されて、前記基板を貫通し前記キャビティ部と前記バッファー槽とを連通させる開口部と、前記基板を貫通し前記カセット本体の外部から前記キャビティ部へ前記ゲル前駆液を充填可能な充填孔と、がさらに形成され、
前記ゲル前駆液充填工程では、前記充填孔が上方となるように基板を配置させるとともに、前記開口部を封止し、前記充填孔から前記キャビティ部にゲル前駆液を充填させることを特徴とする2次元電気泳動用カセットの製造方法。
【請求項8】
前記カセット本体を複数並べて設置し、複数の前記カセット本体のキャビティ部に同時にゲル前駆液充填工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の2次元電気泳動用カセットの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−88167(P2012−88167A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234844(P2010−234844)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)